価格推定装置、方法及びプログラム
【課題】中古品の適正価格を推定する技術を提供する。
【解決手段】価格推定装置は、対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、上記のような商品情報、取引情報及び周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、上記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての上記対象商品の価格を推定する推定手段と、を備える。
【解決手段】価格推定装置は、対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、上記のような商品情報、取引情報及び周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、上記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての上記対象商品の価格を推定する推定手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オークションや中古市場等で取引される中古品の適正価格を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットを用いたオンラインオークション取引により、個人が直接商品を売買する機会が増えている。商品を出品する出品ユーザは、パーソナルコンピュータ(以降、PCと表記する)等の端末装置を用いてインターネット上のオークションサイトにアクセスし、このオークションサイト上に対象商品に関する情報を掲載し、この商品が落札されるのを待つ。このとき、出品者は、対象商品の落札条件を設定することができる。例えば、出品者は、売主希望価格を落札条件として設定する。購入者は、そのような落札条件が設定された商品を落札したい場合には、その売主希望価格より高い価格を指定しなければ落札することができない。
【0003】
出品者は、このような落札条件を用いれば、納得のいかない金額で自身の商品が落札されるのを防ぐことができる。一方で、その売主希望価格を高く設定し過ぎた場合には、入札が減り、その商品が売れない場合がある。よって、出品者にとって、売主希望価格を設定する場合には、この価格を適正に決めることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−329097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、出品者は、売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定したいところ、他の出品者が設定している価格を参考する等して、感覚で売主希望価格を設定するしかなかった。このような状態は、オークション取引時のみでなく、中古市場での取引時においても同様であった。以降、オークションや中古市場で取り引きされる中古品についての売れる範囲での最も高い価格を適正価格と表記する。
【0006】
ところで、このような適正価格は、市場や世の中の動向(ニーズ、話題等)により変動するため、定価や過去の取引金額だけでは正確に決めることができない。特に、過去に取引実績のない中古品については、取引金額の情報さえもないため、一層、適正価格を決めることは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、中古品の適正価格を推定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0009】
本態様は、価格推定装置に関する。本態様に係る価格推定装置は、対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、上記のような商品情報、取引情報及び周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、上記取得手段により取得された商品情報、取引実績
情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての上記対象商品の価格を推定する推定手段と、を備える。
【0010】
本態様では、価格推定の対象となる商品に関し、取引実績に基づく取引情報のみでなく、定価情報を含む商品情報、及び、ニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を推定モデルの説明変数に用いることによりその対象商品の価格を推定する。
【0011】
従って、本態様によれば、取引実績に基づく取引情報に加えて、定価が考慮され、更に、ニーズ及び話題性の少なくとも一方により影響される価格変動に追随した価格を推定することができるため、適正価格を高い精度で推定することができる。
【0012】
本態様に係る価格推定装置は、好ましくは、商品の取引価格が決定される度に、当該商品に関し上記取得手段により取得される、上記推定モデルの説明変数として用いられる各情報、及び、その取引に関し当該推定モデルの目的変数となる取引価格を保存する履歴保存部と、この履歴保存部に保存される取引毎の各情報をそれぞれ用いた重回帰分析により上記推定モデルの各推定パラメータの値を更新する更新手段と、を更に備える。
【0013】
これにより、本態様によれば、取引価格が決定される度に、その取引時の情報も含めた形で推定パラメータが更新されるため、推定モデルの精度を向上させることができ、結果、適正価格を高い精度で推定することができる。
【0014】
本態様に係る価格推定装置において好ましくは、上記更新手段が、前記各推定パラメータの値を更新するにあたり、前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報のうち履歴の新しい情報を重視する重み係数を用いた最小二乗法を用いる。
【0015】
また、本態様に係る価格推定装置において好ましくは、上記商品情報にはその商品の定価及び状態が含まれ、上記取引情報には、対象商品と同一商品の取引実績に基づく平均取引価格が含まれ、上記周辺動向情報には、対象商品に関するコンテンツサーバへの検索回数、コンテンツサーバへの掲載数が含まれるように構成する。
【0016】
なお、本発明の別態様としては、以上の何れかの構成を実現する方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中古品の適正価格を推定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】オークションシステム及びこれに関連するシステムの全体構成を示す図。
【図2】実施例1におけるオークションサーバ9の構成を示す概念図。
【図3】出品商品情報テーブルの例を示す図。
【図4】取引情報テーブルの例を示す図。
【図5】実施例1における価格推定サーバ10の構成を示す概念図。
【図6】パラメータテーブル57の例を示す図。
【図7】説明変数情報テーブル58の例を示す図。
【図8】実施例1における価格推定サーバの価格推定処理を示すフローチャート。
【図9】実施例1における価格推定サーバの推定モデル生成処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態としての価格推定サーバ装置(以降、単に、価格推定サーバと表記する)について具体例を挙げ説明する。以下の実施例は、本実施形態としての価格推定サーバがオンラインオークションシステム(以降、単にオークションシステムと表記する)に適用された例である。しかしながら、当該価格推定サーバは、オンラインオークションシステムのみを対象とするものではなく、オンラインでない一般的なオークションに適用されてもよい。更に、当該価格推定サーバは、オークション形態で取引される商品のみを対象とするものではなく、一般的な中古市場で取引される商品を対象とするようにしてもよい。以下に挙げた実施例はそれぞれ例示であり、本発明は以下の実施例の構成に限定されない。
【実施例1】
【0020】
以下、実施形態としての価格推定サーバの実施例1について説明する。なお、説明を分かり易くするために、実施例1では、オンラインオークションで取引される商品として中古書籍を例に挙げる。但し、本発明はこのような対象商品の種類を限定するものではない。
【0021】
〔システム構成〕
まず、実施例1における価格推定サーバが適用されるオークションシステム及びそれに関連するシステムの全体構成について図1を用いて説明する。図1は、オークションシステム及びこれに関連するシステムの全体構成を示す図である。
【0022】
コンテンツサーバ3は、様々な情報コンテンツを提供する一般的なサーバ群である。コンテンツサーバ3は、例えば、WEBサーバ、ファイルサーバとして実現される。実施例1におけるコンテンツサーバ3には、各書籍についての情報を提供する書籍情報サーバが含まれる。このコンテンツサーバ3では、各書籍についての情報として、書籍名、著者名、定価、出版社名、出版年、シリーズ名等がそれぞれ提供される。このコンテンツサーバ3は、各書籍をISBN(International Standard Book Number)により管理する。コンテンツサーバ3には、その他、ニュース情報を提供するニュースサーバ、ブログサーバ、様々な法人や個人が立ち上げたWEBサーバ等が含まれる。
【0023】
検索サーバ4は、上記コンテンツサーバ3によりネットワーク1上に提供される情報コンテンツを検索するための検索エンジンを持つ。検索サーバ4は、ユーザにより入力されたキーワードに基づいてこの検索エンジンに検索させることにより、そのキーワードを含む情報コンテンツを提供するコンテンツサーバ3のアドレス情報を提供する。このアドレス情報は、例えば、URL(Uniform Resource Locator)である。
【0024】
検索サーバ4は、ユーザによる検索履歴を保持する。検索サーバ4は、この検索履歴に基づいて各検索キーワードについて検索バースト度をそれぞれ算出し、この算出された検索バースト度も併せて保持する。この検索バースト度とは、現在から所定期間(N日前まで)の検索数の傾きを意味する。この所定期間(N)には例えば4日が用いられる。検索サーバ4は、他の装置からの要求によりそれら検索履歴に関する情報を提供する。
【0025】
出品者端末6及び購入者端末7は、例えば、PC、携帯電話等のユーザ端末である。説明の便宜のため、オークションで商品を出品するユーザにより利用される端末を出品者端末6と表記し、オークションで商品を落札(購入)するユーザにより利用される端末を購入者端末7と表記する。出品者端末6及び購入者端末7は、オークションシステム8にアクセスしデータを受け得る一般的な通信機能、提供されたデータに基づく画面を表示及び操作することができる一般的なユーザインタフェース機能等を有するものであればよく、本発明はこれら出品者端末6及び購入者端末7のハードウェア構成及び機能構成を限定す
るものではない。
【0026】
オークションシステム8は、コンテンツサーバ3、検索サーバ4、出品者端末6、購入者端末7等とネットワーク1を介して接続する。オークションシステム8は、ネットワーク1を介してアクセスする出品者端末6及び購入者端末7にオンラインオークションの場を提供する。オークションシステム8は、内部ネットワーク(図示せず)で相互に接続されるオークションサーバ9及び価格推定サーバ10を有する。ネットワーク1及びオークションシステム8の内部ネットワークは、インターネット等の公衆ネットワークであってもよいし、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の社内ネッ
トワークであってもよい。本発明は、このようなネットワークを限定するものではなく、ネットワーク上を流れるプロトコルを限定するものでもない。
【0027】
〔装置構成〕
以下、実施例1におけるオークションシステム8を構成するオークションサーバ9及び価格推定サーバ10の各装置構成についてそれぞれ説明する。
【0028】
〈オークションサーバ〉
図2は、実施例1におけるオークションサーバ9の構成を示す概念図である。
【0029】
オークションサーバ9は、ハードウェア構成として、図2に示されるように、バス25で接続される、制御部20、記憶部21、通信部28等を有する。記憶部21は、例えばハードディスクであり、制御部20で実行される処理で利用される各種情報を記憶する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサ、この
プロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM(Read Only Memory)、RAM(Radom Access Memory)、インタフェース回路等)を有する。通信部28は、ネットワーク1及
びオークションシステム8の内部ネットワーク(図示せず)に接続され、オークションサーバ9と出品者端末6及び購入者端末7との間の通信、オークションサーバ9と価格推定サーバ10との間の通信等を実現する。本発明は、これらオークションサーバ9の通信形態を限定するものではなく、例えば、IP(Internet Protocol)通信が利用される。オ
ークションサーバ9は、PC等のような汎用コンピュータで構築されてもよいし、専用コンピュータで構築されてもよい。本発明は、オークションサーバ9のハードウェア構成を限定するものではない。
【0030】
オークションサーバ9は、記憶部21に記憶されるアプリケーションプログラムが制御部20により実行されることにより、オンラインオークション機能を実現する。以下、オークションサーバ9における、本発明に関連する処理についてのみ詳細に説明し、一般的なオンラインオークション機能については省略又は簡易説明とする。
【0031】
オークションサーバ9は、出品者又は購入者となり得るユーザを管理し、管理される正当ユーザにより利用される出品者端末6及び購入者端末7からのアクセスに対して、出品を受け付けるための画面、入札を受け付ける画面等を提供する。オークションサーバ9と出品者端末6及び購入者端末7との間のインタフェースは、例えばWEBシステムが利用される。
【0032】
オークションサーバ9は、出品を受け付けた各商品についての情報を出品商品情報テーブル22で管理する。図3は、出品商品情報テーブルの例を示す図である。図3に示すように、実施例1では中古書籍を対象とするため、出品商品情報テーブルには、各書籍について、書籍ID、書籍名、著者名、出版社名、出版年、シリーズ名、状態、定価、ISBN等の情報がそれぞれ格納される。書籍IDは、各出品書籍を物として特定するためのIDであり、同じ書籍であっても物として異なる場合にはそれぞれ異なるIDが付与される
。書籍IDは、出品受付時に、オークションサーバ9により付与される。ISBNは、同一書籍について1つ付与される番号であり、上述したように書籍情報サーバにより管理される。
【0033】
オークションサーバ9は、出品者端末6から出品を受け付けると、その受け付けた書籍についての上記各情報をそれぞれ取得する。例えば、オークションサーバ9は、その受け付けた書籍に付されているISBNに基づいて、その書籍についての書籍名、著者名、出版社名、出版年、シリーズ名、定価を書籍情報サーバとなるコンテンツサーバ3から取得する。また、オークションサーバ9は、書籍の状態に関する情報をWEB画面を介してユーザに入力させる。なお、オークションサーバ9は、状態以外の書籍情報もユーザに入力させるようにしてもよい。書籍の状態として、例えば、新品同様、良、傷有り、悪、劣悪を示す状態のスコア(1〜5など)が出品商品情報テーブル22に格納される。
【0034】
その他、オークションサーバ9は、一般的な、落札処理、出品者端末6及び購入者端末7への落札通知処理等を含む。この落札処理において、オークションサーバ9は、出品者に対して出品商品のための落札条件の設定を可能とする。この落札条件には、売主希望価格が含まれる。オークションサーバ9は、落札条件に売主希望価格が設定された出品商品については、その売主希望価格以上の価格での入札がなされない限り、その出品商品の落札を決定しない。この落札条件も出品商品毎にそれぞれ管理される。以降、オークションサーバ9において落札が決定されると、そのオークション取引は成立したものとして説明する。
【0035】
実施例1におけるオークションシステム8は、この落札条件としての売主希望価格の推奨額を出品者に提供する。この売主希望価格の推奨額は、価格推定サーバ10により推定された価格が用いられる。これにより、出品者は、オークションシステム8から提供される推奨価格を参照することにより、その出品商品についての適正価格を知ることができる。出品者は、この推奨価格により、売れる範囲での最も高い価格を売主希望価格に設定することができる。
【0036】
更に、オークションサーバ9は、オンラインオークションでの取引履歴を取引情報テーブル23に格納する。図4は、取引情報テーブルの例を示す図である。取引情報テーブルには、オンラインオークション取引された各商品について、落札日、落札価格、書籍ID、定価及びISBNがそれぞれ格納される。オークションサーバ9は、落札が決定される度に、その落札された商品を示す書籍ID、ISBN、定価、落札価格、及び、落札日をその取引DBに格納し、かつ、それら情報のうちの少なくとも落札価格及び落札日を含む取引情報を取引成立の旨と共に価格推定サーバ10へ送信する。また、オークションサーバ9は、価格推定サーバ10からの要求により、このように保持される取引履歴を価格推定サーバ10へ送る。
【0037】
〈価格推定サーバ〉
図5は、実施例1における価格推定サーバ10の構成を示す概念図である。
【0038】
価格推定サーバ10は、ハードウェア構成として、図5に示されるように、バス35で接続される、制御部31、記憶部32、通信部33等を有する。記憶部32は、例えばハードディスクであり、制御部31で実行される処理で利用される各種情報を記憶する。制御部31は、CPU等の1又は複数のプロセッサ、このプロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM、RAM、インタフェース回路等)を有する。通信部33は、ネットワーク1及びオークションシステム8の内部ネットワーク(図示せず)に接続され、オークションサーバ9と価格推定サーバ10との間の通信、価格推定サーバ10とコンテンツサーバ3及び検索サーバ4との間の通信を実現する。本発明は、価格推定サーバ10の通信形
態を限定するものではなく、例えば、IPパケットにより実現される。価格推定サーバ10は、PC等のような汎用コンピュータで構築されてもよいし、専用コンピュータで構築されるようにしてもよい。本発明は、価格推定サーバ10のハードウェア構成を限定するものではない。
【0039】
価格推定サーバ10は、記憶部32に記憶されるアプリケーションプログラムが制御部31により実行されることにより、図5に示す各処理ブロックを実現する。このような処理ブロックとして、価格推定サーバ10は、推定処理制御部50、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部53、価格推定部54、パラメータ学習部55等を有する。これら処理ブロックにより参照されるデータベースとして、記憶部32には、パラメータテーブル57、説明変数情報テーブル58が格納される。以下、これら価格推定サーバ10の各処理ブロックについてそれぞれ説明する。
【0040】
推定処理制御部50は、上記各処理ブロックにおける処理の開始及び終了をそれぞれ制御することにより、出品商品についての適正価格を推定する処理(以降、価格推定処理と表記する)、及び、この推定処理で利用される推定モデルを生成又は更新する処理(以降、推定モデル生成処理と表記する)を実行する。
【0041】
推定処理制御部50は、オークションサーバ9からの要求を受けた際に、その要求に含まれる書籍IDで特定される出品商品についての価格推定処理を開始する。推定処理制御部50は、価格推定処理を開始すると、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部にそれぞれ価格推定対象の書籍IDを与えることにより、各処理部からその書籍IDに関する書籍情報、取引情報、周辺動向情報をそれぞれ取得する。推定処理制御部30は、これら書籍情報、取引情報、周辺動向情報を価格推定部54へ送ることにより、価格推定部54に価格推定を実行させ、推定された価格情報を価格推定部54から受ける。推定処理制御部30は、この推定された価格をオークションサーバ9へ送る。
【0042】
推定処理制御部50は、オークションサーバ9から取引成立の旨の通知を受けると、その通知に含まれる書籍ID、落札価格及び落札日に基づいて推定モデル生成処理を開始する。推定処理制御部50は、推定モデル生成処理を開始すると、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部にそれぞれ、取引の成立した商品を示す書籍IDを与えることにより、各処理部からその書籍IDに関する書籍情報、取引情報、周辺動向情報をそれぞれ取得する。推定処理制御部50は、これら書籍情報、取引情報、周辺動向情報を新たに説明変数情報テーブル58に格納すると共に、この新たに格納された情報とそれまでに説明変数情報テーブル58に格納されている情報とを用いて推定モデルのパラメータ値を算出するようにパラメータ学習部55に指示する。推定処理制御部50は、パラメータ学習部55により算出されたパラメータ値でパラメータテーブル57を更新する。
【0043】
図6は、パラメータテーブル57の例を示す図である。図6に示すように、パラメータテーブル57には、価格推定部54により利用される推定モデルの各パラメータの値がそれぞれ格納される。実施例1では、9つの説明変数を用いた推定モデルを例に挙げているため、パラメータテーブル57には、10個のパラメータの値が格納される。
【0044】
図7は、説明変数情報テーブル58の例を示す図である。図7に示すように、説明変数情報テーブル58には、取引毎に、書籍ID、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額、状態、落札日、落札価格がそれぞれ格納される。定価及び状態の各フィールドには、書籍情報として取得された情報が格納される。平均落札価格、落札日及び落札価格の各フィールドには、取引情報として取得された情報が格納される。その他の各フィールドは、周辺動向情報として
取得された情報が格納される。説明変数情報テーブル58に格納される情報のうち、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額、状態が推定モデルの説明変数として利用される情報であり、落札価格が推定モデルの目的変数として利用される情報となる。なお、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額の詳細については後述する。
【0045】
商品情報取得部51は、推定処理制御部50からの指示の対象となる書籍IDに関する書籍情報を取得する。商品情報取得部51は、この書籍IDを指定した書籍情報要求をオークションサーバ9へ送ることにより、オークションサーバ9の出品商品情報テーブル22に格納されるその書籍IDの書籍情報を取得する。取得される書籍情報には、少なくとも、定価、状態及びISBNが含まれる。商品情報取得部51は、このように取得された書籍情報を推定処理制御部50へ送る。
【0046】
取引情報取得部52は、推定処理制御部50からの指示を受けると、その指示に含まれる対象書籍のISBNに基づいて、そのISBNで特定される同一書籍についての取引履歴情報をオークションサーバ9に要求する。この要求により、オークションサーバ9は、取引情報テーブル23から、そのISBNが同一となる取引情報、即ち、同一書籍に関する全取引情報を抽出する。これにより、書籍IDが異なる物についても同じISBNが付与された書籍(物)に関する取引情報が全て抽出される。取引情報取得部52は、オークションサーバ9から同一書籍に関する全取引情報を取得すると、この取得された全取引情報を対象として平均落札価格を算出する。この算出された平均落札価格は、同一書籍についての取引実績を示す。取引情報取得部52は、このように算出された平均落札価格を推定処理制御部50へ送る。
【0047】
周辺動向情報取得部53は、推定処理制御部50からの指示に応じて、その指示の対象となる書籍に関する周辺動向情報を取得する。この周辺動向情報は、説明変数情報テーブル58に格納される情報であって、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額を含む。以下、これら各情報の取得手法についてそれぞれ説明する。
