説明

便器

【課題】部品点数を削減することで、コスト安に製造することができる便器を提供する。
【解決手段】合成樹脂製のスカート部1と、このスカート部1の内部に配置される合成樹脂製のボウル部5との2部品で構成されて、ボウル部5の上端部5aに、スカート部1の上部1bに接合される便座載置面部2bが一体形成されている。スカート部1と、便座載置面部2bを一体形成したボウル部5との2部品でなる合成樹脂製の便器であるから、従来のスカート部とボウル部とリム部との3部品でなる合成樹脂製の便器と比較して、部品成形金型の個数を削減できるとともに、接合箇所も削減できるので、コスト安に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2分割タイプの便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6(a)(b)に示すように、スカート部1と、スカート部1の内部に配置されるボウル部2と、スカート部1の上部に接合されるリム部3とに3分割された合成樹脂製の便器がある(特許文献1参照)。
【0003】
そして、図6(c)に示すように、リム部3を上辺部3aと内辺部3bとで形成して、スカート部1の上端部1aをリム部3の上辺部3aの下面に当接させて接合するとともに、ボウル部2の上端部2aをリム部3の内辺部3bの底部3cに接合している。
【特許文献1】特許第3436004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スカート部1とボウル部2とリム部3との3部品でなる合成樹脂製の便器であるから、部品成形金型の個数が多くなるとともに、接合箇所が多くなるので、コスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、部品点数を削減することで、コスト安に製造することができる便器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、合成樹脂製のスカート部と、このスカート部の内部に配置される合成樹脂製のボウル部との2部品で構成されて、ボウル部の上端部に、スカート部の上部に接合される便座載置面部が一体形成されていることを特徴とする便器を提供するものである。
【0007】
請求項2のように、前記スカート部の上端部に便座載置面部の外端下面が載置されて接合されている構成とすることが好ましい。
【0008】
請求項3のように、前記スカート部の内面に、ボウル部の外周凸部が係止される段部が形成されている構成とすることが好ましい。
【0009】
請求項4のように、前記ボウル部の便座載置面部の下部にリム状の中空部が形成され、この中空部内にリブが一体形成されている構成とすることが好ましい。
【0010】
請求項5のように、前記ボウル部の外周部に立ち上がり部が形成され、この立ち上がり部をスカート部の内面に面接触させている構成とすることが好ましい。
【0011】
請求項6のように、前記立ち上がり部は、便座載置面部の外端下面から連続している構成とすることが好ましい。
【0012】
請求項7のように、前記便座載置面部の中空部内に発泡体が充填されている構成とすることが好ましい。
【0013】
請求項8のように、前記スカート部の内面に、ボウル部の外周部を受け支えるリブが一体形成されている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スカート部と、便座載置面部を一体形成したボウル部との2部品でなる合成樹脂製の便器であるから、従来のスカート部とボウル部とリム部との3部品でなる合成樹脂製の便器と比較して、部品成形金型の個数を削減できるので、コスト安に製造することができる。また、従来の3部品では2箇所で接合する必要があったが、2部品とすることで1箇所の接合で良くなり、この点からもコスト安に製造することができる。
【0015】
請求項2によれば、便座載置面部の外端下面をスカート部の上端部に載置して接合するから、便座載置面部の着座荷重をスカート部の上端部で受け支えることができるので、便座載置面部の剛性が向上するようになる。
【0016】
請求項3によれば、ボウル部の外周凸部をスカート部の段部で係止するから、便座載置面部からボウル部の外周凸部に作用する着座荷重をスカート部の段部でも受け支えることができるので、便座載置面部の剛性が向上するようになる。
【0017】
請求項4によれば、ボウル部の便座載置面部の下部の中空部内にリブを形成するから、中空部が補強されて便座載置面部の剛性が向上するようになる。
【0018】
請求項5によれば、ボウル部の立ち上がり部をスカート部の内面に面接触させるから、スカート部に対するボウル部の位置ズレを防止できるようになる。
【0019】
請求項6によれば、便座載置面部の着座荷重をスカート部の上端部で受け支えることと相俟って、立ち上がり部でも受け支えることができるので、便座載置面部の剛性がより向上するようになる。
【0020】
