説明

保冷庫

【課題】本発明は、消費電力を低減できるとともに、除霜のための熱エネルギーをより多く蓄熱できる保冷庫を提供することを目的とする。
【解決手段】冷凍室20及び冷蔵室30内を冷却するための蒸発器60と、冷凍室20及び冷蔵室30の外部に設けられ、熱を発生させる圧縮機50と、圧縮機50と蒸発器60との間に設けられ、圧縮機50で発生した熱を蒸発器60に移動させることが可能な伝熱経路と、伝熱経路上に設けられた潜熱蓄熱材80と、伝熱経路上であって潜熱蓄熱材80よりも蒸発器60側に設けられ、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に遮断する第1の状態と、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に接続する第2の状態とをとり得る断熱ダンパ100とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵物を保冷する保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒圧縮用の圧縮機からの発熱を熱源として熱エネルギーを蓄熱する蓄熱手段と、蓄熱手段に蓄熱された熱を利用して霜取りを行う霜取り手段とを備えた冷蔵庫の霜取り装置が知られている(例えば、特許文献1)。この霜取り装置では、蓄熱材として水等の液体が用いられている。圧縮機の動作時には、圧縮機と蓄熱タンクとが接続された系で蓄熱材を循環ポンプにより循環させることにより、圧縮機の廃熱を蓄熱タンク内に蓄熱する。霜取りを行うときには、三方弁を切り替え、蓄熱タンク内の蓄熱材を上記循環ポンプにより庫内循環パイプ内に循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−304415号公報
【特許文献2】特開平11−173710号公報
【特許文献3】特開昭60−29575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の霜取り装置では、冷蔵庫の廃熱を蓄熱し、蓄熱した熱を用いて霜取りを行うため、除霜ヒータによる霜取りと比較すれば消費電力の低減効果が得られる。しかしながら、この霜取り装置における蓄熱は顕熱蓄熱であるため、蓄熱タンクを大型化しない限り蓄熱量を大きくすることが困難である。このため、霜取りのための熱エネルギーを十分に蓄熱できないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、消費電力を低減できるとともに、除霜のための熱エネルギーをより多く蓄熱できる保冷庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、貯蔵物を保冷する保冷室と、前記保冷室内を冷却するための冷却器と、前記保冷室の外部に設けられ、熱を発生させる発熱体と、前記発熱体と前記冷却器との間に設けられ、前記発熱体で発生した熱を前記冷却器に移動させることが可能な伝熱経路と、前記伝熱経路上に設けられた潜熱蓄熱材と、前記伝熱経路上であって前記潜熱蓄熱材よりも前記冷却器側に設けられ、前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間を熱的に遮断する第1の状態と、前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間を熱的に接続する第2の状態とをとり得る熱的断続部とを有することを特徴とする保冷庫によって達成される。
【0007】
上記本発明の保冷庫において、前記伝熱経路は、前記発熱体に熱的に接続された一端部を備える伝熱部材と、前記伝熱部材の他端部と前記冷却器との間に設けられた空間部とを含むことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の保冷庫において、前記潜熱蓄熱材は、前記伝熱部材の他端部と前記空間部との間に設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の保冷庫において、前記熱的断続部は、前記空間部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の保冷庫において、前記熱的断続部は、開口を備えた枠状部材と、前記開口を開閉可能な開閉部材と、前記開閉部材に設けられた断熱部材とを有していることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の保冷庫において、前記空間部には、前記第2の状態における前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間の対流による熱移動を促進する送風機が設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記本発明の保冷庫において、前記伝熱部材はヒートパイプであることを特徴とする。
【0013】
上記本発明の保冷庫において、前記冷却器は、前記発熱体よりも上方に設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記本発明の保冷庫において、前記潜熱蓄熱材は、前記発熱体の周囲の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。
【0015】
上記本発明の保冷庫において、前記冷却器は、冷凍サイクルを構成する蒸発器であり、前記発熱体は、前記冷凍サイクルを構成する圧縮機又は凝縮器であることを特徴とする。
【0016】
上記本発明の保冷庫において、少なくとも前記熱的断続部を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記冷却器を除霜するための所定の除霜開始タイミングにおいて前記熱的断続部の状態を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、所定の除霜終了タイミングにおいて前記熱的断続部の状態を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えることを特徴とする。
