説明

信号分離装置及び信号分離方法

【課題】信号分離装置において、信号点数を削減して演算量を削減できることを目的とする。
【解決手段】伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力する列入れ替え手段と、列入れ替え手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力するQR分解階層化手段と、QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去する干渉信号除去手段と、干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から各送信信号の信号候補点を所定数選択する信号候補点選択手段と、信号候補点選択手段で選択した各送信信号の信号候補点を用いて、QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルから各送信信号の信号分離を行う信号分離手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離装置及び信号分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、限られた周波数資源を用いて通信の大容量化を図るための周波数利用効率の向上が必須となっている。周波数利用効率を向上させる技術として、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いて、同一時刻において同一周波数帯域上に空間多重チャネルを構成し、情報伝送レートを向上させるMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムが提案されている。
【0003】
受信機側で送信機からの各送信信号を分離する方法として、QR分解とMアルゴリズムを用いる演算量削減型最尤推定法(QRM−MLD)がある。QRM−MLDでは、送受信機間のチャネル行列をQR分解し、その結果を用いて受信信号を階層化し、干渉信号成分が存在しない信号、つまり階層化後の最下段の信号から順に用いて信号候補点を削減して行くことで演算量を削減する。
【0004】
送信アンテナが3本、受信アンテナが3本であれば、チャネル行列Hは(1)式のように表される。ここで、要素h1,1,h2,1,h3,1それぞれは第1送信アンテナからの送信信号を第1,第2,第3受信アンテナで受信する特性を表している。
【0005】
【数1】

【0006】
このチャネル行列HのQR分解は(2)式のように表すことができる。
【0007】
【数2】

【0008】
上記QR分解で生成されるユニタリ行列の複素共役転置をそれぞれの受信信号に乗算し、各送信信号成分が最上段にのみ存在するように受信信号を階層化すると、階層化後受信信号ベクトルyは(3)式のように表すことができる。x,x,xは第1,第2,第3送信アンテナの送信信号である。
【0009】
【数3】

【0010】
例えば送信信号x,x,xが64QAM信号であるとすると、QRM−MLDでは、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号r3,3×xと、信号xの64個のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。次に、中間段の信号r2,2×x及び信号r2,3×xと、信号xの64個のレプリカ及び信号xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。同様にして、最上段の信号r1,1×x及び信号r1,2×x及び信号r1,3×xと、信号xの64個のレプリカ及び信号x,xそれぞれのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高い信号候補点を選択する。
【0011】
なお、サブキャリアの各グループに属する各サブキャリアに対して、チャネル行列をQR分解し、対応する受信系列を線形フィルタリングして、変換受信系列を生成し、各グループに属する各サブキャリアに対して、空間順番が並び替えられた送信系列の候補の絞り込みを行った結果、その候補の中の最も尤度メトリックが小さい候補を暫定推定結果とし、本来送信された空間順番に並び直して最終推定結果を出力する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0012】
また、空間順番が並び替えられた送信系列の候補の絞り込みを行い、送信系列の候補の絞り込みを行った結果、その候補の中の最も尤度メトリックが小さい候補を暫定推定結果とし、候補信号点選定の実施順番に基づいて、本来送信された空間順番に並び直して、最終推定結果を出力する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0013】
また、信号点の組み合わせに対する尤度値の順位に基づいて最小尤度値の次順位となる新たな尤度値を更に算出し、新たな尤度値を含む尤度値の中から最小尤度値を除いて最小となる最小尤度値を決定し、各最小尤度値に対応する信号点の組み合わせを各段階の送信シンボル候補として選択する技術が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−55216号公報
【特許文献2】特開2009−55217号公報
【特許文献3】特開2009−141768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
QRM−MLDでは、前述のように、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号を用いて信号候補点を削減するが、干渉成分が存在しない最下段は受信ダイバーシチ効果を得ることができない。つまり、送信信号xの成分は、最下段の信号r3,3×xと、中間段の信号r2,3×xと、最上段の信号r1,3×xに分かれている。この受信ダイバーシチ効果を得ることができないために、初期段階(最下段の信号信号候補点を削減する段階)において、信号点を大きく削減することができず、演算量の削減が期待できないという問題があった。
【0016】
開示の信号分離装置は、信号点数を削減して演算量を削減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示の一実施形態による信号分離装置は、
複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離装置において、
伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力する列入れ替え手段と、
前記列入れ替え手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように前記受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力するQR分解階層化手段と、
