説明

便器排水口接続構造

【課題】排水管の施工状態の新しさにかかわらず、内径の異なる数種類の排水管に対応できて、アダプターが排水管内に落ちることを防止する便器排水口接続構造を提供する。
【解決手段】便器排水口接続構造において、床フランジ5は円筒形状の垂直接続筒部7と垂直接続筒部7の上端から外下方に延出されるカバー片8とを備え、アダプター6は筒状で床フランジ5のカバー片8内に収まり、内周に床フランジ5の垂直接続筒部7が嵌合される内周接続部9を設け、外周に排水管4の上端部が被装嵌合され得る内径の異なる排水管接続部10を複数設け、便器1の排水口2は床フランジ5の垂直接続筒部7内に挿入され、床フランジ5の垂直接続筒部7にてアダプター6の嵌め込み高さを変えることにより、排水管4の内径に適したアダプター6の排水管接続部10が排水管4の上端部に嵌合されるようになした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、便器の排水口と床面に開口する排水管の上端部とを床フランジ、アダプターにより接続する便器排水口接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式便器の排水管としては、現在、硬質塩化ビニル管が多く用いられているが、この硬質塩化ビニル管には、図13(a)に示すVP75、図13(b)に示すVU75、図13(c)に示すVP100、図13(d)に示すVU100の四種類がある。ここで、VP75は外径が89mmφ、内径が77mmφであり、VU75は外径が89mmφ、内径が83mmφであり、VP100は外径が114mmφ、内径が100mmφであり、VU100は外径が114mmφ、内径が107mmφである。そして、最近の施工では、図13(a)〜(d)に示すように、床面3にフラットに排水管4a〜4dを切断するのが主流となっている。一方、古い施工では、図14(a)〜(d)に示すように、床面3より突出させて排水管4a〜4dを切断していた。なお、図14(a)〜(d)は、図13(a)〜(d)にそれぞれ対応する排水管4a〜4dを示している。
【0003】
従来から、特開平7−42219号公報に示されるように、便器の排水口と床面に開口する排水管の上端部とを床フランジ、アダプターにより接続する便器排水口接続構造が知られている。この便器排水口接続構造は、図15(c)、(d)に示すように、アダプター6の内周に床フランジ5の垂直接続筒部7が挿入嵌合される内周接続部9を設け、アダプター6の外周に、排水管4dの上端部が被装嵌合され得る大径排水管接続部10aと、排水管4cの上端部が被装嵌合され得る小径排水管接続部10cとを上下に階段状に配設している。
【0004】
また、図15(a)、(b)に示すように、床フランジ5の垂直接続筒部7の外周に、排水管4bの上端部が被装嵌合され得る大径嵌合部21と、排水管4aの上端部が被装嵌合され得る小径嵌合部22とを上下に階段状に配設している。
【0005】
さらに、特開平7−42219号公報に示される別の実施形態では、図16(d)に示すように、アダプター6は二重筒形状に形成され、切断可能な鍔片部26にて外筒部23と内筒部24に分離され、外筒部23の外周に排水管4dの上端部が被装嵌合され得る大径排水管接続部10aを設けている。この場合、アダプター6の外筒部23を鍔片部26にて切断除去すると、図16(b)に示すように、内筒部24の外周は排水管4bの上端部が被装嵌合され得る小径排水管接続部10cとなる。そして、図16(c)に示すように、内径がアダプター6の小径排水管接続部10cと同一で外径が排水管4cの内径と同一である円筒形状の補助アダプター25を外筒部23が切断除去されたアダプター6の内筒部24の外周に嵌合すると、補助アダプター25の外周は排水管4cの上端部が被装嵌合され得る中間径排水管接続部10bとなる。また、図16(a)に示すように、床フラ
ンジ5の垂直接続筒部7の外周は、アダプター6を介在させることなく、排水管4aの上端部と被装嵌合され得る。
【特許文献1】特開平7−42219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例の前者においては、図15(c)、(d)に示すように、排水管4cと排水管4dとでは、床面3に対する床フランジ5の設置高さが変化するので、施工が困難であった。
【0007】
また、上記従来例の後者においては、図16(c)に示すように、補助アダプター25を設けたり、アダプター6を切断したりする加工が必要であり、管理コストの増大や施工ミスを発生させるものであった。
【0008】
さらに、上記従来例の両者においては、最近の施工状態の排水管4a〜4dとの接続を前提としているため、古い施工状態の排水管4a〜4dと接続する際には、施工時に排水管4a〜4dを床面3とフラットになるよう切断する作業を強いられていた。
【0009】
加えて、図15(d)、図16(d)に示す便器排水口接続構造においては、アダプター6が床フランジ5の垂直接続筒部7の外周から外れ、排水管4d内に落ちるおそれがあった。