【0048】
周辺動向情報取得部53は、推定処理制御部50からの指示の対象となる書籍IDに関する書籍名、著者名、シリーズ名をオークションサーバ9に要求する。周辺動向情報取得部53は、この要求に応じてオークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して、検索回数及び検索バースト度の各情報を検索サーバ4へ要求する。検索サーバ4は、保持される検索履歴に基づいて、その要求で指定された書籍名及び著者名を用いた各検索回数をそれぞれ算出し、算出された各検索回数をそれぞれ周辺動向情報取得部53へ送る。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索回数と、著者名による検索回数と、を平均し、この平均値を検索回数として取得する。
【0049】
また、検索サーバ4は、その要求で指定された書籍名及び著者名を用いた最新の各検索バースト度をそれぞれ取得し、これら各検索バースト度情報を周辺動向情報取得部53へ送る。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索バースト度と、著者名による検索バースト度と、を平均し、この平均値を検索バースト度として取得する。
【0050】
この周辺動向情報として取得された検索回数及び検索バースト度は、対象となる書籍に関連する情報の検索状況を示しているため、対象書籍についてのニーズを反映するとも言える。例えば、消費者からのニーズの高い書籍は、その書籍に関連する情報を検索する者が多くなり、当該検索回数及び検索バースト度は高くなると思われる。
【0051】
更に、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して検索サーバ4へニュースサイト(コンテンツサーバ3)及びブログサイト(コンテンツサーバ3)に対する検索の実行を依頼する。この依頼に応じて、検索サーバ4は、検索エンジンによりその書籍名によるニュースサイト及びブログサイトに対する各検索をそれぞれ実行する。同様に、検索サーバ4は、検索エンジンによりその著者名によるニュースサイト及びブログサイトに対する各検索をそれぞれ実行する。検索サーバ4は、ニュースサイトに対するその書籍名及び著者名による各検索結果、ブログサイトに対するその書籍及び著者名による各検索結果、を周辺動向情報取得部53へ送る。
【0052】
周辺動向情報取得部53は、このように取得された各検索結果を用いて、その書籍名を掲載したニュースサイトの数とその著者名を掲載したニュースサイトの数との平均を算出し、この算出された平均値をニュース出現数として取得する。同様に、周辺動向情報取得部53は、各検索結果を用いて、その書籍名を掲載したブログサイトの数とその著者名を掲載したブログサイトの数との平均を算出し、この算出された平均値をブログ出現数として取得する。
【0053】
この周辺動向情報として取得されたニュース出現数及びブログ出現数は、対象となる書籍に関連する情報を提供するコンテンツ数を示しているため、対象書籍についての話題性を反映するとも言える。例えば、話題性の高い書籍、話題性の高い著者により書かれた書籍については、それに関連する情報を掲載するサイト等が増加すると思われる。
【0054】
また、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された著者名及びシリーズ名を指定して、同一著者名の書籍に関する全取引情報と同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報とをオークションサーバ9へ更に要求する。この要求に応じて、オークションサーバ9は、出品商品情報テーブル22からその著者名及びシリーズ名を持つ各レコードをそれぞれ抽出する。ここで、同一シリーズ名を持つ書籍とは、例えば、複数巻で構成されるマンガ本や小説等がある。オークションサーバ9は、抽出された各レコードのISBN又は書籍IDを検索キーに用いて、取引情報テーブル23からISBN又は書籍IDが一致する各取引情報をそれぞれ抽出する。
【0055】
周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から同一著者名の書籍に関する全取引情報を得ると、各取引について定価と落札価格との差分を算出する。周辺動向情報取得部53は、各差分を同一著者名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を著者別差額として取得する。同様に、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報を得ると、各取引について定価と落札価格との差分を算出する。周辺動向情報取得部53は、各差分を同一シリーズ名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を同シリーズ差額として取得する。著者別差額は、同一著者の書籍間における取引実績の統計を示す値となり、同シリーズ差額は、同一シリーズの書籍間における取引実績の統計を示す値となる。
【0056】
価格推定部54は、推定処理制御部50から送られる或る書籍に関する書籍情報、取引情報、及び周辺動向情報を価格推定モデルに適用することによりその書籍についての適正価格を推定する。この価格推定モデルは、或る書籍の落札価格とその書籍に関する書籍情報、取引情報及び周辺動向情報との因果関係を示し、パラメータテーブル57に格納される各パラメータ値を用いて以下の(式1)のような回帰式で表わされる。なお、書籍情報には定価及び状態が含まれ、取引情報には平均落札価格が含まれ、周辺動向情報には、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額が含まれる。
【0057】
【数1】
価格推定部54は、x1に定価を、x2に平均落札価格を、x3に検索回数を、x4に検索バースト度を、x5にニュース出現数を、x6にブログ出現数を、x7に著者別差額を、x8に同シリーズ差額を、x9に状態をあてはめることにより、上記(式1)で示す回帰式から適正価格yを推定する。以降、yはこの推定モデルにより説明したい変数であるため目的変数と表記し、x1からx9はこの目的変数を説明するための変数であるため説明変数と表記する。目的変数に掛け合わされる各パラメータ値は、各説明変数の目的変数に対する因果関係の大きさをそれぞれ示す。価格推定部54は、このように推定された適正価格を推定処理制御部50へ返信する。
【0058】
パラメータ学習部55は、オークション取引が成立する度に、推定処理制御部50から推定モデル生成処理の指示を受け、説明変数情報テーブル58に格納される情報を用いて上記回帰式(式1)で示される推定モデルの各パラメータ値をそれぞれ算出する。パラメータ学習部55は、重回帰分析により上記回帰式(式1)で示される推定モデルの各パラメータ値をそれぞれ取得する。実施例1における重回帰分析には重み付き最小二乗法が利用される。即ち、パラメータ学習部55は、説明変数情報テーブル58に格納される各レコード(各取引)についての、目的変数の測定値に対応する実際の落札価格と、その取引時に取得された各目的変数を用いて推定される価格推定値と、の差の2乗平均が最小となるような各パラメータ値をそれぞれ算出する。パラメータ学習部55は、説明変数情報テーブル58に格納されるレコード数(取引数)Iを用いて以下の(式2)を最小とする各パラメータをそれぞれ算出する。
【0059】
【数2】
重みwiは、新しい取引(説明変数情報テーブル58に格納されるレコード)程、説明変数となる各情報の重みが高くなるように上記(式3)のように設定される。上記(式3)のtcは現在の日を示し、tiはその落札日を示す。この重みwiは、予め調整可能にメモリに保持されるようにしてもよい。
【0060】
上記(式2)を最小とする各パラメータは、各パラメータにおいて上記(式2)を偏微分した値を零とした下記(式4)から(式13)の連立方程式を解くことにより求められる。パラメータ学習部55は、このように求められた各パラメータ値をそれぞれ推定処理制御部50へ返信する。
【0061】
【数3】
〔動作例〕
以下、実施例1における価格推定サーバの動作例について図8及び9を用いて説明する。図8は、実施例1における価格推定サーバの価格推定処理を示すフローチャートである。
【0062】
価格推定サーバ10は、オークションサーバ9から価格推定対象となる書籍の書籍IDを含む推定指示を受ける。価格推定サーバ10では、推定処理制御部50がこの指示を受信すると、その指示の対象となる書籍IDに関する書籍情報を取得するように商品情報取得部51へ依頼する。
【0063】
商品情報取得部51は、この依頼を受けると、この依頼の対象となる書籍IDに関する書籍情報をオークションサーバ9へ要求する。商品情報取得部51は、出品商品情報テーブル22に格納されるその書籍IDに関する定価、状態及びISBNをオークションサーバ9から取得する(S81)。商品情報取得部51は、このように取得された定価、状態及びISBNの各情報を推定処理制御部50へ送る。
【0064】
次に、推定処理制御部50は、上記ISBNを含む取引情報要求を取引情報取得部52へ送る。取引情報取得部52は、この要求に含まれるISBNで特定される同一書籍についての取引履歴情報をオークションサーバ9に要求することにより、その取引履歴情報を取得する(S82)。これにより、取引情報取得部52は、この取得された全取引情報を対象として対象書籍と同一書籍についての平均落札価格を算出する(S83)。取引情報取得部52は、算出された平均落札価格を推定処理制御部50へ送る。
【0065】
続いて、推定処理制御部50は、上記書籍IDを含む周辺動向情報要求を周辺動向情報取得部53に送る。周辺動向情報取得部53は、この要求に含まれる書籍IDに関する書籍名、著者名、シリーズ名をオークションサーバ9に要求することにより、出品商品情報テーブル22に格納されるそれら情報を取得する(S84)。
【0066】
周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して、検索回数及び検索バースト度の各情報を検索サーバ4へ要求する。この要求に応じて、周辺動向情報取得部53は、検索サーバ4で保持される検索履歴から抽出される、その書籍名及び著者名を用いた各検索回数をそれぞれ取得する。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索回数と、著者名による検索回数と、を平均し、この平均値を検索回数として取得する(S85)。
【0067】
続いて、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名に基づいて、この書籍名及び著者名を用いたニュースサイト及びブログサイトに対する検索結果を検索サーバ4から取得する。周辺動向情報取得部53は、検索サーバ4から取得された検索結果を用いて、ニュースサイトにおけるその書籍名の出現数とその著者名の出現数との平均を算出し、この算出された平均値をニュース出現数として取得する(S86)。同様に、周辺動向情報取得部53は、各検索結果を用いて、ブログサイトにおけるその書籍名の出現数とその著者名の出現数との平均を算出し、この算出された平均値をブログ出現数として取得する(S86)。
【0068】
更に、周辺動向情報取得部53は、上述のように取得された著者名及びシリーズ名を指定してオークションサーバ9へ要求することにより、同一著者名の書籍に関する全取引情報と同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報と取得する(S87)。各取引情報は、オークションサーバ9内の出品商品情報テーブル22及び取引情報テーブル23から取得される。
【0069】
周辺動向情報取得部53は、同一著者名の書籍に関する全取引情報に基づいて、各取引について定価と落札価格との差分を算出し、各差分を同一著者名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を著者別差額として取得する(S88)。同様に、周辺動向情報取得部53は、同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報に基づいて、各取引について定価と
