説明

保護継電装置

【課題】保護継電ユニットを収納する収納体に対して、保護継電ユニットを、保護継電ユニットの保護継電方式を問わずに、自由に収納できる保護継電装置を提供する。
【解決手段】装置架30に固定した電気所共通保護継電器盤20の収納部22に、リレーユニット10を収納することによって構成される保護継電装置において、収納部22にリレーユニット10を収納した際に、入力インターフェース36a〜36cから入力した複数の入力項目の信号を、リレーユニット10に入力可能な状態とし、リレーユニット10は、入力した入力項目の中から、ROMに記憶している入力項目の信号を選択し、その他の信号は無視し、選択した入力項目の信号に基づいて事故の有無を判定して、遮断機を動作させる制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に何らかの事故が発生した場合に、電力系統から事故区間を電気的に切り離す保護継電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、保護継電装置は、保護継電リレーを有する保護継電盤と、互いに異なる保護継電方式の複数の保護継電盤を収納する装置架とによって構成されている。そして、保護継電リレーは、電力系統からの入力信号を監視し、何らかの事故を検知した場合に、遮断機に制御信号を送って電力系統における事故区間を切り離すことにより、電力系統を保護している。
【0003】
また、従来、互いに異なる保護継電方式の複数の保護継電ユニットを備えた保護継電装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数個のディジタル保護制御装置を収納したディジタル保護制御装置盤について開示されている。また、それぞれのディジタル保護制御装置は、変電所の変圧器等の機器、母線、送電線、配電線その他電力系統を構成する設備・機器を1回線単位で保護・制御するものであることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、リレーユニットを前後に分けて、前面側にリレー収納部、背面側を外部ケーブル接続用端子台部としかつこの2つの部分を1つのユニットフレーム内に構成し、リレー収納部と外部ケーブル接続端子台間の接続をユニット内配線として実施できるようにしたことについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−218300号公報
【特許文献2】実開平7−30510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気所に設置される保護継電装置の中には、入力項目が一部共通している保護継電方式のものがある。例えば、母線保護継電装置(BP)、自動復旧装置(ARE)、系統UF継電装置(UF)、緊急負荷軽減装置(BGF)等は、各母線電圧、各回線電流、各回線CB・LS条件等の入力項目の中のいずれかの信号を用いて、事故の有無を監視している。
【0007】
そこで、各保護継電装置をユニット化して1つの収納体に集約させ、互いに共有可能な入力項目は共有させることにより、部品点数の削減やユニットの管理を容易にすることが考えられる。しかしながら、従来、1つの収納体に集約される複数の保護継電ユニットは、共通の入力項目があったとしても、全体の入力項目は、それぞれ保護継電ユニットの保護継電方式に応じて異なっている。このため、1つの収納体において、保護継電方式に応じて保護継電ユニットを収納する収納部が決まっており、この収納部に別の保護継電方式の保護継電ユニットを収納することができなかった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決し、保護継電ユニットを収納する収納体に対して、保護継電ユニットを、保護継電ユニットの保護継電方式を問わずに、自由に収納できる保護継電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、次に記載する構成を備えている。
【0010】
(1) 電力系統から事故の判定対象となる複数の入力項目の信号を入力する入力部を有する収納体と、当該収納体に収納され、前記入力部を介して入力される信号に基づいて事故の有無を判定する判定部、及び当該判定部が事故有りと判定した場合に、前記電力系統に接続された遮断機を動作させる制御信号を出力する出力部を有する保護継電ユニットとを備えた保護継電装置において、前記収納体は、前記保護継電ユニットを収納する収納部を有し、前記保護継電ユニットは、前記保護継電ユニットが前記収納部に収納された場合に、前記入力部に電気的に接続して、前記入力部が入力した全ての入力項目の信号の入力を可能な状態にする接続部と、前記保護継電ユニットの保護継電方式に対応する、事故の判定対象となる入力項目を記憶する記憶部と、前記接続部を介して入力した入力項目の中から、前記記憶部に記憶している入力項目を選択する選択部とを備え、前記判定部は、前記選択部が選択した入力項目の信号に基づいて事故の有無を判定することを特徴とする保護継電装置。