【0017】
上記本発明の保冷庫において、前記第1の状態は、前記伝熱経路が断熱材によって遮断された状態であることを特徴とする。
【0018】
上記本発明の保冷庫において、前記潜熱蓄熱材はゲル状であることを特徴とする。
【0019】
上記本発明の保冷庫において、前記潜熱蓄熱材はパラフィンを含むことを特徴とする。
【0020】
上記本発明の保冷庫において、前記潜熱蓄熱材の相変化温度は40〜70℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、消費電力を低減できるとともに、除霜のための熱エネルギーをより多く蓄熱できる保冷庫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態による保冷庫1の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による保冷庫1の蒸発器60近傍の構成を示す断面図である。
【図3】n−パラフィンの炭素鎖数と凝固点及び融解潜熱との関係の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態による保冷庫2の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による保冷庫3の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による保冷庫4の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態による保冷庫について、図1〜図3を用いて説明する。なお、以下の全ての図面においては、理解を容易にするため、各構成要素の寸法や比率などを適宜異ならせて図示している。また、明細書中における構成要素同士の位置関係(例えば上下関係)は、保冷庫を使用可能な状態に設置したときのものである。図1は、本実施の形態による保冷庫1の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、保冷庫1は、一面に開口部が形成された直方体形状の保冷庫本体10を有している。保冷庫本体10の内部には、所定の保冷温度(例えば、−20〜−18℃程度)に保冷される冷凍室20と、冷凍室20の下方に配置され、冷凍室20の保冷温度よりも高い保冷温度(例えば、0〜7℃程度)に保冷される冷蔵室30と、断熱材を用いて形成され、冷凍室20と冷蔵室30との間を分離する仕切り壁40とが設けられている。
【0024】
冷凍室20の開口端には、冷凍室20の開口部を開閉可能な扉部材21が設けられている。扉部材21は、不図示のヒンジ部を介して保冷庫本体10に対して回転自在に取り付けられている。閉状態の扉部材21は、不図示のパッキンを介して冷凍室20の開口端の全周に当接するようになっている。冷蔵室30の開口端には、冷蔵室30の開口部を開閉可能な扉部材31が設けられている。扉部材31は、不図示のヒンジ部を介して保冷庫本体10に対して回転自在に取り付けられている。閉状態の扉部材31は、不図示のパッキンを介して冷蔵室30の開口端の全周に当接するようになっている。
【0025】
保冷庫本体10は、例えば金属薄板により形成された外壁と、例えばABS樹脂により形成された内壁と、外壁と内壁との間の空間に充填された断熱材とを有している。すなわち保冷庫本体10は、外壁、断熱材及び内壁からなる層構造を有している。断熱材としては、繊維系断熱材(例えばグラスウール)、発泡樹脂系断熱材(例えばポリウレタンフォーム)などが用いられる。
【0026】
扉部材21、31も同様に、例えば金属薄板により形成された外壁と、例えばABS樹脂により形成された内壁と、外壁と内壁との間の空間に充填された断熱材とを有している。すなわち扉部材21、31は、保冷庫本体10と同様の層構造を有している。扉部材21が閉じられた状態では、断熱材によって囲まれた冷凍室20は外部から断熱された断熱空間となる。また扉部材31が閉じられた状態では、断熱材によって囲まれた冷蔵室30は外部から断熱された断熱空間となる。
【0027】
また保冷庫1は、冷凍室20及び冷蔵室30を冷却するための冷却機構として、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを有している。冷凍サイクルは、冷媒を圧縮する圧縮機50と、圧縮された冷媒を凝縮させて外部に放熱する不図示の凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる不図示の膨張部(例えば、キャピラリーチューブ)と、膨張した冷媒を蒸発させて気化熱により庫内を冷却する蒸発器(冷却器)60とが、冷媒配管を介して環状に接続された構成を有している。圧縮機50及び凝縮器は断熱空間の外部に設けられ、蒸発器60は断熱空間の内部に設けられる。
【0028】
一般に圧縮機50は断続的に運転される。運転時の圧縮機50は熱を発生させて外部に放熱するため、保冷庫1において発熱体となる。運転時における圧縮機50の筐体表面の温度は、例えば60℃程度まで上昇する。圧縮機50の運転が停止すると、圧縮機50の筐体表面の温度は室温(保冷庫1の設置雰囲気温度)と同程度まで徐々に低下する。すなわち、圧縮機50の高温時の温度は60℃程度であり、低温時の温度は室温と同程度である。また、圧縮機50が運転しているときの凝縮器は、内部を流通する冷媒の凝縮により熱を発生させて外部に放熱する。このため、凝縮器は保冷庫1において発熱体となる。さらに、圧縮機50が運転しているとき、圧縮機50と凝縮器との間の冷媒配管には高温高圧の冷媒が流通する。このため、当該配管は保冷庫1において発熱体となる。これらの発熱体は、冷凍室20及び冷蔵室30等の断熱空間の外部に配置されている。また、これらの発熱体は、蒸発器60や後述する潜熱蓄熱材80よりも下方に配置されている。
【0029】