落札価格との差分を算出し、各差分を同一シリーズ名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を同シリーズ差額として取得する(S88)。
【0070】
周辺動向情報取得部53は、上述のように取得された周辺動向情報、即ち、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額に関する各情報を推定処理制御部50へ送る。
【0071】
推定処理制御部50は、対象書籍に関し、商品情報取得部51により取得された定価及び状態、取引情報取得部52により取得された平均落札価格、周辺動向情報取得部53により取得された検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額と共に価格推定依頼を価格推定部54へ送る。
【0072】
価格推定部54は、価格推定依頼を受けると、パラメータテーブル57から推定パラメータ値を取得する(S89)。価格推定部54は、対象書籍に関する上記書籍情報、取引情報及び周辺動向情報をそれぞれ説明変数に代入し、パラメータテーブル57から取得された各推定パラメータを回帰式(式(1))にあてはめることにより、目的変数である適正価格を算出する(S90)。価格推定部54は、このように算出された対象書籍の適正価格を推定処理制御部50へ送る。最終的に、価格推定サーバ10は、この価格推定部54で推定された適正価格をオークションサーバ9へ返信する。
【0073】
オークションサーバ9では、この推定された価格をその書籍を出品する出品者に対象書籍の適正価格として提示する。出品者端末6を用いる出品者は、この提示された価格を参照することにより、その出品する書籍について売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定することができる。
【0074】
図9は、実施例1における価格推定サーバの推定モデル生成処理を示すフローチャートである。オークションサーバ9は、出品商品の落札が決定すると、取引成立の旨の通知を価格推定サーバ10へ送る。価格推定サーバ10では、推定処理制御部50が、その取引成立通知を受信すると(S91)、その通知に含まれる書籍ID、落札価格及び落札日に基づいて以下のような推定モデル生成処理を開始する。
【0075】
推定処理制御部50は、推定モデル生成処理を開始すると、上述の価格推定処理と同様に、取引の成立した書籍を示す書籍IDに関する書籍情報、取引情報及び周辺動向情報を取得する(S81からS88)。具体的には、推定処理制御部50は、定価及び状態を商品情報取得部51から、平均落札価格を取引情報取得部52から、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額を周辺動向情報取得部53から取得する。推定処理制御部50は、このように価格推定処理時と同様に取得された各情報と共に、上記取引成立通知に含まれる落札日、落札価格及びその取引成立した書籍を示す書籍IDを説明変数情報テーブル58に追加する(S92)。続いて、推定処理制御部50は、パラメータ学習部55へ上述の価格推定処理で利用された推定パラメータAからJをその追加された最新の取引に関する情報も含めた状態で生成するように指示する。
【0076】
パラメータ学習部55は、推定処理制御部50からの指示を受けると、説明変数情報テーブル58に格納される情報のうち最新レコードから所定レコード数分の情報を抽出する。ここで、説明変数情報テーブル58には、取引毎の情報が格納されるため、この1レコードは1取引に対応する。当該所定レコード数は、全レコード数でもよいし、予め決められた値がメモリに格納されるようにしてもよい。パラメータ学習部55は、抽出された説明変数情報テーブル58内のレコード数(取引数)Iを用いて上記(式2)を最小とする各パラメータAからJの値をそれぞれ算出する。このとき、上記(式2)で示されている
ように、パラメータ学習部55は、新しい取引程、説明変数となる各情報の重みが高くなる重みwiを掛け合わせる。結果、パラメータ学習部55は、上記(式4)から(式13)の連立方程式を解くことにより、各パラメータAからJの値をそれぞれ算出する(S93)。
【0077】
パラメータ学習部55は、この算出されたパラメータAからJの値でパラメータテーブル57の値を更新する(S94)。なお、図8及び9で示した価格推定処理及び推定モデル生成処理におけるステップS81からステップS88の順番は入れ替えられてもよい。本発明は、対象書籍の書籍情報、取引情報及び周辺動向情報が取得される順序を限定するものではなく、並列的に実行されるようにしてもよい。
【0078】
〔実施例1における作用及び効果〕
このように実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定部54が、対象となる書籍についての各種情報を数値化し、重回帰分析を用いて生成される推定モデル(回帰式)の説明変数としてこれら各情報をそれぞれ用いることにより、その推定モデルの目的変数とされた書籍の適正価格を推定する。これは、価格推定の対象をオークションや中古市場等で取引される商品としているため、適正価格がその商品に関連する様々な情報から決定されると考えられるからである。実際に、或る書籍の価格を考えた場合、その書籍がテレビやインターネット等のメディアで多く取り上げられた場合、その書籍の著者が有名な賞を取った場合、その書籍を原作とした映画化が決定された場合等には、その書籍の落札価格や中古市場での取引価格が高騰する傾向にある。
【0079】
実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定をするための推定モデルに利用する説明変数としてこのようなその商品の価格に影響する各種情報が用いられる。これら各種情報は、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部53により取得される。具体的には、各種情報として、定価やその書籍の状態のような書籍情報に加えて、同一書籍についての過去の取引実績を示す平均落札(取引)価格や、その書籍に関するニーズを反映する検索回数及び検索バースト度、話題性を反映するニュース出現数及びブログ出現数、同一著者の書籍間における取引実績の統計を示す著者別差額、同一シリーズの書籍間における取引実績の統計を示す同シリーズ差額が利用される。
【0080】
これにより、実施例1において推定された価格は、売れる範囲での最も高い価格、即ち適正価格となる可能性が高い。従って、出品者は、この実施例1における価格推定サーバ10により推定された価格を参照することにより、その出品商品についてのオークションや中古市場等における適正価格を知ることができる。
【0081】
更に、実施例1における価格推定サーバ10では、取引が行われる度に、その取引実績及びその取引時の説明変数で利用される各種情報の状態が説明変数情報テーブル58に格納され、その度に、パラメータ学習部55が、価格推定モデルで利用されるパラメータAからJの最適値を説明変数情報テーブル58に格納される過去の実績情報を用いて推定する。ここで、価格推定モデルのパラメータAからJは、各情報がその商品の価格にどのくらい影響度を持ってどのように組み合わされるべきかということを示す。
【0082】
これにより、実施例1によれば、取引が行われる度に価格推定モデルのパラメータが最適値に更新されるため、適正価格の推定精度を向上させることができる。
【0083】
更に、実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定モデルのパラメータの最適値を推定するにあたり、重み付き最小二乗法が利用される。価格の推定モデルは、過去の取引実績を用いて推定されるが、取引価格は時間と共に変化すると考えられるので、価格推定モデルもその変化に追従する必要がある。適正価格を推定する上では過去の取引より
もより最近の取引の方が重要であると考えられるが、単純な重回帰分析を用いた推定では、過去の取引と最近の取引とが等しく扱われてしまう。そこで、実施例1では、過去の取引実績のうち新しい実績情報が重視されるように各取引についての情報に重み係数が掛け合わされてパラメータが算出される。
【0084】
従って、実施例1によれば、より最適なパラメータ値により生成された価格推定モデルにより価格推定を行うことができる。適正価格の推定精度を向上させることができれば、売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定することができるため、出品者の利益を最大化することができる。更に、出品者にそのような適正価格を提供することができれば、出品者の満足度が上がり、オークションサイトの集客力を上げることにも繋がる。
【0085】
[変形例]
上述の実施例1では、説明の便宜のため、オンラインオークションで取引される商品として中古書籍の場合を例に挙げたが、本発明はこのような対象商品の種類を限定するものではない。
【0086】
書籍でない商品を扱う場合には、書籍名、著者名の替わりに、例えば、商品名、メーカ名を用いるようにすればよい。また、その商品が、書籍のISBNのような標準的なIDを持たず、コンテンツサーバ3から商品情報を取得することが困難な場合には、ユーザに入力させることで取得するようにしてもよい。
【0087】
また、上述の実施例1では、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ別差額、及び状態の全てを説明変数として用いて適正価格を推定したが、それら情報のうちの落札価格と因果関係の強い一部の情報を用いるようにしてもよいし、落札価格と因果関係の強いと思われる他の情報を用いるようにしてもよい。本発明は、適正価格を推定するモデルとして利用される説明変数の数及びその情報を限定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 ネットワーク
3 コンテンツサーバ
4 検索サーバ
6 出品者端末
7 購入者端末
8 オークションシステム
9 オークションサーバ
10 価格推定サーバ
20、31 制御部
21、32 記憶部
28、33 通信部
50 推定処理制御部
51 商品情報取得部
52 取引情報取得部
53 周辺動向情報取得部
54 価格推定部
55 パラメータ学習部
57 パラメータテーブル
58 説明変数情報テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、オークションや中古市場等で取引される中古品の適正価格を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットを用いたオンラインオークション取引により、個人が直接商品を売買する機会が増えている。商品を出品する出品ユーザは、パーソナルコンピュータ(以降、PCと表記する)等の端末装置を用いてインターネット上のオークションサイトにアクセスし、このオークションサイト上に対象商品に関する情報を掲載し、この商品が落札されるのを待つ。このとき、出品者は、対象商品の落札条件を設定することができる。例えば、出品者は、売主希望価格を落札条件として設定する。購入者は、そのような落札条件が設定された商品を落札したい場合には、その売主希望価格より高い価格を指定しなければ落札することができない。
【0003】
出品者は、このような落札条件を用いれば、納得のいかない金額で自身の商品が落札されるのを防ぐことができる。一方で、その売主希望価格を高く設定し過ぎた場合には、入札が減り、その商品が売れない場合がある。よって、出品者にとって、売主希望価格を設定する場合には、この価格を適正に決めることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−329097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、出品者は、売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定したいところ、他の出品者が設定している価格を参考する等して、感覚で売主希望価格を設定するしかなかった。このような状態は、オークション取引時のみでなく、中古市場での取引時においても同様であった。以降、オークションや中古市場で取り引きされる中古品についての売れる範囲での最も高い価格を適正価格と表記する。
【0006】
