説明

保水性部材及びその製造方法、並びに、泡沫状保水処理剤及び保水剤

【課題】吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができ、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材、及びその製造方法、並びに、このような保水性部材を製造可能とする泡沫状保水処理剤、及び保水剤を提供する。
【解決手段】本発明の保水性部材100は、複数の孔104が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部103を構成する骨格110を有する連続多孔質層101を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体102と、空隙部103内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ120とを備える。吸水性ポリマ120は、自身の一部若しくは全部が、連続多孔質層101の骨格110内に取り込まれることなく、または、骨格110同士を接着する接着剤で骨格110に接着されることなく、骨格110の表面110bに付着した状態で空隙部103内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性部材及びその製造方法、並びに、保水性部材の製造方法に用いる泡沫状保水処理剤及び保水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルの屋上や、集合住宅のベランダ、バルコニー、屋上等において、景観の向上やヒートアイランド現象の抑制のために、植裁することが多くなっている。ところが、ビルの屋上等では、建築基準法により重量制限がされているため、土壌を厚くすることができない。このため、頻繁に灌水を行わなければならず、また、十分に植物が育たない等、多くの課題があった。
【0003】
このような課題を解決するべく、土を使用することなく、植物を栽培することが可能な部材が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−103662号公報
【特許文献2】特開2002−51637号公報
【0004】
特許文献1では、感温吸水性ポリマを含有した樹脂発泡体が開示されている。具体的には、屑ウレタンフォームから再生ウレタンフォームを再成型する工程で、感温点が20℃、25℃、30℃と異なる感温吸水性ポリマを、1:2:2の比率で混合したものを、成型ウレタンフォーム1L当たり10gの割合で分散・混合した、厚さ7cmのウレタンフォーム成型体が開示されている。
【0005】
特許文献2でも、感温吸水性ポリマを含有した樹脂発泡体が開示されている。具体的には、チップ状のウレタンフォームから再生ウレタンフォームを再成型する工程で、感温点が15℃、20℃、25℃、30℃、35℃と異なる感温吸排水性樹脂粒子を、10%、15%、30%、35%、10%の比率で混合したものを、5kg/m3の割合で分散・含有させた、厚さ5cmのウレタンフォーム成型体が開示されている。
さらに、特許文献2では、親水性のあるポリエステル繊維を不織布に成型する工程で、感温点が15℃、20℃、25℃、30℃、35℃と異なる感温吸排水性樹脂粒子を、10%、15%、30%、35%、10%の比率で混合したものを、5kg/m3の割合で繊維内部に分散・含有させた、厚さ5cmの繊維圧縮成型体が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているウレタンフォーム成型体では、屑ウレタンフォーム(チップ状ウレタンフォーム)同士を接着剤により接着するため、これと混合する感温吸水性ポリマも、接着剤により屑ウレタンフォーム(骨格)に接着されてしまう。このため、吸水性ポリマが吸水する際、接着剤により、吸水による膨潤が妨げられてしまう。しかも、屑ウレタンフォームを圧縮成型するため、空隙部が小さくなり、吸水性ポリマが吸水により膨潤するスペースも十分に確保されていなかった。このため、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができす、十分な保水量を確保することができなかった。
【0007】
また、特許文献1には、他の製造方法として、発泡体原料に感温吸水性ポリマの粉末を添加・混合し、これを撹拌して常法により発泡・硬化させる手法が提案されている。しかしながら、この手法では、吸水性ポリマの一部または全部が、ウレタンフォームの骨格内に取り込まれてしまうため、吸水性ポリマが吸水する際、骨格により吸水による膨潤が妨げられて、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができないと考えられる。
【0008】
また、特許文献2に開示されている繊維圧縮成型体では、積層する不織布の表面に吸水性ポリマを分散させた状態で、不織布同士を接着剤や加熱等により接着(溶着)するため、吸水性ポリマの一部が不織布に接着されてしまう。このため、前述のウレタンフォーム成型体と同様に、吸水性ポリマが吸水する際、接着剤により吸水による膨潤が妨げられるので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができす、十分な保水量を確保することができなかった。
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができ、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材、及びその製造方法、並びに、このような保水性部材を製造可能とする泡沫状保水処理剤、及び保水剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その解決手段は、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性部材であって、上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、しかも、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、上記空隙部内に配置されてなる保水性部材である。
【0011】
本発明の保水性部材では、吸水性ポリマは、その一部若しくは全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることなく、しかも、骨格同士を接着する接着剤で骨格に接着されることなく、空隙部内に配置されている。これにより、吸水性ポリマが吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の保水性部材によれば、十分な保水量を確保することが可能となる。
【0012】
なお、連続多孔質層としては、骨格をなす物質自身のみで複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成するもの(接着剤を含まないもの)のほか、骨格同士を接着剤で結合して空隙部を構成するものも含む。また、連続多孔質層保持体としては、その一部または全体に連続多孔質層を備えるものであればいずれでも良い。このうち、全体に連続多孔質層を備える連続多孔質層保持体としては、例えば、樹脂発泡体(ポリウレタンフォームなど)、海綿、繊維構造体(不織布など)を挙げることができる。また、一部に連続多孔質層を備える連続多孔質層保持体としては、例えば、土台部分に連続多孔質層(樹脂発泡体や繊維構造体など)を備える人工芝や、容器底部や側壁部に連続多孔質層(樹脂発泡体や繊維構造体など)を備える植木鉢やプランターなどを挙げることができる。
【0013】
また、樹脂発泡体としては、樹脂を発泡させて連続気孔としたものであればいずれでも良いが、例えば、ゴム系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の合成樹脂系の発泡体を挙げることができる。
【0014】
また、繊維構造体は、繊維または線材からなり、内部に空隙部を有するものを指す。例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ポリ塩化ビニリデン、モダクリル等からなる合成繊維を主材とする不織布(シート状、板状など)や、パルプ、綿、麻等の天然繊維や、レーヨン、アセテート等の再生・半合成繊維を主材とする不織布(シート状、板状など)を挙げることができる。また、フェルトや織布でも良い。また、複数の繊維を絡み合わせたものでも良い。また、椰子の繊維など比較的太い繊維やリボン状の木材薄板などを編んだり絡み合わせたりしたものでも良い。また、へちま繊維体など植物由来の繊維体も含む。また、ポリプロピレン等の合成樹脂や金属などからなる線材を、三次元網目構造に成形した構造体をも含む。
【0015】
なお、吸水性ポリマとしては、保水性が高く、感温性を有する吸水性ポリマとして、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を例示することができる。また、保水性が高く耐塩性に優れた、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを用いても良い。変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマとしては、アクアリックCS−6(株式会社日本触媒製、商品名)を例示することができる。さらに、耐熱性に優れた吸水性ポリマとして、アクアリックCS−7(株式会社日本触媒製、商品名)を例示することができる。
【0016】
また、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性部材であって、上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、しかも、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格若しくは上記接着剤の表面に付着した状態で、上記空隙部内に配置されてなる保水性部材が好ましい。
【0017】
この保水性部材では、吸水性ポリマは、その一部若しくは全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることなく、しかも、骨格同士を接着する接着剤で骨格に接着されることなく、空隙部内に配置されている。これにより、吸水性ポリマが吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、この保水性部材によれば、十分な保水量を確保することが可能となる。
【0018】
他の解決手段は、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性部材であって、上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、しかも、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格の若しくは上記接着剤の若しくは吸水した上記吸水性ポリマが上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に付着した状態で、上記空隙部内に配置されてなる保水性部材である。
【0019】
本発明の保水性部材では、吸水性ポリマは、その一部若しくは全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることなく、しかも、骨格同士を接着する接着剤で骨格に接着されることなく、直接または他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格の表面若しくは接着剤の表面若しくは漏出抑制材の表面に付着した状態で、空隙部内に配置されている。これにより、吸水性ポリマが吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の保水性部材によれば、十分な保水量を確保することが可能となる。
【0020】
なお、吸水性ポリマの一部若しくは全部が、漏出抑制材の表面に付着した状態で空隙部内に配置されている場合(この場合は、漏出抑制材が連続多孔質層の空隙部内に配置されている)は、吸水性ポリマが吸水したとき、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができる。この保水性構造体の構成は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末または低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を備えていることで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0021】
また、漏出抑制材としては、例えば、繊維(例えば、ロックウールやガラス繊維等の無機繊維、PP繊維等の有機繊維)、粘土鉱物(例えば、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等)、増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース等)などを挙げることができる。
このうち、特に、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した低速吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる点で、繊維が好適である。しかも、繊維を連続多孔質層の空隙部内に配置することで、連続多孔質層の空隙部内において、水が繊維を伝わって吸水性ポリマに吸収されやすくなるので好ましい。その上、吸水性ポリマが吸水した状態でも空隙部内に隙間を確保することができるので、連続多孔質層内の通気性、通水性を良好にできる。これにより、本発明の保水性部材を用いて植物を栽培する場合に、植物の根腐れ等を防止することができ、植物を適切に育てることができるので好ましい。
【0022】
さらに、上記の保水性部材であって、前記漏出抑制材として繊維を含む保水性部材とすると良い。
【0023】
本発明の保水性構造体では、漏出抑制材として繊維を含んでいる。このため、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に、水を蓄えることができる。
例えば、繊維としてロックウールを用いる場合、粒径が5〜13mmの自然石と粒径が5mm以下の砂を骨材として含む透水性舗装体(連続多孔質層)に対しては、吸水性ポリマ粉末(サーモゲル、興人製)と吸水速度低下剤(グリセリン)と水とロックウール(細粒綿、日本ロックウール社製)とを、1:30:126:3以下(重量比)の割合で混合した保水処理剤を用いるのが好ましい。また、繊維構造体(もやいドレーン、吉原化工製)からなる連続多孔質層に対しては、吸水性ポリマ粉末(サーモゲルB01、興人製)と水とロックウール(粒状綿、日本ロックウール社製)とを、1:150:1.5〜10(重量比)の割合で混合した保水処理剤を用いるのが好ましい。
【0024】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、前記連続多孔質層保持体は、骨材を含まない前記連続多孔質層を備える保水性部材とすると良い。
【0025】
骨材を含まない連続多孔質層としては、ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体や、不織布など繊維を成形してなる繊維成形体などを挙げることができる。
なお、骨材とは、コンクリート製品や舗装体などにおいて、その形状を強固に保持するために、結合材(セメントやアスファルトなど)以外に用いる砂、砂利、セラミック粒子などをいう。
【0026】
さらに、上記の保水性部材であって、前記連続多孔質層は、繊維または線材を三次元網目構造に成形してなる繊維構造体である保水性部材とするのが好ましい。
連続多孔質層を繊維構造体とすることで、保水性部材を軽量化することができ、しかも安価になる。
【0027】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、前記吸水性ポリマは、液体を吸収した上記吸水性ポリマを、直接または液体を吸収した他の上記吸水性ポリマを介して間接に、前記骨格または前記接着剤の表面に接触させた状態で、乾燥させたことにより、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤の表面に付着してなる保水性部材とするのが好ましい。
【0028】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、前記吸水性ポリマは、液体を吸収した上記吸水性ポリマを、直接または液体を吸収した他の上記吸水性ポリマを介して間接に、前記骨格のまたは前記接着剤のまたは液体を吸収した上記吸水性ポリマが前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に接触させた状態で、乾燥させたことにより、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤または上記漏出抑制材の表面に付着してなる保水性部材とすると良い。
【0029】
吸水性ポリマを、他の部材(接着剤など)を用いて、連続多孔質層の骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に付着させた場合には、他の部材(接着剤など)の影響により、吸水性ポリマの吸水能力を低下させてしまう虞がある。これに対し、本発明の保水性部材では、液体(水やアルコールなど)を吸収した吸水性ポリマを、直接または液体を吸収した他の吸水性ポリマを介して間接に、連続多孔質層の骨格または接着剤または漏出抑制材に接触させた状態で乾燥させたことにより、吸水性ポリマを、直接または他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格または接着剤または漏出抑制材の表面に付着している。これにより、吸水性ポリマの吸水能力を低下させてしまうことがないので、十分な保水量を確保することができる。
【0030】
しかも、このようにして吸水性ポリマを骨格等に付着させることで、連続多孔質層の内部から吸水性ポリマの脱落を防止することもできる。
