説明

便器洗浄タンク装置

【課題】給水遅延機構と流動水吐水口を備えた便器洗浄タンク装置において、流動水吐水口から落下した流動水が給水遅延機構の遅延槽内に入り込むことによって給水遅延機構の正常な動作を阻害する問題を解決する。
【解決手段】給水弁58と、フロート28と、それらを連繋する連繋アーム30とを備えたボールタップ装置22と、遅延槽200内にフロート28を位置させ、排水弁の開弁後に遅延槽200の内部の水を小孔を通じ流出させて槽200内の水位低下を遅らせ、給水弁58の開弁を遅延させる給水遅延機構202と、凍結防止のための流動水を吐水して連繋アーム30を伝って流下させる流動水吐水口150と、を有する便器洗浄タンク装置において、遅延槽200の上側に、連繋アーム30を伝って流下する流動水を水切りする水切部230及び水受部材216を設けて流動水を遅延槽200外に導くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗浄タンク内部に便器の洗浄水を貯える便器洗浄タンク装置に関し、特に排水弁の開弁後にボールタップの給水弁を遅らせて開弁させる給水遅延機構及び凍結防止のための流動水吐水口を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
内部にボールタップを備えた一般の便器洗浄タンク装置にあっては、排水弁を開いて洗浄タンク内に貯溜してある洗浄水を便器に向けて放出すると、水位の低下によってボールタップのフロートが下降して給水弁を開き、排水弁の開弁後に直ちにタンク内への給水を開始する。
この場合、給水弁の開弁によりタンク内に給水された水もまた、タンク内に貯溜されていた洗浄水とともに洗浄タンクの放出口から便器に向けて放出され、便器洗浄水として用いられる。
【0003】
しかしながら便器洗浄のための洗浄水量としては、洗浄タンク内にもともと貯溜されていた洗浄水の水量だけで十分であり、そこに新たな給水が加わって便器洗浄用として用いられても、その給水は余分な水量となり、多くの水が無駄に放出されてしまうこととなる。
【0004】
このようなことから、排水弁の開弁後に直ちにボールタップの給水弁を開いて給水を行うのではなく、排水弁の開弁後に給水弁を遅らせて開弁させるための給水遅延機構を設けたものが従来提案されている。
例えば下記特許文献1に、この種の給水遅延機構を設けた便器洗浄タンク装置が開示されている。
【0005】
図9はその具体例を示している。
同図において300は便器洗浄タンク装置、302は洗浄タンクであり、304はその内部に配置されたボールタップである。
ここでボールタップ304は、給水弁と、給水弁の開弁によりタンク内給水を行う給水口306と、フロート308及びフロート308と給水弁とを連繋する連繋アーム310とを有している。
312は給水遅延機構で、314はその主要素をなす小容量の遅延槽である。
【0006】
遅延槽314は底部に小孔316を有しており、遅延槽314内部の洗浄水Wはこの小孔316を通じて槽外部、即ち洗浄タンク302内に流出する。
尚、318は洗浄タンク302底部の放出口であり、320はこれを開閉する排水弁である。
【0007】
この便器洗浄タンク装置300では、排水弁320を開くと洗浄タンク302内に貯留されていた洗浄水Wが、放出口318から便器に向けて一気に放出されるが、遅延槽314内の洗浄水Wは小孔316を通じて少しずつ流出するため、洗浄水Wの水位が速やかに下降するのに対して、遅延槽312内の洗浄水Wの水位の低下は遅く、従って排水弁320が開いて洗浄水Wが放出開始されても直ぐにはボールタップ304の給水弁は開かず、タンク内への給水は行われない。
【0008】
ここでは洗浄水Wが全体的に放出されて排水弁320が閉じるタイミングで、そこで初めて洗浄水Wの水位の低下に基づいてボールタップ304の給水弁が開き、タンク内への給水が開始される(そのように小孔316の大きさ,つまり小孔316からの流出流量が定められている)。
従ってこの便器洗浄タンク装置300では、排水弁320の開弁後の、給水口306からの給水が便器洗浄水として無駄に消費されてしまうのを防止することができる。
【0009】
ところで、寒冷地においては配管内や便器のトラップ部の水が凍結を起す問題があり、そこで寒冷地に用いられる便器洗浄タンク装置としては、小量で水を連続的に流して便器に給水する流動水吐水口を備えたものが用いられる。
【0010】
ところが洗浄水吐水口からの流動水が落下する位置に遅延槽314が位置していたりすると、流動水吐水中に便器洗浄を行ったときに、流動水が遅延槽314内部に入ることによって、排水弁320を開いて洗浄タンク302内に貯溜してある洗浄水Wを放出しても、遅延槽314内の水位が予定した通りに低下して行かないといった問題を生ずる。
【0011】
