説明

便器

【課題】便器に付着した見えにくい汚れを見え易くすることにより、汚れた箇所を清掃し易くすることができる便器を提供することである。
【解決手段】飛び散った便等の汚れが付着する部位を、透光性を有するシート状の部材で被覆し、便器に汚れの影が映るようにした。透光性を有するシート状部材を、便器に着脱可能に設けた。シート状部材の厚みを0.5mm〜3mmの範囲とした。シート状部材の下に、光を反射する反射部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清潔に保つように工夫した便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からトイレは、清潔に保つための様々な工夫が施されてきた。特に便器を清潔にすることによって、トイレの見栄えが良くなるばかりでなく、悪臭を抑制することもできる。その結果、人はトイレを快適に使用することができるようになる。このようなトイレ(便器)を清潔に保つための発明が、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−105546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている便器装置では、特に排便・小便の跳ね返りや飛び散り等によって汚れやすいと想定されるケーシング(便座の裏側)に向けて吐水する吐水手段が設けられている。特許文献1には、吐水手段によって便座の裏側に付着した便を洗い落とす構成が開示されているが、便が付着するのは便座のみではなく、便座が着床する便器(リム)の縁部分にも飛び散った便が付着し易い。
【0004】
特許文献1の便器装置に限らず、従来から拭き取り清掃によって便器(便座を含む)は清潔に保たれてきた。ところで、付着した小便(尿)が乾燥すると透明になって視覚的に確認することが困難になる。また、尿は、少々拭いた程度では完全には除去することができない。清掃作業者は、視覚的に汚れが確認できれば、その部位を重点的に清掃して尿等の汚れを除去することができるが、見えにくい汚れは放置されることもあり、これが悪臭を放つ要因となっている。
【0005】
そこで本発明は、見えにくい汚れを見え易くすることができ、清掃し易くする便器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、汚れが付着する部位を、透光性を有するシート状部材で被覆したことを特徴とする便器である。汚れの代表的なものは、小便(尿)が飛び散って付着したものである。
【0007】
請求項1の発明では、汚れが付着する部位を、透光性を有するシート状部材で被覆したことによって、汚れはシート状部材に付着する。その結果、便器表面に汚れの影が映るため、トイレ使用者又は清掃者は汚れを確認し易くなり、早期に汚れた部位を重点的に清掃することができるようになる。これにより、付着した汚れに雑菌が作用して悪臭を放つことを回避でき、人は快適にトイレを使用することができるようになる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の便器において、シート状部材を着脱可能に構成した。請求項2の発明では、透光性を有するシート状部材を着脱可能にしたので、既設のトイレにもシート状部材を装着することができる。また、シート状部材が摩耗等によって破損しても、取り替えることができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明の便器において、シート状部材の厚みを0.5mm〜3mmとした。請求項3の発明では、シート状部材の厚みを0.5mm〜3mmとしたので、付着した汚れの影が便器表面に映り易くなり、視認性を向上させることができ、清掃を促すことができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のうちのいずれかの発明の便器において、シート状部材の下に、光を反射する反射部材を設けた。請求項4の発明では、シート状部材の下に、光を反射する反射部材を設けたのでシート状部材に付着した汚れが目立ち易くなり、清掃を促すことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、汚れが付着する部位を透光性を有するシート状部材で被覆することにより、汚れはシート状部材に付着し、便器には汚れの影が映るので、トイレ使用者又は清掃者は、汚れに気付き易くなり、早期に汚れた部位を清掃することができるようになる。これにより、付着した汚れに雑菌が作用して悪臭を放つことを回避でき、人は快適にトイレを使用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明を実施した洋風の便器1の斜視図である。図1に示すように便器1は、本体を構成するリム2と、便座3、及び蓋4とを備えている。便座3は軸部5を中心に回動可能にリム2に固定されており、また、蓋4は軸部6を中心に回動可能にリム2に固定されている。図1は、蓋4及び便座3が開いた状態を示している。図1に示すように便座3の裏面3aには、四箇所に支承部7が設けてある。支承部7は、便座3を閉じた際にリム2の縁2aに当接して、人が便座3に座った際に掛かる荷重をリム2側に伝達する。
【0013】
蓋4を閉じると、臭いが立つのを防止することができる。便座3は、必要に応じて開状態(図1に示す状態)あるいは閉状態(裏面3aの支承部7がリム2の縁2aに当接した状態)で使用することができる。
【0014】
