説明

使用済核燃料再処理方法

【課題】
使用済核燃料の再処理設備の安定的運用を確保する。
【解決手段】
フッ化装置2で使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させたフッ化物中のプルトニウムフッ化物をPu固定化装置4内で固定化剤10により固定化させ、前記固定化されたプルトニウムフッ化物は固定化剤とともに酸化物転換装置7で水蒸気と反応させて混合酸化物燃料の原料とし、固定化されなかったものはU精製装置6にて六フッ化ウランに再生される。前記固定化する過程で採用される固定化剤は、内部に固定化剤の母材UO2 を充填したPu固定化装置4のその内部を真空ポンプ5で引いて除湿し、除湿したその内部にて、母材を固定化剤に調製するための反応流体であるフッ素を流量コントローラ3を通じてその内部に流して除湿乾燥環境下で調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所で発生する使用済核燃料の再処理方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
使用済核燃料を再処理し、使用済核燃料中に含まれるウラン及びウランとプルトニウムの混合物を取出す方法には、フッ化物揮発法と呼ばれる方法がある。フッ化物揮発法において、使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させ、揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を取出す方法として、UO22等の固定化剤にプルトニウムフッ化物を固定化させ、固定化剤と共にプルトニウムフッ化物を取出す方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−233066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プルトニウムフッ化物の固定化剤にUO22を用いた特開2004−233066号公報に記載の方法は、UO22にPuF6 を選択的に固定化することができ、また、プルトニウムフッ化物を固定化したUO22を酸化物転換することで、ウランとプルトニウムの混合酸化物を得ることができ、得られたウランとプルトニウムの混合酸化物を混合酸化物燃料(MOX燃料)の原料にできるなど、優れた使用済核燃料再処理方法である。しかしながら、固定化剤であるUO22は吸湿性が高く、取扱いに注意しなければ、水分を含むことによる固定化剤としての性能低下や、水分の使用済核燃料再処理設備への混入による、使用済核燃料再処理機器などの腐食などが懸念される。
【0005】
従って、本発明の目的は、プルトニウムフッ化物の固定化剤に極力水分が入り込まないようにしながら、使用済核燃料の再処理ができる方法やプルトニウムフッ化物の固定化剤を極力水分が入り込まないように調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段の基本要件は、使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させるフッ化工程と、前記フッ化工程で揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する工程を備えた使用済核燃料再処理方法において、前記固定化する工程の前に、前記固定化の処理を行う系統内で前記固定化を行う場所と前記母材とに除湿処理を施し、前記系統内で前記母材を前記固定化剤に調製する反応剤流体を作用させることで前記母材に前記固定化剤を調製する工程を有する使用済核燃料再処理方法である。
【0007】
更には、プルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する系統内に、前記固定化剤の母材を前記系統内に入れたまま、除湿処理を施し、前記系統内で前記系統内の前記母材に前記母材を固定化剤に調製する反応剤流体を作用させて前記固定化剤を調製する使用済核燃料再処理に用いる固定化剤の調製方法である。
【0008】
更には、使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させるフッ化工程と、前記フッ化工程で揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する工程と、前記固定化されたプルトニウムフッ化物を処理する酸化物転換工程とを備えた使用済核燃料再処理方法において、前記固定化の工程の前に、前記固定化で使用する固定化装置内部に前記固定化剤の母材を充填し、前記母材を充填した前記固定化装置内部を除湿し、前記母材を加熱しながら前記母材を前記固定化剤に調製する反応剤流体を作用させることで、前記母材の少なくとも表面に前記固定化剤を調製する工程を有することを特徴とする使用済核燃料再処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プルトニウムフッ化物の固定化剤が除湿された系統内部で取扱われることになるため、固定化剤の水分が増加する機会を少なくして、固定化剤の性能が安定する。
