説明

使用性評価方法、使用性評価装置、及び使用性評価プログラム

【課題】増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行う。
【解決手段】増粘剤の塗布時の官能評価を定量化して使用性を評価する使用性評価方法において、前記増粘剤の流動特性から予め設定された複雑流体の硬さを評価する関数を用いて得られる物性パラメータを取得するパラメータ取得ステップと、前記パラメータ取得ステップにより得られるパラメータを用いて前記官能評価を定量化する官能評価定量化ステップと、前記官能評価定量化ステップにより得られる数値を用いて前記増粘剤に対する使用性評価を行う使用性評価ステップとを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用性評価方法、使用性評価装置、及び使用性評価プログラムに係り、特に増粘剤の使用感触をパラメータ値として表現することで、効率的に客観的な使用性の評価を行うための使用性評価方法、使用性評価装置、及び使用性評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品等においては、乳液、美容液、ジェル等の製品の粘度を調整する目的、また製品系の安定性を保つ目的で、多くの水溶性高分子が増粘剤として用いられている。
【0003】
ここで、水溶性高分子増粘剤を由来より分類すると、天然高分子(例えば、ローカストビーンガム等)、半合成高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース等)、合成高分子(例えば、力ルボキシビニルボリマー等)に分けられる。
【0004】
また、以前はローカストビーンガム等の天然ガム類を初めとする天然高分子が主に用いられていたが、収穫量が天候等に左右され供給安定性に問題があること、原料産地等によりロット間で品質のバラツキがある点等から、徐々にカルボキシビニルポリマーに代表される合成高分子の使用される割合が高くなってきた。カルボキシビニルポリマーは、少量で高い増粘性を示し、かつさっぱりした使用性を示すことから、長年に渡って水性増粘剤の主流であった。
【0005】
しかしながら、近年では、使用感触の向上や更なる機能アップを目的に、新たな合成高分子増粘剤の開発も行われている。本出願人においても界面化学と高分子化学の技術を融合し、水/油/非イオン性界面活性剤の三成分系の転移温度領域で表れる逆ミセル相のミセル水相内という制限された空間で、水膨潤性ミクロゲルを合成することに成功している(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0006】
なお、上述のミクロゲルは、少量の添加で高い増粘効果を示し、またこれまでの水膨潤性増粘剤とは異なる特有の使用感触を有することが見出され、新たな機能及び使用性を持つ増粘剤として開発された。
【0007】
また、従来では、棒状化粧料に対して使用感を評価する手法が開示されている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【特許文献1】特開2004−43785号公報
【特許文献2】特開2004−51739号公報
【特許文献3】特開2003−83873号公報
【特許文献4】特開2006−126143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したような水溶性の増粘剤は、粘度調整や安定性の確保という機能以外に、製剤の使用感触をコントロールする重要な役割を担っている。しかしながら、これまでの製剤開発における使用感触の調整は、官能評価に頼ってきていた。したがって、増粘剤の塗布に対する使用感触を客観的に評価することは困難となっていた。また、上述した特許文献に示すような何れの手法も、増粘剤の塗布に対する使用感触を評価することは難しかった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、増粘剤の使用感触をパラメータ値として表現することで、効率的に客観的な使用性の評価を行うための使用性評価方法、使用性評価装置、及び使用性評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0011】
請求項1に記載された発明は、増粘剤の塗布時の官能評価を定量化して使用性を評価する使用性評価方法において、前記増粘剤の流動特性から予め設定された複雑流体の硬さを評価する関数を用いて得られる物性パラメータを取得するパラメータ取得ステップと、前記パラメータ取得ステップにより得られるパラメータを用いて前記官能評価を定量化する官能評価定量化ステップと、前記官能評価定量化ステップにより得られる数値を用いて前記増粘剤に対する使用性評価を行う使用性評価ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行うことができる。
