説明

保護層転写シート

【課題】熱転写時に保護層転写体を容易に転写・接着することができ、画像が形成された被転写体に高い光沢性と、耐光性とを同時に付与することができる保護層転写シートを提供する。
【解決手段】被転写体上に保護層転写体を転写するための保護層転写シート10であって、保護層転写体を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層20には、主成分としてスチレンと紫外線吸収性単量体との共重合体が含有され、共重合体における、スチレンの共重合比率が10%〜95%であり、紫外線吸収性単量体の共重合比率が5%〜25%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層転写シートに関し、特に、基材からの離型性、及び被転写体との接着性に優れた保護層転写体を有し、被転写体上に高い光沢性と耐光性を付与することができる保護層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱転写方式を用いて基材に階調画像や文字、記号等の単調画像を形成することが行われており、熱転写方式としては、感熱昇華転写方式と感熱溶融転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華転写方式は、色材として用いる昇華性染料をバインダー樹脂に溶融あるいは分散させた染料層を基材シ−トに担持した熱転写シートを使用し、この熱転写シートを、染料受容層を備えた受像シートに重ね、サーマルプリンタヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加することにより、熱転写シート上の染料層中に含まれる昇華性染料を受像シートに移行させて画像を形成する方法である。
【0003】
このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、且つフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0004】
上記の感熱昇華転写方式は、熱転写シートに印加するエネルギー量によって、ドット単位で染料の移行量を制御出来るため、階調性画像の形成に優れているが、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく、比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため、耐光性等の耐久性に劣ると言う欠点がある。これに対して、形成された画像の耐久性を高める一手段として、また、形成された画像の光沢性を向上させる一手段として、昇華型熱転写法又は熱溶融型記録法によって得られた画像上に保護層を有する保護層転写シートを重ねあわせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて保護層を転写させることによって、画像上に保護層を形成する方法が知られている。
【0005】
画像に「耐光性」と「光沢性」を付与するための保護層については種々の研究がなされており、例えば、特許文献1には、反応性紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂のモノマーとの共重合体を含有する保護層転写フィルムが提案されており、また、特許文献2には、スチレン・アクリル共重合体樹脂を主成分とする保護層を有する保護層付昇華リボンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3830985号
【特許文献2】特開2003−39836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている保護層転写フィルムは、「耐光性」と「光沢性」を向上させることができるとされているが、熱転写性樹脂層の剥離力が高く、「離型性」の点で問題があった。また、特許文献2で提案されている保護層付昇華リボンは、「離型性」と「光沢性」は向上するとされているが、「耐光性」は十分とはいえない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、基材からの離型性、及び被転写体との接着性に優れた保護層転写体を有し、被転写体上に高い光沢性と耐光性を同時に付与することができる保護層転写シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、基材と、基材の一方の面上に設けられ1又は2以上の層から構成される保護層転写体とを有し、被転写体上に前記保護層転写体を転写するための保護層転写シートであって、前記保護層転写体を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層には、スチレンと紫外線吸収性単量体とを少なくとも共重合してなる共重合体が含有されており、前記共重合体における、前記スチレンの共重合比率が10%〜95%であり、前記紫外線吸収性単量体の共重合比率が5%〜25%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材からの離型性、及び被転写体との接着性に優れた保護層転写体を有し、保護層転写体を転写後の被転写体に高い光沢性と、耐光性とを同時に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る保護層転写シートを示す概略断面図である。
【図2】転写前後の状態を示す状態図である。