具体的には、遅延槽314の小孔316からの流出流量よりも遅延槽314内に入り込む流動水の流量が多いときには、いつまでたっても遅延槽314内の水位は低下せず、また遅延槽314内に入り込む流動水の流量が小孔316から流出する流量よりも少なかった場合であっても、遅延槽314内の水位の低下が予定よりも遅くなり、何れの場合においても排水弁320の開弁後の適正なタイミングでボールタップ304の給水弁を開いてタンク内給水を行うといったことができなくなってしまう。
【0012】
例えば洗浄タンク302内への給水は、排水弁320が開いて内部に貯留してある洗浄水Wを放出し終え、そして排水弁320が閉じるタイミングで行うようにするのが望ましいが、そのような適正なタイミングで給水弁を開き、給水開始させるといったことができなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭63−126471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、給水遅延機構,流動水吐水口をボールタップ装置とともに備えた便器洗浄タンク装置において、流動水吐水口から落下した水が給水遅延機構の遅延槽内に入り込むのを防止し得て、給水弁の開弁によるタンク内給水を適正なタイミングで開始させることのできる便器洗浄タンク装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1のものは、(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、水位に連動して昇降するフロートと、該給水弁と該フロートとを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの昇降に連動して給水弁を開閉させて洗浄タンクへの給水及び給水停止を行うボールタップ装置と、(B)該洗浄タンク内に配置された、該洗浄タンクよりも小容量の遅延槽を有して、該遅延槽内に前記フロートを位置させ、排水弁の開弁後に該遅延槽の内部の水を槽壁に形成した小孔を通じ流出させることにより、該遅延槽内の水位低下を槽外且つ前記洗浄タンク内の水位低下よりも遅らせて、前記給水弁の開弁による給水を遅延させる給水遅延機構と、(C)凍結防止のための流動水を前記洗浄タンクに給水する流動水吐水口と、を有する便器洗浄タンク装置であって、前記流動水が前記遅延槽に向って落下するような位置で前記流動水吐水口が該遅延槽に対して上方に配置してあるとともに、該遅延槽の上側には、前記流動水吐水口から落下した流動水を受けて該遅延槽外且つ前記洗浄タンク内に導く水受部材が設けてあることを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記流動水吐水口は、前記流動水を前記連繋アームを伝って落下させるものであることを特徴とする。
【0017】
請求項3のものは、請求項2において、前記連繋アームには、前記水受部材の上方位置で、該連繋アームを伝って流下して来た流動水を該水受部材の上方で水切りして該水受部材に向け落下させる水切部が設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項4のものは、(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、水位に連動して昇降するフロートと、該給水弁と該フロートとを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの昇降に連動して給水弁を開閉させて洗浄タンクへの給水及び給水停止を行うボールタップ装置と、(B)該洗浄タンク内に配置された、該洗浄タンクよりも小容量の遅延槽を有して、該遅延槽内に前記フロートを位置させ、排水弁の開弁後に該遅延槽の内部の水を槽壁に形成した小孔を通じ流出させることにより、該遅延槽内の水位低下を槽外且つ前記洗浄タンク内の水位低下よりも遅らせて、前記給水弁の開弁による給水を遅延させる給水遅延機構と、(C)凍結防止のための流動水を前記洗浄タンクに給水する流動水吐水口と、を有する便器洗浄タンク装置であって、前記流動水吐水口から吐水された流動水が前記遅延槽内に向って落下しない位置に、前記流動水吐水口と該遅延槽との前記洗浄タンク内における水平方向の関係位置が定めてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように請求項1のものは、流動水吐水口からの流動水が遅延槽に向って落下するような位置で、流動水吐水口が遅延槽に対して上方に配置してあるとともに、遅延槽の上側には流動水吐水口から落下した流動水を受けて遅延槽の槽外且つ洗浄タンク内に導く水受部材が設けてあるもので、この請求項1のものでは、給水遅延機構における遅延槽に向って流動水吐水口から落下した流動水を、水受部材で受けて遅延槽外に導くため、流動水が遅延槽内に入り込んでしまうのを防止でき、これにより流動水遅延機構を正常に動作させ得て、給水弁を適正なタイミングで開き、タンク内給水を開始させることができる。
