信号処理回路及び方法
【課題】アナログ信号の波形に依存せず、サンプリングクロックの位相を調整可能にする。
【解決手段】画質検出部50を構成する差分検出器41は、位相の異なるサンプリングクロックをADCに順次与えて得た各デジタル信号V2(n)中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の差分Da(n)を検出する。差分検出器42は、差分Da(n)の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量Db(n)を検出する。累積部43は、変化量Db(n)をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、その累積値S(n)を前記極性が変化した場合に初期化する。累積値S(n)を最大にする位相が、ADCに与えるべきサンプリングクロックの位相として選択される。
【解決手段】画質検出部50を構成する差分検出器41は、位相の異なるサンプリングクロックをADCに順次与えて得た各デジタル信号V2(n)中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の差分Da(n)を検出する。差分検出器42は、差分Da(n)の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量Db(n)を検出する。累積部43は、変化量Db(n)をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、その累積値S(n)を前記極性が変化した場合に初期化する。累積値S(n)を最大にする位相が、ADCに与えるべきサンプリングクロックの位相として選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路及び方法に関し、特にアナログ信号をデジタル信号に変換する際に用いる、サンプリングクロックの位相を自動調整する信号処理回路及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル映像表示装置等においては、ADC(Analog to Digital Converter)が、アナログ映像信号であるRGB(Red−Green−Blue)信号を、その同期信号(水平同期信号及び垂直同期信号)を基準に生成したサンプリングクロックを用いてサンプリング(量子化)し、以てデジタル映像信号に変換する。
【0003】
しかしながら、RGB信号と同期信号の遅延(入力タイミング)が一致しない条件下では、同期信号を基準に生成したサンプリングクロックを用いても適切なサンプリングが行われず、デジタル映像信号を表示すると映像がぼやけた状態になってしまうという問題があった。
【0004】
この問題に対処する関連技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
図14に、特許文献1に記載される信号処理装置1xの構成を示す。この信号処理装置1xは、ADC 10と、クロック発生部20と、クロック制御部30xと、映像開始/終了検出部40と、画質検出部50xとで構成される。
【0006】
この内、ADC 10は、PC(Personal Computer)等の信号源(図示せず)から入力されるアナログ映像信号V1を、クロック発生部20から出力されるサンプリングクロックCLKに同期してサンプリングし、以てアナログ映像信号V1をデジタル映像信号V2に変換する。このデジタル映像信号V2は、信号処理装置1xの後段に設置される、液晶ディスプレイ等の表示装置(図示せず)で表示されることとなる。
【0007】
また、クロック発生部20は、信号源からの同期信号V3の入力をトリガとして、サンプリングクロックCLKを生成する。ここで、クロック発生部20は、サンプリングクロックCLKの周波数を、クロック制御部30xから出力される周波数制御信号V4に従って設定する。また、クロック発生部20は、サンプリングクロックCLKの位相を、クロック制御部30xから出力される位相制御信号V5に従って設定する。
【0008】
また、クロック制御部30xは、同期信号V3と、映像開始/終了検出部40から出力される映像開始/終了検出信号V6とに基づきサンプリングクロックCLKの周波数を決定すると共に、当該周波数をクロック発生部20に指示するための周波数制御信号V4を発生する。また、クロック制御部30xは、位相制御信号V5を発生させることにより、サンプリングクロックCLKの位相として、互いに異なるn個の位相(例えば、クロック周期をn等分した時間ずつずれた位相)をクロック発生部20に順次指示する。さらに、クロック制御部30xには、画質検出部50xにより各位相に対応して検出された画質判定データA(n)_maxが入力される。クロック制御部30xは、画質判定データA(n)_maxが最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0009】
また、映像開始/終了検出部40は、映像信号のデジタル処理に際して用いられることの多い一般的な回路であり、デジタル映像信号V2中における映像領域(有効画素)の開始点と終了点とを検出する。映像開始/終了検出部40は、これらの開始点及び終了点各々の検出タイミングで、上記の映像開始/終了検出信号V6を発生する。
【0010】
さらに、画質検出部50xは、図15に示す如く、差分検出器51xと、絶対値検出器52xと、最大値検出器53xとを備えている。この内、差分検出器51xは、各位相に対応してサンプリングされたデジタル映像信号V2(n)中の隣接画素同士間の差分D(n)を順次検出する。また、絶対値検出器52xは、差分D(n)の絶対値A(n)を順次検出する。さらに、最大値検出器53xは、絶対値検出器52xで検出された絶対値A(n)の内の最大値を検出し、この最大値を画質判定データA(n)_maxとして出力する。なお、以降の説明においては、A(n)を差分絶対値と呼称し、A(n)_maxを差分最大値と呼称することがある。
【0011】
次に、上記の信号処理装置1xにおけるサンプリングクロックの位相調整に係る動作を、図16及び図17を参照して説明する。
【0012】
今、図16に示すアナログ映像信号V1が、信号処理装置1xに入力されたとする。最適位相"a"(理想的なサンプリングクロックと同一位相)を有するサンプリングクロックCLK(a)を用いた場合、ADC 10は、デジタル映像信号V2として、画素P1に対応する信号レベルV2(a, 1)と、画素P1に時間軸上で1つ後に隣接する画素P2に対応する信号レベルV2(a, 2)とを得る。この時、画質検出部50x内の差分検出器51xは、信号レベルV2(a, 1)及びV2(a,2)同士間の差分を検出する。絶対値検出器52xは、この差分の絶対値A(a)を検出する。
【0013】
一方、不適位相"b"(理想的なサンプリングクロックとは異なる位相)を有するサンプリングクロックCLK(b)を用いた場合、ADC 10は、画素P1に対応する信号レベルV2(b, 1)と、画素P2に対応する信号レベルV2(b, 2)とを得る。この時、絶対値検出器52xは、信号レベルV2(b, 1)及びV2(b,2)同士間の差分絶対値A(b)を検出する。
【0014】
ここで、差分絶対値A(a)とA(b)の間には、図16に示す如く"A(a)>A(b)"という大小関係が成立する。すなわち、図16に示すようなアナログ映像信号V1が入力された場合、最適位相でのサンプリングにより得られる隣接画素同士間の差分絶対値は、不適位相でのサンプリングにより得られる隣接画素同士間の差分絶対値と比較して大きな値を呈する。
【0015】
絶対値検出器52xは、図16と同様にして、1フレーム(映像開始/終了検出部40で映像領域と判定された領域)内の全ての隣接画素同士間の差分絶対値A(n)を順次検出する。そして、最大値検出器53xは、差分絶対値A(n)の内の最大値A(n)_maxを検出する。
【0016】
この後、クロック制御部30xは、差分最大値A(n)_maxが最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。今、差分最大値A(n)_maxが図17に示す如く検出されたとすると、クロック制御部30xは、位相"0"を最適位相として選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3586116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記の信号処理装置1xには、サンプリングクロックの位相調整精度がアナログ信号の波形に依存してしまうという課題があった。
【0019】
例えば、図18に示す如くアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り変動する場合、サンプリングクロックの位相調整が困難である。これは、本来最適である位相"a"でのサンプリングにより得られる隣接画素P1及びP2同士間の差分絶対値A(a)と、不適位相"b"でのサンプリングにより得られる隣接画素P1及びP2同士間の差分絶対値A(b)との間に、"A(a)<A(b)"という大小関係が成立するためである。
【0020】
従って、差分最大値A(n)_maxが最大値を呈する位相は、必ずしも最適位相とはならない。図19に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図18に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分最大値A(n)_maxを示す。この差分最大値A(n)_maxと、画素P1に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて見ると、A(n)_maxが最大値を呈する位相"8"は、最適位相と異なることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する信号変換部と、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相を決定する位相決定部とを備える。前記位相決定部は、位相の異なるサンプリングクロックを前記信号変換部に順次与えて得た各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出部と、前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出部と、前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積部と、前記累積の結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択部とを含む。
【0022】
また、本発明の一態様に係る信号処理方法は、アナログ信号を、位相の異なるサンプリングクロックに順次同期してサンプリングし、デジタル信号に変換する変換ステップと、各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出ステップと、前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出ステップと、前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積ステップと、前記累積の結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択ステップとを備える。
【0023】
すなわち、本発明では、アナログ信号の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)を、サンプリングクロックの最適位相として決定することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アナログ信号の波形に依存せず、サンプリングクロックの位相を上記の信号処理装置1xと比較して確実且つ精度良く調整できる。このため、本発明を適用する種々の装置における信号品質(例えば、デジタル映像表示装置における表示品質)を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路の構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、画素差分の検出動作例を示したタイムチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の第1の例を示したグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の第2の例を示したグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態2及び3に係る信号処理回路に共通に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作の一例を示したタイムチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の一例を示したグラフ図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作の他の例を示したタイムチャート図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の他の例を示したグラフ図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作例を示したタイムチャート図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の一例を示したタイムチャート図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の他の例を示したグラフ図である。
【図14】本発明の関連技術に係る信号処理回路の構成例を示したブロック図である。
【図15】本発明の関連技術に係る信号処理回路に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図16】本発明の関連技術に係る信号処理回路における、差分絶対値の検出動作例を示したタイムチャート図である。
【図17】本発明の関連技術に係る信号処理回路における、差分最大値の検出動作例を示したグラフ図である。
【図18】本発明の関連技術に係る信号処理回路の課題を説明するためのタイムチャート図である。
【図19】本発明の関連技術に係る信号処理回路の課題を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る信号処理回路の実施の形態1〜3を、図1〜図13を参照して説明する。なお、各図面において同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0027】
