説明

倒立型揮散装置

【課題】外観装飾性を向上させるように構成した倒立型揮散装置を提供する。
【解決手段】倒立型揮散装置10を構成するボトル11の倒立状態での首部28の上部に装飾用シート1を配設する。装飾用シート1の外周部には等間隔で切欠部2が形成され、中心部には開口部4が形成されている。倒立型揮散装置10を使用する場合は、ボトル11に収容されている液体製剤13が各切欠部2及び開口部4を流通して下容器12に設けられた揮散体に供給され、揮散用開口部15から芳香等を発散する。そして、ボトル11を介して各種模様5,6を目視することができ、外観装飾性が向上する。製造工程でボトル11に液体製剤13を充填する場合は、装飾用シート1を巻いてボトル11内に挿入し、ボトル11内で自己の弾性により広がるようにする。この状態で液体製剤13を充填すると、空気が前記切欠部2、開口部4から抜け、充填時における気泡による液体製剤13の溢れ出しを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製剤を収容し、当該液体製剤に含まれた芳香剤、消臭剤、等の有効成分を室内等の空間に安定的且つ均一に十分量揮散および拡散させることができる倒立型揮散装置に関し、更に詳しくは倒立型揮散装置の美観を向上させるための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、液体製剤を収容したボトルと、ボトルの下部に組み付けられた下容器と、ボトルの下部と下容器との間に挟まれるようにして下容器内に収納された揮散体と、揮散体の下方に設けられた液溜まり室と、を備えた倒立型揮散装置が開示されている。
なお、前記揮散体は、液溜まり室に溜まった液体製剤を揮散体へ戻すための吸液部を有している。
【0003】
前記構成の倒立型揮散装置によれば、ボトルに収容された液体製剤が揮散体に供給され、揮散体から周囲に薬剤が揮散される。従って、液体製剤が芳香剤であれば香り等を楽しむことができ、液体製剤が防虫剤であれば防虫効果を得ることができる。
【0004】
この種の従来の倒立型揮散装置では、ボトルに色素やラメを混ぜたり、ラベルやシールを貼るなどして装飾性を持たせることができ、需要者がボトルの表面に付与された模様を視認することで、また光の反射により、美的な感覚を楽しむことができる。
【0005】
また、下記特許文献2には、面白みとインテリア性を与えるために、ボトルに収容された液体製剤に装飾体を浮かべた倒立型揮散装置が開示されている。
【0006】
このように従来から倒立型揮散装置においては、芳香剤、消臭剤等を揮散、拡散させる機能に加えて、製品価値を高めるために、面白み、インテリア性を考慮して装飾性を持たせる工夫がなされている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−95269号公報
【特許文献2】特開2006−280907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、需要者の装飾性に対する要望は多様化しており、倒立型揮散装置においても、従来よりも優れた装飾性を持った製品の提供が望まれている。
【0009】
そこで、正立型揮散装置においてみられるボトル内の液体製剤中に装飾用シートを配置して装飾性を持たせた構成としようとすると、ボトルと装飾用シートの形状の関係によっては、製造時において、液体製剤を充填するときに装飾用シートの下面とボトル内壁面との間に空気が一時的に溜まることがある。そして、液体製剤の充填を続けている時に、装飾用シートの下側に溜まっていた空気が一気に抜けて充填口から流入する液体製剤とぶつかり、液体製剤が溢れ出ることがある。
【0010】
また、倒立型揮散装置では倒立状態のボトルの首部から揮散体に液体製剤が供給されることから、装飾用シートがボトルの首部の上に平面状に配置されていると、首部における液体製剤の流通路が装飾用シートにより塞がれてしまい、揮散体に液体製剤が充分に供給されなくなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、従来にはない新たな構成により装飾性を向上させることができ、しかも液体製剤の充填や揮散体への供給に支障のない倒立型揮散装置を提供することにある。
【0012】
本発明の前記目的は、下記構成により達成される。
(1) 液体製剤の流入口となる首部を有し前記液体製剤を収容した透明のボトルと、
倒立状態の前記ボトルの下部に組み付けられた下容器と、
