説明

修正液

【目的】 経時安定性が良好であり、かつ塗布性が良好である修正液を提供する。
【構成】 溶剤、樹脂、隠蔽材から少なくともなり、剪断速度が0.05(1/sec)の時の粘度が20Pa・s以上(25℃)で、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数が0.2以下(25℃)である加圧機構を備えた塗布具に用いる修正液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時安定性が良好であり、乾燥塗膜の平滑性が良好である修正液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に修正液は溶剤と樹脂及び隠蔽材等を含む組成物であり、水性修正液と呼ばれている、溶剤として水を使用し、水溶性のアクリル樹脂(アンモニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩など)、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン等を用て、主に水に溶解しにくい油性筆跡を隠蔽するのに用いられるもの、両用修正液と呼ばれている、溶剤に非極性有機溶剤を使用し、アクリル樹脂等を用いて、油性、水性いずれのインキの筆跡を隠蔽するものとが知られている。
【0003】
そして隠蔽材に、隠蔽効果の高い酸化チタンを用いることが多いが、酸化チタンは比重が大きい物質であるため比較的長期間静置しておくと酸化チタンが沈降し、容器内で樹脂溶液を主成分とする分離液と酸化チタンを主成分とする沈降物の2層に分かれてしまう。このような層分離した状態では隠蔽材の少ない上澄みが吐出されてしまったり、酸化チタンの沈降層が目詰まりを起こして塗布不能となったりするので、修正液のタンク内に攪拌部材としての金属球などを入れて、使用時に容器を振って修正液を攪拌し直す作業をするなどして使用していた。
このような容器を振る作業が不要なものとして、塗布具内に修正液と高圧の気体を封入したり、所謂ポンプ機構により使用時にタンク内を加圧したり、修正液を入れた袋をバネで押圧するなどの方法によって液吐出の支援をなす塗布容器が開発され、酸化チタンの沈降を抑制するような高粘度の修正液を圧力によって強制的に吐出し塗布するものも知られている。
しかしながら、圧力によって吐出支援をなす場合に使用される高粘度の修正液は、酸化チタンの沈降はある程度抑制できるが、高粘度であるために塗布性が悪い問題があり、かといって粘度を低くすると経時で酸化チタンが沈降することになり、経時安定性と塗布性を両立することは困難であった。
【0004】
修正液の経時安定性及び塗布性を向上させる手段としては特許文献1に、ゲル化剤としてN−ラウロイル−グルタミン酸−α,γ−ジ−n−ブチルアミド、及び脂肪酸又は脂肪酸のアルコール誘導体、及び又はN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)を含む流動体組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2004−143292公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術に開示されているゲル化剤を使用した場合、経時安定性や塗膜の平滑性が向上するものの、長期間放置した場合は酸化チタンが沈降する為、上澄みが発生し隠蔽性が少ない液が吐出したり、塗布する際にかすれる為、塗膜に凹凸ができ、十分な結果が得られていないのが現状であった。
【0006】
本発明は、経時安定性が良好であり、乾燥塗膜の平滑性が良好である修正液に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、溶剤、樹脂、隠蔽材から少なくともなり、剪断速度が0.05(1/sec)の時の粘度が20Pa・s以上(25℃)で、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数が0.2以下(25℃)である加圧機構を備えた塗布具に用いる修正液を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の修正液は、剪断速度が0.05(1/sec)の時の粘度が20Pa・s以上(25℃)で、且つ剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数が0.2以下(25℃)である。ちなみに、剪断速度0.05(1/sec)とは、低い応力状態として、静置した場合を想定しており、剪断速度5(1/sec)とは、筆記時の修正液の移動や振動を受けた際の応力に相当する剪断速度である。
本発明の修正液は、付与される剪断応力の大きさによって粘度が変化する性質を有するものであるが、静置状態と仮定できる0.050(1/sec)の時の粘度は高く、塗布状態と仮定できる剪断速度5(1/sec)の時の粘度が十分に低いものであるので、長期間液を保存した場合にも酸化チタンの酸化チタンの沈降を抑制でき、塗布の際に上澄み液のみが吐出したり、目詰まりによる液が吐出しないようなことを抑制することと、塗布する際流動や塗り伸ばされる剪断応力で十分な低い粘度となることから、修正液を紙面に塗布した際、塗布先の動かし方により塗り伸ばし方を調整できるので均一な厚みに塗布できることと、均一な厚みに塗布できることによって乾燥過程において塗膜表面の一部分だけ乾いてしまい溶剤の蒸発により塗膜表面の水平方向に塗膜が収縮するようなことがなく、塗膜における溶剤の蒸発による塗膜の収縮が垂直方向に進むため、乾燥塗膜の表面にシワは発生せず平滑な塗膜を得る事ができることとを両立することができる。
【0009】
また、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲の時のtanδが0.45(25℃)以下であれば、本発明の修正液はより固体状(弾性体)に近く隠蔽材の沈降が非常に遅く、より長期間の経時安定性が良好である。
