説明

保持治具、保持装置、被保持物の離脱方法及び被保持物の移設方法

【課題】被保持物を長期間にわたって保持すると共に複数の被保持物を容易に保持及び離脱可能な保持治具及び保持装置、並びに、保持治具を劣化させることなく、被保持物を所望のように離脱又は移し替えることができる被保持物の離脱方法及び移設方法の提供。
【解決手段】相対向する挟持面21、22で被保持物を弾発的に挟持する保持部20と、保持部20に連設されると共に非接触の状態で被保持物を挿通可能に形成された非保持部30とを有する弾性部材10を備えて成る保持治具1、及び、この保持治具1を複数備えた保持装置、並びに、保持治具1を被保持物に対して相対的に移動して、被保持物を保持部20から非保持部30に移行する工程を有する被保持物の離脱方法、及び、この工程と、他方の保持治具1を被保持物に対して相対的に移動して、被保持物を他方の保持治具1における非保持部30から保持部20に移行する工程とを有する被保持物の移設方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持治具、保持装置、被保持物の離脱方法及び被保持物の移設方法に関し、さらに詳しくは、被保持物を長期間にわたって保持することができると共に複数の被保持物を容易に保持及び離脱することのできる保持治具及び保持装置、並びに、保持治具を劣化させることなく、保持されている被保持物を所望のように離脱又は移し替えることができる被保持物の離脱方法及び移設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、チップコンデンサ等の小型部品等を製造する際等に、この小型部品を製造可能な小型部品用部材等の被粘着物をその表面に粘着保持可能な保持治具が用いられている。このような保持治具を用いて小型部品等を製造した後には、小型部品等の被粘着物は保持治具から取り外される。
【0003】
このような保持治具として、例えば、特許文献1には、「支持平板と、前記支持平板の主面に設けられ、電子部品を粘着させた状態で保持する粘着材層と、前記粘着材層の周縁部に設けられた非粘着部分又は粘着材層よりも粘着力の小さい低粘着部分と、を備えたことを特徴とする電子部品の保持治具」が記載されている(請求項1等参照。)。そして、このような保持治具から被粘着物を取り外す方法として、スクレイパー等の掻き取り部材を粘着層表面上に摺動させて、粘着保持された小型部品を取り外す方法がある。例えば、特許文献1には、「粘着材層と、非粘着部分又は粘着材層よりも粘着力の小さい低粘着部分とを備える保持手段を準備するステップと、前記保持手段の粘着材層に電子部品の一端面を粘着させて該電子部品を保持するステップと、掻取り手段を前記粘着材層の表面に沿って、かつ、前記非粘着部分又は前記低粘着部分が移動方向終端にくるような方向に移動させ、電子部品を粘着材層から掻き取るステップと、を備えたことを特徴とする電子部品の取扱い方法」が記載されている(請求項8等参照。)。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の方法のように、掻き取り部材を粘着層表面上に摺動させても、被粘着物の転倒等によって被粘着物が再度粘着層表面に粘着されてしまい、被粘着物を容易に取り外すことができないことがあり、また、粘着層表面から被粘着物を取り外す際に被粘着物が飛散することがある。さらに、掻き取り部材を粘着層表面上に摺動させると、掻き取り部材によって粘着層表面に傷が付き、損傷することがある。そうすると、粘着層表面の平滑性が損なわれるから、被粘着物を所望のように粘着保持することができなくなる。
【0005】
また、別の保持治具として、例えば、特許文献2には、「外部電極ペーストが塗布される複数の電子部品が第1,第2の端面を結ぶ側面部分において保持される複数の電子部品保持部が長手方向に形成されており、各電子部品保持部は長手方向に延びる一方端縁において外側に向かって開いた形状とされており、保持されている電子部品の第1,第2の端面が前記長さ方向と直交する方向において露出されるように構成されている板状の電子部品保持具」が記載されている。この電子部品保持具は、「その電子部品保持部に、該電子部品保持部に応じた寸法の電子部品を挿入し、保持させ」た状態で、使用される。
【0006】
ところが、特許文献2に記載の電子部品保持具に複数の小型部品を同じ状態に圧入するには、電子部品保持具に形成された複数の電子部品保持部と同じ間隔で複数の電子部品を正確に配列する必要があり、また、複数の電子部品保持部それぞれに電子部品を均一な圧力で圧入する必要があり、この電子部品保持具に複数の小型部品それぞれを同じ状態に圧入しにくいことがある。また、圧入された小型部品を電子部品保持部から取り外すときに、電子部品保持部の対向内側面を構成する弾性材によって、小型部品が飛散して、小型部品を紛失し、及び/又は、破損等することがある。
【0007】
【特許文献1】特開2004−193366号公報
【特許文献2】特開2004−228507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、被保持物を長期間にわたって保持することができると共に、複数の被保持物を容易に保持及び離脱することのできる保持治具及び保持装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、この発明は、保持治具を劣化させることなく、保持されている被保持物を所望のように取り外すことができる被保持物の離脱方法、及び、保持治具を劣化させることなく、被保持物を保持治具から他の保持治具に所望のように移し替えることができる被保持物の移設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、相対向する挟持面で被保持物を弾発的に挟持する保持部と、前記保持部に連設されると共に前記被保持物に対して非接触の状態で前記被保持物を挿通可能に形成された非保持部とを有する弾性部材を、備えて成ることを特徴とする保持治具であり、
請求項2は、請求項1に記載の保持治具を複数備えて成ることを特徴とする保持装置であり、
請求項3は、請求項1に記載の保持治具における前記保持部に保持された被保持物を離脱させる方法であって、前記保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記保持部から前記非保持部に移行することを特徴とする被保持物の離脱方法であり、
