説明

便蓋カバー

【課題】 便ふたに対するフィット性が高く、温水暖房便座や便器の機能を損なう事が無く、さらに生産性が高い便蓋カバーを提供する。
【解決手段】 本発明では、洋式便器の便蓋に上面側から覆うようにして装着する便蓋カバーであって、便蓋カバー本体と、前記洋式便器の便蓋の周縁部と係合するフックと、前記フックが先端に取り付けられる帯状の弾性部材と、を備え、前記弾性部材は前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に縫製されており、前記弾性部材の前記フックが取り付けられた先端が前記便蓋カバー本体の内方向に向いていることを特徴とする便蓋カバーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風大便器用の便蓋カバーに係り、特に便ふたに対するフィット性が高く、温水暖房便座や便器の機能を損なう事が無く、さらに生産性が高い便蓋カバーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の洋式便器における便蓋は便座上に載置された状態にあり、デザイン的なチープさが生じていた。そこで、これを解消すべく、閉止状態にある便蓋が便座を包み込み、便器本体上には便蓋のみが載置されているようなデザインの洋式便器用便蓋、便座が開発されている。ところが、図11に示すように、前述した洋式便器90用便蓋、便座においては、洗浄便座91を便蓋92で覆うために便蓋92の先端92aが便座91の側面91aに接近した構造となっているので、特許文献1記載の「洋式便器の蓋用カバー」はこの洋式便器90に対応することができない。なぜなら、特許文献1記載の「洋式便器の蓋用カバー」は面ファスナーおよび弾性ギャザーにより蓋用カバーを便蓋に固定する方式であるため、例えば、男性の小用時に便座および便蓋を自立させようとすると、これら面ファスナーおよび弾性ギャザーが便座と便蓋の隙間に介在することとなり、便座および便蓋を自立させることができないからである。
【0003】
この問題を解決するために、便蓋の上面にカバー本体を被せ、カバー本体の裏面後部の両側部にある係合部材を便蓋の後方両側部に係合させ、フックを便蓋の周縁部に引っ掛けることにより、カバー本体の裏面後部の両側部を便蓋の後方両側部に係止することができる便蓋カバーが提案されている(例えば、特許文献2)。このとき、フックは弾性部材を介してカバー本体と縫製されており、便蓋カバーの左右両側から引張り力を加えることによって、便蓋カバーを便蓋にフィットさせることが出来る。
【0004】
このフック付弾性部材をカバーにミシンなどを用いて縫製する際、図9に示すように外周方向にフック先端部分が向いている場合、ミシンの本体方向にフックが存在することから、作業者がフックを押さえることができず、縫製の際の振動によりミシン近傍でフックが暴れてしまうという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05−29496号公報
【特許文献2】特開2007−268178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便ふたに対するフィット性が高く、温水暖房便座や便器の機能を損なう事が無く、さらに縫製の際の作業性が高い便蓋カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、洋式便器の便蓋に上面側から覆うようにして装着する便蓋カバーであって、便蓋カバー本体と、前記洋式便器の便蓋の周縁部と係合するフックと、前記フックが先端に取り付けられる帯状の弾性部材と、を備え、前記弾性部材は前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に縫製されており、前記弾性部材の前記フックが取り付けられた先端が前記便蓋カバー本体の内方向に向いていることを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、ミシンによる縫製の際にも特殊工具を使わずとも、フックを作業者の手、或いは器具によってカバー本体と共に保持することが可能となり、縫製の際の作業性が向上する。また、フックにより、便蓋カバーを便蓋へ押し付ける構造となるため、便蓋カバーを便蓋にフィットさせることが可能となる。
【0008】
また、請求項2記載の発明によれば前記弾性部材は前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に縫製されていることを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、便蓋カバーを左右から引っ張りながら便蓋へ押し付ける構造となるため、便蓋の形状によらず、便蓋カバーを便蓋にフィットさせることが可能となる。
【0009】
