説明

使い捨て吸収性物品

【課題】フィルム材間の接着力が引っ張り力に対して強い吸収性物品を提供すること。
【解決手段】隣接する2枚のフィルム材間がホットメルト接着剤によって接合されている使い捨て吸収性物品である。ホットメルト接着剤は、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量が全体の5〜50質量%であり、かつ130℃での溶融粘度が10000〜20000mPa・sである。スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤を用いて接着されたフィルム材を備えた使い捨て吸収性物品に関する。また、本発明は、2枚のフィルム材間をホットメルト接着剤で接合したラミネートフィルム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの製品は、複数種の材料が使用されており、それら材料間には熱融着、超音波融着、接着剤などによって接着・固定が施されて一体化されている。特に、使い捨ておむつは、装着者の着用中の活動によって様々な方向に力が加わるために、破損・損傷などの危険が伴っているため、強固な接着が重要となる。また接着直後から長期保管後にわたって優れた接着力があることが重要である。
【0003】
特許文献1には、紙おむつの部材に対する接着性及び保持性の改善を目的として、スチレン含有率35〜50重量%、スチレン−ブタジエンジブロック含有率50〜80重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が20〜40mPa・sであるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を、接着剤全体の30重量%以上含んでいるホットメルト接着剤が提案されている。具体的には、紙おむつでの部材の低温塗布を目的として、比較的低い温度でも粘度が低い(具体的には、120℃で10000mPa・s以下)ものを提供することが提案されている。また、特許文献2にはトリブロック体を多く含むスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体組成物を含有するホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137297号公報
【特許文献2】特開2008−239931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ファスニングテープで装着する大人用の使い捨ておむつのように、装着者の体格が大きいような場合において、ファスニングテープを思いっきり引っ張って装着操作を行う場面や、また、装着中に激しい動きなどによってファスニングテープに想定外の力が加わったような場合に、おむつ本体部分とファスニングテープの接着固定が引っ張り力に対して抵抗しきれずに剥がれてしまう危険性がある。更に、小さい力が長時間にわたり加わった場合、ファスニングテープへの力は持続的にかかるため、本体から剥がれてしまうことがある。前記特許文献では、そのような場面を想定しておらず、したがって、引っ張り力に対する十分な抵抗力を高める必要性がある。
【0006】
本発明の課題は、前記事情に鑑みて、引っ張り力に対する抵抗力が大きい使い捨ておむつを提供することを目的とする。また、2枚のフィルム材間が十分な引っ張り力への抵抗性を有するフィルム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のフィルム材を構成材料として含む使い捨て吸収性物品であって、隣接する2枚のフィルム材間がホットメルト接着剤によって接合されており、前記ホットメルト接着剤は、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量が全体の5〜50質量%であり、かつ130℃での溶融粘度が10000〜20000mPa・sであり、前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である、使い捨て吸収性物品を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、2枚のフィルム材間がホットメルト接着剤によって接合されているラミネートフィルム構造体であって、前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である、ラミネートフィルム構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の使い捨て吸収性物品及びラミネートフィルム構造体は、フィルム材間の接着力が引っ張り力に対して強く、特に、弱い力が長時間加わっても破損しにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示すテープ止めおむつの展開状態における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の使い捨て吸収性物品の好ましい一実施形態について説明する。本実施形態の使い捨て吸収性物品としての使い捨ておむつ1は、図1に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性の防漏シート(図示せず)、及び液保持性の吸収体4を備え、実質的に縦長であり、長手方向左右両側部に、立体ガード弾性部材を備えた一対の立体ガード6を具備する。