請求項4は、請求項1に記載の第1の保持治具に保持された被保持物を、請求項1に記載の第2の保持治具に移設する被保持物の移設方法であって、前記第1の保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記第1の保持治具における保持部から非保持部に移行する工程と、前記第2の保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記第2の保持治具における非保持部から保持部に移行する工程とを有する被保持物の移設方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る保持治具は、保持された被保持物を離脱させるのに掻き取り部材を用いることがないので、弾性部材が損傷等されにくく、また、被保持物に対して相対的に移動させることにより、複数の被保持物を一挙に非保持部から保持部に、又は、保持部から非保持部に移行させることができ、その結果、複数の被保持物を容易に保持及び離脱することができる。したがって、この発明によれば、被保持物を長期間にわたって保持することができると共に、複数の被保持物を容易に保持及び離脱することのできる保持治具及び保持装置を提供することができる。
【0012】
また、この発明に係る被保持物の離脱方法及び被保持物の移設方法は、この発明に係る保持治具又はこの発明に係る保持装置を用いるから、被保持物に対して保持治具を相対的に移動させることにより、弾性部材を損傷等させることがなく、保持治具から複数の被保持物を一挙に容易に保持し、又は、離脱させることができる。したがって、この発明によれば、保持治具を劣化させることなく、保持されている被保持物を所望のように取り外すことができる被保持物の離脱方法、及び、保持治具を劣化させることなく、被保持物を保持治具から他の保持治具に所望のように移し替えることができる被保持物の移設方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る保持治具に保持される被保持物は、この発明に係る保持治具に保持される必要性のある小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、被保持物は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら被保持物の中でも、この発明に係る保持治具が保持するのに好適な被保持物として、小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。例えば、小型電子部品としてのチップコンデンサを製造可能な小型電子部品用部材として、一辺の長さ約0.3mm、軸線方向長さ約0.6mmの四角柱体を成すチップコンデンサ本体が挙げられる。
【0014】
この発明に係る保持治具は、例えば、このような小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材(以下、小型電子部品等と称することがある。)の保持用として好適である。小型電子部品等を保持治具に保持させた場合に、各工程完了後又は必要に応じて、保持治具から小型電子部品等を取り外すときに、従来の保持治具では小型電子部品等を所望のように離脱することができないことがあったところ、この発明に係る保持治具では、保持された複数の小型電子部品等のほとんどすべてを所望のように一挙に離脱させることができ、保持治具の使用可能期間を大幅に長期化することができると共に、小型電子部品等の取り扱い性、生産性等が著しく向上する。
【0015】
また、この発明に係る保持治具は、少なくとも二箇所に導電性ペーストを塗布する必要のある小型電子部品用部材の保持用としても好適である。小型電子部品用部材の少なくとも二箇所に導電性ペーストを塗着させる場合に、保持治具に保持された小型電子部品用部材の一部を導電性ペーストに浸漬した後に、その小型電子部品用部材を他の保持治具で保持し直すときに、従来の保持治具では小型電子部品用部材を他の保持治具で所望のように保持することができないことがあったところ、この発明に係る保持治具においては、保持治具の両面から小型電子部品用部材の両端部が突出するように、保持することができるから、小型電子部品用部材を他の保持治具に移し替えることなく、小型電子部品用部材の両端部に、一度に又は順次、導電性ペーストを塗布して電極を形成することができる。
【0016】
さらに、この発明に係る保持治具は、小型電子部品用部材を他の保持治具に移し替える必要のある用途に用いられる保持治具としても好適である。従来は粘着力の異なる複数の保持治具を準備し、粘着力の弱い保持治具から多数の小型電子部品用部材を粘着力の強い他の保持治具に所望のように移し替えることができないことがあり、また、当然に、粘着力の強い保持治具から小型電子部品用部材を粘着力の弱い他の保持治具に移し替えることができなかったところ、この発明に係る保持治具においては、同じ保持治具を用いても、保持治具を小型電子部品用部材に対して相対的に移動するだけで、一方の保持治具から他方の保持治具に、複数の小型電子部品用部材のほとんどすべてを所望のように一挙に移し替えることができる。
【0017】
この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を、図を参照して、説明する。図1に示されるように、保持治具1は、相対向する挟持面21及び22で被保持物を弾発的に挟持する保持部20と、保持部20に連設されると共に被保持物に対して非接触の状態で被保持物を挿通可能に形成された非保持部30とを有する弾性部材10と、弾性部材10の一方の表面に基板40とを備えて成る。
【0018】
弾性部材10は、多数の被保持物を保持することができるように設計され、例えば、図1(a)及び図1(b)に示されるように、矩形を成す盤状体に成形されている。なお、弾性部材10は、小型部品の形状、その製造工程及び取り扱い性等に応じて、任意の形状に形成することができ、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等に形成される。
【0019】
弾性部材10は、相対向する挟持面21及び22で被保持物を弾発的に保持することができればよいが、被保持物の弾発的な保持を補強して、相対向する挟持面21及び22でより強固に被保持物を保持することができる点で、粘着力を有しているのが好ましい。具体的には、弾性部材10の粘着力は、1〜20(g/mm)であるのが好ましく、5〜10(g/mm)であるのが特に好ましい。
【0020】
