説明

係止ファスナー部品の表面機能化方法およびこの方法によって製造された係止ファスナー部品

対応形成された係止ファスナー部品(14)と繰返し開放可能かつ閉鎖可能な係止ファスナー(10)を形成する係止ファスナー部品(12)の表面を機能化し製造するための方法であって、前記係止ファスナー部品(12、14)の少なくとも一方が、基材部(16)上に配置されて突出する茎部(18)を少なくとも一部に有し、前記茎部がそれぞれ前記基材部(16)から離れた方のその側に頭部(20)を有しかつ前記頭部とファスナー要素(22)を形成するものにおいて、一方の前記係止ファスナー部品(12、14)の前記茎部(18)の少なくとも一部が機能媒体を備えられ、付設可能な前記頭部(20)が十分にまたは完全に前記機能媒体を排除され、前記対応するファスナー要素(22)を係合させて前記閉鎖係止ファスナー(10)を形成するための閉鎖力が低減され、前記対応するファスナー要素(22)を離反させて前記開放係止ファスナー(10)を形成するまでは保持力が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応形成された係止ファスナー部品と繰返し開放可能かつ閉鎖可能な係止ファスナーを形成する係止ファスナー部品の表面機能化方法であって、係止ファスナー部品の少なくとも一方が、基材部上に配置されて突出する茎部を少なくとも一部に有し、これらの茎部がそれぞれ基材部から離れた方のその側に頭部を有しかつこの頭部とファスナー要素を形成するものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、係止ファスナー部品の表面機能化装置と並んで前文に係る方法が公知である。この公知方法では、特に供与体またはコレクタの態様の陽子および/または電子交換媒体によって係止ファスナー部品の表面エネルギーが高エネルギーを利用して変更され、交換媒体の官能基を係止ファスナー部品材料に付加することによって、被覆なしに経時変化に耐えるように係止ファスナー部品材料の化学物理的性質が調整可能とされる。特にアミノ基、アミド基および/またはイミド基およびそれらの化合物等の塩基性電子供与体を利用することによって係止ファスナー部品の上面に官能基としてNH3基が組み込まれ、この基は他の機能構造基といわゆる不斉尿素結合を構成可能とし、この不斉尿素結合は他の反応基を備えており、この反応基にクッションフォーム分野の発泡材料からポリウレタンを移すことができる。これは、発泡成形体内で係止ファスナー部品の優れた結合をもたらし、特に車両工学分野において大きな役割を演じる。こうして、付属する装置と並んで公知方法でもって各係止ファスナー部品の表面全体が改質される。
【0003】
特許文献2により公知の比類する係止ファスナー部品は、特に車両シートのクッション部品においてクッション部品製造時に発泡させるためのものであり、片面の係止要素が他方の係止ファスナー部品の対応する係止要素と結合されて係止ファスナーを形成し、係止ファスナー部品の反対面の結合手段が機能媒体としての係止媒体の態様で各発泡材料との結合を実現し、係止媒体は係止ファスナー材料自体に持ち込まれており、係止媒体はフッ素から成る。係止ファスナー部品の構成要素たる茎部、頭部および基材部の完全製造後に係止ファスナー部品の上面全体にフッ素は特に窒素雰囲気中で気体として被着される。こうして、対応する発泡材料への係止ファスナー部品の結合はこの分野で本来一般に利用される接着剤によるよりも良好に達成することができる。
【0004】
それに対して特許文献3により、係止ファスナー部品の表面をナノ複合材料で被覆するためのいわゆるゾルゲル法が公知である。他方の係止ファスナー部品の対応するファスナー要素を後に係合させるためのファスナー材料の機能を得るために発泡体は水の粘性よりも低い粘性となることがあるが、こうして被着された被覆は撥泡作用を有し、膨張時にファスナー要素の空隙内に発泡材料が浸入する可能性に対して効果的に対抗する。
【0005】
