説明

便器洗浄弁

【課題】 開閉弁の二次側流路内の残水の水抜き操作を容易に行なうことができ、耐凍結破損性能を向上させること。
【解決手段】 開閉弁5の一次側に給水ポート6と分岐ポート7とを配置し、二次側に吐水ポート8とドレンポート9とを配置した便器洗浄弁Aである。開閉弁5の一次側が下、二次側が上となるように各ポート6〜9を縦一列に配置すると共に、水抜き時に開閉弁5の二次側流路部10Bを大気に開放して該二次側流路部10B内の残水を開閉弁5を通って開閉弁5の一次側流路部10Aに配置した水抜き孔11に向けて自然落下させるための大気開放弁1を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管と温水タンクとの間を接続する便器洗浄弁に関し、詳しくは便器洗浄弁の凍結防止を図るための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、給水管と温水タンクとの間に開閉弁で開閉される弁流路を水平向きとし、開閉弁の一次側に、給水管に接続される給水ポートと、おしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルに洗浄水を分岐供給する分岐ポートとを配置し、開閉弁の二次側に、温水タンクに接続される吐水ポートと、給水時に余剰の洗浄水を便器ボウル内に捨てるためのドレンポートとを配置した水平向きの便器洗浄弁が一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水平向きの便器洗浄弁において、寒冷地での便器洗浄弁の凍結破損を防止するため、便器洗浄弁を暖めたり、或いは、弁流路内の水抜きを行なう方式(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
ところが、特許文献2に見られる従来例において、弁流路内の水抜きを行なうにあたって、開閉弁の一次側の残水は配管を通って排出され、二次側の残水は下り勾配を有するドレンポートから排出されるようになっている。しかしながら、二次側の残水に対しては水圧がかからないため、残水が二次側流路部内に滞留する可能性があった。この場合、とくに寒冷地では残水が凍結して、凍結により便器洗浄弁が破損する恐れがあり、水漏れを起こす可能性があった。
【特許文献1】特開平8−311968号公報
【特許文献2】特開2003−90616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、開閉弁の二次側流路内の残水の水抜き操作を容易に行なうことができ、耐凍結破損性能に優れた便器洗浄弁を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、給水管と温水タンクとの間に開閉弁5で開閉される弁流路10を配置し、開閉弁5の一次側に、給水管に接続される給水ポート6と、おしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルに洗浄水を分岐供給する分岐ポート7とを配置し、開閉弁5の二次側に、温水タンクに接続される吐水ポート8と、給水時に余剰の洗浄水を便器ボウル内に捨てるためのドレンポート9とを配置してなる便器洗浄弁であって、上記開閉弁5の一次側が下、二次側が上となるように上記吐水ポート8、ドレンポート9、分岐ポート7、給水ポート6を縦一列に配置すると共に、水抜き時に開閉弁5の二次側流路部10Bを大気に開放して該二次側流路部10B内の残水を開閉弁5を通って開閉弁5の一次側流路部10Aに配置した水抜き孔11に向けて自然落下させるための大気開放弁1を設けたことを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、水抜きを行なう場合、水抜き孔11及び開閉弁5を開放させると、大気開放弁1を介して大気開放部3からの空気が二次側流路部10B内に流入する。これにより二次側流路部10B内が大気に開放され、二次側流路部10B内の残水はその自重によって、開弁状態にある開閉弁5を通って一次側流路部10Aに自然落下して、最終的に水抜き孔11へと流れ落ちる。このようにして二次側流路部10Bの残水を残らず排出できるので、凍結による破損を未然に防止することができる。
【0008】