ここで、弾性部材10の粘着力は、以下のようにして求める。まず、弾性部材10を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。次いで、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に弾性部材10を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で弾性部材10の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を弾性部材10の粘着力とする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAL MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0021】
弾性部材10は、それ自体である程度の平滑性を維持することができる程度の硬度を有しているのがよく、例えば、5〜60の硬度(JIS K6253[デュロメータE])を有しているのが好ましく、15〜45の硬度を有しているのが特に好ましい。
【0022】
弾性部材10は、保持する被保持物の寸法、保持状態等に応じて適宜その厚さが調整されるが、後述する範囲のヤング率となる厚さを有しているのが好ましく、0.05〜2mm程度の厚さを有しているのが特に好ましい。弾性部材10の厚さが、0.05mm未満であると弾性部材10の機械的強度が低下し、弾性部材10の耐久性が十分でないことがあり、一方、2mmを越えると、被粘着物の軸線方向長さに対する弾性層10の厚さの割合が大きくなりすぎ、例えば、被粘着物に電極ペーストの塗布工程、被粘着物の離脱工程において、電極ペーストの塗布不能又は離脱不能操等の不都合を起こすことがある。
【0023】
この弾性部材10は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、1つの保持部20と1つの非保持部30とが連設されて成る保持離脱部15が、弾性部材10の内部に、保持離脱部15それぞれの保持部20と非保持部30との相対的な位置関係が同一となるように、所定の配列例えば縦横方向に等間隔で、配置されている。この例では、保持離脱部15は、縦横方向にそれぞれ11列ずつ、保持部20と非保持部30との相対的な位置関係が同一(図1(a)において保持部20が左側の位置する位置関係)となるように、配列されているが、この発明においては、縦横方向に配列される保持離脱部15の数は、特に制限されず、保持治具1が用いられる用途、被保持物の大きさ等に応じて、適宜調整される。例えば、縦横方向にそれぞれ配列される保持離脱部15の列数は2〜50列に調整することができ、縦方向及び横方向に配列される保持離脱部15は同じ列数であっても異なる列数であってもよい。保持治具1によれば、後述するように、複数の被保持物を一挙に保持及び離脱することができるが、この発明において、大多数の被保持物を一挙に保持及び離脱することを目的とする場合には、弾性部材10に形成される保持離脱部15の数は、例えば、500〜2,500程度にすることができる。
【0024】
図1、特に図1(c)及び図1(d)に示されるように、保持部20は、弾性部材10を一方の表面から他方の表面に貫通すると共に、軸線方向に垂直な断面が略矩形の貫通孔から成る保持孔20とされている。そして、この保持孔20における内表面のうち、後述する非保持部30に接続する2つの内表面であって相対向する2つの内表面が挟持面21及び22とされている。保持部20がこのように形成されていると、挟持面21及び22が弾性部材10の表面に対して垂直な内面となり、被保持物を強固に挟持することができると共に被保持物を弾性部材10に対して略垂直な起立状態に保持することができる。この挟持面21及び22は、弾性部材10の弾性によって、協働して被保持物を、互いの挟持面22及び21に向かって、弾発的に挟持する。すなわち、相対向する2つの挟持面21及び22それぞれは、互いに相対向する挟持面22及び21に向かって被保持物を押圧し、この互いに逆方向の押圧力の均衡によって、被保持物を保持孔20内で所望の状態に保持する。
【0025】
保持孔20における挟持面21及び22の間隔(貫通孔における幅)Dは、被保持物の寸法等に応じて被保持物を弾発的に挟持することができる間隔に適宜調整され、例えば、保持される被保持物において挟持面21及び22で挟持される被保持物における外面間の距離W(例えば、被保持物が四角柱である場合には、互いに背中合わせの関係にある2つの側面間の距離、すなわち、四角柱の幅)に対して70〜99%程度に調整される。
【0026】
保持孔20はその軸線方向の始点から終点まで同一の断面形状とされ、すなわち、挟持面21及び22の間隔Dは保持孔20における軸線方向の始点から終点まで略同一間隔を有する垂直な内面とされているが、被保持物を弾発的に保持することができる限り、保持孔20の断面形状は同一である必要はなく、また、挟持面21及び22の間隔は略同一間隔である必要はない。
【0027】
前記非保持部30は、図1に示されるように、弾性部材10を一方の表面から他方の表面に貫通すると共に、軸線方向に垂直な断面が略矩形の貫通孔から成る非保持孔30とされている。そして、この非保持孔30は、前記保持孔20における挟持面21及び22の縁に接続し、保持孔20に連設されている。また、非保持孔30は、その内部に被保持物を挿入したときに、非保持孔30の内表面に被保持物が接触しない寸法(すなわち、後述する「非保持孔30の内表面に被保持物が非接触の状態にある」ことが達成することができる寸法)を有し、被保持物に対して非接触の状態で被保持物を挿通可能に形成されている。この例においては、非保持孔30は、それぞれ相対向する内面が、保持孔20における挟持面21及び22の間隔Dよりも大きく、かつ、被保持物における外面間の距離Wよりも大きな間隔を有している。非保持孔30がこのように形成されていると、後述するように、被保持物を非保持孔30内に配置したときに、被保持物が非保持孔30の内表面に非接触の状態になり、被保持物が非保持孔30を挿通することができ、被保持物を弾性部材10から容易に離脱させることができる。
【0028】