【0010】
また、その固定化剤を用いた使用済核燃料再処理方法を実施する各設備に水分を極力混入させないように出来るので、使用済核燃料再処理方法を実施する機器の腐食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
使用済核燃料にフッ素を作用させ揮発させたフッ化物から、プルトニウムフッ化物を固定化して取出す工程で使用する、プルトニウムフッ化物固定化装置(以下、Pu固定化装置とも言う。)に、プルトニウムフッ化物の固定化剤の母材となる物質をあらかじめ充填しておき、Pu固定化装置内を密閉した状態にした後に、水分を除去し、母材にフッ素ガスを作用させてプルトニウムフッ化物の固定化剤を調製する。
【実施例1】
【0012】
本発明に係る使用済核燃料再処理方法の第1実施例を図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
図1は、フッ化物揮発法による使用済核燃料再処理方法において使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させるフッ化工程と、フッ化工程で揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を固定化剤と共に取出す取出し工程とを備えた使用済核燃料再処理方法の構成説明図である。
【0014】
まず、本実施例における使用済核燃料再処理方法の説明に先立ち、図1の説明をする。本実施例では、原子力発電所から取出される使用済核燃料は、使用済核燃料脱被覆装置1にて、燃料被覆管からの分離と使用済核燃料の粉体化を行った後に、使用済核燃料脱被覆装置1とフッ化装置2を結んだ配管を通じて、不活性ガスによりフッ化装置2へ移送される。または、使用済核燃料脱被覆装置1からフッ化装置2へ密閉されたコンテナにより移送してもよい。
【0015】
フッ化装置2では、粉体化した使用済核燃料にフッ素ガスを作用させ、使用済核燃料をフッ化させるフッ化工程が実施される。使用済核燃料をフッ化させる際は、フッ素供給ライン8は使用しない。フッ化装置2内部で、使用済核燃料に含まれていたウラン及びプルトニウムは、UF6 およびPuF6 となり揮発し(式(1)および(2))、揮発した核分裂生成物のフッ化物などとともに、Pu固定化装置4に導入されて固定化工程を受ける。
【0016】
使用済核燃料に含まれる物質のうち、フッ化装置2において揮発しなかったものは、後段の酸化物転換装置7へフッ化装置2と酸化物転換装置7を結んだ配管を通じて、不活性ガスにより送られて酸化物転換工程を受ける。または、フッ化装置2から酸化物転換装置7へ密閉されたコンテナで移送してもよい。
【0017】
UO2+3F2 → UF6+O2 (1)
PuO2+3F2 → PuF6+O2 (2)
Pu固定化装置4には、プルトニウムフッ化物を固定化する固定化剤としてUO22が充填されており、UO22によりPuF6はPuF4として固定化される(式(3))。
【0018】
2PuF6+UO22 → PuF4+2UF6+2O2 (3)
UF6 及び揮発性の核分裂生成物のフッ化物などは、Pu固定化装置4を通過し、U精製装置6で核分裂生成物のフッ化物などが取除かれて、UF6 として回収されるというU精製工程を受ける。
【0019】
Pu固定化装置4でUO22により固定化されたPuF4 及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22は共に取出され、フッ化装置で揮発しなかった残渣と共に酸化物転換装置7へPu固定化装置4と酸化物転換装置7を結んだ配管を通じて、不活性ガスにより移送される。または、Pu固定化装置4から酸化物転換装置7へ、密閉されたコンテナにより移送してもよい。酸化物転換装置7では、UO22により固定化されたPuF4 及びUO22に水蒸気を作用させ、混合酸化物UO2/PuO2として回収する酸化物転換工程が成される。混合酸化物UO2/PuO2は混合酸化物燃料(MOX)の原料として利用される。酸化物転換装置7で回収されるフッ素は、再利用することも可能である。
【0020】
次に、本実施例に係る使用済核燃料再処理方法において、Pu固定化装置4について説明する。図2は本実施例において、Pu固定化装置4を図2(a)で、及びプルトニウムフッ化物固定化剤を図2(b)で示している。
【0021】
Pu固体化装置4は、図2(a)に示すように、プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の内部にプルトニウムフッ化物固定化剤10が、プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の周囲に、装置加熱用のヒータ11が備えられている。プルトニウムフッ化物固定化剤10として、UO2 の粒にフッ素を反応させ表面及び表面付近をUO22に化学変化させた粒を使用する。
【0022】
図2(b)は、プルトニウムフッ化物固定化剤10の断面図を示しており、内部はUO2(符号17)であり、表面及び表面付近がUO22(符号18)となっている。
【0023】