【0013】
請求項2に記載された発明は、前記パラメータ取得ステップにおいて、前記複雑流体の硬さを評価する関数としてナッティング(Nutting)式を用いて、時間依存の物性パラメータを取得することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、官能評価を定量化する際に必要な時間依存の物性パラメータを容易に取得することができる。
【0015】
請求項3に記載された発明は、前記官能評価定量化ステップは、前記増粘剤の塗布時におけるぬるつき、肌のべたつき、肌のさっぱり感、及び肌へのしみこみのうち、少なくとも1つに対して予め設定された関数に前記時間依存のパラメータを適用して定量化を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、塗布開始後の官能評価を高精度に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載された発明は、増粘剤の塗布時の官能評価を定量化して使用性を評価する使用性評価装置において、前記増粘剤の流動特性から予め設定された複雑流体の硬さを評価する関数の物性パラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記パラメータ取得手段により得られるパラメータを用いて前記官能評価を定量化する官能評価定量化手段と、前記官能評価定量化手段により得られる数値を用いて前記増粘剤に対する使用性評価を行う使用性評価手段とを有することを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行うことができる。
【0019】
請求項5に記載された発明は、前記パラメータ取得手段は、前記複雑流体の硬さを評価する関数としてナッティング(Nutting)式を用いて、時間依存の物性パラメータを取得することを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、官能評価を定量化する際に必要な時間依存の物性パラメータを容易に取得することができる。
【0021】
請求項6に記載された発明は、前記官能評価定量化手段は、前記増粘剤の塗布時におけるぬるつき、肌のべたつき、肌のさっぱり感、及び肌へのしみこみのうち、少なくとも1つに対して予め設定された関数に前記時間依存のパラメータを適用して定量化を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、塗布開始後の官能評価を高精度に行うことができる。
【0023】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の使用性評価方法を実行させるようにコンピュータを動作させることを特徴とする使用性評価プログラムである。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行うことができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明における増粘剤の使用性評価を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<本発明の概要>
本発明は、例えば化粧品の塗布プロセスを反映すると考えられる物性評価、例えば流動特性や粘弾性特性、ゲル微細構造、摩擦特性、乾燥後塗布膜の物性等から得られる物理量を変数として用い、官能評価結果を定量的に表現する。これにより、官能評価結果を簡便に測定可能な物性値で定量化することができ、製剤開発の効率化や、更には求められる増粘剤バーツの構成を提案可能なシステムの構築につなげることができる。
【0027】
なお、以下に示す本実施形態の説明では、化粧品の塗布プロセスのうち、塗り始めの感触に注目し、化粧料のクリープ測定結果を、複雑流体の固さを評価する経験式の一例として、Nutting式等を用いてこれを解析し、得られたパラメータと、使用感触の相関について線形単回帰分析により検証する。
【0028】
ここで、図1は、増粘剤の施術プロセスの一例を示す図である。図1に示すように、増粘剤を配合した化粧品等を肌に塗布する場合、乾燥・相分離を伴う時間変化が起こるが、本実施形態では、塗布開始直後からの所定時間における使用感触についての評価を評価対象範囲とする。
【0029】
つまり、塗布開始後は、一般的に「みずみずしさ」や「ぬめり」、「なじみ」といった指標(パラメータ)が基準となるため、その指標について物性パラメータ値との相関を用いて使用感触を評価することを目的とする。
【0030】