なお、本発明の保水性部材は、例えば、吸水性ポリマを連続多孔質層の空隙部内に配置すると共に、水などの吸収可能な液体を吸水性ポリマに一旦吸収させて、その後これを乾燥することで、得ることができる。また、吸水性ポリマが液体を吸収した直後に、吸水性ポリマが乾燥し、骨格等に付着したものも含む。例えば、骨格を水で湿らせた連続多孔質層に未吸水の吸水性ポリマをふりかけることで、吸水性ポリマを空隙部内に浸入させ、この吸水性ポリマが骨格表面の水を吸収した直後に乾燥し、これによって骨格等に付着したものを挙げることができる。
【0031】
また、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える吸水済み保水性部材であって、上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、または、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、吸水により膨潤してゲル状をなした状態で上記空隙部内に配置されてなる吸水済み保水性部材が好ましい。
【0032】
この吸水済み保水性部材では、吸水性ポリマが、自身の一部若しくは全部が、連続多孔質層の骨格内に取り込まれることなく、または、骨格同士を接着する接着剤で骨格に接着されることなく、吸水により膨潤してゲル状をなした状態で空隙部内に配置されている。すなわち、吸水性ポリマが、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがなく、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水している。従って、この吸水済み保水性部材では、十分な保水量を確保することができる。
【0033】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、前記吸水性ポリマは、感温性を有する吸水性ポリマを含む保水性部材とすると良い。
【0034】
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。このため、本発明の保水性部材では、その温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出することができる。
【0035】
従って、例えば、感温点が35℃程度である吸水性ポリマを含む保水性部材では、夏季において、晴天時には、保水性部材が加熱されて、保水性部材(吸水性ポリマ)の温度が35℃を超えて上昇するので、吸水性ポリマに貯えられていた水が排水され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、保水性部材の温度を低下させることができる。なお、晴天時でも、保水性部材(吸水性ポリマ)の温度が35℃を下回っている間は、吸水性ポリマに貯えている水を保持し続けることができることから、長期にわたって効率良く、保水性部材の温度を低く保つことができる。一方、降雨時には、保水性部材が冷却されて、保水性部材(吸水性ポリマ)の温度が35℃以下に低下するので、吸水性ポリマが吸水することにより水を貯えることができる。
なお、感温性を有する吸水性ポリマ粉末として、例えば、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いることができる。
【0036】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、前記吸水性ポリマは、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを含む保水性部材とすると良い。
【0037】
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。このため、本発明の保水性部材では、長期間にわたり、高い保水性を確保することができる。
【0038】
さらに、上記いずれかの保水性部材であって、吸水した前記吸水性ポリマが前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を、上記連続多孔質層の前記空隙部内に備える保水性部材とすると良い。
【0039】
本発明の保水性部材は、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層の外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を、連続多孔質層の空隙部内に備えている。これにより、吸水性ポリマが吸水したとき、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができる。
本発明の保水性構造体の構成は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末または低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を備えていることで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0040】
さらに、上記の保水性部材であって、前記漏出抑制材として繊維を含む保水性部材とすると良い。
【0041】
本発明の保水性構造体では、漏出抑制材として繊維を含んでいる。このため、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に、水を蓄えることができる。
【0042】
また、建築物であって、上記いずれかの保水性部材を当該建築物の外部に配置してなる建築物が好ましい。
【0043】
この建築物は、上記いずれかの保水性部材を当該建築物の外部に配置しているため、保水性部材を配置した箇所において、適切に、水を配置しておくことができる。ここで、建築物の外部としては、例えば、建築物の屋上、外壁面、ベランダ、バルコニー等を挙げることができる。この建築物では、例えば、夏季等の高温時に、保水性部材の吸水性ポリマから排出された水が蒸発するときの気化熱により、建築物を冷却することが可能となり、ヒートアイランド現象を抑制することもできる。さらに、この保水性部材に植物(芝など)を植えれば、より一層、夏季等の高温時に建築物を冷却することができると共に、大気の浄化もできるので好ましい。
【0044】
また、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性部材の製造方法であって、液体を吸収させた上記吸水性ポリマを、上記空隙部内において、直接または液体を吸収させた他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記骨格同士を接着する接着剤の表面に接触させた状態で、乾燥させて、上記吸水性ポリマを、直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤の表面に付着させる付着工程を備える保水性部材の製造方法が好ましい。
【0045】
この製造方法では、液体(水やアルコールなど)を吸収させた吸水性ポリマを、空隙部内において、直接または液体を吸収させた他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に接触させた状態で、乾燥させる。これにより、吸水性ポリマ(乾燥した吸水性ポリマ)を、直接または他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に付着させる。これにより、連続多孔質層の空隙部内に吸水性ポリマが配置付着された保水性部材を、適切に得ることができる。
【0046】
しかも、この製造方法によれば、従来(特許文献1,2参照)の製造方法と異なり、吸水性ポリマの一部または全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることがなく、また、骨格同士を接着する接着剤で吸水性ポリマが骨格に接着されることもない。従って、吸水性ポリマが吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材を得ることができる。
【0047】
なお、吸水性ポリマとして、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸水性ポリマが吸収可能な液体として、水または一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0048】
他の解決手段は、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える保水性部材の製造方法であって、液体を吸収させた上記吸水性ポリマを、上記空隙部内において、直接または液体を吸収させた他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格のまたは上記骨格同士を接着する接着剤のまたは吸水した上記吸水性ポリマが上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に接触させた状態で、乾燥させて、上記吸水性ポリマを、直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤または上記漏出抑制材の表面に付着させる付着工程を備える保水性部材の製造方法である。
【0049】
本発明の製造方法では、液体(水やアルコールなど)を吸収させた吸水性ポリマを、空隙部内において、直接または液体を吸収させた他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格または骨格同士を接着する接着剤または漏出抑制材の表面に接触させた状態で、乾燥させる。これにより、吸水性ポリマ(乾燥した吸水性ポリマ)を、直接または他の吸水性ポリマを介して間接に、骨格または骨格同士を接着する接着剤または漏出抑制材の表面に付着させる。これにより、連続多孔質層の空隙部内に吸水性ポリマが配置付着された保水性部材を、適切に得ることができる。
【0050】
しかも、本発明の製造方法によれば、従来(特許文献1,2参照)の製造方法と異なり、吸水性ポリマの一部または全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることがなく、また、骨格同士を接着する接着剤で吸水性ポリマが骨格に接着されることもない。従って、吸水性ポリマが吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材を得ることができる。
【0051】
なお、吸水性ポリマとして、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸水性ポリマが吸収可能な液体として、水または一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0052】
また、吸水性ポリマを、直接または他の吸水性ポリマを介して間接に、漏出抑制材の表面に付着させた場合(この場合は、漏出抑制材を連続多孔質層の空隙部内に配置している)は、吸水性ポリマが吸水したとき、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができる。この製造方法は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末または低速吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を配置することで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0053】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記付着工程に先立って、前記液体を未吸収または吸収した前記吸水性ポリマを、前記連続多孔質層の前記空隙部内に配置した状態とする配置工程を備える保水性部材の製造方法とすると良い。
【0054】
本発明の製造方法では、付着工程に先立って、液体(水やアルコールなど)を未吸収または吸収した吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置した状態とする。液体を未吸収の吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置した状態とした場合には、その後、吸水性ポリマに液体を吸収させれば、後の付着工程において、吸水性ポリマを骨格等の表面に付着させることができる。一方、液体を吸収した吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置した状態とした場合は、そのまま、後の付着工程において、液体を吸収した吸水性ポリマを乾燥することで、吸水性ポリマを骨格等の表面に付着させることができる。
【0055】
さらに、上記の保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、流動性を有する保水処理剤であって、前記吸水性ポリマの粉末と、上記吸水性ポリマの粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、水とを混合してなる保水処理剤、または、流動性を有する保水処理剤であって、上記吸水性ポリマの粉末に上記吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水とを混合してなる保水処理剤を、前記連続多孔質層の前記空隙部内に浸入させる浸入工程を含む保水性部材の製造方法とすると良い。
【0056】
本発明の製造方法では、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と水とを混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に浸入させる。または、低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に浸入させる。これにより、吸水性ポリマを水と共に空隙部内に配置することができるので、空隙部内において吸水性ポリマが水を吸収してゆく。従って、吸水した吸水性ポリマを乾燥させれば、吸水性ポリマを、骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に付着させることができる。なお、本発明の製造方法で用いる保水処理剤は、流動性を有しているため、連続多孔質層の空隙部内に浸入させ易い。従って、吸水性ポリマを空隙部内に配置し易くなる。
【0057】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、その吸水速度が速いことから、単に、水と混合した場合には、水との混合と同時に、吸水性ポリマ粉末の吸水による膨潤が急速に進行してしまう。このため、吸水性ポリマ粉末と水とを混合した後、直ちに、連続多孔質層の空隙部内へ保水処理剤の注入を開始したとしても、注入途中で、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤して連続多孔質層の孔より大きくなってしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末を連続多孔質層の空隙部内に注入できなくなる虞がある。また、連続多孔質層の空隙部への注入を開始する前に、吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の孔より大きく膨潤してしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末の注入ができなくなる虞がある。
【0058】
これに対し、本発明の製造方法では、吸水速度低下剤(アルコール等の親水性有機溶剤、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた保水処理剤を用いる。あるいは、吸水速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を有する保水処理剤を用いる。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度が遅くなるので、保水処理剤に含まれる吸水性ポリマが、連続多孔質層の空隙部内に浸入可能な状態を長く保持することができる。従って、保水処理剤を充分に連続多孔質層の空隙部内に注入することができるので、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。
【0059】
なお、吸水速度低下剤としては、有機溶剤(アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、ジオール類など)、粘性付与剤(増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤等)、一価の金属塩、その水溶液などを例示できる。粘性付与剤は、水に粘性を付与できるもの(親水性の増粘剤など)が好ましいが、有機溶剤と共に粘性付与剤を混合する場合は、有機溶剤に粘性を付与できるもの(アクリル系高分子など)でも良い。
【0060】
また、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える吸水済み保水性部材の製造方法であって、上記吸水性ポリマと水とを、上記連続多孔質層の上記空隙部内に配置する配置工程を備える吸水済み保水性部材の製造方法が好ましい。
【0061】
この製造方法では、配置工程において、吸水性ポリマと水とを、連続多孔質層の空隙部内に配置する。これにより、吸水性ポリマが、自身の一部若しくは全部が、連続多孔質層の骨格内に取り込まれることなく、または、骨格同士を接着する接着剤で骨格に接着されることなく、吸水により膨潤してゲル状をなした状態で空隙部内に配置することができる。すなわち、吸水性ポリマが、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがなく、吸水性ポリマの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水する。従って、この製造方法によれば、十分な保水量を確保できる吸水済み保水性部材を得ることができる。
【0062】
さらに、上記の吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、流動性を有する保水処理剤であって、上記吸水性ポリマの粉末と、上記吸水性ポリマの粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、水とを混合してなる保水処理剤、または、流動性を有する保水処理剤であって、上記吸水性ポリマの粉末に上記吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水とを混合してなる保水処理剤を、上記連続多孔質層の上記空隙部内に浸入させる浸入工程を含む吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0063】