損失弾性率及び貯蔵弾性率は、角振動数(または振動数)での振動でひずみを与える測定方法によって得られ、この挙動は物質固有のスペクトルとなる。この2つの数値は、損失弾性率がその試料の粘性要素を、貯蔵弾性率がその試料の弾性要素を表している。この2つの数値には関連性があり、それを表す損失正接をtanδと呼ぶ。tanδは〔損失弾性率/貯蔵弾性率〕を意味する値であり、この値が大きい程(tanδ>1)は、流動性が高くなる。(あるいは粘性応答が強くなる)、小さい程(tanδ<1)は、固体状(あるいは弾性応答)に近くなる。
また、このような物性を得る為には、非極性有機溶剤とシリカにて表面処理した酸化チタンを用いる事が好ましい。溶剤に非極性溶剤を使用した場合、極性である酸化チタンは極性粒子同士結合して大きな粒子を作るが、特に修正液のように全配合量に対する酸化チタンの使用量が多い場合、修正液は全体的に密な構造を作り酸化チタンが沈降しにくい状態となる。また、表面処理剤にシリカを用いる事により酸化チタンの親水性が高まり、極性粒子間の結合を強くする事ができるために、より構造が安定する。
なお、剪断減粘指数の算出は回転粘度計を用いて回転数を変化させた時の粘度の変化をプロットし、下記数1にて示すpower lawの流動方程式に当てはめて算出したり、粘弾性流体測定用のレオメーターを用いて流動曲線を求めて算出する事ができる。
【0010】
【数1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
修正液の溶剤としては非極性の溶剤を用いることが好ましく、具体的には、ノルマルヘキサン(沸点68.7℃)、イソペンタン、ノルマルヘプタン(沸点98.4℃)、ノルマルオクタンなど脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン(沸点49.2℃)、メチルシクロペンタン(沸点71.8℃)、シクロヘキサン(沸点80.0℃)、メチルシクロヘキサン(沸点100.9℃)、エチルシクロヘキサン(沸点132℃)等の脂環属炭化水素系溶剤が挙げられ、更にその他、エクソールDSP100/140(初留点102℃、乾点138℃)、同D30(初留点141℃、乾点172℃)、同D40(初留点153℃、乾点196℃)、同D80(初留点204℃、乾点230℃)、同D110(初留点243℃、終点272℃)、同D130(初留点277℃、終点310℃)、アイソパーC(初留点97℃、乾点104℃)、同E(初留点115℃、乾点138℃)、同G(初留点156℃、乾点175℃)、同H(初留点176℃、乾点192℃)、同L(初留点188℃、乾点210℃)、同M(初留点208℃、乾点254℃)(以上エクソン化学(株)製)などの脂肪族炭化水素系溶剤の混合品などが挙げられる。これらは、単独もしくは混合して使用可能であり、その使用量は修正液全量に対して30重量%以上60重量%以下が好ましい。
【0012】
修正液に用いられる樹脂としては上記溶剤に可溶である、テスラック2158−100(日立ポリマー(株)製)、フタルキッドDX615(50重量%キシレン溶液、日立化成(株)製)などのアルキド樹脂、アクリロイドB66、同B67(英国、ロームアンドハース社製)などのアクリル樹脂、カリフレックスTR−1107(シェル化学(株)製)、タフプレンA、アサプレンT−431(以上、旭化学工業(株)製)などのスチレン系エラストマー、スミテートRB−11(住友化学工業(株)製)、エバフレックス150(三井ポリケミカル(株)製)などのエチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。定着性、塗布性を考慮すると、その使用量は修正液全体に対して1重量%以上20重量%以下が好ましい。
【0013】
修正液に用いられる隠蔽材としてはTITONESR−1(表面処理:Al)、同650(同:Al、Si、Zn)、同R62N(同:Al,Si)、同R3L(同:Al、Si)、同R7E(同:Al、Si)(以上、堺化学工業(株)製)、クロノスKR−310(同:無処理)、同KR−380(同:Al,Si)、同480(同:Al,Si)(以上、チタン工業(株)製)、TITANIXJR301(同:Al)、同JR805(同Al、Si)、同JR701(同Al、Si、Zn)、同JR800(同Al、Si)(以上、テイカ(株)製)などの酸化チタンが挙げられる。その使用量は修正液全体に対して40重量%以上80重量%以下が好ましい。
【0014】
尚、上記した成分の他に、隠蔽力を向上させるために、炭酸カルシウムなどの体質顔料を併用しても良い。具体的には沈降性炭酸カルシウムとして、ソフトン3200、同2600、同2200、同1800、同1500、同1200、同1000(以上、備北粉化工業(株)製)、MSK−C、MSK−G、MSK−K、MSK−PO、カルファイン100、カルファイン200、カルファイン500、カーレックス、MT−100、MS−R、MS−100M、MS−600、MS−700、シーレッツ、MC−5、MC−K、MC−SII、MC−S5、MC−T、ウィスカル、軽質炭酸カルシウム(以上、丸尾カルシウム(株)製)、白艶華CC、同DD、同U、同O、同A、同AA、カルモス、白艶華CCR、同R06、同TDD、ホモカルD、ホモカルDM、ゲルトン50、白艶華PZ、ツネックスE、シルバーW、PC、(以上、白石工業(株)製)、ネオライトS、同SP、同SPR、サンライトSL−100、同SL−300、同SL−700、同SL−800、同SL−1000、同SL―1500、同SL−2000、同SL―2200、(以上、竹原化学工業(株)製)。重質炭酸カルシウムとして、R重炭、重炭N−35、重質炭酸カルシウム、スーパーS、スペシャルライスS、スーパーSS、スーパーSSS、スーパー4S、スーパー#1500、スーパー#1700、スーパー#2000、スーパー#2300、ナノックス#25、ナノックス#30(以上、丸尾カルシクム(株)製)が挙げられる。