倒立状態の前記ボトルの下部と前記下容器との間に挟まれるようにして前記下容器に収容され、前記液体製剤が供給される揮散体と、
を備えた倒立型揮散装置であって、
倒立状態の前記ボトル内部の前記首部の上に、装飾模様を有するとともに前記液体製剤の流通路となる開口部を中央に有し、かつ外周部に切欠部を有する装飾用シートを配設したことを特徴とする倒立型揮散装置。
【0013】
(2) 前記装飾用シートは、可撓性を有することを特徴とする前記(1)に記載の倒立型揮散装置。
【0014】
(3) 前記装飾用シートの前記開口は、前記揮散体へ前記液体製剤を供給する通路として機能することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の倒立型揮散装置。
【0015】
前記(1)の構成によれば、ボトル内に装飾用シートを配設することにより、装飾用シートの模様をボトル及び液体製剤を介して視認することができるので、倒立型揮散装置の装飾性が向上する。また、前記ボトルに収容した液体製剤は、前記装飾用シートに形成した流通路となる開口部を流れて前記揮散体に供給されるので、装飾用シートが揮散体への液体製剤の供給の障害とならず、前記揮散体に薬剤を充分に供給して良好に揮散させることができる。
なお、本発明における透明なボトルは、半透明のものであってもよく、内部を視認できるものであればよい。
【0016】
倒立型揮散装置の製造工程には、前記ボトルに前記液体製剤を供給する工程があるが、前記(1)に記載の倒立型揮散装置によれば、この供給に先立って前記ボトル内に予め前記装飾用シートを挿入して広げておいた場合、前記液体製剤の供給にともない前記流通路となる開口部及び外周部の切欠部を通って液体製剤が充分に流れ、かつ空気が円滑に抜け、気泡による前記液体製剤の溢れを防止できる。
【0017】
前記(2)の構成によれば、装飾用シートが可撓性を有するので、装飾用シートを丸めてボトルの首部から容易に挿入することができる。
【0018】
前記(3)の構成によれば、前記貯留容器に収容した液体製剤は、前記装飾用シートに形成した開口を流通して前記揮散体に充分に供給されるので、前記揮散体に薬剤を充分に供給して揮散させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、本発明によれば、倒立状態のボトル内部の首部の上に、装飾模様を有するとともに前記液体製剤の流通路を有する装飾用シートを配設したことにより、装飾用シートの模様を液体製剤及びボトルを介して視認することができるので、倒立型揮散装置の装飾性が向上する。装飾用シートの模様は、ボトル内の液体製剤により拡大されてボトル表面に現れ、しかも液体製剤の減少に伴うボトル内の量によってもボトル表面に現れる模様が変化するので、倒立型揮散装置の装飾性が格段に向上する。
【0020】
また、装飾用シートは液体製剤の流通路となる開口部を有するので、製造工程における液体製剤の充填時には、ボトルへの液体製剤の供給を確実且つ円滑に行うことができる。すなわち、倒立型揮散装置の製造工程における、ボトルに液体製剤を供給する工程で、ボトル内に予め装飾用シートを巻いた状態で挿入して広げておいた場合、液体製剤の供給にともない開口部や切欠部から空気が抜け、液体製剤と気泡とのぶつかり合いによる液体製剤の溢れを防止でき、生産効率の向上を図ることができる。また、液体製剤が流通路となる開口部を流通して揮散体に充分に供給されるので、揮散体に薬剤を充分に供給して良好に揮散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明に係る倒立型揮散装置の一実施形態を示す外観斜視図、図2は倒立型揮散装置の縦断面図、図3は装飾用シートの平面図、図4は倒立型揮散装置に用いられる揮散体の単体平面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態である倒立型揮散装置10は、ボトル11と、下容器12とを備え、前記下容器12に台座14が一体に設けられた構成になっている。なお、ボトル11と下容器12とは、組み付けられた状態では、全体として略球体状に形成されている。
【0024】
ボトル11は、倒立型揮散装置10の上半部を形成しており、内部に液体製剤13が収容され、倒立状態で下容器12に組み付けられている。
【0025】
そして、図2に示すように、ボトル11の内部であって首部28の上に、平面形状が略円形に形成された装飾用シート1が配設されている。この配設位置は、ボトル11内に収容されている液体製剤13が、吸液芯19を介して揮散体22に至る流通経路上にある。