ここで、非保持孔30の内表面に被保持物が非接触の状態にあるとは、被保持物の側面すべてが非保持孔30の内表面に接触していない状態にある場合だけでなく、被保持物の側面が非保持孔30の内表面に接触している状態にある場合も含まれる。すなわち、被保持物の側面の少なくとも1つが非保持孔30の内表面に接触していても、被保持物を弾性部材10に対して相対的に移動させることによって、非保持孔30に保持されずに、非保持孔30から被保持物を離脱することができる状態にある場合をも含む。例えば、非保持孔30の寸法は、例えば、保持される被保持物における前記距離Wに対して、150〜200%程度に調整される。具体的には、図1に示される保持治具においては、非保持孔30の寸法は、保持孔20に保持される被粘着物が非保持孔30に移行されたときに、被粘着物の側面が非保持孔30に接しないように、非保持孔30における前記距離Wよりも一回り、より具体的には、150〜200%程度大きく設定されている。
【0029】
非保持孔30はその軸線方向の始点から終点まで同一の断面形状とされているが、被保持物を非接触の状態で挿通することができる限り、非保持孔30の断面形状は同一である必要はない。
【0030】
前記弾性部材10は弾性を有する弾性材料で形成される。具体的には、弾性部材10を形成する弾性材料は、弾性部材10の弾性によって相対向する挟持面21及び22で被保持物を所望のように弾発的に保持することができる点で、弾性材料又はその硬化物のヤング率が1〜8Mpaであるのが好ましく、ヤング率が1〜5Mpaであるのがさらに好ましく、ヤング率が1〜3Mpaであるのが特に好ましい。ここで、弾性部材10を形成する弾性材料又はその硬化物のヤング率は、以下のようにして求める。すなわち、ヤング率は、弾性部材10を形成する弾性材料又はその硬化物から成る試験片において、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定し、式E=ΔS/Δa により求めることができる。ここで、前記式中、ΔSは、負荷F、試験片の厚さt及び幅wより、式ΔS=F/(w×t)で表され、Δaは、試験片の基準長さL、負荷をかけたときの試験片の伸びΔLより、Δa=ΔL/Lで表される。ヤング率は、引張り試験機、例えば、商品名「MODEL−1605N」(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて、測定することもできる。
【0031】
弾性部材10は、弾性を有する弾性材料、又は、この弾性材料の硬化物で形成されていればよく、弾性材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、フッ素系組成物、シリコーン組成物及びウレタン系エラストマー等が好ましい。具体的な組成物としては、例えば、(a)シリコーン生ゴム、(b)架橋成分、(c)触媒、(d)シリカ系充填材を有するシリコーン組成物等が挙げられる。
【0032】
図1(b)に明確に示されるように、複数の保持離脱部15が配列された弾性部材10は、弾性部材10における一方の表面に基板40を備えている。この基板40は、前記弾性部材10を平滑に支持する。基板40は、弾性部材10を平滑に支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、基板40は、図1に示されるように、弾性部材10と同一の寸法を有する、矩形を成す盤状体に形成されている。
【0033】
基板40は、保持治具1としたときに、弾性部材10に配置形成された複数の保持離脱部15それぞれにおける保持孔20及び非保持孔30と略一致するように、第1貫通孔42及び第2貫通孔43が配置形成されている。図1(c)に示されるように、第1貫通孔42は、保持孔20と同様の形状を有し、保持孔20と同じ又はわずかに大きな寸法を有しており、第1貫通孔42の具体的な寸法は特に限定されない。第1貫通孔42が保持孔20よりもわずかに大きな寸法に形成されていると、挟持面21及び22によって被保持物が弾発的に挟持されることが容易になると共に、被保持物の第1貫通孔42への接触による被保持物の損傷等を防止することができる。第2貫通孔43は、前記非保持孔30と同様の形状を有し、非保持孔30と同じ寸法又はわずかに大きな寸法を有している。図1(c)に示されるように、この例においては、第2貫通孔43は非保持孔30と同じ寸法を有している。第1貫通孔42と第2貫通孔43とは連接され、全体として、保持離脱部15と同様の形状になっている。なお、第1貫通孔42と第2貫通孔43とは保持離脱部15と同様の形状になっている必要はなく、保持離脱部15よりも大きな貫通孔、例えば、保持離脱部15に対応する多角形、円形等の貫通孔、複数の保持離脱部15の配列方向に延在する溝状貫通孔等とされていてもよい。
【0034】
基板40は、弾性部材10を平滑に支持することができる程度の厚さを有していればよく、平滑な表面を有しているのがさらによく、均一な厚さを有しているのが特によい。例えば、基板40は、0.2〜1.0mm程度の厚さを有しているのがよい。
【0035】
基板40は、弾性部材10を形成する面に、弾性部材10との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。
【0036】
基板40は、弾性部材10を平滑に支持可能な材料で形成されればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板、和紙、合成紙及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに、布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びに、ガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。さらに、基板40として、シート状物を複数積層して成る積層体とすることもできる。基板40は、金属、樹脂又はセラミックスからなる硬質材料で形成されるのが好適である。
【0037】
保持治具1は、基板40の表面に弾性部材10が前記弾性材料で形成されて、製造さればよく、例えば、前記弾性材料を成形して、所定のパターンに配列された保持離脱部15を有するシート状成形体、及び、第1貫通孔及び第2貫通孔が保持離脱部15と同様のパターンで配列されてなる基板40をそれぞれ作製し、このシート状成形体を基板40の表面に貼り付けて、製造されてもよい。また、別の製造方法として、基板40を作製し、所定のパターンに配列された保持離脱部15を形成する凸状体を有する成形金型内に、基板40を収納し、前記弾性材料を成形して、製造されてもよい。なお、前記弾性材料は、例えば、通常、150〜180℃で5〜10分間加熱することにより、硬化される。このようにして硬化された弾性材料は、さらに、150〜200℃、1〜4時間の条件で二次加熱されてもよい。
【0038】