【0012】
本実施形態の使い捨ておむつ1は、吸収体4を表面シート2と防漏シートとにより挟持固定してなる。また、着用時に着用者の腹側に位置する腹側部A及び背側に位置する背側部Bにおけるウエスト開口部8には、それぞれウエスト部弾性部材81が配されてそれぞれウエストギャザーが形成されている。そして、背側部Bの防漏シートにおける左右両側縁部B1,B2には、それぞれ使い捨ておむつ止着用のファスニングテープ11が設けられている。なお、本実施形態においては図示されていないが、防漏シートの外層側に、不織布製の外装シートを設けてもよい。
【0013】
本実施形態の使いすておむつ1では、防漏シートとファスニングテープ11との接着を、以下に説明するホットメルト接着剤によって行っている。ホットメルト接着剤は、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量が全体の5〜50質量%であり、かつ130℃での溶融粘度が10000〜20000mPa・sである。スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である。本発明者は、このホットメルトを2枚のフィルム材間の接着に使用した場合に、強い力が加わったとき、及び、弱い力が長時間じわじわとかかり続けたような場合の、引っ張り力に対する抵抗力が高くなることを見出した。したがって、テープ止めタイプの使い捨ておむつのファスニングテープに対して引っ張り力が加えられた場合において、このホットメルトで接着されたフィルム構造(ラミネートフィルム構造)は破損を逃れることが容易となる。
【0014】
ジブロック共重合体とトリブロック共重合体の比率(前者/後者)は、2.1以上であり、好ましくは2.6以上、特に好ましくは3.0以上であると高温での溶融粘度を適正な範囲内で低目に制御しやすくなり、塗布坪量を過剰とならないよう制御しやすくなる。このため、吸収性物品の接着に使用する場面においては、接着箇所が過剰に硬くなることを防ぐことが容易となるので好ましい。また、ホットメルトを被塗布材料の融点やガラス転移点温度を考慮し、低い温度で塗工することが可能となるので、好ましい。なお、前記比率の上限値としては、5.0程度、好ましくは4.0程度である。当該範囲であると、粘着力と保持力のバランスよく維持することができる。更に、塗布坪量を抑えられることにより、被塗布材料の風合いを損なわない点から好ましい。ジブロック共重合体とトリブロック共重合体の前記比率は、質量比を意味する。
【0015】
ホットメルト接着剤の130℃での溶融粘度は、上述したように、10000〜20000mPa・sである。この範囲であると、ホットメルト接着剤の塗工ムラを抑えることができることから被接着部材であるフィルム材間の接着面が均一に形成され、局所的に応力が加わることによる剥がれを抑制することが可能となる。溶融粘度が10000mPa・sより低い場合には被接着材料であるフィルム材の上でホットメルト接着剤が拡がりすぎてフィルム材に局所的に熱のダメージを与える可能性があり、その場合、フィルム自身の強度低下によって、引っ張り力が加わったときに破損を生じ易くなることがある。また、溶融粘度が20000mPa・sを超えると、フィルム材間の接着自体が不十分となってしまい、引っ張り力に対する抵抗力が弱くなるおそれがある。当該溶融粘度としては、10000〜16000mPa・s、特に10000〜15000mPa・sであることが、被接着材料であるフィルムに皺や凹凸が形成されにくくなり、見栄えの点、及び、局所的なフィルム強度の脆弱化を防ぐ観点から好ましい。なお、本発明において、「130℃での溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤を130℃の状態で測定した粘度のことである。前記粘度は、各種粘度計を用いて測定することができるが、例えば、前記溶融粘度は、ホットメルト接着剤の溶融体の粘度をいい、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)等で測定できる。
【0016】
スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量としては、ホットメルト接着剤全体の5〜50質量%、好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは15〜45質量%である。スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量が、ホットメルト接着剤全体の5質量%未満であると、十分な保持力が確保できなくなり、50質量%を超えると、接着剤の溶融粘度が高くなりすぎる。また、15〜45質量%であると、溶融粘度と軟化点のバランスが良好であり、被塗布材料に適度な塗布量を与えることが容易となるので、当該部分の風合いが良好になるので好ましい。
【0017】
スチレン−ブタジエン系共重合体組成物中のスチレン含有率は、20〜40質量%、特に25〜35質量%であることが好ましい。スチレン−ブタジエン系共重合体組成物のスチレン含有率を20質量%以上とすることで、十分な保持力が確保しやすくなり、スチレン含有率が40質量%以下とすることで、柔軟性が損なわれにくくなる。20〜35質量%の範囲とすることによって、接着剤の粘着性と柔軟性のバランスが良好となり、塗布面での引っ張り力に対する抵抗力が高く、風合いも良好である。スチレン含有率とは、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物に含まれるスチレンブロックの割合(質量基準)をいう。