さらに特許文献4により、主に係止ファスナー部品の態様の固定手段を製造するための方法が公知であり、この方法は茎状固定要素を備えられる基材構造を基材部として形成することを含み、固定要素は少なくとも対で中間要素を介して互いに結合されて締め金状、特にU形の固定部品を形成し、茎状固定要素は基材構造を貫通して基材構造から突出し、これら固定要素の間を延びる中間要素が基材構造に配置される。各固定部品が全体として基材構造に持ち込まれ、このため持ち込む前に固定部品が成形部品として締め金状、特にU形に形成されることによって、一種の固定部品用発射機構を利用して固定要素は高速で基材構造と結合することができ、意外なほど良好な製品品質を達成することができる。こうしたパッド状の係止ファスナー部品は専門業界では商標名Duotec(登録商標)としても知られており、このような係止ファスナー部品は製織、製編または製組しておくこともできる。十分に熱処理されるプラスチックから成る固定要素は例えばポリプロピレンまたはポリアミドから成り、金属基材内でも明確に固定することができ、表面改質を何ら有していない。
【0006】
一般的使用実務の枠内でこのようなファスナーにおいて判明したこととして、一方の係止ファスナー部品が、対応形成され特に同一に形成された係止ファスナー部品と、繰返し開放可能かつ閉鎖可能なファスナー機構を形成する場合、ファスナーの閉鎖を目的に隣接ファスナー要素を係合させるとききわめて強い閉鎖力が発生し、手によってきわめて強い組立力を加えねばならず、他方で、ファスナー要素の意図しない離反または剥離を避けるために逆方向で実現すべき保持力は達成すべき保持力値の強さの点でなお要望が残る。特に振動およびその他の衝撃の発生時、市場で入手可能なファスナーシステムの少なくとも一部では、意図することなく係止ファスナー部品の剥離を生じることがあり、その結果例えば、重い壁パネル(ヘッドライナー)が付属の車両フレーム部品から意図することなく剥離することもあり、これは一定の潜在的危険と平行して現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006028581号明細書
【特許文献2】欧州特許第1082032号明細書
【特許文献3】欧州特許第1082031号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/036252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこうした先行技術を前提に本発明の課題は、上記諸欠点を有しておらず、特に係止ファスナーの閉鎖時に僅かな閉鎖力と、その限りで閉鎖された係止ファスナー用になお強い保持力とを可能とする係止ファスナー部品と並んで方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と請求項10の特徴を有する係止ファスナー部品が解決する。
【0010】
請求項1の特徴部分により一方の係止ファスナー部品の茎部の少なくとも一部が機能媒体を備えられ、付設可能な頭部が十分にまたは完全に機能媒体を排除されることによって、対応するファスナー要素を係合させて閉鎖係止ファスナーを形成するための閉鎖力は低減されており、対応するファスナー要素を離反させて閉鎖係止ファスナーを開放させるまでは保持力が高められている。機能媒体に触れない頭部は好ましい低摩擦挙動を有し、係合時に頭部は他方のファスナー部品の茎部によって形成される空隙内に互いに実質抵抗なしに滑り込むことができ、こうして閉鎖力は低減されている。ファスナーが閉鎖されていると、他方のファスナー部品の隣接茎部の空隙を形成する距離の間に係合する各頭部の縁側諸領域はその都度隣接配置される茎部の機能媒体に当接することになり、その限りで茎部が摩擦を強め、こうして対応ファスナー要素の離反を困難とする。このことから、ファスナー開放過程に至るまで保持力は所望の枠内で高まることになる。ファスナー要素用の好適な機能媒体と利用するプラスチック材料とに応じて当該閉鎖力は半分にすることができる一方、保持力は2倍以上高めておくことができる。各係止ファスナーと協動する屋根パネルまたは壁パネル等の構成要素が、揺動または強い振動に曝されている場合でも意図することなく基本構造から剥離することのないことはこうして確保することができる。また組立工にとっても、対応する両方の係止ファスナー部品でファスナーを閉鎖することが著しく容易となっており、組付け部品は効率的に基本構造に固定することができる。
【0011】
機能媒体として気相のハロゲンを被覆の態様で一方の係止ファスナー部品の茎部の少なくとも一部に被着すると特別好ましいことが判明した。しかし主に、互いに対で付属して係止ファスナーを形成する各係止ファスナー部品のすべての茎部がこうして機能媒体を備えている。ハロゲンとして利用されるのは主にフッ素またはその化合物の1つ、例えばフッ化塩素(ClF)または三フッ化塩素(ClF3)である。
【0012】