なお、装飾用シート1については、後に図3を参照して詳細に説明する。
【0026】
ボトル11は透明又は半透明に形成され、内部の装飾用シート1を視認することができるようになっている。ボトル11を形成する材料としては、液体製剤13が漏れないものであれば、プラスチック、セラミック、ガラス、等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ボトル11を形成する際には、上記材料と共に、色素、紫外線吸収剤(遮断材)を混ぜたり、模様を付したり、蓄光材、光散乱材、ラメ等を混ぜたりしてもよい。
【0027】
液体製剤13が含有する有効成分(芳香成分、消臭成分等を含む)としては、例えば、緑茶抽出エキス(例えば、カテキン、タンニン、ポリフェノール等)、グレープフルーツエキス、柿抽出エキス、シソ抽出エキス、マッシュルームエキス、竹抽出エキス、シャンピニオンエキス、納豆抽出エキス、ツバキ、バラ、キク、マツ、スギ、オオバコ、等から得られるエキス、除虫菊エキス等の植物抽出エキス、ハッカオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ローズマリーオイル、ベルガモットオイル、ボアドローズ、薄荷オイル、リセアキュベバ、マジョラムオイル、スペアミントオイル、α−ピネン、青葉アルコール、青葉アルデヒド、ゲラニオール、サビネン、リナロール、テルピネオール、ラズベリーケトン、クミンアルデヒド、ヒノキチオール、シトロネロール、シトロネラール、1,8−シネオール、ボルネオール、α−カジオール、L−メントール、チモール、シトラール、バニリン、ベンズアルデヒド、安息香酸、カンファー、リナリルアセテート、イグサ、ヒノキ、シトロネラ、シトラール、レモン、レモングラス、オレンジ等の植物精油、これらを含む消臭剤(例えば、商品名「スーパーピュリエール」(松下電工社製)、商品名「フレッシュシライマツ」(白井松新薬社製)、商品名「スメラル」(環境科学開発社製)、商品名「パンシル」(リリース科学社製))、この他、合成香料、調合香料、メタクリル酸ラウリル、メチル化サイクロデキストリン等が挙げられる。また、液体製剤13にはフィトンチッドを用いることもできる。このフィトンチッドとしては次の各種樹木の葉、花、根、材より得られるものが挙げられる。例えば、ネズコ、ヒノキ、ニオイヒバ、アスナロ、チャボヒバ、ハイビャクシン、サワラ、ヒノキアスナロ、ネズミサシ、カイヅカイブキ、オキナワハイネズ、エンピツジャクシン等のヒノキ科、トドマツ、エゾマツ、シラベ、ハイマツ、アカエゾマツ、トウヒ、モミ、ツガ、ストローブマツ、アオトウヒ、ヒマラヤスギ、カラマツ、ダイオウショウ、イヌカラマツ、アカマツ等のマツ科、イチョウ等のイチョウ科、イヌマキ等のイヌマキ科、スギ、コウヤマキ、コウヨウザン等のスギ科、カヤ、キャラボク、イチイ等のイチイ科、クスノキ、タブノキ、ヤブニッケイ、シロダモ、シロモジ等のクスノキ科、ノリウツギ等のユキノシタ科、ミヤマシキミ、サンショウ等のミカン科、シキミ等のシキミ科、アセビ等のツツジ科、クヌギ、シラカシ、スダジイ等のブナ科、等が挙げられる。さらに、これらの葉油、材油である、4−テルピネオール、α−ピネン、リモネン、サビネン、γ−テルピネン、エレモール、α−テルピニルアセテート、cis−ツヨン、フェンコン、ボルニルアセテート、カンフェン、β−フェランドレン、ゲラニルアセテート、ゲルマクレンD、β−エレメン、(+)−カンファー、カリオフィレン、1,8−シネオール、α−テルピネオール、δ−カジネン、β−オイデスモール、α−ムロレン、クリプトメリオール、クリプトメリジオール、テルピネオール、δ−カジノール、T−ムーロロール、ツヨプセン、セドロール、ウィドロール、カルバクロール、ヒノキチオール、サフロール、リナロール、セドレン、フィロクダデン、α−カジネン、フェンケン、ボルネオール、ネズコン、β−ピネン、ミルセン、ツヤ酸メチルエステル、ツヤ酸、α−ツヤプリシン、ゲルマクレン等が挙げられる。そして、上記有効成分は、所望の効果を得るために1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その具体的な効果としては、芳香、消臭、除菌、抗菌、防カビ、防腐、殺菌、殺虫、殺卵、産卵阻害、虫の追い出し、精神安定、鎮痛、清涼、抗ヒスタミン作用、抗アレルギー症、抗耳鼻咽喉諸症、抗睡眠時無呼吸症候群、眠気覚まし、ダイエット等が挙げられ、有効成分は上記した効果を複数兼ね備えていることもある。
【0028】