【0018】
スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の25質量%トルエン溶液の25℃での粘度は、2000〜20000mPa・s、特に3000〜8000mPa・sであることが以下の理由から好ましい。当該粘度が2000mPa・s以上であると、軟化点の低下を抑制でき、生産ラインでのブロッキングや保管時にコールドフローによるブロッキングを生じにくくなり、結果として被塗布材料間に十分な保持力を与えることが容易となる。一方、当該粘度が20000mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が適度な範囲に制御しやすくなり、塗布工程が容易となる。
【0019】
なお、本発明において、「25質量%トルエン溶液の25℃での粘度」とは、トルエンを溶媒とする25質量%の濃度の溶液の25℃における粘度をいう。前記粘度は、各種粘度計を用いて測定することができるが、例えば、ブルックフィールドBM型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて測定できる。
【0020】
前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物としては、ジブロック体含有量の多い共重合体組成物と、トリブロック体含有量が多く、ジブロック体含有量の少ないか又は含まれていない共重合体組成物とを、溶融・混合することによって調製することが可能である。例えば市販品としては、ジブロック体含有量の少ない共重合体組成物として、旭化成エラストマー社製の商品名アサプレンT−432(スチレン−ブタジエンジブロック含有率25質量%、スチレン含有率30質量%、25質量%トルエン溶液の25℃での粘度3100mPa・s)、タフプレンA(SBSトリブロック共重合体組成物:ジブロック含有率0%、スチレン含有率40質量%、25質量%トルエン溶液の25℃での粘度650mPa・s)、日本合成ゴム(株)製の商品名TR2003(ジブロック含有率10質量%、15質量%トルエン溶液の25℃における粘度75mPa・s、スチレン含有率43質量%)がある。ジブロック体含有量の多い共重合体組成物として、旭化成エラストマー社製の商品名アサプレンT−439(スチレン−ブタジエンジブロック含有率62質量%、スチレン含有率45質量%、15質量%トルエン溶液の25℃での粘度25mPa・s)、T−438(ジブロック含有率70質量%、スチレン含有率35質量%、15質量%トルエン溶液の25℃での粘度50mPa・s、)、T−436(ジブロック含有率50質量%、15質量%トルエン溶液の25℃における粘度110mPa・s、スチレン含有率30質量%)等が挙げられる。
なお、フィルム材料の接着に使用されたホットメルト接着剤中のジブロック体、トリブロック体の定量分析は、フィルム材料から接着剤成分を溶媒抽出した後にGPC等公知の手段によって行うことが可能である。GPCカラムとしては理論段数14,000以上で粒径5〜7μmの有機溶媒系カラムを使用し、ジブロック体とトリブロック体の各保持時間が良好に分離する条件で有機溶媒系溶離液、流速(0.5〜3mL/分)、温度(25〜50℃)を選択することが好ましい。検出方法としてはRIを、分子量換算はポリスチレンを用いることができる。
【0021】
また、本発明のホットメルト接着剤においては、前記のスチレン−ブタジエン共重合体組成物以外に、粘着付与樹脂が配合されることが好ましい。
【0022】
粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油系樹脂;石油系樹脂の水添又は部分水添樹脂等を挙げることができ、これらの粘着付与樹脂は、単独又は組み合わせて用いることができる。これらの粘着付与樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学社製の商品名マルカクリアーH、荒川化学社製の商品名アルコンM100、出光石油化学社製の商品名アイマーブS100、イーストマンケミカル社製の商品名リガライトR7100、イーストマンケミカル社製の商品名リガライトC6100等を挙げることができる。
【0023】
また、前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物が含まれるホットメルト接着剤においては、粘着付与樹脂として、23℃で液状のC5C9系石油樹脂を用いることが好ましく、このC5C9系石油樹脂が接着剤全体の2〜20質量%含まれることが好ましい。
【0024】
すなわち、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物が含まれるホットメルト接着剤において、前記C5C9系石油樹脂の配合量が前記範囲であると、タック力と粘着力がバランスよくなり、ずり力に対する抵抗力が高くなるので好ましい。
【0025】