次に、保持治具1の使用方法を、保持孔20と第1貫通孔42とが同一寸法に形成されている例が示された図2及び図3を用いて、説明する。この保持治具1に被保持物、例えば、コンデンサチップ本体7を保持するには、図2(a)に示されるように、平滑面上、例えば、第1の固定部材61上に、複数のコンデンサチップ本体7を、非保持部30の配列パターンと同じパターンで起立状態に配列する。コンデンサチップ本体7をこのような状態に配列する手段は、特に限定されず、例えば、コンデンサチップ本体7が通過可能な複数の貫通孔が一列に配設された板状の整列具等を用いる方法等が好適に採用される。
【0039】
次いで、図2(a)に示されるように、保持治具1を配置し、起立状態に配列された複数のコンデンサチップ本体7それぞれを弾性部材10の非保持孔30及び基板40の第2貫通孔43を貫通させる。コンデンサチップ本体7はその軸線方向における両端面近傍に電極が形成されるから、図2(a)に示されるように、保持治具1が配置される高さは、コンデンサチップ本体7における軸線方向の略中央部近傍とされる。次いで、図2(b)に示されるように、この状態を維持しつつ、第2の固定部材62を保持治具1の上側に配置し、複数のコンデンサチップ本体7それぞれにおける自由端に当接させて、コンデンサチップ本体7を軸線方向から押圧し、コンデンサチップ本体7を軸線方向に固定する。
【0040】
次いで、コンデンサチップ本体7を軸線方向から押圧固定した状態で、コンデンサチップ本体7それぞれが保持孔20及び第1貫通孔42側に移行又は変位する方向(図2(b)における矢印Aの方向)に、保持治具1をコンデンサチップ本体7に対して相対的に移動させる。そうすると、図2(c)に示されるように、コンデンサチップ本体7それぞれは非保持孔30及び第2貫通孔43から保持孔20及び第1貫通孔42に移行又は変位して、コンデンサチップ本体7それぞれの背中合わせの2面が保持孔20の挟持面21及び22に当接して押圧される。その結果、コンデンサチップ本体7それぞれは、保持孔20における相対向する挟持面21及び22で弾発的に挟持される。
【0041】
最後に、第1の固定部材61及び第2の固定部材62を取り除くと、図2(d)に示されるように、保持治具1に複数のコンデンサチップ本体7それぞれを一挙に所望のように起立状態に容易に保持することができる。
【0042】
一方、保持治具1に保持されたコンデンサチップ本体7それぞれを保持治具1から取り外すには、コンデンサチップ本体7を保持する手順と逆の手順を経ればよい。すなわち、複数のコンデンサチップ本体7それぞれの両端面が突出するように保持された保持治具1(図3(a)参照)を、図3(b)に示されるように、平滑面例えば第1の固定部材61に、複数のコンデンサチップ本体7それぞれにおける一方の端面が当接するように、配置し、さらに、第2の固定部材62を複数のコンデンサチップ本体7それぞれにおける他方の端面が当接するように配置して、複数のコンデンサチップ本体7それぞれを軸線方向に押圧して、固定する。
【0043】
次いで、コンデンサチップ本体7それぞれを軸線方向から押圧固定した状態で、コンデンサチップ本体7が非保持孔30及び第2貫通孔43側に移行又は変位する方向(図3(b)における矢印Bの方向)に、保持治具1をコンデンサチップ本体7に対して相対的に移動させる。そうすると、図3(c)に示されるように、コンデンサチップ本体7それぞれは保持孔20及び第1貫通孔42から非保持孔30及び第2貫通孔43に移行又は変位して、コンデンサチップ本体7それぞれが非接触の状態で非保持孔30及び第2貫通孔43内に位置する。その結果、コンデンサチップ本体7は保持治具1に保持されていない状態にある。
【0044】
次いで、図3(c)に示されるように、第2の固定部材62取り除き、最後に、保持治具1を取り除くと、図3(d)に示されるように、複数のコンデンサチップ本体7それぞれが起立状態を維持したまま、保持治具1から一挙に離脱し、平滑面である第1の固定部材61上に取り残される。このようにして、複数のコンデンサチップ本体7が保持された保持治具1から、複数のコンデンサチップ本体7それぞれを一挙に容易に離脱させることができる。
【0045】
このように、保持治具1によれば、チップコンデンサ本体7を離脱させるのに、掻き取り部材等を用いることがないので、チップコンデンサ本体7の離脱時に、掻き取り部材等による強制的な作用に起因するチップコンデンサ本体7の飛散を効果的に防止することができ、また、掻き取り部材等による強制的な作用に起因する弾性部材10の損傷等を効果的に防止することができる。さらに、この保持治具1によれば、保持治具1を被保持物に対して相対的に移動することにより、複数のチップコンデンサ本体7を一挙に非保持孔30から保持孔20に、又は、保持孔20から非保持孔30に移行させることができ、その結果、複数のチップコンデンサ本体7を一挙にかつ容易に保持及び離脱することができる。特に、保持治具1は、1つの保持孔20と1つの非保持孔30とが連設されているから、保持治具1にチップコンデンサ本体7を保持する間及び保持治具1からチップコンデンサ本体7を離脱する間等に、チップコンデンサ本体7の転倒を効果的に防止することができる。したがって、保持治具1によれば、複数のチップコンデンサ本体7を一挙に容易かつより確実に保持及び離脱することができる。
【0046】
この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具2は、図4及び図5に示されるように、相対向する挟持面で被保持物を弾発的に挟持する保持部20と、保持部20に連設されると共に被保持物に対して非接触の状態で被保持物を挿通可能に形成された非保持部31とを有する弾性部材11と、弾性部材11の内部に収納された基板41とを備えて成る。この保持治具2は、非保持部31が一列に配列された複数の保持部20それぞれに連設された溝状貫通孔の非保持孔31とされ、内部に基板41を収納可能な中空部を有している以外は、保持治具1と基本的に同様である。
【0047】