[実施の形態1]
図1に示すように、本実施の形態に係る信号処理回路1は、図14に示したクロック制御部30x及び画質検出部50xに代えて、クロック制御部30及び画質検出部50を備えている点で、上記の信号処理回路1xと異なる。なお、これらのクロック制御部30及び画質検出部50は、上述した位相決定部として機能する。
【0028】
この内、クロック制御部30は、クロック制御部30xと同様、同期信号V3と、映像開始/終了検出部40から出力される映像開始/終了検出信号V6とに基づきサンプリングクロックCLKの周波数を決定すると共に、当該周波数をクロック発生部20に指示するための周波数制御信号V4を発生する。また、クロック制御部30は、位相制御信号V5を発生させることにより、サンプリングクロックCLKの位相として、互いに異なるn個の位相(例えば、クロック周期をn等分した時間ずつずれた位相)をクロック発生部20に順次指示する。
【0029】
一方、クロック制御部30xと異なり、クロック制御部30には、画質検出部50により各位相に対応して検出された画質判定データS(n)が入力される。クロック制御部30は、画質判定データS(n)が最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0030】
また、図2に示すように、画質検出部50は、差分検出器51及び52と、累積部53とを備えている。
【0031】
この内、差分検出器51は、各位相に対応してサンプリングされたデジタル映像信号V2(n)中の隣接する2つの画素同士間の差分Da(n)を検出する。なお、以降の説明においては、Da(n)を画素差分と呼称することがある。また、図示を省略するが、差分検出器51は、異なる位相(n回のサンプリング工程)において画素差分Da(n)の検出対象とする隣接画素を一致させるため、各サンプリング工程において、例えば同期信号V3の入力時点から所定時間が経過した場合に差分Da(n)の検出動作を開始する。ここで、差分検出器51は、当該所定時間を、例えば内部発振器のクロックをカウントして計時する。
【0032】
また、差分検出器52は、画素差分Da(n)の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量(差分)Db(n)を検出する。差分検出器52は、検出した変化量Db(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ出力する。
【0033】
さらに、累積部53は、差分検出器52から順次入力される変化量Db(n)を、その極性(符号)が変化しない場合に累積し、これにより得た累積値を画質判定データS(n)として出力する。また、累積部53は、変化量Db(n)の極性が変化した場合には、累積値S(n)を"0"に初期化して出力する。なお、以降の説明においては、S(n)を変化量累積値と呼称することがある。
【0034】
ここで、累積部53は、絶対値検出器531と、累積器532と、符号判定器533とを用いて簡易に構成できる。この内、絶対値検出器531は、変化量Db(n)が入力される度毎に、変化量Db(n)の絶対値Ab(n)を検出して累積器532へ出力する。また、累積器532は、符号判定器533からリセット信号V7が入力されない場合に、絶対値検出器531から入力された絶対値Ab(n)を前回出力した累積値S(n+1)に加算し、以て累積値S(n)を得る。一方、リセット信号V7が入力された場合、累積器532は、累積値S(n)="0"を出力する。さらに、符号判定器533は、変化量Db(n)が入力される度毎に、変化量Db(n)の符号と前回入力された変化量Db(n+1)の符号とが同一であるか否かを判定する。両符号が共に"正"又は"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一であると判定する。一方の符号が"正"であり且つ他方の符号が"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。変化量Db(n)の値が"0"である場合、符号判定器533は、リセット信号V7を発生する。変化量Db(n+1)の値が"0"であり且つ変化量Db(n)の符号が"正"又は"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。
【0035】
次に、本実施の形態の動作を、図3〜図5を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、クロック制御部30は、クロック発生部20に対して、例えば位相"0"〜"7"を有するサンプリングクロックCLK(0)〜CLK(7)を順次生成するよう指示する。なお、位相"0"〜"7"は、どのような順序で指示されても良い。また、図3の例では、位相同士間のずれ時間を、一例としてクロック周期を8等分した時間としている。
【0037】
今、アナログ映像信号V1の信号レベルが、図17と同様にリンギングの影響に因り変動しているとする。位相"0"を有するサンプリングクロックCLK(0)が最初に生成された場合を例に取ると、差分検出器51は、サンプリングクロックCLK(0)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(0, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(0, x−1)との画素差分Da(0)を検出する。同様にして、差分検出器51は、他の位相"1"〜"7"に対応する画素差分Da(1)〜Da(7)を順次検出する。ここで、任意の位相nに対応する画素P(x−1)及びP(x)同士間の差分Da(n)は、下記の式(1)で表される。
【0038】
Da(n) = V2(n, x) − V2(n, x−1) …式(1)
【0039】
そして、差分検出器51は、検出した画素差分Da(0)〜Da(7)を、差分検出器52に順次与える。
【0040】
図4に示すように、差分検出器52は、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する画素差分Da(0)及びDa(1)同士間の変化量Db(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db(1)〜D(6)を順次検出する。ここで、任意の位相nに対応する変化量Db(n)は、下記の式(2)で表される。
【0041】
Db(n) = Da(n+1) − Da(n) …式(2)
【0042】
そして、差分検出器52は、検出した変化量Db(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ出力する。図4の例では、差分検出器52は、変化量Db(0)〜Db(6)を、位相"6"に対応する変化量Db(6)、位相"5"に対応する変化量Db(5)、…、位相"1"に対応する変化量Db(1)、位相"0"に対応する変化量Db(0)の順に出力する。
【0043】
累積部53内の絶対値検出器531は、まず変化量Db(6)の絶対値Ab(6)を検出して累積器532へ出力する。この時、累積器532は、絶対値Ab(6)をそのまま変化量累積値S(6)とする。
【0044】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(5)の絶対値Ab(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(5)の符号が"正"であり且つ前回入力された変化量Db(6)の符号が"負"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値S(5)を"0"に初期化する。
【0045】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(4)の絶対値Ab(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(4)の符号が"負"であり且つ前回入力された変化量Db(5)の符号が"正"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値S(4)="0"を維持する。
【0046】
同様にして、累積部53は、変化量累積値S(3)="0"、及び変化量累積値S(2)="0"を維持する。
【0047】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(1)の絶対値Ab(1)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(1)の符号及び前回入力された変化量Db(2)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab(1)を前回の変化量累積値S(2)="0"に加算し、以て変化量累積値S(1)=Ab(1)を得る。
【0048】
最後に、絶対値検出器531は、変化量Db(0)の絶対値Ab(0)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(0)の符号及び前回入力された変化量Db(1)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab(0)を前回の変化量累積値S(1)=Ab(1)に加算し、以て変化量累積値S(0)=Ab(1)+Ab(0)を得る。
【0049】
すなわち、累積部53は、時間軸上で最遅の位相から最早の位相に向かって、画素差分Da(n)の同一符号での変化量Db(n)を累積する。画素差分Da(n)が同一方向の変化を最も継続する位相は、図3に示したアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)と一致する。
【0050】
従って、クロック制御部30は、変化量累積値S(n)が最大値を呈する位相"0"を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0051】
このように、本実施の形態においては、アナログ映像信号の波形に依存せず、サンプリングクロックの位相を自動調整することができる。
【0052】
図5に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図3に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、画素差分Da(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値S(n)と、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、変化量累積値S(n)を最大にする位相"0"が最適位相と一致する。
【0053】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る信号処理回路は、図2に示した画質検出部50に代えて、図6に示す画質検出部50aを用いる点で、上記の実施の形態1と異なる。
【0054】
画質検出部50aは、図2に示した差分検出器51及び52、並びに累積部53に加えて、累積部54を備えている。累積部54は、差分検出器51で検出された画素差分Da(n)を対応する位相毎に累積し、これにより得た累積値Sa(n)を差分検出器52へ出力する。なお、以降の説明においては、Sa(n)を差分累積値と呼称し、上記の変化量累積値と明確に区別することとする。また、累積部53から出力される変化量累積値に、便宜上、上記の符号S(n)とは異なる符号Sb(n)を付しているが、累積部53の構成及び動作には何ら変更が不要である。
【0055】
これに対応して、差分検出器51は、上記の実施の形態1と異なり、少なくとも2組の隣接する2画素同士間の差分を検出する。なお、以降の説明においては、任意の位相nに対応する任意の隣接画素P(x−1)及びP(x)同士間の差分を、下記の式(3)で表すこととする。
【0056】
Da(n, x) = V2(n, x) − V2(n, x−1) …式(3)
【0057】
また、累積部54は、累積器541と、符号判定器542とを用いて簡易に構成できる。この内、累積器541は、符号判定器542から加減算指示信号V8に従って、画素差分Da(n, x)を各位相に対応する前回の差分累積値Sa(n, x−1)に加算又は減算し、以て差分累積値Sa(n, x)を得る。また、符号判定器542は、一の位相(例えば、最早の位相"0")に対応する画素差分Da(0, x)の符号(極性)が"正"である場合、累積器541に対して、"加算"を指示する加減算指示信号V8を与える。一方、画素差分Da(0, x)の符号が"正"で無い場合、符号判定器542は、累積器541に対して、"減算"を指示する加減算指示信号V8を与える。
【0058】
さらに、差分検出器52は、累積部54で得られた最終的な差分累積値Sa(n)を画素差分Da(n)として扱い、以て変化量Db(n)を検出する。
【0059】
次に、本実施の形態の動作を、図7〜図9を参照して説明する。
【0060】
今、図7に示すように、アナログ映像信号V1の信号レベルが、リンギングの影響に因り連続して変動しているとする。
【0061】
差分検出器51は、上記の式(3)に従い、位相"n"を有するサンプリングクロックCLK(n)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(n, x−1)との画素差分Da(n, x)を検出する。
【0062】
次いで、累積部54内の符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"正"であるため、累積器541に対して"加算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(0, x)をそのまま差分累積値Sa(0, x)とする。また、符号判定部542は、他の位相"1"〜"7"での差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)の算出に備え、"加算"を指示すべきことを記憶しておく。これにより、累積器541は、画素差分Da(1, x)〜Da(7, x)を、それぞれ差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)とする。
【0063】
次いで、差分検出器51は、画素P(x)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+1)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+1)と、画素P(x)に対応する信号レベルV2(n, x)との画素差分Da(n, x+1)を検出する。