【0011】
(1)によれば、保護継電ユニットを収納部に収納することにより、保護継電ユニットは、電力系統から送信される事故の判定対象となる各種の入力項目の信号を、事故の有無の判定に使用しない入力項目の信号を含めて全て入力可能にする状態となる。そして、保護継電ユニットは、入力した信号の中から、記憶部に記憶されている入力項目の信号だけを選択して、事故の有無の判断を行う。これにより、記憶部に記憶されている入力項目を変えることによって、保護継電ユニットの構造を変えることなく、保護継電ユニットの保護継電方式を変えることが可能になる。その結果、保護継電方式を問わず、収納部及び保護継電ユニットの構造を共通化することが可能になり、電気所において必要な保護継電方式の保護継電装置を自由に構成することが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記保護継電ユニット収納体は、前記収納部を複数備え、複数の前記収納部は、同一構造であることを特徴とする保護継電装置。
【0013】
(2)によれば、各々保護継電方式が異なる保護継電ユニットを、任意の収納部に収納することにより、1つの収納体に、複数の保護継電方式の保護継電機能を集約することが可能になる。
【0014】
(3) (2)において、前記入力部が入力する入力項目、及び前記出力部が出力する出力項目は、複数の前記収納部にそれぞれ収納する前記保護継電ユニットにおいて、同一であることを特徴とする保護継電装置。
【0015】
(3)によれば、複数の電気系統に対応して設けられる入力インターフェース(信号入力基板32)の構成、及び保護継電ユニットの出力部からの制御信号を解析し、所定の機器に制御信号を出力させるための出力インターフェース(信号出力基板34)の共通化を図ることができる。
【0016】
(4) (2)、(3)において、前記保護継電ユニットは、前記保護継電方式に対応する指標を備え、前記収納部は、前記指標を検出する検出部を有し、前記収納体は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記保護継電ユニットの保護継電方式を報知する表示部を備えたことを特徴とする保護継電装置。
【0017】
(4)によれば、どのような保護継電方式の保護継電ユニットが収納されているかを自動的に判別することが可能になり、この判別結果は表示部によって視認可能になる。
【0018】
(5) (4)において、前記表示部は、前記収納体に対して着脱自在なユニット体であることを特徴とする保護継電装置。
【0019】
(5)によれば、表示部をオプションとすることにより、収納部に、前回とは異なる保護継電方式の保護継電ユニットを収納した場合等、保護継電装置の使用状況にあわせて表示部を付け替えることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保護継電ユニットを収納する収納体に対して、保護継電ユニットを、保護継電ユニットの保護継電方式を問わずに、自由に収納することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における保護継電装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態における保護継電装置の配線を示す説明図である。
【図3】信号入力基板の回路構成を示すブロック図である。
【図4】リレーユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】リレーユニットの構成及びスイッチと表示装置との対応関係を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の保護継電装置を用いたシステム例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における保護継電装置の概要を示す説明図である。保護継電装置1は、保護継電ユニットに相当するリレーユニット10と、電気所共通保護継電器盤20と、電気所共通保護継電器盤20を支持する装置架30とを備えている。
【0024】
