説明

信号処理装置

【目的】 ROMのデータを書き改めることなく、簡単な操作で、非線形入出力特性を変えられるようにした信号処理装置を提供する。
【構成】 nビットの被処理信号INに対して、アドレス線が(n+m)ビット構成で複数の非線形入出力特性をもつデータが書き込まれたROM101 を備え、制御部108 よりmビット分のコントロール信号QをROM101 のアドレス線を入力して、ROM101 より複数のデータを読み出し、Dタイプフリップフロップ回路102 〜104 で同一のタイミングとしたのち、演算部105 ,106 で演算処理したのち加算部107 で加算し、被処理信号に対して重みを1とした形で、非線形処理された出力信号OUTを出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、信号処理装置に関し、特にリードオンリメモリ(以下、ROMと略称する)を用いたルックアップテーブル変換により実現される、画像信号のγ補正装置等の非線形信号処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図6に、ROMを用いたルックアップテーブル変換により実現される非線形信号処理装置の従来例を示す。図6において、301 は非線形入出力特性をもつデータが書き込まれているROM、311 は非線形処理が施される被処理信号INの入力端子、312 は非線形処理が施された出力信号OUTの出力端子を示している。そして入力端子311 から入力された被処理信号INはROM301 のアドレス線に入力されており、図7に示すような入出力特性をもつ非線形データをROM301に書き込んでおくことにより、被処理信号INに非線形処理を施した出力信号OUTが、簡単な構成で得られるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の非線形信号処理装置においては、非線形処理を実現するためのROMに書き込まれるデータの入出力特性が、回路としての入出力特性となるので、非線形信号処理装置に入出力特性の多少の変更が生じた場合には、ROMに書き込むデータを、その都度書き改める必要があり、最終的な入出力特性の決定までに、かなりの工数が必要となる。
【0004】本発明は、従来の非線形信号処理装置における上記問題点を解消するためになされたもので、入出力特性に多少の調整が生じ得る非線形処理装置などの信号処理装置において、入出力特性に多少の変更が生じた場合、特に非線形の特性を線形近似する部分の変更などに対しても、ROMに書き込まれるデータをその都度書き改めることなく、簡単な操作で変更できるようにした信号処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】上記問題点を解決するため、本発明は、nビットの被処理信号に対してROMを用いたルックアップテーブル変換により非線形処理を施す信号処理装置において、前記ROMのアドレス線をnビットの被処理信号に対して(n+m)ビット構成にし、該ROMに複数の非線形入出力特性のデータをもたせるものである。
【0006】このようにnビットの被処理信号に対してアドレス線が(n+m)ビット構成のROMを用いることにより、複数の入出力特性のデータをもたせることができ、これを合成することにより、信号処理装置の入出力特性を容易に変更することができる。
【0007】
【実施例】次に実施例について説明する。図1は、本発明に係る信号処理装置の基本的な実施例を示すブロック構成図である。図1において、101 は複数の非線形入出力特性をもつデータが書き込まれているROM、102 ,103 ,104 はDタイプフリップフロップ回路、105 はDタイプフリップフロップ回路103 より出力されるデータを演算する演算部、106 はDタイプフリップフロップ回路104 より出力されるデータを演算する演算部、107 は演算部105 及び106 により演算されたデータを合成するための加算部、108 はROM101 の出力とDタイプフリップフロップ回路102 ,103 ,104 のタイミングと演算部105 ,106 の演算とをコントロールする制御部、111 は非線形処理が施される被処理信号INの入力端子、112 は非線形処理が施された出力信号OUTの出力端子、113 はROM101 の出力と演算部105 ,106 での演算を設定し出力信号OUTを決定する出力コントロール信号CONTの入力端子である。
【0008】次に、このように構成された信号処理装置の動作について説明する。入力端子111 より入力されたnビットの被処理信号INは、ROM101 のアドレス線に入力される。またROM101 のアドレス線には、制御部108 よりmビット分のコントロール信号Qが入力される。被処理信号INをROM101 のアドレス線に入力することにより、ROM101 より所望のデータが読み出されるわけであるが、制御部108 から出力されるコントロール信号Qの値(α,β,γ,・・・ )により、1つの被処理信号に対し、複数のデータが読み出される。
【0009】ROM101 より読み出された複数の非線形入出力特性をもつデータは、Dタイプフリップフロップ回路102 ,103 ,104 により同一のタイミングとしたのち、それぞれ演算部105 及び106 に入力される。演算部105 ,106 での演算は、制御部108 より送出されるコントロール信号で決定されるが、演算部105 が該演算部の入力信号について、y/x倍(x及びyは共に整数で、x>0,x≧y)の演算を行う際には、演算部106 は該演算部の入力信号について、(x−y)/x倍の演算を行うように構成されている。上記のような演算が施された後、それぞれのデータが加算部107 により加算され、被処理信号に対して重みを1とした形で出力信号OUTが与えられる。
【0010】一方の非線形入出力特性のデータをa′、他方の非線形入出力特性のデータをa″とすると、出力端子112 から出力される与えられた出力信号OUTは、a′y/x+a″(x−y)/xとなる。したがってこの構成で、図2に示すようにROMに書き込まれた複数の非線形入出力特性のデータ間の範囲で、信号処理装置の入出力特性の可変が可能であり、mの値が大きければ非線形入出力特性のデータを、より多くROMに書き込めるので、より精度よく特性の微調整が可能となる。