【0064】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+1)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(0, x+1)を差分累積値Sa(0, x)から減算し、以て差分累積値Sa(0, x+1)を得る。また、符号判定部542は、他の位相"1"〜"7"での差分累積値Sa(1, x+1)〜Sa(7, x+1)の算出に備え、"減算"を指示すべきことを記憶しておく。これにより、累積器541は、画素差分Da(1, x+1)〜Da(7, x+1)を差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)からそれぞれ減算し、以て差分累積値Sa(1, x+1)〜Sa(7, x+1)を得る。
【0065】
これにより、差分累積値Sa(n, x+1)の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)の信号レベルの2倍となる。すなわち、差分累積値Sa(n, x+1)においては、位相毎の特性が差分累積値Sa(n, x)より顕著に現れることとなる。
【0066】
従って、この差分累積値Sa(n, x+1)を最終的な差分累積値Sa(n)として変化量Db(n)を検出した場合、上記の実施の形態1より精度良くサンプリングクロックの位相を調整できる。また、アナログ映像信号V1に含まれるノイズの影響を低減できるというメリットもある。
【0067】
なお、累積方向(加算又は減算)を一の位相に対応する画素差分の符号に応じて一律に決定するのは、同一画素内で信号レベルの符号が変わることが無いためである。つまり、次の画素に遷移する時の信号レベルは増加するか、減少するか、又は変わらないかのいずれかであり、同一画素内では信号レベルの変化方向が一意(unique)に決まるためである。
【0068】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+1)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+2)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+2)と、画素P(x+1)に対応する信号レベルV2(n, x+1)との画素差分Da(n, x+2)を検出する。
【0069】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"正"であるため、累積器541に対して"加算"を指示する。これにより、累積器541は、画素差分Da(n, x+2)を差分累積値Sa(n, x+1)に加算し、以て差分累積値Sa(n, x+2)を得る。
【0070】
これにより、差分累積値Sa(n, x+2)の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)の信号レベルの3倍となり、位相毎の特性がさらに顕著に現れることとなる。従って、この差分累積値Sa(n, x+2)を最終的な差分累積値Sa(n)として変化量Db(n)を検出した場合、サンプリングクロックの位相調整精度をさらに向上させることができる。また、ノイズの影響の低減効果もより高まるというメリットもある。
【0071】
なお、この例では、隣接画素の組を連続的に画素差分Da(n, x)の検出対象とする場合を扱ったが、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接画素の組は離散的に選択しても良い。この場合も同様の効果が得られることは言うまでも無い。また、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接画素の組が多い程に、サンプリングクロックの位相調整精度を向上できることは明らかである。さらに、一の位相に対応する画素差分の符号が"正"である場合に累積方向を"減算"とし、当該符号が"正"で無い場合に累積方向を"加算"とするようにしても良い。また、一の位相に対応する画素差分の符号が"正"でも"負"でもなく、値が"0"の場合は累積方向を"加算"又は"減算"どちらにしても良い。この場合も、差分累積値Sa(n)における位相毎の特性が同様に顕著となり、且つ同様の変化量累積値Sb(n)が得られることとなる。
【0072】
図8に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図7に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分累積値Sa(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値Sb(n)と、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、上記の実施の形態1と同様、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相が最適位相と一致する。
【0073】
なお、上記の実施の形態1では、画素差分Da(n)の検出対象を隣接する2画素のみとしたが、画素差分Da(n)の検出対象とした2画素が全く同一の信号レベルを呈する場合、変化量累積値S(n)が固定的に"0"となる。このため、最適位相を決定できないケースがある。
【0074】
しかしながら、本実施の形態では、このようなケースにも対処することができる。具体的には、図9に示すように、デジタル映像信号V2中の、画素P(x−1)及びP(x)に対応する信号レベルが同一であるとする。この場合、差分累積値Sa(n, x)が固定的に"0"となるが、以降の差分累積値Sa(n, x+1)、Sa(n, x+2)、…は、最適位相の決定に利用できる。
【0075】
[実施の形態3]
本実施の形態に係る信号処理回路は、上記の実施の形態2と同様に構成される。但し、上記の実施の形態2と比してサンプリングクロックの位相調整精度をより向上させるため、図6に示した差分検出器51及び52、並びに累積部53及び54が、上記の実施の形態2とは異なる動作を行う。
【0076】
まず前提として、上記の実施の形態2では、図10に示す如くアナログ映像信号V1の変化開始点と最早の位相"0"とが一致せず、且つ位相"0"が、アナログ映像信号V1の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供される場合、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相が最適位相と一致しないことがある。これは、差分累積値Sa(n)の算出過程において、最早の位相"0"と最遅の位相"31"との連続性が考慮されていないためである。
【0077】
このようなケースに対処するため、本実施の形態においては、大略、最早の位相と最遅の位相との連続性を考慮して、差分累積値Sa(n)を算出する。
【0078】
以下、本実施の形態の具体的な動作を、図11〜図13を参照して説明する。
【0079】
今、図11に示すように、8個の位相"0"〜"7"を有するサンプリングクロックを順次用いてアナログ映像信号V1がサンプリングされ、且つ最早の位相"0"が、アナログ映像信号V1の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供されているとする。
【0080】
差分検出器51は、少なくとも2組の隣接する3画素について画素差分Da(n, x)を検出する。
【0081】
具体的には、差分検出器51は、上記の式(3)に従い、位相"n"を有するサンプリングクロックCLK(n)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(n, x−1)との画素差分Da(n, x)を検出する。
【0082】
次いで、累積部54内の符号判定部542は、累積器541に対して指示する累積方向を、例えば画素差分Da(0, int(x/2)×2)の符号で判定する。ここで、int(a)は、実数aを、その少数点以下を切り捨て整数に変換する関数である。すなわち、符号判定部542は、一の位相について得られた、隣接する3画素中の最先の画素と中間の画素との間の第1の差分の符号に応じて、各位相について得られた、第1の差分についての累積方向と、当該隣接する3画素中の中間の画素と最後の画素との間の第2の差分についての累積方向とを一律に決定する。
【0083】
具体的には、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x)の符号を反転して差分累積値Sa(n, x)とする。
【0084】
次いで、差分検出器51は、画素P(x)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+1)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+1)と、画素P(x)に対応する信号レベルV2(n, x)との画素差分Da(n, x+1)を検出する。
【0085】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"負"であったため、累積器541に対して"減算"を再び指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+1)の符号を反転して差分累積値Sa(n, x+1)とする。
【0086】
これにより、差分累積値Sa(n, x)及びSa(n, x+1)の連結波形は、最早の位相"0"と最遅の位相"7"との連続性を考慮した差分累積値となる。
【0087】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+1)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+2)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+2)と、画素P(x+1)に対応する信号レベルV2(n, x+1)との画素差分Da(n, x+2)を検出する。
【0088】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を新たに指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+2)を差分累積値Sa(n, x)から減算し、以て差分累積値Sa(n, x+2)を得る。
【0089】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+2)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+3)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+3)と、画素P(x+2)に対応する信号レベルV2(n, x+2)との画素差分Da(n, x+3)を検出する。
【0090】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"負"であったため、累積器541に対して"減算"を再び指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+3)を差分累積値Sa(n, x+1)から減算し、以て差分累積値Sa(n, x+3)を得る。
【0091】
これにより、差分累積値Sa(n, x+2)及びSa(n, x+3)の連結波形の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)及びSa(n, x+1)の連結波形の信号レベルの2倍となり、位相毎の特性がより顕著に現れることとなる。
【0092】
そして、差分検出器52は、累積部54で得られた最終的な差分累積値Sa(n)(この例では、差分累積値Sa(n, x+2)及びSa(n, x+3)の連結波形)を用いて、変化量Db(n)を検出する。
【0093】
具体的には、図12に示すように、差分検出器52は、下記の式(4)に従って、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する差分累積値Sa(0, x+3)及びSa(1, x+3)同士間の変化量Db1(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db1(1)〜Db1(6)を順次検出する。
【0094】
Db1(n) = Sa(n+1, x+3) − Sa(n, x+3) …式(4)
【0095】
また、差分検出器52は、最早の位相"0"に対応する差分累積値Sa(0, x+3)と、最遅の位相"7"に対応するSa(7, x+2)との間の変化量Db2を検出する。
【0096】
さらに、差分検出器52は、下記の式(5)に従って、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する差分累積値Sa(0, x+2)及びSa(1, x+2)同士間の変化量Db3(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db3(1)〜Db3(6)を順次検出する。
【0097】
Db3(n) = Sa(n+1, x+2) − Sa(n, x+2) …式(5)
【0098】
なお、上記の変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)は、どのような順序で検出されても良い。
【0099】
そして、差分検出器52は、検出した変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ順次出力する。具体的には、差分検出器52は、変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)を、Db1(6)、Db1(5)、…、Db1(0)、Db2、Db3(6)、Db3(5)、…、Db3(0)の順に出力する。
【0100】
以下、変化量累積値Sb(n)の最早の位相"0"と最遅の位相"7"との連続性を考慮するために、便宜上、図12の右側に示す位相"0"〜"6"に対応する変化量累積値Sb(n)を、Sb(8)〜Sb(14)と表記する。
【0101】
累積部53内の絶対値検出器531は、まず変化量Db1(6)の絶対値Ab1(6)を検出して累積器532へ出力する。この時、累積器532は、絶対値Ab1(6)をそのまま変化量累積値Sb(14)とする。
【0102】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(5)の絶対値Ab1(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(5)="0"が成立するため、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(13)を"0"に初期化する。