前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から前記最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去する干渉信号除去手段と、
前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点を所定数選択する信号候補点選択手段と、
前記信号候補点選択手段で選択した前記各送信信号の信号候補点を用いて、前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルから前記各送信信号の信号分離を行う信号分離手段と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本実施形態によれば、信号点数を削減して演算量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】MIMO信号分離装置の第1実施形態の構成図である。
【図2】MIMO信号分離装置の第2実施形態の構成図である。
【図3】干渉除去の様子を示す図である。
【図4】MIMO信号分離装置の第3実施形態の構成図である。
【図5】MIMO信号分離装置の第3実施形態の変形例の構成図である。
【図6】MIMO信号分離装置の第4実施形態の構成図である。
【図7】MIMO信号分離装置の第4実施形態の変形例の構成図である。
【図8】MIMO信号分離装置の第5実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1はMIMO信号分離装置の第1実施形態の構成図を示す。図1において、列入れ替え部2は伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを端子1から供給され、チャネル行列の各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力する。
【0022】
QR分解階層化部3は列入れ替え部2の出力する複数のチャネル行列をQR分解し、QR分解出力と端子4から供給される複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように受信信号を階層化した複数の受信信号ベクトルを出力する。
【0023】
干渉信号除去部5はQR分解階層化部3の出力する複数の階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去する。
【0024】
信号候補点選択部6は干渉信号除去部5の出力する干渉成分を除去した信号から各送信信号の信号候補点を所定数選択する。
【0025】
信号分離部7は信号候補点選択部6で選択した各送信信号の信号候補点を用いて、QR分解階層化部3の出力する階層化した受信信号ベクトルから各送信信号の信号分離を行って、分離した送信信号を端子8から出力する。
【0026】
<第2実施形態>
図2はMIMO信号分離装置の第2実施形態の構成図を示す。このMIMO信号分離装置は受信機におけるベースバンドの処理を示しており、信号分離にはQRM−MLDを用いることを想定している。
【0027】
図2において、端子11−1〜11−nにn本のアンテナで受信した受信信号が入力され、伝搬路推定部12及び行列乗算部13に供給される。伝搬路推定部12はn系統の受信信号から例えば送信信号に重畳された既知のパイロット信号を検出することで伝搬路特性を推定してチャネル行列生成部14に供給する。チャネル行列生成部14は上記の伝搬路特性の推定結果からチャネル行列Hを生成し、列ベクトル入れ替え部15及びノルム2乗値算出部16に供給する。チャネル行列Hは(4)式のように表すことができる。
【0028】
【数4】

【0029】
ここで、hは第n番目の送信信号に対するチャネルベクトル、Nは送信アンテナ本数、Nは受信アンテナ本数を表している。
【0030】
列ベクトル入れ替え部15は図1の列入れ替え部2に対応し、チャネル行列Hの各送信信号成分(列ベクトル)が行列の左端になるようにそれぞれ入れ替える。第n番目の信号成分が左端になるように入れ替えた後のチャネル行列をH(ただし、n=1〜N)とすると、Hは(5)式のように表すことができる。
【0031】
【数5】

【0032】
なお、送信アンテナが3本、受信アンテナが3本である場合のチャネル行列H,H,Hを(6a),(6b),(6c)式に示す。
【0033】
【数6】

【0034】
列ベクトル入れ替え部15の出力するチャネル行列HはQR分解部17に供給されてユニタリ行列Qと上三角行列RにQR分解される。このチャネル行列HのQR分解は(7)式のように表すことができる。
【0035】
【数7】

【0036】
行列乗算部13は、QR分解で生成されたユニタリ行列Qの複素共役転置(エルミート転置)を端子11−1〜11−nから供給される受信信号に乗算し、各送信アンテナの送信信号成分が最上段にのみ存在するように受信信号を階層化する。QR分解部17及び行列乗算部13は図1のQR分解階層化部3に対応する。階層化後受信信号ベクトルyは(8)式のように表すことができる。
【0037】
【数8】

【0038】
ここで、xは第n番目の送信アンテナから送信された送信信号、Πはユニタリ行列乗算後の雑音ベクトルを表している。
【0039】
干渉除去部18は図1の干渉信号除去部5に対応し、階層化後受信信号ベクトルyを用いて、最上段の信号から各送信信号成分以外の干渉成分を最上段以外の信号を用いて除去する。説明を簡単にするため、N=N=2の場合を想定する。この場合、階層化後受信信号ベクトルy及びyは(9a),(9b)式のように表すことができる。
【0040】
【数9】

【0041】
階層化後受信信号ベクトルy、yの最下段の信号に重みwを乗算して最上段の式から減算することで干渉成分を除去する。重みwは第n番目の送信信号成分を取り出す場合の干渉除去重みを表している。雑音項Π,Πを無視して、干渉除去後の信号x^,x^は(10a),(10b)式の通りとなる。
【0042】
【数10】

【0043】
これにより、干渉除去後の信号はx^≒r1,1,1となり、x^≒r2,1,1となる。
【0044】
なお、(10a),(10b)式の重みw,wは、MMSE(Minimum Mean Square Error)規範により以下のように表される。σは雑音電力を表す。
【0045】
=(r1,1,2×r1,2,2)/[|r1,2,2+σ
=(r2,1,2×r2,2,2)/[|r2,2,2+σ
【0046】