リレーユニット10は、電力系統から、事故の判定対象となる信号を入力し、この入力信号に基づいて、電力系統に事故が発生したか否かを判断し、及び事故であると判断した場合に、電力系統に接続された遮断機150、152、154(図6参照)を動作させる制御信号を出力して、電力系統から事故区間を電気的に切り離すように制御するものである。
【0025】
電気所共通保護継電器盤20には、リレーユニット10を収納する収納部22、及びリレーユニット10の保護継電方式を報知する表示ユニット50が設けられている。本実施形態において、電気所共通保護継電器盤20には4つの収納部22が備えられている。これら4つの収納部22は、リレーユニット10を収納するための凹型の形状ばかりでなく、信号の入出力用の端子配列も含めて同一構成である。更に、各収納部22の下部に、各収納部22に対応して表示ユニット50がそれぞれ着脱自在に4つ設けられている。また、表示ユニット50は、4つの表示ランプ50a、50b、50c、50dを備えている。これら表示ランプ50a、50b、50c、50dは、表示ユニット50が電気所共通保護継電器盤20に設置された場合に、横方向に並列配置される。このように、電気所共通保護継電器盤20が、保護継電ユニット(リレーユニット10)を収納する収納体に相当する。
【0026】
装置架30は、電気所共通保護継電器盤20を固定する架台である。また、この装置架30には、電気所共通保護継電器盤20の他に、電気系統から、事故の判定対象となる信号を入力するための回路が実装された信号入力基板32、及びリレーユニット10から出力された制御信号を外部送信するための回路が実装された信号出力基板34が支持されている。
【0027】
なお、本実施形態においては、3回線の電力系統における事故の有無の検知を行うため、3つの信号入力基板32が装置架30に設置されている。また、電気所共通保護継電器盤20には4つ収納部22があるため、4つの収納部22に収納されるリレーユニット10に対応させて4つの信号出力基板34が装置架30に設置されている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態における信号入力基板、電気所共通保護継電器盤及び信号出力基板の配線を示す説明図である。なお、以下の説明の便宜上、4つの収納部22を、それぞれ、収納部22a、22b、22c、22dと称することにする。また、3つの信号入力基板32を、それぞれ、信号入力基板32a、32b、32cと称し、4つの信号出力基板34を、それぞれ、信号出力基板34a、34b、34c、34dと称することにする。
【0029】
収納部22a、22b、22c、22dには、それぞれ、3つの入力端子24(24a、24b、24c)が配置されている。また、収納部22a、22b、22c、22dには、それぞれ、出力端子26が配置されている。更に、収納部22a、22b、22c、22dの内部には、スイッチ28a、28b、28c、28dが、収納部22aの片方の壁面に沿って縦列に配置されている。スイッチ28aは、表示ランプ50a(図1参照)を点灯、消灯させるものである。同様に、スイッチ28b〜28dは、表示ランプ50b〜50d(図1参照)を点灯、消灯させるものである。
【0030】
また、信号入力基板32a、32b、32cには、それぞれ、電力系統からの信号を入力する入力インターフェース36a、36b、36cが設けられている。また、信号入力基板32a、32b、32cには、それぞれ、出力端子40a、40b、40cが設けられている。出力端子40aは、4つの収納部22a、22b、22c、22dの入力端子24aに電気的に接続されている。同様に、出力端子40b、40cは、4つの収納部22b〜22dの入力端子24b、24cに電気的に接続されている。このように、入力端子24a〜24cは入力部に相当する。
【0031】
また、信号出力基板34a、34b、34c、34dには、それぞれ、入力端子42a、42b、42c、42dが設けられている。収納部22aの出力端子26は、入力端子42aに電気的に接続されている。同様に、収納部22b〜22dの出力端子26は、それぞれ、入力端子42b〜42dに電気的に接続されている。なお、信号出力基板34a、34b、34c、34dには、図示していないが、リレーユニット10から出力されるシリアル信号をパラレル変換する回路が設けられている。そして、パラレル変換された信号は、出力インターフェース38a、38b、38c、38dを介して外部出力される。
【0032】