このような普通の便器1に、本発明の主要な構成である透明保護シート8(透明なシート状部材)が装着(被覆)されている。透明保護シート8は、リム2の縁2aを被覆するように装着されている。以下では、図2と図3とを参照しながら透明保護シート8の特徴を説明する。図2(a)は、図1のA部の拡大断面図であり、図2(b)は、図2(a)の変形例を示す拡大断面図である。また、図3は、図1のA部を破断させて描写した斜視図である。図2(a)に示すようにリム2の縁2aには、透明保護シート8が装着されている。
【0015】
図2(a)に示すように透明保護シート8はリム2の縁2aに密着しており、縁2aの表面形状に沿っている。このように縁2aに装着するために、透明保護シート8は、ある程度の弾性を有していることが好ましく、例えば、アクリル樹脂等を素材として採用することができる。また、厚みは0.5mm〜3mmの範囲とすることができるが、より好ましいのは1mm〜2mmである。この厚みは、汚れの視認性を向上させるのに適した寸法であり、あまり小さいと縁2aに汚れの影が映りにくくなり、また、大き過ぎると縁2aに汚れの影が映らない。よって、透明保護シート8の厚みは、上述の範囲に設定するのが好ましい。また、透明保護シート8は、必ずしも無色透明である必要はなく、汚れの視認性を向上させるのに支障がなければ有色透明であってもよい。
【0016】
リム2の縁2aに装着された透明保護シート8上に、例えば小便(尿)等が飛び散って異物10として付着した際、異物10は透明保護シート8の厚みの分だけリム2から離れている。
【0017】
透明保護シート8は光11を通すので、図3に示すように異物10の影10aがリム2の表面に映る。小便は乾燥すると視認しにくくなるが、異物10がたとえ小便が乾燥したものであったとしても、その影10aがリム2の表面に映るので、トイレの使用者又は清掃者は、その汚れ(異物10)を容易に視認することができる。
【0018】
よって、透明保護シート8の厚みは、異物10をリム2から離間させて異物10の影10aをリム2に投影させることができる程度に大きさを設定することが必要である。また、便座3を閉じた際には、支承部7が透明保護シート8に当接し、さらに人が便座3に座ると、その荷重が支承部7を介して透明保護シート8に掛かるので、透明保護シート8は、耐久性を考慮して素材や厚みを設定するのが好ましい。
【0019】
図2(b)は、図2(a)の変形例を示す。図2(b)に示す例では、異物10の影10aをリム2の表面に投影する代わりに、反射膜9(反射部材)によって異物10自体を反射させて視認性を向上させている。すなわち、リム2の縁2aと透明保護シート8の間に反射膜9を配置する。このように反射膜9を設けることにより、影10aよりも視認性が良好な異物10自体の反射像を視認することができるようになる。
【0020】
以上では、透明保護シート8及び反射膜9は、便器1のリム2に設ける例を示したが、異物10が付着し易い箇所として、例えば便座3の裏面3aがある。透明保護シート8及び反射膜9は、リム2に限らず便座3(特に裏面3a側には便が付着し易く、図示しない表面側には汗が付着し易い)や蓋4に設けることもできる。また、透明保護シート8は、耐久性のある素材を選定して便器1と一体成形してもよいが、摩耗するような弾性素材で形成して、取り替えが可能になるようにしてもよい。また、洋風の便器1に限らず、和風の便器の汚れ易い箇所に透明保護シート8や反射膜9を装着してもよい。
【0021】
このように透明保護シート8が設けられた部位に異物10が付着すると、人目に付き易くなり、清掃しなければならない箇所を容易に認識することができるようになる。よって、透明保護シート8を装着すると、異物10が付着してそのまま放置される可能性が低くなり、早期に清掃(拭き取り)することができるので、長時間放置して異物10に雑菌等が作用して悪臭を放つことを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施した洋風便器の斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA部の拡大断面図である。(b)は、(a)の変形例を示す拡大断面図である。
【図3】図1のA部を破断させて描写した斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 便器
2 リム
2a リムの縁
3 便座
3a 便座の裏面
8 透明保護シート(シート状部材)
9 反射膜(反射部材)
10 異物(汚れ)
10a 異物の影
11 光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚れが付着する部位を、透光性を有するシート状部材で被覆したことを特徴とする便器。
【請求項2】
前記シート状部材は、着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記シート状部材の厚みが、0.5mm〜3mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の便器
【請求項4】
シート状部材の下に、光を反射する反射部材を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−291698(P2007−291698A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119983(P2006−119983)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】