説明

偏光板及びその製造方法

【課題】透明で、複屈折が小さく、しかも応力がかかっても複屈折が変化しにくい偏光板を提供する。
【解決手段】偏光子の少なくとも片面が樹脂からなる保護膜で保護された構造を有する偏光板であって、前記樹脂が、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。前記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物として、下記式(1)


で表される化合物を使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に使用される偏光板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として用いられている。従来、偏光板としては、ヨウ素等をドープさせ、延伸したポリビニルアルコール(PVA)フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護膜を接着したものなどが使用されている。この場合、保護フィルム自体に複屈折が存在すると偏光板としての機能が大幅に低下するので、これを防止するため、溶剤キャスト法で作製した光学的異方性のないTACフィルムが用いられている。
【0003】
このような従来の偏光板においては、PVAフィルムが高倍率に延伸されるため緩和する方向に大きな応力が発生する。保護フィルムにはこの応力に耐える剛性を必要とするが、TACを保護フィルムとして用いた場合には、液晶TVなどの大画面用途では、フィルム周辺部において偏光子の収縮応力がTACの剛性に勝って変形が起こり、それに伴って生じるTAC保護膜の複屈折のために色抜けが発生することがあった。
【0004】
特開2005−92112号公報には、TAC保護膜に代わるものとして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物が提案されている。この技術によれば、複屈折が小さく、耐湿熱性に優れた偏光板を得ることができる。しかしながら、複屈折が小さいだけでは、上記のような偏光子の収縮応力が大きい箇所では複屈折が変化し、偏光板としての機能が損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−92112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、保護膜が透明で、複屈折が小さく、しかも応力がかかっても複屈折が変化しにくい偏光板とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、偏光子の少なくとも片面を特定の樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる保護膜で保護した偏光板では、保護膜が透明で、複屈折が少なく、しかも応力がかかっても複屈折が変化しにくいことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、偏光子の少なくとも片面が樹脂からなる保護膜で保護された構造を有する偏光板であって、前記樹脂が、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする偏光板を提供する。
【0009】
前記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物としては、不飽和カルボン酸アシル基及び有橋脂環式骨格を有する化合物が好ましく、特に、下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、X1、X2は、同一又は異なって、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、又は1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基を示す。m、nは、それぞれ、0又は1を示す)
で表される化合物であるのが好ましい。
【0010】
前記セルロース誘導体として、メチルセルロース及びエチルセルロースから選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0011】
本発明は、また、偏光子の少なくとも片面に、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工した後、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて保護膜を形成することを特徴とする偏光板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の偏光板によれば、偏光子の保護膜として特定の樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いるので、保護膜が透明で、複屈折が小さいだけでなく、応力がかかっても複屈折が変化しにくい。本発明の製造方法によれば、このような優れた特性を有する偏光板を簡易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面が樹脂からなる保護膜で保護された構造を有する。偏光子としては特に限定されず、ポリビニルアルコール(PVA)、そのアセタール化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、そのケン化物などの基材に、ヨウ素、二色性染料をドープさせ延伸したフィルム、又はそれらを架橋処理したフィルムなどを使用できる。これらの中でも、ポリビニルアルコールにヨウ素をドープさせ、延伸したヨウ素含有ポリビニルアルコールフィルム、又はこれを硼酸等で架橋させたものが特に好ましい。
【0014】
本発明では、保護膜を構成する樹脂として、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いる。不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、本明細書では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、活性エネルギー線の照射によって硬化した樹脂を形成しうる組成物を意味する。
【0015】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物としては、分子内に脂環式骨格と1以上の不飽和カルボン酸アシル基を有するラジカル硬化性の化合物であれば特に限定されない。不飽和カルボン酸アシル基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、α−エチルアクリロイル基、α−プロピルアクリロイル基、α−ブチルアクリロイル基、クロトン酸アシル基などの炭素数3〜10程度の不飽和カルボン酸アシル基等が挙げられる。
【0016】
脂環式骨格としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環などのシクロアルカン環;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカン環、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン環、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカン環、ノルボルナン環、ボルナン環、イソボルニラン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、アダマンタン環、デカリン環、パーヒドロインデン環などの有橋脂環式骨格が挙げられる。これらの中でも、有橋脂環式骨格が好ましく、特に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカン環、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン環、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカン環が好ましい。とりわけ、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環が好ましい。
【0017】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物において、不飽和カルボン酸アシル基の数は少なくとも1個あればよいが、好ましくは2個以上(例えば、2〜4個)であり、さらに好ましくは2〜3個である。
【0018】
不飽和カルボン酸アシル基と有橋脂環式骨格とは直接結合していてもよいが、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、下記式(2)
−X−O− (2)
(式中、Xは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、又は1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基を示す。Xの左側は脂環式骨格に結合し、Oの右側は不飽和カルボン酸アシル基に結合している)
で表される基が挙げられる。
【0019】
炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基等が挙げられる。
【0020】
1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基としては、例えば、炭素数1〜8のオキシアルキレン基、炭素数2〜8のアルキレンオキシアルキレン基、炭素数1〜8のチオアルキレン基、炭素数2〜8のアルキレンチオアルキレン基、炭素数2〜8のポリ(オキシアルキレン)基、炭素数3〜8のアルキレンポリ(オキシアルキレン)基などが挙げられる。
【0021】
Xとしては、特に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、とりわけメチレン基が好ましい。
【0022】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物の代表的な例として、前記式(1)で表される化合物が挙げられる。式(1)中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、X1、X2は、同一又は異なって、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、又は1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基を示す。m、nは、それぞれ、0又は1を示す。
【0023】
1、R2における炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル基が挙げられる。R1、R2としては、特に、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
1、X2における炭素数1〜8のアルキレン基、1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基としては、上記Xと同様である。X1、X2としては、それぞれ、特に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、とりわけメチレン基が好ましい。
【0025】
