説明

倣い加工用テンプレート

【目的】 倣い面の形状の修正や微調整が簡単に行えるテンプレートを提供する。
【構成】 テンプレートAを、分割された複数の板材4、5で形成し、各板材4、5を取外して修正できるようにする。一方の板材4を、長孔10とボルト11によってスライド可能とし、倣い面のX寸法を調整する。また、他方の板材5を、ピン12を支点に揺動可能とし、倣い面のθ角度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、研削加工や施削加工等において倣い加工に用いられるテンプレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】円筒部品の外径面加工と、外径端部のクラウニング加工を同時に行なう研削装置として、本出願人が特願平5−244449号により提案したものがある。
【0003】この提案の装置は、図5及び図6に示すように、2個の円筒状の砥石21、22を、各軸線をわずかに傾斜させて並列に配置し、各砥石21、22の表面にそれぞれ直線部23、24と円弧部25、26を形成して成り、円筒部品20を回転する各砥石21、22の間で挟んで軸方向に移動させることにより、各砥石表面の直線部23、24で円筒部品20の外径面加工を、円弧部25、26で外径端部のクラウニング加工を行なうようになっている。
【0004】ところで、上記のごとき各砥石21、22は、通常倣い研削加工により成形され、必要とする砥石形状に沿った倣い面をテンプレートに形成し、その倣い面の形状を砥石21、22に転写することで成形されている。
【0005】このような倣い加工用テンプレートは、従来図7に示すように、一体型の板材31の側面に、直線部33と円弧部34を配列して倣い面32を形成し、その倣い面32に、ロータリドレッサ等と連結した倣い用治具35を接触移動させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来のテンプレートは、一体形であるために、倣い加工によって形成された砥石の形状に一部分でも不具合があった場合、取外して修理加工を行なう必要がある。
【0007】また、修理加工後、砥石を再加工して仕上がった加工面形状を確認するが、修理の寸法を誤ると、再度テンプレート全体を取外して修正を行なう必要があり、寸法によっては全面的に再製作する必要がある。
【0008】このため、砥石形状の調整に非常に多くの時間がかかり、テンプレートの設計にも神経を使わざるを得ない問題があった。
【0009】そこで、この発明は、上記の問題を解決し、テンプレートの倣い面の形状変更を容易にでき、ワーク形状の調整も簡単にできるようにすることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明のテンプレートは、倣い面を形成する板材を、少なくとも直線部を含む部分と円弧部を含む部分とに分割したのである。
【0011】また、この発明の第2の手段は、上記の構造において、分割された板材部分を、その板材上の任意の点を支点として揺動可能としたのである。
【0012】第3の手段は、上記分割された板材部分を、板材の分割方向、又はその分割方向とは直交する方向にスライド可能としたのである。
【0013】さらに、第4の手段は、上記分割した各板材部分を、基台に着脱自在に取付け、その基台を、板材の分割方向、又はその分割方向とは直交する方向にスライド可能とした構造を採用したのである。
【0014】
【作用】上記の構造では、テンプレートの板材を分割構造としたので、寸法等に不具合がある板材部分だけを取外して修正することができる。
【0015】また、第2又は第3の手段を採用すると、分割した板材部分を揺動又はスライドさせることで円弧の傾きや板材の相対位置を微調整することができる。
【0016】一方、第4の手段のように、基台をスライド可能にすると、テンプレート全体の位置を一度に微調整することができ、調整作業を簡略化することが可能になる。
【0017】
【実施例】図1乃至図4はこの発明の実施例を示している。図において、1は倣い加工機等の取付け台であり、この取付け台1に設けた溝2に、基台3を介してテンプレートAが取付けられている。
【0018】上記取付け台1には、背面側から固定ボルト17が挿通され、その固定ボルト17の先端にクランプ治具18が取付けられており、固定ボルト17を締め付けることによりクランプ治具18が基台3を取付け台1に圧着して固定するようになっている。
