説明

個体計数装置

【課題】 海老の幼生のような微細な個体についても、高精度に個数を計測でき、なお且つ衰弱、死滅の危険が少なく、しかも構造が簡単で小型化が可能な個体計数装置を提供する。
【解決手段】 所定方向に傾斜し計数すべき固体が液体と共に流動する傾斜流路10A,10Bを備える。ここに、計数すべき個体の集合体を投入する。投入された個体は、傾斜流路10A,10Bを搬送される間に分散し、傾斜流路10Bの途中に設けられた計測部18Bにおいて、カメラ40による撮影、画像解析部50による撮影画像の解析により計数される。計測部18Bでの画像撮影のために、計測部18Bの裏面側に拡散板を介して照明機構30を配置して、計測部19Bに白色拡散光を直角照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海老の幼生、小魚、稚魚などといった小さな水産資源(以下、稚魚類と称する)を生息したまま計数することができる個体計数装置に関し、より詳しくは、海水や真水などの液体の流動を利用することにより、稚魚類の衰弱を回避しつつ、高精度の計数を可能とする個体計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、養殖された稚魚類の商取引にあたっては、個体数を短時間に正確にカウントすることが必要であり、このために各種の自動計数装置が開発されている。稚魚類のような小さな個体の計数に適した装置としては次の2種類が知られている。
【0003】
一つは、個体を水から分離してコンベア上へ分散投入し、そのコンベアから排出される過程で個体数を計測する装置である(特許文献1及び特許文献2)。今一つは、個体を水と共に箱の中に収容し、その箱の底板や側壁に、個体が一つずつ通過可能な小さい流出口を多数設けて、多数の流出口から水と共に流出する個体の数を計測する装置である(特許文献3及び特許文献3)。
【0004】
しかしながら、第1の自動装置では個体を水から引き上げるために、小さな稚魚類の場合、計数プロセスでの衰弱が著しく、死滅に至るおそれもあり、これによる歩留り低下が問題になる。また、その小ささのために、個体がコンベアに付着しやすく、コンベアから落下しない個体も少なくない。この点からも歩留りの低下が問題になり、更には計数制度の低下も問題になる。
【0005】
第2の自動装置では、流水中で個体数を計測するので、個体が衰弱するとか死滅するといった危険は少ない。また、小さな多数の流出口を使用して、多数の個体を一匹ずつ分散して計数するので、個体の重なりによるミスカウントがなく、計数精度が高い。その一方では、多数の流出口のそれぞれにカメラなどが必要になるため、設備コストの高さが問題になる。
【0006】
これらの問題は、長さが2〜5mmの海老の幼生で特に大きい。ちなみに小魚、稚魚の長さは5〜10mmである。また、一般的な傾向として、長さの小さいものほど、一度に計数すべき個体数が多くなり、これも問題を大きくする原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−30757号公報
【特許文献2】特開平8−329212号公報
【特許文献3】実開平7−36643号明細書
【特許文献4】特開平6−245665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、海老の幼生のような微細な個体を一度に大量に計数する場合にも、その個体数を高精度に計測できて、なお且つ個体の衰弱、死滅の危険が少なく、しかも構造が簡単で小型化が可能な経済性に優れた個体計数装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は特許文献3及び4に記載された流水利用の個体計数装置に着目した。流水利用の個体計数装置の場合、個体が水中に浸漬したまで計数が行われるため、個体の衰弱や死滅が回避されるからである。しかしながら、流水を利用した個体計数装置の場合は、流水中に投入された個体群の分散技術が重要となる。特許文献3及び4に記載された流水利用の個体計数装置の場合は、多数の小さな流出口を使用して、多数の個体を一匹ずつ分散して計数するわけであるが、それがためにカメラ等の個数が多くなり、装置価格の高さが問題になること前述したとおりである。
