説明

偏光板用粘着剤組成物およびその製造方法

【課題】防汚性だけでなく、経時的安定性および耐久性をも向上させた偏光板用粘着剤組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の偏光板用粘着剤組成物は、(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が、前記イソシアネート系架橋剤により架橋構造を形成することなく極性基として残存している、ゲル分率が50%以上の(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、(B)
特定のイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含み、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体となってイオン性を示すイオン性固体が、安定かつ略均一に分散されてなる優れた帯電防止性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の官能基を有する(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーおよびイオン性固体を含有する偏光板用粘着剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型テレビをはじめ、カーオーディオ、カーナビゲーション、携帯電話などの表示装置として液晶表示装置(LCD)が数多く採用されている。このLCDに用いられる偏光板は、液晶セルとともに光の通過を制御することで、白黒またはカラー表示を実現する働きを担っている。偏光板は、偏光子を軸に表面保護材、偏光子保護材などの部材から構成され、粘着剤を介して液晶セルに貼合されてなり、偏光度、光透過率、輝度などの光学特性において、高度な特性を有することが要求されている。そのため、こうした偏光板に用いられる粘着剤には、他の部材が有する光学特性を阻害することなく、良好な粘着力を発揮するとともに、帯電防止効果、耐久性などの機能をも充分に発揮する必要がある。
【0003】
こうしたなか、様々な粘着剤が開発されている。たとえば、特許文献1には、アクリル系共重合体、イオン化合物および硬化剤を含有する帯電防止効果を有したアクリル粘着剤が開示されている。該粘着剤は、粘着力とともに再剥離性をも保持するものであり、光学部材用表面保護フィルム用としては好適な粘着剤である。
【0004】
しかしながら、該粘着剤を偏光板に適用すると、アクリル系共重合体が有するアルキレンオキサイド鎖の親水性に起因して、偏光板の剥がれが生じるおそれがあり、偏光板用粘着剤としては必ずしも好適ではない。
【0005】
また、特許文献2には、官能基を有するアクリル系ポリマーとイオン性液体とを架橋剤で架橋してなる粘着剤組成物が開示されており、イオン性液体に含まれるカチオンの1種として種々のイミダゾリウムカチオンが例示されている。これらイミダゾリウムカチオンを含み得るイオン性液体は、粘着剤への添加およびポリマーとの相溶性の向上を図るべく、室温(25℃)で液状を呈する化合物である。
【0006】
しかしながら、該粘着剤組成物を偏光板用の粘着剤に適用すると、そのイオン性液体が有する流動性から、各部材を貼合後、所望のサイズに裁断する際に裁断された端部から粘着剤がはみ出すおそれがある。はみ出した粘着剤は他の製品に付着して残存するおそれがあり、また粉塵などがはみ出した粘着剤に付着して新たな汚れとなるおそれもあり、高い光均一透過性を要求される偏光板に用いられる粘着剤としては、防汚性が不充分である点において好適であるとはいえない。さらに、室温で液状であるイオン性液体は、流動性が高いため経時的にイオン性液体の局在化が生じ、帯電防止性能が不安定であるという問題がある。
【0007】
また、特許文献3には、イミダゾリウムカチオンなどからなる有機塩を帯電防止剤として含む粘着剤が開示されている。この有機塩は、カチオンおよびアニオンのいずれの上にも存在する少なくとも1つの有機置換基を有している塩である。カチオンおよびアニオンの双方に有機置換基を有してなるこれら有機塩は、ポリマーとの相溶性を考慮すれば、必然的に、室温で液状を示すものを選択せざるを得ないものである。
【0008】
すなわち、該文献に記載の粘着剤をもってしても、各部材を貼合後の裁断時における粘着剤のはみ出しおよび経時下での帯電防止性能の安定性を充分に抑制し得ない。
【特許文献1】特開2005−206776号公報
【特許文献2】特開2006−011365号公報
【特許文献3】特表2004−536940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明では、帯電防止性を有するだけでなく、防汚性に優れ、かつ経時的安定性および耐久性をも向上させた偏光板用粘着剤組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、
(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有する少なくとも一部のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が、前記イソシアネート系架橋剤により架橋構造を形成することなく極性基として残存している、ゲル分率が50%以上の(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、
(B)下記式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含み、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体となってイオン性を示すイオン性固体が、
安定かつ略均一に分散されてなる優れた帯電防止性を有している組成物である。
【0011】
【化1】

(式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリール
基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示す。R2は独立して炭
素数1〜14のアルキル基を示す。)
また、前記(B)イオン性固体に含まれる無機アニオンは、PF6-、BF4-、Cl-
Br-、ClO4-、NO3-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-からなる群より選
ばれる1種のアニオンであるのが望ましい。
【0012】
前記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーにおけるモノマー全量100重量%中
、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを60〜99.5重量%、前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを全量0.5〜10重量%の量で含有するのが好ましく、前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基1当量に対し、前記イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基が0.0001〜4当量となる量で、該架橋剤を含有するのが好ましい。
【0013】