【0020】
この請求項1においては、流動水吐水口と遅延槽とを水平方向に大きく位置をずらせて配置しなくても良い利点が得られる。
【0021】
特に流動水吐水口を以下のようになした場合、具体的には請求項2に従って流動水をボールタップの連繋アームを伝ってタンク内に落下させるようになした場合、流動水がタンク内貯溜水に勢い良く落下して、そこで大きな着水音を発生させるといった問題を回避できるが、一方でこのようにした場合、流動水吐水口を遅延槽に対しその直上若しくは遅延槽よりも上方で水平方向に近い位置に位置させることが必要となる。
このような事情の下においても、請求項1によれば流動水吐水口と遅延槽とを無理に水平方向に位置をずらせなくても、流動水による大きな着水音の発生防止と、給水遅延機構の正常な動作とをともに実現することが可能となる。
【0022】
この場合において、連繋アームには水受部材の上方位置で、連繋アームを伝って流下して来た流動水を水切りし、下方の水受部材に落下させる水切部を設けておくことができる(請求項3)。
このようにすることで、連繋アームを伝って流下してきた水を水切部にて良好に水受部材の側に落下させ、水受部材によって遅延槽外部へと導くことができる。
【0023】
一方請求項4のものは、流動水吐水口から吐水された流動水が遅延槽内部に向って落下しない位置に、流動水吐水口と遅延槽との水平方向の関係位置が定めたもので、この請求項4の便器洗浄タンク装置にあっても、流動水吐水口からの流動水が遅延槽内に入り込むのを防止でき、給水遅延機構を正常に動作させ得て、給水弁の開弁即ちタンク内給水の時期を適正なタイミングに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の便器洗浄タンク装置を示した図である。
【図2】同実施形態における要部としてのボールタップ装置,流動弁,給水遅延機構を水受部材とともに示した図である。
【図3】図2示した各部を図2とは異なる方向で示した図である。
【図4】同実施形態における給水弁を周辺部とともに拡大して示した図である。
【図5】本実施形態における水切部材を流動弁,流動水吐水口等とともに示した図である。
【図6】同実施形態における水受部材を給水遅延機構の遅延槽とともに示した図である。
【図7】図6の水切部材を取付状態で周辺部とともに示した図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示した図である。
【図9】従来公知の給水遅延機構を備えた便器洗浄タンク装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は便器洗浄タンク装置11における洗浄タンクで、(ここでは陶器製又は樹脂製の)アウタタンク12と、その内側の貯水タンクとなる樹脂製のインナタンク14との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク12の上部には、その蓋を兼用した手洗鉢16が設けられており、この手洗鉢16から起立する形態で手洗吐水管18が手洗鉢16に設けられている。
手洗鉢16の底部には排水口が設けられており、手洗吐水管18から吐水された手洗水が、この排水口から洗浄タンク10内部へと落下する。
【0026】
22は、洗浄タンク10内部に配設されたボールタップ装置で、ボールタップ本体24を有しており、そのボールタップ本体24がインナタンク14に取り付けられ、そしてそのボールタップ本体24に対して給水管26が接続されている。
給水管26を通じて供給された水は、ボールタップ装置22の後述の図2に示す給水弁58の開弁によって洗浄タンク10内部に給水され、また給水弁58の閉弁によって給水停止される。
【0027】
ボールタップ装置22は、後述する遅延槽200内部の洗浄水Wの水位に連動して昇降するフロート28と、フロート28と給水弁58とを連繋する連繋アーム30とを有している(フロート28及び連繋アーム30は何れも樹脂製)。
また連繋アーム30は、図3に示すようにアーム部32と、その先端から下向きに延びる軸部34とを有しており、その軸部34に対してフロート28が組み付けられている。
尚フロート28には、中心部に雌ねじ孔を有する操作リング29が回転可能に保持部31にて保持されており、その操作リング29の雌ねじ孔が軸部34の雄ねじ部に螺合されている。
フロート28は、操作リング29を回転操作することによって、軸部34に沿ってその位置が上下に調節可能とされている。
【0028】
洗浄タンク10の壁部には、洗浄ハンドル36が回転可能に設けられている。
38は、洗浄タンク10内部において洗浄ハンドル36に連動して回動する、L字状をなす作用レバーで、その先端が鎖40を介してタンク底部の放出口13を開閉する排水弁15に連結されている。
その排水弁15は、洗浄ハンドル36の回転操作によって閉弁状態から開弁させられ、これにより洗浄タンク10内部に貯溜されている洗浄水Wが、洗浄タンク10底部の放出口13から便器に向けて勢い良く放出される。