図3に受信信号数Nr,送信信号数Ntでt番目の送信信号候補点を選択する場合の干渉除去の様子を示す。最下段の信号rt,Nr,Ntt,Ntにそれぞれ重み付けを行って上段の信号rt,Nr−1,Ntt,Nt、信号rt,Nr−2,Ntt,Nt、信号rt,Nr−2,Ntt,Nt…信号rt,1,Ntt,Ntそれぞれから減算し干渉成分として除去する。また、下から2段目の信号rt,Nr−1,Nt−1t,Nt−1にそれぞれ重み付けを行って上段の信号rt,Nr−2,Nt−1t,Nt−1…信号rt,1,Nt−1t,Nt−1それぞれから減算し干渉成分として除去する。また、下から3段目の信号rt,Nr−2,Nt−2t,Nt−2にそれぞれ重み付けを行って上段の信号…rt,N1,Nt−2t,Nt−2それぞれから減算し干渉成分として除去する。これによって、最上段の左端にダイバーシチ効果の大なる信号rt,1,1t,1を得ることができる。つまり、送信信号xt,1の成分は最上段で左端だけにあり、ダイバーシチ効果の大なる信号である。
【0047】
信号候補点選択部19は図1の信号候補点選択部6に対応する。N=N=2の場合を想定した場合、信号候補点選択部19は干渉除去された後のダイバーシチ効果の大なる信号x^と信号xのレプリカ(64QAMの場合は64個のレプリカ)を比較して尤度の高い予め定められた所定数m(mは64より小さく、Mアルゴリズムにおける信号点数Mより小さい値)のレプリカを信号候補点として選択し、同様に、ダイバーシチ効果の大なる信号x^と信号xのレプリカ(64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数mのレプリカを信号候補点として選択する。これにより、各送信信号x^の信号候補点数を所定数mに減少することができ、選択された各送信信号x^の信号候補点それぞれは信号分離部21に供給される。
【0048】
このように、最上段の信号x,xは干渉成分が存在するものの、受信ダイバーシチ効果を得ることができる。例えば(3)式において、送信信号xの成分は、最下段と中間段に分離せず、最上段の信号r1,1×xだけに集中している。この受信ダイバーシチ効果の大なる信号x,xについて干渉成分を除去することにより、信号点数を大きく削減することができる。
【0049】
一方、ノルム2乗値算出部16では、チャネル行列生成部14で生成されたチャネル行列Hの各列ベクトルのノルムの2乗値を計算し、ノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択するための選択信号を生成する。この選択は、階層化後受信信号ベクトルyの右端に受信ダイバーシチ効果が最も大きい信号が位置するため、後述する信号分離部21でQRM−MLDを用いて信号分離を行う場合に最も高い信号分離精度が得られるからである。
【0050】
スイッチ20はノルム2乗値算出部16から供給される選択信号によって、行列乗算部13の出力する複数の階層化後受信信号ベクトルyのうちノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択して信号分離部21に供給する。
【0051】
信号分離部21は図1の信号分離部7に対応し、例えばQRM−MLDを用いて信号分離を行う。すなわち、例えば階層化後受信信号ベクトルyが(3)式で表され、送信信号x,x,xが64QAMの信号であるとすると、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号r3,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM(m>M)個を選択することで信号候補点を削減する。次に、中間段の信号r2,2×x及び信号r2,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。同様にして、最上段の信号r1,1×x及び信号r1,2×x及び信号r1,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号x,xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高い信号候補点を選択する。信号分離部21にて分離されて出力される各送信信号は復号部22に供給されて復号(例えば64QAM復号)されて出力される。
【0052】
このように、本実施形態では信号分離部21の前段の信号候補点選択部19において各信号候補点数がm個に削減されているため、信号分離部21での演算を軽減することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図4はMIMO信号分離装置の第3実施形態の構成図を示す。図4において、図2と同一部分には同一符号を付す。端子11−1〜11−nにn本のアンテナで受信した受信信号が入力され、伝搬路推定部12及び行列乗算部13に供給される。伝搬路推定部12はn系統の受信信号から既存の方法で伝搬路特性を推定してチャネル行列生成部14に供給する。チャネル行列生成部14は上記の伝搬路特性の推定結果からチャネル行列Hを生成し、列ベクトル入れ替え部15及びノルム2乗値算出部16に供給する。チャネル行列Hは(4)式のように表すことができる。
【0054】
ここで、hは第n番目の送信信号に対するチャネルベクトル、Nは送信アンテナ本数、Nは受信アンテナ本数を表している。
【0055】
列ベクトル入れ替え部15でチャネル行列の各送信信号成分(列ベクトル)が行列の左端になるようにそれぞれ入れ替える。第n番目の信号成分が左端になるように入れ替えた後のチャネル行列をH(ただし、n=1〜N)とすると、Hは(5)式のように表すことができる。
【0056】
なお、送信アンテナが3本、受信アンテナが3本である場合のチャネル行列H,H,Hを(6a),(6b),(6c)式に示す。
【0057】
列ベクトル入れ替え部15の出力するチャネル行列HはQR分解部17に供給されてQR分解される。このチャネル行列HのQR分解は(7)式のように表すことができる。
【0058】
行列乗算部13は、QR分解で生成されたユニタリ行列Qの複素共役転置を端子11−1〜11−nから供給される受信信号に乗算し、各送信信号成分が最上段にのみ存在するように受信信号を階層化する。階層化後受信信号ベクトルyは(8)式のように表すことができる。
【0059】
ここで、xは第n番目の送信アンテナから送信された送信信号、Πはユニタリ行列乗算後の雑音ベクトルを表している。
【0060】
干渉除去部18は階層化後受信信号ベクトルyを用いて、最上段の信号から各送信信号成分以外の干渉成分を最上段以外の信号を用いて除去する。説明を簡単にするため、N=N=2の場合を想定する。この場合、階層化後受信信号ベクトルy及びyは(9a),(9b)式のように表すことができる。
【0061】
階層化後受信信号ベクトルy、yの最下段の信号に重みwを乗算して最上段の式から減算することで干渉成分を除去する。重みwは第n番目の送信信号成分を取り出す場合の干渉除去重みを表している。雑音項Π,Πを無視して、干渉除去後の信号x^,x^は(10a),(10b)式の通りとなる。
【0062】