この製造方法では、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と水とを混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に浸入させる。または、低速吸水性ポリマ粉末と水とを混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に浸入させる。これにより、吸水性ポリマを水と共に空隙部内に配置することができるので、空隙部内において、適切に、吸水性ポリマに水を吸収させることができる。なお、本発明の製造方法で用いる保水処理剤は、流動性を有しているため、連続多孔質層の空隙部内に浸入させ易い。従って、吸水済み保水性部材を、スムーズに製造することができる。
【0064】
さらに、この製造方法では、吸水速度低下剤(アルコール等の親水性有機溶剤、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた保水処理剤を用いる。あるいは、吸水速度を低下させた低速吸水性ポリマ粉末を有する保水処理剤を用いる。これにより、吸水性ポリマの吸水による膨潤速度が遅くなるので、保水処理剤に含まれる吸水性ポリマが、連続多孔質層の空隙部内に浸入可能な状態を長く保持することができる。従って、保水処理剤を充分に連続多孔質層の空隙部内に注入することができるので、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。このため、この製造方法によれば、十分な保水量を確保できる吸水済み保水性部材を得ることができる。
【0065】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記浸入工程は、前記連続多孔質層の表面に前記保水処理剤を接触させた状態で、上記連続多孔質層の圧縮と復元とを行う保水性部材の製造方法、または吸水済み保水性部材の製造方法とすると良い。
【0066】
連続多孔質層の表面に保水処理剤を接触させた状態(例えば、保水処理剤に連続多孔質層を浸漬させた状態)で、連続多孔質層の圧縮と復元とを行うことで、連続多孔質層の空隙部内に保水処理剤を浸入させることができる。特に、連続多孔質層が樹脂発泡体である場合に、効率良く、且つ、適切に、空隙部内に保水処理剤を浸入させることができる。
従って、本発明の製造方法によれば、連続多孔質層の空隙部内に吸水性ポリマが配置保持された保水性部材、または、連続多孔質層の空隙部内に吸水した吸水性ポリマが配置保持された吸水済み保水性部材を、適切に得ることができる。特に、本発明の製造方法は、連続多孔質層が樹脂発泡体である場合に、好適である。
【0067】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記吸水性ポリマの粉末と前記吸水速度低下剤と前記水とを混合してなる前記保水処理剤を構成する上記吸水速度低下剤は、親水性である保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0068】
疎水性の吸水速度低下剤を用いた保水処理剤を、連続多孔質層内に充填した場合は、疎水性の吸水速度低下剤が吸水性ポリマの表面に残存し、その影響で、吸水性ポリマの吸水能力が損なわれ、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができない。
【0069】
これに対し、この製造方法では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を用いている。このため、本発明の保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過に伴って、水と共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
また、親水性の吸水速度低下剤は、適切に、水と混合することができる。親水性の吸水速度低下剤と混合した水は、吸水性ポリマ粉末にゆっくり吸収されることとなることから、より一層、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下する。
【0070】
親水性の吸水速度低下剤としては、例えば、親水性の有機溶剤(アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、ジオール類など)、親水性の粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液などを挙げることができる。これらの吸水速度低下剤は、1種のみを保水処理剤に含有させても良いし、2種以上を混合して含有させても良い。
【0071】
親水性の有機溶剤としては、アルコール類(エタノール、エチレングリコール、グリセリン等、1〜3価のアルコール)や、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン等)や、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)や、ジオール類(1,3ブチレングリコール等)やN−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどを例示できる。
このうち、特に、エタノール、エチレングリコール、グリセリンは、安価であり、自然環境を汚染することもないので、好ましい。
【0072】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、親水性有機溶剤を吸収することで粘着性が生じ、親水性有機溶剤を吸収した吸水性ポリマ同士が互いに付着し、吸水性ポリマの粒が大きくなってしまうので、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなることがある。
従って、吸水速度低下剤として親水性有機溶剤を用いる場合は、吸水性ポリマ粉末の種類に応じて、その吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤を選択するのが好ましい。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させることができると共に、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができる。
【0073】
具体的には、例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、多価のアルコール(エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等)を用いるのが好ましい。また、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマ(アクアリックCS−6など)を用いる場合は、一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0074】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、吸水性ポリマ粉末に吸収され易い親水性有機溶剤を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、吸収され易いエタノールを1重量部添加するようにしても良い。
【0075】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、一価の金属塩を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、一価の金属塩を0.1重量部添加するようにしても良い。但し、一価の金属塩の影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞があるため、一価の金属塩の添加量は極少量とするのが好ましく、また、耐金属塩性に優れた吸水性ポリマ粉末(例えば、サーモゲル)を用いるのが好ましい。
【0076】
また、親水性の粘性付与剤としては、例えば、親水性の増粘剤、親水性の安定剤、親水性のゲル化剤、親水性の糊剤等を挙げることができる。特に、セルロースを主原料としたアニオン性の水溶性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、非イオン性の水溶性セルロースエーテル(例えば、信越化学工業製のメトローズ)、アルギン酸塩などの多糖類(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)、アニオン性のアクリル系水溶性高分子が好適である。カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、CMCダイセル(ダイセル化学工業製、商標名)を例示できる。また、アルギン酸ナトリウムとしては、アルギテックス(株式会社キミカ製、商品名)を例示できる。また、アニオン性のアクリル系水溶性高分子としては、アロンA−50P(東亜合成製、商品名)を例示できる。また、液状の粘性付与剤として、例えば、アデカノール(旭電化製、商品名)を挙げることができる。
【0077】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、若しくは、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記吸水性ポリマの粉末と前記吸水速度低下剤と前記水とを混合してなる前記保水処理剤は、上記吸水性ポリマ粉末を上記吸水速度低下剤と混合した後、これを上記水と混合してなる、または、上記水を上記吸水速度低下剤と混合した後、これを上記吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水性部材の製造方法、若しくは、吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0078】
この製造方法では、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤と混合して、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させた後、水を混合してなる保水処理剤を用いる。または、水を吸水速度低下剤と混合して、水が吸水性ポリマに吸収される吸水速度を低下させた後、吸水性ポリマ粉末を混合してなる保水処理剤を用いる。このような保水処理剤は、吸水速度低下剤(アルコール、粘性付与剤、一価の金属塩、その水溶液など)により、適切に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となる。従って、この製造方法によれば、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に配置できる。
【0079】
但し、吸水速度低下剤が、水溶性に優れていない粘性付与剤(例えば、CMCダイセルなど)である場合は、粘性付与剤を、先に水と混合した後、吸水性ポリマ粉末と混合してなる保水処理剤を用いるのが好ましい。粘性付与剤により増粘した水と吸水性ポリマ粉末とを混合することで、より確実に、吸水性ポリマ粉末の吸水速度が低下した保水処理剤となるからである。仮に、CMCダイセルと吸水性ポリマ粉末とを混合した後、これに水を混合した場合には、加えた水にCMCダイセルが溶解する速度よりも、吸水性ポリマ粉末の吸水速度のほうが速いので、吸水性ポリマ粉末が吸水により大きく膨潤してしまうため、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなる。但し、吸水速度低下剤として、水溶性に優れていない粘性付与剤に加えて、グリセリンを用いた場合は、吸水性ポリマ粉末を吸水速度低下剤(粘性付与剤及びグリセリン)と混合した後、水を混合してなる保水処理剤でも、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0080】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記保水処理剤は、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合してなる保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0081】
この製造方法では、吸水した吸水性ポリマ粉末、または吸水した低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を混合した保水処理剤を用いる。このため、連続多孔質層の空隙部内において、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末等を、適切に、連続多孔質層を構成する骨材に保持させることができる。
【0082】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記保水処理剤は、界面活性剤を混合してなる保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0083】
界面活性剤を混合してなる保水処理剤は、保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができるので、保水処理剤の流動性を向上させることができる。従って、この保水処理剤を用いることで、保水処理剤を連続多孔質層の空隙部内に注入し易くなり、また、保水処理剤の注入可能時間が長くなるので好ましい。
【0084】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、前記配置工程は、前記浸入工程に先立って、前記連続多孔質層の表面のうち上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に浸入させる浸入口表面を少なくとも除いた表面、及びその近傍に、多価金属塩を配置する浸入前多価金属塩配置工程を含む保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とすると良い。
【0085】
アニオン性の水溶性高分子の水溶液は、多価金属塩を添加することで架橋し、ゲルとなる。従って、保水処理剤として、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤を用いた場合、この保水処理剤を多価金属塩と反応させることで、保水処理剤をゲル化することができる。
【0086】
そこで、本発明の製造方法では、浸入工程に先立って、連続多孔質層の表面のうち浸入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに、多価金属塩を配置させることにした。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、注入した保水処理剤が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0087】
なお、多価金属塩を、連続多孔質層の浸入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍に配置する手法としては、例えば、多価金属塩またはその水溶液を、連続多孔質層の浸入口表面を除いた表面に散布または塗布する手法を挙げることができる。
また、多価金属塩を、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍に配置する手法としては、多価金属塩の水溶液を、連続多孔質層の表面から注入する手法を挙げることができる。あるいは、他層の上に連続多孔質層を形成するに先立って、他層の表面に、多価金属塩またはその水溶液を、散布または塗布するようにしても良い。
【0088】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、前記配置工程は、前記浸入工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に多価金属塩を配置する浸入後多価金属塩配置工程を含む保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とすると良い。
【0089】
本発明の製造方法では、アニオン性の水溶性高分子を含む保水処理剤を、連続多孔質層に注入した後に、連続多孔質層の表面及びその近傍に、多価金属塩を配置する。これにより、連続多孔質層の表面及びその近傍において、保水処理剤が多価金属塩と反応してゲル化する(流動性を失う)ので、連続多孔質層内に注入した保水処理剤が表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、保水処理剤を、適切に、連続多孔質層の空隙部内に保持することができ、その結果、吸水性ポリマを連続多孔質層の空隙部内に適切且つ充分に配置することができる。
【0090】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記浸入工程に先立って、前記連続多孔質層の表面のうち上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に浸入させる浸入口表面を少なくとも除いた表面、及びその近傍に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進するゲル化促進剤を配置する浸入前ゲル化促進剤配置工程を含む保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0091】
この製造方法では、浸入工程に先立って、ゲル化促進剤を、連続多孔質層の表面のうち浸入口表面を少なくとも除いた表面及びその近傍と、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍との少なくともいずれかに配置する。これにより、例えば、流動性の高い(粘性の低い)保水処理剤を連続多孔質層内に注入した場合でも、連続多孔質層の表面及びその近傍、連続多孔質層と他層との界面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマがゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に充填することができる。
【0092】