尚図1において42はオーバーフロー管である。
【0029】
図2において、44はボールタップ本体24の本体ボデーで全体として筒状をなしている。
この本体ボデー44の図2中左端部には図1の給水管26が接続され、また右端部には、本体ボデー44とは別体をなし且つボールタップ本体24の一部を成す接続管46の左端部が外嵌状態に接続されている。
【0030】
接続管46には、本体ボデー44からの水を洗浄タンク10、具体的にはインナタンク14内に給水する給水口(タンク内給水口)50と、図1の手洗吐水管18に向けて供給するための手洗用給水口(図示省略)及び図1のオーバーフロー管42を通じて便器に補給水として供給する補給口48が設けられている。
【0031】
手洗用給水口は図示を省略する蛇腹管にて手洗吐水管18と接続され、また補給口48には図1に示すチューブ49が接続されており、本体ボデー44からの水が、その蛇腹管を通じて手洗吐水管18に、また図1のチューブ49を通じて補給口48からオーバーフロー管42の内部へと供給されるようになっている。
【0032】
図2に示しているように、ボールタップ本体24には水路56を連通及び連通遮断する給水弁58が設けられている。この給水弁58は、フロート28の昇降に伴って連繋アーム30が図4に示す軸60周りに回動することで開弁及び閉弁せしめられる。
具体的には、フロート28の上昇により連繋アーム30が図4の軸60周りに時計回りに回動することで、給水弁58が閉弁せしめられ、またフロート28の下降に伴って連繋アーム30が軸60周りに図中反時計回りに回動運動することで、給水弁58が開弁せしめられる。
【0033】
而して給水弁58が開弁すると水路56が連通状態即ち開放状態となって、給水管26からの水が本体ボデー44から接続管46へと流れ込み、そしてその接続管46の給水口50から洗浄タンク10内に向けて給水され、また手洗用給水口を通じて手洗吐水管18に、更に補給口48を通じてオーバーフロー管42を通じ便器へと給水される。
【0034】
本実施形態において、給水弁58はダイヤフラム式且つパイロット式の弁とされている。
図4にその構成が具体的に示してある。
図4において、62は給水弁58における主弁体でダイヤフラム弁体から成っている。
この主弁体62は、ゴム等の弾性材から成るダイヤフラム膜66と、これよりも硬質の(ここでは樹脂製)ダイヤフラムホルダ68とから成っている。
【0035】
ダイヤフラム膜66は外周部70が厚肉とされており、この外周部70が、本体ボデー44とカップ状をなすダイヤフラム押え72とによって上下に挟持されている。そしてそれらによる挟持によってダイヤフラム膜66の外周部70が、本体ボデー44に固定されている。
ここでダイヤフラム膜66の外周部70は同時にシール部としての働き、即ち水路56と外部とを水密に遮断し、シールする働きをなしている。
【0036】
このカップ状をなすダイヤフラム押え72は、本体ボデー44に一体に構成された円筒部74に対して、図中下側から上向きに内嵌状態に嵌入せしめられ、そして円筒部74の外周面の雄ねじ76に対して、固定ナット80の内周面の雌ねじ78が螺合されることによって、ダイヤフラム押え72が円筒部74に即ち本体ボデー44に固定されている。
【0037】
即ちこの実施形態では、固定ナット80を図中上向きにねじ込むことで、円筒部74に内嵌状態に嵌入されたダイヤフラム押え72が上向きに押し上げられて、かかるダイヤフラム押え72が本体ボデー44と協働してダイヤフラム膜66の外周部70を所定の締代で弾性圧縮状態に締め付ける構造となっている。
【0038】
カップ状をなすダイヤフラム押え72は、背圧室形成部材としての働きも有しており、ダイヤフラム弁体から成る主弁体62の図中下側の背後に背圧室82を形成している。
この背圧室82は、内部の圧力を主弁体62に対して図中上向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0039】
一方、主弁体62には中心から偏心した位置において、水路56における1次側と背圧室82とを連通させる貫通の導入小孔84が設けられている。
この導入小孔84は、水路56における1次側の水を背圧室82に流入させて背圧室82の圧力を増大させる働きをなす。
【0040】
一方ダイヤフラム押え72には、その中心部にこれを貫通する水抜水路としてのパイロット水路86が設けられている。
このパイロット水路86は、背圧室82内の水を抜いて背圧室82の圧力を減少させる働きをなす。
【0041】
上記連繋アーム30のアーム部32の基端部にはパイロット弁体88が設けられ、このパイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座することでパイロット水路86が閉鎖される。
【0042】
この実施形態において、給水弁58は次のように作用する。