m、nは、それぞれ、0であるのが特に好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物の他の例として、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンモノメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンモノオールモノ(メタ)アクリレート(=(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカンモノメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカンモノオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカンモノメタノールモノ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカンモノオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカンモノメタノールモノ(メタ)アクリレート、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカンモノオールモノ(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アシル基を1つ有する化合物;1,4−シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール ジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジオール ジ(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アシル基を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0028】
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエートなどのセルロース有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロースなどのセルロース無機酸エステル;セルロースフェニルカーバメートなどのセルロースカーバメート;セルロースアセタールなどが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、セルロースエーテルが好ましく、特に、メチルセルロース、エチルセルロースが好ましい。
【0030】
セルロース誘導体における置換度は、置換基の種類によっても異なるが、前記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物の硬化物との相溶性、取扱性等を考慮して適宜選択できる。例えば、メチルセルロースにおけるエーテル化度は25%〜33%の範囲が好ましく、エチルセルロースにおけるエーテル化度は46%〜51%の範囲が好ましい。
【0031】
一般に、アクリル系重合体とセルロース誘導体とは相溶性が低く、混合すると濁りが生じるが、本発明では脂環式骨格を含む単量体を用いるため、硬化後のポリマーとセルロース誘導体との相溶性が比較的高く、透明性に優れた保護膜を形成できる。また、得られる保護膜は複屈折が小さいだけでなく、光弾性係数が低いため、応力がかかっても複屈折が変化しにくいという特性を有する。
【0032】
本発明において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、活性エネルギー線硬化性化合物として、上記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物のみを含んでいてもよいが、さらに他の活性エネルギー線硬化性化合物を含んでいてもよい。このような他の活性エネルギー線硬化性化合物として、ラジカル硬化性化合物、カチオン硬化性化合物が挙げられる。
【0033】
ラジカル硬化性化合物としては、分子内に少なくとも1個のエチレン性二重結合を有し、重合開始剤の存在下で活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射により重合可能な化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の単官能の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレートなどの2官能性の(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−ヒドラジン等の3官能以上の多官能性モノマーが挙げられる。これらのうち、2官能以上の多官能性モノマーが好ましい。これらのラジカル硬化性化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
また、ラジカル硬化性化合物として、エステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることもできる。
【0035】
カチオン硬化性化合物としては、例えば、ビニルエーテル系化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物などが挙げられる。
【0036】
ビニルエーテル系化合物としては、例えば、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
エポキシ系化合物としては、例えば、1,2−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシルメチル)アジペート、ビスフェニールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェニールF−ジグリシジルエーテル、ビスフェニールS−ジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
オキセタン系化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エーテルなどが挙げられる。
【0039】
本発明において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、活性エネルギー線硬化性化合物のほかに、熱硬化性化合物を含んでいてもよい。
【0040】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の全硬化性化合物に占める上記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物の割合は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0041】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、上記硬化性化合物のほか、光重合開始剤、及び必要に応じて、光増感剤、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、光促進剤、光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤などを配合してもよい。
【0042】
光重合開始剤としては、硬化手段である活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することができる。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−オキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0043】
上記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の固形分全体(硬化により固形化する成分を含む)に対して、例えば1〜98重量%、好ましくは5〜93重量%、さらに好ましくは10〜85重量%、特に好ましくは20〜75重量%である。
【0044】
上記セルロース誘導体の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の固形分全体(硬化により固形化する成分を含む)に対して、例えば1〜98重量%、好ましくは5〜93重量%、さらに好ましくは10〜85重量%、特に好ましくは20〜75重量%である。
【0045】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における上記不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体との比率は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/20である。
【0046】
光重合開始剤の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の固形分全体(硬化により固形化する成分を含む)に対して、例えば0.1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%程度である。
【0047】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工した後、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて保護膜を形成することにより製造される。
【0048】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工方法としては、特に限定されず、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式を利用できる。塗工する際には、溶剤を用いて硬化性樹脂組成物の粘度を調整してもよい。
【0049】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる塗膜は、活性エネルギー線を照射することにより硬化し、保護膜が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらのなかでも、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線の発生源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0050】
保護膜の厚みは、薄型軽量性、保護性、取扱性等の観点から、例えば、10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
【0051】
本発明の偏光板は、偏光子の保護膜として不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いるので、透明で、複屈折が小さいだけでなく、応力がかかっても複屈折が変化しにくいという大きな利点を有する。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、硬化膜(硬化フィルム)の光弾性係数及び位相差の測定、ガラス転移温度の測定は以下の方法により行った。
【0053】
[光弾性係数及び位相差の測定]
厚さ200μmの硬化フィルムを作製し、王子計測機器株式会社製の3次元複屈折計(「KOBRA−WR」)を用いて測定した。
【0054】
[ガラス転移温度の測定]
冷間圧延鋼板(厚さ0.3mm×幅20mm×長さ50mm)に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し(厚さ40μm)、小型UV照射機(アイグラフィック株式会社製、「ECS−401GX」、定格電圧200V、高圧水銀ランプ)で11cmの距離から積算光量350mJ/cm2の紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化フィルムを得た。これを剛体振り子型粘弾性測定装置(株式会社エー・アンド・ディー製、「RPT−3000W」)を用いて、25℃から200℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0055】
実施例1
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液500重量部、下記式(1a)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名「IRR−214K」)50重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物1を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物1を1000μmの膜厚で塗布し、80℃で1時間乾燥した後、小型UV照射機(アイグラフィック株式会社製、「ECS−401GX」、定格電圧200V、高圧水銀ランプ)で11cmの距離から積算光量500mJ/cm2の紫外線を3回照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物1の単独硬化フィルム(厚み188μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0056】
【化2】

