説明

使用済み注射針回収容器

【課題】注射針を抜き外して回収すること以外に、種々の工夫を凝らして使い勝手を一層向上させ、殊に、廃棄に際しての衛生面及び安全面に十分配慮した使用済み注射針回収容器を提供することを課題とする。
【解決手段】容体部1と、容体部1に装脱自在に嵌着される針分離部11とから成り、針分離部11は、注射針を注射筒から抜き外すための針分離手段14と、注射針を外した注射筒を落とし込むスロット17とを備える分離部本体12と、分離部本体12にヒンジ連結される蓋体13とで構成され、蓋体13の閉蓋時において互いに当接し合う蓋体13と分離部本体12の上面に、互いに係着し合う一時的係着手段22、23と恒久的係着手段26、27とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み注射針回収容器に関するものであり、より詳細には、使用後の注射器を廃棄するに当たり、注射筒と注射針とを分離した上で回収する使用済み注射針回収容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている注射針は、二次感染防止等の見地から、そのほとんどが使い捨てであり、使用後は、まとめて廃棄されて焼却処分される。使用後の注射針の廃棄に当たっては、鋭利な針先で指先を刺して傷つけたり二次感染を招いたりすることがないよう、注射筒と注射針とを分離した上で廃棄される。そのため、注射筒と注射針とを分離する機構を備えた注射針回収容器が種々提案されている。
【0003】
従来提案されている注射針回収容器を大別すると、単に注射針を抜き外す機構を有する簡易な構成のもの(例えば、特開2007−82606号公報、特開2006−204574号公報、実開平2−6055号公報等)と、注射針を抜き外す機構の他に、加熱溶解処理する機構を備えた比較的複雑で大型のもの(例えば、特開2006−296819号公報等)とに分けられる。
【0004】
本発明は前者、即ち、注射針を抜き外す分離機構を有する簡易な構成のものである。従来提案されている注射針の分離機構を有する簡易な構成のものの多くは、容体の上部に、注射針先端部の挿入孔と該挿入孔に連続する摺動溝から成る注射針の分離部を備えていて、先端部を挿入孔に差し込んだ注射器を、そのまま摺動溝内にずらして移動させた後引き上げることにより、注射針を抜き外すものである。
【0005】
この従来の、注射針の分離機構を有する構成簡易な使用済み注射針回収容器の場合は、注射針に手を触れることなく注射器から注射針を抜き外し、分離部の下の容体内に注射針を、あるいは、注射針と注射筒とを回収する、という基本的機能以外に、さしたる工夫がなされておらず、特に、回収完了後に容器ごと廃棄する際の二次感染防止対策や安全面に対する配慮に欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−82606号公報
【特許文献2】特開2006−204574号公報
【特許文献3】実開平2−6055号公報
【特許文献4】特開2006−296819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の構成簡易な使用済み注射針回収容器の場合は、注射針を抜き外して回収すること以外に、さしたる工夫がなされていなかったので、本発明は、注射針を抜き外して回収すること以外に、種々の工夫を凝らして使い勝手を一層向上させ、殊に、廃棄に際しての二次感染防止対策及び安全面に対する配慮が十分になされた使用済み注射針回収容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、容体部と、前記容体部に装脱自在に嵌着される針分離部とから成り、前記針分離部は、注射針を注射筒から抜き外すための針分離手段と、注射針を抜き外した注射筒を落とし込むスロットとを備える分離部本体と、前記分離部本体にヒンジ連結される蓋体とで構成され、前記蓋体の閉蓋時において互いに当接し合う前記蓋体と前記分離部本体の上面に、互いに係着し合う一時的係着手段と恒久的係着手段とを設けたことを特徴とする使用済み注射針回収容器である。
【0009】
一実施形態においては、前記一時的係着手段は、前記蓋体と前記分離部本体の上面のうちの一方の側に形成される突起と、その他方の側に形成されて前記突起を嵌入保持する一時的係止孔とから成り、前記恒久的係着手段は、前記蓋体の端部に形成される係止突部と、前記本体の上面に形成される、前記係止突部の最大幅よりも長さが短い恒久係止孔とから成る。
【0010】
一実施形態においては、前記係止突部は前記蓋体の端縁に突設され、恒久閉蓋時に折曲げて前記恒久係止孔内に挿入されて恒久的に係止される。