即ち、図4に示す給水弁58の閉弁状態の下で、図2のフロート28の下降により連繋アーム30が軸60周りに回動してパイロット弁体88がパイロット弁座92から図中下向きに離間し開弁すると、図4の背圧室82内の水がパイロット水路86を通じて流出し、背圧室82の圧力が減少する。
すると水路56における1次側の圧力が背圧室82の圧力に打ち勝つに到って、主弁体62が図4に示す閉弁状態から下向きに離間し開弁する。
【0043】
そして主弁体62が開弁することで水路56が連通状態となり、本体ボデー44から図2の接続管46及び補給口48に向けて水が流れ込む。
【0044】
一方、フロート28の上昇に連動して連繋アーム30が図2の軸60周りに時計回りに回動運動すると、フロート28が上昇端に到ったところで、即ち洗浄タンク10内の水が設定した満水状態になったところで、パイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座して閉弁し、ここにおいて背圧室82からの水の流出が停止する。
【0045】
すると導入小孔84を通じての背圧室82への水の流入により背圧室82の圧力が上昇し、そしてその圧力上昇によってダイヤフラム弁から成る主弁体62が主弁座64に上向きに着座し、閉弁する。
ここにおいて水路56の水の流れが停止し、洗浄タンク10及び手洗吐水管18への給水が停止する。
【0046】
尚図4において、97は導入小孔84内に挿入されて導入小孔84をクリーニング作用するクリーニングピンであり、このクリーニングピン97は、コイルばね95の下端に続いて図中上向きに起立する形態で、コイルばね95に一体に形成されている。
【0047】
図2において、100は流動弁装置で、水路56における給水弁58よりも上流側の1次側から分岐して延び出す流動水路102と、これを内側に形成するための円筒状の筒壁104とを有している。図5において、108はその流動水路102の分岐口を表している。
ここで筒壁104は、上向きに起立する形態でボールタップ本体24、詳しくは本体ボデー44に一体に構成されている。
【0048】
図5において、106は筒壁104から流動水を流出させる開口で、この開口106は筒壁104の付根よりも所定距離上側位置で、筒壁104を貫通して横向き(径方向外向き)に設けられている。
流動水路102に導かれた1次側の水は、後述の流動弁110の開弁により、この開口106から小量で連続して筒壁104外に流出する。
開口106から流出した流動水は、後述の流動水吐水口150から外部に吐水されて、洗浄タンク10内に供給される。
供給された流動水は洗浄タンク10内のオーバーフロー管42を通じて便器へと連続的に給水される。
【0049】
筒壁104の内部には、図5にも示すように流動水路102を開閉する流動弁110が設けられている。
流動弁110は、円筒形状の弁ハウジング112と、軸状の弁体114とを有しており、その弁ハウジング112が、筒壁104の内部に嵌合状態に固定されている。
またこの弁ハウジング112の内部に、弁体114が軸方向(上下方向)に摺動可能に嵌合されている。
ここで弁ハウジング112は、固定クリップ136により筒壁104に対して軸方向(上下方向)に固定されている。
【0050】
軸状をなす弁体114は下端側に弁部122を、上端側に連結部124を有し、その連結部124に対して後述の図2に示す操作部138における伝達部材142の先端部、詳しくはインナケーブル144の先端部が連結されている。
図5中130は、その下端側の弁部122と上端側の連結部124との間の中間部を表しており、この中間部130は横断面形状が十字状をなしている。
【0051】
下端側の弁部122は、円環状のシール部材126を有している。
弁部122は、このシール部材126を弁ハウジング112の内周側に形成された弁座128に水密に嵌合させることで閉弁する。
また一方、弁体114が図中下向きに前進移動し、シール部材126が弁座128から下向きに離間することで開弁する。その開弁状態において流動水路102が開放され、水路56における1次側から流動水路102に流入した水(流動水)が、上記の開口106から筒壁104外に流出する。
【0052】
図2に示すように、伝達部材142は、可撓性を有し且つ軸方向に非伸縮性のインナケーブル(インナ部材)144と、これを移動案内するアウタケーブル(アウタチューブ)146とを有しており、そのアウタケーブル146内部にインナケーブル144が摺動可能に挿通されている。
【0053】
ここでは、図2においてインナケーブル144が図中右向きに押されることで、弁体114が図中下向きに移動し開弁する。
また逆にインナケーブル144が図2中左向きに引かれることで、弁体114が図5中上向きに移動して閉弁する。
但し凍結防止を図る必要があるときには、弁体114は開弁状態に維持され、従って水路56における1次側の水は小量で連続的に流動水路102を流れて、開口106から筒壁104外に流出する。
