説明

保護具

【課題】ボタン毎に異なる形状や大きさにフレキシブルに対応し、ボタンを保護具の中で固定することで衝撃に強く、薬剤などによる劣化も生じさせない、簡易で低コストの保護具を提供する。
【解決手段】本発明は、所定の面積を有する第1の布片2と第1の布片2と一辺において接合されると共に他の辺が開放された、第1の布片2と対向する第2の布片3と、第1の布片2の略中央から、接合されていない辺にかけて設けられた切込み4を備え、第1の布片2は、第2の布片3と対向する面の略全面に植設された多数の第1突起6を有し、第2の布片3は、第1突起6と嵌合可能であると共に、第1の布片2と対向する面の略全面に植設された多数の第2突起7を有し、第1布片2と第2布片3は、第1突起6と第2突起7とにより、相互に封着および開放が可能である保護具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングや家庭での洗濯時に、衣服に備え付けられているボタンや飾りなどを、洗濯時の汚損、破損、破壊から防止する保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーニングや家庭での洗濯においては、衣服の汚れを落としたり、しみを抜いたりすることの技術にばかり着目されている。しかし、多数の衣服をまとめて洗濯する際には、衣服についているボタンや飾りが、洗濯機の内壁にぶつかったり、他のボタンとぶつかったりして、ボタンが汚損されたり破損されたりすることが多く生じていた。
【0003】
このボタンを、汚損や破損から保護するために、ボタンにアルミ箔を巻きつけてから衣服が洗濯されることが、クリーニング店などで多く行われている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
しかし、このようなアルミ箔をボタンに巻きつける技術では、ボタンの表面に傷が付くのを防止できるだけで、ボタンを衝撃から防止することはできない。
【0005】
このため、洗濯時にボタンを保護するために、複数の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【特許文献1】実開平8−1149号公報
【特許文献2】特開平11−276769号公報
【特許文献3】実用新案登録3050473号公報
【特許文献4】特開平10−234427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には下記のような問題があった。
【0007】
特許文献1に開示される保護具は、ボタンを挿入して周囲の紙片を折りたたむことで、ボタンを保護する。このため、装着に手間がかかる上、紙片を利用しているので、洗濯時の耐久性が不足する問題がある。加えて、折りたたむだけであるので、外れてしまう可能性も高く、信頼性に劣る問題がある。
【0008】
特許文献2に開示される保護具は、袋状の布にボタンを入れて、周囲をファスナーで留めて、ボタンを保護する。しかし、ファスナーで留めるのは手間がかかり、薄利多売で多数の衣服を洗濯するクリーニング店では、コストと手間が合わない問題がある。また、柔らかな布でできた袋に入れるだけなので、衝撃からの保護が不十分である問題がある。特に、保護具の端部のみがファスナーで接合されるだけファスナー洗濯中に外れやすく、保護が保護具全体に行き渡らないため、外部からの衝撃に弱いという問題もある。
【0009】
また、特許文献1と特許文献2の保護具は、ボタン毎の大きさに合わせて作らないと、ボタンの大きさが異なると使いづらい問題がある。ボタンのサイズのバリエーションにフレキシブルに対応するために、大きなサイズの保護具になると、保護具の中でボタンが動いてしまい、結局、外部からの衝撃に弱くなる問題を有している。
【0010】
特許文献3に開示される保護具は、樹脂のケースにボタンを入れて、ボタンを保護する。樹脂による保護具なので、強度を有しているが、保護具の中でボタンが動いてしまうと、ボタンが硬い樹脂の内壁に衝突し、保護具の中で、ボタンが破損する問題がある。これを防止するためには、保護具をボタン毎の大きさに合わせる必要があるが、製造コストなどの面で現実的ではない。クリーニング店にとって採用は困難な技術である。
【0011】
加えて、特許文献2、3においては、保護具の周囲を接合するので、保護具の外周は、密封度が高くなっている(特に特許文献3は、樹脂製なので、密封度が高い)。このような状態であると、洗濯において保護具の中に入り込んだ洗剤や柔軟剤などの薬剤が、外に流れ出ないので、化学的にボタンを汚損や破損させる問題もあった。特許文献1に開示される保護具も、はずれにくくするために周囲を封じると、同様の問題を引き起こす。
