説明

偏光板の製造方法、偏光板、光学フィルム及び画像表示装置

【課題】高透過率及び高偏光度を有し、かつ加湿信頼性の良好な偏光板の製造方法を提供すること。
【解決手段】偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、前記接着剤層を形成する用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及びpH調整剤を含有し、かつ、pHが8.0〜10.5に調整された樹脂水溶液であり、前記接着剤の乾燥条件が、乾燥温度25〜50℃で、乾燥時間8分間以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製法方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた偏光板に関する。当該偏光板はこれ単独で、又はこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠である。偏光子は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などの二色性材料で染色した後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸をすることにより製膜することにより得られる。前記偏光子は延伸により作成されるため、収縮し易い。またポリビニルアルコール系フィルムは親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。またフィルム自体の機械的強度が弱いため、フィルムが裂けたりする問題がある。そのため、偏光子の両側又は片側にトリアセチルセルロースなどの透明保護フィルムを貼り合わせて、強度を補った偏光板が用いられている。前記偏光板は、偏光子と透明保護フィルムを接着剤で貼り合わせることにより製造されている。
【0003】
近年、液晶表示装置の低消費電力化の観点から、液晶表示装置の白輝度の向上が望まれており、それに伴い透過率の高い偏光子の開発が望まれている。しかしながら、単に単体透過率を高くしようとすると、偏光度が低下し、表示コントラストの低下をまねくという問題がある。一方、偏光度を高くしようとすると、単体透過率が低下し、白輝度の低下を招くという問題がある。このように、偏光子の単体透過率と偏光度はトレードオフの関係にある。したがって、高透過率及び高偏光度を両立する偏光板の開発が求められている。
【0004】
また、近年の液晶表示装置は用途が拡大し、携帯端末から家庭用の大型TVまで幅広く展開が進んできており、各用途に応じて、それぞれの規格が設けられるようになってきている。特に携帯端末用途では、使用者が持ち歩くことが前提であるため、耐久性に対する要求は非常に厳しい。例えば、偏光板には、結露が生じるような加湿条件下においても特性、形状が変化しない加湿信頼性が求められている。
【0005】
前記の通り偏光子は、透明保護フィルムにより強度を補強した偏光板として使用される。前記偏光子と透明保護フィルムの接着に用いる偏光板用接着剤としては、水系接着剤が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール水溶液に架橋剤を混合したポリビニルアルコール系接着剤が使用されている。しかし、ポリビニルアルコール系接着剤は、加湿条件下では、偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じる場合がある。これは、前記接着剤の主成分であるポリビニルアルコール系樹脂が水溶性高分子であり、結露した状況下では接着剤の溶解が起こっている可能性が考えられる。上記問題に対して、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有する偏光板用接着剤が提案されている(特許文献1)。また、ポリビニルアルコール樹脂、無水マレイン酸骨格を構造中に含む樹脂及び架橋剤を含有する偏光素子用水性接着剤が提案されている(特許文献2)。しかし、これらの偏光板用接着剤では、高透過率及び高偏光度を有し、かつ加湿信頼性の良好な偏光板は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−198945号公報
【特許文献2】国際公開第2005/085383号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高透過率及び高偏光度を有し、かつ前記特性に加えて、加湿信頼性の良好な偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は前記製造方法により得られて偏光板を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該偏光板を積層した光学フィルムを提供すること、さらには、当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板の製造方法等により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、偏光子及び/又は透明保護フィルムに偏光板用接着剤を塗布する工程(1)、前記接着剤により偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、並びに前記接着剤を乾燥して接着剤層を形成する乾燥工程(3)を含む、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
前記偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及びpH調整剤を含有し、かつ、pHが8.0〜10.5に調整された樹脂水溶液であり、
前記乾燥工程(3)の乾燥条件が、乾燥温度25〜50℃で、乾燥時間8分間以上であることを特徴とする偏光板の製造方法、に関する。
【0011】
前記偏光板の製造方法において、前記pH調整剤としては、アレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基に関わるアルカリ剤を用いることができる。
【0012】
前記偏光板の製造方法において、前記pH調整剤としては、水溶性珪酸塩を用いることができる。前記水溶性珪酸塩としては、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0013】
前記偏光板の製造方法において、前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂が好適である。