【0010】
そこで本発明者は、簡易な分散技術の開発を目的として、流水そのものを分散に利用することを企画し、様々な流水構造を比較検討した。その結果、所定方向に傾斜した傾斜流路を利用すること、その傾斜流路の途中でカメラによる撮影を行うこと、更には、その撮影の際の照明に拡散光を使用するのが有効なことが明らかとなった。すなわち、傾斜流路は、計数すべき個体の分散に有効であり、その流路途中で個数の計測を行うことにより理論上は正確な計数が可能となるが、実際は流路途中の計測部での流体の流れによる模様(流れ模様)が発生し、これの影が撮影されることにより計数が不正確になるところ、照明用光として拡散光を使用するすると、撮影画像から流れ模様の影が消え、計数の正確性が上がるのである。
【0011】
本発明の個体計数装置は、かかる知見を基礎として開発されたものであり、計数すべき個体を流体により搬送し、その搬送過程で個体を分散してカメラによる撮影及び撮影画像の解析により個体数の計測を行う、流体利用による個体計数装置であって、所定方向に傾斜し計数すべき固体が液体と共に流動する傾斜流路を備えており、前記個体数の計測のために、当該傾斜流路に透光性の底板により構成された計測部が設けられると共に、当該計測部に裏面側から拡散光を照射すべく、計測部の裏面側に拡散板を介して照明機構が配置され、計測部を上側から撮影するべく計測部の上側に前記カメラが配置されていることを構成上の特徴点としている。
【0012】
本発明の個体計数装置においては、傾斜流路の上流側から下流側へ海水や真水といった液体が順次流れていく。この傾斜流路に、計数すべき個体の集合体を投入すると、流体により搬送され、この搬送過程で個体の集合体が個々の個体に分散する。そして、その傾斜流路に、透光性の底板により計測部が形成され、その裏面側から拡散光を照射することにより、傾斜流路を用いた個体の流動拡散で問題となる液体の流れ模様の撮影への悪影響が軽減され、その撮影画像から正確な個数計測が可能となる。
【0013】
本発明の個体計数装置における傾斜流路の傾斜角度については、個体群の搬送、分散に必要な流速が確保されるように選択される。
【0014】
照明機構については、拡散光、なかでも白色の拡散光を照射するものが好ましく、照射方向に関しては、拡散光を計数部に直角照射するものが好ましい。このような照明機構を使用することにより、液体の流動に伴う波(流れ模様)の影響が低減し、計測部での計数精度が向上する。
【0015】
カメラについては、その視軸を傾斜流路の途中に設けられた計測部の底面の垂直線に対して傾斜させるのが好ましい。このようなカメラの傾斜設置により、液体の流動に伴う波の影響が低減し、計測部での計数精度が向上する。設備構成上は、カメラの視軸を前記傾斜流路の下流側へ傾斜させるのが好ましい。
【0016】
使用する液体の種類については、計数すべき個体の生息環境に応じて海水、真水などを適宜選択することは言うまでもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の個体計数装置は、計数すべき個体を流体により流動させる傾斜流路に、透光性の底板により形成された計測部を設け、その裏面側から白色拡散光を照射し、上側からカメラで撮影することにより、個体の衰弱や死滅を回避しつつ個体の分散を図り、且つ傾斜流路を用いた個体の拡散で問題となる液体の流れ模様の撮影への悪影響を軽減することができる。これらにより、計数部での単一のカメラによる撮影により個体数を正確に計測することができ、合わせて装置の簡素化、小型化をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す個体計数装置の全体構造を表した概略構成図で側 面図である。
【図2】同個体計数装置の主要部である液体流路の斜視図である。
【図3】同流体流路の別の斜視図である。
【図4】同流体流路を構成する上段側の傾斜流路の斜視図である。
【図5】同流体流路を構成する下段側の傾斜流路の斜視図である。