この方法でもって成形ファスナーにも、製織ファスナーまたは製組ファスナーにも、機能媒体を備えることができる。成形ファスナーの場合まず基材部と一緒に茎部が作製され、次にフッ素機能媒体が気相で好適な装置を介して被着される。引き続き、加熱された茎末端が頭形状とされ、いずれにしてもファスナー頭の上面には機能媒体がなく、それに対して茎部は機能媒体を外周面に有する。熱可塑性プラスチック材料としてポリプロピレンが利用される場合、ファスナー頭の処理されない頭上面にとって特別好ましい低摩擦特性が得られる。
【0013】
モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントから成る係止ファスナー部品を得るのに製織法または製組法を利用する場合、少なくとも、織り込まれまたは組み込まれて突出するループが適宜にフッ素化され、各ループの切り離し後、その限りで茎部末端を形成するループ自由端は毛焼処理されまたはその他の入熱を施されて頭部を形成することができ、この頭部では熱可塑性プラスチック材料がその表面張力のゆえに一種の球冠状または半球状頭部に変化する。このことは付加的頭成形機構によって促進することもできる。すべてのループをこのように改質するのでない限り、こうして形成することのできる係止ファスナー部品は基材部の一方の上面に掛合ループの他に、付属する茎部と並んでファスナー頭もファスナー要素として有する。また、切断されたループは部分的に鉤状ファスナー要素へと変形させることができ、茸頭状ファスナー要素の他に鉤状ファスナー部品も係止ファスナー部品の上面に突出させることができる。
【0014】
各係止ファスナー部品の基材部も略図のように表面機能化される限り、これはフッ素媒体の反応性官能基のゆえに仕上げ剤の付着改善を可能とし、選択された仕上げ剤に応じてファスナーは耐炎性、耐熱性に設計することができ、同時に、製織ファスナーの場合仕上げを介して基材部に対する織り込みファスナー要素の付着が改善され、こうしてファスナー使用時にファスナー要素が意図することなく引き剥がされるのは確実に防止されている。
【0015】
以下、図面による係止ファスナー部品の製品例に基づいて本発明に係る方法を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】縮尺どおりではない原理図で係止ファスナーの機能を示す。
【図2】表面機能化した係止ファスナー部品の製造を前段から最終段にかけて時間経過図の態様で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
全体に符号10として図1に一部示した係止ファスナーが係止ファスナー部品12を有し、この係止ファスナー部品は対応形成された係止ファスナー部品14と繰返し開放可能かつ閉鎖可能な係止ファスナー10を形成する。こうして構成された係止ファスナーはその機能の点で専門業界や最終消費者群のもとで商標名Kletten(登録商標)係止ファスナーとしても十分に知られている。図1に示したファスナーはさらに商標Microduotec(登録商標)として市場にある。図1がさらに示すように、各係止ファスナー部品12,14が基材部16を有し、この基材部は帯状または平面状に三次元対象物として図示平面内におよびそこから外へと延びており、各基材部16の少なくとも片側に茎部18が配置されており、茎部はその端面側自由末端に、つまり各基材部16から離れた側に頭部20を一体に備えている。こうして各茎部18はその頭部20と成形ファスナー要素22を形成し、ファスナー要素はこの場合基材部16の上面で横方向および縦方向に並んで突出している。
【0018】
図1の図がさらに示すように、一方の係止ファスナー部品12の頭部20がそれに付設可能な茎部18でもって他方の係止ファスナー部品14の空隙24内に係合し、この空隙24は一方の係止ファスナー部品12,14の隣接茎部の間隔によって実質形成されており、同様に他方の係止ファスナー部品12にも当該空隙24が存在している。係止ファスナー部品12,14を相互に確実に係合させるために、そして図1の目視方向で図の左半分に示したような閉鎖係止ファスナーにおいて強い保持力を得るために、相応に鋭角に形成された周縁26を頭部20が外周面側に有すると有利であるが、しかしこの周縁は、その限りで鋭利である頭部推移によって妨げられることであるが図1の目視方向に見て図の右半分でファスナーが互いに係合して閉鎖すべきである限り或る意味で障害となり得る。逆向きの閉鎖力と保持力は図1にSKとHKで力矢印として示してある。理解を助けるためになお明確にしておくなら、ファスナー要素22は熱可塑性プラスチック材料から規則的に形成されており、その限りでこのプラスチック材料は弾力的に撓んで隣接係止ファスナー部品の頭部20の係合を可能とし、その限りで、ファスナーを開放するために剥離過程も促進する。