【0103】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(4)の絶対値Ab1(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(4)の符号が"負"であり(値が"0"ではない)且つ前回入力された変化量Db1(5)の符号が"正"ではない(値が"0"である)ため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab1(4)を前回の変化量累積値Sb(13)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(12)=Ab1(4)を得る。
【0104】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(3)の絶対値Ab1(3)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(3)の符号が"正"であり且つ前回入力された変化量Db1(4)の符号が"負"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(11)を"0"に初期化する。
【0105】
同様にして、累積部53は、変化量累積値Sb(10)="0"、Sb(9)="0"、及びSb(8)="0"を維持する。
【0106】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db2の絶対値Ab2を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db2の符号及び前回入力された変化量Db1(0)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab2を前回の変化量累積値Sb(8)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(7)=Ab2を得る。
【0107】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(6)の絶対値Ab3(6)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(6)の符号及び前回入力された変化量Db2の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab3(6)を前回の変化量累積値Sb(7)=Ab2に加算し、以て変化量累積値Sb(6)=Ab2+Ab3(6)を得る。
【0108】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(5)の絶対値Ab3(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(5)="0"が成立するため、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(5)を"0"に初期化する。
【0109】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(4)の絶対値Ab3(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(4)の符号が"正"であり(値が"0"ではない)且つ前回入力された変化量Db3(5)の符号が"負"ではない(値が"0"である)ため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab3(4)を前回の変化量累積値Sb(5)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(4)=Ab3(4)を得る。
【0110】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(3)の絶対値Ab3(3)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(3)の符号が"負"であり且つ前回入力された変化量Db3(4)の符号が"正"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(3)を"0"に初期化する。
【0111】
同様にして、累積部53は、変化量累積値Sb(2)="0"、Sb(1)="0"、及びSb(0)="0"を維持する。
【0112】
従って、クロック制御部30は、変化量累積値Sb(n)が最大値を呈する位相"6"を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。この位相"6"は、図12に示したアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)と一致する。また、変化量累積値Sb(n)の最大値を呈する位相が"8"〜"14"である場合は"0"〜"6"に置き換えられる。
【0113】
このように、本実施の形態においては、アナログ映像信号の変化開始点と最早の位相とが一致せず、且つ最早の位相がアナログ映像信号の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供される場合であっても、最適位相を選択することができる。なお、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接する3画素の組は、離散的に選択しても良い。この場合も同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0114】
図13に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図12に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分累積値Sa(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値Sb(n)と、画素P(x−1)及びP(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相"30"が最適位相と一致する。
【0115】
なお、上記の実施の形態によって本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【符号の説明】
【0116】
1 信号処理回路
10 ADC
20 クロック発生部
30 クロック制御部
40 映像開始/終了検出部
50, 50a 画質検出部
51, 52 差分検出器
53, 54 累積部
531 絶対値検出器
532, 541 累積器
533, 542 符号判定器
Ab(n) 絶対値
CLK クロック
Da(n) 画素差分
Db(n), Db1(n), Db2, Db3(n) 変化量
P(x−1)〜P(x+3) 画素
S(n), Sb(n) 画質判定データ(変化量累積値)
Sa(n) 差分累積値
V1 アナログ映像信号
V2, V2(n) デジタル映像信号
V3 同期信号
V4 周波数制御信号
V5 位相制御信号
V6 映像開始/終了検出信号
V7 リセット信号
V8 加減算指示信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路及び方法に関し、特にアナログ信号をデジタル信号に変換する際に用いる、サンプリングクロックの位相を自動調整する信号処理回路及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル映像表示装置等においては、ADC(Analog to Digital Converter)が、アナログ映像信号であるRGB(Red−Green−Blue)信号を、その同期信号(水平同期信号及び垂直同期信号)を基準に生成したサンプリングクロックを用いてサンプリング(量子化)し、以てデジタル映像信号に変換する。
【0003】
しかしながら、RGB信号と同期信号の遅延(入力タイミング)が一致しない条件下では、同期信号を基準に生成したサンプリングクロックを用いても適切なサンプリングが行われず、デジタル映像信号を表示すると映像がぼやけた状態になってしまうという問題があった。
【0004】
この問題に対処する関連技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
図14に、特許文献1に記載される信号処理装置1xの構成を示す。この信号処理装置1xは、ADC 10と、クロック発生部20と、クロック制御部30xと、映像開始/終了検出部40と、画質検出部50xとで構成される。
【0006】
この内、ADC 10は、PC(Personal Computer)等の信号源(図示せず)から入力されるアナログ映像信号V1を、クロック発生部20から出力されるサンプリングクロックCLKに同期してサンプリングし、以てアナログ映像信号V1をデジタル映像信号V2に変換する。このデジタル映像信号V2は、信号処理装置1xの後段に設置される、液晶ディスプレイ等の表示装置(図示せず)で表示されることとなる。
【0007】
また、クロック発生部20は、信号源からの同期信号V3の入力をトリガとして、サンプリングクロックCLKを生成する。ここで、クロック発生部20は、サンプリングクロックCLKの周波数を、クロック制御部30xから出力される周波数制御信号V4に従って設定する。また、クロック発生部20は、サンプリングクロックCLKの位相を、クロック制御部30xから出力される位相制御信号V5に従って設定する。
【0008】
また、クロック制御部30xは、同期信号V3と、映像開始/終了検出部40から出力される映像開始/終了検出信号V6とに基づきサンプリングクロックCLKの周波数を決定すると共に、当該周波数をクロック発生部20に指示するための周波数制御信号V4を発生する。また、クロック制御部30xは、位相制御信号V5を発生させることにより、サンプリングクロックCLKの位相として、互いに異なるn個の位相(例えば、クロック周期をn等分した時間ずつずれた位相)をクロック発生部20に順次指示する。さらに、クロック制御部30xには、画質検出部50xにより各位相に対応して検出された画質判定データA(n)_maxが入力される。クロック制御部30xは、画質判定データA(n)_maxが最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0009】
また、映像開始/終了検出部40は、映像信号のデジタル処理に際して用いられることの多い一般的な回路であり、デジタル映像信号V2中における映像領域(有効画素)の開始点と終了点とを検出する。映像開始/終了検出部40は、これらの開始点及び終了点各々の検出タイミングで、上記の映像開始/終了検出信号V6を発生する。
【0010】
さらに、画質検出部50xは、図15に示す如く、差分検出器51xと、絶対値検出器52xと、最大値検出器53xとを備えている。この内、差分検出器51xは、各位相に対応してサンプリングされたデジタル映像信号V2(n)中の隣接画素同士間の差分D(n)を順次検出する。また、絶対値検出器52xは、差分D(n)の絶対値A(n)を順次検出する。さらに、最大値検出器53xは、絶対値検出器52xで検出された絶対値A(n)の内の最大値を検出し、この最大値を画質判定データA(n)_maxとして出力する。なお、以降の説明においては、A(n)を差分絶対値と呼称し、A(n)_maxを差分最大値と呼称することがある。
【0011】
次に、上記の信号処理装置1xにおけるサンプリングクロックの位相調整に係る動作を、図16及び図17を参照して説明する。
【0012】
今、図16に示すアナログ映像信号V1が、信号処理装置1xに入力されたとする。最適位相"a"(理想的なサンプリングクロックと同一位相)を有するサンプリングクロックCLK(a)を用いた場合、ADC 10は、デジタル映像信号V2として、画素P1に対応する信号レベルV2(a, 1)と、画素P1に時間軸上で1つ後に隣接する画素P2に対応する信号レベルV2(a, 2)とを得る。この時、画質検出部50x内の差分検出器51xは、信号レベルV2(a, 1)及びV2(a,2)同士間の差分を検出する。絶対値検出器52xは、この差分の絶対値A(a)を検出する。
【0013】
一方、不適位相"b"(理想的なサンプリングクロックとは異なる位相)を有するサンプリングクロックCLK(b)を用いた場合、ADC 10は、画素P1に対応する信号レベルV2(b, 1)と、画素P2に対応する信号レベルV2(b, 2)とを得る。この時、絶対値検出器52xは、信号レベルV2(b, 1)及びV2(b,2)同士間の差分絶対値A(b)を検出する。
【0014】
ここで、差分絶対値A(a)とA(b)の間には、図16に示す如く"A(a)>A(b)"という大小関係が成立する。すなわち、図16に示すようなアナログ映像信号V1が入力された場合、最適位相でのサンプリングにより得られる隣接画素同士間の差分絶対値は、不適位相でのサンプリングにより得られる隣接画素同士間の差分絶対値と比較して大きな値を呈する。
【0015】
絶対値検出器52xは、図16と同様にして、1フレーム(映像開始/終了検出部40で映像領域と判定された領域)内の全ての隣接画素同士間の差分絶対値A(n)を順次検出する。そして、最大値検出器53xは、差分絶対値A(n)の内の最大値A(n)_maxを検出する。
【0016】
この後、クロック制御部30xは、差分最大値A(n)_maxが最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。今、差分最大値A(n)_maxが図17に示す如く検出されたとすると、クロック制御部30xは、位相"0"を最適位相として選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3586116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記の信号処理装置1xには、サンプリングクロックの位相調整精度がアナログ信号の波形に依存してしまうという課題があった。
【0019】
例えば、図18に示す如くアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り変動する場合、サンプリングクロックの位相調整が困難である。これは、本来最適である位相"a"でのサンプリングにより得られる隣接画素P1及びP2同士間の差分絶対値A(a)と、不適位相"b"でのサンプリングにより得られる隣接画素P1及びP2同士間の差分絶対値A(b)との間に、"A(a)<A(b)"という大小関係が成立するためである。
【0020】