図3は、信号入力基板の回路構成を示すブロック図である。信号入力基板32aには、入力インターフェース36a、4つのA/D変換回路44及びシリアル変換回路46が実装されている。なお、図3は、信号入力基板32aの回路構成を示すものであり、信号入力基板32b、32cについては、信号入力基板32aと同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施形態においては、入力インターフェース36aに、送電線の線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件等の入力項目の信号が入力される。ここで、開閉器条件としては、CB、LLS、甲LS、乙LS等の条件がある。
【0034】
線路電圧、母線電圧、正相電流及び零相電流の信号線には、A/D変換回路44が接続されており、A/D変換された信号が、開閉器条件の信号とともにシリアル変換回路46に入力される。そして、線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件の入力項目の信号は、シリアル変換回路46によってシリアル変換されて、出力端子40a及び入力端子24aを介して、収納部22a、22b、22c、22dにそれぞれ収納されたリレーユニット10に入力される。
【0035】
このように本実施形態によれば、収納部22a、22b、22c、22dにそれぞれ収納したリレーユニット10に対して同一の入力項目の信号、すなわち、線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件の入力項目の信号が入力されるようになる。
【0036】
図4は、リレーユニットの電気的構成を示すブロック図である。リレーユニット10は、CPU100、ROM102及びRAM104が実装された回路基板、並びに電源部106を備えている。なお、図4は、リレーユニット10aの回路構成を示すものであり、リレーユニット10b〜10dについては、リレーユニット10aと同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
CPU100には、ROM102及びRAM104が接続されており、ROM102には、信号の入力処理を実行させる入力プログラム、事故発生の有無を判定する判定プログラム、制御信号の出力処理を実行させるための出力プログラムが記憶されている。このように、ROM102が記憶部に相当する。
【0038】
入力プログラムは、入力端子24aから入力される各種入力項目の信号の中から、事故の判定に必要な入力項目の信号を選択するようにCPU100を機能させるプログラムであり、入力プログラムの中には、リレーユニット10の保護継電方式における事故の判定に必要な入力項目のデータが含まれている。
【0039】
そして、CPU100は、入力プログラムに基づいて、入力端子24aから入力される各種入力項目の信号の中から、事故の判定に必要な入力項目の信号を選択し、判定プログラムに基づいて事故の有無の判定を行う。事故の有無の判定結果は、出力プログラムに基づいて、判定対象の電力系統を示す情報とともに、出力端子26から信号出力基板34aにシリアル転送される。このように、CPU100は、記憶部に記憶している入力項目を選択する選択部、事故の有無を判定する判定部に相当する。
【0040】
なお、リレーユニット10b〜10dについては、リレーユニット10aと同一の構成であるため、リレーユニット10a〜10dから出力される信号の項目(出力項目)は、全て同一である。このため、図2に示す信号出力基板34a、34b、34c、34dは、全て同一のものを使用することが可能である。
【0041】
RAM104は、CPU100が各種のデータ処理を行うためのフィールドとして用いられる。また、電源部106は、CPU100、ROM102及びRAM104に対して電圧を供給するものである。
【0042】
図5は、リレーユニットの構成及び収納部周辺の構成を示す説明図である。収納部22内には、スイッチ28b〜28dが設けられており、収納部22の直下には、表示ユニット50を取り付ける取付部51が設けられている。表示ユニット50は、取付部51に着脱自在に外部接続される。そして、表示ユニット50を取付部51に外部接続することにより、スイッチ28aによって表示ランプ50aが点灯、消灯される回路が形成される。同様に、スイッチ28b〜28dによって、表示ランプ50b〜50dが点灯、消灯される回路が形成される。
【0043】