プルトニウムフッ化物固定化装置4に流体を導入する流体入口12は、プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の下部に、流体出口13は上部に取付けられている。
【0024】
プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の上部には、UO2 の粒を充填するための開閉蓋14が開閉自在に備わり、プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の内部には固定化剤が自由には通り抜けれない程度の穴が多数開けられた分離板15が水平に備わり、プルトニウムフッ化物固定化装置4のケース9の下部には、固定化され除去されたプルトニウムフッ化物とUO22(符号19)を酸化物転換装置7へ送りだすための開閉蓋16が開閉自在に備えられている。
【0025】
本実施例では、Pu固定化装置4の内部でプルトニウムフッ化物を固定化するUO22を調製した後に、Pu固定化装置4をプルトニウムフッ化物の固定化除去のために運転する。そこで、Pu固定化装置4内部で、プルトニウムフッ化物固定化剤10を調製する方法を説明する。
【0026】
まず、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22の母剤となるUO2 の粒をPu固定化装置4の開閉蓋14を開いて開かれた箇所からケース9内に充填して分離板15上に堆積保持する。次に、弁30,33を閉じ、弁31,32を開いてPu固定化装置4の内部を真空ポンプ5により真空引きするなどしてケース9内の水分を除去し、ケース9内とケース9内の母材に除湿処理を施す。
【0027】
その後に、ヒータ11により、UO2 の粒を約300℃程度に加熱しながら、弁32を閉じて弁30,31,33開いて、流体入口12より、Pu固定化装置4にフッ素ガスを流入させる。真空ポンプ5は、U精製装置6の後段に取付け、Pu固定化装置4とU精製装置6を同時に真空引きすることができるようにしてもよい。
【0028】
この際、Pu固定化装置4に流入させるフッ素ガスは、フッ素供給ライン8より流入させ、流量コントローラ3を通過させて、Pu固定化装置4へ流入させる。フッ素ガスの流量は、プルトニウムフッ化物固定化装置の上流側に備えられた流量コントローラ3によって調整する。流入させるフッ素ガスの流量を調整することにより、図2(b)に示すようにプルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 (符号17)の表面及び表面付近にプルトニウムフッ化物を固定化するUO22(符号18)が調製される。
【0029】
このような調整作業は、少なくともフッ化装置2から固定化装置4がUF6 およびPuF6を受け入れる前に予め完了しておくことが好ましいが、使用済燃料再処理が開始される前に完了しおいても良い。
【0030】
プルトニウムフッ化物を固定化するUO22を母材であるUO2 の表面及び表面付近に調製したのちに、Pu固定化装置4を、プルトニウムフッ化物を固定化するために使用する。固定化する際には、ヒータ11により、プルトニウムフッ化物固定化剤10の温度を約150℃程度に加熱する。六フッ化物となって揮発したUF6 およびPuF6 は、Pu固定化装置4に導入されると、PuF6 が選択的にUO22により固定化され、UF6 及びその他の揮発性フッ化物はU精製装置6へPu固定化装置4とU精製装置6を結んだ配管を通じて送られる。
【0031】
開閉蓋14から攪拌棒をケース9内に差し込んでケース9内の固定化作用を終えた固定化剤10を攪拌することで、固定化剤10に固定化され除去されたプルトニウムフッ化物とUO22(符号19)は分離板15の穴を通じて落下してケース9の底に溜まる。それを、開閉蓋16を開くことで酸化物転換装置7へ送り込む。
【0032】
本実施例においては、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22を、真空引きするなどして水分を除去した密閉系の内部で調製した後に、プルトニウムフッ化物固定化剤10として使用するため、UO22が大気に触れず、吸水性の高いUO22が水分を吸収することがなく、固定化剤としての性能の低下や、水分を取込むことによる機器の腐食等を回避することができる。
【0033】
また、本実施例においては、使用済核燃料をフッ化させて揮発したガスと同じ流路に、フッ素ガスを流してプルトニウムフッ化物を固定化するUO22を調製するため、使用済核燃料をフッ化させて揮発したガスの流路に、効率的にプルトニウムフッ化物固定化剤を配置することができる。
【実施例2】
【0034】
本実施例に係る使用済核燃料再処理方法に関する第2の実施例を、図3を用いて説明する。本実施例は、第1の実施例として解説した使用済核燃料再処理方法とその設備において、プルトニウムフッ化物固定化装置4のケース9の外部にケース9に振動を伝えるように加振機20を備えたものである。その他は第1実施例と同じである。分離板15には、プルトニウムフッ化物固定化剤から表面及び表面付近のUO22を取除いたUO2 (符号17)よりも径の小さい穴が複数開いている。