請求項7によれば、便座載置面部の中空部内に発泡体を充填しているから、中空部が補強されて便座載置面部の剛性が向上するようになる。
【0021】
請求項8によれば、ボウル部の外周部をスカート部のリブで受け支えるから、便座載置面部の剛性がより向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0023】
図1(a)は、スカート部1とボウル部5の分解斜視図、図1(b)は、スカート部1とボウル部5の組み立て斜視図である。
【0024】
スカート部1とボウル部5とは、いずれも射出成形、圧縮成形、真空成形等で成形された合成樹脂成形品であり、成形部材としては主に熱可塑性樹脂、例えば耐薬品性のあるPPや比較的強度があるアクリル系樹脂、補強材入りABSやPET等が好適に用いられる。このとき、成形部品の肉厚は3〜10mmとするのが好ましい。また、成形部品は大型であり、溶着時の残留応力を残存しているためアニールをするのが好ましい。さらに、表面品質を向上させるため、一般のハードコート材をコーティングしても良い。
【0025】
図2(a)に詳細に示すように、第1実施形態のボウル部5Aの上端部5aには、スカート部1の上部1bに接合されるフラットな便座載置面部5bが一体形成されている。この便座載置面部5bの下部には、リム状の中空部5cが形成されている。
【0026】
そして、第1実施形態のボウル部5Aでは、具体的には、スカート部1の上端部1aに便座載置面部5bの外端下面5dが載置されて溶着等で接合されている。
【0027】
また、中空部5cの下部に位置するボウル部5Aの外周凸部5eをスカート部1の内面に接触させている。この中空部5cの下部に位置するボウル部5Aの内周には、中空部5cと同様に環状の凹部5fが形成されている。
【0028】
このボウル部5Aでは、リム状の中空部(水路)5cに、ボウル部5Aの内面を洗浄する洗浄水を流すことができる他、環状の凹部5fに、ボウル部5Aの内面を洗浄する洗浄水の旋回流を流すことができる。
【0029】
第1実施形態のボウル部5Aであれば、スカート部1と、便座載置面部5bを一体形成したボウル部5との2部品でなる合成樹脂製の便器であるから、従来のスカート部とボウル部とリム部との3部品でなる合成樹脂製の便器と比較して、部品成形金型の個数を削減できるので、コスト安に製造することができる。
【0030】
また、従来の3部品では2箇所で接合する必要があったが、スカート部1とボウル部5の2部品とすることで1箇所(第1実施形態では、スカート部1の上端部1aとボウル部5Aの便座載置面部5bの外端下面5d)の接合で良くなり、この点からもコスト安に製造することができる。
【0031】
さらに、便座載置面部5bの外端下面5dをスカート部1の上端部1aに載置して接合するから、便座載置面部5bの着座荷重をスカート部1の上端部1aで受け支えることができるので、便座載置面部5bの剛性が向上するようになる。
【0032】
図2(b)は、第2実施形態のボウル部5Bであり、第1実施形態のボウル部5Aと相違するのは、スカート部1の内面に、ボウル部5の外周凸部5eが係止される段部1cが形成されている点である。また、ボウル部5Bの外周凸部5eの下位置の外周部に立ち上がり部5gが形成され、この立ち上がり部5gをスカート部1の内面に面接触させている点である。
【0033】
第2実施形態のボウル部5Bであれば、ボウル部5の外周凸部5eをスカート部1の段部1cで係止するから、便座載置面部5bからボウル部5の外周凸部5eに作用する着座荷重をスカート部1の段部1cでも受け支えることができるので、便座載置面部5bの剛性が向上するようになる。
【0034】
また、ボウル部5Bの立ち上がり部5gをスカート部1の内面に面接触させるから、スカート部1に対するボウル部5Bの位置ズレを防止できるようになる。
【0035】
図3(a)は、第3実施形態のボウル部5Cであり、第2実施形態のボウル部5Bと相違するのは、リム状の中空部5c内に、上下方向に複数本のリブ5hが一体形成されている点である。
【0036】
第3実施形態のボウル部5Cであれば、ボウル部5Cの便座載置面部5bの下部の中空部5c内にリブ5hを形成するから、中空部5cが補強されて便座載置面部5bの剛性が向上するようになる。なお、リブ5hは、図3(b)のように、断面視で三角形状のものであっても良い。
【0037】
図4(a)は、第4実施形態のボウル部5Dであり、第1〜第3実施形態のボウル部5A〜5Cと相違するのは、リム状の中空部5cと外周凸部5eとが無く、その代わりに、ボウル部5Dの外周部に立ち上がり部5gが形成され、この立ち上がり部5gをスカート部1の内面に面接触させている点である。また、立ち上がり部5gは、便座載置面部5bの外端下面から連続している点である。
【0038】
第4実施形態のボウル部5Dであれば、ボウル部5Dの立ち上がり部5gをスカート部1の内面に面接触させるから、スカート部1に対するボウル部5Dの位置ズレを防止できるようになる。
【0039】