【図6】上下の傾斜流路内に形成された液溜まりの個体分散機能を模式的に示す平面 図である。
【図7】個体計数装置に装備される画像解析部の構成図である。
【図8】同画像解析部の機能を示すフローチャートである。
【図9】同画像解析部における計数原理の説明図で、2値化処理を示す。
【図10】同画像解析部における計数原理の説明図で、判定画像作成から演算判定ま でを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態の個体計数装置は、図1に示すように、傾斜流路10A,10Bを2段に重ねて構成された液体流路10と、液体流路10にその液体としての海水を循環させる液体循環機構20と、液体流路10内で個体を連続的に計数するために傾斜流路10Bに組み合わされた照明機構30、カメラ40及び画像解析部50とを備えている。
【0021】
液体流路10を構成する上下の傾斜流路10A,10Bは、図2及び図3に示すように、共に両側の側板と両側の底板間に架設された底板とを組み合わせた断面U字状で縦長の角箱である。上段の傾斜流路10Aにおける底面は、長手方向の一部分を除き横幅方向で平坦であり、全体として図の左側から右側へ下降傾斜している。下段の傾斜流路10Bにおける底面も長手方向の一部分を除き横幅方向で平坦であり、全体としては上段の傾斜流路10Aとは反対に図の右側から左側へ下降傾斜している。
【0022】
そして、上段の傾斜流路10Aは、下段の傾斜流路10Bの略半分の長さであり、下段の傾斜流路10Bの上流部上に載置されている。また、上段の傾斜流路10Aにおける底面の傾斜角度より、下段の傾斜流路10Bにおける底面の傾斜角度の方が大である。傾斜流路10A,10Bの構成材料は、共に透明樹脂である。
【0023】
上段の傾斜流路10Aは図4に詳しく示されており、その上流側の端部は液体流入部11Aである。液体流入部11Aの下流側は、計数すべき個体60の投入部12Aであり、液体流入部11Aと個体投入部12Aとの間には障壁13Aが設けられている。障壁13Aは、流入部11Aに供給された液体を傾斜流路10Aの底面近くに集中させるためのものであり、流路の全幅にわたって設けられている。この障壁13Aは、横から見てL字型をしており、前記集中のために、下側に位置する水平部が傾斜流路10Aの底面との間に所定の隙間を形成するように配置されている。
【0024】
個体投入部12Aの下流側には液溜まり14Aが設けられている。液溜まり14Aは、底面が下流側に向かって上方へ傾斜すると共に、その傾斜角度が、両側から中央に向かうにつれて大きくなる三角形状に窪んだ舳先形状である。液溜まり14Aの下流側は、底面が上流側と同じ角度で下降傾斜する平坦部15Aであり、平坦部15Aの下流側には、急角度で下降傾斜する加速部16Aを介して、液体流出口17Aが傾斜流路10Aの下流側の端部に位置して設けられている。
【0025】
上段の傾斜流路10Aにおける下流側の端部の下には、下段の傾斜流路10Bにおける上流側の端部が位置している。下段の傾斜流路10Bの詳細は図5に詳しく示されており、その上流側の端部は液体流入部11Bである。液体流入部11Bの下流側には、底面が三角形状に突出した横方向の堰部12Bが設けられており、堰部12Bの下流側には底面が所定角度で下降傾斜する第1平坦部13Bを経て液溜まり14Bが設けられている。
【0026】
液溜まり14Bは、上段の傾斜流路10Aにおける液溜まり14Aと同様に、底面が下流側に向かって上方へ傾斜すると共に、その傾斜角度が、両側から中央に向かうにつれて大きくなる三角形状に窪んだ舳先形状である。液溜まり14Bの下流側は、底面が上流側と同じ角度で下降傾斜する第2平坦部15Bであり、第2平坦部15Bの下流側には、急角度で下降傾斜する加速部16Bを経て、液体流出口17Bが傾斜流路10Bの下流側の端部に位置して設けられている。そして、平坦部15Bの途中は計測部18Bである。
【0027】
上段の傾斜流路10Aは下段の傾斜流路10Bより短く、下段の傾斜流路10Bの上流部上に配置されているため、計測部18Bの上は開放しており、ここにカメラ40が配置されている。