また、リレーユニット10には、3本の入力用の接続端子14と1本の出力用の接続端子16が立設している。接続端子14及び接続端子16は、筐体12から立設した接続ピンである。収納部22内には、3つの入力端子24a、24b、24c、及び出力端子26が配置されている。入力端子24a、24b、24c及び出力端子26は、接続端子14及び接続端子16が挿入される孔型の端子である。そして、リレーユニット10を収納部22に収納することにより、3本の入力用の接続端子14と1本の出力用の接続端子16が、4つの入力端子24a、24b、24c、及び出力端子26に嵌合して、電気的に接続させる。このように、接続端子14は接続部に相当する。また、出力端子26は出力部に相当する。
【0044】
これにより、入力インターフェース36a〜36cに入力された線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件等の入力項目の信号は、入力端子24a、24b、24c及び接続端子14、14、14を介して、全てリレーユニット10に入力されることになる。
【0045】
本実施形態においては、図5に示すように、BPリレーユニット10a、AREリレーユニット10b、BGFリレーユニット10c及びUFリレーユニット10dの4種類の保護継電方式のリレーユニット10が用意されている。
【0046】
図5に示すように、BPリレーユニット10aの突出部12aは、筐体12の一側面の一端部に形成されており、AREリレーユニット10bの突出部12aは、BPリレーユニット10aの突出部12aの位置の隣に形成されており、同様に、BGFリレーユニット10cの突出部12aは、AREリレーユニット10bの突出部12aの位置の隣に形成されており、UFリレーユニット10dの突出部12aは、BGFリレーユニット10cの突出部12aの位置の隣に形成されている。
【0047】
収納部22(22a)にBPリレーユニット10aが収納された場合には、最上のスイッチ28aが、BPリレーユニット10aの突出部12aによって押圧され、最左の表示ランプ50aが点灯する。また、収納部22(22b)にAREリレーユニット10bが収納された場合には、上から二番目のスイッチ28bが、AREリレーユニット10bの突出部12aによって押圧され、左から二番目の表示ランプ50bが点灯する。同様に、収納部22(22c)にBGFリレーユニット10cが収納された場合には、上から三番目のスイッチ28cが、BGFリレーユニット10cの突出部12aによって押圧され、左から三番目の表示ランプ50cが点灯する。収納部22(22d)にUFリレーユニット10dが収納された場合には、最下のスイッチ28dが、UFリレーユニット10dの突出部12aによって押圧され、最右の表示ランプ50dが点灯する。このように、表示ユニット50は表示部に相当する。また、突出部12aは指標に相当し、スイッチ28a〜28dは検出部に相当する。
【0048】
なお、各リレーユニット10は、任意の収納部22に収納可能であり、例えば、収納部22bにBPリレーユニット10aが収納された場合には、最上のスイッチ28aが押圧され、収納部22bの下に設置した表示ユニット50の最左の表示ランプ50aが点灯する。
【0049】
このように、表示ユニット50の表示態様によって、収納部22にどのような保護継電方式のリレーユニット10が収納されているか判別できるようになる。
【0050】
また、図5において、BPリレーユニット10aのROM102(図4参照)には、BPリレーユニット10aを収納部22に収納することにより、母線保護継電装置(BP)として機能させる入力プログラム、判定プログラム及び出力プログラムが記憶されている。
【0051】
AREリレーユニット10bのROM102(図4参照)には、AREリレーユニット10bを収納部22に収納することにより、自動復旧装置(ARE)として機能させる入力プログラム、判定プログラム及び出力プログラムが記憶されている。
【0052】
BGFリレーユニット10cのROM102(図4参照)には、BGFリレーユニット10cを収納部22に収納することにより、緊急負荷制限装置(BGF)として機能させる入力プログラム、判定プログラム及び出力プログラムが記憶されている。
【0053】
UFリレーユニット10dのROM102(図4参照)には、UFリレーユニット10dを収納部22に収納することにより系統UF継電装置(UF)として機能させる入力プログラム、判定プログラム及び出力プログラムが記憶されている。
【0054】
例えば、BPリレーユニット10aの入力プログラムは、母線電圧、正相電流、開閉器条件としてCB、LLS、甲LS、乙LSの条件を使用して、他の入力項目の信号は無視するようにプログラムされている。また、AREリレーユニット10bの入力プログラムは、線路電圧、母線電圧、開閉器条件としてCB、LLS条件を使用して、他の入力項目の信号は無視するようにプログラムされている。UFリレーユニット10dの入力プログラムは、母線電圧を使用して、他の入力項目の信号は無視するようにプログラムされている。BGFリレーユニット10cの入力プログラムも同様に、使用する信号を選択し、他の入力項目の信号は無視するようにプログラムされている。