【0011】
一実施形態においては、前記分離部本体の上面周縁に、閉蓋時における蓋体の折り返し部分を除いて囲壁が形成されて、前記蓋体が、閉蓋時にその上面が前記囲壁の上面よりも下に位置する状態にて前記囲壁内に収まるようにされ、前記囲壁は前記容体部の下部が収まる大きさとされる。
【0012】
一実施形態においては、前記分離部本体の上面に凹陥部が形成されると共に、前記蓋体の裏面に、前記凹陥部内に嵌合する嵌合部が形成され、前記針分離手段と前記スロットが前記凹陥部内に設けられる。
【0013】
一実施形態においては、前記スロットに、その開口部を塞ぐように一方の開口縁から斜め下方に延びる跳ね上がり防止板が配備される。
【0014】
一実施形態においては、前記蓋体の端縁に指掛用突部が形成されると共に、前記本体の上面の前記指掛用突部対応部に窪みが形成される。
【0015】
一実施形態においては、前記針分離手段は、注射針を構成する針管を支持する針基の端部フランジの径よりも大径の挿入孔と、前記挿入孔に連続するように形成される摺動溝とから成り、前記摺動溝の幅は、前記針基の端部フランジの径よりも小であって、前記注射筒先端の針基取付部の径よりも大となるように設定される。また、前記針分離手段は、前記挿入孔を内側にして一対配設される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述したとおりであって、容体部と、前記容体部に装脱自在に嵌着される針分離部とから成り、前記針分離部は、注射針を注射筒から分離するための針分離手段と、注射針を取り外した注射筒を落とし込むスロットとを備える分離部本体と、前記分離部本体にヒンジ連結される蓋体とで構成され、前記蓋体の閉蓋時において互いに当接し合う前記蓋体と前記分離部本体の上面に、互いに係着し合う一時的係着手段と恒久的係着手段とを設けたことを特徴とするものであるため、容体部が満杯になるまでは、一時的係着手段を利用して蓋体を反復開閉でき、容体部が満杯になって容器ごと廃棄する際には、恒久的係着手段を用いて開蓋不可状態にすることができるので、不用意に蓋体が開いて注射針等が手に触れるような事態が発生するおそれがなく、衛生管理上及び安全保持上の配慮が十分なる効果がある。
【0017】
上記効果に加え、請求項4に係る発明においては、スタッキングが可能となって移送や保管に便なる効果があり、請求項6に係る発明においては、分離されて落下した注射針に残存していた血液が、落下の衝撃で跳ね上がってスロットの開口部から外部に出て、操作者の手に付着したりすることが防止される効果があり、請求項7に係る発明においては、蓋体の開閉操作が容易となる効果があり、請求項9に係る発明においては、針外し操作を容器の左右いずれの側に向けても行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る注射針回収容器の、針分離部の蓋体を開けた際の斜視図である。
【図2】本発明に係る注射針回収容器における針分離部の、蓋体を開けた際の平面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図2におけるB−B線断面図(恒久閉蓋時)である。
【図5】注射器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る注射針回収容器の開蓋時の斜視図であり、そこに示されるように、本発明に係る注射針回収容器は、容体部1と、容体部1の上に装脱自在に嵌めつけられる分離部11とから成り、分離部11は、分離部本体12と、分離部本体12にヒンジ連結される蓋体13とで構成される。
【0020】
分離部本体12は、注射針31を注射筒32から分離するための針分離手段14と、注射針31を取り外した注射筒(シリンジ及びプランジャ)32を落とし込むスロット17とを備える。針分離手段14は、従来のものと同様の構成であって差し支えなく、例えば、注射針31を構成する針管を支持する針基33の端部フランジ34の径よりも大径の挿入孔15と、挿入孔15に連続するように形成される摺動溝16とから成るものとされる。摺動溝16の幅は、針基33の端部フランジの径よりも小となり、且つ、注射筒32の先端の針基嵌着部34の径よりも大となるように設定される。
【0021】
好ましい実施形態においては、針分離手段14が一対、図示したように、それぞれ挿入孔15が内側にくるようにして配設される。このようにした場合は、後述する針外し操作を、本容器の左右いずれの側に向けても行うことが可能となる。
【0022】