なお、ゲル化促進剤としては、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物を例示できる。このゲル化促進剤は、単独で配置しても良いし、水と混合した混合液を散布するようにしても良い。また、浸入前多価金属塩配置工程において、多価金属塩と共に配置しても良い。
【0093】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記浸入工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する浸入後ゲル化促進剤配置工程を含む保水性部材の製造方法、または、吸水済み保水性部材の製造方法とすると良い。
【0094】
本発明の製造方法では、保水処理剤を連続多孔質層に注入した後、連続多孔質層の表面及びその近傍に、ゲル化促進剤を配置する。これにより、連続多孔質層の表面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマがゲル化促進剤と接触してゲル化する(流動性を失う)ので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層の表面から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、吸水性ポリマを、適切且つ充分に、連続多孔質層の空隙部内に注入することができる。
【0095】
なお、ゲル化促進剤(粘度鉱物など)は、単独で配置しても良いし、水と混合した混合液を散布するようにしても良い。また、浸入前多価金属塩配置工程において、多価金属塩と共に配置しても良い。
【0096】
また、前記の保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記吸水性ポリマの粉末と、上記吸水性ポリマの粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、水と、起泡剤とを混合して泡立たせてなる、泡沫状保水処理剤、または、上記吸水性ポリマの粉末に上記吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水と、起泡剤とを混合して泡立たせてなる、泡沫状保水処理剤を、前記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する充填工程を含む保水性部材の製造方法とすると良い。
【0097】
本発明の製造方法では、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と水と起泡剤とを混合して(例えば、ホイップクリーム状に)泡立たせてなる泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。または、低速吸水性ポリマ粉末と水と起泡剤とを混合して泡立たせてなる泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。このように、吸水した吸水性ポリマを含む保水処理剤を、泡沫状にすることにより、水の使用を少量としながらも、連続多孔質層の空隙部内に、吸水した吸水性ポリマ含む保水処理剤を容易に充填することができる。従って、これを乾燥させることで、空隙部をなす連続多孔質層の骨格表面(骨格同士を接着する接着剤を有する場合はその表面も含む)に、吸水性ポリマを適切に付着させることができる。
【0098】
特に、本発明の製造方法では、泡沫状保水処理剤を用いているので、液状の保水処理剤を用いる場合に比べて、連続多孔質層の空隙部内に充填される水の量を低減することができる。これにより、吸水した吸水性ポリマを短時間で乾燥させることができるので、短時間で保水性部材の製造を完了させることができる。
なお、起泡剤としては、いずれの起泡剤を用いても良いが、例えば、AE−02(花王製、商品名)などのAE剤や、アラノンAEL(川研ファインケミカル製、商品名)や、ソフタゾリンCPB(川研ファインケミカル製、商品名)を用いることができる。
【0099】
また、泡沫状保水処理剤の泡立ちの程度は、連続多孔質層の空隙部の大きさや材質等により、適宜調整すれば良いが、圧入などにより泡沫状保水処理剤を充填する際の圧力や、連続多孔質層の骨格等との接触により、容易に泡沫が破裂しない程度の細かな泡立ちとするのが好ましい。例えば、ホイップクリーム状の泡立ちや、シェービングクリーム状の泡立ちなどが挙げられる。
【0100】
さらに、上記の保水性部材の製造方法であって、前記泡沫状保水処理剤は、粘性付与剤の混合により、その粘性を高めてなる保水性部材の製造方法とすると良い。
【0101】
本発明の製造方法では、粘性付与剤の混合により粘性を高めた泡沫状保水処理剤を用いて、これを連続多孔質層の空隙部内に充填する。このように、粘性を高めた泡沫状保水処理剤を用いることで、これを連続多孔質層の空隙部内に充填する際に、泡沫が破裂してしまうのを抑制することができる。これにより、泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に充填することができる。
なお、吸水性ポリマと粘性付与剤とを混合すると、両者が互いに付着して、泡沫状保水処理剤中において均一に分散させることができなくなる場合がある。これを防止すべく、吸水速度低下剤としてアルコール(グリセリンなど)を用い、これを吸水性ポリマ及び粘性付与剤と混合するのが好ましい。これにより、吸水性ポリマと粘性付与剤とを、泡沫状保水処理剤中において均一に分散させることができる。
【0102】
また、複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、上記空隙部を構成する上記骨格の表面に担持されてなる被担持物と、を有する担持部材の製造方法であって、上記被担持物と、液体と、起泡剤とを混合して泡立たせてなる、泡沫状処理剤を、上記連続多孔質層の上記空隙部内に充填する充填工程を備える担持部材の製造方法が好ましい。
【0103】
この製造方法では、被担持物と液体と起泡剤とを混合して、(例えば、ホイップクリーム状に)泡立たせた泡沫状の処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に充填する。このように、被担持物を含む処理剤を、泡沫状にすることにより、液体(水など)の使用を少量としながらも、連続多孔質層の空隙部内に、処理剤を容易に充填することができる。これにより、空隙部を構成する骨格表面に、被担持物を適切に付着させることができる。
しかも、この製造方法では、泡沫状処理剤を用いているので、液状の処理剤を用いる場合に比べて、連続多孔質層の空隙部内に充填される処理剤や液体の量を低減することができるので好ましい。特に、処理剤を充填した連続多孔質層保持体を乾燥する必要がある場合には、これを短時間で乾燥させることができるので、短時間で担持部材の製造を完了させることができる。
なお、被担持物としては、顔料や触媒(Pt等)などを例示できる。
【0104】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記保水処理剤または前記泡沫状保水処理剤は、吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が、前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材が混合されてなる保水性部材の製造方法とすると良い。
【0105】
本発明の製造方法では、保水処理剤として、吸水した吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が、連続多孔質層の外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材が混合された保水処理剤を用いる。これにより、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制して、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填された状態を、適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができるようになる。
本発明の製造方法は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を配置させることで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0106】
あるいは、前記の保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記骨格及び上記骨格同士を接着する接着剤の少なくとも一部を、前記吸水性ポリマが吸収可能な液体で湿らせた状態で、上記吸水性ポリマの粉末を、上記連続多孔質層の上記空隙部内に進入させる進入工程を含む保水性部材の製造方法としても良い。
【0107】
本発明の製造方法では、連続多孔質層の空隙部を構成する骨格及び骨格同士を接着する接着剤の少なくとも一部を、吸水性ポリマが吸収可能な液体(水など)で湿らせた状態で、未吸水の吸水性ポリマの粉末を、連続多孔質層の空隙部内に進入させる。これにより、連続多孔質層の空隙部内に進入した吸水性ポリマ粉末が、連続多孔質層の骨格に接触した状態で液体を吸収する。従って、その後、この吸水性ポリマを乾燥させることで、前述のように、吸水性ポリマを、骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に付着させることができる。特に、本発明の製造方法では、連続多孔質層の空隙部内に配置した吸水性ポリマには、少量の水しか吸水されないので、その後の乾燥を容易に行うことができる。このため、保水性部材を安価に製造できる。
本発明の製造方法は、特に、連続多孔質層が、進入口が大きく比較的空隙率の大きな繊維構造体である場合に、好適である。
【0108】
さらに、上記の保水性部材の製造方法であって、前記進入工程は、前記骨格及び上記骨格同士を接着する接着剤のうち少なくとも前記吸水性ポリマを進入させる進入口を構成する部分を、前記液体で湿っていない状態として、前記吸水性ポリマの粉末を上記空隙部内に進入させる保水性部材の製造方法とすると良い。
【0109】
本発明の製造方法では、骨格及び骨格同士を接着する接着剤のうち少なくとも吸水性ポリマを進入させる進入口を構成する部分を、液体で湿っていない状態として、吸水性ポリマの粉末を上記空隙部内に進入させる。これにより、進入口において吸水性ポリマが液体を吸収して膨潤し、進入口を塞いでしまう不具合を防止することができるので、適切に、吸水性ポリマを空隙部内に進入させることができる。
【0110】
さらに、上記の保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記進入工程の後、上記進入口を構成する上記空隙部内(すなわち、前記空隙部のうち、前記進入口を構成する部分がなす空隙部内)に配置された上記吸水性ポリマの粉末に、これが吸収可能な液体を接触させる液体接触工程を含む保水性部材の製造方法とすると良い。
【0111】
本発明の製造方法では、進入工程の後、液体で湿っていない進入口を構成する空隙部内(すなわち、空隙部のうち、骨格及び接着剤のうち吸水性ポリマを進入させる進入口を構成する部分がなす空隙部内)に配置した吸水性ポリマの粉末に、これが吸収可能な液体を接触させる。これにより、進入口においても、吸水性ポリマに液体を吸収させることができるので、その後、これを乾燥すれば、進入口を構成する空隙部内においても、適切に、吸水性ポリマを、骨格または骨格同士を接着する接着剤の表面に付着させることができる。
なお、液体接触工程は、例えば、連続多孔質層の外部から進入口に向けて、吸水性ポリマの粉末が吸収可能な液体を散布する工程を挙げることができる。また、液体接触工程では、進入工程の際に骨格を湿らせている液体と異なる液体を用いても良い。
【0112】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記進入工程は、上記吸水性ポリマの粉末と共に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末が前記連続多孔質層の外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材を、上記連続多孔質層の上記空隙部内に進入させる保水性部材の製造方法とするのが好ましい。
【0113】
吸水性ポリマの粉末と共に漏出抑制材を、連続多孔質層の空隙部内に進入させることで、適切に、吸水性ポリマの粉末及び漏出抑制材を、連続多孔質層の空隙部内に配置することができる。これにより、吸水性ポリマが吸水したとき、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができる。
【0114】
あるいは、前記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記配置工程は、前記吸水性ポリマ粉末と、吸水した上記吸水性ポリマが前記連続多孔質層の外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材と、水とを混合してなる保水処理剤を、上記連続多孔質層の前記空隙部内に配置する保水性部材の製造方法とすると良い。
【0115】
本発明の製造方法では、吸水性ポリマ粉末と漏出抑制材と水とを混合してなる保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に配置させる。これにより、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制して、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に配置された状態を、適切に維持することができる。さらには、充填後、乾燥した吸水性ポリマが再び吸水したときも、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、連続多孔質層の空隙部内に、適切に、水を蓄えることができるようになる。
本発明の製造方法は、特に、連続多孔質層の空隙部の孔径が、吸水性ポリマ粉末が吸水可能な水を100%吸水したときの大きさ(球状と仮定したときの径)よりも大きな場合に有効である。空隙部の孔径がこのように大きい場合でも、連続多孔質層の空隙部内に漏出抑制材を配置させることで、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制できるからである。
【0116】
さらに、上記の保水性構造体の製造方法であって、前記配置工程は、前記吸水性ポリマ粉末が吸水して、前記連続多孔質層の前記空隙部の孔径以上の大きさとなった前記保水処理剤を、上記空隙部内に押圧充填する充填工程を含む保水性構造体の製造方法とするのが好ましい。
この製造方法を用いれば、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部から外部に漏出し難くなるので、吸水した吸水性ポリマ粉末が連続多孔質層の空隙部に充填した状態を、より適切に維持することができる。
【0117】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記吸水性ポリマは、感温性を有する吸水性ポリマを含む保水性部材の製造方法とすると良い。
【0118】
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。従って、本発明の製造方法によれば、感温性を有する吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができるので、保水性部材(連続多孔質層)の温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出する性質を、保水性部材(連続多孔質層)に与えることができる。
【0119】
さらに、上記いずれかの保水性部材の製造方法であって、前記吸水性ポリマは、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを含む保水性部材の製造方法とすると良い。
【0120】
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。従って、本発明の製造方法によれば、変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む吸水性ポリマを、連続多孔質層の空隙部内に配置することができるので、長期間にわたり、高い保水性を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0121】
他の解決手段は、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、水、及び起泡剤を混合して泡立たせてなる泡沫状保水処理剤である。
【0122】
また、他の解決手段は、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末、水、及び起泡剤を混合して泡立たせてなる泡沫状保水処理剤である。
【0123】
本発明の保水処理剤は、泡沫状(例えば、ホイップクリーム状)である。このように、吸水した吸水性ポリマを含む保水処理剤を、泡沫状にすることにより、水の使用を少量としながらも、連続多孔質層の空隙部内に、吸水した吸水性ポリマ含む保水処理剤を容易に充填することができる。従って、これを乾燥させることで、空隙部をなす連続多孔質層の骨格表面(骨格同士を接着する接着剤を有する場合はその表面も含む)に、吸水性ポリマを適切に付着させることができる。
【0124】
特に、本発明の保水処理剤は、泡沫状であるので、液状の保水処理剤を用いる場合に比べて、連続多孔質層の空隙部内に充填される水の量を低減することができる。これにより、吸水した吸水性ポリマを短時間で乾燥させることができるので、短時間で保水性部材の製造を完了させることができる。
【0125】
さらに、上記いずれかの泡沫状保水処理剤であって、前記水及び前記起泡剤を撹拌により混合して泡立たせたものと、前記吸水性ポリマ粉末及び前記吸水速度低下剤を混合したもの、または、前記低速吸水性ポリマ粉末とを、撹拌により混合して泡立たせてなる泡沫状保水処理剤とすると良い。
【0126】
吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤、または、低速吸水性ポリマ粉末とは別に、起泡剤と水とを撹拌により混合して泡立たせることで、泡立ちが良好となり、その体積をより大きくすることができる。その後、これと、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤を混合したもの、または、低速吸水性ポリマ粉末とを、撹拌により混合すれば、泡立ちが良好で体積の大きな泡沫状保水処理剤を得ることができる。
本発明の泡沫状保水処理剤は、上述のようにして製造した泡沫状保水処理剤であるので、泡立ちが良好で体積の大きな泡沫状保水処理剤となる。従って、本発明の泡沫状保水処理を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、空隙部内に充填される水の量をより一層低減することができる。これにより、吸水した吸水性ポリマを短時間で乾燥させることができるので、短時間で保水性部材の製造を完了させることができる。
【0127】
さらに、上記いずれかの泡沫状保水処理剤であって、粘性付与剤の混合により粘性を高めてなる泡沫状保水処理剤とすると良い。
【0128】
本発明の泡沫状保水処理剤は、粘性付与剤の混合により粘性を高めているので、これを連続多孔質層の空隙部内に充填する際、泡沫が破裂してしまうのを抑制することができる。これにより、泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に充填することができる。
【0129】
さらに、上記いずれかの泡沫状保水処理剤であって、前記吸水速度低下剤は、親水性である泡沫状保水処理剤とするのが好ましい。
【0130】
疎水性の吸水速度低下剤を用いた泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層内に充填した場合は、疎水性の吸水速度低下剤が吸水性ポリマの表面に残存し、その影響で、吸水性ポリマの吸水能力が損なわれ、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができない虞がある。
これに対し、この泡沫状保水処理剤では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を用いている。このため、この泡沫状保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【0131】
ところで、吸水性ポリマ粉末は、親水性有機溶剤を吸収することで粘着性が生じ、親水性有機溶剤を吸収した吸水性ポリマ同士が互いに付着し、吸水性ポリマの粒が大きくなってしまうので、連続多孔質層の空隙部内に充填し難くなることがある。
従って、吸水速度低下剤として親水性有機溶剤を用いる場合は、吸水性ポリマ粉末の種類に応じて、その吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤を選択するのが好ましい。これにより、吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させることができると共に、泡沫状保水処理剤中で吸水性ポリマ粉末を適切に分散させることができる。
【0132】
具体的には、例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、多価のアルコール(エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等)を用いるのが好ましい。また、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマ(アクアリックCS−6など)を用いる場合は、一価のアルコール(エタノール、メタノール、プロパノール等)を用いるのが好ましい。
【0133】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、吸水性ポリマ粉末に吸収され易い親水性有機溶剤を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、吸収され易いエタノールを1重量部添加するようにしても良い。
【0134】
また、吸水速度低下剤として、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤に加えて、一価の金属塩を少量添加するようにしても良い。このようにすれば、吸水性ポリマ粉末に吸収され難い親水性有機溶剤のみを用いる場合に比べて、少量の吸水速度低下剤で、吸水性ポリマ粉末の吸水速度について同等の低減効果を得ることができる。例えば、吸水性ポリマ粉末として、感温性を有する吸水性ポリマ(サーモゲルなど)を用いる場合は、吸収され難いグリセリン10重量部に加えて、一価の金属塩を0.1重量部添加するようにしても良い。但し、一価の金属塩の影響で吸水性ポリマの吸水能力が低下する虞があるため、一価の金属塩の添加量は極少量とするのが好ましく、また、耐金属塩性に優れた吸水性ポリマ粉末(例えば、サーモゲル)を用いるのが好ましい。
【0135】
さらに、上記いずれかの泡沫状保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、感温性を有する泡沫状保水処理剤とするのが好ましい。
【0136】
感温性を有する吸水性ポリマは、自身の温度が所定の温度(感温点という)に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達すると吐水する(吸水していた水が脱離する)性質を有している。このため、この泡沫状保水処理剤を連続多孔質層保持体に充填することで、その温度が吸水性ポリマの感温点に達するまでは吸水した状態を保ち、感温点に達したときに吸水していた水を排出する性質を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
なお、感温性を有する吸水性ポリマ粉末として、例えば、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いることができる。
【0137】
さらに、上記いずれかの泡沫状保水処理剤であって、前記吸水性ポリマ粉末は、変性アクリル系架橋重合体を主成分として含む泡沫状保水処理剤とするのが好ましい。
【0138】
変性アクリル系架橋重合体は、保水性及び耐塩性が高く、また、吸水と乾燥との繰り返しによる吸収能力の低下が小さい。このため、この泡沫状保水処理剤を連続多孔質層保持体に充填することで、長期間にわたり、高い保水性を、連続多孔質層保持体に与えることができる。
【0139】
他の解決手段は、水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を混合してなるものと、起泡剤とを、互いに別個に備える保水剤である。
【0140】
また、他の解決手段は、水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末と、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、起泡剤とを、互いに別個に備える保水剤である。
【0141】
また、他の解決手段は、水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、起泡剤とを、互いに別個に備える保水剤である。
【0142】
本発明の保水剤は、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤を混合してなるものと、起泡剤とを、互いに別個に備えている。または、吸水性ポリマ粉末と吸水速度低下剤と起泡剤とを、互いに別個に備えている。または、低速吸水性ポリマ粉末と起泡剤とを、互いに別個に備えている。
このため、吸水性ポリマ粉末、吸水速度低下剤、または、低速吸水性ポリマ粉末とは別に、起泡剤と水とを撹拌により混合して泡立たせることができる。これにより、泡立ちが良好となり、その体積をより大きくすることができる。その後、これに、吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤を混合したもの、または、低速吸水性ポリマ粉末を、撹拌により混合すれば、泡立ちが良好で体積の大きな泡沫状保水処理剤を得ることができる。このような泡沫状保水処理を連続多孔質層の空隙部内に充填すれば、空隙部内に充填される水の量をより一層低減することができる。これにより、吸水した吸水性ポリマを短時間で乾燥させることができるので、短時間で保水性部材の製造を完了させることができる。
【0143】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、粘性付与剤を別個に備える保水剤とすると良い。
【0144】
本発明の保水剤は、粘性付与剤を、上述した保水剤の構成物とは別個に備えているので、これと吸水性ポリマ粉末及び吸水速度低下剤等とを撹拌により混合し、泡沫状保水処理剤を製造すれば、泡沫状保水処理剤の粘性を高めることができる。このように泡沫状保水処理剤の粘性を高めることで、これを連続多孔質層の空隙部内に充填する際に、泡沫が破裂してしまうのを抑制することができる。これにより、泡沫状保水処理剤を、連続多孔質層の空隙部内に、より適切に充填することができる。
【0145】
さらに、上記いずれかの保水剤であって、前記吸水速度低下剤は、親水性である保水剤とするのが好ましい。
【0146】
疎水性の吸水速度低下剤を混合してなる保水剤を用いた場合は、連続多孔質層内に充填した後も、疎水性の吸水速度低下剤が吸水性ポリマの表面に残存し、その影響で、吸水性ポリマの吸水能力が損なわれ、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができない。
これに対し、この保水剤では、吸水速度低下剤として親水性の吸水速度低下剤を用いている。このため、保水処理剤を連続多孔質層内に充填した後、時間の経過に伴って、雨水などと共に、親水性の吸水速度低下剤を連続多孔質層の外部に排出させることができるので、連続多孔質層保持体に良好な保水性を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0147】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
本実施例1の保水性部材100は、図1に示すように、直方体形状の連続多孔質層101からなる連続多孔質層保持体102を備えている。連続多孔質層101は、公知のウレタンフォームからなり、図2に示すように、複数の孔104が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部103を構成する骨格110を有している。この連続多孔質層101の空隙部103の内部には、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ120が配置されている。
【0148】
詳細には、本実施例1の保水性部材100では、図2に示すように、吸水性ポリマ120は、その一部若しくは全部が連続多孔質層101の骨格110内に取り込まれることなく、骨格110の表面110bに付着した状態で空隙部103内に配置されている。これにより、吸水性ポリマ120が吸水する際、骨格110により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ120の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。
【0149】
ところで、吸水性ポリマ120を、他の部材(接着剤など)を用いて、連続多孔質層101の骨格110の表面110bに付着させた場合には、他の部材(接着剤など)の影響により、吸水性ポリマ120の吸水能力を低下させてしまう虞がある。これに対し、本実施例1の保水性部材100では、液体(本実施例1では水)を吸収した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層101の骨格110に接触させた状態(図7参照)で乾燥させたことにより、吸水性ポリマ120を骨格の表面110bに付着させている。これにより、吸水性ポリマ120の吸水能力を低下させてしまうことがないので、十分な保水量を確保することができる。しかも、このようにして吸水性ポリマ120を骨格110に付着させることで、連続多孔質層101の内部から吸水性ポリマ120の脱落を防止することもできる。
【0150】
本実施例1の保水性部材100は、例えば、図3に示すように、人工芝160の土台部分165に配置して、保水性人工芝150を形成することができる。
ところで、吸水性ポリマ120は、感温性を有している(本実施例1では、感温点が35℃)。このため、保水性部材100を備える保水性人工芝150を、例えば、ビルの屋上に設けた場合、夏季において、晴天時に保水性部材100が加熱されて、吸水性ポリマ120の温度が35℃を超えて上昇すると、吸水性ポリマ120に貯えられていた水が排水され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、保水性人工芝150の温度を低下させることができる。一方、降雨時には、保水性部材100が冷却されて、吸水性ポリマ120の温度が35℃以下に低下するので、吸水性ポリマ120が吸水することにより水を貯えることができる。
【0151】
次に、本実施例1の保水性部材100の製造方法について説明する。
まず、吸水性ポリマ粉末120cとグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と水とを、1:30:126(重量比)の割合で混合して、保水処理剤40を製造した。具体的には、図4に示すように、吸水性ポリマ粉末120cとグリセリンとを、1:30(重量比)の割合で、容器25内で混合して、保水剤20を得た。なお、本実施例1では、吸水性ポリマ粉末120cとして、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。このサーモゲルは、保水性が高く(1gのサーモゲルが100〜150gの水を吸収する)、感温性を有する(本実施例1では、感温点が35℃)吸水性ポリマ粉末である。次いで、図5に示すように、この保水剤20と水Wとを、31:126(重量比)の割合で、容器45内で混合して、液状の(流動性を有する)保水処理剤40を得た。
【0152】
(配置工程)
次に、配置工程において、吸水した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層101の空隙部103内に配置した状態とした。
具体的には、まず、浸入工程において、連続多孔質層101の空隙部103内に、保水処理剤40を浸入させた。詳細には、図6に示すように、ウレタンフォームからなる連続多孔質層保持体102を、容器45内の保水処理剤40に浸漬した。次いで、ウレタンフォームからなる連続多孔質層10を圧縮した後、復元させた。これにより、保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に、効率良く且つ適切に浸入させることができた。特に、本実施例1の保水処理剤40は、吸水性ポリマ粉末120c、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、及び水のみを混合しているので、流動性に優れている。このため、保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に、容易に且つ短時間で浸入させることができた。
【0153】
ところで、吸水性ポリマ粉末120cは、その吸水速度が速いことから、単に、水と混合した場合には、水との混合と同時に、吸水性ポリマ粉末120cの吸水による膨潤が急速に進行してしまう。このため、吸水性ポリマ粉末120cと水とを混合した後、直ちに、連続多孔質層101の空隙部103内へ、吸水性ポリマ粉末120cと水との混合物の浸入を開始したとしても、途中で、吸水性ポリマ粉末120cが吸水により大きく膨潤して連続多孔質層101の孔104より大きくなってしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末120cを連続多孔質層101の空隙部103内に浸入させることができなくなる虞がある。また、連続多孔質層101の空隙部103への浸入開始前に、吸水性ポリマ粉末120cが連続多孔質層101の孔104より大きく膨潤してしまい、吸水した吸水性ポリマ粉末120cを浸入させることができなくなる虞がある。
【0154】
これに対し、本実施例1の保水処理剤40は、吸水性ポリマ粉末120cをグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と混合して、吸水性ポリマ粉末120cの吸水速度を低下させた後、水Wと混合してなる。これにより、吸水性ポリマ粉末120cの吸水による膨潤速度を低下させることができるので、本実施例1の保水処理剤40について、連続多孔質層101の空隙部103内に浸入可能な状態(吸水した吸水性ポリマ粉末120cの大きさが連続多孔質層101の孔104より小さい状態)を長く保持することができた。このため、本実施例1では、保水処理剤40を、連続多孔質層101の空隙部103内に、適切に浸入させることができた。
【0155】
その後、吸水工程に進み、所定時間、連続多孔質層保持体102を保水処理剤40に浸漬した状態で放置した。これにより、吸水性ポリマ粉末120cによる吸水が進行するので、図7に示すように、吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ120bを、連続多孔質層101の空隙部103内に配置した状態とすることができた。なお、吸水性ポリマ120が吸水によりゲル化したか否かは、連続多孔質層保持体102の外部に位置する保水処理剤40を観察することで確認できる。
【0156】
(付着工程)
次いで、吸水した吸水性ポリマ120bを空隙部103内に備える連続多孔質層保持体102を、容器45内から取り出した。その後、これを乾燥させることで、空隙部103内に配置されていた吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ120bを乾燥させた。このとき、図7に示すように、吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ120bを、空隙部103内において、骨格110の表面110bに接触させた状態で乾燥させることができる。これにより、図2に示すように、乾燥した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層101の空隙部103内で、骨格110の表面110bに付着させることができる。このようにして、本実施例1の保水性部材100が完成する。
【0157】