【0055】
図6は、本発明の一実施形態の保護継電装置を用いたシステム例を示す説明図である。図6に示すシステムは、保護継電装置1と、受電盤130、132、134、遠隔監視制御装置140、142、144、遮断機150、152、154、表示装置160、162、164によって構成されている。
【0056】
3つの電気系統の送電線路、すなわちA線路、B線路、C線路の3回線を、保護継電装置1の入力インターフェース36a、36b、36c(図2参照)に入力する。そして、リレーユニット10によっていずれかの線路に事故が検知された場合に、保護継電装置1から、A線路、B線路、C線路に設けられている受電盤130、132、134を介して、遮断機150、152、154を動作させて、事故区間を電気系統から切り離すものである。
【0057】
図6に示すように、A〜C線路から、保護継電装置1に信号入力する入力項目は、全て共通であり、本実施形態においては、線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件の4つの入力項目の信号が、保護継電装置1に入力される。なお、開閉器条件としては、CB、LLS、甲LS、乙LS等の条件がある。なお、図6においては、BGFリレーユニット10c(図5参照)が記載されていないが、保護継電装置1に備えられているものとする。
【0058】
線路電圧、母線電圧、正相電流及び零相電流の信号線には、図3を用いて前述したように、A/D変換回路44が接続されており、A/D変換された信号が、開閉器条件の信号とともにシリアル変換回路46に入力される。そして、線路電圧、母線電圧、正相電流、零相電流、及び開閉器条件の4つの入力項目の信号は、シリアル変換回路46によってシリアル変換されて、BPリレーユニット10a、AREリレーユニット10b、BGFリレーユニット10c、及びUFリレーユニット10dに入力される。
【0059】
そして、BPリレーユニット10a、AREリレーユニット10b、BGFリレーユニット10c(図5参照)、及びUFリレーユニット10dにおいては、ROM102に記憶された入力プログラムに基づいて、事故の有無の判定に用いる入力項目の信号を入力し、事故の有無の判定に用いない入力項目の信号は無視する。そして、ROM102に記憶された判定プログラムに基づいて、入力信号を解析し、事故の有無を判定する。ここで、BPリレーユニット10a、AREリレーユニット10b、BGFリレーユニット10c、及びUFリレーユニット10dが、事故を検知した場合には、制御信号と、事故が発生した線路を指定する信号が、信号出力基板34a、34b、34c、34dにシリアル転送される。そして、信号出力基板34a、34b、34c、34dにおいて、BPリレーユニット10a、AREリレーユニット10b、BGFリレーユニット10c、及びUFリレーユニット10dからのシリアル信号は、トリップ出力と表示出力にパラレル変換されて、事故と判定された電気系統の受電盤130、132、134にそれぞれ出力される。
【0060】
ここで、信号出力基板34の制御回路(図示しない)は、シリアル信号に基づいて事故が発生した線路を判定して、トリップ出力と表示出力の出力先を決定する。すなわち、信号出力基板34は、A線路に事故が発生した場合には受電盤130にトリップ出力、遠隔監視制御装置140に表示出力をそれぞれ送信する。同様に、信号出力基板34は、B、C線路に事故が発生した場合には受電盤132、134にトリップ出力、遠隔監視制御装置142、144に表示出力をそれぞれ送信する。
【0061】
受電盤130は、トリップ出力を入力すると、遮断機150に駆動出力を印加して、遮断機150を動作させ、事故区間をA線路から切り離す。また、遠隔監視制御装置140は、表示出力を入力すると、A線路に事故が発生した旨を表示装置160に表示させる。
【0062】
受電盤132、134は、トリップ出力を入力すると、遮断機152、154に駆動出力を印加して、遮断機152、154を動作させ、事故区間をB、C線路から切り離す。また、遠隔監視制御装置142、144は、表示出力を入力すると、B、C線路に事故が発生した旨を表示装置162、164に表示させる。
【0063】