【0019】
ところで少なくとも本発明に係る方法の意味で一方の係止ファスナー部品12または14の茎部18に機能媒体が備えられ、付設可能な頭部20が十分にまたは完全に機能媒体を排除されることによって、対応するファスナー要素22を係合させて閉鎖係止ファスナーを形成するための閉鎖力SKは低減させることができ、また対応するファスナー要素22を離反させて開放係止ファスナー10を形成するまで保持力HKは著しく高めることができる。その原因は、機能媒体に触れない頭部20がその限りでその上面に好ましい低摩擦挙動を有し、係合時に頭部が他方のファスナー部品12または14の茎部18によって形成される空隙24内に互いに実質抵抗なしに滑り込むことができ、その限りで閉鎖力SKが低減していることにある。機能媒体を排除された頭部20はプラスチック挙動の方から好ましい低摩擦特性を有するのに対して、機能媒体が残存する茎部は摩擦を高めることになり、つまり、保持力HKの限界値を上まわって閉鎖係止ファスナー10の剥離を不可避的にもたらすことになるまで持続的相互保持を改善することになる。このことは、繰返し開放閉鎖可能なKletten(登録商標)係止ファスナーを実現するうえで望ましくもある。
【0020】
機能媒体を適切に利用することによって閉鎖力はこうして著しく低減させることができ、このことは組立工にとって組立作業を容易とする助けとなり、その逆に保持力HKは著しく高まっている。すなわち、一旦閉鎖された係止ファスナー10は高い荷重または重量に耐える。このことは例えば、自動車製造において車両内部でヘッドライナーが重力に抗してその他の車両ボデー基本構造に固定されるとき重要な役割を演じる。温度の高い環境条件において、また走行運転時に振動および揺動が相応に発生する場合でも、こうして改質された係止ファスナー10で固定されたヘッドライナーはいずれにしてもその組立位置に留まることが判明した。
【0021】
図1に示すファスナー10は帯物または平面物として成形法によって得ることができ、この成形法は専門用語でチルロール法とも称される。このような成形法が特許文献1に例示されており、この出願の単一の図が一部を示す製造装置は塑性状態または液体状態にある特に熱可塑性のポリプロピレン(PP)等のプラスチック材料用の供給機構として押出ヘッドを有し、このプラスチック材料は製造すべき係止ファスナー部品12または14の幅に一致した幅の帯材として加圧工具と成形工具との間の隙間に供給され、両方の工具はロールとして形成されてロールフレームの態様で互いに協動する。本来の成形のために成形ロールが周面に有する成形スクリーンは個々の成形キャビティを備えており、成形キャビティは個々のファスナー要素22、つまりそれぞれ頭部20を備えた茎部18を基材部16上に生成する。
【0022】
この公知解決から離れて、ここに呈示した本発明に係る方法の枠内で一次製品として得られるのは一体に成形された茎部18を有する基材部16のみであり、各頭部20は成形されていない。茎部円筒または茎部双曲面としての茎部の幾何学形状にかかわりなく、茎部は次に基材部16と一緒に、特許文献2の単一の図に例示されたような通常のフッ素化機構内に送られ、好ましくは3〜10%のフッ素ガスの態様の機能媒体の送入は室温と約650ミリバールの負圧とにおいて閉鎖塗布室内で実行される。その限りでフッ素化は、主に40℃〜50℃の選択した温度範囲において窒素雰囲気と相応する負圧とのもとで前記処理室内で連続的に行うことができる。
【0023】
各基材部の上面と茎部18が、主に気体状で塗布されるフッ素の態様の機能媒体で外周面を被覆されたなら、引き続く公知のカレンダーロール法で茎端が頭部20へと成形される。そのことから得られる頭幾何学形状は図1の図に示すように相応に平らに形成された端面を有し、これらの端面は個別の頭成形工具によって、例えば横断面で見て多角形の頭形状へと二次成形することができる。
【0024】
このような係止ファスナー10を製造する別の可能性が例えばEP1534096B1により公知である。この公報は、脱離可能に相対応するファスナー要素22を互いに係合させることのできる係止ファスナー10用平面状係止ファスナー部品12に関するものである。この解決は、経糸と緯糸とから成る基材部16としての基布から成り、さらに少なくとも1つの機能糸28(図2参照)を備えている。この機能糸は主にモノフィラメント糸として形成されて基布に部分的に入り込み、ファスナー要素22を形成する。このように製織されたファスナーは市場において商標名Duotec(登録商標)としても自由に購入可能である。