【0014】
前記偏光板の製造方法において、前記接着剤層の厚みは、10〜300nmであることが好適である。
【0015】
また本発明は、前記製造方法により得られた偏光板、に関する。
【0016】
また本発明は、前記偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルム、に関する。
【0017】
さらに本発明は、前記偏光板又は前記光学フィルムを含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏光板の製法方法では、偏光板用接着剤として、pHを弱アルカリ〜アルカリの8.0〜10.5に調整した樹脂水溶液を用い、かつ、偏光子と透明保護フィルムを前記接着剤により貼り合わせた後の乾燥工程(3)では、乾燥温度25〜50℃で、乾燥時間8分間以上の乾燥条件で乾燥処理を行っている。このように、弱アルカリ〜アルカリに調整された樹脂水溶液を偏光板接着剤として用いて、比較的に低温の所定温度で、じっくりと所定時間の乾燥処理を施すことで、接着剤中のアルカリがゆっくりと偏光子へ働きかけることができる。こうした状態によって、例えば、偏光子中に存在しているIイオンがI3−錯体を効率的に形成されて、偏光子の光学特性(高透過率、高偏光度)の良好な偏光板を得ることができたものと考えられる。得られた偏光板は、広帯域において、直交透過率が低いものが得られ、特に、黒表示が好適である。また、本発明の製造方法で得られた偏光板は加湿環境下において光透過率が低下しにくく、加湿信頼性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の偏光板の製造方法では、偏光板用接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂及びpH調整剤を含有し、かつ、pHが8.0〜10.5に調整された樹脂水溶液を用いる。
【0020】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上し好ましい。
【0021】
前記偏光板用接着剤において、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合に本発明は特に好適である。アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いた接着剤は、耐水性に優れる接着剤層を形成することができる。
【0022】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。
【0023】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0024】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミド又はジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。またポリビニルアルコールにジケテンガス又は液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0025】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はなない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0026】
樹脂水溶液中には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;グリオキシル酸金属塩(金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。)、グリオキシル酸アミン塩(アミンとしては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。)などのグリオキシル酸塩;1つ以上の塩基性基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸又は含硫アミノ酸;ジメトキシエタナール、ジエトキシエタナール、ジアルコキシエタナール等のアセタール化合物;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を併用することができる。これらのなかでも1つ以上の塩基性基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸又は含硫アミノ酸を用いることが好ましい。塩基性基としてはアミノ基が好ましく、酸性基としてはカルボキシル基又はスルホ基が好ましい。前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパルテーム、グルタミン、グルタミン酸、及びこれらアミノ酸と(メタ)アクリル酸との共重合体などが挙げられる。前記含硫アミノ酸としては、例えば、メチオニン、システイン、シスチン、及びタウリンなどが挙げられる。これらのなかでも特に、タウリンなどのスルホ基を有する含硫アミノ酸を用いることが好ましい。また、架橋剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができる。
【0027】
前記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類等に応じて適宜設計できるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部程度、好ましくは0.2〜40重量部である。かかる範囲において、良好な接着性が得られる。
【0028】
耐久性を向上させるには、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる。この場合にも、架橋剤の配合量は前記と同様である。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、液安定性が低下し、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が短くなり、工業的な使用が困難になる。
【0029】
前記樹脂水溶液は、pH調整剤により、pHが8.0〜10.5に調整されたものを用いる。前記樹脂水溶液のpHが10.5を超えると、接着剤中のアルカリが多くなり、加湿条件下で光学特性が低下する。一方、pHが8.0未満では、接着剤中のアルカリが少なく、光学特性の向上効果が十分得られない。本発明では、pHを前記範囲に調整した樹脂水溶液を偏光板用接着剤に用いることにより、高透過率及び高偏光度の光学特性を満足させ、かつ、加湿信頼性の良好な偏光板を得ることができる。加湿信頼性における、光学特性の低下の抑制の観点から、前記樹脂水溶液のpHは8〜10であることが好ましく、さらには8〜9.5であることが好ましい。