【0019】テンプレートAは、基台3の長さ方向に分割された2つの板材4、5から形成され、その一方の板材4の側辺に、直線部7を含む倣い面6が形成されている。また、他方の板材5の側辺には、円弧部9を含む倣い面8が形成されている。
【0020】上記一方の板材4は、表面に各板材4、5の分割方向とは直交する方向に縦長の長孔10、10が形成され、その各長孔10、10に挿入したボルト11を用いて基台3に着脱自在に取付けられている。
【0021】また、他方の板材5には、倣い面8の円弧部9のほぼ中央線上にピン12が設けられ、そのピン12の側方に、ピン12を中心とする円弧状の長孔13とボルト14が設けられており、ピン12を支点として板材5が左右に揺動可能になっている。
【0022】また、上記各板材4、5の対向する端面は、それぞれ逆方向に傾斜する傾斜面15、16で形成され、基台3に取付けた状態で各傾斜面15、16が重なり合って倣い用治具Bがスムーズに乗り移れるように形成されている。
【0023】この実施例は上記のような構造であり、倣い加工を行なう場合は、倣い用治具BをテンプレートAの左端から板材4の倣い面6に接触させて右方に移動させ、傾斜面15、16を介して板材5に乗り移り、同様に倣い面8の右端まで移動させて、各倣い面6、8の形状をワークに転写する。
【0024】この場合、仕上がったワーク寸法から倣い面のX寸法に不具合がある場合は、板材4のボルト11を緩め、板材4をX方向にスライドさせることで微調整する。
【0025】また、円弧部9の角度θに不具合がある場合は、板材5の固定ボルト12を緩め、そのボルト12を支点に板材5を揺動させて微調整する。
【0026】さらに、テンプレートAの取付け位置を調整する場合は、取付け台1の固定ボルト17を緩め、基台3を溝2に沿ってスライドさせて行なう。
【0027】なお、上記の実施例では、板材4に直線方向のスライドだけを、板材15に揺動だけを行わせるようにしたが、各板材4、5にスライドと揺動の両方を行わせるようにしてもよい。
【0028】また、上記では研削加工の倣い加工について説明したが、施削などの倣い加工用テンプレートにもこの発明を同様に適用することができる。
【0029】
【効果】以上のように、この発明は、テンプレートの板材を分割構造としたので、寸法等に不具合がある部分だけを取外して修正することができ、修正作業を簡単に行なうことができる。
【0030】また、第2乃至第4の手段を採用すると、分割した板材部分を揺動又はスライドさせることで倣い面の形状や位置を微調整することができ、加工形状の調整変更が容易に行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を示す斜視図
【図2】同上の分解斜視図
【図3】(a)は実施例の正面図、(b)はその縦断側面図
【図4】同上の一部縦断側面図
【図5】円筒部品の研削装置を示す正面図
【図6】同上の側面図
【図7】従来のテンプレートを示す図
【符号の説明】
1 取付け台
3 基台
4、5 板材
6、8 倣い面
7 直線部
9 円弧部
10、13 長孔
11、14、17 ボルト
15、16 傾斜面
18 クランプ金具
A テンプレート
B 倣い用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 板材の側辺に、直線部と円弧部とを有する倣い面を形成し、その倣い面に倣い用治具を接触移動させて加工を行なう倣い加工用テンプレートにおいて、上記板材を、少なくとも直線部を含む部分と円弧部を含む部分とに分割したことを特徴とする倣い加工用テンプレート。
【請求項2】 上記分割された板材部分を、その板材上の任意の点を支点として揺動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の倣い加工用テンプレート。
【請求項3】 上記分割された板材部分を、板材の分割方向、又はその分割方向とは直交する方向にスライド可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の倣い加工用テンプレート。
【請求項4】 上記分割した各板材部分を、基台に着脱自在に取付け、その基台を、上記板材の分割方向、又はその分割方向とは直交する方向にスライド可能としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の倣い加工用テンプレート。

【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図7】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate