説明

供養像

【課題】高温で焼成してもクラックが生じることがなく、外観の見栄えが良好な状態で、故人の霊魂の分身たる形見の品としてお祀りすることができる供養像を提供する。
【解決手段】故人の遺体と一緒に棺に収めて火葬し、該火葬後に取り出して故人の分身たる形見の品としてお祀りする供養像18であって、該供養像18は、耐火材料を用いて、一定の肉厚で中空状に形成されて、内側と外側とを連通する連通孔20を有して、適宜の像形状に造形されてから、焼成されたものであり、更に、供養像18は、素地に対してメッキ層が形成されており、該メッキ層が火葬によって喪失して、素地が露出するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば観音像等の供養像に関するものであり、更に詳しくは、故人のご遺体と一緒に棺に収めて火葬し、火葬後に取り出して故人の霊魂の分身たる形見の品としてお祀りする供養像に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の供養像としては、次のような構成の祈念物が知られている。この祈念物は、アルミナ磁器、リチア系磁器、ムライト磁器又はシリマナイト磁器等の焼結物からなり、中空で神仏像の形状に形成されており、この祈念物の表面には、黄金色の金成分被膜層が設けられている(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
このような祈念物は、ご遺体と一緒に棺に収納して火葬し、さらに火葬後の遺骨を祈念物の内部に収納することができるものであり、この祈念物を故人の魂が乗り移った遺品としてお祀りするのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3042984号公報
【特許文献2】実用新案登録第3042985号公報
【特許文献3】実用新案登録第3045475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例の祈念物においては、遺体の火葬時に高温で焼成することによって表面にクラックが発生するという問題点を有している。
【0006】
即ち、祈念物は肉厚に形成された部分と肉薄に形成された部分とが混在することから、それらの部分で、焼成時又は冷却時において温度変化にアンバランスが生じ、その結果、表面にクラックが発生するものと、本願の発明者は思料する。
【0007】
更に、祈念物は内側と外側とが連通していないことから、焼成後の冷却時においては、内部の温度低下が表面の温度低下に比較して遅れ、表面が低温となり収縮が始まっても、内部は高温状態で収縮が始まらず、その結果、表面にクラックが発生するものとも考えられる。
【0008】
従って、従来例における祈念物においては、高温で焼成しても祈念物にクラックが生じることなく、外観の見栄えが良好な状態で、故人の霊魂の分身たる形見の品としてお祀りできるようにすることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、故人の遺体と一緒に棺に収めて火葬し、該火葬後に取り出して故人の分身たる形見の品としてお祀りする供養像であって、該供養像は、耐火材料を用いて、一定の肉厚で中空状に形成されて、内側と外側とを連通する連通孔を有して、適宜の像形状に造形されてから、焼成されたものであり、更に、前記供養像は、素地に対してメッキ層が形成されており、該メッキ層が前記火葬によって喪失して、前記素地が露出するようになっていることである。
【0010】
また、前記耐火材料は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムを主成分とする材料からなり、前記供養像の素地は、白色であること、;
前記耐火材料は、二酸化ケイ素が60重量%、酸化アルミニウムが30重量%、及び酸化カルシウムが10重量%の混合材料からなり、前記焼成は、1000〜1400℃の範囲の温度に加熱しておこなうこと、;
前記メッキ層は、金色であること、;
前記供養像は、8種類の十二支守り本尊であって、該十二支守り本尊における故人の干支の守り本尊とご遺体とを一緒に棺に収めて火葬するものであること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る供養像によれば、一定の肉厚で中空状に形成されていることによって、焼成時又は冷却時において全体的な温度変化にアンバランスが生じることがなく、その結果、従来例のようなクラックが発生しない。