【0035】
加振機20は必要に応じて複数個取付けることができるが、少なくとも一つは分離板
15取付け位置付近に取付ける。また、流体入口12をプルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の側面かつ分離板15取付け位置よりも下方に備えている。
【0036】
本実施例に係る使用済核燃料再処理方法について説明する。図3は、本実施例において、Pu固定化装置4の内部で、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製されたプルトニウムフッ化物を固定化するUO22により固定化したプルトニウムフッ化物を、UO22と共にプルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 と分離した状態を示している。
【0037】
本実施例では、第1の実施例と同様に、フッ化物揮発法を利用した使用済核燃料の再処理方法において、プルトニウムフッ化物固定化剤10を、Pu固定化装置4の内部で調製した後に、プルトニウムフッ化物を、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製したUO22により固定化させる。
【0038】
本実施例は、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製されたUO22によりプルトニウムフッ化物を固定化した後に、加振機20を用いてケース9に振動を加えてプルトニウムフッ化物固定化剤10を振動させることで、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22を、プルトニウムフッ化物と共に、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2から振るい落とし除去する。
【0039】
分離板15は、分離板15取付け位置付近に取付けた加振機20によりケース9を介して強制的に振動しているため、分離板15は振動ふるいの役割を果たし、UO2 (符号
17)と、除去されたプルトニウムフッ化物及びUO22(符号19)は分離板15の目詰まりを起こすことなく支障なく分離される。
【0040】
除去されたプルトニウムフッ化物とUO22(符号19)は、開閉蓋16を開けて酸化物転換装置7にPu固定化装置4と酸化物転換装置7を結んだ配管を通じて不活性ガスにより移送されるか、またはPu固定化装置4から酸化物転換装置7へ、密閉されたコンテナにより移送され、残ったUO2(符号17) は、再びフッ素と作用させて表面及び表面付近に、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22(符号18)を調製し、再利用する。
【0041】
Pu固定化装置4内部のUO2 の残量が少なくなってきた場合は、Pu固定化装置4の開閉蓋14を開いてケース9内に分離板15の穴を通過できない程度の粒径の粒状のUO2を追加補充する。
【0042】
本実施例においては、分離板15及び加振機20を備えていることにより、プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22を、プルトニウムフッ化物固定化剤10の母材であるUO2 と分離することができる。
【0043】
プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22のみを分離回収することにより、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22に調製されなかったプルトニウムフッ化物固定化剤10の母材であるUO2を再度利用することができるため、UO2の使用量を節約することができる。
【0044】
また、プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22のみを分離回収した後は、プルトニウムフッ化物固定化装置の内部には、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 のみが残ることにより、系の密閉状態を開放し、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 を追加するなどの作業を行う際に、吸湿性の強い
UO22が存在しないため、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22が水分を吸収することを防ぎ、固定化剤としての性能の低下や、水分を取込むことによる使用済核燃料再処理施設内の機器の腐食等を回避することができる。
【実施例3】
【0045】
本実施例に係る使用済核燃料再処理方法に関する第3の実施例を、図4を用いて説明する。本実施例は、第1の実施例に記載した使用済核燃料再処理方法とその設備において、プルトニウムフッ化物固定化装置4のケース9内部に、分離板15と撹拌軸21及び撹拌軸21に取付けられた撹拌アーム22を、プルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の外部に撹拌軸21を回転させるためのモータ23を備えたものである。その他は第1実施例と同じである。分離板15には、プルトニウムフッ化物固定化剤から表面及び表面付近のUO22を取除いたUO2 よりも径の小さい穴が複数開いている。