【0028】
液体流路10に海水を循環させる液体循環機構20は、図1に示すように、海水を溜めるタンク21と、タンク21内の海水を汲み上げて上段の傾斜流路10Aにおける液体流入部11Aに供給する第1ポンプ22と、タンク21内の海水を汲み上げて下段の傾斜流路10Bにおける液体流入部11Bに供給する第2ポンプ23とを備えている。タンク21は、上下の傾斜流路10A,10Bを通過し、傾斜流路10Bの液体流出口17Bから排出される海水を、個体捕獲かご24を介して回収するように構成されている。
【0029】
次に、液体流路10内で個体を連続的に計数するために下段の傾斜流路10Bに組み合わされた照明機構30、カメラ40及び画像解析部50について説明する。
【0030】
照明機構30は、下段の傾斜流路10Bにおける計測部18Bの下側に設けられている。計測部18Bを含め、傾斜流路10Bの底板は透明樹脂により形成されている。前記照明機構30は、計測部18Bの裏面に沿って縦横2方向に配列された多数個の白色発光ダイオードからなる光源、及び光源の正面側に配置された拡散板からなり、計測部18Bにおける透明底板の裏面に白色拡散光を直角に照射する。
【0031】
カメラ40は、計測部18Bを上側から撮影するべく傾斜流路10Bの上方に配置されたラインカメラであり、100μs前後のサイクルで所定の横線上を撮影する。そして、カメラ40の視軸は、計測部18Bにおける透明底板の表面に垂直な線に対して下流側へ傾斜している。この傾斜は、照明機構30による裏側からの白色拡散光による照明と合わせ、計測部18Bを流動する海水の波立ちの影響を回避するのに有効である。
【0032】
画像解析部50は、図7に示すように、カメラ40から線状画像を取り込む画像取り込み部51と、取り込んだ線状画像から判定画像(図9参照)を作成する画像作成部52と、作成された判定画像から個体の個数を計測する演算・換算部53と、演算情報を記録する記録部54と、モニター用画面構築部55と、構築された画像を映し出すモニター56などを備えている。これらの機能を図8〜図10を参照して説明する。
【0033】
画像解析部50は、まず図8中のステップS1でカメラ40から線状画像を順次取り込む。ステップS2では、取り込んだ線状画像を順次2値化処理する。2値化処理は、図9に示すように、線状画像の明暗をしきい値により判定し、しきい値より明るいところを白色(レベル0)、しきい値より暗いところを黒色(レベル1)とする。図9は、計測部18B上をカメラ40により直線A−A、直線B−Bで撮影したときの撮影データ、及びその撮影データの2値化処理を模式的に示している。計測部18B上の60は計数すべき個体、61は異物で泡、62はゴミ等の固形異物をそれぞれ表している。これらの物体のところで撮影データがレベル1(黒色)となる。
【0034】
線状画像の2値化処理が終わると、ステップS3で線状画像が次々と連結されて判定画像が作成される。判定画像は図10中の上段に示されている。判定画像では、地合画面63’の中に、計数すべき個体60の画像60’、泡61の画像61’、固形異物62の画像62’などが映し込まれている。
【0035】
判定画像が作成されると、ステップS4で、判定画像中の全ての画像60’,61’,62’を抽出し番号を付与する。この処理はラベリングと呼ばれ、図10中の中段に模式的に示されている。このラベリングが終わると、ステップS5で、ラベリングされた画像60’,61’,62’の寸法を判定し、引き続きステップS6で画像60’,61’,62’の形状を判定することにより、計数すべき個体60の画像60’のみを抽出する(図10中の下段図)。そして、ステップS7で、抽出された個体60の画像60’を計数して計数値を更新する。
【0036】
これを続けることにより、投入された個体60の数が自動計測される。
【0037】
このような構成の個体計数装置において、海老の幼生などの小さな稚魚類の個体数を計測する場合について、その機能の詳細を説明する。
【0038】
