個別化された歯被覆及び保持器を製造する方法
【課題】 少なくとも一つの個別化された歯被覆、及びこの少なくとも一つの個別化された歯被覆を保持するための保持器を製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の方法は、少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)のそれぞれは人の予め決められた歯のために注文製作されるものであり、この方法は、予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること、この計算機読み取り可能な歯データに基づいて個別化された歯被覆(7)の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること、この計算機読み取り可能な被覆データに基づいて個別化された歯被覆(7)を製造すること、及び計算機読み取り可能な歯データに基づいて個別化された歯被覆(7)を保持するための個別化された保持器を製造することを含む。本発明はさらに、少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。
【解決手段】 本発明の方法は、少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)のそれぞれは人の予め決められた歯のために注文製作されるものであり、この方法は、予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること、この計算機読み取り可能な歯データに基づいて個別化された歯被覆(7)の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること、この計算機読み取り可能な被覆データに基づいて個別化された歯被覆(7)を製造すること、及び計算機読み取り可能な歯データに基づいて個別化された歯被覆(7)を保持するための個別化された保持器を製造することを含む。本発明はさらに、少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め決められた歯のための少なくとも一つの個別化された歯被覆、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆を保持するための保持器を製造するための方法に関する。歯科医術界では、被覆は、歯の美感を改善するために、例えば予め決められた歯の色改善のために、歯表面の上に配置された修復材料の薄い層である。本発明はまた、予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US2007/0298381A1は、永久被覆または歯冠のような他の修復歯科医術を受けた歯への一時的付着のために使用される歯科被覆を記載する。一時的被覆は、望ましくない外観を持つ歯の上に配置される。歯被覆は、無毒で水不溶性であるポリマー材料から、好ましくはシアノ酢酸エチル系ポリマーから作られる。一時的被覆は、使用者の歯の上に好ましくは7日迄残るが、一日未満または一時間未満であっても、使用されることができる。被覆は、非永久的接着剤タイプの材料により取り付けられ、かつ個々の歯から単に歯被覆を取ることにより除去されることができる。それぞれの歯の上に先に実行された可能な修復歯科医術は別として、歯の寸法は、このポリマー歯被覆を付与する前に変えられない。
【0003】
これらの歯被覆の製造工程は、被覆がそれぞれの個々の歯のために特別に作られることができるようなものであることができる。かかる製造工程は、従来既知の方法により口の印象から製造されることができる型を必要とする。被覆は、特定の歯の詳細に従って大量生産されることができる。個々の被覆はさらに、歯科医の開業場所でまたは家で個人によってのいずれかで造形され、最後の仕上げをされることができる。縁と角は、被覆により覆われる予め決められた歯のために適した希望の形状を達成するために最後の仕上げをされ、研磨紙をかけられ、または磨かれることができる。
【0004】
US2009/0004629A1は、耐久性の射出成形されたプラスチックのようなプラスチック、またはプラスチックから形成された被覆から作られることができる歯列弓ラミネートの形の歯被覆を記載する。これらの歯列弓ラミネートは、人の歯に快適なかつ再使用可能な付与のための形状をしている。歯列弓ラミネートは、結合剤、セメントまたは他の半永久接着剤ではない無毒性粘着接着剤を用いて固定及び付着される。むしろ、無毒性粘着接着剤は、一時的であり、再使用可能である。この薄い美的な歯列弓ラミネートは、人の歯の型を取り、かつこの型に基づいて薄い美的な歯列弓ラミネートを作ることにより注文製作されることができる。型は、既知の歯科型技術を用いて歯科専門家のいる場所で取られることができる。人及び歯科専門家は、薄い美的な歯列弓ラミネートが歯科実験室から戻ってくるときに不愉快な驚きを避ける目的のために薄い美的な歯列弓ラミネートのための色を一緒に選ぶことができる。
【0005】
上に述べた二つの既知の被覆のそれぞれは、ポリマーから作られている。これは、被覆に略0.1mmから0.9mmまでの厚さを持たせることを可能にする。
【0006】
US2005/0227204A1は、口中温水ゆすぎの使用によりかつ被覆を歯から取ることにより除去されることができる一時的な使用のための再使用可能な被覆を記載する。これらの一時的な被覆は磁器、プラスチック、他の半硬質複合材料、またはそれらの組み合わせから作られることができる。被覆は0.2mm〜約1mmの厚さで作られることができる。
【0007】
これらの一時的な被覆は、歯科医により注文製作されるか、または種々の寸法、形状及び色合いを持つ予め成形された被覆であることができる。押圧被覆の注文された組は、歯科医への簡単な非侵襲性の訪問で作られることができる。歯科医は、歯の型を取り、実験室はその人のための注文の寸法及び形状の一時的な被覆を作る。被覆は次いでいかなる異常な歯形成にも順応させる。これに代えて、型装置は、関連する人の家に送られることができ、その人は、型をかみ、それを歯科医にまたは直接実験室に郵送することにより自分自身の印象を取ることができる。次いで、注文被覆の一組がその人に郵送で戻されることができる。また、これらの被覆は、多種類の形状と寸法を持つ予め製造された組で与えられることができ、それらは次いで小売り売買のために、結合剤の容器を持つキットとして一緒に包装され、かくして個人は包装体を購入することができ、寸法、形状をとり上げて選択し、必要なら彼ら自身の個人の希望に合うように適合させることができる。
【0008】
上述の被覆のどれも、切断、穿孔、研削及び歯から材料を永久的に除去する他の形態を含む歯の準備及び予備造形を必要としない。かかる不可逆的変更が人に対して不快な経験であることが多く、かつ処置の前に鎮痛皮下注射が使用されることを必要とするかもしれないので、それは一般的に有利であると考えられる。これはまた、被覆の付与の費用を増加する。
【0009】
明らかに、被覆の最小限の侵襲性または非侵襲性である付与は、歯材料の永久的除去を必要とする被覆の付与に対して大きな心理的利点を持つ。
【0010】
一時的な被覆は有用であることができるけれども、多くの人は、付与し、除去し、かつ再付与するためにばく大なわずらわしい時間消費の必要をなお見出し、彼らは付与すること、及び/または被覆を付与するために必要な材料を手元に持つことを忘れる危険を嫌う。従って、歯材料の除去を必要としないような非常な薄い永久被覆を提供するための要求がある。理想的には、被覆は、歯科医への最小数の訪問に基づいて、例えば予め決められた歯の色を改善する目的に永久的に役立つように付与されることができる。設計費用及び製造費用を抑制するために、上に概説した目的及び他の目的の少なくとも一つに合致する効率的で信頼性のある方法を提供する要求がある。
【0011】
特に非常に薄くかつこわれやすい個別化された歯被覆のために、被覆が予め決められた歯の上に配置される前にこれらが損傷しないように注意を持って取り扱われることを確実にすることが重要である。製造費用を抑制するために、被覆は理想的には中央場所で多数で製造される。しかし、これは、被覆をその中央場所から歯の上への配置が起こる場所、例えば地方歯科開業場所への送付を必要とする。この輸送は、個別化された歯被覆への損傷の危険を伴う。ある意味で、中央でかつ個別化された方法で製造したいという希望、及び地方に置きたいという希望は、互いに衝突する。従って、個別化された歯被覆の工業レベルでの中央製造を可能にし、それらが次いで世界のどこの地方でも人の歯に付与されることを可能にする方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、少なくとも一つの個別化された歯被覆、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆を保持するための保持器を製造する方法を提供し、少なくとも一つの個別化された歯被覆のそれぞれは人の予め決められた歯のために注文製作され、さらにこの方法は以下のことを含む:
− 予め決められた歯の少なくとも一部分の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な被覆データに基づいて、個別化された歯被覆を製造すること;及び
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆を保持するための個別化された保持器を製造すること
を含む。
この保持器は、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の一部の少なくとも一部分の形状に対応する形状を持つ少なくとも一つの表面を持つことができる。さらに、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の一部の少なくとも一部分の形状に対応する形状を持つ保持器の少なくとも一つの表面の形状は、歯被覆の一方の側の少なくとも一部分に補完的であることができる。
有利には、計算機読み取り可能な歯データは、個別化された被覆及び個別化された保持器の両方を作るために使用されることができる。従って、保持器は、被覆の特別な幾何学的形状の特徴を考慮に入れるような方法被覆を保持するために最適化されることができる。それは、保持器を被覆の個別設計に適合する可能性を提供し、それにより被覆の保持を最適化する。これは、新しく製造された薄くてかつこわれやすい個別化された歯被覆を製造直後に最良の可能な位置に保持することを可能にする。それは、被覆が設計された歯の上への配置直前まで輸送及び保管時にこの位置に保たれることができる。この方法はさらに、個別化された歯被覆を費用効果的に製造する非常に魅力的な方法を可能にする。さらに、保持器が個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の少なくとも一表面に対応する形状を持つ表面を持つ実施態様では、保持器は輸送時の支持体を提供することができる。さらに、保持器は、歯科技術者によるような被覆の最終仕上げ時の支持体を提供することができる。なぜなら前面は露出されることができ、その背面は、被覆を支持する保持器の表面の形状に対して形状が補完的であるからである。従って、保持器は二つの機能性を持ち、フレキシビリティがある。これは、割れを受けやすい薄い被覆に対し特に有用である。背景技術の部分で既に明らかにしたように、予め決められた歯の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能データを提供することは知られている。かかる計算機読み取り可能データを得るための例は後で与えられるであろう。いったん計算機読み取り可能な被覆データが被覆の幾何学的形状を決定するために提供されたら、被覆及び保持器の実際の製造が、これらの歯データに基づいて、好適な設備が置かれている中央場所で行なわれることができる。計算機読み取り可能データは、かかるデータの輸送のために必要な物理的時間を最小に保って例えばインターネットによって、その中央場所に容易に移送されることができる。
【0013】
中央場所で、個別化された歯被覆及び個別化された保持器は、CAM技術を使用して工業規模でかつある程度まで自動的に、すなわちスタッフよりむしろ機械及び器具の投資により、製造されることができる。説明したように、いったん個別化された歯被覆及び個別化された保持器の両方が製造されたら、これらは、輸送時及び地方歯科開業場所で人の歯の上に配置される直前の瞬間まで最適な方法で一緒に配置されかつ分離できないように保たれることができる。個別化された歯被覆及び個別化された保持器は、例えば歯科技術者によるさらなる加工のために少なくとも部分的に一時的に分離されることができる。被覆が製造された人は、個別化された歯被覆の予め決められた歯に対する配置の開始と完了のために地方歯科開業場所を二度訪問する必要があるだけである。第一の訪問は計算機読み取り可能歯データの製作を可能にするであろう。第二の訪問は、製造された個別化された歯被覆のそれぞれが地方歯科開業場所により受け取られかつ人の歯の上に配置されることができるときになされるであろう。
【0014】
本発明による方法の一実施態様では、個別化された歯被覆はその最終形状で製造される。これはさらに、人の地方歯科開業場所への第二の訪問のために必要な時間を最小にする。
【0015】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、個別化された保持器の第一部分を製造することを含み、そこでは第一部分は、個別化された歯被覆の背面にぴったりと適合するための形状を与えられる。このようにして個別化された保持器は、個別化された歯被覆が設計される予め決められた歯の形状に対応する形状を与えられるだろう。保持器の第一部分と被覆の背面の間のぴったりする適合を提供することにより、被覆を第一部分に対して「形状適合」で保持することができ、被覆と第一部分の間の位置関係に安定性を提供する可能性を与える。薄くてかつこわれやすいかもしれない個別化された歯被覆のための支持体は、幾何学的形状に関して最適である。個別化された歯被覆は望ましくない応力及び歪みにさらされないだろう。もし個別化された歯被覆がそれにもかかわらず破壊されるかまたは割れを示すなら、これは、個別化された歯被覆の幾何学的形状の欠陥の存在よりむしろ被覆の製造時の加工パラメーターに起因する可能性が大きい。
【0016】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、個別化された歯被覆を第一部分と第二部分の間にはさみ、かつ個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合するために個別化された保持器の第二部分を製造することを含む。はさむことはさらに、被覆の安定な位置に加えて、被覆が例えば第一部分の上を滑りかつ/または望ましくない振動にさらされる確率を減らすだろう。個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合することにより、被覆のさらなる「固定」が得られる。それは、被覆を第一部分から第二部分を単につかむことにより除去することを可能にする。第二部分は、透明な部品であることができ、かつ/または個別化された歯被覆の予め決められた歯に対する配置時に第二部分を手動で保持するためのつかみ保持器を備えることができる。