したがって、弾性部材11は、溝状貫通孔の非保持孔31が形成され、内部に基板41を収納可能な中空部を有している以外は、前記弾性部材10と基本的に同様である。この弾性部材11は、図4及び図5に示されるように、一列に配列された11個の保持部20と1つの非保持部31とが連設されて成る保持離脱部16が、弾性部材30の内部に、保持離脱部16それぞれの保持部20と非保持部31との相対的な位置関係が同一となるように、所定の配列例えば縦方向に等間隔で、配置されている。この例では、保持離脱部16は、縦方向に11列、保持部20と非保持部31との相対的な位置関係が同一(図4において保持部20が左側に位置する位置関係)となるように、配列されているが、この発明においては、非保持部31に連設する保持部20の数、及び、配列される保持離脱部16の数は、特に制限されず、保持治具2が用いられる用途、被保持物の大きさ等に応じて、適宜調整される。例えば、非保持部31に連設する保持部20の数は2〜50個に調整することができ、また、配列される保持離脱部16の列数は2〜50列に調整することができる。保持治具2によれば、後述するように、複数の被保持物を一挙に保持及び離脱することができるが、この発明において、大多数の被保持物を一挙に保持及び離脱することを目的とする場合には、弾性部材11に形成される保持孔20の数は、例えば500〜2,500程度にすることができる。
【0048】
保持部20は、前記保持治具1の保持孔20と基本的に同様に形成されている。非保持部31は、図5に示されるように、弾性部材11を一方の表面から他方の表面に貫通すると共に、保持部20が配列された方向に延在する溝状の貫通孔から成る非保持孔31とされている。そして、この非保持孔31は、その延在方向に一列に配列された複数の保持孔20それぞれに連設されている。また、非保持孔31は、その内部に被保持物を挿入したときに、非保持孔31の内表面に被保持物が接触しない程度の溝幅を有し、被保持物に対して非接触の状態で被保持物を挿通可能に形成されている。非保持孔31がこのように形成されていると、後述するように、被保持物を非保持孔31内に配置したときに、被保持物が非保持孔31の内表面に非接触の状態になり、被保持物が非保持孔31を挿通することができ、被保持物を弾性部材10から容易に離脱させることができる。
【0049】
基板41は、11個の第1貫通孔42と1つの第3貫通孔44とが連接されている以外は、基板40と基本的に同様に形成されている。すなわち、基板41は、弾性部材11の内部に収納されて保持治具2とされたときに、弾性部材11に配置形成された複数の保持離脱部16における保持孔20及び非保持孔31と一致するように、第1貫通孔42及び第3貫通孔44が配置形成されている。第1貫通孔42は、保持治具1の保持孔20と同様に形成されている。第1貫通孔42がこのように形成されていると、挟持面21及び22によって被保持物が弾発的に挟持されることが容易になると共に、被保持物の第1貫通孔42への接触による被保持物の損傷等を防止することができる。したがって、このような目的を達成することができる限り、第1貫通孔42の寸法は限定されない。第3貫通孔44は、前記非保持孔31と同様の形状を有し、非保持孔31と同じ寸法又はわずかに大きな寸法を有している。図3に示されるように、この例においては、第3貫通孔44は非保持孔31と同じ寸法を有している。11個の第1貫通孔42と1つの第3貫通孔44とは連接され、全体として、保持離脱部16と同様の形状になっている。なお、第1貫通孔42と第3貫通孔44とは保持離脱部16と同様の形状になっている必要はなく、保持離脱部16よりも大きな貫通孔、例えば、保持離脱部16の配列方向に延在する溝状貫通孔等とされていてもよい。
【0050】
保持治具2は、基板41を覆うように弾性部材11が前記弾性材料で形成されて、製造さればよく、例えば、前記弾性材料を成形して、所定のパターンに配列された保持離脱部16を有する中空成形体、及び、第1貫通孔42及び第3貫通孔44が保持離脱部16と同様のパターンで配列されてなる基板41をそれぞれ作製し、この中空成形体中に基板41を収納して、製造されてもよい。また、別の製造方法として、基板41を作製し、所定のパターンに配列された保持離脱部16を形成する凸状体を有する成形金型内に、基板41を収納して、前記弾性材料を成形して、製造されてもよい。
【0051】
保持治具2の使用方法は、前記保持治具1の使用方法と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0052】
保持治具2によれば、保持されたチップコンデンサ本体7の離脱時にチップコンデンサ本体7の飛散を効果的に防止することができ、また、掻き取り部材等による弾性部材10の損傷等を効果的に防止することができ、さらに、複数のチップコンデンサ本体7を一挙にかつ容易に保持及び離脱することができる。したがって、保持治具2によれば、複数のチップコンデンサ本体7を一挙に容易かつより確実に保持及び離脱することができる。
【0053】
この発明に係る被保持物の使用方法、特に被保持物の離脱方法によれば、この発明に係る保持治具を用いるから、被保持物に対して保持治具を相対的に移動させることにより、弾性部材を損傷等させることがなく、保持治具から複数の被保持物を一挙に容易に保持し、又は、離脱させることができる。
【0054】
この発明に係る保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、保持治具1は、断面が矩形の保持孔20と断面が矩形の非保持孔30とが連設して成る複数の保持離脱部15を有しているが、保持離脱部は、断面が矩形の保持孔と断面が矩形の非保持孔とが連設して成る形状に限定されず、被保持物を保持する保持部と被保持物を保持しない非保持部とを有していればよく、例えば、図6(a)に示されるように、弾性部材の水平方向の断面が矩形の保持孔20と同方向の断面が円形の非保持孔32とが連設されて成る保持離脱部であってもよく、図6(b)に示されるように、弾性部材の水平方向の断面が矩形の保持孔20と同方向の断面が楕円形の非保持孔33とが連設されて成る保持離脱部であってもよく、図6(c)に示されるように、弾性部材の水平方向の断面が矩形の保持孔20と同方向の断面が多角形例えば五角形の非保持孔34とが連設されて成る保持離脱部であってもよく、図6(d)に示されるように、弾性部材の水平方向の断面が先細の矩形を成す保持孔25と同方向の断面が矩形の非保持孔30とが連設されて成る保持離脱部であってもよく、図6(e)に示されるように、弾性部材の水平方向の断面が矩形の保持孔20と、同方向の断面が矩形の非保持孔30とが同方向の断面が多角形例えば矩形等の連設孔35を介して連設されて成る保持離脱部であってもよい。図6(c)、(d)及び(e)に示される保持離脱部は、非保持孔34、保持孔25及び連設孔35が被保持物の保持孔への移行を案内する機能を発揮することができるから、このような保持離脱部を有する保持治具は被保持物の保持及び離脱をより一層速やかに行うことができる。なお、保持孔25における相対向する2つの挟持面が有する間隔の平均値が前記間隔Dに調整されるのがよい。