液体製剤13中の有効成分の含有量は、液体製剤13の全重量に対して、例えば0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。液体製剤13は、その他、添加剤として、硬化油、グリセリンまたはその誘導体、脂肪酸またはその誘導体、アルコール、多価アルコールまたはこれらの誘導体、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、等)、色素(例えば、タール色素、ベンガラ色素、天然色素、等)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、有機窒素硫黄ハロゲン系化合物、PCMX、TBZ、等)、消泡剤(例えば、シリコーン樹脂、等)等を含有することもできる。これらその他の添加剤の液体製剤13中での含有量は、例えば10重量%以下である。液体製剤13は、更に、キレート剤、粘度調整剤、比重調整剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、等を含有してもよい。液体製剤13は、上記各成分を、水、アルコール、有機溶媒、等を用いて適宜調整することができる。更に、液体製剤13は、必要に応じて、防虫成分、殺虫成分、忌避成分、殺菌成分(抗菌成分)、等を含有してもよい。
【0029】
(液体製剤13の処方例)
有効成分 0.01〜10重量%(好ましくは0.1〜5重量%)
界面活性剤 0.1〜20重量%(好ましくは0.5〜10重量%)
防腐剤 0〜1重量%(好ましくは0〜0.5重量%)
消泡剤 0〜1重量%(好ましくは0〜0.1重量%)
溶剤 適量(好ましくはエタノール20〜40%含有水溶液)
合計 100重量%
【0030】
尚、上記の処方例中において、好ましいとして記載した範囲で調製されたものは、消防法における危険物適用除外の対象とすることができる。さらに、溶剤中のエタノール含量を減らすなどして、引火点を61℃以上とすることで海上輸送上の引火性液体危険物に該当しないものにもでき、保管上、輸送上においてメリットを得ることができる。
なお前記の各成分は、本明細書に記載のものから選択して用いられる。
【0031】
下容器12は、倒立型揮散装置10の下半部を形成している。下容器12は、その下端部に形成された台座14によって支持されるように構成されている。下容器12の側部の略全周にわたって、複数の揮散用開口部15が形成されている。
【0032】
図2に示すように、ボトル11は、下端部寄りの外周部に、下容器12に形成された係止突起17に嵌め付けられる係合部16が形成されている。また、ボトル11の首部28の下端部には、開口部18が形成されており、この開口部18は、吸液芯19を装着した中栓20によって閉塞されている。尚、ボトル11の下端部には、倒立型揮散装置10の使用前に吸液芯19を密封するために、図2中に仮想線で示されるキャップ21が螺合される。中栓20には、各種の材質を用いることができる。例えば、金属、プラスチック等である。金属を用いる場合はパッキン等を用いて、漏れを防ぐ必要がある。また、プラスチック製であれば、どのような樹脂であってもよく、経済性、使用性から考えて、ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、の単体またはこれらの混合物であっても良い。また、混合割合は任意である。また、生産性を高める為、必要に応じて可塑剤を添加してもよい。
【0033】
吸液芯19は液体製剤13を吸液して揮散体22に供給するための吸液部材である。なお、吸液芯19は、下容器12に過剰に溜まった液体製剤13をボトル11内に戻す働きを兼ねるものである。吸液芯19を形成する材料としては、無機材料および有機材料のいずれでもよいが、好ましくは樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)、アクリル樹脂(以下、PAともいう。)、ポリプロピレン、ポリエチレンの1種あるいは2種以上を挙げることができる。特に、吸液芯19としては、気液の交換ができる特性を有するものがよい。ここで、気液の交換ができる特性を有する吸液芯とは、ボトル11内の液体製剤13が吸液芯内部に浸透してボトル11外部に排出されるとともに、ボトル11外部から空気等の気体が吸液芯内部に浸透してボトル11内部で吸液芯外部に排出される特性を有する吸液芯のことを意味する。気液の交換ができる特性を有する吸液芯は、多孔性材料であることが好ましく、例えば、PETまたはPAを用いた多孔性材料であることが好ましい。また、気液の交換ができる特性を有する吸液芯の空隙率、断面の大きさ、等は、ボトル11内部の液体製剤13の量、液体製剤13の粘度、等の諸条件により適宜設定することが好ましい。気液の交換ができる特性を有する吸液芯を吸液芯19として用いる場合は、その吸液芯19が空隙率20%以上を有することが好ましく、より好ましくは空隙率20〜80%、更に好ましくは空隙率30〜80%を有することが好ましい。なお、吸液芯19の芯径は、2〜15mmで、特に4〜12mmが好ましい。また、吸液芯19の長さは、10〜30mmで、特に10〜20mmが好ましい。