また、供養像の内側と外側とを連通する連通孔を有することによって、この連通孔を通って空気が流通することとなる。従って、焼成後の冷却時においては、内部と表面との温度低下に差異が生じなく、その結果、従来例のようなクラックが発生しないという優れた効果を奏する。
【0012】
供養像は、素地に対してメッキ層が形成されており、該メッキ層が火葬によって喪失(焼失)して、素地が露出するようになっていることによって、遺族は故人の霊魂が一緒に火葬された供養像に乗り移ったかのような感覚を覚えることとなり、この供養像を祀ることによって心の安らぎを得ることができるという優れた効果を奏する。
【0013】
耐火材料は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムを主成分とする材料からなり、供養像の素地は、白色であることによって、耐クラック性に優れ、白色の素地となって見栄えがよく、火葬後の退色がほとんどないという種々の優れた効果を奏する。
【0014】
供養像は、8種類の十二支守り本尊であって、該十二支守り本尊における故人の干支の守り本尊とご遺体とを一緒に棺に収めて火葬するものであることによって、仏教上の教えによると生まれ年の干支に基づいて守り本尊が定められており、そのご本尊が信仰の対象とされているので、故人のご本尊をお祀りすることにより、さらに心の安らぎ得ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の供養像に係る阿弥陀如来像の正面図である。
【図2】本発明の供養像に係る文殊菩薩像の正面図である。
【図3】本発明の供養像に係る普賢菩薩像の正面図である。
【図4】本発明の供養像に係る勢至菩薩像の正面図である。
【図5】本発明の供養像に係る大日如来像の正面図である。
【図6】本発明の供養像に係る不動明王像の正面図である。
【図7】本発明の供養像に係る観音像の正面図である。
【図8】本発明に係る供養像の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1の符号11は、本発明の供養像に係る阿弥陀如来像を示し、図2の符号12は文殊菩薩像を示し、図3の符号13は普賢菩薩像を示し、図4の符号14は勢至菩薩像を示し、図5の符号15は大日如来像を示し、図6の符号16は不動明王像を示し、図7の符号17は観音像を示しており、これらの供養像は、故人の遺体と一緒に棺に収めて火葬し、火葬後に取り出して、故人の霊魂の分身たる形見の品としてお祀りするものである。
【0017】
供養像は、例えば、8種類の十二支守り本尊や観音像17であって、この十二支守り本尊における故人の干支の守り本尊又は観音像17と、ご遺体とを一緒に棺に収めて火葬するのである。
【0018】
十二支守り本尊は、仏教上の教えによると、生まれ年の干支に基づいて守り本尊が定められており、そのご本尊が信仰の対象とされているので、故人のご本尊をお祀りすることによって、心の安らぎ得ることができるのである。
【0019】
十二支守り本尊を具体的に説明すると、干支が戌年及び亥年にあっては阿弥陀如来(図1参照)であり、子年にあっては千手観音菩薩であり、丑年及び寅年にあっては虚空蔵菩薩であり、卯年にあっては文殊菩薩(図2参照)であり、辰年及び巳年にあっては普賢菩薩(図3参照)であり、午年にあっては勢至菩薩(図4参照)であり、未年及び申年にあっては大日如来(図5参照)であり、酉年にあっては不動明王(図6参照)であって、十二支のそれぞれの干支に対して、これら8種類の十二支守り本尊のうちのひとつが定められている。
【0020】
次に、供養像の具体的な構成について説明する。図8は本発明に係る供養像18の縦断面図であり、この供養像18は、主に上述のような十二支守り本尊や観音像17等の神仏像であり、高さが約10〜30cm程度の適宜な大きさで、耐火材料を用いて形成されたものであって、表面19には例えば金色のメッキ層が形成されている。
【0021】
耐火材料は、具体的には、二酸化ケイ素(SiO )が60重量%、酸化アルミニウム(Al)が30重量%、及び酸化カルシウム(CaO)が10重量%の混合材料である。
【0022】
そして、これらの混合材料を、水などと混合して練り合わせ、所定の像形状に造形し、さらに、1000〜1400℃の範囲内の温度に加熱して焼成したものであり、素地は白色となっている。
【0023】
供養像18の表面19に形成される金色のメッキ層は、例えば、真空メッキ法、スパッタリング法、インオプレーティング法等の適宜のメッキ層の形成方法で設けたものであり、このメッキ層が火葬によって喪失(焼失)して、素地が露出するようになっているのである。
【0024】