具体的に、例えば、AREリレーユニット10b(自動復旧装置)が、A線路に事故が発生と判定した場合には、AREリレーユニット10bから信号出力基板34bに、A線路に事故が発生した旨を示すシリアル信号が送られる。そして、信号出力基板34bは、A線路に事故が発生した旨を示すシリアル信号を、トリップ出力と表示出力にパラレル変換し、出力インターフェース38bにおける受電盤130に接続されている出力ポート、及び遠隔監視制御装置140に接続されている出力ポートから、それぞれトリップ出力と表示出力が出力される。
【0064】
受電盤130は、トリップ出力を入力すると、遮断機150に駆動出力を印加して、遮断機150を動作させ、事故区間をA線路から切り離す。また、遠隔監視制御装置140は、表示出力を入力すると、A線路に事故が発生した旨を表示装置160に表示させる。
【0065】
また、例えば、AREリレーユニット10b(自動復旧装置)が、B線路に事故が発生と判定した場合には、AREリレーユニット10bから信号出力基板34bに、B線路に事故が発生した旨を示すシリアル信号が送られる。そして、信号出力基板34bは、B線路に事故が発生した旨を示すシリアル信号を、トリップ出力と表示出力にパラレル変換し、出力インターフェース38bにおける受電盤132に接続されている出力ポート、及び遠隔監視制御装置142に接続されている出力ポートから、それぞれトリップ出力と表示出力が出力される。
【0066】
そして、受電盤132は、トリップ出力を入力すると、遮断機152に駆動出力を印加して、遮断機152を動作させ、事故区間をB線路から切り離す。また、遠隔監視制御装置142は、表示出力を入力すると、B線路に事故が発生した旨を表示装置162に表示させる。
【0067】
なお、例えば、AREリレーユニット10bが、線路Aにおいて検出していた事故状態が正常状態になり、事故が復旧されたと判断した場合には、事故区間を線路に接続させるように遮断機150を動作させる制御信号を出力する。これにより、線路Aから切り離されていた事故区間が接続され、また、線路Aが復旧した旨が、表示装置160に表示される。
【0068】
以上、説明したように、本実施形態によれば、電力系統(A線路、B線路及びC線路)から送信される、複数の入力項目全ての信号に対応する入力端子を、リレーユニット10の収納部22に設けることにより、リレーユニット10の保護継電方式においては、事故の有無の判定に使用しない入力項目の信号を含めて入力させる。ここで、リレーユニット10のCPU100は、ROM102に記憶された入力プログラムに基づいて、入力した信号の中から事故の有無の判定に必要な信号だけを選択して、事故の判定を行っている。これにより、各種の入力項目の信号は、使用するか否かを問わず全て入力され、必要な入力項目が指定されることにより、保護継電方式を問わずにリレーユニット10の入力部の共通化を図ることが可能になる。また、ROM102に記憶する入力プログラムを変えることによって、リレーユニット10の構造を変えることなく、リレーユニット10の保護継電方式を変えることが可能になる。その結果、保護継電方式が異なるリレーユニット10を、共通の収納部22に収納することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態によれば、電気所共通保護継電器盤20は、同一構造の収納部22を複数備えたことにより、各々保護継電方式が異なるリレーユニット10を任意の収納部22に収納することが可能になり、その結果、1つの電気所共通保護継電器盤20に、保護継電方式が異なる複数のリレーユニット10を集約することが可能になる。
【0070】
また、本実施形態によれば、リレーユニット10が入力する入力項目は、各収納部22において同一であり、リレーユニット10が出力する出力項目は、複数のリレーユニット10にあるため、保護継電方式が異なる複数のリレーユニット10の入力部及び出力部の共通化を図ることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、リレーユニット10は、保護継電方式に対応する指標として突出部12aを備え、収納部22は、突出部12aによってオンオフされるスイッチ28a〜28dを有し、電気所共通保護継電器盤20は、スイッチ28a〜28dのオンオフに基づいて、リレーユニット10の保護継電方式を報知する表示ランプ50a〜50d備えている。これにより、表示ランプ50a〜50dを視認することにより、どのような保護継電方式のリレーユニット10が収納されているか判別可能になる。
【0072】
また、本実施形態によれば、表示ユニット50は、電気所共通保護継電器盤20に対して着脱自在であるため、表示ユニット50をオプションとすることにより、例えば、前回まで所定の収納部22に収納していたリレーユニット10とは、異なる保護継電方式のリレーユニット10を収納部22に収納する場合等、保護継電装置1の使用状況にあわせて表示ユニット50を付け替えることが可能になる。