【0034】
下容器12には、吸液芯19に対向する位置に揮散体22が組み付けられており、揮散体22の下方に液溜り室23が形成されている。
【0035】
図4に示すように、揮散体22は、基部24と、揮散部25,25,25,25と、吸液部26と、を一体成形、即ち、同一材料で一体的に形成したものである。揮散体22は、ボトル11の下端部(即ち、吸液芯19)と下容器12との間に挟まれるように下容器12に収納され、吸液芯19を介してボトル11から液体製剤13の供給を受ける。
【0036】
基部24は、四角形の板形状に形成されており、その上面に吸液芯19の下端面が面接触する。吸液芯19が上面に接触することにより、吸液芯19を通じて液体製剤13が移行され、液体製剤13を揮散部25,25,25,25から揮散させる。
【0037】
揮散部25,25,25,25は、基部24の4個の端縁から斜め上方に向け、揮散用開口部15の近傍まで延長する。
【0038】
吸液部26は、基部24における隣り合う2個の端縁の間において、予め定められた幅寸法を有するように切られ、基部24の下面から液溜り室23に向けて突出するように折り曲げられている。吸液部26は、液溜り室23に収容された液体製剤13を揮散体22に戻す機能を有する。
【0039】
揮散体22としては、液体製剤13を保持でき且つ液体製剤13の有効成分を揮散させることができるものであればいずれの材質のものでも使用でき、具体的には、樹脂、パルプ、等といった有機材料、ガラス繊維、ガラス粉、等といった無機材料、等からなる多孔性材料を用いることができる。特に好ましい揮散体22の材料としては、パルプ、不織布、等が挙げられる。また、揮散体22は、複数の材料からなっていてもよい。例えば、揮散体22は、パルプを主原料としバインダーで接着させたものであって、表面の強度および保形性の向上のために表裏面にティッシュ状のパルプ材、不織布、等を張った構成とすることが好ましい。また、揮散体22に予め所定量の液体製剤13を保持させておくことで、使用開始時に開封と同時に、保持された液体製剤13の有効成分が揮散する効果を得られるようにしてもよい。揮散体22の厚みは、2〜12mmが好ましく、特に5〜10mmがより好ましい。また、揮散体22には、緑茶粉や活性炭粉、コーヒー豆粉等の消臭機能や抗菌機能を有する成分を混合、付着させたものを使用してもよい。さらに、有効成分や添加剤を所望の担体に含有、保持させた受容体(可溶性や難溶性)を揮散体22に保持させ、供給された液体製剤13により受容体を徐々に溶解させるようにしてもよい。なお、揮散体22には、吸液能が大きな、親水性及び親油性の少なくとも一方を有するポリマー粉、ポリマー繊維等を使用してもよい。この場合、本発明を達成できる範囲で液溜り室23を最小化又は省略化することができる。
【0040】
液溜り室23は、有底であって上部が開放されており、開放された上部に揮散体22が組み付けられている。液溜り室23は、揮散体22にボトル11からの液体製剤13が染み込み、揮散体22が飽和状態になってその液保持能力を超えたときに、その越えた分の量の液体製剤13を一旦収容する機能を有する。それ故、吸液部26の先端部は、液溜り室23に溜まった液体製剤13を全て無駄なく吸液するために、液溜り室23の底板27に当接するように配置されることが好ましい。
【0041】
図4に示すように、揮散体22は、基部24の4個の端縁から斜め上方に向けて突出した揮散部25,25,25,25が四枚の花びら状に形成されている。揮散体22は、例えば四角形の板状材料に切り込みを入れるだけで、基部24と、揮散部25,25,25,25と、吸液部26と、が形成される。そのため、吸液部26は、揮散体22を製造するときに同時に作製できるので、生産性の向上を図ることができる。また、吸液部26は、基部24と一体成形されているため、液溜り室23に収容されている液体製剤13を効率良く揮散体22に戻すことができる。
【0042】