【0054】
伝達部材142は、図2に示しているように右端側(先端側)が曲り管176の内部に挿入されており、伝達部材142の先端部が、曲り管176によって図中下向きに保持された状態で組付ナット178により流動弁110に組み付けられている。
【0055】
詳しくは、図5に示すように組付ナット178の雌ねじ部が、流動弁110における弁ハウジング112の雄ねじ部にねじ込まれることで、アウタケーブル146の下端を受ける受部材184のフランジ部と、曲り管176のフランジ部とが、組付ナット178の内向きのフランジ部186と弁ハウジング112とで上下に挟持され、そしてそのことによって受部材184と曲り管176の下端部とが固定され、併せてアウタケーブル146の下端が弁ハウジング112に固定されている。
またインナケーブル144に固定された端部材188が、流動弁110における弁体114の係合凹部190に係合されることで、インナケーブル144の先端部が弁体114に一体移動状態に固定され、連結されている。
【0056】
この実施形態において、上記組付ナット178は、下向きに垂下して上記横向きの開口106から径方向に離隔した位置で開口106に対向し、これを外側から覆う円筒状のカバー壁192を一体に有している。
カバー壁192は、開口106よりも下側まで延びており、筒壁104との間に下向きの流動水吐水口150を形成している。
【0057】
この実施形態において、開口106から流出した流動水は、図5に示しているようにカバー壁192に当って下向きの流れとなり、流動水吐水口150から下向きに吐水される。
このとき流動水吐水口150から吐水された流動水は、そのほとんどがカバー壁192からの反力で筒壁104の外面側に押し返され、筒壁104の外面を伝って下向きに流下して行く。
尤もその一部は、筒壁104の外面を伝わらないで流動水吐水口150からそのまま落下する場合もある。
【0058】
但しこの実施形態では、ボールタップ装置22における連繋アーム30をボールタップ本体24に固定するための固定ナット80が、上記組付ナット178のカバー壁192よりも大径をなしていて、この固定ナット80がカバー壁192よりも径方向外方まで突出しているため、固定ナット80が、カバー壁192と筒壁104との間の下向きの流動水吐水口150から筒壁104を伝わらないで直接落下した水を受ける水受部として働く。
尚このとき、ボデー44に一体に構成された上記の円筒部74もまたその水受部の一部として働く。
従ってこの実施形態では、流動水吐水口150から吐水された水は、ほぼ全体が固定ナット80を経て連繋アーム30を伝わるように流下して行く。
【0059】
具体的には、本実施形態ではボールタップ本体24の筒壁104とは反対側の下側位置から連繋アーム30が延び出して、その軸部34及びフロート28が洗浄水中に入り込んでいるため、筒壁104の外面を伝って流下した水、及びその筒壁104の外面を伝わらないで直接下向きに落下した一部の水は、その殆んどがボールタップ装置22における連繋アーム30を伝って更に流下して行く。
【0060】
本実施形態では、図1に示しているようにインナタンク14よりも小容量の、給水遅延機構202の主要素を成す遅延槽200がインナタンク14内部に設けられている。
ここで遅延槽200は、その上端がインナタンク14内部の満水状態の洗浄水Wの上面の水位よりも若干低くなるように設けられている。
【0061】
図6に示しているようにこの遅延槽200は、上向きに延び出す一対のアーム206を一体に有している。
これらアーム206の上端は折曲げ形状の固定部208とされており、遅延槽200は、インナタンク14の図1中前後(紙面と直角方向)の壁部の上端面に固定部208を掛止した状態で、固定孔210においてインナタンク14に固定される。
この遅延槽200の外面には縦に延びる凹状部212が一対設けられており、それらの上端に後述の爪部226を掛止させるための掛止部214が、凹状部212の底面から突出する状態に設けられている。
【0062】
図1に示しているように、この遅延槽200の底部215には貫通の小孔204が設けられており、遅延槽200内部の洗浄水Wが、この小孔204を通じて槽外且つインナタンク14内に流出するようになっている。
【0063】
ここで小孔204は、排水弁15の開弁後におけるインナタンク14内の洗浄水Wの水位低下に比べて、遅延槽200内の洗浄水Wの水位低下が遅くなるように、その大きさが定めてある。
具体的には、ここでは排水弁15の開弁によりインナタンク14内の洗浄水Wが放出されて排水弁15が閉弁するときのタイミングで、上記の給水弁58が開弁して(全開状態となって)ボールタップ22が最大給水量で給水開始するようにその大きさが定められている。
【0064】
本実施形態において、ボールタップ22における上記のフロート28は、遅延槽200内部の水位低下に応じて給水弁58を開弁させるべく、遅延槽200上面の開放部からその内部に挿入されている。