【0010】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、排水管の施工状態の新しさにかかわらず、内径の異なる数種類の排水管に対応できて、アダプターが排水管内に落ちることを防止する便器排水口接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は、便器の排水口と床面に開口する排水管の上端部とを床フランジ、アダプターにより接続する便器排水口接続構造において、床フランジは円筒形状の垂直接続筒部と垂直接続筒部の上端から外下方に延出されるカバー片とを備え、アダプターは筒状で床フランジのカバー片内に収まり、内周に床フランジの垂直接続筒部が嵌合される内周接続部を設け、外周に排水管の上端部が被装嵌合され得る内径の異なる排水管接続部を内径の小さいものほど下方に位置するよう階段状に複数設け、便器の排水口は床フランジの垂直接続筒部内に挿入され、床フランジの垂直接続筒部にてアダプターの嵌め込み高さを変えることにより、排水管の内径に適したアダプターの排水管接続部が排水管の上端部に嵌合されるようにしている。
【0012】
本願請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の便器排水管接続用アダプターにおいて、アダプターの下方に開口し、排水管の上端部が納まる環状溝を、階段状に設けられる排水管接続部のうち、最小径の排水管接続部とつながるように設けたことを特徴としている。
【0013】
本願請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の便器排水管接続用アダプターにおいて、アダプターの上方に最小径の排水管接続部を設け、アダプターの上方に開口し、最小径の排水管接続部とつながるよう環状溝を設け、アダプターを上下逆にして用いることにより、排水管の上端部が環状溝に納まるようになしたことを特徴としている。
【0014】
本願請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水管接続用アダプターにおいて、アダプターを接着剤が内包されたマイクロカプセルを含む樹脂材料で構成したことを特徴としている。
【0015】
本願請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水管接続用アダプターにおいて、アダプターの内周接続部を弾性体で構成したことを特徴としている。
【0016】
本願請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水管接続用アダプターにおいて、床フランジの垂直接続筒部の外周とアダプターの内周接続部を相互に螺合するねじ構造で構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1記載の発明の便器排水口接続構造においては、アダプターの外周に排水管の上端部が被装嵌合され得る内径の異なる排水管接続部を内径の小さいものほど下方に位置するよう階段状に複数設けることにより、床フランジの他に単一のアダプターにて、内径の異なる数種類の排水管(VP75、VU75、VP100、VU100)に対応することができる。また、床フランジの設置高さを変化させることがないうえ、アダプターを切断する加工も不要であることから、施工が容易となり生産効率も向上され、施工時のミスも減少されるものである。さらに、排水管の内径に適したアダプターの排水管接続部が排水管の上端部に嵌合されることから、アダプターが床フランジから外れて、排水管内に落ちることを防止することができる。しかも、床フランジの垂直接続筒部とカバー片と床面とに挟まれた空間で床面から突出した排水管端面の高さを吸収できるため、排水管端面が床面にフラットである最近の施工状態の排水管に加えて、排水管端面が床面より突出した古い施工状態の排水管にも対応することができる。
【0018】
本願請求項2記載の発明の便器排水口接続構造においては、特に、アダプターの下方に開口する環状溝を設けることにより、床面から突出した排水管の高さを環状溝で吸収できるため、床フランジの高さを低く抑えることができる。
【0019】
本願請求項3記載の発明の便器排水口接続構造においては、特に、アダプターの上方に開口する環状溝を設けることにより、環状溝の外周側の肉厚が大きくなり、アダプターを上下逆にして用いることで床面とアダプターの接する面積が増え、アダプターを安定して固定することができる。さらに、環状溝に排水管を納める際の押し込み圧力に耐えることができる。
【0020】
本願請求項4記載の発明の便器排水口接続構造においては、特に、アダプターを接着剤が内包されたマイクロカプセルを含む樹脂材料で構成することにより、接続時に、押し込み圧力を受けたマイクロカプセルから接着剤が染み出るので、床フランジの垂直接続筒部とアダプターの内周接続部、排水管の上端部とアダプターの排水管接続部とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。
【0021】
本願請求項5記載の発明の便器排水口接続構造においては、特に、アダプターの内周接続部を弾性体で構成することにより、床フランジの垂直接続筒部とアダプターの内周接続部とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。
【0022】