従って、差分最大値A(n)_maxが最大値を呈する位相は、必ずしも最適位相とはならない。図19に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図18に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分最大値A(n)_maxを示す。この差分最大値A(n)_maxと、画素P1に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて見ると、A(n)_maxが最大値を呈する位相"8"は、最適位相と異なることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する信号変換部と、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相を決定する位相決定部とを備える。前記位相決定部は、位相の異なるサンプリングクロックを前記信号変換部に順次与えて得た各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出部と、前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出部と、前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積部と、前記累積の結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択部とを含む。
【0022】
また、本発明の一態様に係る信号処理方法は、アナログ信号を、位相の異なるサンプリングクロックに順次同期してサンプリングし、デジタル信号に変換する変換ステップと、各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出ステップと、前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出ステップと、前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積ステップと、前記累積の結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択ステップとを備える。
【0023】
すなわち、本発明では、アナログ信号の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)を、サンプリングクロックの最適位相として決定することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アナログ信号の波形に依存せず、サンプリングクロックの位相を上記の信号処理装置1xと比較して確実且つ精度良く調整できる。このため、本発明を適用する種々の装置における信号品質(例えば、デジタル映像表示装置における表示品質)を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路の構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、画素差分の検出動作例を示したタイムチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の第1の例を示したグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の第2の例を示したグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態2及び3に係る信号処理回路に共通に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作の一例を示したタイムチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の一例を示したグラフ図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作の他の例を示したタイムチャート図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の他の例を示したグラフ図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、差分累積値の算出動作例を示したタイムチャート図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の一例を示したタイムチャート図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る信号処理回路における、変化量累積値の算出動作の他の例を示したグラフ図である。
【図14】本発明の関連技術に係る信号処理回路の構成例を示したブロック図である。
【図15】本発明の関連技術に係る信号処理回路に用いる、画質検出部の構成例を示したブロック図である。
【図16】本発明の関連技術に係る信号処理回路における、差分絶対値の検出動作例を示したタイムチャート図である。
【図17】本発明の関連技術に係る信号処理回路における、差分最大値の検出動作例を示したグラフ図である。
【図18】本発明の関連技術に係る信号処理回路の課題を説明するためのタイムチャート図である。
【図19】本発明の関連技術に係る信号処理回路の課題を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る信号処理回路の実施の形態1〜3を、図1〜図13を参照して説明する。なお、各図面において同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0027】
[実施の形態1]
図1に示すように、本実施の形態に係る信号処理回路1は、図14に示したクロック制御部30x及び画質検出部50xに代えて、クロック制御部30及び画質検出部50を備えている点で、上記の信号処理回路1xと異なる。なお、これらのクロック制御部30及び画質検出部50は、上述した位相決定部として機能する。
【0028】
この内、クロック制御部30は、クロック制御部30xと同様、同期信号V3と、映像開始/終了検出部40から出力される映像開始/終了検出信号V6とに基づきサンプリングクロックCLKの周波数を決定すると共に、当該周波数をクロック発生部20に指示するための周波数制御信号V4を発生する。また、クロック制御部30は、位相制御信号V5を発生させることにより、サンプリングクロックCLKの位相として、互いに異なるn個の位相(例えば、クロック周期をn等分した時間ずつずれた位相)をクロック発生部20に順次指示する。
【0029】
一方、クロック制御部30xと異なり、クロック制御部30には、画質検出部50により各位相に対応して検出された画質判定データS(n)が入力される。クロック制御部30は、画質判定データS(n)が最大値を呈する位相を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0030】
また、図2に示すように、画質検出部50は、差分検出器51及び52と、累積部53とを備えている。
【0031】
この内、差分検出器51は、各位相に対応してサンプリングされたデジタル映像信号V2(n)中の隣接する2つの画素同士間の差分Da(n)を検出する。なお、以降の説明においては、Da(n)を画素差分と呼称することがある。また、図示を省略するが、差分検出器51は、異なる位相(n回のサンプリング工程)において画素差分Da(n)の検出対象とする隣接画素を一致させるため、各サンプリング工程において、例えば同期信号V3の入力時点から所定時間が経過した場合に差分Da(n)の検出動作を開始する。ここで、差分検出器51は、当該所定時間を、例えば内部発振器のクロックをカウントして計時する。
【0032】
また、差分検出器52は、画素差分Da(n)の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量(差分)Db(n)を検出する。差分検出器52は、検出した変化量Db(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ出力する。
【0033】
さらに、累積部53は、差分検出器52から順次入力される変化量Db(n)を、その極性(符号)が変化しない場合に累積し、これにより得た累積値を画質判定データS(n)として出力する。また、累積部53は、変化量Db(n)の極性が変化した場合には、累積値S(n)を"0"に初期化して出力する。なお、以降の説明においては、S(n)を変化量累積値と呼称することがある。
【0034】
ここで、累積部53は、絶対値検出器531と、累積器532と、符号判定器533とを用いて簡易に構成できる。この内、絶対値検出器531は、変化量Db(n)が入力される度毎に、変化量Db(n)の絶対値Ab(n)を検出して累積器532へ出力する。また、累積器532は、符号判定器533からリセット信号V7が入力されない場合に、絶対値検出器531から入力された絶対値Ab(n)を前回出力した累積値S(n+1)に加算し、以て累積値S(n)を得る。一方、リセット信号V7が入力された場合、累積器532は、累積値S(n)="0"を出力する。さらに、符号判定器533は、変化量Db(n)が入力される度毎に、変化量Db(n)の符号と前回入力された変化量Db(n+1)の符号とが同一であるか否かを判定する。両符号が共に"正"又は"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一であると判定する。一方の符号が"正"であり且つ他方の符号が"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。変化量Db(n)の値が"0"である場合、符号判定器533は、リセット信号V7を発生する。変化量Db(n+1)の値が"0"であり且つ変化量Db(n)の符号が"正"又は"負"である場合、符号判定器533は、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。
【0035】
次に、本実施の形態の動作を、図3〜図5を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、クロック制御部30は、クロック発生部20に対して、例えば位相"0"〜"7"を有するサンプリングクロックCLK(0)〜CLK(7)を順次生成するよう指示する。なお、位相"0"〜"7"は、どのような順序で指示されても良い。また、図3の例では、位相同士間のずれ時間を、一例としてクロック周期を8等分した時間としている。
【0037】
今、アナログ映像信号V1の信号レベルが、図17と同様にリンギングの影響に因り変動しているとする。位相"0"を有するサンプリングクロックCLK(0)が最初に生成された場合を例に取ると、差分検出器51は、サンプリングクロックCLK(0)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(0, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(0, x−1)との画素差分Da(0)を検出する。同様にして、差分検出器51は、他の位相"1"〜"7"に対応する画素差分Da(1)〜Da(7)を順次検出する。ここで、任意の位相nに対応する画素P(x−1)及びP(x)同士間の差分Da(n)は、下記の式(1)で表される。
【0038】
Da(n) = V2(n, x) − V2(n, x−1) …式(1)
【0039】
そして、差分検出器51は、検出した画素差分Da(0)〜Da(7)を、差分検出器52に順次与える。
【0040】
図4に示すように、差分検出器52は、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する画素差分Da(0)及びDa(1)同士間の変化量Db(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db(1)〜D(6)を順次検出する。ここで、任意の位相nに対応する変化量Db(n)は、下記の式(2)で表される。
【0041】
Db(n) = Da(n+1) − Da(n) …式(2)
【0042】
そして、差分検出器52は、検出した変化量Db(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ出力する。図4の例では、差分検出器52は、変化量Db(0)〜Db(6)を、位相"6"に対応する変化量Db(6)、位相"5"に対応する変化量Db(5)、…、位相"1"に対応する変化量Db(1)、位相"0"に対応する変化量Db(0)の順に出力する。
【0043】
累積部53内の絶対値検出器531は、まず変化量Db(6)の絶対値Ab(6)を検出して累積器532へ出力する。この時、累積器532は、絶対値Ab(6)をそのまま変化量累積値S(6)とする。
【0044】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(5)の絶対値Ab(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(5)の符号が"正"であり且つ前回入力された変化量Db(6)の符号が"負"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値S(5)を"0"に初期化する。
【0045】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(4)の絶対値Ab(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(4)の符号が"負"であり且つ前回入力された変化量Db(5)の符号が"正"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値S(4)="0"を維持する。
【0046】
同様にして、累積部53は、変化量累積値S(3)="0"、及び変化量累積値S(2)="0"を維持する。
【0047】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db(1)の絶対値Ab(1)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(1)の符号及び前回入力された変化量Db(2)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab(1)を前回の変化量累積値S(2)="0"に加算し、以て変化量累積値S(1)=Ab(1)を得る。
【0048】