ところで、このような適正価格は、市場や世の中の動向(ニーズ、話題等)により変動するため、定価や過去の取引金額だけでは正確に決めることができない。特に、過去に取引実績のない中古品については、取引金額の情報さえもないため、一層、適正価格を決めることは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、中古品の適正価格を推定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0009】
本態様は、価格推定装置に関する。本態様に係る価格推定装置は、対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、上記のような商品情報、取引情報及び周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、上記取得手段により取得された商品情報、取引実績
情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての上記対象商品の価格を推定する推定手段と、を備える。
【0010】
本態様では、価格推定の対象となる商品に関し、取引実績に基づく取引情報のみでなく、定価情報を含む商品情報、及び、ニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を推定モデルの説明変数に用いることによりその対象商品の価格を推定する。
【0011】
従って、本態様によれば、取引実績に基づく取引情報に加えて、定価が考慮され、更に、ニーズ及び話題性の少なくとも一方により影響される価格変動に追随した価格を推定することができるため、適正価格を高い精度で推定することができる。
【0012】
本態様に係る価格推定装置は、好ましくは、商品の取引価格が決定される度に、当該商品に関し上記取得手段により取得される、上記推定モデルの説明変数として用いられる各情報、及び、その取引に関し当該推定モデルの目的変数となる取引価格を保存する履歴保存部と、この履歴保存部に保存される取引毎の各情報をそれぞれ用いた重回帰分析により上記推定モデルの各推定パラメータの値を更新する更新手段と、を更に備える。
【0013】
これにより、本態様によれば、取引価格が決定される度に、その取引時の情報も含めた形で推定パラメータが更新されるため、推定モデルの精度を向上させることができ、結果、適正価格を高い精度で推定することができる。
【0014】
本態様に係る価格推定装置において好ましくは、上記更新手段が、前記各推定パラメータの値を更新するにあたり、前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報のうち履歴の新しい情報を重視する重み係数を用いた最小二乗法を用いる。
【0015】
また、本態様に係る価格推定装置において好ましくは、上記商品情報にはその商品の定価及び状態が含まれ、上記取引情報には、対象商品と同一商品の取引実績に基づく平均取引価格が含まれ、上記周辺動向情報には、対象商品に関するコンテンツサーバへの検索回数、コンテンツサーバへの掲載数が含まれるように構成する。
【0016】
なお、本発明の別態様としては、以上の何れかの構成を実現する方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中古品の適正価格を推定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】オークションシステム及びこれに関連するシステムの全体構成を示す図。
【図2】実施例1におけるオークションサーバ9の構成を示す概念図。
【図3】出品商品情報テーブルの例を示す図。
【図4】取引情報テーブルの例を示す図。
【図5】実施例1における価格推定サーバ10の構成を示す概念図。
【図6】パラメータテーブル57の例を示す図。
【図7】説明変数情報テーブル58の例を示す図。
【図8】実施例1における価格推定サーバの価格推定処理を示すフローチャート。
【図9】実施例1における価格推定サーバの推定モデル生成処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態としての価格推定サーバ装置(以降、単に、価格推定サーバと表記する)について具体例を挙げ説明する。以下の実施例は、本実施形態としての価格推定サーバがオンラインオークションシステム(以降、単にオークションシステムと表記する)に適用された例である。しかしながら、当該価格推定サーバは、オンラインオークションシステムのみを対象とするものではなく、オンラインでない一般的なオークションに適用されてもよい。更に、当該価格推定サーバは、オークション形態で取引される商品のみを対象とするものではなく、一般的な中古市場で取引される商品を対象とするようにしてもよい。以下に挙げた実施例はそれぞれ例示であり、本発明は以下の実施例の構成に限定されない。
【実施例1】
【0020】
以下、実施形態としての価格推定サーバの実施例1について説明する。なお、説明を分かり易くするために、実施例1では、オンラインオークションで取引される商品として中古書籍を例に挙げる。但し、本発明はこのような対象商品の種類を限定するものではない。
【0021】
〔システム構成〕
まず、実施例1における価格推定サーバが適用されるオークションシステム及びそれに関連するシステムの全体構成について図1を用いて説明する。図1は、オークションシステム及びこれに関連するシステムの全体構成を示す図である。
【0022】
コンテンツサーバ3は、様々な情報コンテンツを提供する一般的なサーバ群である。コンテンツサーバ3は、例えば、WEBサーバ、ファイルサーバとして実現される。実施例1におけるコンテンツサーバ3には、各書籍についての情報を提供する書籍情報サーバが含まれる。このコンテンツサーバ3では、各書籍についての情報として、書籍名、著者名、定価、出版社名、出版年、シリーズ名等がそれぞれ提供される。このコンテンツサーバ3は、各書籍をISBN(International Standard Book Number)により管理する。コンテンツサーバ3には、その他、ニュース情報を提供するニュースサーバ、ブログサーバ、様々な法人や個人が立ち上げたWEBサーバ等が含まれる。
【0023】
検索サーバ4は、上記コンテンツサーバ3によりネットワーク1上に提供される情報コンテンツを検索するための検索エンジンを持つ。検索サーバ4は、ユーザにより入力されたキーワードに基づいてこの検索エンジンに検索させることにより、そのキーワードを含む情報コンテンツを提供するコンテンツサーバ3のアドレス情報を提供する。このアドレス情報は、例えば、URL(Uniform Resource Locator)である。
【0024】
検索サーバ4は、ユーザによる検索履歴を保持する。検索サーバ4は、この検索履歴に基づいて各検索キーワードについて検索バースト度をそれぞれ算出し、この算出された検索バースト度も併せて保持する。この検索バースト度とは、現在から所定期間(N日前まで)の検索数の傾きを意味する。この所定期間(N)には例えば4日が用いられる。検索サーバ4は、他の装置からの要求によりそれら検索履歴に関する情報を提供する。
【0025】
出品者端末6及び購入者端末7は、例えば、PC、携帯電話等のユーザ端末である。説明の便宜のため、オークションで商品を出品するユーザにより利用される端末を出品者端末6と表記し、オークションで商品を落札(購入)するユーザにより利用される端末を購入者端末7と表記する。出品者端末6及び購入者端末7は、オークションシステム8にアクセスしデータを受け得る一般的な通信機能、提供されたデータに基づく画面を表示及び操作することができる一般的なユーザインタフェース機能等を有するものであればよく、本発明はこれら出品者端末6及び購入者端末7のハードウェア構成及び機能構成を限定す
るものではない。
【0026】
オークションシステム8は、コンテンツサーバ3、検索サーバ4、出品者端末6、購入者端末7等とネットワーク1を介して接続する。オークションシステム8は、ネットワーク1を介してアクセスする出品者端末6及び購入者端末7にオンラインオークションの場を提供する。オークションシステム8は、内部ネットワーク(図示せず)で相互に接続されるオークションサーバ9及び価格推定サーバ10を有する。ネットワーク1及びオークションシステム8の内部ネットワークは、インターネット等の公衆ネットワークであってもよいし、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の社内ネッ
トワークであってもよい。本発明は、このようなネットワークを限定するものではなく、ネットワーク上を流れるプロトコルを限定するものでもない。
【0027】
〔装置構成〕
以下、実施例1におけるオークションシステム8を構成するオークションサーバ9及び価格推定サーバ10の各装置構成についてそれぞれ説明する。
【0028】
〈オークションサーバ〉
図2は、実施例1におけるオークションサーバ9の構成を示す概念図である。
【0029】
オークションサーバ9は、ハードウェア構成として、図2に示されるように、バス25で接続される、制御部20、記憶部21、通信部28等を有する。記憶部21は、例えばハードディスクであり、制御部20で実行される処理で利用される各種情報を記憶する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサ、この
プロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM(Read Only Memory)、RAM(Radom Access Memory)、インタフェース回路等)を有する。通信部28は、ネットワーク1及
びオークションシステム8の内部ネットワーク(図示せず)に接続され、オークションサーバ9と出品者端末6及び購入者端末7との間の通信、オークションサーバ9と価格推定サーバ10との間の通信等を実現する。本発明は、これらオークションサーバ9の通信形態を限定するものではなく、例えば、IP(Internet Protocol)通信が利用される。オ
ークションサーバ9は、PC等のような汎用コンピュータで構築されてもよいし、専用コンピュータで構築されてもよい。本発明は、オークションサーバ9のハードウェア構成を限定するものではない。
【0030】
オークションサーバ9は、記憶部21に記憶されるアプリケーションプログラムが制御部20により実行されることにより、オンラインオークション機能を実現する。以下、オークションサーバ9における、本発明に関連する処理についてのみ詳細に説明し、一般的なオンラインオークション機能については省略又は簡易説明とする。
【0031】
オークションサーバ9は、出品者又は購入者となり得るユーザを管理し、管理される正当ユーザにより利用される出品者端末6及び購入者端末7からのアクセスに対して、出品を受け付けるための画面、入札を受け付ける画面等を提供する。オークションサーバ9と出品者端末6及び購入者端末7との間のインタフェースは、例えばWEBシステムが利用される。
【0032】
オークションサーバ9は、出品を受け付けた各商品についての情報を出品商品情報テーブル22で管理する。図3は、出品商品情報テーブルの例を示す図である。図3に示すように、実施例1では中古書籍を対象とするため、出品商品情報テーブルには、各書籍について、書籍ID、書籍名、著者名、出版社名、出版年、シリーズ名、状態、定価、ISBN等の情報がそれぞれ格納される。書籍IDは、各出品書籍を物として特定するためのIDであり、同じ書籍であっても物として異なる場合にはそれぞれ異なるIDが付与される
。書籍IDは、出品受付時に、オークションサーバ9により付与される。ISBNは、同一書籍について1つ付与される番号であり、上述したように書籍情報サーバにより管理される。
【0033】
オークションサーバ9は、出品者端末6から出品を受け付けると、その受け付けた書籍についての上記各情報をそれぞれ取得する。例えば、オークションサーバ9は、その受け付けた書籍に付されているISBNに基づいて、その書籍についての書籍名、著者名、出版社名、出版年、シリーズ名、定価を書籍情報サーバとなるコンテンツサーバ3から取得する。また、オークションサーバ9は、書籍の状態に関する情報をWEB画面を介してユーザに入力させる。なお、オークションサーバ9は、状態以外の書籍情報もユーザに入力させるようにしてもよい。書籍の状態として、例えば、新品同様、良、傷有り、悪、劣悪を示す状態のスコア(1〜5など)が出品商品情報テーブル22に格納される。