【0017】
第二透明部分は、被覆並びに第一部分の多くが第二部分を除去することなしであっても目に見えたままであるという利点を持つ。それはさらに、保持器から関連した人の口腔への被覆の輸送、及び人の予め決められた歯の上への被覆の正確な配置さえも、第二部分を操作することにより、おそらくいかなる他の道具の必要もなしで、可能になるだろう。これは、透明な第二部分がまた、移送道具及び配置道具として使用されるときに被覆が常に目に見えるからである。さらに、人の口腔内の被覆の近くの周辺はそのとき歯科製品の配置時に常に目に見えるだろうし、従って被覆の正確かつ迅速な配置を容易にする。また、特別な被覆とその特別な被覆を受ける歯との整合、並びにいかなる追加の被覆との整合も与えられる。
【0018】
つかみ保持器は、被覆が関連した人の予め決められた歯の上に配置されるときに被覆を保持するために他の道具を全く必要としないという利点を持つだろう。
【0019】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆が第一と第二部分の間にはさまれるときに第一及び第二部分が互いに解放可能に固定可能であるように第一と第二部分を設けることを含む。被覆は、そのとき、保持器内に保たれた状態の被覆の輸送を可能にする方法で第一と第二部分により提供された包み内に封入される。
【0020】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、予め決められた歯の少なくとも一部の模型を表わすように第一部分を製造することを含み、そこではその一部が、個別化された歯被覆の背面の形状に補完的である形状を持つ。これは、計算機読み取り可能な歯データに基づいてこれを作ることを容易にするので極めて有利であるだろう。さらに、一組の歯の全体が模型の一部である実施態様では、個別化された歯被覆により覆われた予め決められた歯がまた、一組の歯内で自然な整合を果たすかどうかをチェックすることを可能にするだろう。この実施態様はさらに、配置直前に、正しい保持器及び個別化された被覆が人の一組の歯内の予め決められた歯の上への被覆の配置のために利用可能に作られているかどうかをチェックすることを可能にするだろう。歯科熟練者は、もし模型がその人の一組の歯に対応しないなら、不適合性に直ちに気づくだろう。それは、その歯のために被覆が設計されていない歯の上に被覆を配置する試みを避けるだろう。その意味で、それはまた、被覆が設計されていない歯の上に被覆を強制することにより被覆を意図せずに損傷することを避けるだろう。さらに、それは、異なる被覆間の区別を可能にする。例えば、単一の人の前歯に対し二つの被覆間を区別することは困難でありうる。
【0021】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆の前面にぴったりと適合するための形状を持つ第二部分を提供することを含む。これは、被覆をはさむときに第一部分と第二部分により与えられる包みが、被覆の背面及び前面の両方について被覆が保持器内に非常に安定に配置されるように被覆に最適に適合することを意味するだろう。これは、製造場所から関連する地方歯科開業場所への被覆の安全な輸送に寄与する。
【0022】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、第二部分を箔として提供することを含む。これは、第二部分が被覆の第二部分に対しての結合時に変形応答を要求するというよりむしろ、被覆にその形状を採用することを確実にする。箔の性質、特にその板状挙動、フレキシビリティ、厚さ、及び板の面の強度は、いかなる望ましくない歪も被覆に付与することなしに第一部分上に被覆を固定することを可能にすることを確実にする。さらに、箔は比較的安くかつ広く入手可能である。
【0023】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、プラスチックから作られた箔を提供すること、このプラスチックを加熱すること;個別化された歯被覆を第一部分と箔の間にはさむこと、及び箔を第一部分の上に減圧押圧されることを含む。これは、注文製作された第二部分を作る非常に実際的な方法であるだろう。
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合するために第二部分に接着剤を設けることを含む。これは、被覆の前面が第二部分に解放可能に結合されることができることを確実にする簡単な方法を形成する。それはまた、第二部分自身が第一部分に解放可能に固定されることができることを確実にする簡単な方法である。好適な接着剤は広く入手可能である。この実施態様は、本質的にテープである箔の使用を含むことができる。
【0024】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、予め決められた一組の歯のための複数の個別化された歯被覆を製造すること、及び複数の個別化された歯被覆のそれぞれの前面が、被覆が製造される予め決められた一組の歯における歯の位置的関係に対応する固定された位置関係で第二部分に対して解放可能に結合されることができるように第二部分を製造することを含む。
【0025】
例えば人が笑うときに最も多く他人に見られる歯の美感を改善するために、多数の歯が被覆を与えることを望む人が多い。付与される被覆について、それは、美感を改善するこの方法のために含まれる費用と時間を減らす。一つの製造工程、及び配置のための地方歯科開業場所への一度の訪問により、全ての被覆が製造されかつそれぞれが人の口腔内に配置されることが好ましい。個別化された被覆が混合されることを避けるために、製造直後に被覆は、被覆が製造された歯の位置的関係に対応する固定された位置的関係で配置されかつ保たれることができる。
【0026】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、着色された結合材料のような結合材料を個別化された歯被覆に付与すること、及び第一部分と第二部分の間に個別化された歯被覆をはさむことを含む。結合材料は、個別化された歯被覆の背面に正しい量及び正しい方法で、歯被覆及び保持器の製造直後に中央場所で付与されることができる。それは、例えば、配置場所で歯科熟練者が結合材料を持つ歯被覆を予め決められた歯に対して押圧すること、及び固定工程を、例えば光硬化により実行することのみを実際に必要とするように実行されることができ、それにより再度「いす時間」をさらに減らす。
【0027】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、着色剤を結合材料に添加すること、または予め着色された結合材料を使用することを含む。再度、これは、歯被覆が色に関して正しい外観を持つことを確実にするために通常必要である歯科技術者の関与のための要求が必要でないように中央場所でなされることができる。これは、時間と費用を節約する。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。上に概説したように第一部分と第二部分を含む少なくとも一つの歯被覆及び保持器を製造した後、この方法はさらに、被覆を第一部分から予め決められた歯の上に配置することを含む。この方法では、第二部分が被覆を予め決められた歯の上に配置するための道具として使用されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明はさらに図面を参照して説明されるだろう。
【0030】
【図1】図1は、一組の歯の模型を示す。
【0031】
【図2】図2は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果としての予め決められた歯の三次元表示を示す。
【0032】
【図3】図3は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果の三次元表示を示す。
【0033】
【図4】図4は、本発明による方法の一実施態様の方法工程で使用可能な支持体を示す。
【0034】
【図5】図5は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果を示す。
【0035】
【図6】図6は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果を示す。
【0036】
【図7】図7は、被覆を与えられた予め決められた歯の表示を概略的に示す。
【0037】
【図8】図8は、本発明による方法の一実施態様の結果としての個別化された歯被覆を示す。
【0038】
【図9】図9は、その最終形状で製造されたときの個別化された歯被覆を示す。
【0039】
【図10】図10は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器の第一部分を示す。
【0040】
【図11】図11は、(a)個別化された歯被覆を与えられたときの図10に示された第一部分の正面図、及び(b)個別化された歯被覆を示す。
【0041】
【図12】図12は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0042】
【図13】図13は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0043】
【図14】図14は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器の第一部分及び複数の歯被覆を示す。
【0044】
【図15】図15は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0045】
【図16】図16は、本発明による方法の一実施態様の結果としての第二部分及び個別化された歯被覆を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の特別な実施態様が今や添付図面を参照して説明されるであろう。しかし、この発明は、多くの異なる形で実現されることができ、ここに記載された実施態様に限定されるものとして解釈されるべきでなく、むしろこれらの実施態様は、この開示が完璧かつ完全であるように、かつ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付図面に例示された実施態様の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。図面において、同様の数字は同様の要素を示す。
【0047】
予め決められた歯のための個別化された歯被覆を設計するために、歯被覆が設計される予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能なデータを持つことが必要である。これは、従来技術で周知でかつ広く利用可能な標準システムを使用する標準的な方法により得られることができるけれども、非常に簡単な説明がここに与えられる。そして、WO2005/046502を参照されたい。それは参考としてあらゆる目的のためにその全体が、特にその図1及び添付される詳細な説明がここに組み込まれる。被覆はまた、ラミネートと呼ばれることができる。以下では、被覆に対してのみ参照がなされるが、それは限定として解釈されるべきでない。用語被覆はまた、ラミネートを包含する。ある実施態様では、被覆2は、均一組成を持つガラスセラミックの単一層を含む。任意選択的に、非セラミック着色及び/または釉掛け層が被覆の少なくとも一方の側に付加されることができる。
【0048】
人の一組の歯の局所的な幾何学的形状を得るための方法及びシステムはそれぞれ、記録機能を持つカメラを使用すること、及びかかるカメラに基づくことができる。追加的または代替的に、印象採取の形が採用されることができる。記録はまた、既知の態様でろう鋳造の助けによりなされることができる。かかる記録は、歯科開業場所内のシステムによって実行されることができるが、歯科医または歯科外科医のような歯科熟練者によっても実行されることができる。測定データの計算機読み取り可能なデータへの変換は従来周知である。例えば、印象は、被覆が製造される歯表面の少なくとも一部を含む口腔から作られることができる。印象は、光学スキャナーを用いて直接走査されることができる。続いて、口腔の陰型の模型である走査された印象は、計算機により陽型の仮想模型に変換される。これに代えて、口腔の陽型の物理的模型は印象に基づいて作られ、物理的模型は例えば光学または接触探針スキャナーによって走査される。さらに代替的に、口腔の光学印象は口内スキャナーにより発生されることができ、そこでは物理的印象を取ることは避けられることができる。
【0049】
計算機読み取り可能データを得ることは、データがさらに加工される場所とは異なる場所で実行されることが可能である。全ての可能な伝送リンクが使用可能である。インターネットの使用がなされることができるが、データはまた、USBスティックの物理的移動またはCDROMのような計算機読み取り可能データ担持媒体により提供されることができる。もちろん歯幾何学的形状を確立するための計算機記録データは、これらのデータを計算機読み取り可能データに変換すること、及びそれ自体計算機読み取り可能データがこれらのデータの遠隔地へのさらなる伝送なしに提供されることも可能である。計算機読み取り可能データを得るために、かつ個別化された歯被覆をさらに設計するために使用される計算機は、一つでありかつ同じ計算機であることもまた可能である。
【0050】
図1は、模型であることができるが、人に属する元の一組の歯であることもでき、かつその人の口腔内に存在する一組の歯1を示す。本発明による方法では、最初から、理想的には、完全な一組の歯の幾何学的形状を表わす全てのデータが計算機読み取り可能フォーマットで(「利用可能にされている」の意味で)提供される。これは、個別化された歯被覆により覆われる予め決められた歯にちょうど適合するよりむしろ、完全な一組の歯とうまく適合するように個別化された歯被覆を設計することを可能にするだろう。しかし、計算機読み取り可能な歯データが、個別化された歯被覆により覆われる必要がある歯、すなわち、おそらく一つ以上の隣接歯と一緒に、予め決められた歯のみの歯幾何学的形状を表わすために提供されることも可能である。
【0051】
図2は、被覆7が設計される予め決められた歯3の三次元表示2を示す。この表示は計算機読み取り可能歯データに基づいて作られる。CADプログラムのような画像化及び設計プログラム内の標準ツールは、異なる角度から、回転後、ズームイン、ズームアウト、完全透明化等で見たような三次元表示2を視覚化可能にする。理想的には完全な予め決められた歯3が示されるけれども、予め決められた歯3の一部のみが示されることも可能である。予め決められた歯3は、歯が被覆により覆われるための準備がされていないという意味で準備されていない歯に関する。実質的に歯材料は除去されていない。しかし、本発明の実施態様では、歯3から材料を除去する必要がないことが記載されている。他の実施態様では、歯3の小部分が、例えば研磨により準備されることができる。これは、例えば歯表面の欠陥を除去するためになされることができる。しかし、歯3の前面のような全表面が研磨により準備されることは意図されていない。
【0052】