【0055】
また、保持治具1及び2はいずれも基板40又は41を備えているが、この発明においては、弾性部材が平滑性を維持することができる程度の硬度を有していれば、基板を備えている必要はない。
【0056】
この発明に係る被保持物の使用方法及び被保持物の離脱方法は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記使用方法においては、第1の固定部材61及び第2の固定部材62を用いているが、この発明に係る被保持物の使用方法及び被保持物の離脱方法においては、第1の固定部材及び第2の固定部材を用いることなく、被保持物を保持し、離脱させることができる。
【0057】
この発明に係る保持装置はこの発明に係る保持治具を複数備えて成る。この発明に係る保持装置の一実施例である保持装置5及びその使用方法を、保持孔20と第1貫通孔42とが同一寸法に形成されている例が示された図7を参照して、説明する。図7においては、理解しやすいように、一方の保持治具3及び他方の保持治具4における基板40a及び50bを省略してある。
【0058】
保持装置5は、図7(b)〜(d)に示されるように、2つの保持治具、すなわち、一方の保持治具3及び他方の保持治具4を備えて成る。この2つの保持治具3及び4は前記保持治具1と基本的に同様に形成されている。この保持装置5は、例えば、一方の保持治具3から他方の保持治具4に被保持物を移設する必要がある場合等に好適に使用される。このような場合として、例えば、被保持物の両端部それぞれに、被保持物の軸線方向の長さに対して、同方向の長さが長い電極を有する工程等が挙げられる。
【0059】
一方の保持治具3に保持されている複数のチップコンデンサ本体7(図7(a)参照)を他方の保持治具4に移設するには、まず、図7(a)に示されるように、前記保持治具1で説明した方法により、一方の保持治具3に複数のチップコンデンサ本体7を保持させる。次いで、図7(b)に示されるように、一方の保持治具3の下方に、複数のチップコンデンサ本体7それぞれが非保持孔30bそれぞれを貫通するように、他方の保持治具4を配置する。この状態を維持して、他方の保持治具4における非保持孔30bから下方に突出したチップコンデンサ本体7それぞれの端面と、一方の保持治具3における保持孔20aから上方に突出したチップコンデンサ本体7それぞれの端面とに当接するように、第1の固定部材61及び第2の固定部材62それぞれを他方の保持治具4の下方及び一方の保持治具3の上方に配置する。第1の固定部材61及び第2の固定部材62をこのように配置することによって、複数のコンデンサチップ本体7それぞれを軸線方向から押圧し、コンデンサチップ本体7を軸線方向から固定する。
【0060】
次いで、コンデンサチップ本体7を軸線方向から押圧固定した状態で、コンデンサチップ本体7それぞれが非保持孔30a側に移行する方向(図7(b)における矢印Aの方向)に、一方の保持治具3をコンデンサチップ本体7に対して相対的に移動させる。そうすると、図7(c)に示されるように、コンデンサチップ本体7それぞれは保持孔20aから非保持孔30aに移行して、コンデンサチップ本体7それぞれが非接触の状態で非保持孔30a内に位置する。その結果、複数のコンデンサチップ本体7それぞれは一方の保持治具3及び他方の保持治具4に保持されていない状態にある。
【0061】
次いで、コンデンサチップ本体7それぞれを軸線方向から押圧固定した状態で、コンデンサチップ本体7それぞれが保持孔20b側に移行する方向(図7(c)における矢印Bの方向)に、他方の保持治具4をコンデンサチップ本体7に対して相対的に移動させる。そうすると、図7(d)に示されるように、コンデンサチップ本体7それぞれは非保持孔30bから保持孔20bに移行して、コンデンサチップ本体7それぞれの背中合わせの2面が保持孔20bの挟持面(図7において図示しない)に当接して押圧される。その結果、複数のコンデンサチップ本体7それぞれは、他方の保持治具4の保持孔20bにおける相対向する2つの挟持面で弾発的に挟持される。その結果、複数のコンデンサチップ本体7それぞれは他方の保持治具4に保持された状態にある。
【0062】
次いで、第1の固定部材61及び第2の固定部材62取り除き、最後に、一方の保持治具3を取り除くと、図7(e)に示されるように、複数のコンデンサチップ本体7それぞれが起立状態を維持したまま、一方の保持治具3から一挙に離脱し、他方の保持治具4に一挙に保持される。このようにして、複数のコンデンサチップ本体7それぞれが保持された一方の保持治具3から他方の保持治具4に、複数のコンデンサチップ本体7それぞれを一挙にかつ容易に移し替えることができる。
【0063】
この発明に係る保持装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る保持装置は、この発明に係る3以上の保持治具を有していてもよい。
【0064】
また、保持装置5は、2つの保持治具1を備えているが、この発明に係る保持装置は、同一の保持治具を有している必要はなく、異なる保持治具を有していてもよい。例えば、この発明に係る保持装置は、前記保持治具1と前記保持治具2とを有していてもよい。
【0065】
前記被保持物の移設方法は、チップコンデンサ本体7を一方の保持治具3における保持部20aから非保持部30aに移行する工程を行い、一方の保持治具3からチップコンデンサ本体7を離脱した後、チップコンデンサ本体7を他方の保持治具4における非保持部30bから保持部20bに移行する工程を行い、他方の保持治具4にチップコンデンサ本体7を保持させる例を用いて、説明されたが、この発明においては、チップコンデンサ本体を一方の保持治具における保持部から非保持部に移行する工程の前に、チップコンデンサ本体を他方の保持治具における非保持部から保持部に移行する工程とを実施してもよく、また、これらの工程を同時に実施してもよい。
【0066】