【0034】
その他、オークションサーバ9は、一般的な、落札処理、出品者端末6及び購入者端末7への落札通知処理等を含む。この落札処理において、オークションサーバ9は、出品者に対して出品商品のための落札条件の設定を可能とする。この落札条件には、売主希望価格が含まれる。オークションサーバ9は、落札条件に売主希望価格が設定された出品商品については、その売主希望価格以上の価格での入札がなされない限り、その出品商品の落札を決定しない。この落札条件も出品商品毎にそれぞれ管理される。以降、オークションサーバ9において落札が決定されると、そのオークション取引は成立したものとして説明する。
【0035】
実施例1におけるオークションシステム8は、この落札条件としての売主希望価格の推奨額を出品者に提供する。この売主希望価格の推奨額は、価格推定サーバ10により推定された価格が用いられる。これにより、出品者は、オークションシステム8から提供される推奨価格を参照することにより、その出品商品についての適正価格を知ることができる。出品者は、この推奨価格により、売れる範囲での最も高い価格を売主希望価格に設定することができる。
【0036】
更に、オークションサーバ9は、オンラインオークションでの取引履歴を取引情報テーブル23に格納する。図4は、取引情報テーブルの例を示す図である。取引情報テーブルには、オンラインオークション取引された各商品について、落札日、落札価格、書籍ID、定価及びISBNがそれぞれ格納される。オークションサーバ9は、落札が決定される度に、その落札された商品を示す書籍ID、ISBN、定価、落札価格、及び、落札日をその取引DBに格納し、かつ、それら情報のうちの少なくとも落札価格及び落札日を含む取引情報を取引成立の旨と共に価格推定サーバ10へ送信する。また、オークションサーバ9は、価格推定サーバ10からの要求により、このように保持される取引履歴を価格推定サーバ10へ送る。
【0037】
〈価格推定サーバ〉
図5は、実施例1における価格推定サーバ10の構成を示す概念図である。
【0038】
価格推定サーバ10は、ハードウェア構成として、図5に示されるように、バス35で接続される、制御部31、記憶部32、通信部33等を有する。記憶部32は、例えばハードディスクであり、制御部31で実行される処理で利用される各種情報を記憶する。制御部31は、CPU等の1又は複数のプロセッサ、このプロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM、RAM、インタフェース回路等)を有する。通信部33は、ネットワーク1及びオークションシステム8の内部ネットワーク(図示せず)に接続され、オークションサーバ9と価格推定サーバ10との間の通信、価格推定サーバ10とコンテンツサーバ3及び検索サーバ4との間の通信を実現する。本発明は、価格推定サーバ10の通信形
態を限定するものではなく、例えば、IPパケットにより実現される。価格推定サーバ10は、PC等のような汎用コンピュータで構築されてもよいし、専用コンピュータで構築されるようにしてもよい。本発明は、価格推定サーバ10のハードウェア構成を限定するものではない。
【0039】
価格推定サーバ10は、記憶部32に記憶されるアプリケーションプログラムが制御部31により実行されることにより、図5に示す各処理ブロックを実現する。このような処理ブロックとして、価格推定サーバ10は、推定処理制御部50、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部53、価格推定部54、パラメータ学習部55等を有する。これら処理ブロックにより参照されるデータベースとして、記憶部32には、パラメータテーブル57、説明変数情報テーブル58が格納される。以下、これら価格推定サーバ10の各処理ブロックについてそれぞれ説明する。
【0040】
推定処理制御部50は、上記各処理ブロックにおける処理の開始及び終了をそれぞれ制御することにより、出品商品についての適正価格を推定する処理(以降、価格推定処理と表記する)、及び、この推定処理で利用される推定モデルを生成又は更新する処理(以降、推定モデル生成処理と表記する)を実行する。
【0041】
推定処理制御部50は、オークションサーバ9からの要求を受けた際に、その要求に含まれる書籍IDで特定される出品商品についての価格推定処理を開始する。推定処理制御部50は、価格推定処理を開始すると、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部にそれぞれ価格推定対象の書籍IDを与えることにより、各処理部からその書籍IDに関する書籍情報、取引情報、周辺動向情報をそれぞれ取得する。推定処理制御部30は、これら書籍情報、取引情報、周辺動向情報を価格推定部54へ送ることにより、価格推定部54に価格推定を実行させ、推定された価格情報を価格推定部54から受ける。推定処理制御部30は、この推定された価格をオークションサーバ9へ送る。
【0042】
推定処理制御部50は、オークションサーバ9から取引成立の旨の通知を受けると、その通知に含まれる書籍ID、落札価格及び落札日に基づいて推定モデル生成処理を開始する。推定処理制御部50は、推定モデル生成処理を開始すると、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部にそれぞれ、取引の成立した商品を示す書籍IDを与えることにより、各処理部からその書籍IDに関する書籍情報、取引情報、周辺動向情報をそれぞれ取得する。推定処理制御部50は、これら書籍情報、取引情報、周辺動向情報を新たに説明変数情報テーブル58に格納すると共に、この新たに格納された情報とそれまでに説明変数情報テーブル58に格納されている情報とを用いて推定モデルのパラメータ値を算出するようにパラメータ学習部55に指示する。推定処理制御部50は、パラメータ学習部55により算出されたパラメータ値でパラメータテーブル57を更新する。
【0043】
図6は、パラメータテーブル57の例を示す図である。図6に示すように、パラメータテーブル57には、価格推定部54により利用される推定モデルの各パラメータの値がそれぞれ格納される。実施例1では、9つの説明変数を用いた推定モデルを例に挙げているため、パラメータテーブル57には、10個のパラメータの値が格納される。
【0044】
図7は、説明変数情報テーブル58の例を示す図である。図7に示すように、説明変数情報テーブル58には、取引毎に、書籍ID、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額、状態、落札日、落札価格がそれぞれ格納される。定価及び状態の各フィールドには、書籍情報として取得された情報が格納される。平均落札価格、落札日及び落札価格の各フィールドには、取引情報として取得された情報が格納される。その他の各フィールドは、周辺動向情報として
取得された情報が格納される。説明変数情報テーブル58に格納される情報のうち、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額、状態が推定モデルの説明変数として利用される情報であり、落札価格が推定モデルの目的変数として利用される情報となる。なお、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額の詳細については後述する。
【0045】
商品情報取得部51は、推定処理制御部50からの指示の対象となる書籍IDに関する書籍情報を取得する。商品情報取得部51は、この書籍IDを指定した書籍情報要求をオークションサーバ9へ送ることにより、オークションサーバ9の出品商品情報テーブル22に格納されるその書籍IDの書籍情報を取得する。取得される書籍情報には、少なくとも、定価、状態及びISBNが含まれる。商品情報取得部51は、このように取得された書籍情報を推定処理制御部50へ送る。
【0046】
取引情報取得部52は、推定処理制御部50からの指示を受けると、その指示に含まれる対象書籍のISBNに基づいて、そのISBNで特定される同一書籍についての取引履歴情報をオークションサーバ9に要求する。この要求により、オークションサーバ9は、取引情報テーブル23から、そのISBNが同一となる取引情報、即ち、同一書籍に関する全取引情報を抽出する。これにより、書籍IDが異なる物についても同じISBNが付与された書籍(物)に関する取引情報が全て抽出される。取引情報取得部52は、オークションサーバ9から同一書籍に関する全取引情報を取得すると、この取得された全取引情報を対象として平均落札価格を算出する。この算出された平均落札価格は、同一書籍についての取引実績を示す。取引情報取得部52は、このように算出された平均落札価格を推定処理制御部50へ送る。
【0047】
周辺動向情報取得部53は、推定処理制御部50からの指示に応じて、その指示の対象となる書籍に関する周辺動向情報を取得する。この周辺動向情報は、説明変数情報テーブル58に格納される情報であって、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額を含む。以下、これら各情報の取得手法についてそれぞれ説明する。
【0048】
周辺動向情報取得部53は、推定処理制御部50からの指示の対象となる書籍IDに関する書籍名、著者名、シリーズ名をオークションサーバ9に要求する。周辺動向情報取得部53は、この要求に応じてオークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して、検索回数及び検索バースト度の各情報を検索サーバ4へ要求する。検索サーバ4は、保持される検索履歴に基づいて、その要求で指定された書籍名及び著者名を用いた各検索回数をそれぞれ算出し、算出された各検索回数をそれぞれ周辺動向情報取得部53へ送る。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索回数と、著者名による検索回数と、を平均し、この平均値を検索回数として取得する。
【0049】
また、検索サーバ4は、その要求で指定された書籍名及び著者名を用いた最新の各検索バースト度をそれぞれ取得し、これら各検索バースト度情報を周辺動向情報取得部53へ送る。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索バースト度と、著者名による検索バースト度と、を平均し、この平均値を検索バースト度として取得する。
【0050】
この周辺動向情報として取得された検索回数及び検索バースト度は、対象となる書籍に関連する情報の検索状況を示しているため、対象書籍についてのニーズを反映するとも言える。例えば、消費者からのニーズの高い書籍は、その書籍に関連する情報を検索する者が多くなり、当該検索回数及び検索バースト度は高くなると思われる。
【0051】
更に、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して検索サーバ4へニュースサイト(コンテンツサーバ3)及びブログサイト(コンテンツサーバ3)に対する検索の実行を依頼する。この依頼に応じて、検索サーバ4は、検索エンジンによりその書籍名によるニュースサイト及びブログサイトに対する各検索をそれぞれ実行する。同様に、検索サーバ4は、検索エンジンによりその著者名によるニュースサイト及びブログサイトに対する各検索をそれぞれ実行する。検索サーバ4は、ニュースサイトに対するその書籍名及び著者名による各検索結果、ブログサイトに対するその書籍及び著者名による各検索結果、を周辺動向情報取得部53へ送る。
【0052】
周辺動向情報取得部53は、このように取得された各検索結果を用いて、その書籍名を掲載したニュースサイトの数とその著者名を掲載したニュースサイトの数との平均を算出し、この算出された平均値をニュース出現数として取得する。同様に、周辺動向情報取得部53は、各検索結果を用いて、その書籍名を掲載したブログサイトの数とその著者名を掲載したブログサイトの数との平均を算出し、この算出された平均値をブログ出現数として取得する。
【0053】
この周辺動向情報として取得されたニュース出現数及びブログ出現数は、対象となる書籍に関連する情報を提供するコンテンツ数を示しているため、対象書籍についての話題性を反映するとも言える。例えば、話題性の高い書籍、話題性の高い著者により書かれた書籍については、それに関連する情報を掲載するサイト等が増加すると思われる。