三次元表示2に基づいて、計算機読み取り可能被覆データは、被覆7の幾何学的形状を決定するために提供される。どのようにこれがなされることができるかの例は図2に概略的に示されている。三次元表示2では、選ばれた歯部4が規定される。選ばれた歯部4に相当する表面を持つ歯3は、被覆7により覆われることになる。選ばれた歯部4に基づいて、被覆7の背面5のためのデータが規定される。選ばれた歯部4に基づいて、被覆7の前面6のためのデータが規定される。三次元画像化及び設計プログラム内で、かかる設計は全く標準的な操作に関することが可能である。背面5のための規定データは選ばれた歯部4を複写することを含むことができる。前面6のための規定データはまた、選ばれた歯部4を(直接または間接に)複写することを含むことができる。
【0053】
選ばれた歯部4はそれ自身、例えば被覆7が設計される予め決められた歯3の部分の三次元表示2の上の線をカーソルにより描くことにより規定されることができる。これに代えて、この線は自動的な端検出により発生されることができる。標準的な方法では、境界を規定するために本質的に閉じられたこの線が選ばれた歯部4を実際に規定することは計算機に対して確認することができる。被覆の背面5のための規定データは、三次元表示2で可視化された選択された歯部4の再現に基づくことができ、おそらく結合材料のための空間を提供するように、選択された歯部4に対して片寄り(A)を持つ。同様に、被覆の前面6のための規定データは、選ばれた歯部4の再現に、または三次元表示2で可視化された背面5のためのデータの再現に基づくことができ、選ばれた歯部4及び/または背面5のためのデータに対して片寄り(A+B,B)を持つ。これらは本質的に標準的な操作である。片寄りBは被覆7の厚さに相当する。
【0054】
被覆7の前面6のためのデータは、選ばれた歯部4の定義及び背面5のためのデータの定義の両方を考慮することにより規定されることも可能であるが、一方で予め決められたプログラムに従って背面5の端と前面6の端の間の連結を可能にし、そこでは被覆7の厚さはその境界で減少する。
【0055】
被覆データを提供することはまた、被覆7の厚さを規定することを含む。これは、上に言及した異なる片寄り(A,A+B,B)を選ぶことにより間接的になされることができるが、少なくとも一つの片寄りを設定しかつ厚さを設定することにより直接なされることができる。
【0056】
被覆7は、少なくとも約0.08mmで、かつ0.02mm未満、0.14mm未満または0.1mm未満の厚さを持つように設計されかつ作られることができる。
【0057】
被覆7の厚さは平均厚さである。種々の部分で被覆7はより薄くまたはより厚くすることができる。例えば、被覆7は、溝またはしわのようなより自然に見える種々の構造を含むことができる。追加的または代替的に、歯被覆7は、被覆7のより自然な見え方のためにまたは例えば摩滅のために人の歯牙の失われた特徴を造り直すために前面6に表面組織を含むことができる。それはまた、被覆7の境界でより薄い。従って、被覆を作るためのデータを提供することは、かかる構造または表面組織データを提供することを含むことができる。表面組織または構造データは、例えばユーザーインターフェースを用いて自動的に提供されるかまたは設計されることができ、そこでは予め規定された及び/またはユーザー規定された構造または表面組織が発生される。
【0058】
さらに、本発明の実施態様では、被覆7またはラミネートは下部構造のない歯科製品であり、すなわち被覆7またはラミネートは、ラミネートまたは被覆を強化するためにいかなる中間下部構造もなしに歯表面上に直接配置される。歯冠またはブリッジのような他の歯科補綴物は、コーピングまたはブリッジ下部構造のような下部構造の上に被覆層を含むことができ、そこでは被覆層は、下部構造またはコーピングの上の幾つかの層に付与され、かつ続いて焼結される。しかし、下部構造の上のかかる被覆は強度問題を被らず、取り扱うために特にこわれやすくない。
【0059】
被覆7の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データの種々の要素を規定する順序は必ずしも前もって述べられていない。言い換えれば、まず被覆7の厚さが規定され、次いで結合材料の配置のための選ばれた歯部4と被覆7の間の隙間、次いで背面5の端と前面6の端の間の連結、最後に被覆の背面5と被覆7の前面を規定することが可能である。また、三次元画像化及び設計プログラムで、一つ以上の厚さ、隙間、背面5の端と前面6の端の間の連結が予め設定される。しかし、設計の大きな自由度を可能にするために、一般的にこれらの規定のそれぞれがある人の操作により、すなわち被覆が設計される予め決められた歯の部分に付与可能な個人の希望及び/または独特な状況に対して最適化された個別化された歯被覆7のための設計に到達するように、三次元画像化プログラムに入力することにより、なお影響を受けることができることが好ましいだろう。
【0060】
個別化された歯被覆7の最終形状の製造のための設計には、標準設計、及び設計のための努力の差を認める注文設計があることができる。データは全て計算機読み取り可能であるので、データまたは画像を標準手段を介して迅速に伝送することにより多数の可能な設計を人に提供することができるかもしれない。その人は、そのとき、どの設計が承認されかつ被覆の製造のための根拠を形成するべきかを示すことができる。
【0061】
個別化された歯被覆7の設計はさらに、被覆データに基づいて計算機読み取り可能湯口データを規定することを含む。図3は、被覆7の三次元表示及び被覆7を鋳造または(射出)成形法により製造するために有用な湯口8を形成可能にする三つの部品8を示す。どのようにこれらの部品が、被覆7が製造される材料のための入口通路を形成し、この材料が、被覆7が形成される空洞に入ることができるかは後で明らかとなるだろう。図3は、被覆7の最終的な三次元表示の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データを提供するための三次元画像化及び設計プログラムを使用して製造されることができるような三次元表示に相当することができる。後で明らかとなるように、図3に示されるような被覆7と三つの部品8の三次元表示はまた、三次元製品の図、すなわち被覆データ及び湯口データに基づいてCAM技術により提供される三次元製品の図を表わすと見ることができる。また、図3は、鋳造及び焼結された製品に相当する三次元製品上の図を与えると見ることができる。被覆7の三次元表示は、そのとき、設計工程の最終製品であることができる。湯口8のために形成された部分は、従来既知の技術により、例えばスライス削り、研磨または磨きにより除去されることができる。被覆7の三次元表示に基づいた被覆7の原型を製造するためのCAM技術はステレオリソグラフィ、選択的レーザー焼結、またはインクジェット印刷のようなラピッドプロトタイピング技術を含むことができる。これに代えて、フライス削りは、原型を提供するためのCAM技術として採用される。かかる三次元製造法は、Solidscape,米国、3Dシステム,米国、Object,イスラエル、またはEnvisiontech,ドイツからのように従来技術で周知である。
【0062】
図3は、湯口に相当する三つの部品8を持つ原型の例を示す。しかし、被覆7を製造するために唯一の湯口8が使用されることもまた可能である。湯口8の位置は、図3に示されたもののいずれとも全く異なることができる。当業者にとっては、湯口8が除去されるときに最終製品の最適製造とそれによる最少影響の間のバランスをとるためにどのように加工環境が湯口8の最適位置を決定するかは経験の問題であるだろう。
【0063】
予め決められた歯のための個別化された歯被覆7の最終形状の設計の後、被覆データに基づいて個別化された歯被覆7を製造するだろう。
【0064】
個別化された歯被覆7を製造することは、入力として計算機読み取り可能被覆データを取ることができるいかなる方法によっても実行されることができる。特に有利な製造工程は、製造される個別化された歯被覆7の三次元形状(すなわちその原型、並びに必要な湯口8のための部品)を上に言及した技術のいずれかを使用することによって被覆データ及び湯口データに基づいて提供することを採用する。それは、対象物の三次元プロトタイプを対象物の計算機模型から作り上げるための種々の技術に関する。
【0065】
図4は、製造される個別化された歯被覆7及び少なくとも一つの湯口の形状が印刷されることができる印刷支持体9を示す。個別化された歯被覆7の多数の異なる形状は、印刷機を多数の印刷支持体9に対して動かして多数の印刷支持体9で終わることにより連続して印刷されることができ、それぞれは、製造される個別化された歯被覆7及び少なくとも一つの湯口8の印刷された形状をワックス状またはアクリル材料でかつ三次元で支持する。
【0066】
図5はかかる印刷工程の結果を示す。個別化された歯被覆10及びそれに連結された湯口8に相当する一つの部品8の形状は各印刷支持体9の上に載る。各印刷支持体は、被覆7の表面の形状に相当する、その背面5のような形状を持つ表面を持つことができる。
【0067】
被覆はまた、WO2005/046502に記載されたようなフライス削り技術を用いて製造されることができ、この文献は本明細書にあらゆる目的のために参考としてその全体を組み込まれる。
【0068】
図6は、印刷支持体9から除去されたときの個別化された歯被覆7及び部品8の原型10の形状を示す。
【0069】
図7は、どのように個別化された歯被覆7の形状が予め決められた歯3に適合するかを概略的に示す。明確化のために、湯口8は図7には示されていない。
【0070】
個別化された歯被覆7はインベストメント鋳造技術を使用して製造されることができる。任意選択的に湯口に相当する一つ以上の部品8を備えた、一般的にまた「型」と呼ばれる個別化された歯被覆7の原型は、いわゆるキュベット中に配置されることができる。原型は、キュベット内に配置されたとき、石こうのようなインベストメント材料により取り囲まれる。この方法では、原型の材料はキュベットから燃焼され、従って被覆7が作られるセラミック材料により被覆7を形成するための空洞が形成される。セラミック材料は、この空洞に湯口8を通して供給され、かつ減圧下かつ高温で空間中に押圧される。これらの工程は従来技術で全て周知であり、かつ圧力、温度及び時間のような工程または焼結パラメーターは使用される材料に依存する。いったん被覆7が希望の形状で形成されたら、脱型が、例えばインベストメント材料を吹き飛ばすことにより行なわれる。図8は、被覆7の一例を示す。湯口からもたらされる部分は、研磨またはフライス削りのような標準的な方法により除去されることができる。最終結果、すなわちセラミック材料の個別化された歯被覆は図9に示される。被覆7はかくしてその最終形状で提供される。
【0071】
上記から分かるように、個別化された歯被覆7が設計される物理的場所と、個別化された歯被覆7の製造が行なわれる物理的場所との完全な分離は必ずしも必要ではない。従って、予め決められた歯3のための個別化された歯被覆7の最終形状を製造する方法は、上に詳述したように、個別化された歯被覆7の最終形状の製造のための設計方法を含むことが同様に可能である。
【0072】
一つより多い個別化された歯被覆7が製造されることも可能である。それぞれの個別化された歯被覆7は人の予め決められた歯のために注文製作されることができ、従って注文製作された被覆がその人のそれぞれの予め決められた歯のために利用可能である。
【0073】
理想的には、もし一組の歯1の一つより多い歯3のための個別化された歯被覆7が製造されかつ付与される必要があるなら、これらの被覆7は複数の個別化された被覆7として一緒に製造されかつ付与されることが好ましく、従って材料、任意選択的に色、及びそれぞれの歯への付与の方法は同じである。その目的のために、これを容易にするために、設計は三次元表示に基づいて、複数の個別化された被覆7及び湯口8の原型の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データを提供することを含み、従って複数の個別化された被覆は、原型の幾何学的形状を持つ空洞を単一鋳造または成形することにより製造されることができる。
【0074】
人の予め決められた歯のための個別化された歯被覆7のそれぞれが、それが製造されるとすぐに安全に保管され、かつそれが最後に関係する人の歯の上に配置される地方歯科開業場所に安全に輸送されることができることを確実にするために、個別化された歯被覆7のそれぞれを保持するために保持器12もまた製造される。保持器12はまた、個別化されることができ、かつ計算機読み取り可能歯データに基づいて製造されることができる。個別化された歯保持器12は、そのとき、歯被覆7の製造後に始まりかつ個別化された歯被覆7の予め決められた歯3の上への配置で終わる期間中に個別化された歯被覆を保持するために非常に適しているであろう。
【0075】
個別化された保持器12の製造は、好ましくは、個別化された歯被覆7の背面にぴったりと適合するための形状を与えられている第一部分13の製造を含む。第一部分13は、個別化された歯被覆7の背面の形状に補完的である形状を持つことができる。違いは、結合材料のために設けられた空間のみであることができる。従って、第一部分13は、歯被覆7の実質的に全背面5に接触することができる。さらに、第一部分13は、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の形状に実質的に相当する形状を持つことができる。図10に示された極めて有利な例では、かかる第一部分13は、被覆7が設計されかつ製造された予め決められた歯の少なくとも歯部分12の模型を含むものとして提供される。
【0076】
かかる模型を製造することは、例えばWO2008/051130に記載されており、それはあらゆる目的のためにその全体を参考として本明細書に組み込まれる。
【0077】
図11aは、かかる模型の正面図を示す。図11bは、模型13に示された歯の一つを覆うことを意図される個別化された歯被覆7の前方部を示す。個別化された歯被覆7は、この実施態様では、前歯の一つを覆う。図11aでは、個別化された歯被覆7の位置は同じ参照番号により示され、太線で描かれている。
【0078】
個別化された被覆7が設計されかつ製造された歯の模型は、個別化された歯被覆7の背面にぴったりと適合する形状を持つ第一部分13を最も好適に提供するだろう。しかし、第一部分13が、被覆7が設計されかつ製造された歯部分を提供するのとは異なる方法で歯被覆7の一方の側とぴったりと適合するための形状を与えられることもまた可能である。第一部分13は、上記したようなラピッドプロトタイピングによるCAM技術によってまたはフライス削りによって製造されることができる。
【0079】
保持器12は、個別化された歯被覆7が第一部分13と第二部分14の間にはさまれることができるように第二部分14を提供する。好ましくは、第二部分14は、個別化された歯被覆7の前面を第二部分14に対して解放可能に結合するために適している。第二部分14は箔として提供されることができる。第二部分14は、個別化された歯被覆7の前面にぴったりと適合するための形状を与えられることができる。追加的に、第二部分は、被覆7が製造される歯に隣接する歯のいずれかにぴったりと適合する形状を持つことができる。これは、被覆が製造される歯に被覆7を付与する道具として第二部分14を使用することを容易にする。
【0080】
第一部分13と第二部分14は、個別化された歯被覆7が第一部分13と第二部分14の間にはさまれるときにこれらが互いに解放可能に固定可能であるように設けられることが好ましい。