また、顔料の分散安定性の為に分散剤や沈降防止剤というように、各種添加剤を適宜添加することができる。具体的には非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、フッ素系などの界面活性剤が挙げられ、非イオン系界面活性剤の具体例として、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(5〜15)グリセリル(括弧内の数字はオキシエチレンの付加モル数である。以下同じ。)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5〜15)等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(2)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリル酸ポリオキシエチレン(6)ソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(30〜60)ソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20〜60)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20〜100)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(5〜30)フィトステロール、ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール、ポリオキシエチレン(30)コレスタノール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロールモノラウリル酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(4〜25)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2〜40)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10〜50)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10〜30)ベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(7〜20)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10〜30)オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(5〜15)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(5〜15)オレイルアミン、ポリオキシエチレン(8)ステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレン(4〜15)ステアリン酸アミド、ポリオキシエチレン(5)オレイン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン(5〜40)ラノリンアルコール、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロオクタンスルホンアミド、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アルコールエーテル、アセチレングリコール(サーフィノール465、同485、信越化学(株)製)、ポリオキシエチレン(3〜20)−N−プロピルペルフルオロオクタンスルホンアミド等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。陰イオン系界面活性剤の具体例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン(2〜4)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2〜4)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、、パルミトイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン(3〜6)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩、アンチゲル(SCHWEGMANN製(独国))、ホモゲノールL−18、同L−1820(花王(株))等のカルボン酸型高分子活性剤、ラウリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩などのポリオキシエチレンアルキルエーテル塩、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリム、N−ステアロリルメチルタウリンナトリウム等のN−アシルタウリン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルトリメチルアンモニウム等、アルキルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルフォン酸塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸リチウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、N−プロピル−N−ペルフルオロオクチルスルホニルグリシンカリウム塩、リン酸ビス(2−(N−プロピルペルフルオロオクチルスルホニルアミノ)エチル)アンモニウム塩、ペルフルオロカプリル酸、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム等のフッ素界面活性剤、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハタ酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム塩などが挙げられる。陽イオン系界面活性剤の具体例として、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム塩、N−(3−(ペルフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル)−N,N,N,−トリメチルアンモニウムアイオダイト等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミノプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシルメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン・ラウリル硫酸ナトリウム等のイミダゾリン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0015】