本願請求項6記載の発明の便器排水口接続構造においては、特に、床フランジの垂直接続筒部の外周とアダプターの内周接続部を相互に螺合するねじ構造で構成することにより、床フランジの垂直接続筒部とアダプターの内周接続部とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。また、床フランジの垂直接続筒部におけるアダプターの嵌め込み高さを確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1乃至図5は、本願発明の第1の実施形態である便器排水口接続構造を示している。この便器排水口接続構造は、図1に示すように、便器1の排水口2と床面3に開口する排水管4の上端部とを床フランジ5、アダプター6により接続する便器排水口接続構造において、床フランジ5は円筒形状の垂直接続筒部7と垂直接続筒部7の上端から外下方に延出されるカバー片8とを備え、アダプター6は筒状で床フランジ5のカバー片8内に収まり、内周に床フランジ5の垂直接続筒部7が嵌合される内周接続部9を設け、外周に排水管4の上端部が被装嵌合され得る内径の異なる排水管接続部10を内径の小さいものほど下方に位置するよう階段状に複数設け、便器1の排水口2は床フランジ5の垂直接続筒部7内に挿入され、床フランジ5の垂直接続筒部7にてアダプター6の嵌め込み高さを変えることにより、排水管4の内径に適したアダプター6の排水管接続部10が排水管4の上端部に嵌合されるようになしている。
【0024】
以下、この実施形態の便器排水口接続構造を、より具体的詳細に説明する。図3に示すように、トイレの床面3に設置される便器1は、その内部に汚水を排出するための排水口2を備えている。排水口2と床面3に開口する排水管4の上端部とを床フランジ5、アダプター6とで接続することにより、排水口2からの汚水は排水管4内へ排出される。
【0025】
床フランジ5は、図2に示すように、円筒形状からなる垂直接続筒部7と垂直接続筒部7の上端から外下方に延出されるカバー片8とからなる。カバー片8は、垂直接続筒部7の上端から外方に延設される水平保持部17と、水平保持部17の末端から下方へ垂設される垂直保持部18と、垂直保持部18の下端から外方に突設されるフランジ部19とでなり、床フランジ5は合成樹脂にて一体に成形される。そして、床フランジ5はフランジ部19にて床面3に固定される。
【0026】
アダプター6は、図2に示すように、全体として円筒形状に合成樹脂にて一体に成形され、床フランジ5のカバー片8内に収まるものである。そして、内周に床フランジ5の垂直接続筒部7が嵌合される内周接続部9を設け、外周に排水管4の上端部が被装嵌合され得る大径排水管接続部10aと中間径排水管接続部10bと小径排水管接続部10cとを設け、内径の小さい排水管接続部10ほど下方に位置するよう階段状に配設している。
【0027】
次に、本実施形態の床フランジ5とアダプター6を用いて、便器1の排水口2と最近の施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。図4(a)に示すように、VP75規格の排水管4aの上端部は、その内周が床フランジ5の垂直接続筒部7の外周に嵌合され、排水口2が床フランジ5の垂直接続筒部7内に挿入されて接続される。図4(b)に示すように、VU75規格の排水管4bの上端部は、アダプター6の外周に配設された小径排水管接続部10cに嵌合される。アダプター6の内周接続部9は床フランジ5の垂直接続筒部7の外周に嵌合される。そして、排水口2が床フランジ5の垂直接続筒部7内に挿入されて、排水管4bの上端部は排水口2と接続される。同様に、図4(c)、(d)に示すように、VP100の排水管4cの上端部は中間径排水管接続部10bに嵌合され、VU100の排水管4dの上端部は大径排水管接続部10aにそれぞれ嵌合されて排水口2と接続される。この場合、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは排水管4の内径に応じて変化し、排水管4の内径が小さいものほど嵌め込み高さが高くなる。これは、内径の小さい排水管接続部10ほどアダプター6の下方に位置するよう階段状に配設していることによる。よって、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さを変えることにより、排水管4b〜4dの上端部はアダプター6の排水管接続部10a〜10cに適宜、被装嵌合される。
【0028】
なお、アダプター6の内周接続部9に床フランジ5の垂直接続筒部7を挿入嵌合してから、アダプター6の排水管接続部10a〜10cを排水管4b〜4dの上端部に被装してもよいし、排水管4b〜4dの上端部にアダプター6の排水管接続部10a〜10cを被装してから、アダプター6の内周接続部9に床フランジ5の垂直接続筒部7を挿入嵌合してもよい。
【0029】
また、図5(a)〜(d)を用いて、便器1の排水口2と古い施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。ここで、図5(a)〜(d)は、図4(a)〜(d)にそれぞれ対応する。図5(a)に示すように、排水管4aの上端部は、図4(a)に示す排水管4aと同様に、その内周が床フランジ5の垂直接続筒部7の外周に嵌合されて接続される。この場合、床面3から突出した排水管4aの上端部は床フランジ5の垂直接続筒部7とカバー片8と床面3とに挟まれた空間に納まるため、床フランジ5の設置高さは図4(a)と同じになる。図5(b)に示すように、排水管4bの上端部は、図4(b)に示す排水管4bと同様に、小径排水管接続部10cに嵌合されて接続される。この場合、床面3から突出した排水管4bの高さ分だけ、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは高くなる。しかし、床フランジ5の垂直接続筒部7とカバー片8と床面3とに挟まれた空間にアダプター6が納まるため、床フランジ5の設置高さは図4(b)と同じになる。同様に、図5(c)、(d)に示すように、排水管4cの上端部は中間径排水管接続部10bに嵌合され、排水管4dの上端部は大径排水管接続部10aに嵌合されてそれぞれ接続される。この場合も、床面3から突出した排水管4c、4dの高さ分だけ、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは高くなるが、床フランジ5の設置高さは図4(c)、(d)と同じになる。