【0081】
第二部分14が箔として設けられる例では、第二部分14は、プラスチックから作られた箔を設けることにより適切な形状を与えることができる。このプラスチックは加熱されることができる。次いで個別化された歯被覆7は第一部分13と第二部分14の間にはさまれた後、箔を第一部分13の上に減圧押圧することができる。第一部分13と第二部分14を互いに解放可能に固定することを可能にするために、接着剤が第二部分14に与えられることができる。この接着剤はまた、個別化された歯被覆7の前面を第二部分14に対して解放可能に結合するために適していることができる。しかし、第二部分14はまた、箔の被覆7及び/または第一部分13への静電結合により、個別化された歯被覆の前面に解放可能に結合するために及び/または第一部分13に解放可能に固定するために適するようにされることができる。かかる方法は、従来技術で周知であり、例えば新しい携帯電話の表示器に箔を設けるために使用されることが多い。第二部分14は、図12,13及び16に示されるように透明部品であることができる。解放可能な結合は、例えば減圧結合、静電結合、及び/または接着剤結合フィルムにより与えられることができる。減圧結合は熱成形装置により与えられることができ、そこでは変形可能な素材が予熱され、間に被覆7を持つ第一部分の上に配置され、次いで減圧ポンプを起動することにより変形され、それにより素材は、第一部分13により支持されている被覆7に解放可能に結合する。次いで、変形された素材は、希望の形状に削られて仕上げられる。かかる減圧成形装置は、例えばVacformat U,Vacformat 2000、及びDruformat Scanの商品名の下にDreve,ドイツから入手可能である。静電箔またはフィルム、樹脂系及び光硬化系の両方の接着剤を持つフィルム等の結合フィルムは、例えば3M,米国から入手可能である。
【0082】
保持器12を製造することは、好ましくは、個別化された歯被覆7を予め決められた歯に対して配置するときに第二部分14を手動で保持するためのつかみ保持器15を第二部分14に与えることを含む。かかるつかみ保持器15は、第二部分14の上に接着されることができ、または第二部分が例えばつかみ保持器15の一部を形成する小さなねじ上にねじ込むことを可能にする厚さを持つ場合に可能である機械的取り付けにより設けられることができる。
【0083】
複数の個別化された歯被覆7が予め決められた一組の歯のために製造されることが可能である。複数(P個)の個別化された歯被覆7が図14に示されている。第二部分14は、そのとき、複数(P個)の個別化された歯被覆7のそれぞれの前面が、被覆7が製造される予め決められた一組の歯1における歯の位置関係に相当する固定された位置関係で第二部分14に対して解放可能に結合されることができるように製造される。図16は、第二部分14に対して解放可能に結合されたときの個別化された歯被覆7間のかかる固定された位置関係を示す。
【0084】
多数の予め決められた歯の美感を改善する方法は、まず上に説明された方法で個別化された歯被覆7の製造の後、第一部分13から予め決められた歯の上にこれらの被覆7のそれぞれを配置することを含む。かかる方法は、被覆7を予め決められた歯の上に配置するための道具として第二部分14を使用することを含むことができる。個別化された被覆7を第一部分13から取ることは、第二部分14を第一部分13から持ち上げることにより簡単になされることができ、もし必要なら第二部分14の第一部分13に対する固定をはずすことができる。第二部分14を持ち上げる結果は図16に示されている。複数の個別化された歯被覆は、予め決められた固定された位置関係で第二部分14を保持することにより(この場合、手で)保持される。
【0085】
示されていないけれども、個別化された歯被覆及び個別化された保持器を製造する方法は、結合材料を個別化された歯被覆7に付与することを含むことも可能である。この後、個別化された歯被覆7を第一部分13と第二部分14の間にはさむことができる。個別化された歯被覆7が半透明に作られる場合、着色剤が結合材料に添加されることができる。個別化された歯被覆7の予め決められた歯に対する配置後に、個別化された歯被覆7を予め決められた歯に対して固定するために、結合材料は従来技術で周知の方法で光硬化されることができる。
【0086】
ある実施態様では、歯被覆7は、歯への付与前に、おそらく歯被覆7を関係歯に付与する歯科熟練者への送付前であっても、結合材料で予備処理される。通常の被覆を用いると、結合材料は、典型的には、被覆が付与される歯に付与され、被覆は次いでその歯の上に配置され、結合材料は例えば光硬化によって硬化される。本発明の実施態様によれば、結合材料は、歯被覆7を結合するために使用される全結合材料の例えば25〜75%のように少なくとも部分的に歯被覆7に付与される。予備処理は、歯被覆7の製造設備でまたは歯科技術者により実行されることができる。歯に面する背面側のような歯被覆7の少なくとも一方の側の予備処理は、次の工程の少なくとも一つを含むことができる:歯被覆の浄化;化学的及び/または機械的連結表面を準備するための腐食ゲルの付与;輸送保護としてシランによる封止のために準備された腐食表面を提供する;シラン処理された表面を得るためのシラン処理工程を付与する;シラン処理された表面の上への結合材料の少なくとも一層の付与;歯頸及び/または切開着色のような着色材料の前もっての、結合材料の上への、または結合材に混合しての付与;結合材料を歯被覆7に付与する;及び歯科熟練者への送付のために結合材料を光硬化する。
【0087】
実施態様はまた、歯被覆を受ける歯科熟練者による予備処理を含むことができる。熟練者による予備処理は、次の工程の少なくとも一つを含むことができる:歯の非準備(すなわち実質的に非研磨前面)表面を例えばイソプロパノールによって浄化する;腐食ゲル、例えばフッ化物腐食ゲル、フッ化水素腐食ゲル等による歯表面の腐食;腐食された歯表面のシラン処理;及びもし25〜75%が歯被覆7に付与されたなら25〜75%のような結合材料の残りのかつ最終的に歯表面の上へ合計100%になる付与。歯表面へ付与された結合材料は透明または白色のような無彩色を持つことができ、それにより被覆に添加された色により提供された外観は実質的に影響されない。
【0088】
本発明の実施態様はまた、被覆手順のために次の工程の少なくとも一つを含むことができる:硬化された結合材料を予備処理された被覆7に提供する;結合材料を含む歯表面の上に歯被覆を付与する;被覆7を調整する;及び結合材料を持つ表面間の連結を例えば光硬化によって硬化する。
【0089】
予備処理手順の実施態様を使用すると、被覆7は、予備処理された結合材料を含むことができる。予備処理された結合材料は、光硬化可能な歯科結合剤のような少なくとも部分的に硬化した結合材料を含むことができる。予備処理された結合材料は、被覆7を着色する少なくとも一つの着色材料を含むことができる。従って、被覆7の厚さとその半透明との組み合わせのため、結合材料の色は目に見えるであろう。従って、別個の着色層の付与は必要ない。
【0090】
結合材料は、CAM法により、例えばインクジェット技術により付与されることができる。そのとき、CADユーザーインターフェースは、結合材料の異なる層及び/または結合材料の異なる色相を持つ歯被覆の異なる領域を設計する手段を提供することができる。例えば、被覆7が付与される前歯または切歯のような歯のタイプに基づいて自動的に示唆が発生されることができる。これに代えて、ユーザーは、カーソルによる指示によるように閉曲線を構成する線により規定された領域を示す。線の境界内で結合材料の特別な色は規定され、続いて付与される。さらに、歯の解剖学的構造に相当する異なる領域を持つ模様は、個々の歯被覆の三次元表示の上に投影されることができる。そのとき、ユーザーは特別な領域のために特別な色を選ぶことができる。結合材料の付与は、WO2006/036114に記載された技術を使用して提供されることができる。この文献は、金属及び/またはセラミック粉末を付与するためのあらゆる目的のために本明細書にその全体を参考として組み込まれるが、結合材料の付与を開示しない。結合材料はまた、上記のように手動により付与されることができる。
【0091】
異なる色相または色を持つ種々の結合材料は、Kuray Dental,米国からのPanavia F及びPanavia 21、lviclar Vivadent,リヒテンシュタインからのVariolinkまたはSyntac Heliobond、3M,米国からのRelyX ARC、及び/またはDentalcompare,米国からのNX3 Nexusのように商業的に入手可能である。
【0092】
個別化された歯被覆7を予め決められた歯に付与する前にルーチン法が歯科熟練者により代替的に実行されることができる。被覆7により覆われる歯の表面は、清浄表面を提供するために腐食されることができる。腐食後、歯科熟練者により実行されるルーチン法及び標準法の一部としてシラン処理層を付与することができる。シラン処理層は腐食表面に対して封止を提供する。セラミック材料はLi−二ケイ酸塩ガラスセラミックのようなガラスセラミック材料であることができる。Li−二ケイ酸塩ガラスセラミックは高い強度を持ち、それは、こわれやすい製品を取り扱うための改善された可能性を提供する。かかるガラスセラミックは、例えばlvoclar Vivadent,リヒテンシュタインから商品名IPS e.maxの下に入手可能である。これに代えて、セラミック材料は、マイクロ波焼結された酸化アルミニウムセラミックを含むことができる。
【0093】
ある実施態様では、被覆7は、均一組成を持つガラスセラミックの単一層を含む。任意選択的に、非セラミック着色及び/または釉掛け層が被覆7の少なくとも一方の側に付加されることができる。
【0094】
本発明は、上に述べた実施態様に限定されない。多くの修正及び異なる実施態様が可能である。これらのそれぞれは、添付請求項により規定されたように本発明の枠内に入ると理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め決められた歯のための少なくとも一つの個別化された歯被覆、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆を保持するための保持器を製造するための方法に関する。歯科医術界では、被覆は、歯の美感を改善するために、例えば予め決められた歯の色改善のために、歯表面の上に配置された修復材料の薄い層である。本発明はまた、予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US2007/0298381A1は、永久被覆または歯冠のような他の修復歯科医術を受けた歯への一時的付着のために使用される歯科被覆を記載する。一時的被覆は、望ましくない外観を持つ歯の上に配置される。歯被覆は、無毒で水不溶性であるポリマー材料から、好ましくはシアノ酢酸エチル系ポリマーから作られる。一時的被覆は、使用者の歯の上に好ましくは7日迄残るが、一日未満または一時間未満であっても、使用されることができる。被覆は、非永久的接着剤タイプの材料により取り付けられ、かつ個々の歯から単に歯被覆を取ることにより除去されることができる。それぞれの歯の上に先に実行された可能な修復歯科医術は別として、歯の寸法は、このポリマー歯被覆を付与する前に変えられない。
【0003】
これらの歯被覆の製造工程は、被覆がそれぞれの個々の歯のために特別に作られることができるようなものであることができる。かかる製造工程は、従来既知の方法により口の印象から製造されることができる型を必要とする。被覆は、特定の歯の詳細に従って大量生産されることができる。個々の被覆はさらに、歯科医の開業場所でまたは家で個人によってのいずれかで造形され、最後の仕上げをされることができる。縁と角は、被覆により覆われる予め決められた歯のために適した希望の形状を達成するために最後の仕上げをされ、研磨紙をかけられ、または磨かれることができる。
【0004】
US2009/0004629A1は、耐久性の射出成形されたプラスチックのようなプラスチック、またはプラスチックから形成された被覆から作られることができる歯列弓ラミネートの形の歯被覆を記載する。これらの歯列弓ラミネートは、人の歯に快適なかつ再使用可能な付与のための形状をしている。歯列弓ラミネートは、結合剤、セメントまたは他の半永久接着剤ではない無毒性粘着接着剤を用いて固定及び付着される。むしろ、無毒性粘着接着剤は、一時的であり、再使用可能である。この薄い美的な歯列弓ラミネートは、人の歯の型を取り、かつこの型に基づいて薄い美的な歯列弓ラミネートを作ることにより注文製作されることができる。型は、既知の歯科型技術を用いて歯科専門家のいる場所で取られることができる。人及び歯科専門家は、薄い美的な歯列弓ラミネートが歯科実験室から戻ってくるときに不愉快な驚きを避ける目的のために薄い美的な歯列弓ラミネートのための色を一緒に選ぶことができる。
【0005】
上に述べた二つの既知の被覆のそれぞれは、ポリマーから作られている。これは、被覆に略0.1mmから0.9mmまでの厚さを持たせることを可能にする。
【0006】
US2005/0227204A1は、口中温水ゆすぎの使用によりかつ被覆を歯から取ることにより除去されることができる一時的な使用のための再使用可能な被覆を記載する。これらの一時的な被覆は磁器、プラスチック、他の半硬質複合材料、またはそれらの組み合わせから作られることができる。被覆は0.2mm〜約1mmの厚さで作られることができる。
【0007】
これらの一時的な被覆は、歯科医により注文製作されるか、または種々の寸法、形状及び色合いを持つ予め成形された被覆であることができる。押圧被覆の注文された組は、歯科医への簡単な非侵襲性の訪問で作られることができる。歯科医は、歯の型を取り、実験室はその人のための注文の寸法及び形状の一時的な被覆を作る。被覆は次いでいかなる異常な歯形成にも順応させる。これに代えて、型装置は、関連する人の家に送られることができ、その人は、型をかみ、それを歯科医にまたは直接実験室に郵送することにより自分自身の印象を取ることができる。次いで、注文被覆の一組がその人に郵送で戻されることができる。また、これらの被覆は、多種類の形状と寸法を持つ予め製造された組で与えられることができ、それらは次いで小売り売買のために、結合剤の容器を持つキットとして一緒に包装され、かくして個人は包装体を購入することができ、寸法、形状をとり上げて選択し、必要なら彼ら自身の個人の希望に合うように適合させることができる。
【0008】
上述の被覆のどれも、切断、穿孔、研削及び歯から材料を永久的に除去する他の形態を含む歯の準備及び予備造形を必要としない。かかる不可逆的変更が人に対して不快な経験であることが多く、かつ処置の前に鎮痛皮下注射が使用されることを必要とするかもしれないので、それは一般的に有利であると考えられる。これはまた、被覆の付与の費用を増加する。
【0009】
明らかに、被覆の最小限の侵襲性または非侵襲性である付与は、歯材料の永久的除去を必要とする被覆の付与に対して大きな心理的利点を持つ。
【0010】