なお、表面19とメッキ層との間には、当該メッキ層の形成を良好にするための導電性の下地層(図示せず)が予め形成されている。下地層は、例えばチタン、クロム、ニッケルなどの導電性の粉体材料と、樹脂、顔料、溶剤とを混合したものが用いられる。
【0025】
また、供養像18は、図8に示すように、一定の肉厚で中空状に形成されており、更に、供養像18の底部には、内側と外側とを連通する約2〜5cm程度の連通孔20が形成されている。
【0026】
このように、供養像18は、一定の肉厚で中空状に形成されているので、焼成時又は冷却時において全体的な温度変化にアンバランスが生じることがなく、その結果クラックが発生しない。
【0027】
更に、供養像18には、内側と外側とを連通する連通孔20を有するので、この連通孔20を通って空気が流通することとなり、従って、焼成後の冷却時においては、内部と表面との温度低下に差異が生じなく、その結果クラックが発生しない。
【0028】
以上のように構成される供養像18は、故人の火葬において、棺のご遺体の両手に握らせてもよく、あるいはご遺体の脇に置くようにしてもよい。
【0029】
ご遺体が火葬されると、炉内温度は約1000〜1200℃程度まで上昇され、場合によっては、約1600℃程度まで上昇される。火葬が終了した後には、遺族によって骨揚げが行われる。
【0030】
この時に、ご遺骨の中にある供養像18を回収する。供養像18は火葬前には金色であったが、火葬によってメッキ層が喪失して素地の白地が露出するので、遺族は故人の霊魂が一緒に火葬された供養像18に乗り移ったかのような感覚を覚えることとなる。供養像18は、はそのままの状態で、あるいは桐箱などに入れてお祀りすることができるので、遺族は心の安らぎを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の供養像18は、主に十二支守り本尊や観音像17等の神仏像を、ご遺体と一緒に棺に収めて火葬し、火葬後に取り出してお祀りするものであるが、必ずしもそのような神仏像に限定されるものではない。
例えば、故人の愛した犬、猫、小鳥などの動物類を模した像や、故人の好んだ植木、花卉などの植物類を模した像や、故人に縁のある家、車、船、モニュメントなどを模した像などのように、様々な物品を模した供養像18であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
11 阿弥陀如来像
12 文殊菩薩像
13 普賢菩薩像
14 勢至菩薩像
15 大日如来像
16 不動明王像
17 観音像
18 供養像
19 表面
20 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
故人の遺体と一緒に棺に収めて火葬し、該火葬後に取り出して故人の分身たる形見の品としてお祀りする供養像であって、
該供養像は、耐火材料を用いて、一定の肉厚で中空状に形成されて、内側と外側とを連通する連通孔を有して、適宜の像形状に造形されてから、焼成されたものであり、
更に、前記供養像は、素地に対してメッキ層が形成されており、該メッキ層が前記火葬によって喪失して、前記素地が露出するようになっていること
を特徴とする供養像。
【請求項2】
前記耐火材料は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムを主成分とする材料からなり、
前記供養像の素地は、白色であること
を特徴とする請求項1に記載の供養像。
【請求項3】
前記耐火材料は、二酸化ケイ素が60重量%、酸化アルミニウムが30重量%、及び酸化カルシウムが10重量%の混合材料からなり、
前記焼成は、1000〜1400℃の範囲の温度に加熱しておこなうこと
を特徴とする請求項1に記載の供養像。
【請求項4】
前記メッキ層は、金色であること
を特徴とする請求項1に記載の供養像。
【請求項5】
前記供養像は、8種類の十二支守り本尊であって、該十二支守り本尊における故人の干支の守り本尊とご遺体とを一緒に棺に収めて火葬するものであること
を特徴とする請求項1に記載の供養像。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22412(P2013−22412A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162979(P2011−162979)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(511181393)株式会社ALIA (1)
【Fターム(参考)】