冷凍室20内には、貯蔵物を貯蔵する冷凍貯蔵室22と、扉部材21側から見て冷凍貯蔵室22の奥側に位置する冷風通路23と、冷凍貯蔵室22と冷風通路23とを分離する板状のセパレータ26とが設けられている。冷風通路23には、蒸発器60及び送風機24が設けられている。ここで、本実施の形態では、蒸発器60を除霜するための除霜ヒータは設けられていない。送風機24により送風される空気は、蒸発器60との熱交換により冷却され、冷風口25を介して冷凍貯蔵室22内に吹き出される。これにより、冷凍貯蔵室22内が所定温度に保冷されるようになっている。また冷凍貯蔵室22内の冷気は、不図示の冷風通路を介して冷蔵室30内に吹き出される。これにより、冷蔵室30内が冷凍室20内の温度よりも高い所定温度に保冷される。
【0030】
図2は、保冷庫1の蒸発器60近傍の構成を拡大して示す断面図である。図2に示すように、仕切り壁40の内部であって蒸発器60の直下には、潜熱蓄熱材80が配置されている。潜熱蓄熱材80は、例えば蒸発器60と同程度の奥行き(図2において紙面法線方向の長さ)を有し、奥行き方向に長い平板状の形状を有している。潜熱蓄熱材80の周囲の大部分は、仕切り壁40内に充填された断熱材によって囲まれている。これにより、潜熱蓄熱材80は外部から断熱されるとともに、その位置が固定されるようになっている。
【0031】
潜熱蓄熱材80は、固相及び液相間の相変化が可逆的に生じる相変化温度(融点)を有している。潜熱蓄熱材80の相変化温度は、室温以上であってかつ発熱体(圧縮機50等)の高温時の温度以下である。また潜熱蓄熱材80の相変化温度は、発熱体の高温時の温度に近い温度であることが望ましい。本実施の形態での潜熱蓄熱材80の相変化温度は、例えば40〜70℃である。潜熱蓄熱材80は、相変化温度よりも高い温度では液相となり、相変化温度よりも低い温度では固相となる。潜熱蓄熱材80は、室温では固相である。潜熱蓄熱材80は、相変化の際に固相と液相の二相が混在する限り一定の相変化温度を保つため、比較的長時間一定の温度を保つことができる。潜熱蓄熱材80の相変化温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0032】
潜熱蓄熱材80は、例えばパラフィンを含んでいる。パラフィンは、一般式C2n+2で表される飽和鎖式炭化水素の総称である。単一のパラフィンを用いる場合、潜熱蓄熱材80の相変化温度はパラフィンの炭素数nによって異なる。2種以上のパラフィンの混合物を用いる場合、混合比を変えることによって潜熱蓄熱材80の相変化温度を調整することが可能である。
【0033】
図3は、ノルマルパラフィン(n−パラフィン)の炭素鎖数と凝固点及び融解潜熱との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸はn−パラフィンの炭素鎖数(5〜30)を表し、縦軸は凝固点(℃)又は融解潜熱(kJ/kg)を表している。図3に示すように、n−パラフィンの凝固点(融点)は、炭素鎖数が大きくなるほど高くなる。また、n−パラフィンの融解潜熱は、全体として炭素鎖数が大きくなるほど大きくなる傾向を示す。ただし、奇数の炭素鎖数を有するn−パラフィンの融解潜熱は、当該奇数より小さい偶数の炭素鎖数を有するn−パラフィンの融解潜熱よりも小さくなる場合がある。
【0034】
本実施の形態では、潜熱蓄熱材80として、40〜70℃の範囲内に融点を有する炭素鎖数21〜30のn−パラフィンが用いられる。すなわち、潜熱蓄熱材80としては、約41℃の融点を有するヘンイコサン(C2144)、約46℃の融点を有するドコサン(C2246)、約47℃の融点を有するトリコサン(C2348)、約50℃の融点を有するテトラコサン(C2450)、約53℃の融点を有するペンタコサン(C2552)、約57℃の融点を有するヘキサコサン(C2654)、約59℃の融点を有するヘプタコサン(C2756)、約61℃の融点を有するオクタコサン(C2858)、約65℃の融点を有するノナコサン(C2960)、約66℃の融点を有するトリアコンタン(C3062)が用いられる。本例では、発熱体となる圧縮機50の表面温度が約60℃であるため、潜熱蓄熱材80としてより好適なn−パラフィンは、60℃以下でありかつ60℃に近い融点を有するヘキサコサン及びヘプタコサンである。
【0035】
また、本実施の形態の潜熱蓄熱材80はゲル状である。すなわち、本実施の形態の潜熱蓄熱材80には、パラフィンをゲル化(固化)するゲル化剤が含有されている。ゲルとは、分子が架橋されることで三次元的な網目構造を形成し、その内部に溶媒を吸収し膨潤したものをいう。ゲル化剤はパラフィンに対して数重量%含有させるだけでゲル化の効果を生じる。ゲル状の潜熱蓄熱材80は、固相と液相との間で相変化しても全体として固体状態を維持する。したがって、固相及び液相のいずれにおいても潜熱蓄熱材80自体が安定した形状を保つため、潜熱蓄熱材80の取扱いを容易にすることができる。
【0036】
潜熱蓄熱材80としては、40〜70℃の範囲内に融点を有する他の材料を用いることもできる。例えば、約58℃の融点を有する酢酸ナトリウム水和物(CHCOOH・3HO)や、約48℃の融点を有するチオ硫酸ナトリウム水和物(Na・5HO)等の無機塩系材料を潜熱蓄熱材80として用いることができる。また、これらの材料にゲル化剤を添加して、ゲル状の潜熱蓄熱材80として用いることができる。
【0037】
上記のようなn−パラフィンや無機塩系材料等を用いた潜熱蓄熱材80には、必要に応じて、難燃剤や過冷却防止剤などを添加してもよい。
【0038】
潜熱蓄熱材80は、ガスバリア性の高いフィルムで密封されている。これにより、潜熱蓄熱材80が揮発性を有していても、経年劣化や食品への影響等を防止できる。このフィルムは、例えば、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート等の比較的熱伝導率の高い材料を用いて形成されている。この場合、相変化の繰り返しによる潜熱蓄熱材80の変形を防ぐため、潜熱蓄熱材80の体積収縮に追随して縮むフィルムを用いることが望ましい。
【0039】
図1及び図2に戻り、蒸発器60の直下の仕切り壁40は、冷風通路23側から潜熱蓄熱材80まで筒状(例えば四角筒状)に開口された開口部を有している。当該開口部により、空間部90が形成される。開口部の内壁面40aは、空間部90の外周面を画定している。空間部90は、例えば蒸発器60及び潜熱蓄熱材80と同程度の奥行きを有している。潜熱蓄熱材80のうち少なくとも蒸発器60側の表面は、空間部90を介して冷風通路23側に露出可能になっている。