【0012】
加えて、特許文献1〜3のいずれの技術も、周囲のみ封じるので、保護具が柔らかい素材である場合には、周囲からの衝撃に弱く、保護具が硬い素材である場合には、内部での衝撃に弱い問題を有している。
【0013】
特許文献4に開示される保護具は、簡易であって、クリーニング店で採用しやすいが、衝撃には弱く、アルミ箔が、衣服の生地を損傷する問題も有している。当然、洗剤や柔軟剤などの薬剤が内部に残って、ボタンを化学的に汚損させる問題がある。
【0014】
すなわち、従来技術においては、ボタンの大きさの違いにフレキシブルに対応できず、これに対応しようとすると、保護具の中でボタンが固定されず、外部や内部の衝撃に弱い問題がある。加えて、保護具が外れやすく、外れにくいように、保護具の外周を封じると、内部に入り込んだ薬剤などが保護具の中に残ってしまい、化学的にボタンを汚損、破損する問題がある。加えて、製造コスト、装着の手間などにも問題があり、いずれの保護具も、実際のクリーニング店などの現場では、十分に使用できない問題があった。
【0015】
本発明は、ボタン毎に異なる形状や大きさにフレキシブルに対応し、ボタンを保護具の中で固定することで衝撃に強く、薬剤などによる劣化も生じさせない、簡易で低コストの保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、洗濯時に衣服のボタンおよび飾りを保護する保護具であって、所定の面積を有する第1の布片と第1の布片と一辺において接合されると共に他の辺が開放された、第1の布片と対向する第2の布片と、第1の布片の略中央から、接合されていない辺にかけて設けられた切込みを備え、第1の布片は、第2の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第1突起を有し、第2の布片は、第1突起と嵌合可能であると共に、第1の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第2突起を有し、第1布片と第2布片は、第1突起と第2突起とにより、相互に封着および開放が可能であり、第1布片と第2布片のそれぞれの面積は、ボタンおよび飾りの面積よりも大であることを特徴とする保護具を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボタンを挟む2つの布片は、対向する面のほぼ全面で封着されるので、洗濯時であっても、外れにくく、確実な保護ができる。
【0018】
また、全面で封着されることで、保護具の中でボタンがしっかりと固定され、保護具の中でボタンが動くことが無いので、ボタンが、外部や内部の衝撃から十分に保護される。
【0019】
また、2枚の布片は、ボタンよりも大きな面積を有しているので、ボタンの外周側面までも保護できる。
【0020】
加えて、嵌合する多数の突起により、布片の全面で封着されることで、この多数の突起が、自動的に緩衝材の役割を果たすので、ボタンの保護が更に十分なものとなる。
【0021】
また、2枚の布片は、多数の突起により封着されているため、封着強度は十分であるにもかかわらず、布片同士の間には多数の隙間が形成される。この隙間により、保護具の中に入り込んだ薬剤も、簡単に流れ出るので、ボタンが化学的に汚損されたり破損されたりすることがない。
【0022】
また、簡単な素材や構造を有しているので、低コストであり、2枚の布片の一方に設けられた切込みによりボタンを装着できるので、クリーニング店における作業も簡易である。このため、クリーニング店での経費をかけることなく、顧客満足度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の発明に係る保護具は、洗濯時に衣服のボタンおよび飾りを保護する保護具であって、所定の面積を有する第1の布片と第1の布片と一辺において接合されると共に他の辺が開放された、第1の布片と対向する第2の布片と、第1の布片の略中央から、接合されていない辺にかけて設けられた切込みを備え、第1の布片は、第2の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第1突起を有し、第2の布片は、第1突起と嵌合可能であると共に、第1の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第2突起を有し、第1布片と第2布片は、第1突起と第2突起とにより、相互に封着および開放が可能であり、第1布片と第2布片のそれぞれの面積は、ボタンおよび飾りの面積よりも大であることを特徴とする。