最後に、絶対値検出器531は、変化量Db(0)の絶対値Ab(0)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db(0)の符号及び前回入力された変化量Db(1)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab(0)を前回の変化量累積値S(1)=Ab(1)に加算し、以て変化量累積値S(0)=Ab(1)+Ab(0)を得る。
【0049】
すなわち、累積部53は、時間軸上で最遅の位相から最早の位相に向かって、画素差分Da(n)の同一符号での変化量Db(n)を累積する。画素差分Da(n)が同一方向の変化を最も継続する位相は、図3に示したアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)と一致する。
【0050】
従って、クロック制御部30は、変化量累積値S(n)が最大値を呈する位相"0"を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。
【0051】
このように、本実施の形態においては、アナログ映像信号の波形に依存せず、サンプリングクロックの位相を自動調整することができる。
【0052】
図5に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図3に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、画素差分Da(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値S(n)と、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、変化量累積値S(n)を最大にする位相"0"が最適位相と一致する。
【0053】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る信号処理回路は、図2に示した画質検出部50に代えて、図6に示す画質検出部50aを用いる点で、上記の実施の形態1と異なる。
【0054】
画質検出部50aは、図2に示した差分検出器51及び52、並びに累積部53に加えて、累積部54を備えている。累積部54は、差分検出器51で検出された画素差分Da(n)を対応する位相毎に累積し、これにより得た累積値Sa(n)を差分検出器52へ出力する。なお、以降の説明においては、Sa(n)を差分累積値と呼称し、上記の変化量累積値と明確に区別することとする。また、累積部53から出力される変化量累積値に、便宜上、上記の符号S(n)とは異なる符号Sb(n)を付しているが、累積部53の構成及び動作には何ら変更が不要である。
【0055】
これに対応して、差分検出器51は、上記の実施の形態1と異なり、少なくとも2組の隣接する2画素同士間の差分を検出する。なお、以降の説明においては、任意の位相nに対応する任意の隣接画素P(x−1)及びP(x)同士間の差分を、下記の式(3)で表すこととする。
【0056】
Da(n, x) = V2(n, x) − V2(n, x−1) …式(3)
【0057】
また、累積部54は、累積器541と、符号判定器542とを用いて簡易に構成できる。この内、累積器541は、符号判定器542から加減算指示信号V8に従って、画素差分Da(n, x)を各位相に対応する前回の差分累積値Sa(n, x−1)に加算又は減算し、以て差分累積値Sa(n, x)を得る。また、符号判定器542は、一の位相(例えば、最早の位相"0")に対応する画素差分Da(0, x)の符号(極性)が"正"である場合、累積器541に対して、"加算"を指示する加減算指示信号V8を与える。一方、画素差分Da(0, x)の符号が"正"で無い場合、符号判定器542は、累積器541に対して、"減算"を指示する加減算指示信号V8を与える。
【0058】
さらに、差分検出器52は、累積部54で得られた最終的な差分累積値Sa(n)を画素差分Da(n)として扱い、以て変化量Db(n)を検出する。
【0059】
次に、本実施の形態の動作を、図7〜図9を参照して説明する。
【0060】
今、図7に示すように、アナログ映像信号V1の信号レベルが、リンギングの影響に因り連続して変動しているとする。
【0061】
差分検出器51は、上記の式(3)に従い、位相"n"を有するサンプリングクロックCLK(n)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(n, x−1)との画素差分Da(n, x)を検出する。
【0062】
次いで、累積部54内の符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"正"であるため、累積器541に対して"加算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(0, x)をそのまま差分累積値Sa(0, x)とする。また、符号判定部542は、他の位相"1"〜"7"での差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)の算出に備え、"加算"を指示すべきことを記憶しておく。これにより、累積器541は、画素差分Da(1, x)〜Da(7, x)を、それぞれ差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)とする。
【0063】
次いで、差分検出器51は、画素P(x)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+1)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+1)と、画素P(x)に対応する信号レベルV2(n, x)との画素差分Da(n, x+1)を検出する。
【0064】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+1)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(0, x+1)を差分累積値Sa(0, x)から減算し、以て差分累積値Sa(0, x+1)を得る。また、符号判定部542は、他の位相"1"〜"7"での差分累積値Sa(1, x+1)〜Sa(7, x+1)の算出に備え、"減算"を指示すべきことを記憶しておく。これにより、累積器541は、画素差分Da(1, x+1)〜Da(7, x+1)を差分累積値Sa(1, x)〜Sa(7, x)からそれぞれ減算し、以て差分累積値Sa(1, x+1)〜Sa(7, x+1)を得る。
【0065】
これにより、差分累積値Sa(n, x+1)の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)の信号レベルの2倍となる。すなわち、差分累積値Sa(n, x+1)においては、位相毎の特性が差分累積値Sa(n, x)より顕著に現れることとなる。
【0066】
従って、この差分累積値Sa(n, x+1)を最終的な差分累積値Sa(n)として変化量Db(n)を検出した場合、上記の実施の形態1より精度良くサンプリングクロックの位相を調整できる。また、アナログ映像信号V1に含まれるノイズの影響を低減できるというメリットもある。
【0067】
なお、累積方向(加算又は減算)を一の位相に対応する画素差分の符号に応じて一律に決定するのは、同一画素内で信号レベルの符号が変わることが無いためである。つまり、次の画素に遷移する時の信号レベルは増加するか、減少するか、又は変わらないかのいずれかであり、同一画素内では信号レベルの変化方向が一意(unique)に決まるためである。
【0068】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+1)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+2)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+2)と、画素P(x+1)に対応する信号レベルV2(n, x+1)との画素差分Da(n, x+2)を検出する。
【0069】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"正"であるため、累積器541に対して"加算"を指示する。これにより、累積器541は、画素差分Da(n, x+2)を差分累積値Sa(n, x+1)に加算し、以て差分累積値Sa(n, x+2)を得る。
【0070】
これにより、差分累積値Sa(n, x+2)の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)の信号レベルの3倍となり、位相毎の特性がさらに顕著に現れることとなる。従って、この差分累積値Sa(n, x+2)を最終的な差分累積値Sa(n)として変化量Db(n)を検出した場合、サンプリングクロックの位相調整精度をさらに向上させることができる。また、ノイズの影響の低減効果もより高まるというメリットもある。
【0071】
なお、この例では、隣接画素の組を連続的に画素差分Da(n, x)の検出対象とする場合を扱ったが、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接画素の組は離散的に選択しても良い。この場合も同様の効果が得られることは言うまでも無い。また、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接画素の組が多い程に、サンプリングクロックの位相調整精度を向上できることは明らかである。さらに、一の位相に対応する画素差分の符号が"正"である場合に累積方向を"減算"とし、当該符号が"正"で無い場合に累積方向を"加算"とするようにしても良い。また、一の位相に対応する画素差分の符号が"正"でも"負"でもなく、値が"0"の場合は累積方向を"加算"又は"減算"どちらにしても良い。この場合も、差分累積値Sa(n)における位相毎の特性が同様に顕著となり、且つ同様の変化量累積値Sb(n)が得られることとなる。
【0072】
図8に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図7に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分累積値Sa(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値Sb(n)と、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、上記の実施の形態1と同様、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相が最適位相と一致する。
【0073】
なお、上記の実施の形態1では、画素差分Da(n)の検出対象を隣接する2画素のみとしたが、画素差分Da(n)の検出対象とした2画素が全く同一の信号レベルを呈する場合、変化量累積値S(n)が固定的に"0"となる。このため、最適位相を決定できないケースがある。
【0074】
しかしながら、本実施の形態では、このようなケースにも対処することができる。具体的には、図9に示すように、デジタル映像信号V2中の、画素P(x−1)及びP(x)に対応する信号レベルが同一であるとする。この場合、差分累積値Sa(n, x)が固定的に"0"となるが、以降の差分累積値Sa(n, x+1)、Sa(n, x+2)、…は、最適位相の決定に利用できる。
【0075】
[実施の形態3]
本実施の形態に係る信号処理回路は、上記の実施の形態2と同様に構成される。但し、上記の実施の形態2と比してサンプリングクロックの位相調整精度をより向上させるため、図6に示した差分検出器51及び52、並びに累積部53及び54が、上記の実施の形態2とは異なる動作を行う。
【0076】
まず前提として、上記の実施の形態2では、図10に示す如くアナログ映像信号V1の変化開始点と最早の位相"0"とが一致せず、且つ位相"0"が、アナログ映像信号V1の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供される場合、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相が最適位相と一致しないことがある。これは、差分累積値Sa(n)の算出過程において、最早の位相"0"と最遅の位相"31"との連続性が考慮されていないためである。
【0077】
このようなケースに対処するため、本実施の形態においては、大略、最早の位相と最遅の位相との連続性を考慮して、差分累積値Sa(n)を算出する。
【0078】
以下、本実施の形態の具体的な動作を、図11〜図13を参照して説明する。
【0079】
今、図11に示すように、8個の位相"0"〜"7"を有するサンプリングクロックを順次用いてアナログ映像信号V1がサンプリングされ、且つ最早の位相"0"が、アナログ映像信号V1の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供されているとする。
【0080】
差分検出器51は、少なくとも2組の隣接する3画素について画素差分Da(n, x)を検出する。
【0081】
具体的には、差分検出器51は、上記の式(3)に従い、位相"n"を有するサンプリングクロックCLK(n)を用いてサンプリングされた、画素P(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x)と、画素P(x)に時間軸上で1つ前に隣接する画素P(x−1)に対応する信号レベルV2(n, x−1)との画素差分Da(n, x)を検出する。
【0082】
次いで、累積部54内の符号判定部542は、累積器541に対して指示する累積方向を、例えば画素差分Da(0, int(x/2)×2)の符号で判定する。ここで、int(a)は、実数aを、その少数点以下を切り捨て整数に変換する関数である。すなわち、符号判定部542は、一の位相について得られた、隣接する3画素中の最先の画素と中間の画素との間の第1の差分の符号に応じて、各位相について得られた、第1の差分についての累積方向と、当該隣接する3画素中の中間の画素と最後の画素との間の第2の差分についての累積方向とを一律に決定する。
【0083】
具体的には、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x)の符号を反転して差分累積値Sa(n, x)とする。
【0084】
次いで、差分検出器51は、画素P(x)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+1)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+1)と、画素P(x)に対応する信号レベルV2(n, x)との画素差分Da(n, x+1)を検出する。