【0025】
図2の目視方向に見て最も上側に前記出発製品が示してある。ループ付きのファスナー部品ではなく茸状または鉤状特徴を有するファスナー部品を必要とする場合、ファスナーループは、先行技術において一般に行われるように好適な切断装置(図示せず)で分離線30に沿って切断される。
【0026】
この公知解決から離れて、呈示した本発明に係る方法ではしかし、機能糸28で形成されるファスナーループ32はさしあたり維持され、こうして改質された係止ファスナー部品12はまず上記の如くにフッ素化部に供給される。符号Fとしたフッ素官能基はその限りで規則的にファスナーループ32の外表面全体を取り囲み、また普通、この場合経糸と緯糸とから成る基材部16もなお一緒にフッ素化される。後続の他のステップにおいて次にファスナーループ32は既に示したように分離線30に沿って切断され、織り込まれた材料の固有弾性に基づいて多少相互に離れる方に突出するループ自由端は末端側が毛焼処理され、利用されるプラスチック材料の表面張力に基づいて頭部20が生じ、頭部は図2の目視方向に見て最も下の図に示すように半球状または球冠状に形成されている。
【0027】
茎部18を各頭部20へと成形するのにファスナーループ32の多かれ少なかれ各半分が利用されるので、その限りで頭部形成時に機能媒体としてのフッ素も一緒に融解される。そのことから、頭部形成領域において熱影響下にフッ素は揮発するか、または微細分散して頭部20の内部で統計的に分布するかのいずれかとなる。しかしこれにより結局、統計的フッ素分布パターンからいずれにしても各頭部20の上面にフッ素の態様の機能媒体が殆ど存在しないかまたはごく僅かな濃度で存在するだけであるのに対して、茎部18の外周面が依然として高い程度にフッ素官能基を有することは確保されている。つまり概括的に検討するなら、各頭部20の外周面側は、主にポリプロピレンの態様の低摩擦性プラスチック材料で形成されているのに対して、茎部18の外周面はフッ素機能媒体を有し、その限りでこの機能媒体は茎部18での摩擦を強め、こうして対応係止ファスナー部品12,14を係合させて保持力HKを強めることになる。同様に、頭部用の低摩擦性プラスチック表面は上記の如くに閉鎖力SKの低下を可能とし、そのことで組立が特別容易となる。
【0028】
図2のこの実施例では基材部16が経糸と緯糸とから成る基布で構成されるので、その限りで基材部16に織り込まれたループ材料が力の作用を受けて頭部20から引き出される可能性もループ材料の切断によって基本的に与えられている。基材部16の基布内にもフッ素機能媒体を持ち込むことによってフッ素反応基が基材部16内に提供され、これらのフッ素反応基はいわゆる仕上げ剤の付着を特別容易とし、仕上げ剤は普通、ファスナー要素22の引き出しを著しく困難にする。さらに、(図示しない)仕上げ剤はその性質の点でも、こうして生成される係止ファスナー部品が特別耐熱性であると実証されるようになお改質し、例えば難燃性に形成することができる。
【0029】
好適と実証されかつ主に気体状で塗布することのできる別の機能媒体をフッ素の代わりに使用することもでき、基本的にハロゲンが特別適していると実証された。特別良好な値を達成できるのはフッ化塩素または三フッ化塩素を機能媒体として利用する場合であるが、しかしこれらはここで利用された気体状フッ素材料よりも僅かに高価であることがある。
【0030】
ファスナー製造の他の可能性が特許文献4に示されており、そこでは基材部16としての金属本体内にもU形ファスナー要素を掛け金状に挿入することができる。挿入過程用に改質される固定部品はやはりまず機能媒体を備えることができ、引き続きやはり、毛焼処理等の熱成形法を介して、または先行技術で知られているロールカレンダー法によって、頭部形成が行われる。
【0031】
係止ファスナー技術分野の平均的専門家にとって意外なことであるが、幾何学的または空間的に分布した箇所で係止ファスナー部品にフッ素成分等の官能基を適切に被着することによって、このように拡張された枠内で機能性は最適化し調整することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 係止ファスナー
12 係止ファスナー部品
14 係止ファスナー部品
16 基材部
18 茎部
20 頭部
22 ファスナー要素
24 空隙
26 周縁
28 機能糸
30 分離線