【0040】
空間部90のうち冷風通路23寄りには、断熱ダンパ(熱的断続部)100が設けられている。断熱ダンパ100は、内側に開口を備えた枠状部材101を有している。枠状部材101は例えば樹脂製である。枠状部材101は、熱伝導率の低い材料で形成されることが望ましい。枠状部材101は、例えば四角筒状の形状を有する筒状部101aと、筒状部101aの筒軸方向における一端(例えば上端)から内周側に突出する内周フランジ101bとを備えている。筒状部101aの外周面は、開口部の内壁面40aに対してほぼ全周に亘って接触している。
【0041】
また断熱ダンパ100は、枠状部材101の開口を開閉可能な扉部材(開閉部材)102を有している。扉部材102は例えば樹脂製である。扉部材102は、筒状部101aの他端(例えば下端)の一部に設けられた不図示のヒンジ部を介して、枠状部材101に対し回転自在に取り付けられている。扉部材102の冷風通路23側の表面には、断熱部材103が設けられている。断熱部材103は、扉部材102の当該表面のうち扉部材102の開閉動作に影響する部分を除くほぼ全面に形成されている。断熱部材103は、例えば発泡スチロール等の熱伝導率の低い材料を用いて形成されており、少なくとも厚み方向において高い断熱性を有している。一般に、保冷庫1内には、冷凍室20及び冷蔵室30への冷風量を制御するためのダンパが設けられているが、断熱ダンパ100の断熱部材103の厚さは、冷風量制御用のダンパの断熱部材の厚さよりも厚くなっている。扉部材102が閉状態のとき、断熱部材103は、枠状部材101の内周フランジ101bに全周に亘って当接する。本例では扉部材102の表面に断熱部材103を設けているが、扉部材102自体を熱伝導率の低い材料等で形成し、扉部材102の厚み方向において十分に断熱性の高い構造とすれば、断熱部材103を別途設ける必要はない。
【0042】
扉部材102が開状態となったときには、潜熱蓄熱材80と蒸発器60とが空間部90を介して対面するため、対流や放射により熱が伝達し得る。このため、扉部材102が開状態のときには、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間には潜熱蓄熱材80、空間部90、蒸発器60を少なくとも含む伝熱経路が形成され、潜熱蓄熱材80と蒸発器60とが熱的に接続される。一方、扉部材102が閉状態となったときには、断熱部材103によって熱伝達が抑制されるため、潜熱蓄熱材80と蒸発器60とが熱的に遮断される。
【0043】
扉部材102は、不図示の駆動機構により開閉駆動されるようになっている。この駆動機構は、後述する制御部200によって制御される。したがって、断熱ダンパ100は、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に遮断する第1の状態と、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に接続する第2の状態と、を制御部200の制御によって切替え可能となる。本実施の形態では、保冷庫1の通常運転時には断熱ダンパ100が第1の状態をとり、除霜時には断熱ダンパ100が第2の状態をとる。
【0044】
また、保冷庫1は、圧縮機50と潜熱蓄熱材80とを熱的に接続する伝熱部材110を有している。伝熱部材110は、金属等の熱伝導率の高い材料で形成される。伝熱部材は、棒状又は板状等の形状を有し、必要な部分で曲折している。圧縮機50と潜熱蓄熱材80との間には、圧縮機50、伝熱部材110、潜熱蓄熱材80を少なくとも含む伝熱経路が形成される。
【0045】
本実施の形態では、伝熱部材110は、概ね上下方向に延伸している。伝熱部材110の上端部110aは潜熱蓄熱材80に接続され、下端部110bは圧縮機50の筐体表面に接続されている。上端部110aは、潜熱蓄熱材80を密封するフィルムに接触していてもよいし、潜熱蓄熱材80に直接接触していてもよい。また上端部110aは、潜熱蓄熱材80の内部に差し込まれていてもよい。下端部110bは、圧縮機50のうち筐体表面以外の高温となる部分に接続されていてもよい。伝熱部材110の上端部110aと下端部110bとの間に位置する中間部の大部分は、保冷庫本体10内に充填された断熱材によって囲まれている。これにより、伝熱部材110の中間部が外部から断熱されるとともに、伝熱部材110の位置が固定されるようになっている。
【0046】
圧縮機50が高温になると、圧縮機50の熱が伝熱部材110の下端部110bに伝達される。下端部110bに伝達した熱は、伝熱部材110内での熱伝導により上端部110aに移動する。上端部110aに移動した熱は、潜熱蓄熱材80に伝達される。このようにして、圧縮機50の熱が潜熱蓄熱材80に移動し、潜熱蓄熱材80に蓄熱される。
【0047】
また、保冷庫1には、圧縮機50が潜熱蓄熱材80よりも低温になったとき、潜熱蓄熱材80から圧縮機50に熱が逆に移動してしまうことを防ぐ機構を設けてもよい。例えば、保冷庫1には、潜熱蓄熱材80の温度を検出する温度センサと、圧縮機50の温度を検出する温度センサと、潜熱蓄熱材80と伝熱部材110の上端部110aとの間の物理的な接触及び非接触を切り替えられる切替え機構を設けてもよい。この場合、例えば、後述する制御部200により潜熱蓄熱材80及び圧縮機50の温度を監視し、圧縮機50の温度が潜熱蓄熱材80の温度よりも低くなったら潜熱蓄熱材80と上端部110aとの間を非接触状態にして、圧縮機50の温度が潜熱蓄熱材80の温度以上になったら潜熱蓄熱材80と上端部110aとの間を接触状態にする。また、潜熱蓄熱材80の温度が所定温度以上(例えば、潜熱蓄熱材80の相変化温度以上)になったら潜熱蓄熱材80と上端部110aとの間を非接触状態にしてもよい。
【0048】
また、伝熱部材110としては、ヒートパイプを用いることも可能である。ヒートパイプは、密閉容器内に少量の作動流体(例えば水)を真空密封した構成を有し、熱伝導性及び熱応答性の高い伝熱部品である。密閉容器は、金属等の熱伝導率の高い材料により形成される。ヒートパイプの内壁には、必要に応じてウイック(毛細管構造)が形成される。ヒートパイプの下端部110bは、外部から吸熱して作動流体を蒸発させる入熱部(蒸発部)となり、上端部110aは、外部に放熱して作動流体を凝縮させる放熱部(凝縮部)となる。