【0046】
撹拌アーム22は、Pu固定化装置4の内部をほぼ均等に撹拌するために、必要に応じて複数個取付けることができるが、少なくとも一つの撹拌アームは、分離板15のすぐ上に備えられている。また、流体入口12をプルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の側面かつ分離板15取付け位置よりも下方に備えている。流体出口13は、撹拌軸21及びモータ23と干渉することがない位置で、かつプルトニウムフッ化物固定化装置ケース9の上部に備えられている。
【0047】
本実施例に係る使用済核燃料再処理方法について説明する。図4は、本実施例において、Pu固定化装置4の内部で、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製されたプルトニウムフッ化物を固定化するUO22により固定化したプルトニウムフッ化物を、UO22と共にプルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 と分離した状態を示している。尚、図4は撹拌軸21及び撹拌アーム22の構造がわかりやすいように、プルトニウムフッ化物固定化剤を省略した図である。
【0048】
本実施例では、第1の実施例と同様に、フッ化物揮発法を利用した使用済核燃料の再処理方法において、プルトニウムフッ化物固定化剤を、Pu固定化装置4内部で調製した後に、プルトニウムフッ化物を、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製したUO22により固定化させる。
【0049】
本実施例は、プルトニウムフッ化物固定化剤の表面及び表面付近に調製されたUO22によりプルトニウムフッ化物を固定化した後に、モータ23を運転し、撹拌軸21を回転させ、撹拌アーム22でPu固定化装置4内部のプルトニウムフッ化物固定化剤を撹拌することで、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22を、プルトニウムフッ化物と共に、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2から除去する。
【0050】
除去されて分離板15の上に蓄積するUO22及びプルトニウムフッ化物は、分離板
15のすぐ上に取付けた撹拌アームにより強制的に分離板15の下方へ掻き落とされるため、UO2 と、除去されたプルトニウムフッ化物及びUO22(符号19)は分離される。除去されたプルトニウムフッ化物とUO22(符号19)は、開閉蓋16をあけて、
Pu固定化装置4と酸化物転換装置7を結んだ配管を通じて、不活性ガスによる移送、またはPu固定化装置4から酸化物転換装置7へ、密閉されたコンテナによる移送により酸化物転換装置7に送られ、残ったUO2 は、再びフッ素と作用させて表面及び表面付近に、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22を調製し、再利用する。Pu固定化装置4内部のUO2 の残量が少なくなってきた場合は、Pu固定化装置4の開閉蓋14を開いてケース9内にUO2 を追加補充する。
【0051】
本実施例においては、分離板15と撹拌軸21と撹拌アーム22及びモータ23を備えていることにより、プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO2F2を、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 と分離することができる。プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22のみを分離回収することにより、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22に調製されなかったプルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 を再度利用することができるため、UO2 の使用量を節約することができる。
【0052】
また、プルトニウムフッ化物及びプルトニウムフッ化物を固定化するUO22のみを分離回収した後は、Pu固定化装置4の内部には、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 のみが残ることにより、系の密閉状態を開放し、プルトニウムフッ化物固定化剤の母材であるUO2 を追加するなどの作業を行う際に、吸湿性の強いUO22が存在しないため、プルトニウムフッ化物を固定化するUO22が水分を吸収することを防ぎ、固定化剤としての性能の低下や、水分を取込むことによる使用済核燃料再処理施設内の機器の腐食等を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、使用済核燃料の再処理において用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施例による使用済核燃料再処理方法を実施する設備の系統構成図である。