また、立ち上がり部5gを便座載置面部5bの外端下面から連続させるから、便座載置面部5bの着座荷重をスカート部1の上端部1aで受け支えることと相俟って、立ち上がり部5gでも受け支えることができるので、便座載置面部5bの剛性がより向上するようになる。
【0040】
図4(b)は、第5実施形態のボウル部5Eであり、第4実施形態のボウル部5Dと相違する点は、便座載置面部5bの下部に、リム状の中空部5cが形成されている点である。そして、この中空部5c内には、発泡体6が充填されている。
【0041】
第5実施形態のボウル部5Eであれば、便座載置面部5bの中空部5c内に発泡体6を充填しているから、中空部5cが補強されて便座載置面部5bの剛性が向上するようになる。なお、図2(a)(b)または図3(a)(b)の中空部5cに発泡体6を充填しても同様の効果を得ることができる。
【0042】
図5に示す第6実施形態のように、スカート部1の内面に、円周方向に所定の間隔で、各ボウル部5A〜5Eの外周部を受け支える複数本のリブ1d,1eを一体形成することができる。例えば、便座載置面部5bの外周部である外端下面5dを受け支えるリブ1dと、ボウル部5の外周部である外周凸部5jを受け支えるリブ1eとを形成する。
【0043】
この構成とすれば、ボウル部5A〜5Eの外周部をスカート部1のリブ1d,1eで受け支えるから、便座載置面部5bの剛性がより向上するようになる。また、リブ1d,1eによって、スカート部1の剛性も向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る便器であり、(a)はスカート部とボウル部の分解斜視図、(b)はスカート部とボウル部の組み立て斜視図である。
【図2】(a)は第1実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図、(b)は第2実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図である。
【図3】(a)は第3実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図、(b)は第3実施形態の変形例のスカート部とボウル部の要部断面図である。
【図4】(a)は第4実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図、(b)は第5実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図である。
【図5】第6実施形態のスカート部とボウル部の要部断面図である。
【図6】従来の便器であり、(a)は分解斜視図、(b)は斜視図、(c)は側面断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 スカート部
1a 上端部
1b 上部
1c 段部
1d リブ
5 ボウル部
5a 上端部
5b 便座載置面部
5c 中空部
5d 外端下面
5e 外周凸部
5f 凹部
5g 立ち上がり部
5h リブ
5j 外周凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のスカート部と、このスカート部の内部に配置される合成樹脂製のボウル部との2部品で構成されて、ボウル部の上端部に、スカート部の上部に接合される便座載置面部が一体形成されていることを特徴とする便器。
【請求項2】
前記スカート部の上端部に便座載置面部の外端下面が載置されて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記スカート部の内面に、ボウル部の外周凸部が係止される段部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の便器。
【請求項4】
前記ボウル部の便座載置面部の下部にリム状の中空部が形成され、この中空部内にリブが一体形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の便器。
【請求項5】
前記ボウル部の外周部に立ち上がり部が形成され、この立ち上がり部をスカート部の内面に面接触させていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の便器。
【請求項6】
前記立ち上がり部は、便座載置面部の外端下面から連続していることを特徴とする請求項5に記載の便器。
【請求項7】
前記便座載置面部の中空部内に発泡体が充填されていることを特徴とする請求項4に記載の便器。
【請求項8】
前記スカート部の内面に、ボウル部の外周部を受け支えるリブが一体形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25176(P2008−25176A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198177(P2006−198177)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】