また、請求項3記載の発明によれば前記弾性部材を縫製した上から、便蓋カバーの外周に沿ってバイアステープを装着することを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、バイアステープによってフックの縫製痕を覆い隠すことができ、便蓋カバーの上面視意匠性を向上させることが出来る。
【0010】
また、請求項4記載の発明によれば前記弾性部材、及び前記フックを、前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に、それぞれ複数個ずつ備えたことを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、便蓋の複数箇所に係合することが可能となり、便蓋へのフィット性がさらに向上する。
【0011】
また、請求項5記載の発明のよれば、前記便蓋カバー本体の後方両側部を便蓋の後方両側部に係合させるため前記カバー本体の裏面後部の両側部に付設された係合部材と、前記カバー本体の前縁部を便蓋の前縁部裏面に係止するため当該便蓋カバー本体の前縁部に沿って付設された弾力的復元性を有するフィット部材と、を備えたことを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、フックを使用した場合の効果に加え、便蓋先端部においても弾性部材を縫いこんだカバーによって包み込むことでフィットさせることが出来、さらに便蓋後部に取付ゴムによって引っ掛けることによって、便蓋カバーが前方へずれてしまう問題を解決することが出来る。
【0012】
また、請求項6記載の発明によれば前記係合部材が、前記便蓋カバー本体に付設された状態で、たわむ程度の全長を持つことを特徴とする便蓋カバーが提供される。これにより、便蓋カバーを装着する際に必要な力を軽減することが可能となる
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、便ふたに対するフィット性が高く、温水暖房便座や便器の機能を損なう事が無く、さらに生産性が高い便蓋カバーを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の便ふたカバー1の表面図である。
【図2】本発明の便ふたカバー1の裏面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】本発明の便ふたカバー1を便ふた7に装着した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の便ふたカバー1を装着した便ふた7を裏面からみた斜視図である。
【図6】図5におけるBの方向からみた斜視図である。
【図7】図4におけるCの方向からみた斜視図である。
【図8】本発明の便座カバーにフック付弾性部材を縫製する様子を示した模式図である。
【図9】従来の方法で、便ふたカバー1にフック3を取り付けた弾性部材4を縫製する様子を示した模式図である。
【図10】本発明の第二の実施例におけるふたカバー周縁部1cを示す断面図である。
【図11】従来の便座と便蓋の隙間を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の第一の実施例について説明する。
図1に本実施例における便ふたカバー1の表面図を示す。便ふたカバー1はカバー本体1と、カバー周縁部1c及びカバー後縁部1dに取り付けられたバイアステープ2からなる。
カバー本体1は厚地の基布より形成されており、表面はパイルによって起毛加工されている。
【0016】
図2に便ふたカバー1の裏面を示す。カバー後縁部1dの両端には弾性を有する取付ゴム5が取り付けられており、カバー本体1aの柄にあわせた色に着色されている。
また、カバー周縁部1cに左右に2個ずつ、カバー前縁部1bには3個の係止部材4がそれぞれ縫付け固定されており、係止部材4は先端部に断面J状の合成樹脂からなるフック3を備えている。
【0017】
図3に図2のA−A断面図を示す。係止部材4は、先端部のフック3がカバー本体1a側を向いた状態で縫製される。また、このときに係止部材4を縫製した後に、縫製痕の上部をバイアステープ2で覆うことで、縫製痕を隠すことが可能である。
【0018】
図8に本発明における係止部材4の縫製の様子を示す。
図8の(a)に示したように、フック3をカバー本体1aの内側に向けた状態で、弾性部材4を便ふたカバー1へとミシンなどを利用して縫製する。なお、ここでいう内向きとは、便蓋カバー本体1aの左右対称線方向を意味する。このとき、図8の(b)に断面図として示したように、ミシン本体と逆側にフック3が存在することとなり、フック3を作業者が手などで押さえることが可能となり、作業性が向上する。
【0019】
図9の(a)に係止部材4のフック3をカバー本体1aの外側に向けた場合を示す。この場合、図9の(b)に断面図として示したように、フック3を作業者の手などによって抑えることが困難であり、縫製中にフック3が振動によって運動してしまい、縫製作業に悪影響を与える。