32 ファスナーループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応形成された係止ファスナー部品(14)と繰返し開放可能かつ閉鎖可能な係止ファスナー(10)を形成する係止ファスナー部品(12)の表面機能化方法であって、前記係止ファスナー部品(12、14)の少なくとも一方が、基材部(16)上に配置されて突出する茎部(18)を少なくとも一部に有し、前記茎部がそれぞれ前記基材部(16)から離れた方のその側に頭部(20)を有しかつ前記頭部とファスナー要素(22)を形成するものにおいて、一方の前記係止ファスナー部品(12、14)の前記茎部(18)の少なくとも一部が機能媒体を備えられ、付設可能な前記頭部(20)が十分にまたは完全に前記機能媒体を排除され、前記対応するファスナー要素(22)を係合させて前記閉鎖係止ファスナー(10)を形成するための閉鎖力が低減され、前記対応するファスナー要素(22)を離反させて前記開放係止ファスナー(10)を形成するまでは保持力が高められることを特徴とする方法。
【請求項2】
機能媒体として気相のハロゲンが被覆の態様で前記係止ファスナー部品(12、14)の前記茎部(18)の少なくとも一部に被着されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ハロゲンとしてフッ素および/またはその化合物の1つ、例えばフッ化塩素(ClF)または三フッ化塩素(ClF3)が利用されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
表面を機能化されるべき前記各係止ファスナー部品(12、14)が少なくとも部分的に成形法によって得られ、または製織法または製組法によってモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメント(28)から得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
表面を機能化されるべき前記係止ファスナー部品(12、14)を得るために少なくとも部分的に熱可塑性プラスチック材料、主にポリプロピレンが利用されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
成形法の場合、こうして得られて前記基材部(16)から突出する前記茎部(18)が表面を機能化され、引き続き他の処理ステップにおいて、加熱された前記茎部末端が前記頭部(20)へと成形されることを特徴とする請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
製織法または製組法の場合、まず前記基材部(16)に織り込まれまたは組み込まれたループが前記表面機能化後に切断され、前記ループ(32)のこうして切断された末端が少なくとも部分的に、加熱によって前記頭部(20)へと成形され、本来前記基材部(16)から突出するループ構成要素が前記茎部(18)を形成することを特徴とする請求項4または5記載の方法。
【請求項8】
前記基材部(16)について前記機能媒体で表面機能化が実施されることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記基材部(16)の前記表面機能化は仕上げ剤の付着向上を可能とするように実施されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって製造された係止ファスナー部品(12、14)において、基材部(16)上の茎部(18)が少なくとも一部に機能媒体を備えているのに対して、付設可能な各頭部(20)は殆どまたは完全に前記機能媒体を取り除かれていることを特徴とする係止ファスナー部品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−502706(P2012−502706A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527219(P2011−527219)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005339
【国際公開番号】WO2010/031458
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500009857)ゴットリープ ビンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】