これら修正液はボールミルなどのメディアミルで分散処理する事により得られる。メディアミルの中にはボールミルのようにプレミックスを必要としない分散機もあり、原材料を直接ボールミル容器に配合する方法が取られる事があるが、修正液に樹脂と界面活性剤を使用する場合は樹脂に吸着させる順序に注意する必要がある。本発明は乾燥塗膜の平滑性が良好である事を課題としているが、樹脂と界面活性剤を併用する場合は先ず隠蔽材表面に界面活性剤を吸着させてから樹脂を吸着させる事が好ましい。これは界面活性剤が吸着した隠蔽材が流動する際、比較的分子量が小さい界面活性剤が隠蔽材に吸着している方が抵抗が小さく、均一に塗布する事ができる為である。逆に樹脂、または樹脂と界面活性剤が混在して隠蔽材に吸着していると抵抗が大きく、均一に塗布しにくい。具体的には溶剤に界面活性剤を入れた後に充分攪拌し、その後隠蔽材を配合攪拌し、最後に樹脂を加える事が好ましい。
【0016】
また修正液をリフィル形態にしたり、インキの使い切り性を向上する必要がある場合、逆流防止体を用いる事もできる。逆流防止体は修正液消費に伴う修正液界面の移動に追従して移動するものである。逆流防止体は修正液により形状変化しにくい素材の固形可動栓や液状の逆流防止体を用いる。逆流防止体の基材は修正液に相溶しないか又は修正液と相溶し難い溶剤を用いる。具体的には水の他に、極性が大きい多価アルコールのエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、グリセリンモノアセテート、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが使用できる。これらは単独もしくは混合して使用可能である。
【0017】
また逆流防止体が乾燥、吸湿により物性が変化する場合は、さらに外気を遮断する機能を持つ逆流防止体を併用する必要がある。この場合併用する逆流防止体が溶解しない溶剤を用いる。具体的には、α−オレフィンよりなるモービルSHF21(40℃での動粘度0.52m/s)、同41(40℃での動粘度1.75m/s)、同61(40℃での動粘度2.88m/s)、同82(40℃での動粘度4.76m/s)、同401(40℃での動粘度42m/s)、同1003(40℃での動粘度137.4m/s)(以上、モービルケミカルプロダクツインターナショナルインク製)、ポリブテンよりなるLV−7(40℃での動粘度1.1m/s)、LV−10(40℃での動粘度1.9m/s)、LV−25(40℃での動粘度5.24m/s)、LV−50(40℃での動粘度11m/s)、LV−100(40℃での動粘度20.5m/s)、HV−15(40℃での動粘度65.5m/s)、HV−35(40℃での動粘度230m/s)、HV−50(40℃での動粘度345m/s)、HV−100(40℃での動粘度950m/s)、HV−300(40℃での動粘度2600m/s)、HV−1900(40℃での動粘度16000m/s)、HV−3000(40℃での動粘度32000m/s)(以上、日本石油(株)製)、エチレン−αオレフィンよりなるルーカントHC−10(40℃での動粘度6m/s)、HC−20(40℃での動粘度15.5m/s)、HC−40(40℃での動粘度38m/s)、HC−100(40℃での動粘度130m/s)、HC−150(40℃での動粘度220m/s)、HC−600(40℃での動粘度985m/s)、HC−2000(40℃での動粘度3750m/s)(以上、三井石油化学工業(株)製)、流動パラフィン、シリコンオイル等の低極性不揮発性、または難揮発性の溶剤が使用でき、これらは単独または混合して使用することが可能である。
【0018】
上記逆流防止体組成物の粘度調整剤として、逆流防止体の基材に低極性の溶剤を用いた場合、微粒子シリカよりなるアエロジルR972、同R974、同200(日本アエロジル(株)製)、脂肪酸アマイドよりなるディスパロンA670−20M、同6900−20X(以上、楠本化成(株)製)などを用いることができ、基材に高極性の溶剤を用いた場合、グァーガム、ヒドロキシプロピル化グァーガム、カルボキシメチルヒドロキシプロピル化グァーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ウエランガム、ラムザンガム、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、カラギーナン、サクシノグルカン等の水溶性多糖類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド共重架橋物などの合成高分子、スメクタイト等の粘度系鉱物などを添加することができ、これらは、単独もしくは2種以上混合して使用できる。
【0019】
また、基材に高極性溶剤を用いた逆流防止体組成物には、さらにインキの使いきり性を向上させる為に界面活性剤を使用することもでき、前述した非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、フッ素系などの界面活性剤が使用できる。
【0020】