このような製造方法によれば、従来(特許文献1,2参照)の製造方法と異なり、吸水性ポリマの一部または全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることがなく、また、骨格同士を接着する接着剤で吸水性ポリマが骨格に接着されることもない。従って、吸水性ポリマ120が吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ120の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本発明の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材を得ることができる。
【0158】
なお、保水処理剤40に浸漬した連続多孔質層保持体102を容器45内から取り出した後、連続多孔質層保持体102の表面に、ゲル化促進剤(例えば、アタパルジャイトなどの粘度鉱物)を塗布すると良い。これにより、連続多孔質層保持体102(連続多孔質層101)の表面及びその近傍において、吸水した吸水性ポリマ120がゲル化促進剤と接触して、速やかにゲル化する(流動性を失う)ので、連続多孔質層101内に位置する吸水性ポリマ120が、連続多孔質層101から外部に漏出するのを抑制できる。
【0159】
また、保水処理剤40に含まれていたグリセリンは、親水性であるため、時間の経過に伴って、雨水などと共に連続多孔質層101の外部に排出される。このため、グリセリンの影響で、吸水性ポリマ120の高い吸水能力が損なわれる虞がなく、連続多孔質層101に良好な保水性を与えることができなくなる虞がない。しかも、グリセリンは、自然環境を汚染することがないので好ましい。
以上より、本実施例1の製造方法によれば、十分な保水量を確保できる保水性部材100を製造できる。
【0160】
(実施例2)
本実施例2の保水性部材200は、実施例1の保水性部材100と比較して、連続多孔質層(連続多孔質層保持体)が異なる。具体的には、本実施例2の保水性部材200は、図8に示すように、繊維構造体からなる連続多孔質層201(連続多孔質層保持体202)を備えている。連続多孔質層201は、ポリプロピレン繊維を絡み合わせて、ヘチマの乾燥繊維のような立体網目形状に成型された繊維構造体である。なお、本実施例2では、連続多孔質層201として、ヘチマロン(新光ナイロン株式会社製、商品名)を用いている。
【0161】
この連続多孔質層201の骨格210(ポリプロピレン繊維)は、図9に示すように、複数の孔204が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部203を構成している。この空隙部203の内部には、実施例1と同様に、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ120が配置されている。詳細には、吸水性ポリマ120は、その一部若しくは全部が連続多孔質層201の骨格210内に取り込まれることなく、骨格210の表面210bに付着した状態で空隙部203内に配置されている。これにより、吸水性ポリマ120が吸水する際、骨格210により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ120の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。
【0162】
さらに、本実施例2の保水性部材200では、水を吸収した吸水性ポリマ120bを、連続多孔質層201の骨格210に接触させた状態(図10参照)で乾燥させたことにより、吸水性ポリマ120を骨格210の表面210bに付着させている。このように付着うることで、吸水性ポリマ120の吸水能力を低下させてしまうことがないので、十分な保水量を確保することができる。しかも、連続多孔質層201の内部から吸水性ポリマ120の脱落を防止することもできる。
【0163】
次に、本実施例2の保水性部材200の製造方法について説明する。
(配置工程)
まず、配置工程において、吸水した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層201の空隙部203内に配置した状態とした。
具体的には、まず、浸入工程において、連続多孔質層201の空隙部203内に、保水処理剤40を浸入させた。詳細には、図6に示すように、繊維構造体からなる連続多孔質層保持体202を、容器45内の保水処理剤40に浸漬した。これにより、保水処理剤40を、連続多孔質層201の空隙部203内に浸入させることができた。
【0164】
その後、吸水工程に進み、所定時間、連続多孔質層保持体202を保水処理剤40に浸漬した状態で放置した。これにより、図10に示すように、吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ120bを、連続多孔質層201の空隙部203内に配置した状態とした。なお、吸水性ポリマ120が吸水によりゲル化したか否かは、連続多孔質層保持体202の外部に位置する保水処理剤40を観察することで確認できる。
【0165】
(付着工程)
次いで、実施例1の付着工程と同様にして、吸水性ポリマ120を、連続多孔質層201の空隙部203内で、骨格210の表面210bに付着させた。
具体的には、まず、吸水した吸水性ポリマ120bを空隙部203内に備える連続多孔質層保持体202(図10参照)を、容器45内から取り出した。その後、これを乾燥させることで、空隙部203内に配置されていた吸水した吸水性ポリマ120bを乾燥させた。このとき、図10に示すように、吸水した吸水性ポリマ120bを、空隙部203内において、骨格210の表面210bに接触させた状態で乾燥させることができる。これにより、図9に示すように、乾燥した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層201の空隙部203内で、骨格210の表面210bに付着させることができる。このようにして、本実施例2の保水性部材200が完成する。
【0166】
本実施例2の製造方法でも、吸水性ポリマの一部または全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることがなく、また、骨格同士を接着する接着剤で吸水性ポリマが骨格に接着されることもない。従って、吸水性ポリマ120が吸水する際、骨格210等により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ120の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本実施例2の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材200を得ることができる。
【0167】
(変形例1)
本変形例1では、実施例2と異なる保水処理剤を用いて、保水性部材200を製造した。
具体的には、まず、実施例2と異なり、吸水性ポリマ粉末、グリセリン、粘性付与剤、及び水酸化カルシウム(多価金属塩)を別個に備える(混合していない)保水剤を用意した。
次いで、実施例2と異なり、浸入前多価金属塩配置工程において、保水剤に含まれている水酸化カルシウムの水溶液(多価金属塩の水溶液)を、連続多孔質層201の浸入口表面201bを除いた表面に塗布した。これにより、連続多孔質層201の浸入口表面201bを除いた表面(図8において、側面及び底面)及びその近傍に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置することができる。
【0168】
次に、実施例2と異なり、保水剤に含まれている吸水性ポリマ粉末、グリセリン(吸水速度低下剤に相当する)、及び粘性付与剤(吸水速度低下剤及びゲル化剤に相当する)と、水とを混合して、保水処理剤を製造した。具体的には、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水と粘性付与剤とを、1:1:149:0.3(重量比)の割合で混合した。
なお、本変形例1でも、実施例2と同様に、吸水性ポリマ粉末として、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。また、粘性付与剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを主成分とするCMCダイセル(ダイセル化学工業製、商標名)を用いている。
【0169】
引き続き、浸入工程に進み、この保水処理剤を、連続多孔質層201の浸入口表面201bから、連続多孔質層201の空隙部203内に注入した。
ところで、本変形例1では、前述のように、浸入工程に先立って、充填前多価金属塩配置工程において、連続多孔質層201の浸入口表面201bを除いた表面(図8において、側面及び底面)及びその近傍に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置している。このため、浸入工程において、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アニオン性の水溶性高分子)を含む保水処理剤を連続多孔質層201の空隙部203内に注入すると、連続多孔質層201の浸入口表面201bを除いた表面及びその近傍において、保水処理剤が水酸化カルシウムと反応してゲル化する(流動性を失う)。これは、アニオン性の水溶性高分子が、多価金属塩との反応により架橋し、ゲルとなる性質を有しているからである。これにより、吸水性ポリマ120が、連続多孔質層201から外部に漏出するのを抑制することができる。
【0170】
次に、充填後多価金属塩配置工程において、水酸化カルシウム水溶液を、連続多孔質層201の浸入口表面201bに散布した。これにより、連続多孔質層201の浸入口表面201b及びその近傍に、水酸化カルシウム(多価金属塩)を配置することができる。このため、連続多孔質層201の浸入口表面201b及びその近傍において、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む保水処理剤が、水酸化カルシウムと反応してゲル化する(流動性を失う)。これにより、吸水性ポリマ120が、連続多孔質層201の浸入口表面201bから外部に漏出するのを抑制することができる。
このようにして、図10に示すように、吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ120bを、連続多孔質層201の空隙部203内に配置した状態とした。
【0171】
その後、付着工程に進み、実施例2と同様に、吸水した吸水性ポリマ120bを空隙部203内に配置した連続多孔質層201を、乾燥させた。これにより、図9に示すように、乾燥した吸水性ポリマ120を、連続多孔質層201の空隙部203内で、骨格210の表面210bに付着させることができる。本変形例1では、このようにして、保水性部材200を製造した。
【0172】
なお、保水処理剤に含まれていたグリセリン及びCMCダイセル(粘性付与剤)は、親水性であるため、時間の経過に伴って、水などと共に連続多孔質層の外部に排出される。このため、グリセリン及びCMCダイセルの影響で、吸水性ポリマ120の高い吸水能力が損なわれる虞がなく、連続多孔質層201に良好な保水性を与えることができなくなる虞はない。
【0173】
(実施例3)
本実施例3の保水性部材300は、実施例1の保水性部材100と比較して、連続多孔質層(連続多孔質層保持体)が異なる。具体的には、本実施例3の保水性部材300は、図11に示すように、繊維構造体からなる連続多孔質層301(連続多孔質層保持体302)を備えている。連続多孔質層301は、接着剤を用いて、椰子の実の繊維を立体網目形状に成形加工してなる繊維構造体である。なお、本実施例3では、連続多孔質層301として、吸出し防止材 やし繊維(東洋クッション株式会社製、商品名)を用いている。
【0174】
この連続多孔質層301の骨格310(椰子の実繊維)は、図12に示すように、複数の孔304が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部303を構成している。この空隙部303の内部には、実施例1と同様に、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ320が配置されている。詳細には、吸水性ポリマ320は、その一部若しくは全部が骨格310同士を接着する接着剤315で骨格310に接着されることなく、骨格310の表面310bに付着した状態で空隙部303内に配置されている。これにより、吸水性ポリマ320が吸水する際、接着剤315により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ320の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。
【0175】
さらに、本実施例3の保水性部材300では、液体を吸収した吸水性ポリマ320bを、連続多孔質層301の骨格310または接着剤315に接触させた状態(図17参照)で乾燥させたことにより、吸水性ポリマ320を骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に付着させている。このように付着することで、吸水性ポリマ320の吸水能力を低下させてしまうことがないので、十分な保水量を確保することができる。しかも、連続多孔質層301の内部から吸水性ポリマ320の脱落を防止することもできる。
【0176】
本実施例3の保水性部材300は、例えば、図13に示すように、プランタ360の底部365に配置して、保水性プランタ350を形成することができる。
ところで、吸水性ポリマ320は、感温性を有している(本実施例3では、感温点が30℃)。このため、保水性部材300を備える保水性プランタ350を、例えば、マンションのベランダに配置した場合、夏季において、晴天時に保水性部材300が加熱されて、吸水性ポリマ320の温度が30℃を超えて上昇すると、吸水性ポリマ320に貯えられていた水が排水され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、保水性プランタ350及び周囲の温度を低下させることができる。また、このとき、吸水性ポリマ320から排出された水の一部を、保水性プランタ350で栽培している植物に与えることもできる。一方、水撒きしたときは、保水性部材300が冷却されて、吸水性ポリマ320の温度が30℃以下に低下するので、吸水性ポリマ320が吸水することにより水を貯えることができる。
【0177】
次に、本実施例3の保水性部材300の製造方法について説明する。
(配置工程)
まず、配置工程において、吸水した吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内に配置した状態とした。
具体的には、まず、図14に示すように、連続多孔質層301のうち、後の進入工程において吸水性ポリマ粉末320cを進入させる進入口303bを構成する進入部301bを除いた部位を、水Wに浸漬する。その後、この連続多孔質層301(連続多孔質層保持体302)を、水W中から取り出した。これにより、連続多孔質層301のうち進入部301bを除いた部位を、水Wで湿らせることができる。
【0178】
次いで、進入工程に進み、図15に示すように、連続多孔質層301の進入口303bの上方から吸水性ポリマ粉末320cを散布した。これにより、進入口303bを通じて、吸水性ポリマ粉末320cを、連続多孔質層301の空隙部303内に進入させることができた。特に、本実施例3では、連続多孔質層301の進入部301b(骨格310及び骨格310同士を接着する接着剤315のうち進入口303bを構成する部分)が、水で湿っていない状態で、進入口303bの上方から吸水性ポリマ粉末320cを散布した。これにより、進入口303bにおいて吸水性ポリマ粉末320cが水を吸収して膨潤し、進入口303bを塞いでしまう不具合を防止して、適切に、吸水性ポリマ粉末320cを空隙部303内に進入させることができた。
なお、本実施例3でも、実施例1と同様に、吸水性ポリマ粉末320cとして、粒径0.3mm以下のサーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いている。
【0179】
次に、吸水工程に進み、図16に示すように、連続多孔質層301の進入部301bに、エタノールETを散布した後、所定時間、連続多孔質層301(連続多孔質層保持体302)を放置した。これにより、空隙部303内に進入した吸水性ポリマ粉末320cのうち、連続多孔質層301の進入部301bを通過して水で湿った骨格310または接着剤315に接触して留まったものは、この状態で水を吸収していった。一方、空隙部303内に進入した吸水性ポリマ粉末320cのうち、連続多孔質層301の進入部301bに留まっていたものは、後に散布されたエタノールETを、速やかに吸収した。これにより、図17に示すように、液体を吸収した吸水性ポリマ320bを、連続多孔質層301の空隙部303内に配置した状態とすることができた。
【0180】
なお、上述のように、本実施例3では、連続多孔質層301の進入部301bに、エタノールETを散布した(図16参照)。しかしながら、連続多孔質層301の進入部301bに散布する液体は、エタノールに限らず、吸水性ポリマ粉末320cが吸収可能な液体(例えば、水など)であれば、いずれの液体でも良い。吸水性ポリマ粉末320cが吸収可能な液体を散布することで、連続多孔質層301の進入部301bに留まっている吸水性ポリマ粉末320cに、当該液体を吸収させることができる。これにより、液体を吸収した吸水性ポリマ320bを、連続多孔質層301の空隙部303内に配置した状態とすることができる(図17参照)。
【0181】
(付着工程)
次いで、吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内で、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に付着させた。
具体的には、液体を吸収した吸水性ポリマ320bを空隙部303内に備える連続多孔質層保持体302(図17参照)を乾燥させた。このとき、液体を吸収した吸水性ポリマ320bを、空隙部303内において、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に接触させた状態で乾燥させることができる。これにより、図12に示すように、乾燥した吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内で、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に付着させることができる。このようにして、本実施例3の保水性部材300が完成する。
