説明

便器装置

【課題】製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生を抑制可能な便器装置の提供することである。
【解決手段】便器装置1の上部を形成するリム部材2と、水溜部を構成するボウル部材と、便器本体の側面を構成するスカート部材を有し、リム部材2はベース部3とリブ状補強部6とフランジ部4,5を有し、フランジ部4,5は垂直方向に対向配置され、フランジ部4,5間にはベース部3とリブ状補強部6が位置しており、上側のフランジ部4とリブ状補強部6との間に空隙10を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、さらに詳細には、製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生が抑制された便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠性や機能性に優れた樹脂製の便器装置は、益々その需要が高まっている。特許文献1には、樹脂製の便器装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された便器装置の構造は、図2(a)、(b)に示すとおりであり、リム部材86と、ボウル部材87と、リブ90を有したスカート部材88とが一体化されて、便器装置80が構成されている。リム部材86は、環状のベース部91と、環状のフランジ部92,93を有している。なお、便器装置80には、便座85が取り付けられる。
【0005】
便器装置80の断面構造は、図3(a)に示すとおりであり、リム部材86のフランジ部93とボウル部材87とが面同士で溶着されている。詳述すると、製造時の熱溶着工程において、リム部材86のフランジ部93とボウル部材87とを強固に溶着するために、リム部材86のフランジ部92とボウル部材87とを治具等で上下から挟む方向に押圧される。この時、溶着部の位置が正確に保持されていないと、適切な溶着ができない。特に、リム部材86と、ボウル部材87と、スカート部材88とを同時に一体溶着する場合には、正確な位置での保持が必要である。
【0006】
ところが、治具等で押圧されるとリム部材86に「たわみ」が発生する場合がある。リム部材86に「たわみ」が発生すると、フランジ部93とボウル部材87との正確な位置での保持ができず、熱溶着が困難となる。「たわみ」の対策として、図3(b)に示すとおり、フランジ部92,93間にリブ状補強部94を設けることが考えられる。しかし、リブ状リブ状補強部94を設けた場合、成形後の温度の低下に伴って樹脂が収縮し、フランジ部92の上面に「ヒケ」と呼ばれるへこみや窪みが発生する。このために便器装置としての外観を損ねるという欠点が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生を抑制可能な便器装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、便器本体の上部を形成するリム部材と、水溜部を構成するボウル部材と、便器本体の側面を構成するスカート部材を有し、リム部材はベース部とリブ状補強部とフランジ部を有し、フランジ部は垂直方向に対向配置され、フランジ部間にはベース部とリブ状補強部が位置しており、上側のフランジ部とリブ状補強部との間に空隙を有することを特徴とする便器装置である。
【0009】
本発明の便器装置は、便器本体の上部を形成するリム部材と、水溜部を構成するボウル部材と、便器本体の側面を構成するスカート部材を有し、リム部材はベース部とリブ状補強部とフランジ部を有するものである。また、本発明の便器装置は、フランジ部は垂直方向に対向配置され、フランジ部間にはベース部とリブ状補強部が位置しており、上側のフランジ部とリブ状補強部との間に空隙を有するものである。
【0010】
すなわち、上側のフランジ部とリブ状補強部との間の空隙は、成形後の温度低下に伴う樹脂収縮において、リブ状補強部の樹脂収縮の影響が上側のフランジ部に伝わることを防止できるものである。
【0011】
さらに、上側のフランジ部とリブ状補強部との間に空隙を有することにより、上側のフランジ部は、空隙の高さの分だけ「たわむ」ことが可能である。換言すれば、フランジ部に加わった圧力を、空隙で吸収することが可能である。さらに、空隙の高さ以上に「たわみ」を生じた場合にでも、フランジ部はリブ状補強部に当止し、それ以上「たわみ」を生じない。このことにより、便器装置1の熱溶着を適切に行うことができる。
【0012】
本発明の便器装置によれば、製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生を抑制可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便器装置によれば、製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る便器装置のリム部を示す断面図である。
【図2】従来および本発明の実施形態に係る便器装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の分解斜視図である。
【図3】図2の便器装置を示す断面図であり、(a)はリブ状補強部を有さないもの、(b)はリブ状補強部を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の便器装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0016】
図2(a),(b)に示すように、便器装置1は、リム部材2と、ボウル部材87と、スカート部材88を有し、これらが熱溶着等により接合され、一体化されている。リム部材2以外は、従来の便器装置80と同様の構成であるので説明を省略する。なお、熱溶着は、具体的には振動溶着、高周波溶着等であり、従来より知られているものが使用できる。
【0017】
リム部材2は、便座を支持するための環状の部材である。
【0018】
リム部材2は、図1に示すように、ベース部3と、フランジ部4,5と、リブ状補強部6を有している。
【0019】
フランジ部4,5は垂直方向に対向配置されており、フランジ部4が上側に、フランジ部5が下側に位置している。フランジ部4,5間にはベース部3とリブ状補強部6が位置している。
【0020】
リブ状補強部6は、ベース部3に沿って位置しており、環状を成している。
【0021】
上側のフランジ部4とリブ状補強部6との間には、空隙10を有している。
【0022】
空隙10は、製造時において、成形後の温度低下に伴う樹脂収縮が生じた場合に、リブ状補強部6の樹脂収縮の影響を、上側のフランジ部4に伝わることを防止できるものである。
【0023】
また、熱溶着の際において、上側のフランジ部4に圧力が加わった場合に、フランジ部4は、空隙10の高さHの分だけ「たわむ」ことが可能である。換言すれば、フランジ部4に加わった圧力を、空隙10で吸収することが可能である。さらに、空隙10の高さH以上に「たわみ」を生じた場合にでも、フランジ部4はリブ状補強部6に当止し、それ以上「たわみ」を生じない。このことにより、便器装置1の熱溶着を適切に行うことができる。
【0024】
空隙10の高さHは、好ましくは0.1〜1.0mm(ミリメートル)である。
【0025】
なお、フランジ部4,5とベース部3は同一素材の樹脂で一体化されており、リブ状補強部6も同一素材の樹脂で一体化しても構わない。前記樹脂については、例えば、高強度であり撥水性に優れた有機ガラス系素材や、加工性や耐衝撃性に優れたABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、高強度であり耐酸性に優れたPBT(ポリブチレン・テレフタート)樹脂等を用いることが好適である。
【0026】
以上のように本発明の実施形態に係る便器装置1では、リム部材2のフランジ部4とリブ状補強部6との間に空隙10を有することにより、製造時の適切な熱溶着が可能であって、成形後のへこみや窪みの発生を抑制可能である。
【0027】
なお、便器装置1以外であっても、フランジ部が断面コ字状を成す合成樹脂製品において、リブ状補強部とフランジ部との間に隙間を設けることにより、合成樹脂製品の熱溶着を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 便器装置
2 リム部材
3 ベース部
4,5 フランジ部
6 リブ状補強部
10 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の上部を形成するリム部材と、水溜部を構成するボウル部材と、便器本体の側面を構成するスカート部材を有し、リム部材はベース部とリブ状補強部とフランジ部を有し、フランジ部は垂直方向に対向配置され、フランジ部間にはベース部とリブ状補強部が位置しており、上側のフランジ部とリブ状補強部との間に空隙を有することを特徴とする便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202393(P2011−202393A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69853(P2010−69853)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】