【図3】転写前後の状態を示す状態図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る保護層転写シートを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図1は、本発明の実施の形態に係る保護層転写シートを示す概略断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の保護層転写シート10は、基材1の一方の面(図1に示す場合にあっては基材1の上面)に、剥離可能に設けられ1又は2以上の層から構成される保護層転写体2(図1に示す場合にあっては、1の層からなる保護層転写体2)を備えた構成となっている。特に、本発明の保護層転写シートは、保護層転写体2を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層20には、主成分としてスチレンと紫外線吸収性単量体とを少なくとも共重合してなる共重合体が含有されている点に特徴を有し、この要件を具備するものであれば、本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の保護層転写シート10は、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層20に、主成分としてスチレンと紫外線吸収性単量体とを少なくとも共重合してなる共重合体が含有されていることから、被転写体、例えば、画像が形成された印画物等に高い「光沢性」と「耐光性」とを同時に付与することができる。また、保護層転写体2が表面層20の単層である場合でも、熱転写時の基材1からの離型性、及び被転写体との接着性に優れる。
【0015】
(基材)
本発明の保護層転写シート10に用いられる基材1としては、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定されることはなく、従来公知の保護層転写シートに使用されているものと同様の基材をそのまま用いることができる。このような基材1として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー等のプラスチックフィルム;グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類;セロファン等が挙げられる。また、上記基材は、上述の樹脂1種のみからなるものであってもよいし、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また、上記基材は、上記プラスチックフィルム、紙類及びセロファンのうち2種以上を積層した複合フィルムであってもよい。
【0016】
上記基材の厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができるが、例えば、2〜100μm程度であることが好ましい。
【0017】
(保護層転写体)
図1に示すように、基材1上には、基材1から剥離可能な保護層転写体2が設けられている。保護層転写体2は、本発明の保護層転写シートにおける必須の構成であり、少なくとも、表面層20を含む1又は2以上の層から構成される。
【0018】
まず初めに、図2、図3を用いて、保護層転写体2を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層20について説明する。なお、図2は、基材1上に層Aのみからなる保護層転写体2Aを備える保護層転写シートを用いて被転写体100上に保護層転写体2Aを転写する際の転写前後の状態を示す状態図であり、図3は、被転写体上に複数の層(層B、層C、層D)からなる保護層転写体2Bを備える保護層転写シートを用いて被転写体100上に保護層転写体2Bを転写する際の転写前後の状態を示す状態図である。
【0019】
図2に示すように、保護層転写体2が1の層Aのみからなる保護層転写体2Aである場合には、保護層転写体を構成する層のうち被転写体上に転写後の最表面に位置する層は該1の層Aとなる。つまり、保護層転写体2Aのうち層Aが表面層20となる。また、図3に示すように、保護層転写体2が、基材1側から、層B、層C、層Dがこの順で積層されてなる保護層転写体2Bである場合には、保護層転写体を構成する層のうち被転写体上に転写後の最表面に位置する層は層Bとなる。つまり、保護層転写体2Bにおいて層Bが表面層20となる。
【0020】
(表面層)
保護層転写体2を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層20には、スチレンと紫外線吸収性単量体との共重合体(以下、本発明の共重合体という場合がある。)が含有されている。
【0021】
本発明の共重合体を構成する紫外線吸収性単量体としては、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。反応性紫外線吸収剤の中でも特に、下記一般式1で示されるベンゾフェノン系、一般式2で示すベンゾトリアゾール系が好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