【0182】
本実施例3の製造方法でも、吸水性ポリマ320の一部または全部が連続多孔質層301の骨格310内に取り込まれることがなく、また、骨格310同士を接着する接着剤315で吸水性ポリマ320が骨格310に接着されることもない。従って、吸水性ポリマ320が吸水する際、骨格310または接着剤315により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ320の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本実施例3の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材300を得ることができる。
【0183】
(実施例4)
次に、実施例3の製造方法とは異なる、保水性部材300の他の製造方法について説明する。なお、本実施例4でも、実施例3と同様に、連続多孔質層301として、吸出し防止材 やし繊維(東洋クッション株式会社製、商品名)を用いている。
まず、吸水性ポリマ粉末320cとグリセリンと起泡剤と粘性付与剤とを別個に備える保水剤を用意した。なお、本実施例4では、起泡剤として、アラノンAEL(川研ファインケミカル製、商品名)を用いている。また、粘性付与剤として、CMCダイセル(ダイセル化学工業製、商標名)を用いている。
【0184】
次に、吸水性ポリマ粉末320cとグリセリンと起泡剤と粘性付与剤と水とを、5:9:0.5:2:400(重量比)の割合で混合して、泡沫状保水処理剤440を製造した。具体的には、図18に示すように、起泡剤と水とを、0.5:400(重量比)の割合で、容器445内に投入し、攪拌機450により撹拌して、泡沫状とした。また、図19に示すように、吸水性ポリマ粉末320cとグリセリンと粘性付与剤とを、5:9:2(重量比)の割合で、容器425内で混合して、保水剤420を得た。次いで、図20に示すように、この保水剤420を、容器445内に投入し、攪拌機450により撹拌して、ホイップクリーム状に泡立った泡沫状保水処理剤440を得た。
【0185】
なお、本実施例4では、吸水性ポリマ粉末320c、グリセリン、及び粘性付与剤とは別に、起泡剤と水とを撹拌により混合している。これにより、泡立ちが良好となり、泡沫状保水処理剤440の体積を、混合した水等の体積の約3倍まで大きくすることができた。
【0186】
(配置工程)
次に、配置工程において、吸水した吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内に配置した状態とした。なお、連続多孔質層301は、縦30cm×横30cm×厚み1cmの外形寸法を有している(図11参照)。
具体的には、まず、充填工程において、連続多孔質層301の空隙部303内に、保水処理剤440を充填した。詳細には、まず、図21に示すように、縦30cm×横30cm×高さ3cmの内側寸法を有し、4つの側壁板462及び金網製の底部463からなる容器461と、縦30cm×横30cmの押圧板465とを備える充填器具460を用意した。
【0187】
次に、図22に示すように、容器461内に連続多孔質層301を配置し、さらに、容器461内において、連続多孔質層301の表面301c上の全体にわたって、泡沫状保水処理剤440を、その厚みを約1cmとして配置した。次いで、押圧板465を、容器461の上方から容器461内に進入させて、泡沫状保水処理剤440を下方に押圧していった。これにより、連続多孔質層301の空隙部303内の空気を、容器461の底部463の孔463bから外部に排出しつつ、泡沫状保水処理剤440を、連続多孔質層301の空隙部303内に進入させることができる。その後、押圧板465が連続多孔質層301の表面301cに接触するまで、押圧板465を下方に移動させると、泡沫状保水処理剤440の一部が、容器461の底部463の孔463bから漏出した。これにより、連続多孔質層301の空隙部303内の全体にわたり、保水処理剤440が充填されたことを確認できた。
【0188】
特に、本実施例4では、粘性付与剤の混合により粘性を高めた泡沫状保水処理剤440を用いているので、泡沫状保水処理剤440を連続多孔質層301の空隙部303内に充填する際の圧力や、連続多孔質層301の骨格310等との接触により、泡沫が破裂してしまうのを抑制することができた。これにより、泡沫状保水処理剤440を、連続多孔質層301の空隙部303内の全体にわたり、適切に充填することができた。
【0189】
このように、本実施例4では、吸水した吸水性ポリマを含む保水処理剤を、泡沫状にすることにより、水の使用を少量としながらも、連続多孔質層の空隙部内に、吸水した吸水性ポリマ320含む保水処理剤440を、連続多孔質層301の空隙部303内の全体にわたり、容易に充填することができた。
さらには、連続多孔質層301の空隙部303内の全体にわたり、保水処理剤440を充填することで、図23に示すように、空隙部303をなす連続多孔質層301の骨格310(椰子の実繊維)の表面310bの全体にわたり、吸水した吸水性ポリマ320を含む泡沫状の保水処理剤440を接触させることができた。
【0190】
(付着工程)
次いで、吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内で、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に付着させた。
具体的には、吸水した吸水性ポリマ320を空隙部303内に備える連続多孔質層保持体302を、熱風により乾燥させた。このとき、吸水した吸水性ポリマ320を、空隙部303内において、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に接触させた状態で乾燥させることができる(図23参照)。これにより、図12に示すように、乾燥した吸水性ポリマ320を、連続多孔質層301の空隙部303内で、骨格310の表面310bまたは接着剤315の表面に付着させることができる。このようにして、実施例3と同様の保水性部材300が完成する。
【0191】
特に、本実施例4では、泡沫状の保水処理剤440を用いているので、液状の保水処理剤を用いる場合に比べて、連続多孔質層301の空隙部303内に充填される水の量を低減することができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ320を短時間で乾燥させることができるので、短時間で保水性部材300の製造を完了させることができた。
【0192】
(変形例2)
実施例4では、吸水性ポリマ粉末320cとグリセリンと起泡剤と粘性付与剤と水とを混合して、泡沫状保水処理剤440を製造した。
これに対し、本変形例2では、次のようにして泡沫状保水処理剤を製造した。まず、吸水性ポリマ粉末320c(1重量部)に、エタノール(2重量部)を吸収させた。次いで、これを乾燥させた後、粉砕することで、低速吸水性ポリマ粉末を得た。その後、実施例4と同様に、起泡剤と水とを撹拌して泡沫状としたものに、この低速吸水性ポリマ粉末と粘性付与剤とを撹拌により混合して、ホイップクリーム状に泡立った泡沫状保水処理剤を得た。
本変形例2の泡沫状保水処理剤を、実施例4と同様に、連続多孔質層301の空隙部303内に充填した後、乾燥させることで、保水性部材300(図11,図12参照)を得ることができた。
【0193】
(実施例5)
本実施例5の保水性部材500は、図24に示すように、略板状の連続多孔質層501からなる連続多孔質層保持体502を備えている。連続多孔質層501は、ポリプロピレン製の線材を三次元網目構造に成形した繊維構造体であり、複数の孔504が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部503を構成する骨格510(ポリプロピレン製の線材)を有している。この連続多孔質層501の空隙部503の内部には、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ520が配置されている(図25参照)。
【0194】
詳細には、本実施例5の保水性部材500では、図24のD部拡大図である図25に示すように、吸水性ポリマ520は、その一部若しくは全部が連続多孔質層501の骨格510内に取り込まれることなく、空隙部503内に配置されている。これにより、吸水性ポリマ520が吸水する際、骨格510により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ520の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。しかも、吸水性ポリマ520を、連続多孔質層501の空隙部503の全体にわたって配置されたロックウール525(漏出抑制剤に相当する)の表面に付着させているので、連続多孔質層501の内部から吸水性ポリマ520が脱落するのを防止することもできる。
【0195】
特に、本実施例5の保水性部材500では、漏出抑制剤としてロックウール525(繊維)を用いている。このため、長期にわたって繰り返し、吸水した吸水性ポリマ520bが連続多孔質層501から外部に漏出するのを抑制できる。従って、連続多孔質層501の空隙部503内に、より適切に、水を蓄えることができる。
なお、本実施例5では、吸水性ポリマ520として、感温性を有する吸水性ポリマを用いている。詳細には、感温点が異なる(具体的には、感温点が20℃、25℃、30℃、35℃)4種類の吸水性ポリマを、1:2:4:3(重量比)の割合で混合した吸水性ポリマを用いている。
【0196】
本実施例5の保水性部材500には、例えば、図26に示すように、芝生Tを植えることができる。この芝生Tは、保水性部材500の空隙部503内に位置する吸水性ポリマ520に蓄えられている水を吸収することで成長する。この芝生Tを植えた保水性部材500は、例えば、図27に示すように、建築物BUの屋上S1やバルコニーS2,S3に配置することができる。
【0197】
ところで、保水性部材500の空隙部503内に位置する吸水性ポリマ520は、感温性を有している(感温点が20℃、25℃、30℃、35℃の4種類)。このため、この建築物BUでは、例えば、夏季等の晴天時に、保水性部材500が加熱されて、吸水性ポリマ520の温度が20℃を超えて上昇すると、吸水性ポリマ520の全体に貯えられていた水の少なくとも一部が排出され、蒸発することとなる。このときに要する水の気化熱により、建築物BUの温度を低下させることができる。しかも、この保水性部材500には芝生Tが植えられているので、芝生Tから蒸散される水の気化熱によっても建築物BUを冷却することができると共に、大気の浄化もできるので好ましい。また、このとき、吸水性ポリマ520から排出された水の一部を、芝生Tに与えることもできる。一方、降雨時には、雨水により保水性部材500が冷却されて、吸水性ポリマ520の温度が35℃以下に低下するので、吸水性ポリマ520が雨水を吸収することにより水を貯えることができる。
【0198】
次に、本実施例5の保水性部材500の製造方法について説明する。
まず、吸水性ポリマ520の粉末と水Wとロックウール525を、2:200:4.5(重量比)の割合で混合して、保水処理剤540を製造した。具体的には、まず、吸水性ポリマ520の粉末とロックウール525とを、2:4.5(重量比)の割合で混合して混合物を得た。その後、図24に示すように、6.5重量部の混合物に、200重量部の水Wを加え、攪拌機450により撹拌混合して、保水処理剤540を得た。
【0199】
ところで、本実施例5では、ロックウール525(繊維)を混合して保水処理剤540を製造している。ロックウール525(繊維)を混合することで、吸水性ポリマ520がままこ状態になる(保水処理剤540中で、吸水性ポリマ520の粉末同士が付着しあって塊状になる)のを抑制することができる。従って、保水処理剤540を連続多孔質層501の空隙部503内に充填し易くなる。さらに、この保水処理剤540を連続多孔質層501の空隙部503内に充填すれば、吸水性ポリマ520を、空隙部503内に分散させて(ままこ状態にすることなく)配置させることができる。これにより、乾燥後、吸水性ポリマ520が再び吸水する際に、迅速に吸水することができる。
【0200】
なお、本実施例5では、吸水性ポリマ520の粉末として、サーモゲルB01(株式会社興人製、商標名)を用いている。
また、ロックウール525として、粒状綿(日本ロックウール社製、商品名)を用いている。
また、連続多孔質層501(連続多孔質層保持体502)として、もやいドレーン(吉原化工製、商品名)を用いている。
【0201】
(配置工程)
次に、配置工程において、吸水した吸水性ポリマ520bを、連続多孔質層501の空隙部503内に配置した状態とした。具体的には、保水性部材540を連続多孔質層501の空隙部503内に配置した。
【0202】
ところで、本実施例5では、実施例1と異なり、保水処理剤540には、吸水速度低下剤(グリセリンなど)が含まれていない。このため、保水処理剤540の製造過程において吸水性ポリマ520の粉末と水とを接触させた時点から、吸水性ポリマ520への吸水が速やかに開始され、その後も進行し続ける。従って、時間が経過するにしたがって吸水性ポリマ520が膨潤してゆくので、保水性処理剤540の流動性が大きく低下してゆく。このため、保水性部材540を、連続多孔質層501の空隙部503内に流し入れることが困難となる。そこで、本実施例5では、図29に矢印で示すように、連続多孔質層501の表面に配置した保水性部材540を押圧して、連続多孔質層501の空隙部503内に充填した。
【0203】
さらに、本実施例5では、ロックウール525(漏出抑制材である繊維)を混合した保水処理剤を用いている。このため、この保水処理剤540を連続多孔質層501の空隙部503内に充填したときに、吸水した吸水性ポリマ520bが連続多孔質層501から外部に漏出するのを抑制することができる。従って、図30に示すように、吸水した吸水性ポリマ520bが連続多孔質層501の空隙部503内に充填された状態を、適切に維持することができる。
【0204】
(付着工程)
次いで、吸水した吸水性ポリマ520bを連続多孔質層501の空隙部503内に配置した状態で、これを乾燥させた。このとき、図30に示すように、吸水した(ゲル状の)吸水性ポリマ520bを、空隙部503内において、ロックウール525の表面に接触させた状態で乾燥させることができる。これにより、図25に示すように、乾燥した吸水性ポリマ520を、連続多孔質層501の空隙部503内で、ロックウール525の表面に付着させることができる。このようにして、本実施例5の保水性部材500が完成する。
【0205】
このような製造方法によれば、従来(特許文献1,2参照)の製造方法と異なり、吸水性ポリマの一部または全部が連続多孔質層の骨格内に取り込まれることがなく、また、骨格同士を接着する接着剤で吸水性ポリマが骨格に接着されることもない。従って、吸水性ポリマ520が吸水する際、骨格または接着剤により、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマ520の持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。従って、本実施例5の製造方法によれば、十分な保水量を確保することが可能な保水性部材500を得ることができる。
【0206】
以上において、本発明を実施例1〜5及び変形例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0207】
例えば、実施例等では、吸水性ポリマとして、サーモゲル(株式会社興人製、商標名)を用いたが、アクアリックCS−6(株式会社日本触媒製、商品名)等の変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを用いても良い。
変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマは、耐塩性に優れている。このため、この吸水性ポリマを連続多孔質層101〜301の空隙部103〜303内に配置した保水性部材の表面に、塩を散布すれば、保水性部材の表面に位置する吸水性ポリマに、塩水を保持させることができる。これにより、保水性部材の表面の凝固点を降下させ、表面の凍結防止を図ることもできる。
なお、アクアリックCS−6等の変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを用いて、実施例3の製造方法により保水性部材を製造する場合は、吸水工程において、エタノールETに代えて水を散布するのが好ましい。変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマは、エタノールを吸収し難いからである。
【0208】
また、実施例1,2では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とを、1:30:126(重量比)の割合で混合した保水処理剤40を用いたが、保水処理剤を構成する成分の混合割合は、これに限定されるものではない。例えば、グリセリンの割合を低減すれば、保水処理剤の粘度が低下するので、浸入工程において、保水処理剤が連続多孔質層101,201の空隙部103,203内へ速やかに浸入する。これにより、浸入工程における作業時間を短縮することができる。このように、グリセリンの混合割合を調整することで、浸入工程における作業時間を調整することができる。
【0209】
また、実施例1,2では、保水処理剤として、吸水性ポリマ粉末とグリセリン(吸水速度低下剤に相当する)と水とを混合した保水処理剤40を用いたが、さらに、ゲル化促進剤(例えば、アタパルジャイト等の粘度鉱物)を混合した保水処理剤を用いても良い。ゲル化促進剤を混合した保水処理剤を連続多孔質層101,201の空隙部103,203内に充填すれば、連続多孔質層101,201の空隙部103,203内において、吸水した吸水性ポリマ粉末を、速やかにゲル化させることができる。これにより、吸水した吸水性ポリマ粉末を、適切に、連続多孔質層101,201を構成する骨材110,210に保持させることができる。
【0210】
また、実施例1,2では、吸水性ポリマ粉末とグリセリンと水とを混合した保水処理剤40を用いたが、さらに界面活性剤を加えて、保水処理剤としても良い。界面活性剤を加えることで、保水処理剤の流動性が増すので、保水処理剤を、連続多孔質層101,301の空隙部103,303内に浸入させ易くなるので好ましい。さらには、保水処理剤の流動性が長時間持続するので、保水処理剤を、連続多孔質層101,301の空隙部103,303内に浸入させることが可能な時間が長くなるので好ましい。