一時的な被覆は有用であることができるけれども、多くの人は、付与し、除去し、かつ再付与するためにばく大なわずらわしい時間消費の必要をなお見出し、彼らは付与すること、及び/または被覆を付与するために必要な材料を手元に持つことを忘れる危険を嫌う。従って、歯材料の除去を必要としないような非常な薄い永久被覆を提供するための要求がある。理想的には、被覆は、歯科医への最小数の訪問に基づいて、例えば予め決められた歯の色を改善する目的に永久的に役立つように付与されることができる。設計費用及び製造費用を抑制するために、上に概説した目的及び他の目的の少なくとも一つに合致する効率的で信頼性のある方法を提供する要求がある。
【0011】
特に非常に薄くかつこわれやすい個別化された歯被覆のために、被覆が予め決められた歯の上に配置される前にこれらが損傷しないように注意を持って取り扱われることを確実にすることが重要である。製造費用を抑制するために、被覆は理想的には中央場所で多数で製造される。しかし、これは、被覆をその中央場所から歯の上への配置が起こる場所、例えば地方歯科開業場所への送付を必要とする。この輸送は、個別化された歯被覆への損傷の危険を伴う。ある意味で、中央でかつ個別化された方法で製造したいという希望、及び地方に置きたいという希望は、互いに衝突する。従って、個別化された歯被覆の工業レベルでの中央製造を可能にし、それらが次いで世界のどこの地方でも人の歯に付与されることを可能にする方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、少なくとも一つの個別化された歯被覆、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆を保持するための保持器を製造する方法を提供し、少なくとも一つの個別化された歯被覆のそれぞれは人の予め決められた歯のために注文製作され、さらにこの方法は以下のことを含む:
− 予め決められた歯の少なくとも一部分の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な被覆データに基づいて、個別化された歯被覆を製造すること;及び
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆を保持するための個別化された保持器を製造すること
を含む。
この保持器は、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の一部の少なくとも一部分の形状に対応する形状を持つ少なくとも一つの表面を持つことができる。さらに、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の一部の少なくとも一部分の形状に対応する形状を持つ保持器の少なくとも一つの表面の形状は、歯被覆の一方の側の少なくとも一部分に補完的であることができる。
有利には、計算機読み取り可能な歯データは、個別化された被覆及び個別化された保持器の両方を作るために使用されることができる。従って、保持器は、被覆の特別な幾何学的形状の特徴を考慮に入れるような方法被覆を保持するために最適化されることができる。それは、保持器を被覆の個別設計に適合する可能性を提供し、それにより被覆の保持を最適化する。これは、新しく製造された薄くてかつこわれやすい個別化された歯被覆を製造直後に最良の可能な位置に保持することを可能にする。それは、被覆が設計された歯の上への配置直前まで輸送及び保管時にこの位置に保たれることができる。この方法はさらに、個別化された歯被覆を費用効果的に製造する非常に魅力的な方法を可能にする。さらに、保持器が個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の少なくとも一表面に対応する形状を持つ表面を持つ実施態様では、保持器は輸送時の支持体を提供することができる。さらに、保持器は、歯科技術者によるような被覆の最終仕上げ時の支持体を提供することができる。なぜなら前面は露出されることができ、その背面は、被覆を支持する保持器の表面の形状に対して形状が補完的であるからである。従って、保持器は二つの機能性を持ち、フレキシビリティがある。これは、割れを受けやすい薄い被覆に対し特に有用である。背景技術の部分で既に明らかにしたように、予め決められた歯の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能データを提供することは知られている。かかる計算機読み取り可能データを得るための例は後で与えられるであろう。いったん計算機読み取り可能な被覆データが被覆の幾何学的形状を決定するために提供されたら、被覆及び保持器の実際の製造が、これらの歯データに基づいて、好適な設備が置かれている中央場所で行なわれることができる。計算機読み取り可能データは、かかるデータの輸送のために必要な物理的時間を最小に保って例えばインターネットによって、その中央場所に容易に移送されることができる。
【0013】
中央場所で、個別化された歯被覆及び個別化された保持器は、CAM技術を使用して工業規模でかつある程度まで自動的に、すなわちスタッフよりむしろ機械及び器具の投資により、製造されることができる。説明したように、いったん個別化された歯被覆及び個別化された保持器の両方が製造されたら、これらは、輸送時及び地方歯科開業場所で人の歯の上に配置される直前の瞬間まで最適な方法で一緒に配置されかつ分離できないように保たれることができる。個別化された歯被覆及び個別化された保持器は、例えば歯科技術者によるさらなる加工のために少なくとも部分的に一時的に分離されることができる。被覆が製造された人は、個別化された歯被覆の予め決められた歯に対する配置の開始と完了のために地方歯科開業場所を二度訪問する必要があるだけである。第一の訪問は計算機読み取り可能歯データの製作を可能にするであろう。第二の訪問は、製造された個別化された歯被覆のそれぞれが地方歯科開業場所により受け取られかつ人の歯の上に配置されることができるときになされるであろう。
【0014】
本発明による方法の一実施態様では、個別化された歯被覆はその最終形状で製造される。これはさらに、人の地方歯科開業場所への第二の訪問のために必要な時間を最小にする。
【0015】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、個別化された保持器の第一部分を製造することを含み、そこでは第一部分は、個別化された歯被覆の背面にぴったりと適合するための形状を与えられる。このようにして個別化された保持器は、個別化された歯被覆が設計される予め決められた歯の形状に対応する形状を与えられるだろう。保持器の第一部分と被覆の背面の間のぴったりする適合を提供することにより、被覆を第一部分に対して「形状適合」で保持することができ、被覆と第一部分の間の位置関係に安定性を提供する可能性を与える。薄くてかつこわれやすいかもしれない個別化された歯被覆のための支持体は、幾何学的形状に関して最適である。個別化された歯被覆は望ましくない応力及び歪みにさらされないだろう。もし個別化された歯被覆がそれにもかかわらず破壊されるかまたは割れを示すなら、これは、個別化された歯被覆の幾何学的形状の欠陥の存在よりむしろ被覆の製造時の加工パラメーターに起因する可能性が大きい。
【0016】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、個別化された歯被覆を第一部分と第二部分の間にはさみ、かつ個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合するために個別化された保持器の第二部分を製造することを含む。はさむことはさらに、被覆の安定な位置に加えて、被覆が例えば第一部分の上を滑りかつ/または望ましくない振動にさらされる確率を減らすだろう。個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合することにより、被覆のさらなる「固定」が得られる。それは、被覆を第一部分から第二部分を単につかむことにより除去することを可能にする。第二部分は、透明な部品であることができ、かつ/または個別化された歯被覆の予め決められた歯に対する配置時に第二部分を手動で保持するためのつかみ保持器を備えることができる。
【0017】
第二透明部分は、被覆並びに第一部分の多くが第二部分を除去することなしであっても目に見えたままであるという利点を持つ。それはさらに、保持器から関連した人の口腔への被覆の輸送、及び人の予め決められた歯の上への被覆の正確な配置さえも、第二部分を操作することにより、おそらくいかなる他の道具の必要もなしで、可能になるだろう。これは、透明な第二部分がまた、移送道具及び配置道具として使用されるときに被覆が常に目に見えるからである。さらに、人の口腔内の被覆の近くの周辺はそのとき歯科製品の配置時に常に目に見えるだろうし、従って被覆の正確かつ迅速な配置を容易にする。また、特別な被覆とその特別な被覆を受ける歯との整合、並びにいかなる追加の被覆との整合も与えられる。
【0018】
つかみ保持器は、被覆が関連した人の予め決められた歯の上に配置されるときに被覆を保持するために他の道具を全く必要としないという利点を持つだろう。
【0019】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆が第一と第二部分の間にはさまれるときに第一及び第二部分が互いに解放可能に固定可能であるように第一と第二部分を設けることを含む。被覆は、そのとき、保持器内に保たれた状態の被覆の輸送を可能にする方法で第一と第二部分により提供された包み内に封入される。
【0020】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、予め決められた歯の少なくとも一部の模型を表わすように第一部分を製造することを含み、そこではその一部が、個別化された歯被覆の背面の形状に補完的である形状を持つ。これは、計算機読み取り可能な歯データに基づいてこれを作ることを容易にするので極めて有利であるだろう。さらに、一組の歯の全体が模型の一部である実施態様では、個別化された歯被覆により覆われた予め決められた歯がまた、一組の歯内で自然な整合を果たすかどうかをチェックすることを可能にするだろう。この実施態様はさらに、配置直前に、正しい保持器及び個別化された被覆が人の一組の歯内の予め決められた歯の上への被覆の配置のために利用可能に作られているかどうかをチェックすることを可能にするだろう。歯科熟練者は、もし模型がその人の一組の歯に対応しないなら、不適合性に直ちに気づくだろう。それは、その歯のために被覆が設計されていない歯の上に被覆を配置する試みを避けるだろう。その意味で、それはまた、被覆が設計されていない歯の上に被覆を強制することにより被覆を意図せずに損傷することを避けるだろう。さらに、それは、異なる被覆間の区別を可能にする。例えば、単一の人の前歯に対し二つの被覆間を区別することは困難でありうる。
【0021】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆の前面にぴったりと適合するための形状を持つ第二部分を提供することを含む。これは、被覆をはさむときに第一部分と第二部分により与えられる包みが、被覆の背面及び前面の両方について被覆が保持器内に非常に安定に配置されるように被覆に最適に適合することを意味するだろう。これは、製造場所から関連する地方歯科開業場所への被覆の安全な輸送に寄与する。
【0022】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、第二部分を箔として提供することを含む。これは、第二部分が被覆の第二部分に対しての結合時に変形応答を要求するというよりむしろ、被覆にその形状を採用することを確実にする。箔の性質、特にその板状挙動、フレキシビリティ、厚さ、及び板の面の強度は、いかなる望ましくない歪も被覆に付与することなしに第一部分上に被覆を固定することを可能にすることを確実にする。さらに、箔は比較的安くかつ広く入手可能である。
【0023】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、プラスチックから作られた箔を提供すること、このプラスチックを加熱すること;個別化された歯被覆を第一部分と箔の間にはさむこと、及び箔を第一部分の上に減圧押圧されることを含む。これは、注文製作された第二部分を作る非常に実際的な方法であるだろう。
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、個別化された歯被覆の前面を第二部分に対して解放可能に結合するために第二部分に接着剤を設けることを含む。これは、被覆の前面が第二部分に解放可能に結合されることができることを確実にする簡単な方法を形成する。それはまた、第二部分自身が第一部分に解放可能に固定されることができることを確実にする簡単な方法である。好適な接着剤は広く入手可能である。この実施態様は、本質的にテープである箔の使用を含むことができる。
【0024】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、予め決められた一組の歯のための複数の個別化された歯被覆を製造すること、及び複数の個別化された歯被覆のそれぞれの前面が、被覆が製造される予め決められた一組の歯における歯の位置的関係に対応する固定された位置関係で第二部分に対して解放可能に結合されることができるように第二部分を製造することを含む。
【0025】
例えば人が笑うときに最も多く他人に見られる歯の美感を改善するために、多数の歯が被覆を与えることを望む人が多い。付与される被覆について、それは、美感を改善するこの方法のために含まれる費用と時間を減らす。一つの製造工程、及び配置のための地方歯科開業場所への一度の訪問により、全ての被覆が製造されかつそれぞれが人の口腔内に配置されることが好ましい。個別化された被覆が混合されることを避けるために、製造直後に被覆は、被覆が製造された歯の位置的関係に対応する固定された位置的関係で配置されかつ保たれることができる。
【0026】
本発明による方法の一実施態様では、この方法は、着色された結合材料のような結合材料を個別化された歯被覆に付与すること、及び第一部分と第二部分の間に個別化された歯被覆をはさむことを含む。結合材料は、個別化された歯被覆の背面に正しい量及び正しい方法で、歯被覆及び保持器の製造直後に中央場所で付与されることができる。それは、例えば、配置場所で歯科熟練者が結合材料を持つ歯被覆を予め決められた歯に対して押圧すること、及び固定工程を、例えば光硬化により実行することのみを実際に必要とするように実行されることができ、それにより再度「いす時間」をさらに減らす。
【0027】
本発明による方法の一実施態様では、この方法はさらに、着色剤を結合材料に添加すること、または予め着色された結合材料を使用することを含む。再度、これは、歯被覆が色に関して正しい外観を持つことを確実にするために通常必要である歯科技術者の関与のための要求が必要でないように中央場所でなされることができる。これは、時間と費用を節約する。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法に関する。上に概説したように第一部分と第二部分を含む少なくとも一つの歯被覆及び保持器を製造した後、この方法はさらに、被覆を第一部分から予め決められた歯の上に配置することを含む。この方法では、第二部分が被覆を予め決められた歯の上に配置するための道具として使用されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明はさらに図面を参照して説明されるだろう。