これにより、干渉除去後の信号x^≒r1,1,1となり、信号x^≒r2,1,1となる。信号候補点選択部19は干渉除去された後の信号x^と信号xのレプリカ(64QAMの場合は64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数mi(iは1,2,3,…)のレプリカを信号候補点として選択し、同様に、信号x^と信号xのレプリカ(64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数miのレプリカを信号候補点として選択する。これにより、各送信信号x^の信号候補点数を所定数mに減少することができ、選択された各送信信号x^の信号候補点それぞれは信号分離部21に供給される。なお、所定数miは後述の信号候補点数決定部32から供給される。
【0063】
ここで、最上段の信号x,xは干渉成分が存在するものの、受信ダイバーシチ効果を得ることができる。例えば(3)式において、送信信号xの成分は、最下段と中間段に分離せず、最上段の信号r1,1×xだけに集中している。この受信ダイバーシチ効果を持つ信号x,xは、干渉成分を除去することにより、信号点を大きく削減することができる。
【0064】
一方、ノルム2乗値算出部16では、チャネル行列生成部14で生成されたチャネル行列Hの各列ベクトルのノルムの2乗値を計算し、ノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択するための選択信号を生成する。この選択は、階層化後受信信号ベクトルyの右端に受信ダイバーシチ効果が最も大きい信号が位置するため、後述する信号分離部21でQRM−MLDを用いて信号分離を行う場合に最も高い信号分離精度が得られるからである。
【0065】
スイッチ20はノルム2乗値算出部16から供給される選択信号によって、行列乗算部13の出力する複数の階層化後受信信号ベクトルyのうちノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択して信号分離部21に供給する。
【0066】
また、送信信号ランキング部31には、ノルム2乗値算出部16からチャネル行列Hの各列ベクトルのノルム2乗値を供給されている。送信信号ランキング部31はノルム2乗値が大きな列ベクトルに対応する送信信号をランキング上位とし、ノルム2乗値の小さな列ベクトルに対応する送信信号をランキング下位になるように送信信号のランキング付けを行う。
【0067】
信号候補点数決定部32にはランキングに応じて選択候補点数が予め設定されており、いる。例えばランキング1位に対しては選択候補点数m1(例えばm1=10)、ランキング2位に対しては選択候補点数m2(例えばm2=20)、ランキング3位に対しては選択候補点数m3(例えばm3=30)、ランキング4位に対しては選択候補点数m4(例えばm4=40)のように、ランキング上位ほど小さく、ランキング下位ほど大きい選択候補点数を選択して設定する。信号候補点数決定部32で選択された各信号の選択候補点数miは信号候補点選択部19に供給される。
【0068】
信号分離部21は、例えばQRM−MLDを用いて信号分離を行う。すなわち、例えば階層化後受信信号ベクトルyが(3)式で表され、送信信号x,x,xが64QAMの信号であるとすると、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号r3,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm1,m2,…個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM(m1>M)個を選択することで信号候補点を削減する。次に、中間段の信号r2,2×x及び信号r2,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。同様にして、最上段の信号r1,1×x及び信号r1,2×x及び信号r1,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号x,xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高い信号候補点を選択する。信号分離部21にて分離されて出力される各送信信号は復号部22に供給されて復号(例えば64QAM復号)されて出力される。
【0069】
このように、本実施形態では信号分離部21の前段の信号候補点選択部19において各信号候補点数がmi個に削減されているため、信号分離部21での演算を軽減することができる。また、ランキングに応じ適正な選択候補点数miを設定することができる。
【0070】
<変形例>
図5はMIMO信号分離装置の第3実施形態の変形例の構成図を示す。図5において、図4と同一部分には同一符号を付す。図5においては、送信信号ランキング部31と信号候補点数決定部32の代りに、信号候補点数決定部33が設けられている。
【0071】
信号候補点数決定部33は、ノルム2乗値算出部16からチャネル行列Hの各列ベクトルのノルム2乗値を供給されている。信号候補点数決定部33はノルム2乗値を所定の関数に代入して選択候補点数(整数)を算出する。上記関数は例えばノルム2乗値が大きいほど選択候補点数が小さく、ノルム2乗値が小さいほど選択候補点数が大きくなるような関数である。信号候補点数決定部33で算出された選択候補点数は信号候補点選択部19に供給される。
【0072】
<第4実施形態>
図6はMIMO信号分離装置の第4実施形態の構成図を示す。図6において、図2と同一部分には同一符号を付す。端子11−1〜11−nにn本のアンテナで受信した受信信号が入力され、伝搬路推定部12及び行列乗算部13に供給される。伝搬路推定部12はn系統の受信信号から既存の方法で伝搬路特性を推定してチャネル行列生成部14に供給する。チャネル行列生成部14は上記の伝搬路特性の推定結果からチャネル行列Hを生成し、列ベクトル入れ替え部15及びノルム2乗値算出部16に供給する。チャネル行列Hは(4)式のように表すことができる。
【0073】
ここで、hは第n番目の送信信号に対するチャネルベクトル、Nは送信アンテナ本数、Nは受信アンテナ本数を表している。
【0074】
列ベクトル入れ替え部15でチャネル行列の各送信信号成分(列ベクトル)が行列の左端になるようにそれぞれ入れ替える。第n番目の信号成分が左端になるように入れ替えた後のチャネル行列をH(ただし、n=1〜N)とすると、Hは(5)式のように表すことができる。
【0075】
なお、送信アンテナが3本、受信アンテナが3本である場合のチャネル行列H,H,Hを(6a),(6b),(6c)式に示す。
【0076】
列ベクトル入れ替え部15の出力するチャネル行列HはQR分解部17に供給されてQR分解される。このチャネル行列HのQR分解は(7)式のように表すことができる。
【0077】
行列乗算部13は、QR分解で生成されたユニタリ行列Qの複素共役転置を端子11−1〜11−nから供給される受信信号に乗算し、各送信信号成分が最上段にのみ存在するように受信信号を階層化する。階層化後受信信号ベクトルyは(8)式のように表すことができる。
【0078】
ここで、xは第n番目の送信アンテナから送信された送信信号、Πはユニタリ行列乗算後の雑音ベクトルを表している。
【0079】