【0211】
さらに、界面活性剤を加えた保水処理剤を泡立たせることで、保水処理剤の体積を増加(密度を低下)させることができる。これにより、連続多孔質層101,301の空隙部103,303内に浸入する保水処理剤に占める水の割合を低減することができるので、その後の付着工程における乾燥時間を短縮することができる。例えば、実施例1,2の保水処理剤40に対し、水の混合量を半分にして泡立たせ、体積を同等にした保水処理剤を用いれば、付着工程における乾燥時間を約半分に短縮することができる。
なお、界面活性剤としては、例えば、AE−02(花王製、商品名)などのAE剤を用いることができる。また、界面活性剤の添加量は、例えば、1重量部の吸水性ポリマ粉末に対し、0.2重量部の界面活性剤を加えるようにすると良い。
【0212】
また、実施例5では、保水性部材500を製造するにあたり、吸水性ポリマ520の粉末と水Wとロックウール525を混合した保水処理剤を用いたが、実施例1と同様に、グリセリン(吸水速度低下剤)を加えた保水処理剤を用いても良い。グリセリン(吸水速度低下剤)を加えることで、吸水性ポリマ520の吸水を抑制すると共に、吸水性ポリマがままこ状態になるのをより一層抑制することができるので、保水処理剤を連続多孔質層501の空隙部503内に充填し易くなる。
【0213】
また、実施例5では、吸水性ポリマ520の粉末と水Wとロックウール525を混合した保水処理剤を用いたが、さらに、ベントナイト(粘土鉱物)を加えた保水処理剤を用いても良い。ベントナイトを加えることで、吸収可能な水を100%吸水した吸水性ポリマについてもゲル化させて、流動性を低下させることができる。さらには、吸水した吸水性ポリマの表面の粘着性が高まるので、吸水した吸水性ポリマが連続多孔質層501の骨格510等に付着し易くなる。これにより、吸水した吸水性ポリマが、連続多孔質層501から外部に漏出するのを、より一層抑制することができる。なお、この保水処理剤は、吸水性ポリマの粉末と水とロックウールとベントナイトとを、例えば、1:150:6:2(重量比)の割合で混合して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】実施例1にかかる保水性部材100の斜視図である。
【図2】保水性部材100の拡大断面図であり、図1のA−A矢視断面図に相当する。
【図3】実施例1にかかる保水性人工芝150の斜視図である。
【図4】実施例1,2にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図5】実施例1,2にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図6】実施例1,2にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図7】実施例1にかかる保水性部材100の製造方法を説明する説明図である。
【図8】実施例2にかかる保水性部材200の斜視図である。
【図9】保水性部材200の拡大断面図であり、図8のB−B矢視拡大断面図に相当する。
【図10】実施例2にかかる保水性部材200の製造方法を説明する説明図である。
【図11】実施例3にかかる保水性部材300の斜視図である。
【図12】保水性部材300の拡大断面図であり、図11のC−C矢視拡大断面図に相当する。
【図13】実施例3にかかる保水性プランタ350の断面図である。
【図14】実施例3にかかる保水性部材300の製造方法を説明する説明図である。
【図15】実施例3にかかる保水性部材300の製造方法を説明する説明図である。
【図16】実施例3にかかる保水性部材300の製造方法を説明する説明図である。
【図17】実施例3にかかる保水性部材300の製造方法を説明する説明図である。
【図18】実施例4にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図19】実施例4にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図20】実施例4にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図21】実施例4にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図22】実施例4にかかる保水性部材の製造方法を説明する説明図である。
【図23】連続多孔質層301の空隙部303内に、保水処理剤440を充填したときの様子を示す断面図である。
【図24】実施例5にかかる保水性部材500の斜視図である。
【図25】図24のD部拡大図である。
【図26】実施例5にかかる保水性部材500の使用例を説明する説明図である。
【図27】実施例5にかかる保水性部材500の使用例を説明する説明図である。
【図28】実施例5にかかる保水処理剤540の製造方法を説明する説明図である。
【図29】実施例5にかかる保水性部材500の製造方法を説明する説明図である。
【図30】実施例5にかかる保水性部材500の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0215】
40,540 保水処理剤
440 泡沫状保水処理剤
100,200,300,500 保水性部材
101,201,301,501 連続多孔質層
102,202,302,502 連続多孔質層保持体
103,203,303,503 空隙部
104,204,304,504 孔
110,210,310,510 骨格
120,320,520 吸水性ポリマ
120b,220b,320b,520b 液体を吸収した吸水性ポリマ(吸水した吸水性ポリマ)
120c,320c 吸水性ポリマ粉末
150 保水性人工芝(保水性部材)
201b 浸入口表面
303b 進入口
315 接着剤
350 保水性プランタ(保水性部材)
525 ロックウール(漏出抑制材、繊維)
W 水(液体)
ET エタノール(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える
保水性部材であって、
上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、しかも、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、上記空隙部内に配置されてなる
保水性部材。
【請求項2】
複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を備える
保水性部材であって、
上記吸水性ポリマは、自身の一部若しくは全部が、上記連続多孔質層の上記骨格内に取り込まれることなく、しかも、上記骨格同士を接着する接着剤で上記骨格に接着されることなく、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格の若しくは上記接着剤の若しくは吸水した上記吸水性ポリマが上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に付着した状態で、上記空隙部内に配置されてなる
保水性部材。
【請求項3】
請求項2に記載の保水性部材であって、
前記漏出抑制材として繊維を含む
保水性部材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の保水性部材であって、
前記連続多孔質層保持体は、骨材を含まない前記連続多孔質層を備える
保水性部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の保水性部材であって、
前記吸水性ポリマは、
液体を吸収した上記吸水性ポリマを、直接または液体を吸収した他の上記吸水性ポリマを介して間接に、前記骨格のまたは前記接着剤のまたは液体を吸収した上記吸水性ポリマが前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に接触させた状態で、乾燥させたことにより、自身が直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤または上記漏出抑制材の表面に付着してなる
保水性部材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の保水性部材であって、
前記吸水性ポリマは、感温性を有する吸水性ポリマを含む
保水性部材。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の保水性部材であって、
前記吸水性ポリマは、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを含む
保水性部材。
【請求項8】
複数の孔が三次元的に連結した連続気孔形状の空隙部を構成する骨格を有する連続多孔
質層を、一部または全体に備える連続多孔質層保持体と、
上記空隙部内に位置し、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマと、を
備える
保水性部材の製造方法であって、
液体を吸収させた上記吸水性ポリマを、上記空隙部内において、直接または液体を吸収させた他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格のまたは上記骨格同士を接着する接着剤のまたは吸水した上記吸水性ポリマが上記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材の表面に接触させた状態で、乾燥させて、上記吸水性ポリマを、直接または他の上記吸水性ポリマを介して間接に、上記骨格または上記接着剤または上記漏出抑制材の表面に付着させる付着工程を備える
保水性部材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記付着工程に先立って、
前記液体を未吸収または吸収した前記吸水性ポリマを、前記連続多孔質層の前記空隙部内に配置した状態とする配置工程を備える
保水性部材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
流動性を有する保水処理剤であって、前記吸水性ポリマの粉末と、上記吸水性ポリマの粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、水とを混合してなる保水処理剤、または、
流動性を有する保水処理剤であって、上記吸水性ポリマの粉末に上記吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水とを混合してなる保水処理剤を、
前記連続多孔質層の前記空隙部内に浸入させる浸入工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記浸入工程は、
前記連続多孔質層の表面に前記保水処理剤を接触させた状態で、上記連続多孔質層の圧縮と復元とを行う
保水性部材の製造方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、
前記配置工程は、
前記浸入工程に先立って、前記連続多孔質層の表面のうち上記保水処理剤を上記連続多孔質層の前記空隙部内に浸入させる浸入口表面を少なくとも除いた表面、及びその近傍に、多価金属塩を配置する
浸入前多価金属塩配置工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれか一項に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記保水処理剤は、前記吸水速度低下剤としてアニオン性の水溶性高分子を含み、
前記配置工程は、
前記浸入工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に多価金属塩を配置する 浸入後多価金属塩配置工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項14】
請求項10〜請求項13のいずれか一項に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
前記浸入工程の後に、前記連続多孔質層の表面及びその近傍に、吸水した前記吸水性ポリマ粉末、または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末のゲル化を促進する、ゲル化促進剤を配置する
浸入後ゲル化促進剤配置工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項15】
請求項9に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
前記吸水性ポリマの粉末と、上記吸水性ポリマの粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、水と、起泡剤とを混合して泡立たせてなる、泡沫状保水処理剤、または、
上記吸水性ポリマの粉末に上記吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、水と、起泡剤とを混合して泡立たせてなる、泡沫状保水処理剤を、
前記連続多孔質層の前記空隙部内に充填する充填工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記泡沫状保水処理剤は、粘性付与剤の混合により、その粘性を高めてなる
保水性部材の製造方法。
【請求項17】
請求項10〜請求項16のいずれか一項に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記保水処理剤または前記泡沫状保水処理剤は、
吸水した前記吸水性ポリマ粉末または吸水した前記低速吸水性ポリマ粉末が、前記連続多孔質層から外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材が混合されてなる
保水性部材の製造方法。
【請求項18】
請求項9に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
前記骨格及び上記骨格同士を接着する接着剤の少なくとも一部を、前記吸水性ポリマが吸収可能な液体で湿らせた状態で、上記吸水性ポリマの粉末を、上記連続多孔質層の上記空隙部内に進入させる進入工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記進入工程は、
前記骨格及び上記骨格同士を接着する接着剤のうち少なくとも前記吸水性ポリマを進入させる進入口を構成する部分を、前記液体で湿っていない状態として、前記吸水性ポリマの粉末を上記空隙部内に進入させる
保水性部材の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
前記進入工程の後、前記進入口を構成する前記空隙部内に配置された上記吸水性ポリマの粉末に、これが吸収可能な液体を接触させる液体接触工程を含む
保水性部材の製造方法。
【請求項21】
請求項9に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記配置工程は、
前記吸水性ポリマ粉末と、吸水した上記吸水性ポリマが前記連続多孔質層の外部に漏出するのを抑制する漏出抑制材と、水とを混合してなる保水処理剤を、
上記連続多孔質層の前記空隙部内に配置する
保水性部材の製造方法。
【請求項22】
請求項8〜請求項21のいずれか一項に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記吸水性ポリマは、感温性を有する吸水性ポリマを含む
保水性部材の製造方法。
【請求項23】
請求項8〜請求項22のいずれか一項に記載の保水性部材の製造方法であって、
前記吸水性ポリマは、変性アクリル系架橋重合体を主成分とする吸水性ポリマを含む
保水性部材の製造方法。
【請求項24】
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤、
水、及び
起泡剤を混合して泡立たせてなる
泡沫状保水処理剤。
【請求項25】
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末、
水、及び
起泡剤を混合して泡立たせてなる
泡沫状保水処理剤。
【請求項26】
請求項24または請求項25に記載の泡沫状保水処理剤であって、
前記水及び前記起泡剤を撹拌により混合して泡立たせたものと、
前記吸水性ポリマ粉末及び前記吸水速度低下剤を混合したもの、または、前記低速吸水性ポリマ粉末とを、撹拌により混合して泡立たせてなる
泡沫状保水処理剤。
【請求項27】
請求項24〜請求項26に記載の泡沫状保水処理剤であって、
粘性付与剤の混合により粘性を高めてなる
泡沫状保水処理剤。
【請求項28】
水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末、及び
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を混合してなるものと、
起泡剤とを、互いに別個に備える
保水剤。
【請求項29】
水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末と、
上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤と、
起泡剤とを、互いに別個に備える
保水剤。
【請求項30】
水と共に撹拌して混合することにより、泡沫状保水処理剤となる保水剤であって、
吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマ粉末に、上記吸水性ポリマ粉末の吸水速度を低下させる吸水速度低下剤を吸収させた後、これを乾燥させて、吸水速度を低下させてなる低速吸水性ポリマ粉末と、
起泡剤とを、互いに別個に備える
保水剤。
【請求項31】
請求項28〜請求項30のいずれか一項に記載の保水剤であって、
粘性付与剤を別個に備える
保水剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−291202(P2008−291202A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229511(P2007−229511)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(505156938)株式会社加藤組 (4)