【0085】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x)の符号が"負"であったため、累積器541に対して"減算"を再び指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+1)の符号を反転して差分累積値Sa(n, x+1)とする。
【0086】
これにより、差分累積値Sa(n, x)及びSa(n, x+1)の連結波形は、最早の位相"0"と最遅の位相"7"との連続性を考慮した差分累積値となる。
【0087】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+1)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+2)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+2)と、画素P(x+1)に対応する信号レベルV2(n, x+1)との画素差分Da(n, x+2)を検出する。
【0088】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"負"であるため、累積器541に対して"減算"を新たに指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+2)を差分累積値Sa(n, x)から減算し、以て差分累積値Sa(n, x+2)を得る。
【0089】
次いで、差分検出器51は、画素P(x+2)に時間軸上で1つ後ろに隣接する画素P(x+3)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n, x+3)と、画素P(x+2)に対応する信号レベルV2(n, x+2)との画素差分Da(n, x+3)を検出する。
【0090】
次いで、符号判定部542は、位相"0"に対応する画素差分Da(0, x+2)の符号が"負"であったため、累積器541に対して"減算"を再び指示する。この時、累積器541は、画素差分Da(n, x+3)を差分累積値Sa(n, x+1)から減算し、以て差分累積値Sa(n, x+3)を得る。
【0091】
これにより、差分累積値Sa(n, x+2)及びSa(n, x+3)の連結波形の信号レベルは、差分累積値Sa(n, x)及びSa(n, x+1)の連結波形の信号レベルの2倍となり、位相毎の特性がより顕著に現れることとなる。
【0092】
そして、差分検出器52は、累積部54で得られた最終的な差分累積値Sa(n)(この例では、差分累積値Sa(n, x+2)及びSa(n, x+3)の連結波形)を用いて、変化量Db(n)を検出する。
【0093】
具体的には、図12に示すように、差分検出器52は、下記の式(4)に従って、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する差分累積値Sa(0, x+3)及びSa(1, x+3)同士間の変化量Db1(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db1(1)〜Db1(6)を順次検出する。
【0094】
Db1(n) = Sa(n+1, x+3) − Sa(n, x+3) …式(4)
【0095】
また、差分検出器52は、最早の位相"0"に対応する差分累積値Sa(0, x+3)と、最遅の位相"7"に対応するSa(7, x+2)との間の変化量Db2を検出する。
【0096】
さらに、差分検出器52は、下記の式(5)に従って、時間軸上で隣接する位相"0"及び"1"に対応する差分累積値Sa(0, x+2)及びSa(1, x+2)同士間の変化量Db3(0)を検出する。同様にして、差分検出器52は、他の隣接位相に対応する変化量Db3(1)〜Db3(6)を順次検出する。
【0097】
Db3(n) = Sa(n+1, x+2) − Sa(n, x+2) …式(5)
【0098】
なお、上記の変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)は、どのような順序で検出されても良い。
【0099】
そして、差分検出器52は、検出した変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)を、対応する位相が遅い方から順に累積部53へ順次出力する。具体的には、差分検出器52は、変化量Db1(n)、Db2、及びDb3(n)を、Db1(6)、Db1(5)、…、Db1(0)、Db2、Db3(6)、Db3(5)、…、Db3(0)の順に出力する。
【0100】
以下、変化量累積値Sb(n)の最早の位相"0"と最遅の位相"7"との連続性を考慮するために、便宜上、図12の右側に示す位相"0"〜"6"に対応する変化量累積値Sb(n)を、Sb(8)〜Sb(14)と表記する。
【0101】
累積部53内の絶対値検出器531は、まず変化量Db1(6)の絶対値Ab1(6)を検出して累積器532へ出力する。この時、累積器532は、絶対値Ab1(6)をそのまま変化量累積値Sb(14)とする。
【0102】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(5)の絶対値Ab1(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(5)="0"が成立するため、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(13)を"0"に初期化する。
【0103】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(4)の絶対値Ab1(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(4)の符号が"負"であり(値が"0"ではない)且つ前回入力された変化量Db1(5)の符号が"正"ではない(値が"0"である)ため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab1(4)を前回の変化量累積値Sb(13)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(12)=Ab1(4)を得る。
【0104】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db1(3)の絶対値Ab1(3)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db1(3)の符号が"正"であり且つ前回入力された変化量Db1(4)の符号が"負"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(11)を"0"に初期化する。
【0105】
同様にして、累積部53は、変化量累積値Sb(10)="0"、Sb(9)="0"、及びSb(8)="0"を維持する。
【0106】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db2の絶対値Ab2を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db2の符号及び前回入力された変化量Db1(0)の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab2を前回の変化量累積値Sb(8)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(7)=Ab2を得る。
【0107】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(6)の絶対値Ab3(6)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(6)の符号及び前回入力された変化量Db2の符号が共に"負"であるため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab3(6)を前回の変化量累積値Sb(7)=Ab2に加算し、以て変化量累積値Sb(6)=Ab2+Ab3(6)を得る。
【0108】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(5)の絶対値Ab3(5)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(5)="0"が成立するため、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(5)を"0"に初期化する。
【0109】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(4)の絶対値Ab3(4)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(4)の符号が"正"であり(値が"0"ではない)且つ前回入力された変化量Db3(5)の符号が"負"ではない(値が"0"である)ため、両符号が同一であると判定し、リセット信号V7を発生しない。従って、累積器532は、絶対値Ab3(4)を前回の変化量累積値Sb(5)="0"に加算し、以て変化量累積値Sb(4)=Ab3(4)を得る。
【0110】
次いで、絶対値検出器531は、変化量Db3(3)の絶対値Ab3(3)を検出して累積器532へ出力する。これと並行して、符号判定器533は、変化量Db3(3)の符号が"負"であり且つ前回入力された変化量Db3(4)の符号が"正"であるため、両符号が同一で無いと判定し、リセット信号V7を発生する。従って、累積器532は、変化量累積値Sb(3)を"0"に初期化する。
【0111】
同様にして、累積部53は、変化量累積値Sb(2)="0"、Sb(1)="0"、及びSb(0)="0"を維持する。
【0112】
従って、クロック制御部30は、変化量累積値Sb(n)が最大値を呈する位相"6"を、サンプリングクロックCLKの最適位相として選択する。この位相"6"は、図12に示したアナログ映像信号V1の信号レベルがリンギングの影響に因り急峻な変化を開始する直前の位相(換言すると、リンギングの影響が無くなり、信号レベルの変動が最も落ち着いている位相)と一致する。また、変化量累積値Sb(n)の最大値を呈する位相が"8"〜"14"である場合は"0"〜"6"に置き換えられる。
【0113】
このように、本実施の形態においては、アナログ映像信号の変化開始点と最早の位相とが一致せず、且つ最早の位相がアナログ映像信号の急峻な変化の途中となるポイントでのサンプリングに供される場合であっても、最適位相を選択することができる。なお、画素差分Da(n, x)の検出対象とする隣接する3画素の組は、離散的に選択しても良い。この場合も同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0114】
図13に、互いに異なる32個の位相"0"〜"31"を有するサンプリングクロックを順次用いて図12に示したアナログ映像信号V1をサンプリングした場合における、差分累積値Sa(n)、変化量Db(n)、及び変化量累積値Sb(n)と、画素P(x−1)及びP(x)に対応するデジタル映像信号V2の信号レベルV2(n)とを重ねて表示する。この場合も、変化量累積値Sb(n)を最大にする位相"30"が最適位相と一致する。
【0115】
なお、上記の実施の形態によって本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【符号の説明】
【0116】
1 信号処理回路
10 ADC
20 クロック発生部
30 クロック制御部
40 映像開始/終了検出部
50, 50a 画質検出部
51, 52 差分検出器
53, 54 累積部
531 絶対値検出器
532, 541 累積器
533, 542 符号判定器
Ab(n) 絶対値
CLK クロック
Da(n) 画素差分
Db(n), Db1(n), Db2, Db3(n) 変化量
P(x−1)〜P(x+3) 画素
S(n), Sb(n) 画質判定データ(変化量累積値)
Sa(n) 差分累積値
V1 アナログ映像信号
V2, V2(n) デジタル映像信号
V3 同期信号
V4 周波数制御信号
V5 位相制御信号
V6 映像開始/終了検出信号
V7 リセット信号
V8 加減算指示信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相を決定する位相決定部と、を備え、
前記位相決定部は、
位相の異なるサンプリングクロックを前記信号変換部に順次与えて得た各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出部と、
前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出部と、
前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積部と、
前記累積の結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択部と、
を含む信号処理回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記位相決定部は、前記第1の差分を対応する位相毎に累積する第2の累積部をさらに含み、
前記第1の検出部は、前記第1及び第2の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積部は、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分を、各位相に対応する前回の累積結果に加算又は減算し、
前記第2の検出部は、前記第2の累積部で得られた最終的な累積結果を、前記第1の検出部で検出された第1の差分として扱う、
ことを特徴とする信号処理回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記位相決定部は、前記第1の差分を対応する位相毎に累積して、第1の累積結果を得ると共に、前記第2の画素と、これに隣接する前記第1の画素とは異なる第3の画素との間の第2の差分を対応する位相毎に累積して、第2の累積結果を得る第2の累積部をさらに含み、
前記第1の検出部は、前記第1〜第3の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1及び第2の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積部は、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1及び第2の差分を、各位相に対応する前回の第1及び第2の累積結果にそれぞれ加算又は減算し、