計数作業では、まず液体循環機構20における第1ポンプ22を作動させる。これにより、タンク21内の海水が上段の傾斜流路10Aの上流側の端部に設けられた液体流入部11Aに連続的に供給される。液体流入部11Aに供給された海水は、傾斜流路10Aを上流側から下流側へ流れ、下流側の端部に設けられた液体流出口17Aから排出される。流出口17Aから排出された海水は、下段の傾斜流路10Bの上流側の端部に設けられた液体流入部11Bに流入し、傾斜流路10Bを上流側から下流側へ流れ、下流側の端部に設けられた液体流出口17Bからタンク21内へ排出される。
【0039】
かくして、上下の傾斜流路10A,10Bからなる液体流路10に海水が連続的に循環する。
【0040】
海老の幼生などの小さな稚魚類の個数を計測するには、液体流路10に海水を循環させた状態で上段の傾斜流路10Aにおける個体投入部12Aに稚魚類からなる個体60の集合体を投入する。投入された個体60は、液体流路10を流動する海水により傾斜流路10Aの上流側から下流側へ搬送される。
【0041】
このとき、個体投入部12Aの上流側に設けられた障壁13Aにより、供給部11Aに供給された海水は、傾斜流路10Aの底面に沿った高速で層の薄い流れに整流される。これにより、投入された個体60を下流側の液溜まり14Aに確実に搬送することが可能となる。
【0042】
液溜まり14Aでは、図6に示すように、下流側に向かって上昇する傾斜面に、両側から中央に向かうにつれて傾斜角度が大きくなる三角形の舳先状の窪みが形成されている。海水流は窪みに一旦集中することにより、その下流側では両側及び上下に広がる。このため、投入された個体60はこの液溜まり14Aを通過する際に一旦は三角形状の窪みに集中するものの、そこから出たあとは両側及び上下にばらけ、下流側へ搬送される。そして、傾斜流路10Aの下流側の端部に設けられた急勾配の加速部16Aを経て液体流出口17Aから排出される。排出された海水は落下し、下段の傾斜流路10Bの上流側の端部に設けられた液体流入部11Bに流入する。加速部16Aから落下に至る過程で、海水中の個体60の分散が促進される。
【0043】
下段の傾斜流路10Bに海水と共に流入した個体60は、堰部12Bを乗り越えるときに分散が一層進む。引き続き、その下流側に設けられた舳先状の液溜まり14Bで個体の分散が進むことは、上段の傾斜流路10Aの場合と同じである。これに加え、下段の傾斜流路10Bでは、上段の傾斜流路10Aよりも傾斜角度が大である。このため、海水流は下段の傾斜流路10Bで加速され、第2平坦部15Bなどでは、個体60の分散が、主に搬送方向で進む。
【0044】
これらのため、集合体として投入された個体60であっても、第2平坦部15B内の計測部18Bを通過する時点では、十分に分散し、層流の横方向、縦方向及び厚み方向で重なりを生じない。したがって、1台のカメラ40とこれに接続された画像解析部50により個体60の個数が高精度に計測される。
【0045】
これに加えて、本実施形態の個体計数装置では、計測部18Bを照明機構30により下方から照明する。個体60の分散のためには、液体流路10を通過する海水に一定以上の水量と乱流が必要であるが、その一方で、一定以上の水量及び乱流は、計測部18Bでの照明により海水の流れ模様を発生させ、その模様の影がカメラ40により撮影され画像化される。この影は計測部18Bでのカメラ40による個体60の計数を不正確にするが、照明機構30による白色拡散光の直角照射と、計測部18Bの底板表面に対するカメラ40の視軸の傾斜とにより、撮影画像から流れ模様の影が消え、計測部18Bでのカメラ40及び画像解析部50による個体60の計数の正確性が上がる。
【0046】
更に、上段の傾斜流路10Aにおける障壁13Aを通過する過程、及び加速部16Aから落下に至る過程、並びに下段の傾斜流路10Bにおける堰部12Bを通過する過程では、泡立ちが抑制される。このため、計測部18Bでのカメラ40及び画像解析部50による個体60の計数の正確性が一層上がる。
【0047】
更に又、個体60が当該個体計数装置に対して投入されてから排出されるまでの間、海水中に浸漬しているので、個体60が海老の幼生のような場合にも、その衰弱や死滅が防止される。計数を終えた個体60は、タンク21内の捕獲かご24により回収される。