【図2】第1の実施例における、使用済核燃料再処理方法に用いるプルトニウムフッ化物固定化装置の一部断面表示による立面図である。
【図3】本発明の第2の実施例における、使用済核燃料再処理方法に用いるプルトニウムフッ化物固定化装置の一部断面表示による立面図である。
【図4】本発明の第3の実施例における、使用済核燃料再処理方法に用いるプルトニウムフッ化物固定化装置の一部断面表示による立面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 使用済核燃料脱被覆装置
2 フッ化装置
3 流量コントローラ
4 Pu固定化装置
5 真空ポンプ
6 U精製装置
7 酸化物転換装置
8 フッ素供給ライン
9 プルトニウムフッ化物固定化装置ケース
10 プルトニウムフッ化物固定化剤
11 ヒータ
12 流体入口
13 流体出口
14,16 開閉蓋
15 分離板
17 UO2
18 UO22
19 除去されたプルトニウムフッ化物とUO22
20 加振機
21 撹拌軸
22 撹拌アーム
23 モータ
30,31,32,33 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させ、前記作用で揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する過程を備えた使用済核燃料再処理方法において、
前記固定化の前に、前記固定化を行う装置内に前記固定化剤の母材を入れた状態で、前記装置内に除湿を施し、前記装置内で、前記母材に、前記母材を前記固定化剤に調製する反応剤流体を作用させ、もって前記母材に前記固定化剤を調製する過程を有する使用済核燃料再処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記母材はウラン酸化物であり、前記母材に作用させる反応剤流体はフッ素であり、前記固定化剤は前記ウラン酸化物に該フッ素を作用させて調製したフッ化ウラニルであることを特徴とする使用済核燃料再処理方法。
【請求項3】
プルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する装置内に、前記固定化剤の母材を前記装置内に入れたまま、前記装置内に除湿を施し、前記装置内で、前記装置内の前記母材に、前記母材を固定化剤に調製する反応剤流体を作用させて、前記固定化剤を調製する使用済核燃料再処理に用いる固定化剤の調製方法。
【請求項4】
請求項3において、前記母材はウラン酸化物であり、前記母材に作用させる反応剤流体はフッ素であり、前記固定化剤は前記ウラン酸化物に該フッ素を作用させて調製したフッ化ウラニルであることを特徴とする使用済核燃料再処理に用いる固定化剤の調製方法。
【請求項5】
使用済核燃料にフッ素を作用させて揮発させ、前記作用で揮発したフッ化物からプルトニウムフッ化物を固定化剤に固定化する過程と、前記固定化されたプルトニウムフッ化物の酸化物転換過程とを備えた使用済核燃料再処理方法において、
前記固定化する過程の前に、前記固定化に使用する固定化装置内部に、前記固定化剤の母材を充填し、前記母材を充填した前記固定化装置内部を除湿し、前記母材を加熱しながら、前記母材を前記固定化剤に調製する反応剤流体を、前記母材に作用させて、前記母材の少なくとも表面に前記固定化剤を調製する過程を有することを特徴とする使用済核燃料再処理方法。
【請求項6】
請求項5において、前記母材はウラン酸化物であり、前記母材に作用させる反応剤流体はフッ素であり、前記固定化剤は前記ウラン酸化物に前記反応剤流体であるフッ素を作用させて調製したフッ化ウラニルである。
【請求項7】
請求項6において、前記母材から前記固定化剤と前記該固定化剤により固定化されたプルトニウムフッ化物を共に前記固定化装置内で分離し、前記酸化物転換過程で、前記分離した前記固定化剤と前記プルトニウムフッ化物に水蒸気を作用させる過程を有する使用済核燃料再処理方法。
【請求項8】
請求項7において、前記分離が成された後の前記母材を、前記固定化装置内に残留させて前記反応剤流体を作用させる母材として再利用する使用済核燃料再処理方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8において、前記固定化剤が調製された前記母材を加振して、前記分離を成すことを特徴とする使用済核燃料再処理方法。
【請求項10】
請求項7又は請求項8において、前記固定化剤が調製された前記母材を攪拌して、前記分離を成すことを特徴とする使用済核燃料再処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−151672(P2008−151672A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340649(P2006−340649)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)