前記C5C9系石油樹脂の原料となるC5留分を構成する炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、イソペンタン、n−ペンタン、3−メチルブテン−1、2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2、1−ペンテン、2,2−ジメチルブタン、1,4−ペンタジエン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、2,3−ジメチルブタン、イソプレン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。これらのC5留分を構成する炭化水素は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0026】
前記C5C9系石油樹脂の原料となるC9留分を構成する炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン、アルキルベンゼン等が挙げられる。これらのC9留分を構成する炭化水素は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また、本発明に使用可能な市販のC5C9系石油樹脂としては、23℃で固形のものは、例えば、イーストマンケミカル社製商品名リガライトC6100等が挙げられ、23℃で液状のものは、例えば、イーストマンケミカル社製商品名リガライトC8010等が挙げられる。
【0027】
なお、ホットメルト接着剤中の粘着付与樹脂の配合量は、特に限定されないが、スチレン−ブタジエン共重合体組成物100質量部に対して、50質量部〜300質量部が好ましく、65質量部〜300質量部がより好ましく、100質量部〜250質量部が一層好ましい。当該範囲であると、密着性と低温可撓性のバランスが良好となる。
【0028】
本発明で用いられるホットメルト接着剤には、更に本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、軟化剤(可塑剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【0029】
本発明で用いられるホットメルト接着剤の製造方法は、特別なものではなく、例えば、加熱装置を備えた攪拌混練機や攪拌混合機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等を用いて、前記必須成分の各所定量と必要に応じて添加される前記各種添加剤の各所定量とを加熱溶融し、均一に攪拌混練することにより、所望のホットメルト接着剤を得ることができる。具体的には、前記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することによって製造することができる。
【0030】
得られたホットメルト接着剤は、作業性の観点から、170℃での溶融粘度が、3000mPa・s以下であることが好ましい。この溶融粘度は、上述した方法で測定される。
【0031】
上述した使い捨ておむつの実施形態で使用したホットメルト接着剤は別の用途に使用することも可能である。その用途は、特に限定されないが、例えば、パンツ型おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等他の使い捨て吸収性物品や、ペットシートなどに好適である。
【0032】
本発明で用いられるホットメルト接着剤の非接着対象物(被接着部材)は、特に限定されないが、一般的には、織布、不織布、ゴム、樹脂、フィルム、紙類からなる群から選ばれた少なくとも一つの部材と、フィルム材とを本発明のホットメルト接着剤を用いて接着することによって得られる。特に、フィルム材とフィルム材との接着に用いると、引っ張り力への抵抗力が高く発現されるので好ましい。
【0033】
前記フィルム材としては、透湿性又は非透湿性のポリオレフィンフィルムが挙げられる。いずれのポリオレフィンフィルムを接着する場合においても本発明で用いられるホットメルト接着剤は高い引っ張り力への抵抗性を示すものである。
【0034】
本発明は、特に、透湿性のフィルムを一つの被塗布材料とする場合には、有効である。例えば、表面シート、吸収体、裏面シートを備えた吸収性物品の裏面シートを構成する透湿性フィルムに対して、ファスニングテープ材としての非透湿性フィルムを貼り合わせる場合、当該部分では大きな引っ張り力が加わることが多いが、本発明で用いられるホットメルト接着剤で貼り合わせた場合には、引っ張りに対する抵抗力が強くなり、装着時などに強い力で引っ張ったような場合でもファスニングテープがおむつから剥離してしまうようなことが避けられる。
【0035】
ホットメルト接着剤は、様々の方法を用いて各種構成部材に塗布することができるが、いずれの方法を用いてもホットメルト接着剤が適当な溶融粘度になるように加熱溶融し、ドット状、線状、筋状、螺旋状、面状等に、各種構成部材に塗布することによって行う。
【0036】