【0024】
この構成により、大きさや形状の様々なボタンのいずれでも収納して保護でき、布片同士が全面で嵌合して封着されるので、保護具がボタンから外れることもない。加えて、保護具の中でボタンを十分に固定できるので、外部、内部からの衝撃から、ボタンを保護できる。更に、封着に用いられる全面に植設された突起が、緩衝材と剛性を与える役割を果たし、外部の衝撃から、ボタンを効果的に保護できる。
【0025】
第2の発明に係る保護具では、第1の布片および第2の布片の少なくとも一方は、一定の剛性を有することを特徴とする。
【0026】
この構成により、保護具に収納されたボタンが、外部からの衝撃より十分に守られる。
【0027】
第3の発明に係る保護具では、第1の布片および第2の布片の少なくとも一方は、緩衝材を含んでいることを特徴とする。
【0028】
この構成により、保護具に収納されたボタンが、外部からの衝撃より十分に守られる。
【0029】
第4の発明に係る保護具では、切れ込みの第1の布片の略中央側の根元において、切れ込みとつながる孔が設けられていることを特徴とする。
【0030】
この構成により、ボタンと衣服との縫合部分に、負担をかけることなく、保護具の中にボタンを収納できる。
【0031】
第5の発明に係る保護具では、第1の布片および第2の布片の少なくとも一方は、面ファスナーであることを特徴とする。
【0032】
この構成により、保護具の製造が容易となる。
【0033】
第6の発明に係る保護具では、第1の布片および第2の布片のそれぞれは、略方形であって、その角部は面取りされていることを特徴とする。
【0034】
この構成により、使用者にとって使いやすいと共に、洗濯中に他の洗濯物への影響を回避できる。
【0035】
以下、図面を用いて実施の形態について説明する。
【0036】
なお、本明細書において、保護具は衣服に付けられているボタンや飾りを保護するが、要は衣服において生地以外の部分を広く保護すると考えて差し支えない。
【0037】
また、本明細書で突起とは第1突起6と第2突起7の総称であり、布片とは、第1布片2と第2布片3の総称である。
【0038】
(実施の形態1)
図1〜図5を用いて、実施の形態1について説明する。
【0039】
(全体概要)
まず、図4を用いて、全体概要を説明する。図4は、本発明の実施の形態1における保護具の平面図である。
【0040】
図4には、保護具1により、ボタン8が収納されて保護される様子が示されている。
【0041】
保護具1は、家庭やクリーニング店などでの洗濯時に、洗濯を行う衣服についているボタンおよび飾りなどを保護する。保護具1は、第1の布片2と、第2の布片3を備え、第2の布片2は、第2の布片2の略中央から一辺にかけて切込み4が設けられている。
【0042】
図4に示されるように、第1の布片2と第2の布片3は、所定の面積を有している布片であり、それぞれは対向した上で、その一辺が接合線9で接合されている。接合は例えば、縫合により実現される。
【0043】
また、第1の布片2と第2の布片3は、相互に嵌合可能な第1突起6と第2突起7を有しており、この第1突起6と第2突起7の嵌合により第1の布片2と第2の布片3は、封着可能である。
【0044】
図4に示される保護具1は、第1の布片2と第2の布片3が相互に対向した上で封着されている。
【0045】
保護具1は、第1の布片2を第2の布片3から一旦開放し(封着を解除し)、ボタン8を第1の布片2と第2の布片3との間に挟む。このときボタン8は、衣服についているので、ボタン8と衣服との縫合部分があり、この縫合部分には、切込み4が対応する。
【0046】
図4から明らかな通り、ボタン8の衣服側は、切込み4に縫合部分が通るようにして、第1の布片2により覆われ、ボタン8の衣服との反対側は、ちょうど蓋がかぶさるように、第2の布片3により覆われる。また、第1の布片2と第2の布片3のそれぞれの面積は、ボタン8の面積よりも大きい。このようにして、ボタン8は、その全体が(表面、裏面、側面の全てが)、保護具1の第1の布片2と第2の布片3により覆われる。
【0047】
(ボタン8の保護)