このような倒立型揮散装置10では、ボトル11に蓄えられた液体製剤13が、吸液芯19に含浸され、次いで揮散体22に含浸されることにより、ボトル11から定量的に出液される。そして、揮散体22の揮散部25,25,25,25から、揮散用開口部15を通じて、液体製剤13の有効成分を含んだ空気が外部に拡散される。
【0043】
次に、図3を参照して前記装飾用シート1について説明する。
装飾用シート1は、合成樹脂(PET)を薄いシート状に成形したものである。装飾用シート1は、平面形状略円形に形成したものであるが、本実施形態では72°間隔で周縁に浅い切欠部2を形成することにより、外周部に5箇所の山部(切り欠いていない部分)3と5箇所の切欠部2とが交互に形成された形状になっている。切欠部2はシート1の外周部に均等に設けるのがよく、ボトル11内の所定位置に配設しやすく、空気が溜まりにくく、抜けやすいので好ましい。特に、切欠部2は装飾用シート1が外観上、略円形となるように4〜8箇所程度を均等に配するのがよい。
【0044】
なお、装飾用シート1の寸法は、これを適用する倒立型揮散装置10の大きさや形状に合わせて設定されるものであるが、本実施形態では厚みが約0.2mm、直径が80mm、切り欠き量が3mm、切欠部2の円弧の曲率半径は100mmに設定されている。切欠量は、1〜5mm程度がよく、狭すぎると流通路が不十分となり、広すぎるとボトル11内で不安定となることもあるので好ましくない。
【0045】
また、装飾用シート1の中心部には、直径5mmの開口部4が形成されている。この開口部4と、前記切欠部2とは、装飾用シート1を図1及び図2に示すように前記倒立型揮散装置11内に配設した場合、前記液体製剤13の流通路として作用するとともに、製造工程にあっては空気溜まりを減少させるという作用を有する。
【0046】
装飾用シート1の一側面には、図3に示すように、大小の円形の模様5や星型の模様6が印刷されている。各模様5,6は任意の色に着色されている。そして、各模様5,6を印刷した部分以外は、透明になっている。
【0047】
次に、前記装飾用シート1の作用を説明する。
図7に示すように、ボトル11に形成した開口部18から装飾用シート1を筒状に巻いて開口部18内に挿入した後に手指を離すと、装飾用シート1は自己の弾性により展開しながらボトル11内に落下し、図7に示したように斜めの位置で停止することがある。
【0048】
一方、ボトル11には、製造工程において開口部18から一定量の液体製剤13が自動的に充填される。図7に示した状態で液体製剤13を供給していると、装飾用シート1の下面とボトル11との間に空気が溜まることがあり、溜まっていた空気が一気に気泡となって上方に、即ち開口部18に向けて上昇するようになる。
【0049】
このため、開口部18において充填中の液体製剤と、上昇してくる気泡とがぶつかり合い、液体製剤13が溢れたようになってこぼれてしまうことがある。この現象が発生すると、ボトル11内に一定量の液体製剤13を充填できなくなるうえに、こぼれた液体製剤13が無駄になってしまうとともに周囲が汚れるという問題がある。
【0050】
しかし、装飾用シート1には5箇所の切欠部2が形成されているので、装飾用シート1の外周部とボトル11の内側面との間に5箇所の隙間が形成される。更に、装飾用シート1の中央に開口部4が形成されているので、先に説明した空気溜まりが無くなる。
【0051】
この状態でボトル11内に液体製剤13を供給すると、小さな気泡が上方に浮き上がるのみで、液体製剤13のボトル11への供給、即ちボトル11への充填が妨げられず、液体製剤13の溢れを防止できる。従って、作業効率が向上し、液体製剤13の無駄な消費や周囲の汚れを防止できる。
【0052】
一方、図1及び図2に示すように、倒立型揮散装置11を使用状態に立てた状態では、装飾用シート1は、ボトル1内で首部28の上に位置するようになる。この配設位置では、開口部4が倒立型揮散装置11のほぼ中心線上に位置し、切欠部2はボトル11の首部28の周辺に位置決めされる。
【0053】
従って、倒立型揮散装置11を使用状態に立てることによって、ボトル11内の液体製剤13が開口部4を流れて首部28に溜まり、ついで吸液芯19に吸液され、更に揮散体22に到達して前記のように薬剤が揮散するようになる。
【0054】