つまり、本発明では、例えば水溶性増粘剤を配合した処方の開発等において、求めている「使用感」をどうやって実現するかを検討した場合、官能による「使用性」Yと流動特性、粘弾性、微細構造等の物性値(例えば、関数f(a,b,c)等)を用いて表現する(Y=f(a,b,c))。これにより、例えば増粘剤パーツの構成を提案可能なシステムを構築することができる。
【0031】
次に、本発明における使用性評価方法、使用性評価装置、及び使用性評価プログラムを好適に実施した形態について、図面を用いて説明する。
【0032】
<本実施形態における使用性評価方法>
まず、本発明における水溶性増粘剤の塗布時における使用性の評価方法を提案するまでの経緯について具体的に説明する。
【0033】
<1.実験>
まず、使用性評価を行うために必要なデータを取得するための実験を以下の内容で行った。
【0034】
<1−1.試料>
一例として、各種水溶性増粘剤、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー、寒天末、サクシノグリカン、およびポリアクリルアミドを用いた。
【0035】
<1−2.評価サンプルの調整>
見かけ粘度が同程度になるように(BH型粘度計、30℃、10回転、1分後測定で12000mPa・s程度)各種水溶性増粘剤を配合した製剤を調整した。なお、寒天末は、例えば本出願人により出願された特開2001−342451号公報に開示される手法に従い、ミクロゲル状に調整したものを使用した。具体的には、ゲル化能を有する親水性化合物(寒天)を、水又は水性成分に溶解した後、放置冷却してゲルを形成し、その後、ゲルを粉砕して平均粒径0.1〜1,000μmのミクロゲルとすることにより増粘剤(寒天末)を得た。
【0036】
ここで、図2は、評価サンプルの調整例を示す図である。なお、図2に示す評価サンプルは一例であり、本発明に適用可能な増粘剤は、これらのサンプル及び原料の割合等に限定されるものではない。
【0037】
<1−3.レオロジー測定>
次に、ストレス制御型レオメーターMCR300(Paar Physica社製)を用い、クリープ測定を行った。なお、クリープ測定とは、一定応力をかけて歪みの変化を測定するものである。通常は、一定時間経過後に瞬間に応力を除重して歪みの回復の様子を観察する。また、測定条件としては、印加応力を最大歪み4%未満になるように各サンプルで選定し、応力印加30秒間、回復30秒間測定を行う。1測定水準について3回測定する。このとき、測定結果が、4要素モデルでフィッティングできることを確認する。
【0038】
<1−4.Nutting Parameterの算出>
次に、複雑流体の硬さを評価する方法として、指数側の経験式であるNuttingの式として以下に示す式(1)を用いて解析した。
【0039】
【数1】

ここで、上述した式(1)において、φは硬さを示し、σは応力を示し、γは歪みを示し、tは時間を示す。また、βは硬さφの応力依存性を示し、αは硬さφの時間依存性を示す。
【0040】
すなわち、例えばβ=1、α=0の場合は、φ=σγ−1となりフックの式となる。また、β=1、α=1の場合は、φ=σγ−1tとなりニュートンの式となる。したがって、これらのパラメータを求めることにより、硬さ、応力による硬さの変化や粘弾性の程度について情報を得ることができる。
未知パラメータ:α、β、φが、化粧品塗布時のどの使用感触と関連するか、更にはスコア化された官能評価結果との相関を検証し、官能評価スコアをNutting Parameterより定量的に評価が可能かについて検討した。
【0041】
<1−5.モニターによる使用テスト>
次に、図2に示す評価サンプル6品について、モニターテストを実施した。対象は20〜30代女性(しっとり好き、さっぱり好き、各年代半々)100名とした。
【0042】
また、使用方法は、評価サンプル3品各3日間、洗顔後の肌に手で使用するものとする。また、各評価項目に対して5段階で評価した。
【0043】
<2.結果及び考察>
<2−1.各モデル処方のNP(Nuting Parameter)>
次に、実験の結果と考察について説明する。図3は、各サンプルにおけるNuting Parameter測定解析結果の一例を示す図である。つまり、図3では、各モデル処方のNuting Parameter測定解析結果が示されている。
【0044】
<2−2.NPとモニターテスト(5段階評価)の相関検証>
次に、各パラメータと官能評価スコアの相関を検証する。ここでは、一例として30項目の官能評価結果とα値との相関を、最小二乗法を用いて検証した。その結果、幾つかの項目で高い相関が得られた。その結果について、線形単回帰分析を用いて解析した結果について、以下に詳細を述べる。
【0045】
<α値と「美容液のぬるつき」との相関について>