また、本発明の共重合体において、紫外線吸収性単量体の共重合比率が質量比で5%未満である場合には、「耐光性」が悪化し、25%よりも大きい場合には「離型性」が悪化することとなる。一方、スチレンの共重合比率が質量比で10%未満である場合には、「離型性」が悪化することとなる。そこで、本発明においては、紫外線吸収性単量体の共重合比率が質量比で5%〜25%であり、スチレンの共重合比率が質量比で10%〜95%の範囲内に規定されている。紫外線吸収性単量体とスチレンがこの範囲で共重合されてなる共重合体を表面層20に含有させることで、「耐光性」、「光沢性」、「離型性」及び「被転写体との接着性」に対する要求を全て満たすことができる表面層20とすることができる。なお、紫外線吸収性単量体とスチレンが上記の範囲で共重合されてなる共重合体とすることで、上記の如く本発明の優位な作用効果を奏することができるが、更なる「離型性」の向上が必要とされる場合には、スチレンの共重合比率は質量比で45%〜95%であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の共重合体は、上記の共重合比率で紫外線吸収性単量体とスチレンが共重合されているものであれば、その他の物質が紫外線吸収性単量体とスチレンとともに共重合されていてもよい。その他の物質としては、表面層20に、耐可塑剤性、擦過性等の表面層に必要な物性を付与することができるアクリル系モノマーを挙げることができる。アクリル系モノマーとしては、従来公知のアクリル系モノマーを適宜選択して用いることができる。このようなアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルメタアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、ラウリルトリデシルアクリレート、ラウリルトリデシルメタアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタアクリレート、セチルステアリルアクリレート、セチルステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート、エチレンジアクリレート、エチレンジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、デカエチレングリコールジアクリレート、デカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタアクリレート、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオ一ルジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリピロピレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタメタアクリレート、ホスファゼンヘキサアクリレート、ホスファゼンヘキサメタアクリレート等が挙げられる。
【0026】
上記に例示されるアクリル系モノマーの中でも、メチルメタアクリレートを特に好適に用いることができる。本発明の共重合体を構成するアクリル系モノマーとしてメチルメタアクリレートを用いることで、表面層20に、耐可塑剤性、擦過性等の表面層に必要な他性能を更に効果的に付与することができる。
【0027】
また、本発明の共重合体は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、交互共重合のいずれであってもよい。
【0028】
また、表面層20の全質量に対し、本発明の共重合体の含有量が50質量%未満である場合には、本発明の各種の効果を必要な程度まで向上させることができることができないおそれが生じうる。この点を考慮すると、本発明の共重合体は、表面層20の全質量に対し50質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の表面層20は、基材からの「離型性」と、被転写体との「接着性」に優れ、かつ、被転写体、例えば、画像が形成された印画物に高い「光沢性」と「耐光性」とを同時に付与している。つまり、表面層20のみで、従来の保護層転写シートの分野で一般的に称呼されている、剥離層や接着層としての機能を発揮することができる。
【0030】
なお、表面層20は、上述したように被転写体上に保護層転写体2を転写した際の最表面に位置する層であればその名称についていかなる限定もされず、表面層20は、保護層、剥離層、接着層、導電層等いかなる名称であってもよい。
【0031】
また、表面層20は、スチレンと紫外線吸収性単量体との共重合体を主体とし、必要に応じて、その他の成分を添加することもできる。その他の成分について特に限定はなく、例えば、以下に例示される接着層を構成する材料や、フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0032】
表面層20の形成方法としては、上記共重合体の1種または2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥することにより形成できる。なお、表面層20の厚さは、0.1μm〜5μm程度が好ましい。
【0033】
また、保護層転写体2は、表面層20を含む2以上の層からなる積層構造をとっていてもよい。例えば、図4に示すように、保護層転写体2が、基材側から表面層20、接着層21がこの順で直接又は間接的に積層された積層構造であってもよい。以下に、保護層転写体2の構成として任意に設けられる接着層21について説明する。
【0034】
(接着層)
本発明の保護層転写体2を被転写体上に良好に接着せしめるために、図4に示すように保護層転写体2が、本発明における必須の表面層20と、接着層21との積層構造であってもよい。ここで、本発明の表面層20は、被転写体との接着性を有することから、必ずしも被転写体との接着を目的とする接着層21を設ける必要はなく、接着層は任意の構成である。
【0035】