【0057】
比較例1
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液500重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート50重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物2を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物2を1000μmの膜厚で塗布し、80℃で1時間乾燥した後、実施例1と同様にして紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物2の単独硬化フィルム(厚み189μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0058】
比較例2
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液500重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3を1000μmの膜厚で塗布し、80℃で1時間乾燥した後、実施例1と同様にして紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3の単独硬化フィルム(厚み191μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0059】
比較例3
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液500重量部、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート50重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物4を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物4を1000μmの膜厚で塗布し、80℃で1時間乾燥した後、実施例1と同様にして紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物4の単独硬化フィルム(厚み185μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0060】
比較例4
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液500重量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート50重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物5を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物5を1000μmの膜厚で塗布し、実施例1と同様にして紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物5の単独硬化フィルム(厚み189μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0061】
実施例2
10重量%の水酸基価32.9mgKOH/gのエチルセルロースの酢酸エチル溶液700重量部、下記式(2)で表されるジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名「FA−513A」)30重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物6を得た。ガラス板上にアプリケーターを用いて活性エネルギー線硬化性樹脂組成物6を500μmの膜厚で塗布し、実施例1と同様にして紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物6の単独硬化フィルム(厚み76μm)を得た。得られた硬化フィルムの外観を目視で観察するとともに、光弾性係数及び位相差を測定した。
【0062】
【化3】

【0063】
実施例及び比較例で得られた硬化フィルムの外観、ガラス転移温度、光弾性係数及び位相差の測定結果を表1に示す。表中、「−」は測定不可を表す。表1より、実施例で得られた硬化フィルムは、透明であり、且つ位相差及び光弾性係数がともに小さい値を示し、複屈折が小さいだけでなく、応力がかかっても複屈折が変化しにくいことが分かる。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも片面が樹脂からなる保護膜で保護された構造を有する偏光板であって、前記樹脂が、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物が、不飽和カルボン酸アシル基及び有橋脂環式骨格を有する化合物である請求項1記載の偏光板。
【請求項3】
不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物が、下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、X1、X2は、同一又は異なって、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、又は1若しくは2以上の炭素数1〜8のアルキレン基と1若しくは2以上の酸素原子又は硫黄原子とが結合した2価の基を示す。m、nは、それぞれ、0又は1を示す)
で表される化合物である請求項1記載の偏光板。
【請求項4】
セルロース誘導体が、メチルセルロース及びエチルセルロースから選択される少なくとも1種である請求項1〜3の何れかの項に記載の偏光板。
【請求項5】
偏光子の少なくとも片面に、不飽和カルボン酸アシル基及び脂環式骨格を有する化合物とセルロース誘導体とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工した後、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて保護膜を形成することを特徴とする偏光板の製造方法。