以上のように薬剤が揮散している間、装飾用シート1に印刷された円形の模様5や星形の模様6をボトル11の外側から見ることが出来る。前記各種模様5,6は、液体製剤13によって屈折されて拡大して見えたり、浮き上がって見えたりするので、幻想的に変化した模様になり、倒立型揮散装置1の外観的装飾性が向上する。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態における倒立型揮散装置1は、装飾用シート1を適用することにより、製造工程にあっては液体製剤13のボトル11への供給、即ち充填を確実且つ円滑に行うことができる。
【0056】
また、倒立型揮散装置10として使用する場合は、装飾用シート1に印刷した各種模様5,6をボトル11の外部から視認でき、しかも光の屈折作用やボトル11の曲面等により模様が変形するので、外観的装飾性が向上する。
【0057】
なお、開口部4の面積を大きくすれば、液体製剤13や空気が流通し易くなり、吸液芯19へ液体製剤を良好に供給でき、また液体製剤をボトル11に充填するときには、装飾用シート1の下部に空気が溜まることを防止することができるが、開口部4だけでは装飾用シート1の下側に空気が溜まるのを充分には解消されない。この点のみを考慮すれば、大きな開口部4が好ましいことになるが、開口部4を大きくすると、各種模様5,6を印刷する面積が少なくなってしまう。従って、開口部4の大きさ、個数は各種模様5,6の印刷面積等を考慮して設定される。
【0058】
装飾用シート1の仕様は下記の通りである。
直径 約60〜100mm
開口部の直径 1〜5mm
厚さ 0.1〜0.5mm
切欠量 1〜5mm
材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等で、好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
【0059】
装飾用シートにおける装飾は、合成樹脂(PET)を積層し、その中間(内面側)に、飾り部材や印刷等を施している。外面側に印刷等すると液体製剤とインク等が直接触れて、溶け出したり、かすれる、などの問題が生じることがある。
【0060】
このような問題もなく、液体製剤を介して見たときに、印刷等が鮮明に見えるようにするために、最適な態様としては、所期の色彩のインクをPETに処理し、その処理面に白インクを積層し、更にその上に前記所期の色彩のインクを処理し、その上に、PETを積層する構成からなる装飾用シートがよい。この構成とすることで、透光性、光散乱などの影響を排除し、所期の色彩を得ることができる。
【0061】
また、このような構成とすることで、装飾用シートの表裏がなくなるので、製造効率を向上させることができる。ボトル内に入れた装飾用シートは取り出せないので、表裏があるものは好ましくない。
【0062】
次に、図5を参照して前記装飾用シートの第2実施形態を説明する。
この第2実施形態における装飾用シート7の材質や厚みは、前記装飾用シート1と同様であってよく、直径は80mm、開口部4の直径は5mmである。装飾用シート7には、外周部に90°間隔で4個の切欠部7aが形成されている。なお、各切欠部7aの切り欠き量は3mmである。
【0063】
なお、図示を省略しているが、この装飾用シート7にも前記同様に各種模様5,6が印刷されている。
【0064】
前記倒立型揮散装置10に装飾用シート7を適用した場合、製造工程にあっては開口部4と、4個の切欠部7aとによって空気溜まりが解消されるので、前記実施形態と同様にボトル11への液体製剤13の供給を確実且つ円滑に行うことができる。
【0065】
一方、倒立型揮散装置10を立てて使用する場合は、開口部4及び切欠部7aによって液体製剤13が流通し、前記実施形態同様に芳香を発散するようになる。そして、ボトル11の外側から各種模様5,6を視認することができ、外観的装飾性が向上する。
【0066】
次に、図6を参照して前記装飾用シートの比較例を説明する。
この比較例における装飾用シート8の材質や厚みは、前記装飾用シート1と同様であってよく、直径は80mm、開口部の直径は5mmである。そして、図示を省略しているが、この装飾用シート8にも前記同様に各種模様5,6が印刷されている。
【0067】
装飾用シート8には、外周部に切欠部は形成されておらず、前記開口部4が形成されているのみである。
【0068】
前記装飾用シート8においても、倒立型揮散装置10を立てて使用する場合は、ボトル11から揮散体22へ液体製剤13を流通させることができ、装飾用シート8の模様をボトル11の外部から視認することができるので、外観装飾性を向上させることができる。
【0069】