また基材として水を用いた場合、逆流防止体組成物のカビ発生防止のためにデヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウムなどの防腐防カビ剤を適量加えることができる。また、水などの蒸発しやすい材料では、蒸発抑制の為に、この基材に不溶及び/または難溶の不揮発性及び/または難揮発性の有機溶剤、またはこれらを粘度調整したものや、ゴム弾性を有する合成ゴムやエラストマー、プラスチックなどの成型品を乾燥防止体として、逆流防止体組成物の界面に配置して併用することもできる。乾燥防止体を液状組成物とする場合には、有機溶剤としてポリブテン、αオレフィン、エチレンαオレフィン、流動パラフィンなどが利用でき、単独または2種以上併用して使用可能であり、粘度調整のために、アエロジルR972、同R974(日本アエロジル(株)製)などの微粒子シリカ、ディスパロン305(楠本化成(株)製)などの水添ヒマシ油系のもの、ソロイド(三晶(株)製)などのセルロース系のもの、更に金属石鹸類、ベントナイト等を単独または2種以上混合して使用可能である。また、固体状の成型品による乾燥防止体と液状組成物による乾燥防止体とを併用することもできる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
TITANIX JR−800(テイカ(株)製、Al、Si処理酸化チタン)
54.0重量部
アクリロイドB67(米国、ローム&ハース社製、アクリル樹脂) 9.0重量部
メチルシクロヘキサン(丸善石油化学(株)製) 36.0重量部
アンチゲル(アルキル(C=1〜6)フェニルシクロアルキル(ノルボルニル,メチルシクロヘキシル又はエンドメチレン−メチル−デカヒドロナフチル)カルボン酸塩(Na,K,Ca)、SCHWEGMANN製、独国) 1.0重量部
上記成分をメチルシクロヘキサン、アンチゲル、アクリロイドB67、TITANIX JR−800の順にインペラー型攪拌機で攪拌したものを、ボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
この修正液をCVO(Bohlin Instruments社製レオメーター)を用いて0.05(1/sec)の時の粘度と0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断速度範囲における剪断減粘指数、及び角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδを測定した。測定時の条件としては、0.05(1/sec)の時の粘度及び0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は、直径40mm、4゜のコーンローターを用い、剪断速度が0.01(1/s)以上100(1/s)以下の範囲で対数グラフ上で連続的に変化させた時の粘度を測定した。剪断減粘指数はその流動曲線の0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での測定値を前記(数1)のpower lawの流動方程式に近似させて粘度係数と剪断減粘指数を得た。また角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは直径20mmのパラレルプレートを用い、ギャップを0.15mmに設定し、角周波数が0.3以上100以下の範囲での連続的に変化させた時のtanδを測定し、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδを得た。
実施例1の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は20Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.1、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高0.35だった。
【0023】
(実施例2)
TITONE SR−1(堺化学工業(株)製、無処理酸化チタン) 25.0重量部
TITANIX JR800(前述) 30.0重量部
アクリロイドB67(前述) 7.0重量部
メチルシクロヘキサン(前述) 22.0重量部
イソヘキサン(丸善石油化学(株)製) 15.0重量部
アンチゲル(前述) 1.0重量部
上記成分をメチルシクロヘキサン、アンチゲル、アクリロイドB67、TITANIX JR−800、TITANIX SR−1の順にインペラー型攪拌機で攪拌したものを、ボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
実施例2の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は30Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.17、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高0.39だった。
【0024】
(実施例3)
TITONE R−62N(堺化学工業(株)製、Al、Si処理酸化チタン)
60.0重量部
アクリロイドB67(前述) 10.0重量部
メチルシクロヘキサン(前述) 8.0重量部
シクロペンタン(丸善石油化学(株)製) 22.0重量部
アンチゲル(前述) 1.0重量部
上記成分をメチルシクロヘキサン、アンチゲル、アクリロイドB67、TITONE R−62Nの順にインペラー型攪拌機で攪拌したものを、ボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
実施例3の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は150Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は−0.02、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高0.30だった。
【0025】
(実施例4)
TITANIX JR800(前述) 56.0重量部
アクリロイドB67(前述) 6.0重量部
メチルシクロヘキサン(前述) 28.0重量部
エチルシクロヘキサン(丸善石油化学(株)製) 9.0重量部
アンチゲル(前述) 1.0重量部