また上記縦一列される吐水ポート8、ドレンポート9、分岐ポート7、給水ポート6を、横方向の任意の向きに枝状に配置するのが好ましく、この場合、各ポート6〜9に接続される配管系統の引き廻しが簡単になる。例えば、吐水ポート8を温水タンクの方向に向け、ドレンポート9を便器ボウル内に向け、分岐ポート7をおしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルの方向に向け、給水ポート6を給水管の方向に向けることにより、配管効率を向上させることができる。
【0009】
また上記大気開放弁1を弁流路10の最上部に配置すると共に、大気開放弁1の下方に開閉弁5の二次側流路部10Bを配置するのが好ましく、この場合、水抜き時には大気開放弁1からの空気が直接、二次側流路部10B内に流入して二次側流路部10B内を大気圧状態にするので、大気開放弁1に無理な負圧がかからない状態で水抜きが可能となり、大気開放弁1の耐負圧破壊性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る便器洗浄弁にあっては、吐水ポート、ドレンポート、分岐ポート、給水ポートを縦一列に配置すると共に、開閉弁の二次側流路部を大気に開放させる大気開放弁を配置することにより、水抜き操作時に二次側流路部内の残水を自然落下により容易に水抜き孔へと排水可能となり、弁流路内に残水が無い状態となる結果、耐凍結破損性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本実施形態の便器洗浄弁Aは、給水管と温水タンクとの間に介設されるものであり、図1〜図3に示すように、便器洗浄弁Aの内部には、開閉弁5で開閉される弁流路10が設けられている。開閉弁5は、例えば図1に示すダイヤフラム式電磁開閉弁で構成されており、ダイヤフラム5aをソレノイド5cで可動させて迂回路5bを開放したり、封止したりするものである。
【0013】
上記開閉弁5の一次側流路部10Aには、給水管に接続される給水ポート6と、おしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルに洗浄水を分岐供給する分岐ポート7とが設けられていると共に、給水ポート6と分岐ポート7との間に、ストレーナー30及び定流量弁31が介在されている。開閉弁5の二次側流路部10Bには、温水タンクに接続される吐水ポート8と、給水時に余剰の洗浄水を便器ボウル内に捨てるためのドレンポート9とが設けられている。
【0014】
ここで、本発明においては、上記開閉弁5の一次側流路部10Aが下、二次側流路部10Bが上となるように、吐水ポート8、ドレンポート9、分岐ポート7、給水ポート6が縦一列に配置されている。これら各ポート6〜9は、横方向の任意の向きに枝状に配置されている。本例では配管系統を整理するために、例えば、吐水ポート8を温水タンク側に向け、ドレンポート9を便器ボウル内に向け、分岐ポート7をおしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルの方向に向け、給水ポート6を給水管方向に向けてある。
【0015】
上記弁流路10の最下位の位置には、水抜き孔栓12で開閉される水抜き孔11が設けられている。この水抜き孔11は、便器ボウル内に通じている。
【0016】
一方、弁流路10の最上位の位置には、水抜き時に開閉弁5の二次側流路部10Bを大気に開放するための大気開放弁1が配置されている。大気開放弁1は、二次側流路部10B側に設けた弁座面21に接離して二次側流路部10Bを開閉する弁本体1aと、弁本体1aに連結された弁軸1bとが一体形成されており、弁軸1bは弁流路10の最上部に設けたガイド孔4に沿って上下方向に移動自在にガイドされている。また弁本体1aの弁座面21の一部には、凹溝状の空気通し孔2(図1)が凹設されており、この空気通し孔2は弁本体1aが下降したときでも塞がれないようにしてある。これにより、水抜き時に弁本体1aが下降しても、大気開放部3と二次側流路部10Bとが空気通し孔2を介して連通状態で保持されるようになっている。また、給水時の水圧で大気開放弁1が上昇すると弁本体1aは大気開放部3を閉塞するようになっており、これにより、二次側流路部10Bから吐出する洗浄水は、大気開放部3から流出することなく、残らず吐水ポート8から温水タンク内に供給されるようになっている。つまり、大気開放弁1は、水抜き時には大気開放部3を開放し、給水時には大気開放部3を塞ぐ機能を有している。
【0017】