図4は、αと「美容液のぬるつき」の相関検証結果の一例を示す図である。なお、図4に示す相関図は、「α値」及び「美容液のぬるぬる感」の二変量の関係が示されている。
【0046】
図4に示すように、両者には非常に高い相関(R=0.91)が得られ、例えば以下の式で示すように「美容液のぬるつきスコア」をαを用いて定量的に評価可能であることが分かった。
「美容液のぬるつき」評価点=6.6×α+4.2
<α値と「肌のべたつき」の相関について>
図5は、αと「肌のべたつき」の相関検証結果の一例を示す図である。なお、図5に示す相関図は、「α値」及び「肌のべたつき感」の二変量の関係が示されている。
【0047】
図5に示すように、両者には高い相関(R=0.83)が得られ、例えば以下の式で示すように「肌のべたつきスコア」をαを用いて定量的に評価可能であることが分かった。
「肌のべたつき」評価点=4.3×α+1.9
<α値と「肌のさっぱり感」の相関について>
図6は、αと「肌のさっぱり感」の相関検証結果の一例を示す図である。なお、図6に示す相関図は、「α値」及び「肌のさっぱり感」の二変量の関係が示されている。
【0048】
図6に示すように、両者には高い相関(R=0.80)が得られ、例えば以下の式で示すように「肌のさっぱり感スコア」をαを用いて定量的に評価可能であることが分かった。
「肌のさっぱり感」評価点=−3.9×α+3.8
<α値と「肌へのしみこみ」の相関について>
図7は、αと「肌へのしみこみ」の相関検証結果の一例を示す図である。なお、図7に示す相関図は、「α値」及び「肌へのしみこみ」の二変量の関係が示されている。
【0049】
図7に示すように、両者には非常に高い相関((R=0.86))が得られ、例えば以下の式で示すように「肌へのしみこみスコア」をαを用いて定量的に評価可能であることが分かった。
「肌へのしみこみ」評価点=−7.1×α+3.7
以上のように、幾つかの官能評価項目について、物理量を用い定量化することに成功した。特に、美容液の使用感触にとって、「べたつき」、「さっぱり」、「ぬるつき」等は基本的な官能評価項目であり、嗜好を左右する非常に重要な項目と考えられ、これまで官能評価によって行っていた順位付けを、上述した手法を用いて物性値を求めることで定量化し数値で順位付けできるため、処方開発における指針として応用が可能であり、開発の効率化に有効な手段であるといえる。
【0050】
また、「肌へのしみこみ」は、各美容液の物性において、嗜好に影響すると考えられ、この傾向についてα値を用い定量化が可能となったことは非常に有用であるといえる。各サンプルのシニング性を、消費者は「肌へのしみこみ」と捕らえていると考えられる。肌上ですぐに水のような感触になる「寒天ミクロゲル」や「カルボキシビニルポリマー」は、しみこみの評価が高く、いつまでも肌上でぬるぬるする「サクシノグリカン」は、しみこみの評価が低いことが結果とよく相関している。
【0051】
なお、上述した各相関式における数値は、一例であり、塗布する場所、季節、温度、湿度、使用者の年代等の各種使用条件等に応じて任意に変更することができる。
【0052】
<使用性評価装置の実施形態>
次に、上述した手法を適用してαという物理量を用いて各官能評価項目を定量化し、増粘剤の使用性評価を行う使用性評価装置の例について説明する。なお、以下の説明では、一例として、化粧品の塗布プロセスのうち、上述したような塗り始めの感触を評価する使用性評価装置の構成例について説明する。
【0053】
<使用性評価装置:ハードウェア構成例>
ここで、使用性評価装置は、例えば汎用のパーソナルコンピュータ、サーバ等を用い、本発明に係る各処理をコンピュータに実行させることができる実行プログラム(使用性評価プログラム)をインストールすることにより、本発明における使用性評価を実現することができる。
【0054】
図8は、本実施形態における使用性評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図8に示す使用性評価装置10は、入力装置11と、出力装置12と、ドライブ装置13と、補助記憶装置14と、メモリ15と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)16と、ネットワーク接続装置17とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0055】
入力装置11は、ユーザが操作するキーボード及びマウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザからのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。出力装置12は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU16が有する制御プログラムによりプログラムの実行経過や結果等を表示することができる。また、出力装置12は、プリンタ等の機能を有していてもよく、その場合には、使用性評価結果等の取得可能な各種情報を紙等の印刷媒体に印刷して使用者等に提供することもできる。