【0020】
図4には図1に示す便ふたカバーを便ふたに装着した状態を示す斜視図を示す。便ふたカバー1は図に示したように、便ふた7に被せるように装着される。
【0021】
図5には、図1に示す便ふたカバー1が装着された便ふた7を裏面から見た斜視図を示す。図に示したように、カバー後縁部1dの取付ゴム5を便ふた7の後端部に引っ掛けることで、便ふたカバー1が便ふた7の手前方向にずりおちてくることを防止することが出来る。
【0022】
またこのとき、取付ゴム5が便ふたカバー1に付設された状態でたわむ程度の長さである。これにより、取付ゴム5を便ふた7の後端部に引っ掛ける際に、取付ゴム5を引っ張る力が小さくてすむ。さらに、取付ゴム5は便ふたカバー1の表面と同系色にて着色されている。これによって、便ふた7へ取り付けた場合に、取付ゴム5が目立ってしまい、意匠性が低下することを避けている。
【0023】
図6には図5のBの方向から見た斜視図を示す。係止部材4の先端、フック3を便ふた7の側壁部に引っ掛けることで、カバー本体1aを左右からひっぱり、便ふた7の形状に合わせてフィットさせることが可能となっている。
【0024】
図7に図4のCの方向から見た斜視図を示す。図に示すように、取付ゴム5は便ふた7のヒンジ部に取付られる。
【0025】
次本発明の第二の実施例を示す。なお、既に説明した部材と同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
図10(a)は、本発明の第二の実施例におけるカバー周縁部1cを示した模式図である。係止部材4を縫製した後に、バイアステープ2を取り付けることによって、係止部材4の縫製痕が便ふたカバー1の表面に現れることを防止することが可能となる。
【0026】
図10(b)は係止部材4のフック3をカバー本体1aとは逆の外側に向けた場合を示している。この場合、係止部材4、およびフック3が邪魔となり、バイアステープ2によって被覆することが不可能であることがわかる。
【0027】
なお、本発明はここに示した実施例に限られるものではなく、カバー本体の材質やその他部材の材質、係止部材の数などは本発明を逸脱しない範囲で自由に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…便ふたカバー
1a…カバー本体
1b…カバー前縁部
1c…カバー周縁部
1d…カバー後縁部
2…バイアステープ
3…フック
4…係止部材
5…取付ゴム
6…洋式便器
7…便ふた

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器の便蓋に上面側から覆うようにして装着する便蓋カバーであって、
便蓋カバー本体と、
前記洋式便器の便蓋の周縁部と係合するフックと、
前記フックが先端に取り付けられる帯状の弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に縫製されており、
前記弾性部材の前記フックが取り付けられた先端が前記便蓋カバー本体の内方向に向いていることを特徴とする便蓋カバー。
【請求項2】
前記弾性部材は前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に縫製されていることを特徴とする請求項1に記載の便蓋カバー
【請求項3】
前記弾性部材を縫製した上から、便蓋カバーの外周に沿ってバイアステープを装着することを特徴とする請求項1乃至2の何れか1項に記載の便蓋カバー
【請求項4】
前記弾性部材、及び前記フックを、前記便蓋カバー本体の左右対応する位置に、それぞれ複数個ずつ備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の便蓋カバー
【請求項5】
前記便蓋カバー本体の後方両側部を便蓋の後方両側部に係合させるため前記カバー本体の裏面後部の両側部に付設された係合部材と、
前記カバー本体の前縁部を便蓋の前縁部裏面に係止するため当該便蓋カバー本体の前縁部に沿って付設された弾力的復元性を有するフィット部材と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に便蓋カバー。
【請求項6】
前記係合部材が、前記便蓋カバー本体に付設された状態で、たわむ程度の全長を持つことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の便蓋カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−284348(P2010−284348A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140731(P2009−140731)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】