干渉除去部18は階層化後受信信号ベクトルyを用いて、最上段の信号から各送信信号成分以外の干渉成分を最上段以外の信号を用いて除去する。説明を簡単にするため、N=N=2の場合を想定する。この場合、階層化後受信信号ベクトルy及びyは(9a),(9b)式のように表すことができる。
【0080】
階層化後受信信号ベクトルy、yの最下段の信号に重みwを乗算して最上段の式から減算することで干渉成分を除去する。重みwは第n番目の送信信号成分を取り出す場合の干渉除去重みを表している。雑音項Π,Πを無視して、干渉除去後の信号x^,x^は(10a),(10b)式の通りとなる。
【0081】
これにより、干渉除去後の信号x^≒r1,1,1となり、信号x^≒r2,1,1となる。信号候補点選択部19は干渉除去された後の信号x^と信号xのレプリカ(64QAMの場合は64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数mのレプリカを信号候補点として選択し、同様に、信号x^と信号xのレプリカ(64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数mのレプリカを信号候補点として選択する。これにより、各送信信号x^の信号候補点数を所定数mに減少することができ、選択された各送信信号x^の信号候補点それぞれは信号分離部21に供給される。
【0082】
ここで、最上段の信号x,xは干渉成分が存在するものの、受信ダイバーシチ効果を得ることができる。例えば(3)式において、送信信号xの成分は、最下段と中間段に分離せず、最上段の信号r1,1×xだけに集中している。この受信ダイバーシチ効果を持つ信号x,xは、干渉成分を除去することにより、信号点を大きく削減することができる。
【0083】
一方、ノルム2乗値算出部16では、チャネル行列生成部14で生成されたチャネル行列Hの各列ベクトルのノルムの2乗値を計算し、ノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択するための選択信号を生成する。この選択は、階層化後受信信号ベクトルyの左端に受信ダイバーシチ効果が最も大きい信号が位置するため、後述する信号分離部21でQRM−MLDを用いて信号分離を行う場合に最も高い信号分離精度が得られるからである。
【0084】
スイッチ20はノルム2乗値算出部16から供給される選択信号によって、行列乗算部13の出力する複数の階層化後受信信号ベクトルyのうちノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択して信号分離部21に供給する。
【0085】
また、送信信号ランキング部41には、ノルム2乗値算出部16からチャネル行列Hの各列ベクトルのノルム2乗値を供給されている。送信信号ランキング部41はノルム2乗値が大きな列ベクトルに対応する送信信号をランキング上位とし、ノルム2乗値の小さな列ベクトルに対応する送信信号をランキング下位になるように送信信号のランキング付けを行う。
【0086】
チャネル行列選択部42は送信信号ランキング部41から供給されるランキングが予め定められた値以下(例えばランキング3位,4位)となる列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hを削除して、ランキングが予め定められた値以上(例えばランキング1位,2位)の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hだけを選択する選択指示信号を生成して列ベクトル入れ替え部15に供給する。
【0087】
これにより、列ベクトル入れ替え部15はランキングが予め定められた値以上(例えばランキング1位,2位)の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列HだけをQR分解部17に供給し、QR分解部17のQR分解を行う受信信号ベクトル数、つまり演算量が軽減される。
【0088】
信号分離部21は、例えばQRM−MLDを用いて信号分離を行う。すなわち、例えば階層化後受信信号ベクトルyが(3)式で表され、送信信号x,x,xが64QAMの信号であるとすると、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号r3,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM(m>M)個を選択することで信号候補点を削減する。次に、中間段の信号r2,2×x及び信号r2,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。同様にして、最上段の信号r1,1×x及び信号r1,2×x及び信号r1,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号x,xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高い信号候補点を選択する。信号分離部21にて分離されて出力される各送信信号は復号部22に供給されて復号(例えば64QAM復号)されて出力される。
【0089】
<変形例>
図7はMIMO信号分離装置の第4実施形態の変形例の構成図を示す。図7において、図6と同一部分には同一符号を付す。図7においては、送信信号ランキング部41とチャネル行列選択部42の代りに、チャネル行列選択部43が設けられている。
【0090】
チャネル行列選択部43にはノルム2乗値算出部16からチャネル行列Hの各列ベクトルのノルム2乗値を供給される。チャネル行列選択部43はノルム2乗値が閾値(例えば1)以下となる列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hを削除して、ノルム2乗値が閾値以上なる列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hだけを選択する選択指示信号を生成して列ベクトル入れ替え部15に供給する。
【0091】
これにより、列ベクトル入れ替え部15はノルム2乗値が閾値未満の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列HだけをQR分解部17に供給し、QR分解部17のQR分解を行う受信信号ベクトル数、つまり演算量が軽減される。
【0092】
<第5実施形態>
図8はMIMO信号分離装置の第5実施形態の構成図を示す。図8において、図6と同一部分には同一符号を付す。端子11−1〜11−nにn本のアンテナで受信した受信信号が入力され、伝搬路推定部12及び行列乗算部13に供給される。伝搬路推定部12はn系統の受信信号から既存の方法で伝搬路特性を推定してチャネル行列生成部14に供給する。チャネル行列生成部14は上記の伝搬路特性の推定結果からチャネル行列Hを生成し、列ベクトル入れ替え部15及びノルム2乗値算出部16に供給する。チャネル行列Hは(4)式のように表すことができる。
【0093】