【0030】
したがって、床フランジ5の他に単一のアダプター6にて、内径の異なる四種類の排水管4a〜4dに対応することができる。また、床フランジ5の設置高さを変化させることがないうえ、アダプター6を切断する加工も不要であることから、施工が容易となり生産効率も向上され、施工時のミスも減少されるものである。さらに、排水管4b〜4dの内径に適したアダプター6の排水管接続部10a〜10cが排水管4b〜4dの上端部に嵌合されることから、アダプター6が床フランジ5から外れて、排水管4b〜4d内に落ちることを防止することができる。しかも、床フランジ5の垂直接続筒部7とカバー片8と床面3とに挟まれた空間で床面3から突出した排水管端面の高さを吸収できるため、排水管端面が床面3と同一となっている最近の施工状態の排水管4a〜4dに加えて、排水管端面が床面3より突出した古い施工状態の排水管4a〜4dにも対応することができる。
【0031】
図6及び図7は、本願発明の第2の実施形態である便器排水口接続構造を示している。ここでは、上記第1の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。この便器排水口接続構造は、図6(b)に示すように、アダプター6の下方に開口し、排水管4bの上端部が納まる環状溝11を小径排水管接続部10cとつながるように設けている。
【0032】
次に、本実施形態の床フランジ5とアダプター6を用いて、便器1の排水口2と最近の施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。図6(a)に示すように、排水管4aの上端部は図4(a)と同一の方法で接続される。図6(b)に示すように、排水管4bの上端部はアダプター6の外周に配設された小径排水管接続部10cに嵌合されて接続される。この場合、環状溝11は排水管4bの上端部で塞がれる。また、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図4(b)と同じであり、床フランジ5の設置高さも変化しない。図6(c)、(d)に示すように、排水管4c、4dの上端部は図4(c)、(d)とそれぞれ同一の方法で接続される。この場合も、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図4(c)、(d)とそれぞれ同じであり、床フランジ5の設置高さも変化しない。
【0033】
また、図7(a)〜(d)を用いて、便器1の排水口2と古い施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。ここで、図7(a)〜(d)は、図6(a)〜(d)にそれぞれ対応する。図7(a)に示すように、排水管4aの上端部は図5(a)と同一の方法で接続される。図7(b)に示すように、排水管4bの上端部は環状溝11に納まり、環状溝11とつながる小径排水管接続部10cに嵌合されて接続される。この場合、床面3から突出した排水管4bの高さを環状溝11で吸収できるため、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図5(b)より低くなり、床フランジ5の設置高さは変化しない。図7(c)、(d)に示すように、排水管4c、4dの上端部は図5(c)、(d)とそれぞれ同一の方法で接続される。この場合も、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図5(c)、(d)とそれぞれ同じであり、床フランジ5の設置高さも変化しない。
【0034】
したがって、アダプター6の下方に開口する環状溝11を設けるようにしたので、床面3から突出した排水管4bの高さを環状溝11で吸収できるため、床フランジ5の高さを低く抑えることができる。
【0035】
図8及び図9は、本願発明の第3の実施形態である便器排水口接続構造を示している。ここでは、上記第1の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。この便器排水口接続構造は、図8(c)に示すように、アダプター6の上方に小径排水管接続部10cを設け、アダプター6の上方に開口し、小径排水管接続部10cとつながるよう環状溝11を設け、アダプター6を上下逆にして用いることにより、排水管4bの上端部が環状溝11に納まるようになしている。
【0036】