【0030】
【図1】図1は、一組の歯の模型を示す。
【0031】
【図2】図2は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果としての予め決められた歯の三次元表示を示す。
【0032】
【図3】図3は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果の三次元表示を示す。
【0033】
【図4】図4は、本発明による方法の一実施態様の方法工程で使用可能な支持体を示す。
【0034】
【図5】図5は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果を示す。
【0035】
【図6】図6は、本発明による方法の一実施態様の方法工程の結果を示す。
【0036】
【図7】図7は、被覆を与えられた予め決められた歯の表示を概略的に示す。
【0037】
【図8】図8は、本発明による方法の一実施態様の結果としての個別化された歯被覆を示す。
【0038】
【図9】図9は、その最終形状で製造されたときの個別化された歯被覆を示す。
【0039】
【図10】図10は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器の第一部分を示す。
【0040】
【図11】図11は、(a)個別化された歯被覆を与えられたときの図10に示された第一部分の正面図、及び(b)個別化された歯被覆を示す。
【0041】
【図12】図12は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0042】
【図13】図13は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0043】
【図14】図14は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器の第一部分及び複数の歯被覆を示す。
【0044】
【図15】図15は、本発明による方法の一実施態様の結果としての保持器を示す。
【0045】
【図16】図16は、本発明による方法の一実施態様の結果としての第二部分及び個別化された歯被覆を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の特別な実施態様が今や添付図面を参照して説明されるであろう。しかし、この発明は、多くの異なる形で実現されることができ、ここに記載された実施態様に限定されるものとして解釈されるべきでなく、むしろこれらの実施態様は、この開示が完璧かつ完全であるように、かつ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付図面に例示された実施態様の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。図面において、同様の数字は同様の要素を示す。
【0047】
予め決められた歯のための個別化された歯被覆を設計するために、歯被覆が設計される予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能なデータを持つことが必要である。これは、従来技術で周知でかつ広く利用可能な標準システムを使用する標準的な方法により得られることができるけれども、非常に簡単な説明がここに与えられる。そして、WO2005/046502を参照されたい。それは参考としてあらゆる目的のためにその全体が、特にその図1及び添付される詳細な説明がここに組み込まれる。被覆はまた、ラミネートと呼ばれることができる。以下では、被覆に対してのみ参照がなされるが、それは限定として解釈されるべきでない。用語被覆はまた、ラミネートを包含する。ある実施態様では、被覆2は、均一組成を持つガラスセラミックの単一層を含む。任意選択的に、非セラミック着色及び/または釉掛け層が被覆の少なくとも一方の側に付加されることができる。
【0048】
人の一組の歯の局所的な幾何学的形状を得るための方法及びシステムはそれぞれ、記録機能を持つカメラを使用すること、及びかかるカメラに基づくことができる。追加的または代替的に、印象採取の形が採用されることができる。記録はまた、既知の態様でろう鋳造の助けによりなされることができる。かかる記録は、歯科開業場所内のシステムによって実行されることができるが、歯科医または歯科外科医のような歯科熟練者によっても実行されることができる。測定データの計算機読み取り可能なデータへの変換は従来周知である。例えば、印象は、被覆が製造される歯表面の少なくとも一部を含む口腔から作られることができる。印象は、光学スキャナーを用いて直接走査されることができる。続いて、口腔の陰型の模型である走査された印象は、計算機により陽型の仮想模型に変換される。これに代えて、口腔の陽型の物理的模型は印象に基づいて作られ、物理的模型は例えば光学または接触探針スキャナーによって走査される。さらに代替的に、口腔の光学印象は口内スキャナーにより発生されることができ、そこでは物理的印象を取ることは避けられることができる。
【0049】
計算機読み取り可能データを得ることは、データがさらに加工される場所とは異なる場所で実行されることが可能である。全ての可能な伝送リンクが使用可能である。インターネットの使用がなされることができるが、データはまた、USBスティックの物理的移動またはCDROMのような計算機読み取り可能データ担持媒体により提供されることができる。もちろん歯幾何学的形状を確立するための計算機記録データは、これらのデータを計算機読み取り可能データに変換すること、及びそれ自体計算機読み取り可能データがこれらのデータの遠隔地へのさらなる伝送なしに提供されることも可能である。計算機読み取り可能データを得るために、かつ個別化された歯被覆をさらに設計するために使用される計算機は、一つでありかつ同じ計算機であることもまた可能である。
【0050】
図1は、模型であることができるが、人に属する元の一組の歯であることもでき、かつその人の口腔内に存在する一組の歯1を示す。本発明による方法では、最初から、理想的には、完全な一組の歯の幾何学的形状を表わす全てのデータが計算機読み取り可能フォーマットで(「利用可能にされている」の意味で)提供される。これは、個別化された歯被覆により覆われる予め決められた歯にちょうど適合するよりむしろ、完全な一組の歯とうまく適合するように個別化された歯被覆を設計することを可能にするだろう。しかし、計算機読み取り可能な歯データが、個別化された歯被覆により覆われる必要がある歯、すなわち、おそらく一つ以上の隣接歯と一緒に、予め決められた歯のみの歯幾何学的形状を表わすために提供されることも可能である。
【0051】
図2は、被覆7が設計される予め決められた歯3の三次元表示2を示す。この表示は計算機読み取り可能歯データに基づいて作られる。CADプログラムのような画像化及び設計プログラム内の標準ツールは、異なる角度から、回転後、ズームイン、ズームアウト、完全透明化等で見たような三次元表示2を視覚化可能にする。理想的には完全な予め決められた歯3が示されるけれども、予め決められた歯3の一部のみが示されることも可能である。予め決められた歯3は、歯が被覆により覆われるための準備がされていないという意味で準備されていない歯に関する。実質的に歯材料は除去されていない。しかし、本発明の実施態様では、歯3から材料を除去する必要がないことが記載されている。他の実施態様では、歯3の小部分が、例えば研磨により準備されることができる。これは、例えば歯表面の欠陥を除去するためになされることができる。しかし、歯3の前面のような全表面が研磨により準備されることは意図されていない。
【0052】
三次元表示2に基づいて、計算機読み取り可能被覆データは、被覆7の幾何学的形状を決定するために提供される。どのようにこれがなされることができるかの例は図2に概略的に示されている。三次元表示2では、選ばれた歯部4が規定される。選ばれた歯部4に相当する表面を持つ歯3は、被覆7により覆われることになる。選ばれた歯部4に基づいて、被覆7の背面5のためのデータが規定される。選ばれた歯部4に基づいて、被覆7の前面6のためのデータが規定される。三次元画像化及び設計プログラム内で、かかる設計は全く標準的な操作に関することが可能である。背面5のための規定データは選ばれた歯部4を複写することを含むことができる。前面6のための規定データはまた、選ばれた歯部4を(直接または間接に)複写することを含むことができる。
【0053】
選ばれた歯部4はそれ自身、例えば被覆7が設計される予め決められた歯3の部分の三次元表示2の上の線をカーソルにより描くことにより規定されることができる。これに代えて、この線は自動的な端検出により発生されることができる。標準的な方法では、境界を規定するために本質的に閉じられたこの線が選ばれた歯部4を実際に規定することは計算機に対して確認することができる。被覆の背面5のための規定データは、三次元表示2で可視化された選択された歯部4の再現に基づくことができ、おそらく結合材料のための空間を提供するように、選択された歯部4に対して片寄り(A)を持つ。同様に、被覆の前面6のための規定データは、選ばれた歯部4の再現に、または三次元表示2で可視化された背面5のためのデータの再現に基づくことができ、選ばれた歯部4及び/または背面5のためのデータに対して片寄り(A+B,B)を持つ。これらは本質的に標準的な操作である。片寄りBは被覆7の厚さに相当する。
【0054】
被覆7の前面6のためのデータは、選ばれた歯部4の定義及び背面5のためのデータの定義の両方を考慮することにより規定されることも可能であるが、一方で予め決められたプログラムに従って背面5の端と前面6の端の間の連結を可能にし、そこでは被覆7の厚さはその境界で減少する。
【0055】
被覆データを提供することはまた、被覆7の厚さを規定することを含む。これは、上に言及した異なる片寄り(A,A+B,B)を選ぶことにより間接的になされることができるが、少なくとも一つの片寄りを設定しかつ厚さを設定することにより直接なされることができる。
【0056】
被覆7は、少なくとも約0.08mmで、かつ0.02mm未満、0.14mm未満または0.1mm未満の厚さを持つように設計されかつ作られることができる。
【0057】
被覆7の厚さは平均厚さである。種々の部分で被覆7はより薄くまたはより厚くすることができる。例えば、被覆7は、溝またはしわのようなより自然に見える種々の構造を含むことができる。追加的または代替的に、歯被覆7は、被覆7のより自然な見え方のためにまたは例えば摩滅のために人の歯牙の失われた特徴を造り直すために前面6に表面組織を含むことができる。それはまた、被覆7の境界でより薄い。従って、被覆を作るためのデータを提供することは、かかる構造または表面組織データを提供することを含むことができる。表面組織または構造データは、例えばユーザーインターフェースを用いて自動的に提供されるかまたは設計されることができ、そこでは予め規定された及び/またはユーザー規定された構造または表面組織が発生される。
【0058】
さらに、本発明の実施態様では、被覆7またはラミネートは下部構造のない歯科製品であり、すなわち被覆7またはラミネートは、ラミネートまたは被覆を強化するためにいかなる中間下部構造もなしに歯表面上に直接配置される。歯冠またはブリッジのような他の歯科補綴物は、コーピングまたはブリッジ下部構造のような下部構造の上に被覆層を含むことができ、そこでは被覆層は、下部構造またはコーピングの上の幾つかの層に付与され、かつ続いて焼結される。しかし、下部構造の上のかかる被覆は強度問題を被らず、取り扱うために特にこわれやすくない。
【0059】
被覆7の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データの種々の要素を規定する順序は必ずしも前もって述べられていない。言い換えれば、まず被覆7の厚さが規定され、次いで結合材料の配置のための選ばれた歯部4と被覆7の間の隙間、次いで背面5の端と前面6の端の間の連結、最後に被覆の背面5と被覆7の前面を規定することが可能である。また、三次元画像化及び設計プログラムで、一つ以上の厚さ、隙間、背面5の端と前面6の端の間の連結が予め設定される。しかし、設計の大きな自由度を可能にするために、一般的にこれらの規定のそれぞれがある人の操作により、すなわち被覆が設計される予め決められた歯の部分に付与可能な個人の希望及び/または独特な状況に対して最適化された個別化された歯被覆7のための設計に到達するように、三次元画像化プログラムに入力することにより、なお影響を受けることができることが好ましいだろう。
【0060】
個別化された歯被覆7の最終形状の製造のための設計には、標準設計、及び設計のための努力の差を認める注文設計があることができる。データは全て計算機読み取り可能であるので、データまたは画像を標準手段を介して迅速に伝送することにより多数の可能な設計を人に提供することができるかもしれない。その人は、そのとき、どの設計が承認されかつ被覆の製造のための根拠を形成するべきかを示すことができる。
【0061】
個別化された歯被覆7の設計はさらに、被覆データに基づいて計算機読み取り可能湯口データを規定することを含む。図3は、被覆7の三次元表示及び被覆7を鋳造または(射出)成形法により製造するために有用な湯口8を形成可能にする三つの部品8を示す。どのようにこれらの部品が、被覆7が製造される材料のための入口通路を形成し、この材料が、被覆7が形成される空洞に入ることができるかは後で明らかとなるだろう。図3は、被覆7の最終的な三次元表示の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データを提供するための三次元画像化及び設計プログラムを使用して製造されることができるような三次元表示に相当することができる。後で明らかとなるように、図3に示されるような被覆7と三つの部品8の三次元表示はまた、三次元製品の図、すなわち被覆データ及び湯口データに基づいてCAM技術により提供される三次元製品の図を表わすと見ることができる。また、図3は、鋳造及び焼結された製品に相当する三次元製品上の図を与えると見ることができる。被覆7の三次元表示は、そのとき、設計工程の最終製品であることができる。湯口8のために形成された部分は、従来既知の技術により、例えばスライス削り、研磨または磨きにより除去されることができる。被覆7の三次元表示に基づいた被覆7の原型を製造するためのCAM技術はステレオリソグラフィ、選択的レーザー焼結、またはインクジェット印刷のようなラピッドプロトタイピング技術を含むことができる。これに代えて、フライス削りは、原型を提供するためのCAM技術として採用される。かかる三次元製造法は、Solidscape,米国、3Dシステム,米国、Object,イスラエル、またはEnvisiontech,ドイツからのように従来技術で周知である。
【0062】
図3は、湯口に相当する三つの部品8を持つ原型の例を示す。しかし、被覆7を製造するために唯一の湯口8が使用されることもまた可能である。湯口8の位置は、図3に示されたもののいずれとも全く異なることができる。当業者にとっては、湯口8が除去されるときに最終製品の最適製造とそれによる最少影響の間のバランスをとるためにどのように加工環境が湯口8の最適位置を決定するかは経験の問題であるだろう。
【0063】
予め決められた歯のための個別化された歯被覆7の最終形状の設計の後、被覆データに基づいて個別化された歯被覆7を製造するだろう。