このとき、第1の布片2と第2の布片3の対向する面の略全面に、第1突起6と第2突起7が植設されており、第1突起6と第2突起7の相互の嵌合により、第1の布片2と第2の布片3が封着される。すなわちボタン8により阻害される領域を除けば、ほぼ全面に渡って第1突起6と第2突起7が嵌合して、第1の布片2と第2の布片3が封着される。このため、第1の布片2と第2の布片3の封着力は非常に強く、洗濯中であっても外れる心配はほとんどない。このため、ボタンや飾りの保護が十分に行える。
【0048】
また、第1の布片2と第2の布片3のそれぞれの対向する面の全面に、第1突起6と第2突起7が植設されているので、封着時には、これらの突起はボタン8の周囲における緩衝材の役割を果たす。第1突起6と第2突起7は、嵌合することで、一定の高さ(すなわち厚み)を形成するからである。
【0049】
加えて、第1の布片2と第2の布片3のそれぞれの対向する面の全面に植設された第1突起6と第2突起7の嵌合により、第1の布片2と第2の布片3とは、一定の剛性を有する。このため、外部からの衝撃に対して、保護具1は、ボタン8を効果的に保護できる。このとき、第1の布片2と第2の布片3を封着する第1突起6と第2突起7によって、剛性が得られるが、第1の布片2、第2の布片3のそれぞれは、元々は布片であって、硬質な素材ではない。このため、内部に収納されたボタン8を傷つけたり、洗濯機や他の洗濯物を傷つけたりする心配もない。
【0050】
また、第1の布片2と第2の布片3のそれぞれの面積は、一般的なボタン8の面積よりも大きいので、収納時にはボタン8の側面も全て覆われている。このため、ボタン8の側面からの衝撃に対しても、ボタン8は十分に保護される。
【0051】
また、第1の布片2と第2の布片3の対向する面の略全面に渡って封着されるので、保護具1の内部で、ボタン8が動くことがない(すなわち、確実に固定される)。このため、保護具1内部で、ボタン8が動くことによって、保護具1とぶつかり合うなどすることもなく、ボタン8は、内部衝撃からも十分に保護される。
【0052】
これらは、図5においても明らかに示されている。
【0053】
加えて、保護具1は、全面で封着可能な2枚の布片の封着という簡易な構造により実現されるので、ボタン8の種類、形状、大きさを選ばず、様々なボタン8に使用可能である。当然ながら、ボタン8の収納も容易である。このため、製造コスト、作業コストが低減され、薄利多売のクリーニング店などでも、抵抗無く導入できる。
【0054】
(ボタン8の収納)
ボタン8の収納について述べる。
【0055】
ボタン8の収納においては、接合線9を基準として、第1の布片2を第2の布片3から引き剥がして、ボタン8の縫合部分を切込み4にあわせるようにして、第1の布片2の上に、ボタン8を載せる。このとき、切込み4にボタン8の縫合部分を通すようにしてボタン8の下に、第1の布片2を敷くようにする。次いで、ボタン8の上から第2の布片3を覆い被せるようにして、第2の布片3を第1の布片2を封着させる。
【0056】
以上のようにして、保護具1は、ボタン8を収納する。
【0057】
このように収納されたボタン8の状態は、図5に示されている。図5は、本発明の実施の形態1における保護具1の側面図であり、ボタン8が保護具1に収納された状態が、側面から表されている。
【0058】
図5から明らかな通り、ボタン8の上下左右の全てが第1突起6と第2突起7により覆われて封着され、結果として、ボタン8の上下左右の全てが、第1の布片2と第2の布片3により覆われている。外部からの衝撃に非常に強い。
【0059】
保護具1により、ボタン8が、全面に渡って保護されている状態が、図5からも明らかである。また、第1突起6と第2突起7が、ボタン8の上下において高さ(厚み)を形成するので、嵌合した第1突起6と第2突起7が自動的に緩衝材の役割を果たすと同時に、第1の布片2と第2の布片3に、剛性を与える役割を果たす。
【0060】
(各部の詳細)
次に、各部の詳細について説明する。
【0061】
(第1布片と第2布片)
図1を用いて第1布片2と第2布片3について説明する。
【0062】
図1は、本発明の実施の形態1における第1布片と第2布片の平面図である。すなわち、図1には、保護具1の分解された状態が表されている。
【0063】
第1の布片2と第2の布片3は、所定の面積を有している、布製の部材である。なお、布製といっても、天然繊維、化学繊維、合成繊維など幅広く含む。また、布片は、必要に応じて樹脂や金属部分をその一部に含んでいても良い。布片との用語を用いているが、所謂、縫製において用いられるきれや生地などの布に限定されるものではない。
【0064】