【0049】
圧縮機50が高温になると、下端部110bの作動流体(液相)は、圧縮機50から蒸発潜熱を吸熱して蒸発する。蒸発した作動流体(気相)は、圧力差等によりヒートパイプ内部を通って上端部110aに向かう。上端部110aに到達した作動流体(気相)は、潜熱蓄熱材80に蒸発潜熱を放熱して凝縮する。凝縮した作動流体(液相)は、重力作用やウイックによる毛管現象によって下端部110bに戻る。このような一連の現象が連続的に生じることにより、圧縮機50等の発熱体の熱が潜熱蓄熱材80に移動する。ここで、発熱体から伝達する熱によって作動流体が蒸発し易くなるように、ヒートパイプ内での作動流体の沸点は、発熱体の高温時の温度以下であることが望ましい。また、作動流体の蒸発潜熱によって潜熱蓄熱材80の温度を相変化温度以上に上昇させることができるように、ヒートパイプ内での作動流体の沸点は、潜熱蓄熱材80の相変化温度以上であることが望ましい。作動流体の沸点は、ヒートパイプ内の圧力や作動流体の種類を変えることによって設定できる。
【0050】
本実施の形態において好ましい温度の関係は、「室温≦潜熱蓄熱材80の相変化温度≦ヒートパイプ内の作動流体の沸点≦発熱体の高温時の温度」である。
【0051】
ヒートパイプによる熱の移動は、基本的には一方向である。このため、圧縮機50の温度が潜熱蓄熱材80の温度よりも低くなった場合であっても、ヒートパイプの管壁部分での熱伝導を除けば、潜熱蓄熱材80の熱は圧縮機50に移動しない。したがって、圧縮機50からの熱の移動で高温となった潜熱蓄熱材80の温度は、比較的長時間一定に保たれる。
【0052】
保冷庫1は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等を備え、保冷庫1の全体を制御する制御部200を有している。制御部200は、通常運転モードにおいて、冷凍室20内や冷蔵室30内に取り付けられた不図示の温度センサから入力される温度信号に基づき、圧縮機50、送風機24、冷風量制御用ダンパ等を制御するようになっている。これにより、冷凍室20及び冷蔵室30がそれぞれ所定の温度範囲に維持される。通常運転モードでは、制御部200は断熱ダンパ100を閉状態に維持する。これにより、蒸発器60と潜熱蓄熱材80とは熱的に遮断される。また制御部200は、保冷庫1の動作モードを通常運転モードと除霜モードとの間で切り替えるようになっている。
【0053】
通常運転モードでは、制御部200の制御により圧縮機50は断続的に運転される。圧縮機50が比較的長時間停止した後の状態では、圧縮機50の温度は室温と同程度である。制御部200の制御により圧縮機50が起動すると、圧縮機50(例えば筐体表面)の温度は60℃程度まで徐々に上昇する。圧縮機50が高温になると、上述のように圧縮機50の熱が伝熱部材110を介して潜熱蓄熱材80に移動し、潜熱蓄熱材80の温度が上昇する。潜熱蓄熱材80の温度が融点を超えると、潜熱蓄熱材80は固相から液相に相変化し、熱エネルギーを潜熱として蓄積する。
【0054】
制御部200は、例えば、通常運転モードでの運転時間が所定時間に達したとき、蒸発器60の除霜開始タイミングであると判断する。制御部200は、除霜開始タイミングであると判断すると、保冷庫1の動作モードを通常運転モードから除霜モードに切り替える。除霜モードでは、制御部200は、圧縮機50及び送風機24等を停止するとともに、断熱ダンパ100を開状態に制御する。断熱ダンパ100が開状態となることにより、除霜すべき蒸発器60と高温に維持されている潜熱蓄熱材80とが空間部90を介して対面する。これにより、潜熱蓄熱材80に蓄積されている熱が対流や放射により蒸発器60に伝達するため、蒸発器60の温度が上昇し、蒸発器60に付着した霜が融解する。潜熱蓄熱材80の温度は融点において比較的長時間一定に保たれるため、潜熱蓄熱材80から蒸発器60への伝熱量(単位時間当たりに移動する熱量)は比較的長時間に亘ってほぼ一定に保たれる。潜熱蓄熱材80の温度が融点を下回ると、潜熱蓄熱材80は固相に相変化する。
【0055】
制御部200は、除霜モード開始からの経過時間が所定時間に達したとき、除霜終了タイミングであると判断する。本実施の形態では、潜熱蓄熱材80から蒸発器60への伝熱量が長時間に亘ってほぼ一定に保たれるため、潜熱蓄熱材80から蒸発器60に移動する熱量が経過時間にほぼ比例する。したがって、除霜モード開始からの経過時間のみによっても、蒸発器60の除霜が終了したか否かを容易に判定することができる。蒸発器60に温度センサが設けられている場合には、制御部200は、当該温度センサからの温度信号に基づいて蒸発器60の温度を監視し、蒸発器60の温度が所定温度を超えたときに除霜が終了したと判断してもよい。制御部200は、除霜終了タイミングであると判断すると、保冷庫1の動作モードを除霜モードから通常運転モードに戻す。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態による保冷庫1は、貯蔵物を保冷する冷凍室20及び冷蔵室30と、冷凍室20及び冷蔵室30内を冷却するための蒸発器60と、冷凍室20及び冷蔵室30の外部に設けられ、熱を発生させる圧縮機50と、圧縮機50と蒸発器60との間に設けられ、圧縮機50で発生した熱を蒸発器60に移動させることが可能な伝熱経路(圧縮機50、伝熱部材110、潜熱蓄熱材80、空間部90、蒸発器60)と、伝熱経路上に設けられた潜熱蓄熱材80と、伝熱経路上であって潜熱蓄熱材80よりも蒸発器60側に設けられ、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に遮断する第1の状態と、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間を熱的に接続する第2の状態とをとり得る断熱ダンパ100とを有することを特徴とする。
【0057】