ここで、hは第n番目の送信信号に対するチャネルベクトル、Nは送信アンテナ本数、Nは受信アンテナ本数を表している。
【0094】
列ベクトル入れ替え部15でチャネル行列の各送信信号成分(列ベクトル)が行列の左端になるようにそれぞれ入れ替える。第n番目の信号成分が左端になるように入れ替えた後のチャネル行列をH(ただし、n=1〜N)とすると、Hは(5)式のように表すことができる。
【0095】
なお、送信アンテナが3本、受信アンテナが3本である場合のチャネル行列H,H,Hを(6a),(6b),(6c)式に示す。
【0096】
列ベクトル入れ替え部15の出力するチャネル行列HはQR分解部17に供給されてQR分解される。このチャネル行列HのQR分解は(7)式のように表すことができる。
【0097】
行列乗算部13は、QR分解で生成されたユニタリ行列Qの複素共役転置を端子11−1〜11−nから供給される受信信号に乗算し、各送信信号成分が最上段にのみ存在するように受信信号を階層化する。階層化後受信信号ベクトルyは(8)式のように表すことができる。
【0098】
ここで、xは第n番目の送信アンテナから送信された送信信号、Πはユニタリ行列乗算後の雑音ベクトルを表している。
【0099】
干渉除去部18は階層化後受信信号ベクトルyを用いて、最上段の信号から各送信信号成分以外の干渉成分を最上段以外の信号を用いて除去する。説明を簡単にするため、N=N=2の場合を想定する。この場合、階層化後受信信号ベクトルy及びyは(9a),(9b)式のように表すことができる。
【0100】
階層化後受信信号ベクトルy、yの最下段の信号に重みwを乗算して最上段の式から減算することで干渉成分を除去する。重みwは第n番目の送信信号成分を取り出す場合の干渉除去重みを表している。雑音項Π,Πを無視して、干渉除去後の信号x^,x^は(10a),(10b)式の通りとなる。
【0101】
これにより、干渉除去後の信号x^≒r1,1,1となり、信号x^≒r2,1,1となる。信号候補点選択部19は干渉除去された後の信号x^と信号xのレプリカ(64QAMの場合は64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数mi(iは1,2,3,…)のレプリカを信号候補点として選択し、同様に、信号x^と信号xのレプリカ(64個のレプリカ)を比較して尤度の高い所定数miのレプリカを信号候補点として選択する。これにより、各送信信号x^の信号候補点数を所定数mに減少することができ、選択された各送信信号x^の信号候補点それぞれは信号分離部21に供給される。なお、所定数miは後述の信号候補点数選択部54から供給される。
【0102】
ここで、最上段の信号x,xは干渉成分が存在するものの、受信ダイバーシチ効果を得ることができる。例えば(3)式において、送信信号xの成分は、最下段と中間段に分離せず、最上段の信号r1,1×xだけに集中している。この受信ダイバーシチ効果を持つ信号x,xは、干渉成分を除去することにより、信号点を大きく削減することができる。
【0103】
一方、ノルム2乗値算出部16では、チャネル行列生成部14で生成されたチャネル行列Hの各列ベクトルのノルムの2乗値を計算し、ノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択するための選択信号を生成する。この選択は、階層化後受信信号ベクトルyの左端に受信ダイバーシチ効果が最も大きい信号が位置するため、後述する信号分離部21でQRM−MLDを用いて信号分離を行う場合に最も高い信号分離精度が得られるからである。
【0104】
スイッチ20はノルム2乗値算出部16から供給される選択信号によって、行列乗算部13の出力する複数の階層化後受信信号ベクトルyのうちノルムの2乗値が最も小さな列ベクトルが左端となりノルムの2乗値が最も大きな列ベクトルが右端となるチャネル行列Hの階層化後受信信号ベクトルyを選択して信号分離部21に供給する。
【0105】
また、送信信号ランキング部41には、ノルム2乗値算出部16からチャネル行列Hの各列ベクトルのノルム2乗値を供給されている。送信信号ランキング部41はノルム2乗値が大きな列ベクトルに対応する送信信号をランキング上位とし、ノルム2乗値の小さな列ベクトルに対応する送信信号をランキング下位になるように送信信号のランキング付けを行う。
【0106】
チャネル行列選択部42は送信信号ランキング部41から供給されるランキングが予め定められた値以下(例えばランキング3位,4位)となる列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hを削除して、ランキングが予め定められた値以上(例えばランキング1位,2位)の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列Hだけを選択する選択指示信号を生成して列ベクトル入れ替え部15に供給する。
【0107】
これにより、列ベクトル入れ替え部15はランキングが予め定められた値以上(例えばランキング1位,2位)の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列HだけをQR分解部17に供給し、QR分解部17のQR分解を行う受信信号ベクトル数、つまり演算量が軽減される。
【0108】
SINR計算部44はQR分解部17の出力するQR分解結果と干渉除去部18の出力する干渉除去後の信号を用い、各信号のSINR(信号電力対干渉及び雑音電力比)を計算する。信号x^,x^それぞれのSINR,SINRは(11a),(11b)式により計算される。
【0109】
【数11】

【0110】
信号候補点数選択部45は各信号のSINR値に対して、予め定められた閾値を用いて各送信信号の信号候補点数を決定する。例えばSINRが0〜10dBの範囲にあれば選択候補点数=64とする。(64QAMの信号候補点数は64であるため、候補点選択は行わないことを意味する)SINRが10〜20dBの範囲にあれば選択候補点数=32とする。SINRが20〜30dBの範囲にあれば選択候補点数=16とする。SINRが30を超えれば選択候補点数=8とする。ここで選択された各受信信号の選択候補点数miは信号候補点選択部19に供給される。
【0111】
信号分離部21は、例えばQRM−MLDを用いて信号分離を行う。すなわち、例えば階層化後受信信号ベクトルyが(3)式で表され、送信信号x,x,xが64QAMの信号であるとすると、初めに干渉成分が存在しない最下段の信号r3,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたmi個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM(mi≧M)個を選択することで信号候補点を削減する。次に、中間段の信号r2,2×x及び信号r2,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高いM個を選択することで信号候補点を削減する。同様にして、最上段の信号r1,1×x及び信号r1,2×x及び信号r1,3×xと、信号xについて信号候補点選択部19で選択されたm個の信号候補点のレプリカ及び信号x,xのM個の信号候補点のレプリカを比較して尤度の高い信号候補点を選択する。信号分離部21にて分離されて出力される各送信信号は復号部22に供給されて復号(例えば64QAM復号)されて出力される。