また、図4に示すように、被転写体上に保護層転写体2を良好に接着させるための接着層21は、保護層転写体2を構成する層のうち、基材1側から最も遠い距離にある位置に設けられていることが好ましい。なお、接着層21を設けずに、以下に例示される接着層を構成する材料を表面層20に添加してもよい。
【0036】
接着層21の材料については特に限定はなく、従来公知の接着性樹脂等を適宜選択して用いることができる。このような接着性樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル─酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン─アクリル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂が挙げられる。接着層21の形成方法としては、上記樹脂の1種または2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥することにより形成できる。なお、接着層21の厚さは、0.1μm〜5μm程度が好ましい。
【0037】
また、接着層21は、上記樹脂と、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物等の有機系の紫外線吸収剤や、また亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄等の酸化物の如き無機系の紫外線吸収能を有する微粒子の添加剤を加えることができる。また、添加剤として、着色顔料、白色顔料、体質顔料、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等も適宜、必要に応じて使用することができる。
【0038】
また、図示しないが、保護層転写体2を構成する層として、公知の導電剤を、バインダー樹脂中に含有させることにより形成される導電層を表面層20とともに、別途設けることとしてもよい。また、該導電層の材料を表面層20に添加することで導電性の機能を備えた表面層20としてもよい。
【0039】
(離型層)
また、図4に示すように、基材1と保護層転写体2との間に、保護層転写体2の離型性を好適にするための離型層24を設けることとしてもよい。なお、上述したように、表面層20は、熱転写時の「離型性」に優れ、離型層を設けなくとも保護層転写体2を基材から剥離することができることから、必ずしも離型層24を設ける必要はなく、離型層24は本発明の保護層転写シート10における任意の構成である。
【0040】
離型層24は、離型性に優れた樹脂であれば従来公知の樹脂を適宜選択して使用可能である。このような樹脂として、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。また、上記樹脂に加え、イソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒等の触媒を用いて形成してもよい。
【0041】
上記離型層は、例えば、上記樹脂を溶剤に溶解させた塗工液を、基材の表面のうち保護層転写体2を形成する領域に、グラビアコーティング法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来から公知の形成手段により、乾燥後塗布量が0.5〜5g/m2程度になるように塗布し、乾燥することにより形成することができる。また、塗工液は、上記樹脂、及び、必要に応じて配合する架橋剤又は触媒を、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール等の適当な溶剤に溶解させることにより調製することができる。このような塗工液は、固形分濃度が約5〜50質量%であることが好ましい。
【0042】
なお、保護層転写シート10と被転写体を対向させて、耐熱滑性層側からサーマルヘッドやレーザー等による加熱手段により、被転写体上に保護層転写体2を転写した際に、離型層24は基材1側に残存する。
【0043】
(耐熱滑性層)
また、図4に示すように、基材1の他方の面(図1に示す場合にあっては基材1の下面)に、耐熱性、及び印画時におけるサーマルヘッドの走行性等を向上させるための耐熱滑性層25を設けてもよい。なお、耐熱滑性層25は本発明の保護層転写シート10における任意の構成である。
【0044】
耐熱滑性層25は、従来公知の熱可塑性樹脂等を適宜選択して形成することができる。このような、熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸エステル系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;スチレンアクリレート系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリルアミド樹脂;ポリビニルクロリド樹脂;ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂;等の熱可塑性樹脂、これらのシリコーン変性物等が挙げられる。中でも、耐熱性等の点から、ポリアミドイミド系樹脂又はそのシリコーン変性物等を好ましく用いることができる。
【0045】
また、上記耐熱滑性層25は、上記熱可塑性樹脂に加え、スリップ性を向上させる目的で、ワックス、高級脂肪酸アミド、エステル、金属石鹸、シリコーンオイル、界面活性剤等の離型剤;フッ素樹脂等の有機粉末;シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子;等の各種添加剤を配合してもよい。
【0046】