【0064】
個別化された歯被覆7を製造することは、入力として計算機読み取り可能被覆データを取ることができるいかなる方法によっても実行されることができる。特に有利な製造工程は、製造される個別化された歯被覆7の三次元形状(すなわちその原型、並びに必要な湯口8のための部品)を上に言及した技術のいずれかを使用することによって被覆データ及び湯口データに基づいて提供することを採用する。それは、対象物の三次元プロトタイプを対象物の計算機模型から作り上げるための種々の技術に関する。
【0065】
図4は、製造される個別化された歯被覆7及び少なくとも一つの湯口の形状が印刷されることができる印刷支持体9を示す。個別化された歯被覆7の多数の異なる形状は、印刷機を多数の印刷支持体9に対して動かして多数の印刷支持体9で終わることにより連続して印刷されることができ、それぞれは、製造される個別化された歯被覆7及び少なくとも一つの湯口8の印刷された形状をワックス状またはアクリル材料でかつ三次元で支持する。
【0066】
図5はかかる印刷工程の結果を示す。個別化された歯被覆10及びそれに連結された湯口8に相当する一つの部品8の形状は各印刷支持体9の上に載る。各印刷支持体は、被覆7の表面の形状に相当する、その背面5のような形状を持つ表面を持つことができる。
【0067】
被覆はまた、WO2005/046502に記載されたようなフライス削り技術を用いて製造されることができ、この文献は本明細書にあらゆる目的のために参考としてその全体を組み込まれる。
【0068】
図6は、印刷支持体9から除去されたときの個別化された歯被覆7及び部品8の原型10の形状を示す。
【0069】
図7は、どのように個別化された歯被覆7の形状が予め決められた歯3に適合するかを概略的に示す。明確化のために、湯口8は図7には示されていない。
【0070】
個別化された歯被覆7はインベストメント鋳造技術を使用して製造されることができる。任意選択的に湯口に相当する一つ以上の部品8を備えた、一般的にまた「型」と呼ばれる個別化された歯被覆7の原型は、いわゆるキュベット中に配置されることができる。原型は、キュベット内に配置されたとき、石こうのようなインベストメント材料により取り囲まれる。この方法では、原型の材料はキュベットから燃焼され、従って被覆7が作られるセラミック材料により被覆7を形成するための空洞が形成される。セラミック材料は、この空洞に湯口8を通して供給され、かつ減圧下かつ高温で空間中に押圧される。これらの工程は従来技術で全て周知であり、かつ圧力、温度及び時間のような工程または焼結パラメーターは使用される材料に依存する。いったん被覆7が希望の形状で形成されたら、脱型が、例えばインベストメント材料を吹き飛ばすことにより行なわれる。図8は、被覆7の一例を示す。湯口からもたらされる部分は、研磨またはフライス削りのような標準的な方法により除去されることができる。最終結果、すなわちセラミック材料の個別化された歯被覆は図9に示される。被覆7はかくしてその最終形状で提供される。
【0071】
上記から分かるように、個別化された歯被覆7が設計される物理的場所と、個別化された歯被覆7の製造が行なわれる物理的場所との完全な分離は必ずしも必要ではない。従って、予め決められた歯3のための個別化された歯被覆7の最終形状を製造する方法は、上に詳述したように、個別化された歯被覆7の最終形状の製造のための設計方法を含むことが同様に可能である。
【0072】
一つより多い個別化された歯被覆7が製造されることも可能である。それぞれの個別化された歯被覆7は人の予め決められた歯のために注文製作されることができ、従って注文製作された被覆がその人のそれぞれの予め決められた歯のために利用可能である。
【0073】
理想的には、もし一組の歯1の一つより多い歯3のための個別化された歯被覆7が製造されかつ付与される必要があるなら、これらの被覆7は複数の個別化された被覆7として一緒に製造されかつ付与されることが好ましく、従って材料、任意選択的に色、及びそれぞれの歯への付与の方法は同じである。その目的のために、これを容易にするために、設計は三次元表示に基づいて、複数の個別化された被覆7及び湯口8の原型の幾何学的形状を決定するための計算機読み取り可能被覆データを提供することを含み、従って複数の個別化された被覆は、原型の幾何学的形状を持つ空洞を単一鋳造または成形することにより製造されることができる。
【0074】
人の予め決められた歯のための個別化された歯被覆7のそれぞれが、それが製造されるとすぐに安全に保管され、かつそれが最後に関係する人の歯の上に配置される地方歯科開業場所に安全に輸送されることができることを確実にするために、個別化された歯被覆7のそれぞれを保持するために保持器12もまた製造される。保持器12はまた、個別化されることができ、かつ計算機読み取り可能歯データに基づいて製造されることができる。個別化された歯保持器12は、そのとき、歯被覆7の製造後に始まりかつ個別化された歯被覆7の予め決められた歯3の上への配置で終わる期間中に個別化された歯被覆を保持するために非常に適しているであろう。
【0075】
個別化された保持器12の製造は、好ましくは、個別化された歯被覆7の背面にぴったりと適合するための形状を与えられている第一部分13の製造を含む。第一部分13は、個別化された歯被覆7の背面の形状に補完的である形状を持つことができる。違いは、結合材料のために設けられた空間のみであることができる。従って、第一部分13は、歯被覆7の実質的に全背面5に接触することができる。さらに、第一部分13は、個別化された歯被覆を受ける予め決められた歯の形状に実質的に相当する形状を持つことができる。図10に示された極めて有利な例では、かかる第一部分13は、被覆7が設計されかつ製造された予め決められた歯の少なくとも歯部分12の模型を含むものとして提供される。
【0076】
かかる模型を製造することは、例えばWO2008/051130に記載されており、それはあらゆる目的のためにその全体を参考として本明細書に組み込まれる。
【0077】
図11aは、かかる模型の正面図を示す。図11bは、模型13に示された歯の一つを覆うことを意図される個別化された歯被覆7の前方部を示す。個別化された歯被覆7は、この実施態様では、前歯の一つを覆う。図11aでは、個別化された歯被覆7の位置は同じ参照番号により示され、太線で描かれている。
【0078】
個別化された被覆7が設計されかつ製造された歯の模型は、個別化された歯被覆7の背面にぴったりと適合する形状を持つ第一部分13を最も好適に提供するだろう。しかし、第一部分13が、被覆7が設計されかつ製造された歯部分を提供するのとは異なる方法で歯被覆7の一方の側とぴったりと適合するための形状を与えられることもまた可能である。第一部分13は、上記したようなラピッドプロトタイピングによるCAM技術によってまたはフライス削りによって製造されることができる。
【0079】
保持器12は、個別化された歯被覆7が第一部分13と第二部分14の間にはさまれることができるように第二部分14を提供する。好ましくは、第二部分14は、個別化された歯被覆7の前面を第二部分14に対して解放可能に結合するために適している。第二部分14は箔として提供されることができる。第二部分14は、個別化された歯被覆7の前面にぴったりと適合するための形状を与えられることができる。追加的に、第二部分は、被覆7が製造される歯に隣接する歯のいずれかにぴったりと適合する形状を持つことができる。これは、被覆が製造される歯に被覆7を付与する道具として第二部分14を使用することを容易にする。
【0080】
第一部分13と第二部分14は、個別化された歯被覆7が第一部分13と第二部分14の間にはさまれるときにこれらが互いに解放可能に固定可能であるように設けられることが好ましい。
【0081】
第二部分14が箔として設けられる例では、第二部分14は、プラスチックから作られた箔を設けることにより適切な形状を与えることができる。このプラスチックは加熱されることができる。次いで個別化された歯被覆7は第一部分13と第二部分14の間にはさまれた後、箔を第一部分13の上に減圧押圧することができる。第一部分13と第二部分14を互いに解放可能に固定することを可能にするために、接着剤が第二部分14に与えられることができる。この接着剤はまた、個別化された歯被覆7の前面を第二部分14に対して解放可能に結合するために適していることができる。しかし、第二部分14はまた、箔の被覆7及び/または第一部分13への静電結合により、個別化された歯被覆の前面に解放可能に結合するために及び/または第一部分13に解放可能に固定するために適するようにされることができる。かかる方法は、従来技術で周知であり、例えば新しい携帯電話の表示器に箔を設けるために使用されることが多い。第二部分14は、図12,13及び16に示されるように透明部品であることができる。解放可能な結合は、例えば減圧結合、静電結合、及び/または接着剤結合フィルムにより与えられることができる。減圧結合は熱成形装置により与えられることができ、そこでは変形可能な素材が予熱され、間に被覆7を持つ第一部分の上に配置され、次いで減圧ポンプを起動することにより変形され、それにより素材は、第一部分13により支持されている被覆7に解放可能に結合する。次いで、変形された素材は、希望の形状に削られて仕上げられる。かかる減圧成形装置は、例えばVacformat U,Vacformat 2000、及びDruformat Scanの商品名の下にDreve,ドイツから入手可能である。静電箔またはフィルム、樹脂系及び光硬化系の両方の接着剤を持つフィルム等の結合フィルムは、例えば3M,米国から入手可能である。
【0082】
保持器12を製造することは、好ましくは、個別化された歯被覆7を予め決められた歯に対して配置するときに第二部分14を手動で保持するためのつかみ保持器15を第二部分14に与えることを含む。かかるつかみ保持器15は、第二部分14の上に接着されることができ、または第二部分が例えばつかみ保持器15の一部を形成する小さなねじ上にねじ込むことを可能にする厚さを持つ場合に可能である機械的取り付けにより設けられることができる。
【0083】
複数の個別化された歯被覆7が予め決められた一組の歯のために製造されることが可能である。複数(P個)の個別化された歯被覆7が図14に示されている。第二部分14は、そのとき、複数(P個)の個別化された歯被覆7のそれぞれの前面が、被覆7が製造される予め決められた一組の歯1における歯の位置関係に相当する固定された位置関係で第二部分14に対して解放可能に結合されることができるように製造される。図16は、第二部分14に対して解放可能に結合されたときの個別化された歯被覆7間のかかる固定された位置関係を示す。
【0084】
多数の予め決められた歯の美感を改善する方法は、まず上に説明された方法で個別化された歯被覆7の製造の後、第一部分13から予め決められた歯の上にこれらの被覆7のそれぞれを配置することを含む。かかる方法は、被覆7を予め決められた歯の上に配置するための道具として第二部分14を使用することを含むことができる。個別化された被覆7を第一部分13から取ることは、第二部分14を第一部分13から持ち上げることにより簡単になされることができ、もし必要なら第二部分14の第一部分13に対する固定をはずすことができる。第二部分14を持ち上げる結果は図16に示されている。複数の個別化された歯被覆は、予め決められた固定された位置関係で第二部分14を保持することにより(この場合、手で)保持される。
【0085】
示されていないけれども、個別化された歯被覆及び個別化された保持器を製造する方法は、結合材料を個別化された歯被覆7に付与することを含むことも可能である。この後、個別化された歯被覆7を第一部分13と第二部分14の間にはさむことができる。個別化された歯被覆7が半透明に作られる場合、着色剤が結合材料に添加されることができる。個別化された歯被覆7の予め決められた歯に対する配置後に、個別化された歯被覆7を予め決められた歯に対して固定するために、結合材料は従来技術で周知の方法で光硬化されることができる。
【0086】
ある実施態様では、歯被覆7は、歯への付与前に、おそらく歯被覆7を関係歯に付与する歯科熟練者への送付前であっても、結合材料で予備処理される。通常の被覆を用いると、結合材料は、典型的には、被覆が付与される歯に付与され、被覆は次いでその歯の上に配置され、結合材料は例えば光硬化によって硬化される。本発明の実施態様によれば、結合材料は、歯被覆7を結合するために使用される全結合材料の例えば25〜75%のように少なくとも部分的に歯被覆7に付与される。予備処理は、歯被覆7の製造設備でまたは歯科技術者により実行されることができる。歯に面する背面側のような歯被覆7の少なくとも一方の側の予備処理は、次の工程の少なくとも一つを含むことができる:歯被覆の浄化;化学的及び/または機械的連結表面を準備するための腐食ゲルの付与;輸送保護としてシランによる封止のために準備された腐食表面を提供する;シラン処理された表面を得るためのシラン処理工程を付与する;シラン処理された表面の上への結合材料の少なくとも一層の付与;歯頸及び/または切開着色のような着色材料の前もっての、結合材料の上への、または結合材に混合しての付与;結合材料を歯被覆7に付与する;及び歯科熟練者への送付のために結合材料を光硬化する。
【0087】
実施態様はまた、歯被覆を受ける歯科熟練者による予備処理を含むことができる。熟練者による予備処理は、次の工程の少なくとも一つを含むことができる:歯の非準備(すなわち実質的に非研磨前面)表面を例えばイソプロパノールによって浄化する;腐食ゲル、例えばフッ化物腐食ゲル、フッ化水素腐食ゲル等による歯表面の腐食;腐食された歯表面のシラン処理;及びもし25〜75%が歯被覆7に付与されたなら25〜75%のような結合材料の残りのかつ最終的に歯表面の上へ合計100%になる付与。歯表面へ付与された結合材料は透明または白色のような無彩色を持つことができ、それにより被覆に添加された色により提供された外観は実質的に影響されない。
【0088】
本発明の実施態様はまた、被覆手順のために次の工程の少なくとも一つを含むことができる:硬化された結合材料を予備処理された被覆7に提供する;結合材料を含む歯表面の上に歯被覆を付与する;被覆7を調整する;及び結合材料を持つ表面間の連結を例えば光硬化によって硬化する。
【0089】
予備処理手順の実施態様を使用すると、被覆7は、予備処理された結合材料を含むことができる。予備処理された結合材料は、光硬化可能な歯科結合剤のような少なくとも部分的に硬化した結合材料を含むことができる。予備処理された結合材料は、被覆7を着色する少なくとも一つの着色材料を含むことができる。従って、被覆7の厚さとその半透明との組み合わせのため、結合材料の色は目に見えるであろう。従って、別個の着色層の付与は必要ない。
【0090】
結合材料は、CAM法により、例えばインクジェット技術により付与されることができる。そのとき、CADユーザーインターフェースは、結合材料の異なる層及び/または結合材料の異なる色相を持つ歯被覆の異なる領域を設計する手段を提供することができる。例えば、被覆7が付与される前歯または切歯のような歯のタイプに基づいて自動的に示唆が発生されることができる。これに代えて、ユーザーは、カーソルによる指示によるように閉曲線を構成する線により規定された領域を示す。線の境界内で結合材料の特別な色は規定され、続いて付与される。さらに、歯の解剖学的構造に相当する異なる領域を持つ模様は、個々の歯被覆の三次元表示の上に投影されることができる。そのとき、ユーザーは特別な領域のために特別な色を選ぶことができる。結合材料の付与は、WO2006/036114に記載された技術を使用して提供されることができる。この文献は、金属及び/またはセラミック粉末を付与するためのあらゆる目的のために本明細書にその全体を参考として組み込まれるが、結合材料の付与を開示しない。結合材料はまた、上記のように手動により付与されることができる。