【0056】
ここで、本発明において、コンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、CD−ROM等の記録媒体18等により提供される。プログラムを記録した記録媒体18は、ドライブ装置13にセット可能であり、記録媒体18に含まれる実行プログラムが、記録媒体18からドライブ装置13を介して補助記憶装置14にインストールされる。なお、記録媒体18としては、CD−ROM以外でも、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0057】
また、補助記憶装置14は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム、使用者の使用性評価結果等を蓄積し必要に応じて入出力を行うことができる。
【0058】
メモリ装置15は、CPU16により補助記憶装置14から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、メモリ装置15は、ROMやRAM(Random Access Memory)等からなる。
【0059】
CPU16は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ15により読み出され格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、使用性評価処理等における後述する各処理を実現することができる。また、CPU16は、プログラムの実行中に必要な使用者による使用性評価結果等の各種情報を出力手段12に表示するために必要な情報等を、補助記憶装置14から取得することができ、またプログラムにより実行された結果等を補助記憶装置14に格納することができる。
【0060】
ネットワーク接続装置17は、通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムをインターネット等やLAN(Local Area Network)等に代表される通信ネットワークに接続されている他の端末等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラム自体を他の端末等に提供することができる。
【0061】
上述したような装置構成により、本発明における使用性評価処理を実行することができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明における使用性評価処理を容易に実現することができる。
【0062】
<使用性評価装置:機能構成例>
次に、使用性評価装置10の機能構成例について、図を用いて説明する。図9は、使用性評価装置の機能構成の一例を示す図である。図9に示すように、使用性評価装置10は、入力手段21と、出力手段22と、蓄積手段23と、パラメータ取得手段24と、官能評価定量化手段25と、使用性評価手段26と、送受信手段27と、制御手段28とを有するよう構成されている。
【0063】
入力手段21は、例えば使用性評価装置10の使用者(ユーザ)等から、パラメータの取得指示や、官能評価定量化指示、使用性評価指示等の等の各種指示の開始や終了等の入力を受け付ける。なお、入力手段21は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス等からなる。
【0064】
出力手段22は、入力手段21により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の表示・出力を行う。なお、出力手段22は、ディスプレイやスピーカ等からなる。更に、出力手段22としてプリンタ等の機能を有していてもよく、その場合には、例えば入力された使用性評価結果等を紙等の印刷媒体に印刷して、ユーザ等に提供することもできる。
【0065】
蓄積手段23は、パラメータ取得手段24により得られる物性パラメータや官能評価定量化手段25により得られた定量化結果や、使用性評価手段26により評価された結果等を蓄積する。
【0066】
パラメータ取得手段24は、上述したように例えば水溶性増粘剤の塗布プロセスを考慮した物性パラメータを取得する。具体的には、Nutting Parameterの物性パラメータである指標αを取得する。
【0067】