上記耐熱滑性層25の形成方法についても特に限定はなく、上記熱可塑性樹脂(必要に応じて所望により配合する添加剤を添加して)を溶媒に分散又は溶解させた塗工液を、基材1の他方の面(すなわち保護層転写体2の反対側の面上)に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、塗布し、乾燥することにより形成することができる。また、上記耐熱滑性層25の厚みは、耐熱性等に優れた保護層転写シートが得られる点で、乾燥後塗布量で2g/m2以下にするのが好ましく、0.1〜1g/m2にすることがより好ましい。
【0047】
(耐熱滑性プライマー層)
また、上記耐熱滑性層25と基材1との間に、耐熱滑性層25と基材1との接着を向上させるための、プライマー層(図示しない)を設けてもよい。プライマー層は、一般に、熱可塑性樹脂からなるものであり、上記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等、接着性を示すものであれば特に限定されない。
【0048】
また、図示しないが、本発明の保護層転写シートは、同一基材1上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の各色相を有する染料層及び/または熱溶融性インキ層と、保護層を、面順次に設けたものを用いて、同一のサーマルヘッドで、熱転写画像と保護層転写体2とを連続的に熱転写して、効率的に使用することもできる。
【0049】
(転写方法)
本発明の保護層転写シートは、上記の基材1の耐熱滑性層側(保護層転写体2が設けられている面と異なる面)からサーマルヘッド等の加熱手段により、所定箇所を、加熱・加圧することで、保護層転写体2を、被転写体上に転写することができる。加熱手段についても特に限定はなく、サーマルヘッド等の加熱手段の他、熱板、ホットスタンパー、熱ロール、ラインヒーター、アイロンなどを用いて転写を行うこととしてもよい。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0051】
(実施例1)
基材シートとして、厚さ6μmのポリエチレンテレフタテートフィルム(ルミラー 東レ(株)製)を用い、該基材シートの一方の面に、下記の耐熱滑性層用塗工液を、グラビアコーターを用いて、乾燥後塗工量が1.0g/m2となるよう塗布、乾燥して耐熱滑性層を形成した。次に、上記基材シートの耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に、下記の保護層用塗工液を、グラビアコーターを用いて、乾燥後塗工量が1.0g/m2となるよう塗布、乾燥して保護層を形成することで、実施例1の保護層転写シートを製造した。
【0052】
<耐熱滑性層用塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 三井化学ポリウレタン(株)製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株)製)
トルエン 42.5部
メチルエチルケトン 42.5部
【0053】
<保護層用塗工液1>
・共重合体 20部
メチルメタクリレート(共重合比率(15%))
スチレン(共重合比率(75%))
3−(2H−1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリレート(共重合比率(10%))
・トルエン 40部
・メチルエチルケトン 40部
【0054】
(実施例2〜7)
上記保護層用塗工液1における共重合体の共重合比率を下表1に示す比率に変更した保護層用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同様にして、実施例2〜7の保護層転写シートを製造した。なお、表1における「紫外線吸収性単量体」とは、「3−(2H−1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリレート」を意味する。
【0055】
【表1】

【0056】
(比較例1)
保護層用塗工液1を下記の保護層用塗工液2に変更した以外は全て実施例1と同様にして、比較例1の保護層転写シートを製造した。
<保護層用塗工液2>
・メチルメタクリレート(100%) 20部
・トルエン 40部
・メチルエチルケトン 40部
【0057】
(比較例2)
保護層用塗工液1を下記の保護層用塗工液3に変更した以外は全て実施例1と同様にして、比較例2の保護層転写シートを製造した。
<保護層用塗工液3>
・共重合体 20部
メチルメタクリレート(共重合比率(25%))
スチレン(共重合比率(75%))
・トルエン 40部
・メチルエチルケトン 40部
【0058】
<<接着性評価>>
実施例1〜7及び比較例1、2の保護層転写シートを用いて、キヤノン(株)製カラーインク/ペーパーセットKP−36IP(商品名)の熱転写受像シートと組み合わせ、下記条件にて保護層転写体を転写した試料を作成した。転写後30分以上経ってから、保護層転写領域の上にメンディングテープ(ニチバン(株)製)を親指で2往復こすりつけて貼って、その後すぐに90°垂直剥離を行い、各階調の保護層転写体の有無を調べ、下記基準に基づき評価した。評価結果を表2に示す。
【0059】
(印画条件)
サーマルヘッド;KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
発熱体平均抵抗値;2994(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印加電力;0.10(w/dot)
1ライン周期;5(msec.)