【0011】次に、図3に基づいて本発明の具体的な実施例について説明する。図3において、201 は複数の非線形入出力特性のデータが書き込まれているROM、202 ,203 ,204 はDタイプフリップフロップ回路、205 はDタイプフリップフロップ回路203 からのデータをx倍(0≦x≦8)する乗算器、206 はDタイプフリップフロップ回路204 からのデータを(8−x)倍する乗算器、207 は乗算器205及び206 により演算が施されたデータを合成するための加算器、208 は加算器207 により加算されたデータを1/8とする除算器、209 はROM201 の出力とDタイプフリップフロップ回路202 ,203 ,204 のタイミングと乗算器205 ,206の演算とをコントロールする制御部、211 は非線形処理が施される被処理信号INの入力端子、212 は非線形処理が施された出力信号OUTを出力する出力端子、213 は乗数x及びROM201 の出力状態を設定して出力信号OUTを決定する出力コントロール信号CONTの入力端子である。
【0012】次に、このように構成した信号処理装置の動作を、図4に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。この実施例においては、ROM201 のアドレス線は、nビットの被処理信号INに対して(n+1)ビット構成のものを用いている。そしてROM201 からは、制御部209 から出力されたROM201 のアドレス線に入力されるコントロール信号221 が、“L”レベルのときと、“H”レベルのときとで、それぞれ異なった非線形入出力特性のデータが読み出されるようになっている。この実施例では、図5に示すように、コントロール信号221 が“L”レベルのときには、非線形特性の立ち上がりを、y=3a(y:出力信号,a:入力信号)で近似したy=a0.45の非線形入出力特性のデータ(図4では、a′,b′,c′,・・・ で示している)をROM201 より読み出し、コントロール信号221 が“H”レベルのときには、非線形特性の立ち上がりを、y=2aで近似したy=a0.45の非線形入出力特性のデータ(図4では、a″,b″,c″,・・・ で示している)をROM201 より読み出すようにしている。
【0013】このようにして、入力端子211 より被処理信号IN(図4では、a,b,c,・・・ で示している)を、図4に示すタイミングで入力することにより、1つの被処理信号に対して、2種のデータ(a′,b′,c′,・・・ ;a″,b″,c″,・・・ )がROM201 より出力信号214 として読み出される。ROM201 より読み出された出力信号214 は、Dタイプフリップフロップ回路202 ,203 ,204 に入力され、制御部209 からのクロックパルス222 ,223 により制御されて、Dタイプフリップフロップ回路203 ,204 より、入力被処理信号INと同じデータレートで、それぞれ出力信号216 (a′,b′,c′,・・・ )及び出力信号217 (a″,b″,c″,・・・ )として出力される。
【0014】Dタイプフリップフロップ回路203 ,204 からの出力信号216 ,217 は、それぞれ乗算器205 でx倍、乗算器206 で(8−x)倍される。そして、この乗算処理が行われた後、加算器207 で加算され、次いで加算されたデータは除算器208により1/8倍され、入力された被処理信号INに対し重みを1とし、非線形処理された出力信号OUTとして出力端子212 より出力される。
【0015】以上のような動作により、非線形特性y=a0.45の立ち上がりの近似部分で、y=2aとy=3aとの間の調整が可能となる。またnビットの被処理信号に対するROMの(n+m)ビット構成のアドレス線のmビットを多くすることにより、ROMには、より多くの非線形入出力特性のデータの書き込みが可能であり、より高精度の調整が可能となることは明らかである。
【0016】
【発明の効果】以上実施例に基づいて説明したように、本発明によれば、ROMのアドレス線をnビットの被処理信号に対して(n+m)ビット構成にし、ROMに複数の非線形入出力特性のデータをもたせることができるようにしたので、非線形入出力特性の微調整を容易に行うことの可能な信号処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る信号処理装置の基本的な実施例を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した実施例におけるROMの入出力特性を示す図である。
【図3】本発明の具体的な実施例を示すブロック構成図である。
【図4】図3に示した実施例の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】図3に示した実施例におけるROMの入出力特性を示す図である。
【図6】従来の非線形信号処理装置の構成例を示す概略ブロック図である。
【図7】図6に示した従来例におけるROMの入出力特性を示す図である。
【符号の説明】
101 ROM
102 ,103 ,104 Dタイプフリップフロップ回路
105 ,106 演算部
107 加算部
108 制御部
111 被処理信号入力端子
112 処理信号出力端子
113 出力コントロール信号入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 nビットの被処理信号に対してリードオンリメモリを用いたルックアップテーブル変換により非線形処理を施す信号処理装置において、前記リードオンリメモリのアドレス線をnビットの被処理信号に対して(n+m)ビット構成にし、該リードオンリメモリに複数の非線形入出力特性のデータをもたせたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】 前記リードオンリメモリから選択的に複数の非線形入出力特性のデータを読み出す制御手段と、該リードオンリメモリから読み出された前記複数のデータを合成する手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−133187
【公開日】平成6年(1994)5月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−304438
【出願日】平成4年(1992)10月19日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)