その関係から、上記の流動水吐水口150はこの遅延槽200の上方に配置されている。
【0065】
本実施形態では、流動水吐水口150からの流動水は連繋アーム30を伝って流下する。
従って連繋アーム30を伝って流下した流動水が、そのままフロート28まで伝って流れると、その流動水が遅延槽200内にそのまま入り込むこととなる。
【0066】
そこでこの実施形態では、遅延槽200の上側に水受部材216を取り付けておくことで、流動水吐水口150からの流動水がそのまま遅延槽200内に入り込むのを防止するようになしている。
ここで水受部材216は、図6に詳しく示しているように傾斜形状の底部218と、底部218の外周縁に沿って立ち上がる一対の側壁部220及び後壁部222とを有する、全体として樋状の部材として構成してあり、後壁部222と反対側の面が開放形状となしてある。
【0067】
また一方の側壁部220には、連繋アーム30を挿通させるための切欠部224が設けてある。更にこの水受部材216には下向きに突出する弾性を有する爪部226が、前端と後端(図6中左端と右端)に下向きに突出する状態で設けてある。
水受部材216は、それら爪部226を、遅延槽200の上記の掛止部214に図中上方から下向きに掛止させることで、遅延槽200の上面に載置状態に取り付けられる。
【0068】
尚この水受部材216には、切欠部224を設けた側の側壁部220とは反対側の側壁部220外面に凹部228が設けられている。この凹部228は、遅延槽200の上記のアーム206との干渉回避のためのものである。
【0069】
図5に示しているように、上記の連繋アーム30のアーム部32には、水受部材216の上側において水切部230が固定状態に設けられている。ここで水切部230は、アーム部32に一体に成形されている。
【0070】
水切部230は、図7に示しているように全体としてアーム部32周りを取り囲む形状で板状をなしており、アーム部32より上側の部分がほぼ垂直上方に起立する起立部232を成し、またこれより下部が、水受部材216の中央側に向って斜めに傾斜する傾斜部234をなしている。
【0071】
従ってこの実施形態では、流動水吐水口150からの流動水がボールタップ22の連繋アーム30を伝って流下するにも拘わらず、アーム部32の途中で流動水が水切部230で水切りされ、水受部材216に落下せしめられる。そして更にその水受部材216によって、遅延槽200外に導かれる。そのため流動水吐水口150からの流動水が、遅延槽200内へと入り込むのが有効に防止される。
【0072】
具体的には、流動水吐水口150から吐水された流動水は、固定ナット80を経て連繋アーム30のアーム部32に沿って流れるが、そのアーム部32には水切部230が設けられていて、アーム部32の外面を伝って流れる流動水が水切部230で堰き止められた上、水受部材216へと落下せしめられる。
水受部材216に落下した流動水は、底部218の傾斜によって円滑に遅延槽200外且つインナタンク14内へと導かれ、流動水が遅延槽200内に流入するのが阻止される。
【0073】
尚、排水弁15の閉弁後においては、ボールタップ22からの給水によってインナタンク14内部の洗浄水Wの水位が上昇し、そしてその水位が満水状態近くなると、インナタンク14内部の洗浄水Wが遅延槽200の上端を越えてその内部に流入し、遅延槽200内に給水される。
【0074】
以上のように本実施形態の便器洗浄タンク装置11にあっては、流動水吐水口150からの流動水が遅延槽200内に入り込むのを防止でき、給水遅延機構202を正常に動作させ得て、給水弁58の開弁即ちタンク内給水の時期を適正なタイミングに維持することができる。
【0075】
またこの実施形態は、流動水吐水口150と遅延槽200とを無理に水平方向に位置をずらせて配置しなくても良い利点を有する。
流動水をボールタップ装置22の連繋アーム30を伝ってタンク内に落下させるようになした場合、流動水がタンク内貯溜水に勢い良く落下して、そこで大きな着水音を発生させるといった問題を回避できるが、一方でこのようにした場合、流動水吐水口150を遅延槽200に対しその直上若しくは遅延槽200よりも上方で水平方向に近い位置に位置させることが必要となる。
このような事情の下においても、本実施形態によれば、流動水吐水口150と遅延槽200とを無理に水平方向に位置をずらせなくても、流動水による大きな着水音の発生防止と、給水遅延機構202の正常な動作とをともに実現することが可能となる。
【0076】
また本実施形態によれば、連繋アーム30を伝って流下してきた流動水を、水切部230にて効果的に水受部材216の側に落下させ、そして水受部材216によって遅延槽200外部へと導くことができる。
【0077】