また、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、前記(B)イオン性固体が、前記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に残存する前記極性基を含む未反応の官能基によって
、組成物中に安定かつ略均一に分散している。
【0014】
さらに、本発明の偏光板用粘着剤組成物の製造方法は、
(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを前記イソシアネート系架橋剤と、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基からなる極性基を含む未反応の官能基が残存するように反応させて、該官能基を均一に分散させた(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、
(B)下記式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含む、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体となってイオン性を示すイオン性固体を
略均一に分散させて安定に固定させる方法である。
【0015】
【化2】

(式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリール
基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示す。R2は独立して炭
素数1〜14のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の偏光板用粘着剤組成物によれば、優れた帯電防止性を有するだけでなく、偏光フィルムなどの偏光板用部材を貼合した際に粘着剤のはみ出しが低減されるため、得られる偏光板の防汚性に優れる。したがって、偏光板用各部材の有する高度な光学特性を阻害することがない。
【0017】
また、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、経時的に帯電防止性能が安定であるため、本発明を用いて得られる偏光板を採用すれば、高品質を保持したLCDを実現することができる。
【0018】
さらに、本発明の製造方法によれば、特定の未反応の官能基を残存させた(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、特定の(B)イオン性固体を略均一に分散させて安定に固定させた偏光板用粘着剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明の偏光板用粘着剤組成物について、具体的に説明する。
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有する少なくとも一部のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が、前記イソシアネート系架橋剤により架橋構造を形成することなく極性基として残存している、ゲル分率が50%以上の(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、
(B)下記式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含み、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体
となってイオン性を示すイオン性固体が、
安定かつ略均一に分散されてなる優れた帯電防止性を有している組成物である。
【0020】
【化3】

上記式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリ
ール基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示す。R2は独立し
て炭素数1〜14のアルキル基を示す。
【0021】
すなわち、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、上記(A)(メタ)アクリル系部分架橋
ポリマーと、(B)イオン性固体とを含有してなる組成物である。
【0022】
<(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー>
本発明の偏光板用粘着剤組成物に含有される(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマ
ーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られるものである。
【0023】
すなわち、主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、その他のモノマーである、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーとが共重合することにより、(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーの前駆体である
、鎖状構造を有した(メタ)アクリル系重合体となる。そして、該重合体がさらに後述するイソシアネート系架橋剤と反応することにより、架橋構造を有した(A)(メタ)アクリ
ル系部分架橋ポリマーとなる。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、具体的には、たとえば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルなどの(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。本発明に用いられる(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーには、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーが、モノマー全量100重量%中、60〜99.5重量%、好ましくは65〜98.5重量%の量で使用される。
【0025】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸
3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0026】
カルボキシル基含有モノマーとしては、具体的には、たとえば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーには、ヒドロキシル基
含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーの双方を使用してもよく、ヒドロキシル基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーとのどちらか一方を使用してもよい。いずれの場合においても、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーは、これらの総量で、モノマー全量100重量%中、0.5〜10重量%、好ましくは1.5〜5重量%の量で使用される。
【0028】