【0112】
本実施形態では予めSINRの高い信号を用いて信号候補点を削減することで、信号分離部21での演算を軽減することができる。なお、この実施形態では送信信号ランキング部41とチャネル行列選択部42を削除した構成としても良い。
(付記1)
複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離装置において、
伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力する列入れ替え手段と、
前記列入れ替え手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように前記受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力するQR分解階層化手段と、
前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から前記最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去する干渉信号除去手段と、
前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点を所定数選択する信号候補点選択手段と、
前記信号候補点選択手段で選択した前記各送信信号の信号候補点を用いて、前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルから前記各送信信号の信号分離を行う信号分離手段と、
を有することを特徴とする信号分離装置。
(付記2)
付記1記載の信号分離装置において、
前記チャネル行列の各列ベクトルのノルムの2乗を計算するノルム2乗計算手段と、
前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルのうち前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値が最小となる列ベクトルがチャネル行列の左端に位置する受信信号ベクトルを選択して前記信号分離手段に供給する受信信号ベクトル選択手段を
有することを特徴とする信号分離装置。
(付記3)
付記2記載の信号分離装置において、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて各送信信号の信号候補点数を決定する候補点数決定手段を有し、
前記信号候補点選択手段は、前記各送信信号の信号候補点を、前記候補点数決定手段で決定された前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離装置。
(付記4)
付記2記載の信号分離装置において、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて前記列入れ替え手段から出力するチャネル行列を選択する選択指示信号を生成するチャネル行列選択手段を
有し、
前記選択指示信号にしたがって前記列入れ替え手段から出力されるチャネル行列を前記QR分解階層化手段に供給することを特徴とする信号分離装置。
(付記5)
付記1又は2又は4のいずれか1項記載の信号分離装置において、
前記QR分解階層化手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点数を選択する候補点数選択手段を有し、
前記信号候補点選択手段は、前記各送信信号の信号候補点を、前記候補点数選択手段で選択した前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離装置。
(付記6)
複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離方法において、
伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力し、
前記列ベクトルを入れ替えて出力されるチャネル行列をQR分解した出力と前記複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように前記受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力し、
前記階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から前記最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去し、
前記干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点を所定数だけ選択し、
前記信号候補点を所定数選択した前記各送信信号の信号候補点を用いて、前記階層化した受信信号ベクトルから前記各送信信号の信号分離を行う
ことを特徴とする信号分離方法。
(付記7)
付記6記載の信号分離方法において、
前記チャネル行列の各列ベクトルのノルムの2乗を計算し、
前記階層化した受信信号ベクトルのうち前記ノルムの2乗値が最小となる列ベクトルがチャネル行列の左端に位置する受信信号ベクトルを選択して前記各送信信号の信号分離を行う
ことを特徴とする信号分離方法。
(付記8)
付記7記載の信号分離方法において、
前記ノルムの2乗値に基づいて各送信信号の信号候補点数を決定し、
前記各送信信号の信号候補点を、決定された前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離方法。
(付記9)
付記7記載の信号分離方法において、
前記ノルムの2乗値に基づいて前記列ベクトルを入れ替えて出力するチャネル行列を選択する選択指示信号を生成し、前記選択指示信号にしたがって出力されるチャネル行列をQR分解することを特徴とする信号分離方法。
(付記10)
付記6又は7又は9のいずれか1項記載の信号分離方法において、
前記チャネル行列をQR分解した出力と前記干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点数を選択し、
前記各送信信号の信号候補点を、前記選択した信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離方法。
(付記11)
付記3記載の信号分離装置において、
前記候補点数決定手段は、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて前記各送信信号のランキングを行うランキング手段と、
前記ランキング手段が出力するランキング値に応じて前記各送信信号の信号候補点数を選択する候補点数選択手段を
有することを特徴とする信号分離装置。