図8は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態では、流動水吐水口150からの流動水を直接インナタンク14内に落とすようにし、一方給水遅延機構202の遅延槽200を、流動水吐水口150に対して水平方向位置をずらせて配置してある。
この例においても、流動水吐水口150からの流動水が、給水遅延機構202における遅延槽200内に流入することを防止でき、従って遅延槽200内に流動水が流入することによって、給水遅延機構202の動作が設定した動作を正しく実行しなくなるといったことを防止することができる。
【0078】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明では第1の実施形態における水受部材216を上例以外の他の様々な形状で構成することが可能である。例えば水受部材としてパイプ状のものを用い、流動水吐水口150から出た流動水を、そのままパイプ状の水受部材の内部を流通させて遅延槽200の槽外且つインナタンク14内に導くようになすといったことも可能である。
その他本発明は他の様々な形態の流動水吐水口を有するものに適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 洗浄タンク
11 便器洗浄タンク装置
14 インナタンク
15 排水弁
22 ボールタップ装置
24 ボールタップ本体
28 フロート
30 連繋アーム
58 給水弁
150 流動水吐水口
200 遅延槽
202 給水遅延機構
204 小孔
216 水受部材
230 水切部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、水位に連動して昇降するフロートと、該給水弁と該フロートとを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの昇降に連動して給水弁を開閉させて洗浄タンクへの給水及び給水停止を行うボールタップ装置と、
(B)該洗浄タンク内に配置された、該洗浄タンクよりも小容量の遅延槽を有して、該遅延槽内に前記フロートを位置させ、排水弁の開弁後に該遅延槽の内部の水を槽壁に形成した小孔を通じ流出させることにより、該遅延槽内の水位低下を槽外且つ前記洗浄タンク内の水位低下よりも遅らせて、前記給水弁の開弁による給水を遅延させる給水遅延機構と、
(C)凍結防止のための流動水を前記洗浄タンクに給水する流動水吐水口と、
を有する便器洗浄タンク装置であって、
前記流動水が前記遅延槽に向って落下するような位置で前記流動水吐水口が該遅延槽に対して上方に配置してあるとともに、該遅延槽の上側には、前記流動水吐水口から落下した流動水を受けて該遅延槽外且つ前記洗浄タンク内に導く水受部材が設けてあることを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項2】
請求項1において、前記流動水吐水口は、前記流動水を前記連繋アームを伝って落下させるものであることを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項3】
請求項2において、前記連繋アームには、前記水受部材の上方位置で、該連繋アームを伝って流下して来た流動水を該水受部材の上方で水切りして該水受部材に向け落下させる水切部が設けてあることを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項4】
(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、水位に連動して昇降するフロートと、該給水弁と該フロートとを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの昇降に連動して給水弁を開閉させて洗浄タンクへの給水及び給水停止を行うボールタップ装置と、
(B)該洗浄タンク内に配置された、該洗浄タンクよりも小容量の遅延槽を有して、該遅延槽内に前記フロートを位置させ、排水弁の開弁後に該遅延槽の内部の水を槽壁に形成した小孔を通じ流出させることにより、該遅延槽内の水位低下を槽外且つ前記洗浄タンク内の水位低下よりも遅らせて、前記給水弁の開弁による給水を遅延させる給水遅延機構と、
(C)凍結防止のための流動水を前記洗浄タンクに給水する流動水吐水口と、
を有する便器洗浄タンク装置であって、
前記流動水吐水口から吐水された流動水が前記遅延槽内に向って落下しない位置に、前記流動水吐水口と該遅延槽との前記洗浄タンク内における水平方向の関係位置が定めてあることを特徴とする便器洗浄タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−72613(P2012−72613A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219129(P2010−219129)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】