【0048】
液体循環機構20における第1ポンプ22と共に第2ポンプ23を作動させると、下段の傾斜流路10Bにも海水が供給され、傾斜流路10Bにおける水量が増加することにより個体60の分散が更に促進される。
【0049】
前述した個体計数装置を実際に作製した。上段の傾斜流路10Aの長さは約400mm、傾斜角度は約3度、下段の傾斜流路10Bの長さは約800mm、傾斜角度は約7度とした。また、両傾斜流路10A,10Bの横幅は約100mm、両傾斜流路10A,10Bにおける液溜まり14A,14Bの最小傾斜角度は約18度、最大傾斜角度は約30度とした。液体循環機構20においては第2ポンプ22のみを作動させ、人工海水を10L/minの流量で傾斜流路10A,10Bに循環させた。長さが約5mmの海老の幼生を約100匹ずつ一括投入したところ、誤差は100匹あたり−5匹以内であった。約500匹を一括投入したときの誤差は−5%以内、約1000匹を一括投入したときの誤差は−10%以内であった。
【0050】
上記実施形態では、照明機構30における光源として発光ダイオードを使用したが、他の光源を使用してもよい。カメラ40についてもラインカメラを使用したが、画像解析処理が若干異なるもののCCDカメラなどを使用することも可能である。カメラ40の傾斜角度は、波の影響を消すのに最適な値を、画像を見ながら決定すればよく、装置構成や液体流動条件等により適宜変更される。
【符号の説明】
【0051】
10 液体流路
10A 上段の傾斜流路
11A 液体流入部
12A 個体投入部
13A 障壁
14A 液溜まり
15A 平坦部
16A 加速部
17A 流出口
10B 下段の傾斜流路
11B 液体流入部
12B 堰部
13B 第1平坦部
14B 液溜まり
15B 第2平坦部
16B 加速部
17B 加速部
18B 計測部
20 液体循環機構
21 タンク
22 第1ポンプ
23 第2ポンプ
24 捕獲かご
30 照明機構
40 カメラ
50 画像解析部
60 計数すべき個体(稚魚類)
60’個体の画像



【特許請求の範囲】
【請求項1】
計数すべき個体を流体により搬送し、その搬送過程で個体を分散してカメラによる撮影及び撮影画像の解析により個体数の計測を行う、流体利用による個体計数装置であって、所定方向に傾斜し計数すべき固体が液体と共に流動する傾斜流路を備えており、前記個体数の計測のために、当該傾斜流路に透光性の底板により構成された計測部が設けられると共に、当該計測部に裏面側から拡散光を照射すべく、計測部の裏面側に拡散板を介して照明機構が配置され、計測部を上側から撮影するべく計測部の上側に前記カメラが配置された個体計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の個体計数装置において、拡散光は白色拡散光である個体梱包装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の個体計数装置において、照明機構は拡散光を計測部へ直角に照射する個体計数装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の個体計数装置において、前記カメラの視軸が計測部における透明底板の表面に垂直な線に対して傾斜している個体計数装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−212470(P2012−212470A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161812(P2012−161812)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2011−518143(P2011−518143)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(594117814)大阪エヌ・イー・ディー・マシナリー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】