(付記12)
付記4記載の信号分離装置において、
前記チャネル行列選択手段は、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて前記各送信信号のランキングを行うランキング手段と、
前記ランキング手段が出力するランキング値が所定値以上の列ベクトルが左端に位置するチャネル行列を選択する選択指示信号を生成する選択指示手段を
有することを特徴とする信号分離装置。
(付記13)
付記5記載の信号分離装置において、
前記候補点数選択手段は、
前記QR分解階層化手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号電力対干渉及び雑音電力比を計算する計算手段と、
前記各送信信号の信号電力対干渉及び雑音電力比に応じて前記各送信信号の信号候補点数を選択する候補点数選択手段を
有することを特徴とする信号分離装置。
【符号の説明】
【0113】
2 列入れ替え部
3 QR分解階層化部
5 干渉信号除去部
6 信号候補点選択部
7 信号分離部
11−1〜11−n 端子
12 伝搬路推定部
13 行列乗算部
14 チャネル行列生成部
15 列ベクトル入れ替え部
16 ノルム2乗値算出部
17 QR分解部
18 干渉除去部
19 信号候補点選択部
20 スイッチ
21 信号分離部
22 復号部
31,41 送信信号ランキング部
32,33 信号候補点数決定部
42,43 チャネル行列選択部
44 SINR計算部
45 信号候補点数選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離装置において、
伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力する列入れ替え手段と、
前記列入れ替え手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように前記受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力するQR分解階層化手段と、
前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から前記最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去する干渉信号除去手段と、
前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点を所定数選択する信号候補点選択手段と、
前記信号候補点選択手段で選択した前記各送信信号の信号候補点を用いて、前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルから前記各送信信号の信号分離を行う信号分離手段と、
を有することを特徴とする信号分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の信号分離装置において、
前記チャネル行列の各列ベクトルのノルムの2乗を計算するノルム2乗計算手段と、
前記QR分解階層化手段の出力する階層化した受信信号ベクトルのうち前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値が最小となる列ベクトルがチャネル行列の左端に位置する受信信号ベクトルを選択して前記信号分離手段に供給する受信信号ベクトル選択手段を
有することを特徴とする信号分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の信号分離装置において、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて各送信信号の信号候補点数を決定する候補点数決定手段を有し、
前記信号候補点選択手段は、前記各送信信号の信号候補点を、前記候補点数決定手段で決定された前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離装置。
【請求項4】
請求項2記載の信号分離装置において、
前記ノルム2乗計算手段の出力するノルムの2乗値に基づいて前記列入れ替え手段から出力するチャネル行列を選択する選択指示信号を生成するチャネル行列選択手段を
有し、
前記選択指示信号にしたがって前記列入れ替え手段から出力されるチャネル行列を前記QR分解階層化手段に供給することを特徴とする信号分離装置。
【請求項5】
請求項1又は2又は4のいずれか1項記載の信号分離装置において、
前記QR分解階層化手段の出力するチャネル行列をQR分解した出力と前記干渉信号除去手段の出力する干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点数を選択する候補点数選択手段を有し、
前記信号候補点選択手段は、前記各送信信号の信号候補点を、前記候補点数選択手段で選択した前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離装置。
【請求項6】
複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信する無線通信システムの信号分離方法において、
伝搬路特性を推定して得られるチャネル行列の列ベクトルを各送信アンテナの送信信号成分が左端になるよう入れ替えて出力し、
前記列ベクトルを入れ替えて出力されるチャネル行列をQR分解した出力と前記複数の受信アンテナの受信信号を乗算し、各送信信号が最上段に存在するように前記受信信号を階層化した受信信号ベクトルを出力し、
前記階層化した受信信号ベクトルにおける最上段の信号から前記最上段以外の信号を用いて干渉成分を除去し、
前記干渉成分を除去した信号から前記各送信信号の信号候補点を所定数だけ選択し、
前記信号候補点を所定数選択した前記各送信信号の信号候補点を用いて、前記階層化した受信信号ベクトルから前記各送信信号の信号分離を行う
ことを特徴とする信号分離方法。
【請求項7】
請求項6記載の信号分離方法において、
前記チャネル行列の各列ベクトルのノルムの2乗を計算し、
前記階層化した受信信号ベクトルのうち前記ノルムの2乗値が最小となる列ベクトルがチャネル行列の左端に位置する受信信号ベクトルを選択して前記各送信信号の信号分離を行う
ことを特徴とする信号分離方法。
【請求項8】
請求項7記載の信号分離方法において、
前記ノルムの2乗値に基づいて各送信信号の信号候補点数を決定し、
前記各送信信号の信号候補点を、決定された前記各送信信号の信号候補点数だけ選択することを特徴とする信号分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166618(P2011−166618A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29440(P2010−29440)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】