【0054】
また、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された著者名及びシリーズ名を指定して、同一著者名の書籍に関する全取引情報と同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報とをオークションサーバ9へ更に要求する。この要求に応じて、オークションサーバ9は、出品商品情報テーブル22からその著者名及びシリーズ名を持つ各レコードをそれぞれ抽出する。ここで、同一シリーズ名を持つ書籍とは、例えば、複数巻で構成されるマンガ本や小説等がある。オークションサーバ9は、抽出された各レコードのISBN又は書籍IDを検索キーに用いて、取引情報テーブル23からISBN又は書籍IDが一致する各取引情報をそれぞれ抽出する。
【0055】
周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から同一著者名の書籍に関する全取引情報を得ると、各取引について定価と落札価格との差分を算出する。周辺動向情報取得部53は、各差分を同一著者名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を著者別差額として取得する。同様に、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報を得ると、各取引について定価と落札価格との差分を算出する。周辺動向情報取得部53は、各差分を同一シリーズ名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を同シリーズ差額として取得する。著者別差額は、同一著者の書籍間における取引実績の統計を示す値となり、同シリーズ差額は、同一シリーズの書籍間における取引実績の統計を示す値となる。
【0056】
価格推定部54は、推定処理制御部50から送られる或る書籍に関する書籍情報、取引情報、及び周辺動向情報を価格推定モデルに適用することによりその書籍についての適正価格を推定する。この価格推定モデルは、或る書籍の落札価格とその書籍に関する書籍情報、取引情報及び周辺動向情報との因果関係を示し、パラメータテーブル57に格納される各パラメータ値を用いて以下の(式1)のような回帰式で表わされる。なお、書籍情報には定価及び状態が含まれ、取引情報には平均落札価格が含まれ、周辺動向情報には、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ差額が含まれる。
【0057】
【数1】
価格推定部54は、x1に定価を、x2に平均落札価格を、x3に検索回数を、x4に検索バースト度を、x5にニュース出現数を、x6にブログ出現数を、x7に著者別差額を、x8に同シリーズ差額を、x9に状態をあてはめることにより、上記(式1)で示す回帰式から適正価格yを推定する。以降、yはこの推定モデルにより説明したい変数であるため目的変数と表記し、x1からx9はこの目的変数を説明するための変数であるため説明変数と表記する。目的変数に掛け合わされる各パラメータ値は、各説明変数の目的変数に対する因果関係の大きさをそれぞれ示す。価格推定部54は、このように推定された適正価格を推定処理制御部50へ返信する。
【0058】
パラメータ学習部55は、オークション取引が成立する度に、推定処理制御部50から推定モデル生成処理の指示を受け、説明変数情報テーブル58に格納される情報を用いて上記回帰式(式1)で示される推定モデルの各パラメータ値をそれぞれ算出する。パラメータ学習部55は、重回帰分析により上記回帰式(式1)で示される推定モデルの各パラメータ値をそれぞれ取得する。実施例1における重回帰分析には重み付き最小二乗法が利用される。即ち、パラメータ学習部55は、説明変数情報テーブル58に格納される各レコード(各取引)についての、目的変数の測定値に対応する実際の落札価格と、その取引時に取得された各目的変数を用いて推定される価格推定値と、の差の2乗平均が最小となるような各パラメータ値をそれぞれ算出する。パラメータ学習部55は、説明変数情報テーブル58に格納されるレコード数(取引数)Iを用いて以下の(式2)を最小とする各パラメータをそれぞれ算出する。
【0059】
【数2】
重みwiは、新しい取引(説明変数情報テーブル58に格納されるレコード)程、説明変数となる各情報の重みが高くなるように上記(式3)のように設定される。上記(式3)のtcは現在の日を示し、tiはその落札日を示す。この重みwiは、予め調整可能にメモリに保持されるようにしてもよい。
【0060】
上記(式2)を最小とする各パラメータは、各パラメータにおいて上記(式2)を偏微分した値を零とした下記(式4)から(式13)の連立方程式を解くことにより求められる。パラメータ学習部55は、このように求められた各パラメータ値をそれぞれ推定処理制御部50へ返信する。
【0061】
【数3】
〔動作例〕
以下、実施例1における価格推定サーバの動作例について図8及び9を用いて説明する。図8は、実施例1における価格推定サーバの価格推定処理を示すフローチャートである。
【0062】
価格推定サーバ10は、オークションサーバ9から価格推定対象となる書籍の書籍IDを含む推定指示を受ける。価格推定サーバ10では、推定処理制御部50がこの指示を受信すると、その指示の対象となる書籍IDに関する書籍情報を取得するように商品情報取得部51へ依頼する。
【0063】
商品情報取得部51は、この依頼を受けると、この依頼の対象となる書籍IDに関する書籍情報をオークションサーバ9へ要求する。商品情報取得部51は、出品商品情報テーブル22に格納されるその書籍IDに関する定価、状態及びISBNをオークションサーバ9から取得する(S81)。商品情報取得部51は、このように取得された定価、状態及びISBNの各情報を推定処理制御部50へ送る。
【0064】
次に、推定処理制御部50は、上記ISBNを含む取引情報要求を取引情報取得部52へ送る。取引情報取得部52は、この要求に含まれるISBNで特定される同一書籍についての取引履歴情報をオークションサーバ9に要求することにより、その取引履歴情報を取得する(S82)。これにより、取引情報取得部52は、この取得された全取引情報を対象として対象書籍と同一書籍についての平均落札価格を算出する(S83)。取引情報取得部52は、算出された平均落札価格を推定処理制御部50へ送る。
【0065】
続いて、推定処理制御部50は、上記書籍IDを含む周辺動向情報要求を周辺動向情報取得部53に送る。周辺動向情報取得部53は、この要求に含まれる書籍IDに関する書籍名、著者名、シリーズ名をオークションサーバ9に要求することにより、出品商品情報テーブル22に格納されるそれら情報を取得する(S84)。
【0066】
周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名を指定して、検索回数及び検索バースト度の各情報を検索サーバ4へ要求する。この要求に応じて、周辺動向情報取得部53は、検索サーバ4で保持される検索履歴から抽出される、その書籍名及び著者名を用いた各検索回数をそれぞれ取得する。周辺動向情報取得部53は、このように取得された書籍名による検索回数と、著者名による検索回数と、を平均し、この平均値を検索回数として取得する(S85)。
【0067】
続いて、周辺動向情報取得部53は、オークションサーバ9から取得された書籍名及び著者名に基づいて、この書籍名及び著者名を用いたニュースサイト及びブログサイトに対する検索結果を検索サーバ4から取得する。周辺動向情報取得部53は、検索サーバ4から取得された検索結果を用いて、ニュースサイトにおけるその書籍名の出現数とその著者名の出現数との平均を算出し、この算出された平均値をニュース出現数として取得する(S86)。同様に、周辺動向情報取得部53は、各検索結果を用いて、ブログサイトにおけるその書籍名の出現数とその著者名の出現数との平均を算出し、この算出された平均値をブログ出現数として取得する(S86)。
【0068】
更に、周辺動向情報取得部53は、上述のように取得された著者名及びシリーズ名を指定してオークションサーバ9へ要求することにより、同一著者名の書籍に関する全取引情報と同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報と取得する(S87)。各取引情報は、オークションサーバ9内の出品商品情報テーブル22及び取引情報テーブル23から取得される。
【0069】
周辺動向情報取得部53は、同一著者名の書籍に関する全取引情報に基づいて、各取引について定価と落札価格との差分を算出し、各差分を同一著者名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を著者別差額として取得する(S88)。同様に、周辺動向情報取得部53は、同一シリーズ名の書籍に関する全取引情報に基づいて、各取引について定価と
落札価格との差分を算出し、各差分を同一シリーズ名の書籍に関する取引数で平均し、この平均値を同シリーズ差額として取得する(S88)。
【0070】
周辺動向情報取得部53は、上述のように取得された周辺動向情報、即ち、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額に関する各情報を推定処理制御部50へ送る。
【0071】
推定処理制御部50は、対象書籍に関し、商品情報取得部51により取得された定価及び状態、取引情報取得部52により取得された平均落札価格、周辺動向情報取得部53により取得された検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額と共に価格推定依頼を価格推定部54へ送る。
【0072】
価格推定部54は、価格推定依頼を受けると、パラメータテーブル57から推定パラメータ値を取得する(S89)。価格推定部54は、対象書籍に関する上記書籍情報、取引情報及び周辺動向情報をそれぞれ説明変数に代入し、パラメータテーブル57から取得された各推定パラメータを回帰式(式(1))にあてはめることにより、目的変数である適正価格を算出する(S90)。価格推定部54は、このように算出された対象書籍の適正価格を推定処理制御部50へ送る。最終的に、価格推定サーバ10は、この価格推定部54で推定された適正価格をオークションサーバ9へ返信する。
【0073】
オークションサーバ9では、この推定された価格をその書籍を出品する出品者に対象書籍の適正価格として提示する。出品者端末6を用いる出品者は、この提示された価格を参照することにより、その出品する書籍について売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定することができる。
【0074】
図9は、実施例1における価格推定サーバの推定モデル生成処理を示すフローチャートである。オークションサーバ9は、出品商品の落札が決定すると、取引成立の旨の通知を価格推定サーバ10へ送る。価格推定サーバ10では、推定処理制御部50が、その取引成立通知を受信すると(S91)、その通知に含まれる書籍ID、落札価格及び落札日に基づいて以下のような推定モデル生成処理を開始する。
【0075】
推定処理制御部50は、推定モデル生成処理を開始すると、上述の価格推定処理と同様に、取引の成立した書籍を示す書籍IDに関する書籍情報、取引情報及び周辺動向情報を取得する(S81からS88)。具体的には、推定処理制御部50は、定価及び状態を商品情報取得部51から、平均落札価格を取引情報取得部52から、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額及び同シリーズ差額を周辺動向情報取得部53から取得する。推定処理制御部50は、このように価格推定処理時と同様に取得された各情報と共に、上記取引成立通知に含まれる落札日、落札価格及びその取引成立した書籍を示す書籍IDを説明変数情報テーブル58に追加する(S92)。続いて、推定処理制御部50は、パラメータ学習部55へ上述の価格推定処理で利用された推定パラメータAからJをその追加された最新の取引に関する情報も含めた状態で生成するように指示する。
【0076】