上記モノマーのほか、本発明の目的を損なわない範囲内で、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリール;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;
(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルキレングリコール;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、酢酸ビニル、スチレンが挙げられる。
【0029】
これら他のモノマーを使用する場合、モノマー全量100重量%中、0〜39.5重量%の量で使用するのが望ましい。
これらのモノマーを共重合させることにより、鎖状構造を有した(メタ)アクリル系重合体が得られる。これらのモノマーを共重合させるためには、重合開始剤を添加するのが望ましい。重合開始剤としては、具体的には、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物、ジフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどの光重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤は、モノマー全量100重量%に対し、0.01〜1.5重量%の量で使用される。
【0030】
このようにして得られる上記(メタ)アクリル系重合体の、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、通常30万〜200万、好ましくは50万〜150万である。(メタ)アクリル系重合体のMwが上記範囲内であると、(メタ)アクリル系重合体か
ら得られる(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーと、(B)イオン性固体との相溶性が適度に保持され、得られる偏光板用粘着剤組成物が発揮すべき粘着力、帯電防止能力などの特性が低下するおそれがない。
【0031】
上記(メタ)アクリル系重合体と反応することにより架橋構造を形成するイソシアネート系架橋剤としては、具体的には、たとえばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびそれらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させた化合物、これらポリイソシアネート化合物のビュレット型化合物やイソシアヌレート化合物、これらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型の分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、トリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートをトリメチロールプロパンと付加反応させた化合物が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、通常上記(メタ)アクリル系重合体100重量%に対し、0.005〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%の量で使用する。また、イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基が、上記ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基からなる官能基の全量1当量に対して、0.0001〜4当量、好ましくは0.005〜0.8当量となるような量で、該イソシアネート系架橋剤を使用するのが望ましい。
【0032】
イソシアネート系架橋剤の使用量が上記範囲内であると、後述するように、(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との反応率に起因して、(A)(メタ)アクリル
系部分架橋ポリマー内にヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を有効な量で残存させることができるとともに、未反応のイソシアネート基も残存させることができる。
【0033】
また、必要に応じて架橋促進剤を使用してもよい。架橋促進剤を使用すると、比較的分子量の低い(メタ)アクリル系重合体においても必要な耐久性能を得ることができる。架橋促進剤としては、テトラメチルブタンジアミン、トリエチレンジアミン等のアミン系架橋促進剤、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクトエ酸スズ等の金属系架橋促進剤が挙げられる。
【0034】
上記(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤との反応率は、通常100%に満たない。そのため、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基のすべてが架橋構造を形成するのではなく、イソシアネート系架橋剤と架橋構造を形成した後においても、その少なくとも一部は(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーに極性基として残存している。
また、イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基についても、その少なくとも一部が未反応の官能基として残存している。
【0035】
すなわち、三次元架橋構造を呈した(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー内の随
所に上記極性基と未反応のイソシアネート基とを含むこれら未反応の官能基が散在しているので、(B)イオン性固体から遊離したアニオンおよびカチオンがこれらの官能基と互いに容易に誘引し合い、上記アニオンおよびカチオンが(A)(メタ)アクリル系部分架
橋ポリマー内に略均一に分散した状態を形成することができ、(A)(メタ)アクリル系
部分架橋ポリマーと(B)イオン性固体との相溶状態が著しく安定することとなる。
【0036】
なお、「略均一に分散する」とは、(B)イオン性固体が、(A)(メタ)アクリル系
部分架橋ポリマーの特定領域に偏在することなく、適度な均一性を保持しつつ、該ポリマ
ー全体中に散在している状態を意味する。(B)イオン性固体がこのような状態を保持していることによって、偏光板用粘着剤組成物として要求される帯電防止能力を、長時間の貯蔵後においても有効に発揮することができる。
【0037】
このように、(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー内に残存するこれらヒドロキ
シル基および/またはカルボキシル基が、未反応のイソシアネート基とともに、未反応の官能基として作用し、後述する(B)イオン性固体と(A)(メタ)アクリル系部分架橋
ポリマーとの相溶性に寄与する重要な働きを担っている。一般的に、室温(25℃)で固体を呈する(B)イオン性固体のような化合物を用いると、ポリマーとの相溶性が低下する傾向にあるものの、本発明では、ポリマーとして、イソシアネート基のみならず、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が未反応の官能基として残存する(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーを採用することによって、(B)イオン性固体とポリマーとの相溶性低下の問題を解決するに至った。