また、この発明に係る被保持物の移設方法は、第1の固定部材61及び第2の固定部材62を用いているが、この発明に係る被保持物の移設方法においては、第1の固定部材及び第2の固定部材を用いることなく、被保持物を移し替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を示す図であり、図1(a)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を示す上面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A線における断面を示す断面図であり、図1(c)は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具における保持離脱部の1つを示す拡大上面図であり、図1(d)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具における弾性部材に形成された保持離脱部の1つを示す拡大斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具にコンデンサチップ本体を保持する方法を説明する説明図であり、図2(a)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具とコンデンサチップ本体との配置状態を説明する部分断面図であり、図2(b)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具における非保持孔に挿通されたコンデンサチップ本体を固定した状態を説明する部分断面図であり、図2(c)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を相対的に移動して、コンデンサチップ本体を非保持部から保持部に移行した状態を説明する部分断面図であり、図2(d)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具にコンデンサチップ本体を保持した状態を説明する部分断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具からコンデンサチップ本体を離脱する方法を説明する説明図であり、図3(a)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具にコンデンサチップ本体を保持した状態を説明する部分断面図であり、図3(b)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具に保持されたコンデンサチップ本体を固定した状態を説明する部分断面図であり、図3(c)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を相対的に移動して、コンデンサチップ本体を保持部から非保持部に移行した状態を説明する部分断面図であり、図3(d)はこの発明に係る保持治具の一実施例である保持治具からコンデンサチップ本体を離脱した状態を説明する部分断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具を示す上面図である。
【図5】図5は、図4におけるB−B線における断面を示す部分断面図である。
【図6】図6は、この発明に係る保持治具に形成される保持離脱部の変形例を示す上面図であり、図6(a)は断面が矩形の保持孔と断面が円形の非保持孔とが連設されて成る保持離脱部を示す上面図であり、図6(b)は断面が矩形の保持孔と断面が楕円形の非保持孔とが連設されて成る保持離脱部を示す上面図であり、図6(c)は断面が矩形の保持孔と断面が多角形例えば五角形の非保持孔とが連設されて成る保持離脱部を示す上面図であり、図6(d)は断面が先細の矩形を成す保持孔と断面が矩形の非保持孔とが連設されて成る保持離脱部を示す上面図であり、図6(e)は断面が矩形の保持孔と断面が矩形の非保持孔とが断面が多角形例えば矩形等の連設孔を介して連設されて成る保持離脱部を示す上面図である。
【図7】図7は、この発明に係る移設方法を説明する説明図であり、図7(a)は一方の保持治具にコンデンサチップ本体を保持した状態を説明する部分正面図であり、図7(b)は一方の保持治具に保持されたコンデンサチップ本体を固定した状態を説明する部分正面図であり、図7(c)は一方の保持治具を相対的に移動して、コンデンサチップ本体を保持部から非保持部に移行した状態を説明する部分正面図であり、図7(d)は他方の保持治具を相対的に移動して、コンデンサチップ本体を非保持部から持部に移行した状態を説明する部分正面図であり、図7(e)は他方の保持治具にコンデンサチップ本体を保持した状態を説明する部分正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1、2 保持治具
3 一方の保持治具
4 他方の保持治具
5 保持装置
7 チップコンデンサ本体
10、11 弾性部材
15、16 保持離脱部
20、25 保持部(保持孔)
21、22 挟持面
30、31、32、33、34 非保持部(非保持孔)
35 連設孔
40、41 基板
42 第1貫通孔
43 第2貫通孔
44 第3貫通孔
61 第1の固定部材
62 第2の固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する挟持面で被保持物を弾発的に挟持する保持部と、前記保持部に連設されると共に前記被保持物に対して非接触の状態で前記被保持物を挿通可能に形成された非保持部とを有する弾性部材を、備えて成ることを特徴とする保持治具。
【請求項2】
請求項1に記載の保持治具を複数備えて成ることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保持治具における前記保持部に保持された被保持物を離脱させる方法であって、前記保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記保持部から前記非保持部に移行することを特徴とする被保持物の離脱方法。
【請求項4】
請求項1に記載の第1の保持治具に保持された被保持物を、請求項1に記載の第2の保持治具に移設する被保持物の移設方法であって、
前記第1の保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記第1の保持治具における保持部から非保持部に移行する工程と、
前記第2の保持治具を前記被保持物に対して相対的に移動して、前記被保持物を前記第2の保持治具における非保持部から保持部に移行する工程とを有する被保持物の移設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−16429(P2009−16429A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173993(P2007−173993)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】