所定の面積は、適宜決められればよいが、通常の衣服に用いられるボタンの大きさに応じて定められれば良く、一つの種類の保護具1で幅広く使用するのであれば、最も大きなボタンの大きさに応じて定められれば良い。
【0065】
第1の布片2と第2の布片3は、相互に対向して構成されるので、その形状、大きさは、同等であることが好ましい。
【0066】
また、第1の布片2と第2の布片3は、使い勝手から、方形を有していることが好ましいが、円形や楕円形、他の多角形であっても差し支えない。
【0067】
また、第1の布片2と第2の布片3の対向する面には、封着のための第1突起6と第2突起7が多数設けられているが、その逆の面(保護具1として構成されたときの、外側の面)は、他の洗濯物を傷つけないように、滑らかに処理されていることが好ましい。
【0068】
なお、簡易的には、第1の布片2と第2の布片3は、面ファスナーで形成されればよい。この場合には、後述する第1突起6と第2突起7が、面ファスナーに植設されている突起により実現され、製造が容易となる。
【0069】
(切込み)
図1に示されるように、第1の布片2には、切込み4が設けられている。また、切込み4の根元側には、略円形の孔5が設けられていることも好適である。
【0070】
切込み4は、ボタン8を収納するときに、ボタン8が衣服と縫合されている縫合部分を通す役割を有する。
【0071】
孔5は、縫合部分が大きい場合に、縫合部分に圧迫的な負担をかけることなく、ボタン8を収納する役割を有する。このため、保護具1は、洗濯時において、ボタン8のみならず、ボタン8の衣服との縫合部分も保護できる。
【0072】
切込みは、図4に示されるように、第1の布片の略中央から、接合線9がない辺(ここでは、接合線9と逆の辺)に向けて形成される。
【0073】
なお、切込み4の幅は任意である。切込み4は、第1の布片2の所定の箇所を、はさみなどで切断することで形成される。
【0074】
(突起と封着)
図2、図3を用いて、突起と封着について説明する。
【0075】
図2は、本発明の実施の形態1における第2の布片の斜視図である。図2では、第2の布片3は、第1の布片2と対向する面を示している。この対向する面の略全面に、多数の第2突起7が植設されている。第2突起7は、第1突起6と同様に、略全面に多数植設されているが、略全面とは物理的な隙間が無いことを意味しているのではなく、実際の使用上において、ほぼ全域に渡って植設されていることを意味する。植設されている突起同士の隙間が大きかったり、植設の隙間が一部にあったりしても、実際上において第1の布片2と第2の布片3が、ほぼ全面に渡って封着されるように、突起が植設されていれば良い。不用意に、発明を限定することではない。
【0076】
なお、図2においては、第2の布片3のみが示されているが、第1の布片2も同様の形態を有しており、第1の布片2の一方の面の略全面には、多数の第1突起6が植設されている。
【0077】
図3は、本発明の実施の形態1における保護具の側面図である。
【0078】
図3に示されるように、第1の布片2にも第1突起6が全面に渡って植設されている。
【0079】
第1の布片2と第2の布片3は、第1突起6と第2突起7の嵌合により封着される。
【0080】
第1突起6は、図3より明らかな通り、先端の切れた輪状になっており、相手側となる第2突起7の先端を引っ掛ける構造を有している。第2突起7は、輪状である第1突起6の輪の部分に、先端のふくらみが引っかかり、第1突起6と嵌合する。このとき、第1突起6と第2突起7は、非常に多くの数であるので、このような輪とふくらみとの嵌合が多数の地点で生じ、非常に強い封着力を実現する。
【0081】
なお、第1突起6、第2突起7は、それぞれ、樹脂などで形成されればよい。
【0082】
このような第1突起6を有する第1布片2と、第2突起7を有する第2布片3は、簡易には、ファスナーナーなどが利用されればよい。
【0083】
また、突起とは、物理的に出っ張っている状態を有する部材を指し、輪状の突起と輪に引っかかる突起のように、いわゆる嵌合における「オスとメス」を実現する、ペアの突起のそれぞれが、第1突起6、第2突起7として植設されていれば良い。
【0084】
なお、第1突起6と第2突起7は、ここで説明した以外の嵌合方法によって、嵌合しても良い。例えば、第1突起6と第2突起7の先端がそれぞれ鉤状になっており、この鉤状の部分同士が引っかかりあうことで、第1突起6と第2突起7が嵌合してもよい。
【0085】
(保護具の機能)