【0030】
前記pH調整剤としては、例えば、アレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基に関わるアルカリ剤を用いることができる。アレニウス塩基に関わるアルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化アルカリ;アンモニア水等が挙げられる。ブレンステッド塩基に関わるアルカリ剤としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn‐ブトキシド、ナトリウムt‐ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムn‐ブトキシド、カリウムt‐ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムn‐ブトキシド、リチウムt‐ブトキシド等の炭素数1〜10の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等の水素化アルカリ;ピリジン、トリエチルアミン、DBU(1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]‐7‐ウンデセン)、DBN(1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ‐5‐エン)等の有機塩基;他の別の金属塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらアルカリ剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルカリ剤のなかでも、pHの調整が容易なことからアレニウス塩基に関わるアルカリ剤が好ましく、特に水酸化アルカリが好ましい。
【0031】
アレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基に関わるアルカリ剤の配合量は、樹脂水溶液が、pHが8.0〜10.5になるように、アルカリ剤の種類に応じて配合量が適宜に決定される。
【0032】
また前記pH調整剤としては、水溶性珪酸塩を用いることができる。水溶性珪酸塩は、一般式MO・nSiOで表わされる化合物であり、Mは、アルカリ金属、有機塩基などである。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、及びカリウムなどが挙げられ、有機塩基としては、例えば第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、及びグアニジウムなどが挙げられる。nは2〜8であることが好ましい。
【0033】
前記水溶性珪酸塩としては、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、及び珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。珪酸リチウムは、SiO/LiOのモル比が2〜8であることが好ましい。前記モル比が2未満の場合には接着剤層のアルカリ性が高くなり、加湿環境下において偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、前記モル比が8を超える場合には水溶性の珪酸塩にならない。珪酸ナトリウムは、SiO/NaOのモル比が2〜5であることが好ましく、より好ましくは2.5〜5である。珪酸カリウムは、SiO/KOのモル比が2〜5であることが好ましく、より好ましくは2.5〜5である。前記モル比が2未満の場合には接着剤層のアルカリ性が高くなり、加湿環境下において偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、前記モル比が5を超える場合には水溶性の珪酸塩にならない。
【0034】
前記水溶性珪酸塩の配合量は、樹脂水溶液が、pHが8.0〜10.5になるように、水溶性珪酸塩の種類に応じて配合量が適宜に決定される。前記水溶性珪酸塩の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは1〜30重量部である。前記水溶性珪酸塩の配合量が1重量部未満の場合には、pHを8.0以上にすることが難しく、また接着剤層の屈折率が高くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間及び透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、100重量部を超える場合には、pHを10.5以下にすることが難しく、また接着剤層の接着力が低下したり、接着剤層の屈折率が低くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間及び透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。
【0035】
前記工程(1)で用いる、偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及びpH調整剤を含有する樹脂水溶液であり、樹脂水溶液の固形分濃度はpHが8.0〜10.5に制御されていれば、特に制限はない。前記樹脂水溶液の固形分濃度は、塗工性や放置安定性等を考慮すると0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0036】
樹脂水溶液の粘度は特に制限されないが、通常1〜50mPa・sの範囲のものが用いられる。
【0037】
偏光板用接着剤である前記樹脂水溶液の調製法は特に制限されない。通常は、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤を混合し、適宜に濃度を調製したものに、pH調整剤を配合してpHが8.0〜10.5の樹脂水溶液を調製する。また、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いたり、架橋剤の配合量が多い場合には、樹脂水溶液の安定性を考慮して、ポリビニルアルコール系樹脂とpH調整剤を混合した後に、得られる樹脂水溶液の使用時期等を考慮しながら架橋剤を混合してもよい。なお、偏光板用接着剤である樹脂水溶液の濃度は、樹脂水溶液を調製した後に、pHが8.0〜10.5になるように適宜に調整することもできる。