パラメータ学習部55は、推定処理制御部50からの指示を受けると、説明変数情報テーブル58に格納される情報のうち最新レコードから所定レコード数分の情報を抽出する。ここで、説明変数情報テーブル58には、取引毎の情報が格納されるため、この1レコードは1取引に対応する。当該所定レコード数は、全レコード数でもよいし、予め決められた値がメモリに格納されるようにしてもよい。パラメータ学習部55は、抽出された説明変数情報テーブル58内のレコード数(取引数)Iを用いて上記(式2)を最小とする各パラメータAからJの値をそれぞれ算出する。このとき、上記(式2)で示されている
ように、パラメータ学習部55は、新しい取引程、説明変数となる各情報の重みが高くなる重みwiを掛け合わせる。結果、パラメータ学習部55は、上記(式4)から(式13)の連立方程式を解くことにより、各パラメータAからJの値をそれぞれ算出する(S93)。
【0077】
パラメータ学習部55は、この算出されたパラメータAからJの値でパラメータテーブル57の値を更新する(S94)。なお、図8及び9で示した価格推定処理及び推定モデル生成処理におけるステップS81からステップS88の順番は入れ替えられてもよい。本発明は、対象書籍の書籍情報、取引情報及び周辺動向情報が取得される順序を限定するものではなく、並列的に実行されるようにしてもよい。
【0078】
〔実施例1における作用及び効果〕
このように実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定部54が、対象となる書籍についての各種情報を数値化し、重回帰分析を用いて生成される推定モデル(回帰式)の説明変数としてこれら各情報をそれぞれ用いることにより、その推定モデルの目的変数とされた書籍の適正価格を推定する。これは、価格推定の対象をオークションや中古市場等で取引される商品としているため、適正価格がその商品に関連する様々な情報から決定されると考えられるからである。実際に、或る書籍の価格を考えた場合、その書籍がテレビやインターネット等のメディアで多く取り上げられた場合、その書籍の著者が有名な賞を取った場合、その書籍を原作とした映画化が決定された場合等には、その書籍の落札価格や中古市場での取引価格が高騰する傾向にある。
【0079】
実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定をするための推定モデルに利用する説明変数としてこのようなその商品の価格に影響する各種情報が用いられる。これら各種情報は、商品情報取得部51、取引情報取得部52、周辺動向情報取得部53により取得される。具体的には、各種情報として、定価やその書籍の状態のような書籍情報に加えて、同一書籍についての過去の取引実績を示す平均落札(取引)価格や、その書籍に関するニーズを反映する検索回数及び検索バースト度、話題性を反映するニュース出現数及びブログ出現数、同一著者の書籍間における取引実績の統計を示す著者別差額、同一シリーズの書籍間における取引実績の統計を示す同シリーズ差額が利用される。
【0080】
これにより、実施例1において推定された価格は、売れる範囲での最も高い価格、即ち適正価格となる可能性が高い。従って、出品者は、この実施例1における価格推定サーバ10により推定された価格を参照することにより、その出品商品についてのオークションや中古市場等における適正価格を知ることができる。
【0081】
更に、実施例1における価格推定サーバ10では、取引が行われる度に、その取引実績及びその取引時の説明変数で利用される各種情報の状態が説明変数情報テーブル58に格納され、その度に、パラメータ学習部55が、価格推定モデルで利用されるパラメータAからJの最適値を説明変数情報テーブル58に格納される過去の実績情報を用いて推定する。ここで、価格推定モデルのパラメータAからJは、各情報がその商品の価格にどのくらい影響度を持ってどのように組み合わされるべきかということを示す。
【0082】
これにより、実施例1によれば、取引が行われる度に価格推定モデルのパラメータが最適値に更新されるため、適正価格の推定精度を向上させることができる。
【0083】
更に、実施例1における価格推定サーバ10では、価格推定モデルのパラメータの最適値を推定するにあたり、重み付き最小二乗法が利用される。価格の推定モデルは、過去の取引実績を用いて推定されるが、取引価格は時間と共に変化すると考えられるので、価格推定モデルもその変化に追従する必要がある。適正価格を推定する上では過去の取引より
もより最近の取引の方が重要であると考えられるが、単純な重回帰分析を用いた推定では、過去の取引と最近の取引とが等しく扱われてしまう。そこで、実施例1では、過去の取引実績のうち新しい実績情報が重視されるように各取引についての情報に重み係数が掛け合わされてパラメータが算出される。
【0084】
従って、実施例1によれば、より最適なパラメータ値により生成された価格推定モデルにより価格推定を行うことができる。適正価格の推定精度を向上させることができれば、売れる範囲での最も高い価格をその売主希望価格に設定することができるため、出品者の利益を最大化することができる。更に、出品者にそのような適正価格を提供することができれば、出品者の満足度が上がり、オークションサイトの集客力を上げることにも繋がる。
【0085】
[変形例]
上述の実施例1では、説明の便宜のため、オンラインオークションで取引される商品として中古書籍の場合を例に挙げたが、本発明はこのような対象商品の種類を限定するものではない。
【0086】
書籍でない商品を扱う場合には、書籍名、著者名の替わりに、例えば、商品名、メーカ名を用いるようにすればよい。また、その商品が、書籍のISBNのような標準的なIDを持たず、コンテンツサーバ3から商品情報を取得することが困難な場合には、ユーザに入力させることで取得するようにしてもよい。
【0087】
また、上述の実施例1では、定価、平均落札価格、検索回数、検索バースト度、ニュース出現数、ブログ出現数、著者別差額、同シリーズ別差額、及び状態の全てを説明変数として用いて適正価格を推定したが、それら情報のうちの落札価格と因果関係の強い一部の情報を用いるようにしてもよいし、落札価格と因果関係の強いと思われる他の情報を用いるようにしてもよい。本発明は、適正価格を推定するモデルとして利用される説明変数の数及びその情報を限定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 ネットワーク
3 コンテンツサーバ
4 検索サーバ
6 出品者端末
7 購入者端末
8 オークションシステム
9 オークションサーバ
10 価格推定サーバ
20、31 制御部
21、32 記憶部
28、33 通信部
50 推定処理制御部
51 商品情報取得部
52 取引情報取得部
53 周辺動向情報取得部
54 価格推定部
55 パラメータ学習部
57 パラメータテーブル
58 説明変数情報テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする価格推定装置。
【請求項2】
商品の取引価格が決定される度に、該商品に関し前記取得手段により取得される、前記推定モデルの説明変数として用いられる各情報、及び、その取引に関し前記推定モデルの目的変数となる該取引価格を保存する履歴保存部と、
前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報をそれぞれ用いた重回帰分析により前記推定モデルの各推定パラメータの値を更新する更新手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の価格推定装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記各推定パラメータの値を更新するにあたり、前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報のうち履歴の新しい情報を重視する重み係数を用いた最小二乗法を用いることを特徴とする請求項2に記載の価格推定装置。
【請求項4】
前記商品情報にはその商品の定価及び状態が含まれ、前記取引情報には、対象商品と同一商品の取引実績に基づく平均取引価格が含まれ、前記周辺動向情報には、対象商品に関するコンテンツサーバへの検索回数、コンテンツサーバへの掲載数が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の価格推定装置。
【請求項5】
コンピュータが、
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得ステップと、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定ステップと、
を実行することを特徴とする価格推定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得ステップと、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定ステップと、
を実行させることを特徴とする価格推定プログラム。
【請求項1】
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得手段と、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする価格推定装置。
【請求項2】
商品の取引価格が決定される度に、該商品に関し前記取得手段により取得される、前記推定モデルの説明変数として用いられる各情報、及び、その取引に関し前記推定モデルの目的変数となる該取引価格を保存する履歴保存部と、
前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報をそれぞれ用いた重回帰分析により前記推定モデルの各推定パラメータの値を更新する更新手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の価格推定装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記各推定パラメータの値を更新するにあたり、前記履歴保存部に保存される取引毎の各情報のうち履歴の新しい情報を重視する重み係数を用いた最小二乗法を用いることを特徴とする請求項2に記載の価格推定装置。
【請求項4】
前記商品情報にはその商品の定価及び状態が含まれ、前記取引情報には、対象商品と同一商品の取引実績に基づく平均取引価格が含まれ、前記周辺動向情報には、対象商品に関するコンテンツサーバへの検索回数、コンテンツサーバへの掲載数が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の価格推定装置。
【請求項5】
コンピュータが、
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得ステップと、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定ステップと、
を実行することを特徴とする価格推定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
対象商品に関する定価情報を含む商品情報、その対象商品に関する取引実績に基づく取引情報、及び、その対象商品に関するニーズ及び話題性の少なくとも一方を反映する情報を含む周辺動向情報を取得する取得ステップと、
前記商品情報、前記取引情報及び前記周辺動向情報と商品価格との関係性を示した推定モデルにおいて、前記取得手段により取得された商品情報、取引実績情報及び周辺動向情報を説明変数として用いることにより、目的変数としての前記対象商品の価格を推定する推定ステップと、
を実行させることを特徴とする価格推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−43970(P2011−43970A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191245(P2009−191245)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(591117192)ニフティ株式会社 (144)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(591117192)ニフティ株式会社 (144)
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