【0038】
このような(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーは、ゲル分率が50%以上、好
ましくは60〜90%になる。ゲル分率を上記範囲内にすることにより、粘着剤自体がリジッドな構造となり、粘着剤自体の流動が生じない。また、粘着剤として充分な耐久性を発揮することも可能となる。
【0039】
<(B)イオン性固体>
本発明の偏光板用粘着剤組成物に含有される(B)イオン性固体は、イミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含んでなる。この(B)イオン性固体とは、その融点が30〜150℃、好ましくは40〜135℃、より好ましくは50〜120℃であり、かつ25℃で固体である化合物のことである。このイオン性固体は、上記融点以上の温度で液体となって、イミダゾリウムカチオンと無機アニオンとが遊離し、イオン性を示すという特性を有している。こうした特性は、偏光板用粘着剤組成物に適用した際に充分な帯電防止能を発揮するだけでなく、上述のとおり(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーとの相溶性の向上にも大きく寄与する。
【0040】
(B)イオン性固体に含まれるイミダゾリウムカチオンとは、具体的には下記式(I)に表わされるイオンである。
【0041】
【化4】

上記式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリ
ール基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示し、基中に二重結合を有していてもよく、基中の水素がNで置き換えられていてもよい。具体的には、メチル、シアノメチル、ビニル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、プロピル、シアノプロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ベンジルなどの基が挙げられる。なかでも、s−ブチル、ベンジル、デシル、ドデシル、テトラデシルが好ましい基として挙げられる。
【0042】
2は独立して炭素数1〜14のアルキル基を示す。具体的には、メチル、シアノメチ
ル、ビニル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、プロピル、シアノプロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどの基が挙げられる。なかでも、メチルが好ましい基として挙げられる。
【0043】
このような式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、たとえば、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−secブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンが挙げられる。なかでも、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−secブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0044】
このようなイミダゾリウムカチオンは、アンモニウムカチオンやピリジニウムカチオンなどに比べ極性が高いため、(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中の官能基に誘引されやすく、また芳香族性が高くスタッキング構造をとりやすいため、より安定性が高くかつ硬さが増した偏光板用粘着剤組成物を得ることができる。
【0045】
(B)イオン性固体に含まれる無機アニオンとしては、(B)イオン性固体が上記融点を示すように選択されるものであれば、特に限定されない。このような無機アニオンとしては、具体的には、たとえばPF6-、BF4-、Cl-、Br-、ClO4-、NO3-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、AlCl4-、I-が挙げられる。なかでも、PF6-
、BF4-、Cl-、Br-、ClO4-、NO3-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-が好ましく、PF6-がより好ましい。
【0046】
これらイミダゾリウムカチオンと上記無機アニオンとを含む(B)イオン性固体としては、具体的には、たとえば、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−secブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1,3−ジメチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ニトレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1,3−ジブチルイミダゾリウム クロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム ブロマイドが挙げられる。
【0047】
従来、粘着剤に用いられていたイオン性液体では、液体であるが故に有する高い流動性に起因して、粘着加工した偏光板を長期保管した場合には、粘着剤層内でイオン性液体の移動または局在化が生じ、帯電防止能力が変動するという問題があった。また、偏光板用部材を貼合した後に所望のサイズに裁断する際、裁断部位である端部から粘着剤が滲出してしまうおそれがあった。このように滲出した粘着剤は、偏光板自体を汚染したり、粉塵などが付着したりする要因となってしまう。
【0048】
これに対し、本発明では、室温(25℃)で固体を呈する(B)イオン性固体を用いるため、液体よりも流動性が低く、長期保管後も安定した帯電防止性能を発揮し、さらに、裁断部位から粘着剤が滲出することを有効に防止することができる。このため、本発明の
偏光板用粘着剤組成物は、優れた防汚効果を発揮することができる。
【0049】
また、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、用いる(B)イオン性固体が室温(25℃)で固体であるために、(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーに残存する未反応の官
能基の作用により、(B)イオン性固体を解離状態に近似させつつ、ポリマー中に略均一に分散された状態のまま安定して固定させることができる。すなわち、上記(B)イオン性固体は、本発明の偏光板用粘着剤組成物中に安定に保持されながらもイオン性を示すという特性を発揮する。
【0050】
したがって、(B)イオン性固体を安定に保持されてなる本発明の偏光板用粘着剤組成物は、経時的安定性が非常に高く、製造時のみならず運搬時、使用時等においても高い品質を保持することができる。さらに、融点以上の温度で液体となってイオン性を示す特性に起因して、(B)イオン性固体が(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーに残存す