次に、官能評価定量化手段25は、パラメータ取得手段24から取得したα値を用いて官能評価を予め設定された関数を用いて定量化する。具体的には、官能評価定量化手段25は、例えば塗布時において、(1)美容液のぬるつき(スコア) 、(2)肌のべたつき(スコア)、(3)肌のさっぱり感(スコア)、(4)肌へのしみこみ(スコア)として、上述した相関関係式を用いて定量化を行う。
【0068】
つまり、上述の(1)〜(4)に示す官能評価の定量化については、
(1)美容液のぬるつき(スコア)=6.6×α+4.2
(2)肌のべたつき(スコア)=4.3×α+1.9
(3)肌のさっぱり感(スコア)=−3.9×α+3.8
(4)肌へのしみこみ(スコア)=−7.1×α+3.7
として定量化を行うことができる。
【0069】
使用性評価手段26は、官能評価定量化手段25により定量化された数値に基づいて、使用性の評価を行う。具体的には、使用性評価手段26は、例えば予め設定された目的とするスコアと算出されたスコアとを比較し、その比較結果に基づいて、使用性が良好か否かを評価したり、官能評価毎に算出される数値に対応させて予め設定された5段階による評価を行ったり、算出された数値に対して目的の数値になるためのサンプルに対する増粘剤等の調整のアドバイス等を評価結果として出力することができる。なお、使用性評価手段26における評価内容と結果については、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0070】
送受信手段27は、例えばSCSI(Small Computer System Interface)ケーブルやUSB(Universal Serial Bus)ケーブル、LAN(Local Area Network)ケーブル等により、インターネット等の通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されデータの送受信が可能な他の端末等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラムを他の端末等に提供することができる。
【0071】
制御手段28は、使用性評価装置10の各構成部全体の制御を行う。具体的には、制御手段28は、ユーザ等による入力手段21からの指示等に基づいて、パラメータ取得処理や官能評価定量化処理、使用性評価処理等の各制御を行う。上述した機能を有することにより、使用性評価を効率的且つ高精度に取得することができる。
【0072】
<使用性評価処理>
次に、本実施形態における使用性評価処理手順についてフローチャートを用いて説明する。図10は、本実施形態における使用性評価処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0073】
図10に示す使用性評価処理は、まず評価対象となる水溶性増粘剤を選択し(S01)、選択された増粘剤が使用者に塗布され、その塗布時の状況から得られる物性パラメータを取得する(S02)。なお、物性パラメータとしては、Nutting Parameterの物性パラメータである指標α等を取得する。なお、α以外にも、例えばφ(さっぱり感)を取得してもよい。
【0074】
次に、S02の処理で取得した物理量であるα値を用いて官能評価を定量化する(S03)。具体的には、例えば(1)美容液のぬるつき(スコア) 、(2)肌のべたつき(スコア)、(3)肌のさっぱり感(スコア)、(4)肌へのしみこみ(スコア)として定量化を行う。
【0075】
次に、定量化された値に基づいて、評価対象の増粘剤に対する使用性を評価し(S04)、評価結果を出力する(S05)。上述の処理をコンピュータに実行させることにより、使用性評価処理を効率的且つ高精度に取得することができる。
【0076】
なお、上述した実施形態においては、Nutting Parameterを用いて説明したが、本発明においてはこのパラメータに限定されるものではなく、他の関数を用いたパラメータを適用することもできる。
【0077】
上述したように本発明によれば、増粘剤の使用時における官能評価を定量化して表現することで、客観的な基準による使用性評価を行うことができる。例えば、化粧品の塗布プロセスを反映すると考えられる物性評価へ、例えば流動特性や粘弾性特性、ゲル微細構造、摩擦特性電乾燥後塗布膜の物性等から得られる物理量を変数として用い、官能評価結果を定量的に表現する。
【0078】
具体的には、使用感触と水溶性増粘剤のレオロジー特性との関係を定量的に評価する方法を確立し、「目指す使用感触」から遡って処方設計が可能となるシステムを構築することができる。つまり、例えば増粘剤種の異なるモデル処方(ジェル状美容液)について、クリープ測定を行い、実験粘度式であるNuttingの式における各種パラメータを算出し(レオロジーパラメータを算出)、外部パネル(N=100)を用いた使用テストを行い、レオロジーパラメータと各官能評価項目の相関を検証した結果、Nuttingの式から算出される時間依存のパラメータαと、官能評価項目の「べたつき」「ぬるつき」の間に高い相関が得られるため、化粧料のべたつきを定量化できる有効な手段であると考えられる。したがって、官能評価結果を簡便に測定可能な物性値で定量化することで、製剤開発の効率化や、更には求められる増粘剤バーツの構成を提案可能なシステムの構築につなげることができる。