【0091】
異なる色相または色を持つ種々の結合材料は、Kuray Dental,米国からのPanavia F及びPanavia 21、lviclar Vivadent,リヒテンシュタインからのVariolinkまたはSyntac Heliobond、3M,米国からのRelyX ARC、及び/またはDentalcompare,米国からのNX3 Nexusのように商業的に入手可能である。
【0092】
個別化された歯被覆7を予め決められた歯に付与する前にルーチン法が歯科熟練者により代替的に実行されることができる。被覆7により覆われる歯の表面は、清浄表面を提供するために腐食されることができる。腐食後、歯科熟練者により実行されるルーチン法及び標準法の一部としてシラン処理層を付与することができる。シラン処理層は腐食表面に対して封止を提供する。セラミック材料はLi−二ケイ酸塩ガラスセラミックのようなガラスセラミック材料であることができる。Li−二ケイ酸塩ガラスセラミックは高い強度を持ち、それは、こわれやすい製品を取り扱うための改善された可能性を提供する。かかるガラスセラミックは、例えばlvoclar Vivadent,リヒテンシュタインから商品名IPS e.maxの下に入手可能である。これに代えて、セラミック材料は、マイクロ波焼結された酸化アルミニウムセラミックを含むことができる。
【0093】
ある実施態様では、被覆7は、均一組成を持つガラスセラミックの単一層を含む。任意選択的に、非セラミック着色及び/または釉掛け層が被覆7の少なくとも一方の側に付加されることができる。
【0094】
本発明は、上に述べた実施態様に限定されない。多くの修正及び異なる実施態様が可能である。これらのそれぞれは、添付請求項により規定されたように本発明の枠内に入ると理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)を保持するための保持器(12)を製造する方法であって、少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)のそれぞれが人の予め決められた歯のために注文製作されるものにおいて、
− 予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆(7)の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な被覆データに基づいて、個別化された歯被覆(7)を製造すること;及び
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆(7)を保持するためのかつ前記予め決められた歯の少なくとも一部の少なくとも一部分の形状に実質的に対応する形状を持つ少なくとも一つの表面を持つ個別化された保持器(12)を製造すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
個別化された歯被覆(7)がその最終形状で製造されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個別化された保持器(12)の第一部分(13)を製造することを含み、さらに第一部分(13)が、個別化された歯被覆(7)の背面にぴったりと適合するための形状を与えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第一部分(13)と第二部分(14)の間に個別化された歯被覆(7)をはさみ、個別化された歯被覆(7)の前面を第二部分(14)に対して解放可能に結合するための個別化された保持器(12)の第二部分(14)を製造することをさらに含み、第二部分(14)が任意選択的に透明であり、かつ/または個別化された歯被覆(7)の予め決められた歯に対する配置時に第二部分(14)を手動で保持するためのつかみ保持器(15)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
個別化された歯被覆(7)が第一及び第二部分(13,14)間にはさまれるときに第一及び第二部分(13,14)が互いに対して解放可能に固定可能であるように第一及び第二部分(13,14)を準備することを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第一部分(13)が予め決められた歯の少なくとも一部の模型を示すように第一部分(13)を製造することを含み、この部分が個別化された歯被覆(7)の背面の形状に補完的である形状を持つことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
個別化された歯被覆(7)の前面にぴったりと適合するための形状を持つ第二部分(14)を準備することを含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第二部分を箔として設けることを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
− プラスチックから作られた箔を準備すること;
− このプラスチックを加熱すること;
− 個別化された歯被覆(7)を第一部分(13)と箔の間にはさむこと;及び
− この箔を第一部分(13)上に減圧押圧すること
を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
個別化された歯被覆(7)の前面を第二部分(14)に対して解放可能に結合するために接着剤を第二部分(14)に設けることを含むことを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
− 予め決められた一組の歯(1)のための複数の個別化された歯被覆(7)を製造すること;及び
− 複数の個別化された歯被覆(7)のそれぞれの前面が、被覆(7)が製造される予め決められた一組の歯(1)の中の歯の位置関係に対応する固定された位置関係で第二部分(14)に対して解放可能に結合されることができるように第二部分(14)を製造すること
を含むことを特徴とする請求項4〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
− 着色された結合材料のような結合材料を個別化された歯被覆(7)に付与すること;及び
− 個別化された歯被覆(7)を第一部分(13)と第二部分(14)の間にはさむこと
を含むことを特徴とする請求項4〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの歯被覆(7)のそれぞれが、ガラスセラミック、例えばLi−二ケイ酸塩ガラスセラミック、またはマイクロ波焼結酸化アルミニウムセラミックのようなセラミックから作られることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つの歯被覆(7)のそれぞれが少なくとも約0.08mmであり、かつ0.2mm未満、0.14mm未満、または0.1mm未満の厚さを持つことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法において、この方法が、請求項4〜14のいずれか一つの方法により少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)を製造することを含み、さらにこの方法が、第一部分(13)から被覆(7)を予め決められた歯の上に配置すること、及び任意選択的に第二部分(14)を、被覆(7)を予め決められた歯の上に配置するための道具として使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)、及び少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)を保持するための保持器(12)を製造する方法であって、少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)のそれぞれが人の予め決められた歯のために注文製作されるものにおいて、
− 予め決められた歯の少なくとも一部の歯幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な歯データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆(7)の幾何学的形状を表わす計算機読み取り可能な被覆データを準備すること;
− 計算機読み取り可能な被覆データに基づいて、個別化された歯被覆(7)を製造すること;及び
− 計算機読み取り可能な歯データに基づいて、個別化された歯被覆(7)を保持するためのかつ前記予め決められた歯の少なくとも一部の少なくとも一部分の形状に実質的に対応する形状を持つ少なくとも一つの表面を持つ個別化された保持器(12)を製造すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
個別化された歯被覆(7)がその最終形状で製造されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個別化された保持器(12)の第一部分(13)を製造することを含み、さらに第一部分(13)が、個別化された歯被覆(7)の背面にぴったりと適合するための形状を与えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第一部分(13)と第二部分(14)の間に個別化された歯被覆(7)をはさみ、個別化された歯被覆(7)の前面を第二部分(14)に対して解放可能に結合するための個別化された保持器(12)の第二部分(14)を製造することをさらに含み、第二部分(14)が任意選択的に透明であり、かつ/または個別化された歯被覆(7)の予め決められた歯に対する配置時に第二部分(14)を手動で保持するためのつかみ保持器(15)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
個別化された歯被覆(7)が第一及び第二部分(13,14)間にはさまれるときに第一及び第二部分(13,14)が互いに対して解放可能に固定可能であるように第一及び第二部分(13,14)を準備することを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第一部分(13)が予め決められた歯の少なくとも一部の模型を示すように第一部分(13)を製造することを含み、この部分が個別化された歯被覆(7)の背面の形状に補完的である形状を持つことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
個別化された歯被覆(7)の前面にぴったりと適合するための形状を持つ第二部分(14)を準備することを含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第二部分を箔として設けることを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
− プラスチックから作られた箔を準備すること;
− このプラスチックを加熱すること;
− 個別化された歯被覆(7)を第一部分(13)と箔の間にはさむこと;及び
− この箔を第一部分(13)上に減圧押圧すること
を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
個別化された歯被覆(7)の前面を第二部分(14)に対して解放可能に結合するために接着剤を第二部分(14)に設けることを含むことを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
− 予め決められた一組の歯(1)のための複数の個別化された歯被覆(7)を製造すること;及び
− 複数の個別化された歯被覆(7)のそれぞれの前面が、被覆(7)が製造される予め決められた一組の歯(1)の中の歯の位置関係に対応する固定された位置関係で第二部分(14)に対して解放可能に結合されることができるように第二部分(14)を製造すること
を含むことを特徴とする請求項4〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
− 着色された結合材料のような結合材料を個別化された歯被覆(7)に付与すること;及び
− 個別化された歯被覆(7)を第一部分(13)と第二部分(14)の間にはさむこと
を含むことを特徴とする請求項4〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの歯被覆(7)のそれぞれが、ガラスセラミック、例えばLi−二ケイ酸塩ガラスセラミック、またはマイクロ波焼結酸化アルミニウムセラミックのようなセラミックから作られることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つの歯被覆(7)のそれぞれが少なくとも約0.08mmであり、かつ0.2mm未満、0.14mm未満、または0.1mm未満の厚さを持つことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの予め決められた歯の美感を改善する方法において、この方法が、請求項4〜14のいずれか一つの方法により少なくとも一つの個別化された歯被覆(7)を製造することを含み、さらにこの方法が、第一部分(13)から被覆(7)を予め決められた歯の上に配置すること、及び任意選択的に第二部分(14)を、被覆(7)を予め決められた歯の上に配置するための道具として使用することを含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−531989(P2012−531989A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518826(P2012−518826)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004171
【国際公開番号】WO2011/003612
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506260386)ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー (42)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004171
【国際公開番号】WO2011/003612
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506260386)ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー (42)
【Fターム(参考)】
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