以上、説明したように、本発明に係る一実施形態である倒立型揮散装置10によれば、ボトル11の外部から装飾用シート1,7,8を視認することができるので、使用時の外観装飾性を向上させることができる。装飾用シート1,7,8の模様5,6は、ボトル11内の液体製剤13により拡大されてボトルの表面に現れ、しかも液体製剤13の減少に伴うボトル11内の液体製剤13の量によってもボトル表面に現れる模様が変化するので、倒立型揮散装置10の装飾性が格段に向上する。また、装飾用シート1,7は液体製剤13の流通路2,4を有するので、製造工程における液体製剤13の充填時には、ボトル11への液体製剤13の供給を確実且つ円滑に行うことができる。
【0070】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、装飾用シート1は透明ではなく、着色した上に各種模様を印刷したものでもよい。また、模様5,6は、印刷ではなく、模様5,6の形態の薄いシート等を貼着してもよい。
【0071】
実施例
図1、図2、図7に示したボトル11内に、図3、図5、図6に示した装飾用シート1,7,8をそれぞれ挿入して展開し、次いで液体製剤13を充填し、充填状況を観察した。
液体製剤13をボトル11に充填する際の充填条件は下記のとおりである。
(1)ボトル容量(満注容量) 455mL ボトル首部内径 約26mm
(2)液充填量 430mL
(3)充填ノズル径(内径) 1/2インチ
(4)液充填速度 54mL/秒
【0072】
実施例1
図3に示す第1実施形態の装飾用シート1を用いた結果、充填時に液体製剤の溢れは発生しなかった。また、装飾用シート1の下に空気が溜まることもなかった。
【0073】
実施例2
図5に示す第2実施形態の装飾用シート7を用いた結果、充填時に液体製剤の溢れは発生しなかった。しかし、装飾用シート7の下にわずかに空気が溜まっているのが確認された。
【0074】
比較例
図6に示す比較例の装飾用シート8を用いた結果、充填途中に液体製剤が溢れるのが確認された。また、装飾用シート8とボトル11との間に多量の空気が溜まっているのが確認された。
【0075】
以上のことから、製造時にボトルからの液体製剤の溢れ出しを防止するのと、使用時に液体製剤を確実に供給するためには、図3に示した第1実施形態の装飾用シートが最も好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態を示す倒立型揮散装置の斜視図である。
【図2】倒立型揮散装置の構成を示す断面図である。
【図3】装飾用シートの構成を示す平面図である。
【図4】揮散体の構成を示す平面図である。
【図5】装飾用シートの第2実施形態を示す平面図である。
【図6】装飾用シートの比較例を示す平面図である。
【図7】ボトルの構成を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0077】
1,7,8 装飾用シート
2,7a 切欠部
3 山部
4 開口部
5 円形の模様
6 星形の模様
10 倒立型揮散装置
11 ボトル
12 下容器
13 液体製剤
14 台座
15 揮散用開口部
16 係合部
17 係止突起
18 開口部
19 吸液芯
20 中栓
21 キャップ
22 揮散体
23 液溜り室
24 基部
25 揮散部
26 吸液部
27 底板
28 首部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製剤の流入口となる首部を有し前記液体製剤を収容した透明のボトルと、
倒立状態の前記ボトルの下部に組み付けられた下容器と、
倒立状態の前記ボトルの下部と前記下容器との間に挟まれるようにして前記下容器に収容され、前記液体製剤が供給される揮散体と、
を備えた倒立型揮散装置であって、
倒立状態の前記ボトル内部の前記首部の上に、装飾模様を有するとともに前記液体製剤の流通路となる開口部を中央に有し、かつ外周部に切欠部を有する装飾用シートを配設したことを特徴とする倒立型揮散装置。
【請求項2】
前記装飾用シートは、可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の倒立型揮散装置。
【請求項3】
前記装飾用シートの前記開口は、前記揮散体へ前記液体製剤を供給する通路として機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の倒立型揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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