上記成分をメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、アンチゲル、アクリロイドB67、TITANIX JR800の順にインペラー型攪拌機で攪拌したものを、ボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
実施例4の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は21Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.02、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最低でも0.48だった。
【0026】
(実施例5)
実施例1の成分をメチルシクロヘキサン、アンチゲル、TITANIX JR−800、アクリロイドB67の順にインペラー型攪拌機で攪拌しながら投入したものをボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
実施例5の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は22Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.1、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高でも0.32だった。
【0027】
(比較例1)
実施例1におけるアクリロイドB67の使用量を5.0重量部とし、サンワックス151P(三洋化成(株)製、ポリエチレンワックス)を1重量部加えた以外は同様にして修正液を得た。
比較例1の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は10Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.09、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高0.41だった。
【0028】
(比較例2)
実施例1におけるTITONE R62NをクロノスKR310とし、硬化ひまし油を0.2重量部加えた以外は同様にして修正液を得た。
比較例2の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は80Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.4、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高0.39だった。
【0029】
(比較例3)
実施例1におけるTITONE R62Nの使用量を40.0重量部とし、アクリロイドB67の使用量を5.0重量部とし、メチルシクロヘキサンを54重量部とした以外は同様にして修正液を得た。
比較例3の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は9Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.4、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最低でも0.50だった。
【0030】
(比較例4)
実施例1における配合手順をメチルシクロヘキサン、アンチゲル、TITANIX JR−800、アクリロイドB67の順にインペラー型攪拌機で攪拌したものを、ボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
比較例4の剪断速度0.05(1/sec)の時の粘度は10Pa・s、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数は0.09、角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδは最高でも0.39だった。
【0031】
経時上澄み率
内径16φのガラス瓶(日電理化硝子(株)製、ねじ口瓶)に50mmの高さにインキを入れ、50℃で2ヶ月間静置保管し上澄み高さを測定する。
【0032】
乾燥塗膜の平滑性
ぺんてる製加圧式修正液(XZL12−W)の容器に修正液を2cc充填し、その修正液の界面に接触して逆流防止体としてケルザンAR(三昌(株)製、キサンタンガム)3重量部と水97重量部を充分に攪拌したものを0.3cc充填し、常温で上向きに1ヶ月保管したものを試験サンプルとして、5mm×5mmの範囲に0.01gの修正液を素早く塗り、乾燥塗膜に発生する凸部の厚さを測定する。なお経時前の段階で塗布時にかすれるものは測定値なしとする。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤、樹脂、隠蔽材から少なくともなり、剪断速度が0.05(1/sec)の時の粘度が20Pa・s以上(25℃)で、剪断速度0.05(1/sec)以上5(1/sec)以下の範囲での剪断減粘指数が0.2以下(25℃)である加圧機構を備えた塗布具に用いる修正液。
【請求項2】
角周波数7(rad/sec)以上30(rad/sec)以下の範囲でのtanδが0.45以下(25℃)である請求項1に記載の修正液。
【請求項3】
前記溶剤が非極性有機溶剤であり、前記隠蔽材が少なくとも表面処理剤にシリカを使用している酸化チタンである請求項1又は請求項2に記載の修正液。
【請求項4】
前記樹脂が前記溶剤に可溶であり、修正液全量に対する樹脂の使用量が5重量%以上20重量%以下である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の修正液。

【公開番号】特開2006−124638(P2006−124638A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100913(P2005−100913)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】