好ましい実施形態においては、注射針31を取り外したプランジャ35を含む注射筒32を落とし込むスロット17には、その開口部を塞ぐようにその一方の開口縁から斜め下方に延びる跳ね上がり防止板17aが設けられる。この跳ね上がり防止板17aは、分離されて落下した注射針31に残存していた血液が、落下の衝撃で跳ね上がってスロット17の開口部から外部に出て、操作者の手に付着したりすることを防止するためのものである。
【0023】
蓋体13は、通例、薄肉化して形成されるヒンジ部18を介して分離部本体12に連設され、閉蓋時にヒンジ部18から回動して分離部本体12上面を被覆する。好ましい実施形態においては、分離部本体12の上面に凹陥部19が形成されると共に、蓋体13の裏面に、凹陥部19内に嵌合する嵌合部(厚肉部)20が形成される。閉蓋時にこの嵌合部20が凹陥部19内に密に嵌合することにより、安定した閉蓋状態が保持される。なお、針分離手段14とスロット17は、凹陥部19内に設けられる。
【0024】
更に好ましい実施形態においては、分離部本体12の上面周縁に、閉蓋時における蓋体13の折り返し部分を除いて囲壁21が形成され、蓋体13が閉蓋時において囲壁21内に収まるようにされる。そして、その際に、蓋体13の上面が囲壁21の上面よりも下位に位置するように設定される。
【0025】
蓋体13と分離部本体12の上面には、一時的係着手段と恒久的係着手段とが形成される。一時的係着手段は、例えば、蓋体13の裏面と分離部本体12の上面のいずれか一方の側(図示した例では、蓋体13の裏面)に形成される突起22と、その他方の側(図示した例では、分離部本体12の上面)に形成されて、閉蓋時に突起22を嵌入保持する一時的係止孔23とから成るものとされる。
【0026】
図示した実施形態においては、蓋体13の端縁に指掛用突部24が形成されると共に、分離部本体12の上面の指掛用突部24対応部に窪み25が形成される。この窪み25は、特に開蓋操作の際に、指掛用突部24に指を掛けやすくするためのものである。この実施形態においては、突起22は指掛用突部24の裏面に設けられている。更に、指掛用突部24の端部に指を掛けやすくするために、該端部を、閉蓋時において斜め上向きとなるように傾斜させることもある(図3参照)。
【0027】
恒久的係着手段は、例えば、蓋体13の端部に形成される係止突部26と、分離部本体12の上面に形成されて係止突部26を嵌入させる恒久係止孔27とから成るものとされる。係止突部26は、先端から基端に向かって拡開する台形状のもので、その幅方向に若干弾性変形可能なものであり、図示した実施形態においては、蓋体13の端縁に、指掛用突部24を挟んで一対突設されている。また、好ましい実施形態においては、係止突部26の基部は、薄肉化する等により折曲可能にされる。恒久係止孔27は、係止突部26の最大幅(無負荷時の幅)よりも若干短い長さに設定される。
【0028】
この恒久的係着手段は、本容器を廃棄するに際して蓋体13を閉じた後、蓋体13が不用意に開き、回収物がこぼれ出ることを防止するために設けられるもので、図示した実施形態の場合は、係止突部26をその基部から裏面側に折曲した状態で蓋体13を閉め、係止突部26を恒久係止孔27内に差し込む。その際、恒久係止孔27の長さが係止突部26の最大幅より短く設定されているために押し込みに抵抗があるが、係止突部26は幅方向に若干弾性変形可能であるため、強制的に押し込むと、係止突部26は、幅方向に縮まって恒久係止孔27を通り抜けることができる。
【0029】
そして、係止突部26は、恒久係止孔27通過後その復元力によって直ちに元の状態に拡がって、恒久係止孔27の内側縁辺に引っ掛かるため、以後恒久係止孔27から抜けなくなる(図7参照)。かくして、本容器を廃棄するに際して蓋体13を閉じた後、蓋体13が不用意に開いて回収物がこぼれ出ることが確実に防止され、以て、回収した注射針31に手が触れたり、床に残液等がこぼれたりすることに起因する二次感染等のおそれは皆無となる。
【0030】
本容器の使用に際しては、指掛用突部24に指を掛けて蓋体13を開け、使用済みの注射器の注射針31部分を挿入孔15に差し込み、そのまま横にずらして摺動溝16内に移動させた後、注射筒32を引き上げることにより注射針31を外す。この操作は、従来の回収容器の場合と同じである。分離された注射針31は、そのまま落下して容体部1内に回収される。その際、スロット17に跳ね上がり防止板17aを設けてあるため、注射針31に残存していた血液が、落下の衝撃でスロット17外に飛び出ることが防止される。また、注射針31を抜き取られたプランジャ35を含む注射筒32は、スロット17内に落とし込まれることにより、容体部1内に回収される。
【0031】