前記第2の検出部は、
前記第2の累積部で得られた最終的な第2の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第1の変化量を検出し、
前記最終的な第2の累積結果の内で最早の位相に対応する累積結果と、前記第2の累積部で得られた最終的な第1の累積結果の内で最遅の位相に対応する累積結果との間の第2の変化量を検出し、
前記最終的な第1の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第3の変化量を検出し、
前記第1の累積部は、
前記第1の変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、当該累積により得た第3の累積結果を前記第1の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記第2の変化量を、その極性と前記第1の変化量の内で最早の位相に対応する変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内で最遅の位相に対応する一の変化量を、その極性と前記第2の変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内の前記一の変化量以外の他の変化量を、その極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を前記他の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記選択部は、前記第3の累積結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する、
ことを特徴とする信号処理回路。
【請求項4】
アナログ信号を、位相の異なるサンプリングクロックに順次同期してサンプリングし、デジタル信号に変換する変換ステップと、
各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出ステップと、
前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出ステップと、
前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積ステップと、
前記累積の結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択ステップと、
を備えた信号処理方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の差分を対応する位相毎に累積する第2の累積ステップをさらに備え、
前記第1の検出ステップは、前記第1及び第2の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積ステップは、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分を、各位相に対応する前回の累積結果に加算又は減算し、
前記第2の検出ステップは、前記第2の累積ステップで得た最終的な累積結果を、前記第1の検出ステップで検出した第1の差分として扱う、
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1の差分を対応する位相毎に累積して、第1の累積結果を得ると共に、前記第2の画素と、これに隣接する前記第1の画素とは異なる第3の画素との間の第2の差分を対応する位相毎に累積して、第2の累積結果を得る第2の累積ステップをさらに備え、
前記第1の検出ステップは、前記第1〜第3の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1及び第2の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積ステップは、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1及び第2の差分を、各位相に対応する前回の第1及び第2の累積結果にそれぞれ加算又は減算し、
前記第2の検出ステップは、
前記第2の累積ステップで得た最終的な第2の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第1の変化量を検出し、
前記最終的な第2の累積結果の内で最早の位相に対応する累積結果と、前記第2の累積ステップで得た最終的な第1の累積結果の内で最遅の位相に対応する累積結果との間の第2の変化量を検出し、
前記最終的な第1の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第3の変化量を検出し、
前記第1の累積ステップは、
前記第1の変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、当該累積により得た第3の累積結果を前記第1の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記第2の変化量を、その極性と前記第1の変化量の内で最早の位相に対応する変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内で最遅の位相に対応する一の変化量を、その極性と前記第2の変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内の前記一の変化量以外の他の変化量を、その極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を前記他の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記選択ステップは、前記第3の累積結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する、
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項1】
アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相を決定する位相決定部と、を備え、
前記位相決定部は、
位相の異なるサンプリングクロックを前記信号変換部に順次与えて得た各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出部と、
前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出部と、
前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積部と、
前記累積の結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択部と、
を含む信号処理回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記位相決定部は、前記第1の差分を対応する位相毎に累積する第2の累積部をさらに含み、
前記第1の検出部は、前記第1及び第2の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積部は、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分を、各位相に対応する前回の累積結果に加算又は減算し、
前記第2の検出部は、前記第2の累積部で得られた最終的な累積結果を、前記第1の検出部で検出された第1の差分として扱う、
ことを特徴とする信号処理回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記位相決定部は、前記第1の差分を対応する位相毎に累積して、第1の累積結果を得ると共に、前記第2の画素と、これに隣接する前記第1の画素とは異なる第3の画素との間の第2の差分を対応する位相毎に累積して、第2の累積結果を得る第2の累積部をさらに含み、
前記第1の検出部は、前記第1〜第3の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1及び第2の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積部は、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1及び第2の差分を、各位相に対応する前回の第1及び第2の累積結果にそれぞれ加算又は減算し、
前記第2の検出部は、
前記第2の累積部で得られた最終的な第2の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第1の変化量を検出し、
前記最終的な第2の累積結果の内で最早の位相に対応する累積結果と、前記第2の累積部で得られた最終的な第1の累積結果の内で最遅の位相に対応する累積結果との間の第2の変化量を検出し、
前記最終的な第1の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第3の変化量を検出し、
前記第1の累積部は、
前記第1の変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、当該累積により得た第3の累積結果を前記第1の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記第2の変化量を、その極性と前記第1の変化量の内で最早の位相に対応する変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内で最遅の位相に対応する一の変化量を、その極性と前記第2の変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内の前記一の変化量以外の他の変化量を、その極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を前記他の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記選択部は、前記第3の累積結果を最大にする位相を、前記信号変換部に与えるべきサンプリングクロックの位相として選択する、
ことを特徴とする信号処理回路。
【請求項4】
アナログ信号を、位相の異なるサンプリングクロックに順次同期してサンプリングし、デジタル信号に変換する変換ステップと、
各デジタル信号中の、隣接する第1及び第2の画素同士間の第1の差分を検出する第1の検出ステップと、
前記第1の差分の内、時間軸上で隣接する位相に対応する差分同士間の変化量を検出する第2の検出ステップと、
前記変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、前記累積の結果を前記極性が変化した場合に初期化する第1の累積ステップと、
前記累積の結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する選択ステップと、
を備えた信号処理方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の差分を対応する位相毎に累積する第2の累積ステップをさらに備え、
前記第1の検出ステップは、前記第1及び第2の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積ステップは、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分を、各位相に対応する前回の累積結果に加算又は減算し、
前記第2の検出ステップは、前記第2の累積ステップで得た最終的な累積結果を、前記第1の検出ステップで検出した第1の差分として扱う、
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1の差分を対応する位相毎に累積して、第1の累積結果を得ると共に、前記第2の画素と、これに隣接する前記第1の画素とは異なる第3の画素との間の第2の差分を対応する位相毎に累積して、第2の累積結果を得る第2の累積ステップをさらに備え、
前記第1の検出ステップは、前記第1〜第3の画素としての少なくとも2組の隣接画素について、前記第1及び第2の差分をそれぞれ検出し、
前記第2の累積ステップは、一の位相に対応する各組の隣接画素についての第1の差分の極性に応じて、各位相に対応する各組の隣接画素についての第1及び第2の差分を、各位相に対応する前回の第1及び第2の累積結果にそれぞれ加算又は減算し、
前記第2の検出ステップは、
前記第2の累積ステップで得た最終的な第2の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第1の変化量を検出し、
前記最終的な第2の累積結果の内で最早の位相に対応する累積結果と、前記第2の累積ステップで得た最終的な第1の累積結果の内で最遅の位相に対応する累積結果との間の第2の変化量を検出し、
前記最終的な第1の累積結果の内、時間軸上で隣接する位相に対応する累積結果同士間の第3の変化量を検出し、
前記第1の累積ステップは、
前記第1の変化量をその極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に累積し、当該累積により得た第3の累積結果を前記第1の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記第2の変化量を、その極性と前記第1の変化量の内で最早の位相に対応する変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内で最遅の位相に対応する一の変化量を、その極性と前記第2の変化量の極性とが一致する場合に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を両極性が一致しない場合に初期化し、
前記第3の変化量の内の前記一の変化量以外の他の変化量を、その極性が変化しない場合に対応する位相が遅い方から順に前記第3の累積結果に累積し、前記第3の累積結果を前記他の変化量の極性が変化した場合に初期化し、
前記選択ステップは、前記第3の累積結果を最大にする位相を、前記変換に用いるべきサンプリングクロックの位相として選択する、
ことを特徴とする信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−188161(P2011−188161A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50073(P2010−50073)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]