【0079】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】増粘剤の施術プロセスの一例を示す図である。
【図2】評価サンプルの調整例を示す図である。
【図3】各サンプルにおけるNuting Parameter測定解析結果の一例を示す図である。
【図4】αと「美容液のぬるつき」の相関検証結果の一例を示す図である。
【図5】αと「肌のべたつき」の相関検証結果の一例を示す図である。
【図6】αと「肌のさっぱり感」の相関検証結果の一例を示す図である。
【図7】αと「肌へのしみこみ」の相関検証結果の一例を示す図である。
【図8】本実施形態における使用性評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図9】使用性評価装置の機能構成の一例を示す図である。
【図10】本実施形態における使用性評価処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
10 使用性評価装置
11 入力装置
12 出力装置
13 ドライブ装置
14 補助記憶装置
15 メモリ
16 CPU
17 ネットワーク接続装置
18 記録媒体
21 入力手段
22 出力手段
23 蓄積手段
24 パラメータ取得手段
25 官能評価定量化手段
26 使用性評価手段
27 送受信手段
28 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤の塗布時の官能評価を定量化して使用性を評価する使用性評価方法において、
前記増粘剤の流動特性から予め設定された複雑流体の硬さを評価する関数を用いて得られる物性パラメータを取得するパラメータ取得ステップと、
前記パラメータ取得ステップにより得られるパラメータを用いて前記官能評価を定量化する官能評価定量化ステップと、
前記官能評価定量化ステップにより得られる数値を用いて前記増粘剤に対する使用性評価を行う使用性評価ステップとを有することを特徴とする使用性評価方法。
【請求項2】
前記パラメータ取得ステップにおいて、前記複雑流体の硬さを評価する関数としてナッティング(Nutting)式を用いて、時間依存の物性パラメータを取得することを特徴とする請求項1に記載の使用性評価方法。
【請求項3】
前記官能評価定量化ステップは、
前記増粘剤の塗布時におけるぬるつき、肌のべたつき、肌のさっぱり感、及び肌へのしみこみのうち、少なくとも1つに対して予め設定された関数に前記時間依存のパラメータを適用して定量化を行うことを特徴とする請求項2に記載の使用性評価方法。
【請求項4】
増粘剤の塗布時の官能評価を定量化して使用性を評価する使用性評価装置において、
前記増粘剤の流動特性から予め設定された複雑流体の硬さを評価する関数の物性パラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記パラメータ取得手段により得られるパラメータを用いて前記官能評価を定量化する官能評価定量化手段と、
前記官能評価定量化手段により得られる数値を用いて前記増粘剤に対する使用性評価を行う使用性評価手段とを有することを特徴とする使用性評価装置。
【請求項5】
前記パラメータ取得手段は、
前記複雑流体の硬さを評価する関数としてナッティング(Nutting)式を用いて、時間依存の物性パラメータを取得することを特徴とする請求項4に記載の使用性評価装置。
【請求項6】
前記官能評価定量化手段は、
前記増粘剤の塗布時におけるぬるつき、肌のべたつき、肌のさっぱり感、及び肌へのしみこみのうち、少なくとも1つに対して予め設定された関数に前記時間依存のパラメータを適用して定量化を行うことを特徴とする請求項5に記載の使用性評価装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の使用性評価方法を実行させるようにコンピュータを動作させることを特徴とする使用性評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−122170(P2010−122170A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298290(P2008−298290)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)