る未反応の官能基の作用により解離状態に近似した状態で存在することから、得られる偏光板用粘着剤組成物に有効な帯電防止性を付与することもでき、高い経時的安定性によりこうした帯電防止性をも充分に保持することができる。
【0051】
<偏光板用粘着剤組成物>
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、上記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中
に、上記(B)イオン性固体が安定かつ略均一に分散されてなる、優れた帯電防止性を有する組成物である。
【0052】
上記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーの前駆体である(メタ)アクリル系重合
体の製造には、公知の任意の方法を採用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを含む原料モノマーとを、望ましくは重合開始剤を添加することによって共重合させて(メタ)アクリル系重合体を得る。共重合の方法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法が挙げられるが、本発明では溶液重合を採用する。
【0053】
たとえば、溶液重合法を採用する場合、重合溶媒として酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトンなどが用いられ、反応温度は50〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜15時間、好ましくは5〜10時間である。
【0054】
次いで、得られた(メタ)アクリル系重合体に、イソシアネート系架橋剤と(B)イオン性固体とを同時に配合し、(メタ)アクリル系重合体とイソシアネート系架橋剤とを架橋反応させて(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーを形成させると同時に、(メタ)アク
リル系部分架橋ポリマー中に残存する未反応の官能基の作用により(B)イオン性固体を組成物中に分散させ、本発明の偏光板用粘着剤組成物を得る。すなわち、イソシアネート系架橋剤と(B)イオン性固体とを同時に配合することで、(メタ)アクリル系重合体が(B)イオン性固体を抱き込みつつ、架橋反応を進行させて三次元構造を有する(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーを形成させることができるため、上記未反応の官能基の作用も伴い、(B)イオン性固体はこの三次元構造の内部に安定かつ良好に分散して存在することとなる。
【0055】
また、本発明の偏光板用粘着剤組成物には、通常の粘着剤を製造する際に用いられる添加剤を配合してもよい。添加剤としては、たとえば、充填剤;発泡剤;染料;顔料;シランカップリング剤;重合禁止剤;安定剤;粘着付与樹脂;紫外線吸収剤;酸化防止剤などが挙げられる。
【0056】
得られた偏光板用粘着剤組成物を偏光フィルムなどの偏光板用部材に塗布することにより、粘着剤層が積層された粘着加工偏光板を製造することができる。塗布する際、上記溶液重合により得られた(メタ)アクリル系重合体を含む溶液に、イソシアネート系架橋剤と(B)イオン性固体とを添加し、適度な粘度に調整した後、所望の粘着剤層厚になるように塗布するのが望ましい。
【0057】
たとえば偏光フィルムを用いる場合、偏光フィルムの一方の面に、上記偏光板用粘着剤組成物から形成された粘着剤層を積層する。偏光フィルムとしては、従来公知の偏光フィルムを使用することができる。
【0058】
具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体の鹸化物等のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに、ヨウ素あるいは二色性染料等の偏光成分を含有させて延伸することにより得られるフィルムに、三酢酸セルロース等のセルロース系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等の保護フィルムが積層された多層フィルムなどを使用することができる。
【0059】
このような偏光フィルムなどの偏光板用部材に粘着剤層を形成する方法に特に制限はなく、この偏光板用部材表面に直接バーコーター等を用いて上記偏光板用粘着剤組成物を塗布し乾燥させる方法を採用することもできるが、上記偏光板用粘着剤組成物を一旦剥離性基材表面に塗布し乾燥させた後、この剥離性基材表面に形成された粘着剤層を偏光板用部材表面に転写し、次いで熟成させる方法を採用することが好ましい。
【0060】
こうして形成される粘着剤層の厚さは、乾燥厚で通常は10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲内にある。なお、この粘着剤層は、偏光板用部材の少なくとも一方の面に形成されていればよく、偏光板用部材の両面にこの粘着剤層を形成することもできる。
【0061】
また、上記偏光板には、例えば保護層、防眩層、位相差層、視野角向上層等の他の機能を有する層が積層されていてもよい。
【実施例】
【0062】
次に本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各評価は以下の基準および方法にしたがって行った。
【0063】
《ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)》
得られた(メタ)アクリル系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量をGPC(ゲル
浸透クロマトグラフ法)から求めた。なお、測定条件は以下のとおりである。
装置名:東ソー(株)製、HLC-8120
カラム:東ソー(株)製、G7000HXL 7.8mmID×30cm 1本
GMHXL 7.8mmID×30cm 2本
G2500HXL 7.8mmID×30cm 1本
サンプル濃度:1.5mg/mlになるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0064】
《ゲル分率》
得られた偏光板用粘着剤組成物0.2gを秤量し、テトラヒドロフラン50g中に1晩
浸漬し、200メッシュの金網で濾過後、金網上の残留分を110℃の乾燥機で5時間乾燥し、秤量した。採取した試料重量比からゲル分率(単位:%)を求めた。
【0065】
《塗工面のゴミ付着》
得られた偏光板用粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させて得られた剥離フィルム上に付着したゴミの有無を目視により確認した。
○:付着したゴミは全く確認されなかった。
×:付着したゴミが確認された。
【0066】
《吸着性(表面抵抗値)》
得られた偏光板用粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させて得られた剥離フィルム上に形成された層(粘着剤層)の表面抵抗値(単位:ohm/□)を、TERA OHM METER P−601((株)川口電機製作所社製)によって測定した。
【0067】
《粘着剤はみ出し汚れ》