この構成によれば、圧縮機50で発生した熱は潜熱蓄熱材80に蓄熱される。除霜時には、断熱ダンパ100を第2の状態に切り替えることにより、潜熱蓄熱材80に蓄熱した熱を用いて蒸発器60を除霜することができる。したがって、除霜のための消費電力を低減でき、除霜ヒータを省略又は小型化できる。またこの構成によれば、顕熱蓄熱よりも蓄熱密度が高い潜熱蓄熱を用いることができるため、除霜のための熱エネルギーをより多く蓄熱することができる。またこの構成によれば、除霜時に潜熱蓄熱材80の温度は相変化温度で比較的長時間一定に保たれるため、除霜温度をほぼ一定にすることができる。またこの構成によれば、断熱ダンパ100を第1の状態に切り替えることにより、通常運転時に潜熱蓄熱材80の熱が蒸発器60に伝達してしまうことを防ぐことができる。またこの構成によれば、熱輸送媒体等を強制的に循環させることなく圧縮機50の熱を蒸発器60に移動させることができるため、循環ポンプ等を設ける必要がない。
【0058】
本実施の形態による保冷庫において、伝熱経路は、圧縮機50に熱的に接続された下端部110bを備える伝熱部材110と、伝熱部材110の上端部110aと蒸発器60との間に設けられた空間部90とを含むことを特徴とする。この構成によれば、伝熱部材110と空間部90とを介して圧縮機50の熱を蒸発器60に移動させることができる。
【0059】
本実施の形態による保冷庫において、潜熱蓄熱材80は、伝熱部材110の上端部110aと空間部90との間に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、伝熱経路の途中に設けられた潜熱蓄熱材80において、圧縮機50で発生した熱を蓄熱することができる。したがって、圧縮機50の温度が低下したときであっても潜熱蓄熱材80に蓄熱された熱エネルギーを用いて蒸発器60を除霜することができる。
【0060】
本実施の形態による保冷庫において、断熱ダンパ100は、空間部90に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、他の部材との接触によって断熱ダンパ100の動作が制約されることを防ぐことができる。
【0061】
本実施の形態による保冷庫において、断熱ダンパ100は、開口を備えた枠状部材101と、開口を開閉可能な扉部材102と、扉部材102に設けられた断熱部材103とを有していることを特徴とする。この構成によれば、第1の状態と第2の状態とを容易に切り替えることができる。
【0062】
本実施の形態による保冷庫において、伝熱部材110はヒートパイプであることを特徴とする。この構成によれば、伝熱経路における伝熱性能を高めることができる。また、圧縮機50の熱を潜熱蓄熱材80に効率良く移動させることができるとともに、潜熱蓄熱材80の熱が逆に圧縮機50に移動してしまうのを防ぐことができる。
【0063】
本実施の形態による保冷庫において、蒸発器60は、圧縮機50よりも上方に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、圧縮機50から蒸発器60への熱の移動方向が上向きになるため、熱を効率良く移動させることができる場合がある。特に、伝熱部材110がヒートパイプである場合には、放熱部が入熱部より上方にあると凝縮した作動流体の還流効率が重力により高まるため、熱の移動方向が上向きになることによって熱を効率良く移動させることができる。
【0064】
本実施の形態による保冷庫において、伝熱部材は金属製であることを特徴とする。この構成によれば、伝熱経路における伝熱性能を高めることができる。
【0065】
上記実施の形態による保冷庫において、冷却器は、冷凍サイクルを構成する蒸発器60であり、発熱体は、冷凍サイクルを構成する圧縮機50又は凝縮器であることを特徴とする。この構成によれば、圧縮機50又は凝縮器の熱を潜熱蓄熱材80に蓄熱し、蓄熱された熱を用いて蒸発器60の除霜をすることができる。また、圧縮機50又は凝縮器の熱の移動経路を確保することができるため、圧縮機50又は凝縮器の放熱性を向上させることができる。例えば、凝縮器の放熱性が向上すれば、凝縮器の管の周囲に設けられる放熱用フィンを省略できる場合がある。また発熱体は、圧縮機50と凝縮器との間の冷媒配管であってもよい。
【0066】
上記実施の形態による保冷庫において、少なくとも断熱ダンパ100を制御する制御部200をさらに有し、制御部200は、蒸発器60を除霜するための所定の除霜開始タイミングにおいて断熱ダンパ100の状態を第1の状態から第2の状態に切り替え、所定の除霜終了タイミングにおいて断熱ダンパ100の状態を第2の状態から第1の状態に切り替えることを特徴とする。この構成によれば、通常運転時の状態と除霜時の状態とを容易に切り替えることができる。
【0067】
上記実施の形態による保冷庫において、第1の状態は、伝熱経路が断熱材によって遮断された状態であることを特徴とする。上述のように、第1の状態では、断熱ダンパ100の断熱部材103によって伝熱経路が熱的に遮断される。
【0068】
上記実施の形態による保冷庫において、潜熱蓄熱材80はゲル状であることを特徴とする。この構成によれば、潜熱蓄熱材80が固相及び液相のいずれにおいても安定した形状を保つため、潜熱蓄熱材80の取扱いを容易にすることができる。
【0069】
上記実施の形態による保冷庫において、潜熱蓄熱材80はパラフィンを含むことを特徴とする。パラフィンは炭素数nによって相変化温度が異なるため、所望の相変化温度を備える潜熱蓄熱材80の選択が容易になる。
【0070】