【0038】
なお、偏光板用接着剤には、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0039】
本発明の偏光板の製造方法は、偏光子及び/又は透明保護フィルムに偏光板用接着剤を塗布する工程(1)、前記接着剤により偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、並びに前記接着剤を乾燥して接着剤層を形成する乾燥工程(3)を含む。かかる製造方法により、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板が得られる。
【0040】
前記工程(1)では、偏光子及び/又は透明保護フィルムに前記樹脂水溶液に係る偏光板用接着剤を塗布して接着剤層を形成する。
【0041】
前記接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。前記接着剤の塗布は、乾燥工程(3)後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る観点から10〜200nmであることがより好ましく、特に好ましくは20〜150nmである。接着剤層の厚みが10nm未満の場合には接着力が十分でなく、300nmを超える場合には光学信頼性及び耐湿接着力が低下する傾向にある。
【0042】
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗布装置を調整する方法が挙げられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。接着剤の塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
【0043】
また、接着剤層の屈折率は1.47〜1.54であることが好ましい。接着剤層の屈折率が1.47〜1.54の範囲外の場合には、接着剤層の屈折率が低く又は高くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間及び透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。なお、pH調整剤として水溶性珪酸塩を含有する偏光板用接着剤からなる接着剤層は、偏光子との屈折率差及び透明保護フィルムとの屈折率差が小さいため、偏光子と接着剤層の間及び透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりにくく、偏光板の光透過率の低下を防止することができる。
【0044】
前記工程(1)により、偏光子及び/又は透明保護フィルムに接着剤を塗布した後は、前記接着剤により偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせる工程(2)を施す。貼り合わせ工程(2)は、特に限定されないが、例えば、ロールラミネーター等により貼り合わせを行うことができる。
【0045】
次いで、貼り合わせ工程(2)の後には、前記接着剤を乾燥して接着剤層を形成する乾燥工程(3)を施す。乾燥工程(3)によって、塗布乾燥層からなる接着剤層が形成され、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板が得られる。
【0046】
前記乾燥工程(3)の乾燥条件は、乾燥温度25〜50℃で、乾燥時間8分間以上である。乾燥温度は30〜50℃であることが好ましく、さらには35〜50℃であることが好ましい。また乾燥時間は10分間以上であることが好ましい。一方、乾燥時間は光学特性の低下の観点から25分間以下とすることが好ましい。乾燥温度が25℃未満では、十分な高透過率及び高偏光度を有する偏光板が得られない。一方、乾燥温度が80℃を超える場合にも、十分な高透過率及び高偏光度を有する偏光板が得られない。また、乾燥時間が8分間未満では、十分な高透過率及び高偏光度を有する偏光板が得られない。
【0047】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0048】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0049】
前記偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。なお、偏光子には、通常、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0050】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0051】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0052】
透明保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理(ケン化処理)等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等が挙げられる。これらのなかでも、易接着剤層を形成するコーティング処理やアルカリ処理が好適である。易接着剤層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着剤層の厚みは、通常、0.001〜10μm程度、さらには0.001〜5μm程度、特に0.001〜1μm程度とするのが好ましい。
【0053】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0054】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0055】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層又は2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0056】
本発明の偏光板又は光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板又は光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板又は光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0057】