本発明で用いられるホットメルト接着剤の塗布方法は、特に限定されないが、非接触塗布法及び接触塗布法がある。前記非接触塗布法とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルム材に接触させない塗布方法のことで、具体的には、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などが挙げられる。また前記接触塗布法とは、塗工する部材やフィルム材などに直接接触させて塗布する方法のことで、一定の厚み及び高坪量の塗布ができるコーター塗工などがあり、本発明では、接触塗布法が好ましい。塗布温度は、特に限定されないが、110〜180℃が好ましく、120〜170℃がより好ましい。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、種々変更が可能である。例えば、ナプキンや軽失禁パッド等の包装材に見られるようなタブテープと包装材との接着にも上述したホットメルト接着剤を用いることが出来る。軽失禁パッドの場合を説明すると、タブテープを引き剥がし、包装材と共に後方部を前方部の上から引き起こすように、包装材の左右両側縁部のヒートシール部を引き剥がし(ミシン目を設けた場合には該ミシン目を引き離して)、排泄部対向部の上に折り重ねられている包装材の部分を開き、包装構造を開封して、後方部が折り畳まれたナプキンや軽失禁パッドの後端部を指で摘んで、軽失禁パッドを包装材から取り出す。
また、これらの場合、包装材及びタブテープの形成材料は、公知のものを特に制限なく用いることができるが、具体的には、厚さ5〜50μmのポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール等のフィルム材料、あるいは不織布や紙とフィルムとの複合材料等の包装材料が挙げられる。
【0038】
以下に、本発明の具体的な実施例をその比較例と対比させて詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0039】
〔実施例1及び2並びに比較例1及び2〕
以下の表1に示すジブロック/トリブロック比率のスチレン−ブタジエン系共重合体組成物を配合し、該スチレン−ブタジエン系共重合体組成物30%、粘着付与樹脂1(イーストマンケミカル社製商品名リガライトC6100)45%、粘着付与樹脂2(イーストマンケミカル社製商品名リガライトC8010)20%、パラフィン系オイルとしては、軟化剤(出光興産社製商品名PS−32)5%からなる割合で、各成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入して、150℃で加熱溶融混合することによりホットメルト接着剤を作製した。得られたホットメルト接着剤について、それぞれ溶融粘度、軟化点及び保持力を測定した。測定結果を表1に示す。なお、溶融粘度、軟化点及び保持力の測定方法は以下の通りである。
【0040】
〔溶融粘度〕
溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱して溶融し、130℃、170℃各々において、溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した。
【0041】
〔軟化点〕
軟化点は、リング&ボール法(日本接着剤工業会規格JAI−7−1999に規定された方法)で測定した。
【0042】
〔保持力〕
厚さが95μmのPPフィルム(非透湿性)に、130℃で100g/m2の坪量のホットメルト接着剤を28mm幅で塗工した。この塗工したPPフィルムを長さ方向に30mm幅でカットした。次に、60mm幅にカットされたPEフィルム面(透湿性)に30mm幅にカットされたPPフィルムを貼り付け、45mm幅で2kg加重のローラーで1往復した。この張り付けられた状態で、PPフィルム30mm幅を上側にして固定した。その逆側となるPEフィルム60mm幅に800gのおもりをかけ、30℃の条件下に放置した。そして、800gのおもりをかけたPEフィルム60mm幅が落下するまでの時間(hr)を測定し、これを保持力の指標とした。
【0043】
【表1】

【0044】
前記表1から、各実施例で用いたホットメルト接着剤は、各比較例で用いたホットメルト接着剤に比べて、保持時間が向上していることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルム材を構成材料として含む使い捨て吸収性物品であって、
隣接する2枚のフィルム材間がホットメルト接着剤によって接合されており、
前記ホットメルト接着剤は、スチレン−ブタジエン系共重合体組成物の配合量が全体の5〜50質量%であり、かつ130℃での溶融粘度が10000〜20000mPa・sであり、
前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記隣接する2枚のフィルム材のうち少なくとも一方が透湿性フィルムである、請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記隣接する2枚のフィルム材の一方が透湿性フィルムであり、他方が非透湿性フィルムである、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
2枚のフィルム材間がホットメルト接着剤によって接合されているラミネートフィルム構造体であって、
前記スチレン−ブタジエン系共重合体組成物は、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体とスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体とを含み、かつジブロック共重合体とトリブロック共重合体との比率が2.1以上である、ラミネートフィルム構造体。

【図1】
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