この作業終了後は、蓋体13を閉め、突起22を一時的係止孔23内に嵌入させることにより、開閉可能状態が維持され、次の分離作業まで待機となる。この分離作業が反復されて容体部1内が満杯になると、回収物は容器ごと廃棄される。この廃棄に際しては、蓋体13を閉じる際に、係止突部26を折り曲げて恒久係止孔27内に強制押入する。これにより、上述したように、係止突部26が恒久係止孔27の内側縁辺にロックされて、抜けなくなる。
【0032】
また、分離部本体12の上面周縁に囲壁21が設けられ、閉蓋時には、蓋体13の上面が囲壁21の上面よりも下位に位置する状態となり、且つ、囲壁21は容体部1の下部が収まる大きさとされるため、その部分に別の本容器を安定状態に重ねることができ、移送時や保管時に便となる。
【符号の説明】
【0033】
1 容体部
11 分離部
12 分離部本体
13 蓋体
14 針分離手段
15 挿入孔
16 摺動溝
17 スロット
17a 跳ね上がり防止板
18 ヒンジ部
19 凹陥部
20 嵌合部
21 囲壁
22 突起
23 一時的係止孔
24 指掛用突部
25 窪み
26 係止突部
27 恒久係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容体部と、前記容体部に装脱自在に嵌着される針分離部とから成り、
前記針分離部は、注射針を注射筒から抜き外すための針分離手段と、注射針を取り外した注射筒を落とし込むスロットとを備える分離部本体と、前記分離部本体にヒンジ連結される蓋体とで構成され、
前記蓋体の閉蓋時において互いに当接し合う前記蓋体と前記分離部本体の上面に、互いに係着し合う一時的係着手段と恒久的係着手段とを設けたことを特徴とする使用済み注射針回収容器。
【請求項2】
前記一時的係着手段は、前記蓋体と前記分離部本体の上面のうちの一方の側に形成される突起と、その他方の側に形成されて前記突起を嵌入保持する一時的係止孔とから成り、前記恒久的係着手段は、前記蓋体の端部に形成される係止突部と、前記本体の上面に形成される、前記係止突部の最大幅よりも長さが短い恒久係止孔とから成る、請求項1に記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項3】
前記係止突部は前記蓋体の端縁に突設され、恒久閉蓋時に折曲げて前記恒久係止孔内に挿入されて恒久的に係止される、請求項1又は2に記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項4】
前記分離部本体の上面周縁に、閉蓋時における蓋体の折り返し部分を除いて囲壁が形成されて、前記蓋体が、閉蓋時にその上面が前記囲壁の上面よりも下位に位置する状態にて前記囲壁内に収まるようにされ、前記囲壁は前記容体部の下部が収まる大きさとされる、請求項1乃至3のいずれかに記載の注射針回収容器。
【請求項5】
前記分離部本体の上面に凹陥部が形成されると共に、前記蓋体の裏面に、前記凹陥部内に嵌合する嵌合部が形成され、前記針分離手段と前記スロットが前記凹陥部内に設けられる、請求項1乃至4のいずれかに記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項6】
前記スロットに、その開口部を塞ぐように一方の開口縁から斜め下方に延びる跳ね上がり防止板が配備された、請求項1乃至5のいずれかに記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項7】
前記蓋体の端縁に指掛用突部が形成されると共に、前記本体の上面の前記指掛用突部対応部に窪みが形成された、請求項1乃至6のいずれかに記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項8】
前記針分離手段は、注射針を構成する針管を支持する針基の端部フランジの径よりも大径の挿入孔と、前記挿入孔に連続するように形成される摺動溝とから成り、前記摺動溝の幅は、前記針基の端部フランジの径よりも小であって、前記注射筒先端の針基取付部の径よりも大となるように設定される、請求項1乃至7のいずれかに記載の使用済み注射針回収容器。
【請求項9】
前記針分離手段は、前記挿入孔を内側にして一対配設される、請求項8に記載の使用済み注射針回収容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165894(P2012−165894A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29448(P2011−29448)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(500205840)株式会社 エポックケミカル (6)
【Fターム(参考)】