次に、本実施形態の床フランジ5とアダプター6を用いて、便器1の排水口2と最近の施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。図8(a)に示すように、排水管4aの上端部は図4(a)と同一の方法で接続される。図8(b)に示すように、アダプター6の上面を下にして用いると、排水管4bの上端部はアダプター6の上方に設けられた小径排水管接続部10cに嵌合されて接続される。この場合、環状溝11は排水管4bの上端部で塞がれる。また、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図4(b)と同じであり、床フランジ5の設置高さも変化しない。さらに、図6(b)に比べ、環状溝11の外周側の肉厚が大きいので、床面3とアダプター6の接する面積が増える。図8(c)、(d)に示すように、アダプター6の上面を上にして用いると、排水管4cの上端部は中間径排水管接続部10bに嵌合され、排水管4dの上端部は大径排水管接続部10aに嵌合されてそれぞれ接続される。この場合、アダプター6の上方に設けられた小径排水管接続部10cの高さ分だけ、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図4(c)、(d)より高くなり、床フランジ5の設置高さは変化しない。
【0037】
また、図9(a)〜(d)を用いて、便器1の排水口2と古い施工状態の排水管4a〜4dの上端部とを接続する方法を説明する。ここで、図9(a)〜(d)は、図8(a)〜(d)にそれぞれ対応する。図9(a)に示すように、排水管4aの上端部は図5(a)と同一の方法で接続される。図9(b)に示すように、アダプター6の上面を下にして用いると、排水管4bの上端部は環状溝11に納まり、環状溝11とつながる小径排水管接続部10cに嵌合されて接続される。この場合、床面3から突出した排水管4bの高さを環状溝11で吸収できるため、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図5(b)より低くなり、床フランジ5の設置高さは変化しない。また、図7(b)に比べ、環状溝11の外周側の肉厚が大きいので、施工時の押し込み圧力に耐えることができる。図9(c)、(d)に示すように、アダプター6の上面を上にして用いると、排水管4cの上端部は中間径排水管接続部10bに嵌合され、排水管4dの上端部は大径排水管接続部10aに嵌合されてそれぞれ接続される。この場合、アダプター6の上方に設けられた小径排水管接続部10cの高さ分だけ、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さは図5(c)、(d)より高くなり、床フランジ5の設置高さは変化しない。
【0038】
したがって、アダプター6の上方に開口する環状溝11を設けることにより、環状溝11の外周側の肉厚が大きくなり、アダプター6を上下逆にして用いることで床面3とアダプター6の接する面積が増え、アダプター6を安定して固定することができる。さらに、環状溝11に排水管4bを納める際の押し込み圧力に耐えることができる。
【0039】
図10は、本願発明の第4の実施形態である便器排水口接続構造を示している。ここでは、上記第1の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。この便器排水口接続構造は、図10(a)、(b)に示すように、アダプター6を接着剤12が内包されたマイクロカプセル13を含む樹脂材料14で構成している。
【0040】
アダプター6は、接着剤12が内包されたマイクロカプセル13を樹脂材料14に分散させて、全体として円筒形状に合成樹脂にて一体に成形されたものである。
【0041】
したがって、接続時に、押し込み圧力を受けたマイクロカプセル13から接着剤12が染み出るので、床フランジ5の垂直接続筒部7とアダプター6の内周接続部9、排水管4の上端部とアダプター6の排水管接続部10とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。
【0042】
図11は、本願発明の第5の実施形態である便器排水口接続構造を示している。ここでは、上記第1の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。この便器排水口接続構造は、図11に示すように、アダプター6の内周接続部9を弾性体15で構成している。
【0043】
アダプター6は、弾性体15として例えばエラストマ樹脂を2色同時成形することにより、全体として円筒形状に一体に成形されたものである。
【0044】
したがって、床フランジ5の垂直接続筒部7とアダプター6の内周接続部9とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。
【0045】
図12は、本願発明の第6の実施形態である便器排水管接続用アダプターを示している。ここでは、上記第1の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。この便器排水口接続構造は、図12に示すように、床フランジ5の垂直接続筒部7の外周とアダプター6の内周接続部9を相互に螺合するねじ構造16で構成している。
【0046】
したがって、床フランジ5の垂直接続筒部7とアダプター6の内周接続部9とを確実に密着させ、汚物、悪臭の漏れを防止することができる。また、床フランジ5の垂直接続筒部7におけるアダプター6の嵌め込み高さを確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の第1の実施形態である便器排水口接続構造を示す断面図である。