上記実施の形態による保冷庫において、潜熱蓄熱材80の相変化温度は40〜70℃であることを特徴とする。この構成によれば、圧縮機50で発生した熱によって潜熱蓄熱材80を固相から液相に相変化させることができる。また、除霜時には、潜熱蓄熱材80の温度を除霜に適した温度で長時間一定に保つことができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態による保冷庫について図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態による保冷庫2の概略構成を示す断面図である。なお、第1の実施の形態の保冷庫1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図4に示すように、保冷庫2の空間部90には送風機91が設けられている。例えば、送風機91は、断熱ダンパ100の扉部材102が開閉する際に干渉しない位置に配置されており、潜熱蓄熱材80から蒸発器60に向かう方向に送風するようになっている。送風機91は、保冷庫1の通常運転中には停止し、除霜中の期間のうち少なくとも一部で動作するように制御される。例えば、送風機91は、除霜開始タイミングで動作開始し、除霜終了タイミングで動作終了するように制御される。送風機91が動作することにより、空間部90において空気の流れが生じる。このため、空間部90を介して対面する潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間で、対流による熱移動が促進される。
【0073】
以上のように、本実施の形態による保冷庫2は、空間部90に、第2の状態における潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間の対流による熱移動を促進する送風機91が設けられていることを特徴とする。この構成によれば、潜熱蓄熱材80と蒸発器60との間の熱移動が促進されるため、除霜時間を短縮することができる。
【0074】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態による保冷庫について図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態による保冷庫3の概略構成を示す断面図である。なお、第1の実施の形態の保冷庫1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図5に示すように、圧縮機50の周囲は、潜熱蓄熱材81によって覆われている。図示していないが、潜熱蓄熱材81の周囲は、金属製の箱体等でさらに覆われている。潜熱蓄熱材81には、伝熱部材110の下端部110bが接続されている。伝熱部材110の上端部110aは、空間部90に露出している。なお、潜熱蓄熱材81は、圧縮機50の全体を覆うのではなく、圧縮機50の一部を覆うようにしてもよい。また、上端部110aには、熱伝導率の高い金属等を用いて形成された平板部材等を接続し、空間部90に対する放熱面積を拡大するようにしてもよい。
【0076】
圧縮機50が高温になると、圧縮機50の熱は潜熱蓄熱材81に伝達され、潜熱蓄熱材81に蓄熱される。潜熱蓄熱材81の温度は、圧縮機50が低温になったとしても比較的長時間高温に保たれる。伝熱部材110の下端部110bが潜熱蓄熱材81に接続されているため、伝熱部材110の全体は潜熱蓄熱材81とほぼ同程度の温度に保たれる。ここで、通常運転時には伝熱部材110の上端部110aと蒸発器60との間が断熱ダンパ100によって断熱されているため、伝熱部材110の熱が蒸発器60に伝達されることはない。
【0077】
除霜時には、断熱ダンパ100が開状態となり、伝熱部材110の上端部110aと蒸発器60とが空間部90を介して対面する。これにより、高温に保たれている上端部110aの熱が対流や放射により蒸発器60に伝達するため、蒸発器60の温度が上昇し、蒸発器60に付着した霜が融解する。除霜中には、潜熱蓄熱材81に蓄積されている熱が上端部110aに伝達され続けるため、上端部110aの温度は長時間に亘って高温に保たれる。
【0078】
以上のように、本実施の形態による保冷庫3は、潜熱蓄熱材81が、圧縮機50の周囲の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。この構成によっても、圧縮機50で発生した熱を潜熱蓄熱材81に蓄熱することができる。除霜時には、断熱ダンパ100を開状態にすることにより、潜熱蓄熱材81に蓄熱した熱を伝熱部材110を介して放熱し、蒸発器60を除霜することができる。
【0079】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態による保冷庫について図6を用いて説明する。図6は、本実施の形態による保冷庫4の概略構成を示す断面図である。なお、第1の実施の形態の保冷庫1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図6に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の構成を有する断熱ダンパ100、空間部90及び潜熱蓄熱材80が、蒸発器60の背面側に配置されている。冷風通路23の内部であって蒸発器60の直下には、補助的な除霜ヒータ61が設けられている。除霜ヒータ61は、通常の除霜時にはオフ状態となっている。
【0081】
冷凍強度や湿度等によって蒸発器60の着霜量が多い場合や、潜熱蓄熱材80の蓄熱量が少ない場合などには、除霜のための熱量が不足することがある。除霜ヒータ61は、制御部200(図6では図示せず)が熱量不足と判断した場合にオン状態となる。例えば、蒸発器60に温度センサが設けられている場合には、制御部200は、当該温度センサからの温度信号に基づいて蒸発器60の温度を監視し、除霜開始からの経過時間が所定時間を超えても蒸発器60の温度が所定温度以下である場合、又は蒸発器60の温度の上昇速度が遅い場合に、熱量が不足していると判断する。
【0082】
本実施の形態によれば、着霜量や蓄熱量に依存せず、確実に蒸発器60を除霜することができる。また、除霜ヒータ61は、除霜のための熱量が不足しているときのみに補助的に使用されるため、一般的な保冷庫の除霜ヒータよりも容量の小さいヒータを用いることができる。さらに、除霜ヒータ61がオン状態となる機会が限られるため、消費電力を低減することができる。
【0083】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば上記実施の形態では、冷風を吹き出すことにより庫内を冷却するファン式(強制対流式)の保冷庫を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。例えば、冷却器(蒸発器)が冷凍室及び冷蔵室のそれぞれに配置され、自然対流により各室内を冷却する直冷式(自然対流式)の保冷庫にも適用できる。