印字開始温度;40(℃)
印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を70%に固定し、ライン周期あたりのパルス数を180に固定した。
【0060】
(評価基準)
○:保護層転写体が印画物上に残った。
×:保護層転写体がテープ剥離で剥がされた。
【0061】
<<剥離力評価>>
実施例及び比較例の保護層転写体(保護層)の離型性を評価するにあたって、実施例1〜7及び比較例1、2の保護層転写シートを用いて、キヤノン(株)製カラーインク/ペーパーセットKP−36IP(商品名)の熱転写受像シートと組み合わせ、上記接着性評価と同一印画条件にて保護層転写体を転写し、被転写体と保護層転写シートとが接着した状態の試料を作成した。転写後3分以内に、保護層転写シートを被転写体から180°剥離する時の剥離力を下記装置にて測定し、下記基準に基づき評価した。評価結果を表2に示す。
(剥離力測定装置)
剥離装置:インストロン社製 万能型材料試験機 5565
剥離速度:300mm/分
(評価基準)
◎:剥離力5g未満
○:剥離力5g以上50g未満
△:剥離力50g以上であるが使用上問題ないレベルである
×:測定不能(リボン貼付・凝集破壊起因)
【0062】
<<耐光性評価>>
キヤノン(株)製カラーインク/ペーパーセットKP−36IP(商品名)の熱転写シートと熱転写受像シートを組み合わせ、ライン周期あたりの印加パルス数を下記に変更した以外は上記接着性評価試験と同様の印画条件にて熱転写を行い、グレーの16階調グラデーション画像を形成した。
(印加パルス数)
階調によって、ライン周期あたりのパルス数を0ステップでは0個、1ステップでは17個、2ステップでは34個と、0から255個まで17個毎に順次増加させることにより、0ステップから15ステップまでの16階調を制御した。次に、上記方法で形成したグラデーション画像上に、実施例1〜7及び比較例1、2の保護層転写シートを用いて、ライン周期あたりのパルス数を180に固定した以外は上記接着性評価試験と同様の印画条件にて保護層転写体を転写し、試料を作成した。
【0063】
上記で得られた保護層転写体が転写済みの実施例1〜7及び比較例1、2の印画物について、下記条件のキセノンフェードメーターにより耐光性試験を行った。
(耐光性試験条件)
照射試験機:アトラス社製 Ci35
光源:キセノンランプ
フィルター:内側=IRフィルター、外側=ソーダライムガラス
ブラックパネル温度:45℃
【0064】
次いで、下記の光学濃度計を用い、Visualフィルターで、グレー画像の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、下記式により、ΔE*を算出して、各実施例、及び比較例の印画物の耐光性を評価した。評価結果を表2に示す。
ΔE*=((保存前後のL*値の差)2+(保存前後のa*値の差)2+(保存前後のb*値の差)21/2
(測色条件)
測色器:分光測定器SpectroLino(GretagMacbeth社製)
光源:D65
視野角:2°
濃度測定用フィルター:ANSI Status A
【0065】
<<光沢性評価>>
実施例1〜7及び比較例1、2の保護層転写シートを用いて、キヤノン(株)製カラーインク/ペーパーセットKP−36IP(商品名)の熱転写受像シートと組み合わせ、上記接着性評価と同一印画条件にて保護層転写体を転写した試料を作成した。上記で得られた保護層転写体が転写済みの実施例1〜7及び比較例1、2の印画物について、下記装置にて20度反射光沢度を測定した。結果を表2に示す。
(光沢度測定装置)
BYK Gardner社製 Micro−Haze Plus
【0066】
【表2】

【0067】
表2からも明らかなように、本発明の構成を具備する実施例の保護層転写シートによれば、光沢性、耐光性ともに良好な結果を得ることができた。一方、比較例の保護層転写シートは、実施例と比較して、光沢性、耐光性のいずれか一方又は双方に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0068】
1 基材
2 保護層転写体
10 保護層転写シート
20 表面層
21 接着層
24 離型層
25 耐熱滑性層
100 被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の一方の面上に設けられ1又は2以上の層から構成される保護層転写体とを有し、被転写体上に前記保護層転写体を転写するための保護層転写シートであって、
前記保護層転写体を構成する層のうち、被転写体上に転写された後の最表面に位置する表面層には、スチレンと紫外線吸収性単量体とを少なくとも共重合してなる共重合体が含有されており、
前記共重合体における、前記スチレンの共重合比率が10%〜95%であり、前記紫外線吸収性単量体の共重合比率が5%〜25%であることを特徴とする保護層転写シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250400(P2012−250400A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123820(P2011−123820)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】