【0073】
なお、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態においては、A線路、B線路及びC線路の3回線入力であるが、それ以上、例えば、6回線でもよい。
【0074】
上述した実施形態においては、1つの電気所共通保護継電器盤20を装置架30に固定しているが、複数の電気所共通保護継電器盤20を装置架30に固定してもよい。
【0075】
上述した実施形態においては、4つの収納部22に、それぞれ保護継電方式が異なるリレーユニット10を収納したが、例えば、同一の保護継電方式のリレーユニット10を2つの収納部22に収納してもよい。これにより、片方のリレーユニット10が不調の場合に、もう片方のリレーユニット10によって補うことが可能となり、リスクの分散を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0076】
1 保護継電装置
10、10a、10b、10c、10d リレーユニット
12 筐体
12a 突出部
14、16 接続端子
20 電気所共通保護継電器盤
22、22a、22b、22c、22d 収納部
24、24a、24b、24c 入力端子
26 出力端子
28a、28b、28c、28d スイッチ
30 装置架
32、32a、32b、32c 信号入力基板
34、34a、34b、34c、34d 信号出力基板
36a、36b、36c 入力インターフェース
40a、40b、40c 出力端子
42a、42b、42c、42d 入力端子
44 変換回路
46 シリアル変換回路
50 表示ユニット
50a、50b、50c、50d 表示ランプ
51 取付部
100 CPU
102 ROM
104 RAM
106 電源部
130、132、134 受電盤
140、142、144 遠隔監視制御装置
150、152、154 遮断機
160、162、164 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から事故の判定対象となる複数の入力項目の信号を入力する入力部を有する収納体と、
当該収納体に収納され、前記入力部を介して入力される信号に基づいて事故の有無を判定する判定部、及び当該判定部が事故有りと判定した場合に、前記電力系統に接続された遮断機を動作させる制御信号を出力する出力部を有する保護継電ユニットとを備えた保護継電装置において、
前記収納体は、前記保護継電ユニットを収納する収納部を有し、
前記保護継電ユニットは、
前記保護継電ユニットが前記収納部に収納された場合に、前記入力部に電気的に接続して、前記入力部が入力した全ての入力項目の信号の入力を可能な状態にする接続部と、
前記保護継電ユニットの保護継電方式に対応する、事故の判定対象となる入力項目を記憶する記憶部と、
前記接続部を介して入力した入力項目の中から、前記記憶部に記憶している入力項目を選択する選択部とを備え、
前記判定部は、前記選択部が選択した入力項目の信号に基づいて事故の有無を判定することを特徴とする保護継電装置。
【請求項2】
前記収納体は、前記収納部を複数備え、
複数の前記収納部は、同一構造であることを特徴とする請求項1記載の保護継電装置。
【請求項3】
前記入力部が入力する入力項目、及び前記出力部が出力する出力項目は、複数の前記収納部にそれぞれ収納する前記保護継電ユニットにおいて、同一であることを特徴とする請求項2記載の保護継電装置。
【請求項4】
前記保護継電ユニットは、前記保護継電方式に対応する指標を備え、
前記収納部は、前記指標を検出する検出部を有し、
前記収納体は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記保護継電ユニットの保護継電方式を報知する表示部を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の保護継電装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記収納体に対して着脱自在なユニット体であることを特徴とする請求項4記載の保護継電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16177(P2012−16177A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150772(P2010−150772)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)