【0084】
また上記実施の形態では、冷却機構として蒸気圧縮式の冷凍サイクルを例に挙げたが、本発明はこれに限らず、吸収式の冷却装置やペルチェ効果を用いた電子式の冷却装置等を用いることもできる。
【0085】
また上記実施の形態では、液相状態で流動性を有しないゲル状の潜熱蓄熱材を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、液相状態で流動性を有する潜熱蓄熱材を用いることもできる。
【0086】
また上記実施の形態では、発熱体として圧縮機50、凝縮器、及び圧縮機50と凝縮器との間の冷媒配管を例に挙げたが、保冷庫の他の部分を発熱体として用いることもできる。
【0087】
また上記の各実施の形態は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1〜4 保冷庫
10 保冷庫本体
20 冷凍室
21、31 扉部材
22 冷凍貯蔵室
23 冷風通路
24 送風機
25 冷風口
26 セパレータ
30 冷蔵室
40 仕切り壁
40a 内壁面
50 圧縮機
60 蒸発器
61 除霜ヒータ
80、81 潜熱蓄熱材
90 空間部
91 送風機
100 断熱ダンパ
101 枠状部材
101a 筒状部
101b 内周フランジ
102 扉部材
103 断熱部材
110 伝熱部材
110a 上端部
110b 下端部
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物を保冷する保冷室と、
前記保冷室内を冷却するための冷却器と、
前記保冷室の外部に設けられ、熱を発生させる発熱体と、
前記発熱体と前記冷却器との間に設けられ、前記発熱体で発生した熱を前記冷却器に移動させることが可能な伝熱経路と、
前記伝熱経路上に設けられた潜熱蓄熱材と、
前記伝熱経路上であって前記潜熱蓄熱材よりも前記冷却器側に設けられ、前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間を熱的に遮断する第1の状態と、前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間を熱的に接続する第2の状態とをとり得る熱的断続部と
を有することを特徴とする保冷庫。
【請求項2】
請求項1記載の保冷庫において、
前記伝熱経路は、前記発熱体に熱的に接続された一端部を備える伝熱部材と、前記伝熱部材の他端部と前記冷却器との間に設けられた空間部とを含むこと
を特徴とする保冷庫。
【請求項3】
請求項2記載の保冷庫において、
前記潜熱蓄熱材は、前記伝熱部材の他端部と前記空間部との間に設けられていること
を特徴とする保冷庫。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の保冷庫において、
前記熱的断続部は、前記空間部に設けられていること
を特徴とする保冷庫。
【請求項5】
請求項4記載の保冷庫において、
前記熱的断続部は、開口を備えた枠状部材と、前記開口を開閉可能な開閉部材と、前記開閉部材に設けられた断熱部材とを有していること
を特徴とする保冷庫。
【請求項6】
請求項2から5までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記空間部には、前記第2の状態における前記潜熱蓄熱材と前記冷却器との間の対流による熱移動を促進する送風機が設けられていること
を特徴とする保冷庫。
【請求項7】
請求項2から5までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記伝熱部材はヒートパイプであること
を特徴とする保冷庫。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記冷却器は、前記発熱体よりも上方に設けられていること
を特徴とする保冷庫。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記潜熱蓄熱材は、前記発熱体の周囲の少なくとも一部を覆っていること
を特徴とする保冷庫。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記冷却器は、冷凍サイクルを構成する蒸発器であり、
前記発熱体は、前記冷凍サイクルを構成する圧縮機又は凝縮器であること
を特徴とする保冷庫。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
少なくとも前記熱的断続部を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記冷却器を除霜するための所定の除霜開始タイミングにおいて前記熱的断続部の状態を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、所定の除霜終了タイミングにおいて前記熱的断続部の状態を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えること
を特徴とする保冷庫。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記第1の状態は、前記伝熱経路が断熱材によって遮断された状態であること
を特徴とする保冷庫。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記潜熱蓄熱材はゲル状であること
を特徴とする保冷庫。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記潜熱蓄熱材はパラフィンを含むこと
を特徴とする保冷庫。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の保冷庫において、
前記潜熱蓄熱材の相変化温度は40〜70℃であること
を特徴とする保冷庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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