【図2】同便器排水口接続構造を示す分解図である。
【図3】同便器排水口接続構造を施工した便器の一部を破断して示す部分断面図である。
【図4】同便器排水口接続構造を最近の施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図5】同便器排水口接続構造を古い施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図6】本願発明の第2の実施形態である便器排水口接続構造を最近の施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図7】同便器排水口接続構造を古い施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図8】本願発明の第3の実施形態である便器排水口接続構造を最近の施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図9】同便器排水口接続構造を古い施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図10】本願発明の第4の実施形態である便器排水口接続構造を示し、(a)は断面図、(b)は(a)におけるA部拡大図をそれぞれ示している。
【図11】本願発明の第5の実施形態である便器排水口接続構造を示す断面図である。
【図12】本願発明の第6の実施形態である便器排水口接続構造を示す断面図である。
【図13】最近の施工状態の排水管を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100をそれぞれ示す断面図である。
【図14】古い施工状態の排水管を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100をそれぞれ示す断面図である。
【図15】従来例である便器排水口接続構造を最近の施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【図16】従来例である便器排水口接続構造を最近の施工状態の排水管に用いた状態を示し、(a)はVP75、(b)はVU75、(c)はVP100、(d)はVU100との接続状態をそれぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 便器
2 排水口
3 床面
4 排水管
4a VP75
4b VU75
4c VP100
4d VU100
5 床フランジ
6 アダプター
7 垂直接続部
8 カバー片
9 内周接続部
10 排水管接続部
10a 大径排水管接続部
10b 中間径排水管接続部
10c 小径排水管接続部
11 環状溝
12 接着剤
13 マイクロカプセル
14 樹脂材料
15 弾性体
16 ネジ構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の排水口と床面に開口する排水管の上端部とを床フランジ、アダプターにより接続する便器排水口接続構造において、床フランジは円筒形状の垂直接続筒部と垂直接続筒部の上端から外下方に延出されるカバー片とを備え、アダプターは筒状で床フランジのカバー片内に収まり、内周に床フランジの垂直接続筒部が嵌合される内周接続部を設け、外周に排水管の上端部が被装嵌合され得る内径の異なる排水管接続部を内径の小さいものほど下方に位置するよう階段状に複数設け、便器の排水口は床フランジの垂直接続筒部内に挿入され、床フランジの垂直接続筒部にてアダプターの嵌め込み高さを変えることにより、排水管の内径に適したアダプターの排水管接続部が排水管の上端部に嵌合されるようになしたことを特徴とする便器排水口接続構造。
【請求項2】
アダプターの下方に開口し、排水管の上端部が納まる環状溝を、階段状に設けられる排水管接続部のうち、最小径の排水管接続部とつながるように設けたことを特徴とする請求項1記載の便器排水口接続構造。
【請求項3】
アダプターの上方に最小径の排水管接続部を設け、アダプターの上方に開口し、最小径の排水管接続部とつながるよう環状溝を設け、アダプターを上下逆にして用いることにより、排水管の上端部が環状溝に納まるようになしたことを特徴とする請求項1記載の便器排水口接続構造。
【請求項4】
アダプターを接着剤が内包されたマイクロカプセルを含む樹脂材料で構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水口接続構造。
【請求項5】
アダプターの内周接続部を弾性体で構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水口接続構造。
【請求項6】
床フランジの垂直接続筒部の外周とアダプターの内周接続部を相互に螺合するねじ構造で構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の便器排水口接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−7286(P2010−7286A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165455(P2008−165455)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】