液晶セルの片側又は両側に偏光板又は光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板又は光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板又は光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、各例中、部及び%は特記ない限り重量基準である。
【0059】
<pHの測定方法>
調整した接着剤水溶液のpHを、Eutech Instruments社製のpHメーター(EC−PH5)を用いて測定した。
【0060】
<粘度の測定>
調整した接着剤水溶液の粘度を、レオメーターRS1(Haake社製)、共軸円筒として型式222−1267及び222−1549を用いて、23℃の液温及び気温にて測定した。
【0061】
実施例1
(偏光子)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、偏光子を得た。偏光子の単体透過率(Ts)は、42.50%であった。
【0062】
(透明保護フィルム)
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いた。
【0063】
(接着剤水溶液の調製)
アセトアセチル(AA)基を含有するポリビニルアルコール(PVA)系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部に対し、架橋剤としてタウリンを30部、pH調整剤として珪酸ナトリウム珪酸ソーダ4号(SiO/NaOのモル比4)10部を、30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度4%に調整して、pH8.5に調整した樹脂水溶液からなる接着剤水溶液を得た。当該接着剤水溶液の粘度は9.0mPa・sであった。
【0064】
(偏光板の作成)
上記透明保護フィルムの片面に、上記接着剤水溶液を乾燥後の接着剤層の厚みが80nmとなるように塗布した。次いで、23℃の温度条件下で、上記偏光子の両面に接着剤付きの透明保護フィルムをロール機で貼り合せた。その後、60℃で7分間の乾燥工程を施して偏光板を作成した。
【0065】
実施例2〜5及び比較例1〜7
実施例1において、珪酸ナトリウムの添加量を調整することによって、表1に示すように、調製した接着剤水溶液のpHを制御したこと以外は実施例1と同様の方法で接着剤水溶液を調製した。また、実施例1において、表1に示すように、乾燥工程における乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0066】
上記実施例および比較例で得られた、偏光板について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
<光学特性の測定>
偏光板の光学特性(単体透過率(Ts)、偏光度)は、380〜780nmの波長光における分光透過率を積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製のV7100)を用いて測定した。
なお、偏光度は、2枚の同じ偏光板を両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。
偏光度(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として測定し、測定された分光透過率よりCIE1931 Yxy表色系に従い、2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0068】
<加温信頼性>
偏光板を60℃、95%R.H.の条件下に500時間放置した。その放置前と放置後の単体透過率(Ts)の変化量を下記式により求めた。
単体透過率の変化量(%)={(放置後の単体透過率)−(放置前の単体透過率)}/(放置前の単体透過率)×100
なお、単体透過率は、分光光度計(村上色彩技術研究所製,DOT−3)を用いて、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行ったY値である。
【0069】
【表1】

【0070】
表1から、実施例では、偏光度が99.99%の偏光板が得られており、かつ、加湿信頼性を満足している。一方、比較例1〜5では、接着剤水溶液が、本発明のpHを満足していても、乾燥条件を満足しないため、偏光度が99.99%の偏光板が得られていない。また、比較例6では接着剤水溶液のpHが強アルカリであるため加湿信頼性を満足できず、比較例7では接着剤水溶液のpHが酸性側にあるため偏光度が99.99%の偏光板が得られていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子及び/又は透明保護フィルムに偏光板用接着剤を塗布する工程(1)、前記接着剤により偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、並びに前記接着剤を乾燥して接着剤層を形成する乾燥工程(3)を含む、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
前記偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及びpH調整剤を含有し、かつ、pHが8.0〜10.5に調整された樹脂水溶液であり、
前記乾燥工程(3)の乾燥条件が、乾燥温度25〜50℃で、乾燥時間8分間以上であることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記pH調整剤が、アレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基に関わるアルカリ剤であることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記pH調整剤が、水溶性珪酸塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性珪酸塩が、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層の厚みが、10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた偏光板。
【請求項8】
請求項7記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルム。
【請求項9】
請求項7記載の偏光板、又は請求項8記載の光学フィルムを含む画像表示装置。