本発明の保護具1は、布製の保護具でありながら、全面に植設された第1突起6と第2突起7の嵌合だけでボタン8を収納することで、外部からの衝撃に対する剛性と、外部に対する軟性を両立させている。加えて、封着部材である第1突起6と第2突起7は、同時に緩衝材の役割も果たしている。加えて、保護具1の中でボタン8を確実に固定しつつも、外部にははみ出ないようにし、外部からの衝撃と内部からの衝撃から、ボタン8を確実に保護できる。
【0086】
また、第1の布片2と第2の布片3の対抗する面の略全面に多数の第1突起6と第2突起7が植設されて、第1突起6と第2突起7の嵌合により、第1の布片2と第2の布片3が封着される。すなわち、ボタン8を収納している収納領域(第1の布片2と第2の布片3により挟まれる領域)は、多数の突起同士の嵌合がなされている領域である。このため、ボタン8の周囲は密封されているわけではなく、多数の隙間がある。このため、この収納領域に洗剤や柔軟剤などの薬剤が入り込んだとしても、すすぎなどの段階で洗い流され、収納領域から排出される。
【0087】
従来の技術におけるボタン保護具では、密封度が高いために、浸透圧などの関係から、薬剤が入り込むことは容易にもかかわらず、薬剤が排出されることは困難であった。このため、薬剤によって、ボタンが化学的に汚損、破損される問題があった。
【0088】
本発明の保護具1は、収納領域が密封されておらず、多くの隙間が形成されているので、収納領域に残りがちな薬剤による、ボタン8の汚損や破損が防止される。
【0089】
すなわち、保護具1は、全面に植設された嵌合可能な突起によって、ボタンを収納することで、確実なボタンの収納、ボタンの保護具内部での固定、緩衝材の機能発揮、外部に影響のない剛性の確保、薬剤の排出などを同時に実現し、保護具1は、ボタンを外部、内部の衝撃から守ると共に、他の洗濯物などへの害も生じさせない。
【0090】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0091】
実施の形態2では、実施の形態1で説明した保護具1の構造や機能を基本とした種々の変形例について説明する。
【0092】
(角部の面取り)
保護具1は、第1の布片2と第2の布片3との封着により、基本的な形状が形成される。
【0093】
このとき、製造の容易性や保管の容易性から、第1の布片2と第2の布片3は、方形(四角形がもっとも好適である)であることが好適である。円形や楕円形では、大きな布素材から、第1の布片2と第2の布片3を切り出すときに、無駄が多くなって、製造コストが上がるからである。
【0094】
ここで、布片が方形である場合には、使用者への使いやすさや、他の洗濯物への影響を低減するために、第1の布片2と第2の布片3の角部が面取りされていることが好ましい。
【0095】
角部が面取りされていることで、使用者が角部によって不快な思いをすることがなく、洗濯中に、角部が他の洗濯物に触れ合って傷つけることもなくなるからである。
【0096】
(引き剥がし用のはみだし部)
第1の布片2と第2の布片3は、相互に対向した上で封着される。また一辺において接合されている。このため、第1の布片2と第2の布片3は、大体同じ大きさ、形状を有していることが好ましい。
【0097】
しかし、クリーニングなどにおいて、保護具1が使用される場合(すなわち、ボタン8を収納する場合)には、衣服についている多数のボタン8の一つ一つに、この保護具1を使用する必要がある。これは、使用者にとって手間がかかることもある。
【0098】
このため、第1の布片2と第2の布片3の大きさが若干だけ相違したり、形状が若干だけ相違したりすることは、ボタン8の収納前に封着されている第1の布片2と第2の布片3同士を引き剥がすのに好適である。すなわち、大きさや形状に差があることで、封着状態にある第1の布片2と第2の布片3の端部同士は、互い違いになっている。この互い違いの端部が存在することにより、第1の布片2と第2の布片3のいずれか一方を引き剥がしやすくなり、作業効率が向上する。このとき、相手の布片よりも大きくて、はみ出た部分を有している布片については、そのはみ出ている部分については、突起を有さないことも好適である。はみ出ている部分は、嵌合には関係ない領域であり、突起が設けられる必要は無い。更に、はみ出ている部分に突起が設けられないことで、突起が表面に露出せず、他の洗濯物を傷つけることもなくなるからである。
【0099】
(緩衝材)
保護具1は、第1の布片2と第2の布片3の封着に用いられる第1突起6と第2突起7により、自動的に緩衝材の機能を有している。しかし、ボタンが高価な場合などには、更に第1の布片2と第2の布片3の少なくとも一方が、緩衝材を備えていることも好適である。
【0100】
緩衝材は、第1の布片2と第2の布片3の素材そのものが、厚みを有していたり強い素材であったりすることで、実現されても良い。また、第1の布片2と第2の布片3の表面や内部にゲル状の樹脂などが塗布もしくはサンドイッチされることで、緩衝材が実現されても良い。
【0101】
このように緩衝材が備えられていることで、収納されたボタン8の衝撃からの保護が更に強力になる。
【0102】
(剛性)
第1の布片2と第2の布片3は、天然繊維、化学繊維、合成繊維、樹脂繊維などの素材で形成されており、封着のための第1突起6と第2突起7が全面植設されていることで、一定の剛性を有している。
【0103】
しかし、ボタン8の保護を更に強力にするために、第1の布片2と第2の布片3の少なくとも一方は、更なる剛性を与えられていることも好適である。
【0104】
例えば、第1の布片2や第2の布片3の素材を硬質な素材としたり、第1の布片2や第2の布片3の表面や内部に、芯材を備えたりすることで、強い剛性を与えることができる。
【0105】
このような剛性を有した第1の布片2と第2の布片3とにより、保護具1は、ボタン8を外部から十分に保護することができる。
【0106】
以上のように、実施の形態1で説明した基本形状に、種々の形態を加えることで、簡易で低コストでありながら、洗濯時において衣服のボタンや飾りを十分に保護できる保護具1が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、クリーニング店や家庭で洗濯を行う際に、衣服のボタンや飾りなどを保護する部材などに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1における第1布片と第2布片の平面図
【図2】本発明の実施の形態1における第2の布片の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における保護具の側面図
【図4】本発明の実施の形態1における保護具の平面図
【図5】本発明の実施の形態1における保護具1の側面図
【符号の説明】
【0109】
1 保護具
2 第1の布片
3 第2の布片
4 切込み
5 孔
6 第1突起
7 第2突起
8 ボタン
9 接合線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯時に衣服のボタンおよび飾りを保護する保護具であって、
所定の面積を有する第1の布片と
前記第1の布片と一辺において接合されると共に他の辺が開放された、前記第1の布片と対向する第2の布片と、
前記第1の布片の略中央から、接合されていない辺にかけて設けられた切込みを備え、
前記第1の布片は、前記第2の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第1突起を有し、
前記第2の布片は、前記第1突起と嵌合可能であると共に、前記第1の布片と対向する面の略全面に植設された多数の第2突起を有し、
前記第1布片と前記第2布片は、前記第1突起と前記第2突起とにより、相互に封着および開放が可能であり、
前記第1布片と前記第2布片のそれぞれの面積は、前記ボタンおよび飾りの面積よりも大きいことを特徴とする保護具。
【請求項2】
前記第1の布片および前記第2の布片の少なくとも一方は、一定の剛性を有することを特徴とする請求項1記載の保護具。
【請求項3】
前記第1の布片および第2の布片の少なくとも一方は、緩衝材を含んでいることを特徴とする請求項1から2のいずれか記載の保護具。
【請求項4】
前記切れ込みの前記第1の布片の略中央側の根元において、前記切れ込みとつながる孔が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の保護具。
【請求項5】
前記第1の布片および前記第2の布片の少なくとも一方は、面ファスナであることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の保護具。
【請求項6】
前記第1の布片および前記第2の布片のそれぞれは、略方形であって、その角部は面取りされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の保護具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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