しかして、上記構成の便器洗浄弁Aの弁流路10内の水抜きを行なう場合は、先ず水抜き孔栓12を抜くと、一次側流路部10A内の残水が水抜き孔11から排出される。この段階では二次側流路部10B内には残水が存在している。その後、洗浄スイッチを押して開閉弁5を開放させると、迂回路5b(図1)が開かれて、それよりも上方に位置する二次側流路部10Bが負圧状態となるため、大気開放弁1が下降して弁座面21に当接する。この段階で大気開放部3が開放され、外部の空気が大気開放弁1と弁座面21との間の空気通し孔2を通って、図1(b)の矢印Wで示すように、二次側流路部10B内へと流入する。これにより、二次側流路部10B内は大気圧状態となり、残水はその自重によって自然落下して、開閉弁5の迂回路5bから水抜き孔11に向かって流れ落ちる。これにより、二次側流路部10Bの残水を残らず排出できるので、弁流路10内に残水が全く無い状態となり、この結果、凍結による破損を未然に防止することができる。ちなみに、本便器洗浄弁Aを水平向きに配置した場合は、水抜きのために開閉弁5を開いても、二次側流路部10B内の残水は留まったままであり、水抜き孔11へと排出させることはできず、そればかりか、大気開放弁1周辺に残水が溜まったままとなるため、凍結により大気開放弁1の動作が不能になることがある。従って、本発明のように便器洗浄弁Aを縦向きに配置すると共に大気開放弁1を設けることにより、水の自然落下を利用して、容易に水抜きができ、凍結による破損防止効果が得られるようになる。
【0018】
また、上記大気開放弁1を弁流路10の最上部に配置し、大気開放弁1の真下に開閉弁5の二次側流路部10Bを配置しているため、水抜き時には大気開放弁1からの空気が直接、二次側流路部10B内に流入して二次側流路部10B内を大気圧状態にするので、大気開放弁1に無理な負圧がかからない状態での水抜きが可能となり、結果、大気開放弁1の耐負圧破壊性能を向上させることができる。そのうえ、大気開放弁1、開閉弁5、定流量弁31、ストレーナー30が縦一列に配置されることにより、各構成部品の設置スペースが横方向に広がるのを防止でき、従って、便器洗浄弁Aが縦方向Dにスリムな形状となり、コンパクト化を図ることが容易となる。
【0019】
さらに本例では、縦一列に配置される吐水ポート8、ドレンポート9、分岐ポート7、給水ポート6を、横方向の任意の向きに枝状に配置してあるので、各ポート6〜9を縦長の弁流路10を中心軸として四方に自由に配置できるようになり、各ポート6〜9に接続される配管系統の引き廻しが簡単になる結果、配管系統の整理が容易に行なえるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は便器洗浄弁の正面断面図、(b)は(a)のA部の拡大断面図である。
【図2】同上の側面断面図である。
【図3】同上の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
A 便器洗浄弁
1 大気開放弁
5 開閉弁
6 給水ポート
7 分岐ポート
8 吐水ポート
9 ドレンポート
10 弁流路
10A 一次側流路部
10B 二次側流路部
11 水抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と温水タンクとの間に開閉弁で開閉される弁流路を配置し、開閉弁の一次側に、給水管に接続される給水ポートと、おしり洗浄・ビデ洗浄用のノズルに洗浄水を分岐供給する分岐ポートとを配置し、開閉弁の二次側に、温水タンクに接続される吐水ポートと、給水時に余剰の洗浄水を便器ボウル内に捨てるためのドレンポートとを配置してなる便器洗浄弁であって、上記開閉弁の一次側が下、二次側が上となるように上記吐水ポート、ドレンポート、分岐ポート、給水ポートを縦一列に配置すると共に、水抜き時に開閉弁の二次側流路部を大気に開放して該二次側流路部内の残水を開閉弁を通って開閉弁の一次側流路部に配置した水抜き孔に向けて自然落下させるための大気開放弁を設けたことを特徴とする便器洗浄弁。
【請求項2】
上記縦一列される吐水ポート、ドレンポート、分岐ポート、給水ポートを、横方向の任意の向きに枝状に配置したことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄弁。
【請求項3】
上記大気開放弁を弁流路の最上部に配置すると共に、大気開放弁の下方に開閉弁の二次側流路部を配置したことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−2490(P2006−2490A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181643(P2004−181643)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】