得られた粘着加工偏光板を836mm×476mmのサイズに裁断してサンプルを得、その裁断部位をルーペで観察して、粘着剤層のはみ出しの有無、および裁断面をガラス面に押し当てた際に付着する粘着剤のはみ出し汚れの有無を以下の基準にしたがって評価した。
○:はみ出しおよびはみ出し汚れは全く確認されなかった。
×:はみ出しおよびはみ出し汚れが発生していた。
【0068】
《経時的安定性》
粘着加工偏光板を裁断して得られた上記サンプルを40℃の温度条件下、2か月間放置し、放置後の吸着性(表面抵抗値、単位:ohm/□)および粘着力(JIS Z 0237準拠、単位:g/25mm)を測定した。
【0069】
《耐久性》
粘着加工偏光板を裁断して得られた上記サンプルを846mm×486mmのガラスへラミネータを用いて貼付した。ガラスに貼付された偏光板を85℃dryおよび60℃95%RH雰囲気下に500時間放置した後、取り出して発泡、剥がれ等の不具合を目視により観察した。
○:発泡・剥がれ等が全く確認されなかった。
×:発泡・剥がれ等が発生していた。
【0070】
[実施例1]
容量1リットルのフラスコにアクリル酸ブチル(BA):97重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):3重量部、および酢酸エチル:100重量部を仕込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、60℃まで加熱した。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を添加し、続けて60℃に保持したまま8時間反応させた後、25℃まで冷却して酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体
溶液1)を得た。該重合体溶液1における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均
分子量(Mw)を求めたところ、150万(固形分 20重量%)であった。
【0071】
次いで、重合体溶液1:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.4重量部(上記2HEAが有するヒドロキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.038当量に相当)、およびイオン性固体A(1−デシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート:融点31℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):2重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液1を得た。該溶液を基材に塗工、乾燥させ、23℃、65%RHで7日間放置後、ゲル分率を測定した結果、70%であった。
上記モノマー組成および用いたイオン性化合物を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
アクリル酸ブチル(BA):88重量部、アクリル酸メチル(MA):10重量部、アクリル酸(AA):0.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):1.5重量部、および酢酸エチル:100重量部、およびメチルエチルケトン20重量部を仕込んだ以外、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液2)を得
た。該重合体溶液2における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量(Mw
)を求めたところ、60万(固形分 40重量%)であった。
【0073】
次いで、重合体溶液2:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.8重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.049当量に相当)、架橋促進剤として、ジラウリン酸ジブチルスズの酢酸エチル希釈溶液(1重量%溶液):0.4重量部、およびイオン性固体B(1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート:融点60℃:酸エチルに溶解させた10重量%溶液):4重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液2を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、64%であった。
上記モノマー組成および用いたイオン性化合物を表1に示す。
【0074】
[実施例3]
アクリル酸ブチル(BA):67.8重量部、アクリル酸フェノキシエチル(PEA):15重量部、アクリル酸ベンジル(BZA):15重量部、アクリル酸(AA):0.2重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):2重量部、および酢酸エチル:150重量部を仕込んだ以外、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液3)を得た。該重合体溶液3における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量(Mw)を求めたところ、100万(固形分 30重量%)であった。
【0075】
次いで、重合体溶液3:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.3重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.023当量に相当)、およびイオン性固体C(1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート:融点135℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):6重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液3を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、55%であった。
上記モノマー組成および用いたイオン性化合物を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
アクリル酸ブチル(BA):84重量部、アクリル酸フェノキシエチル(PEA):15重量部、アクリル酸(AA):0.1重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):0.9重量部、および酢酸エチル:120重量部を仕込んだ以外、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液4)を得た。該重合体溶液4における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量(Mw)を求めたところ、120万(固形分 25重量%)であった。
【0077】
次いで、重合体溶液4:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):
1.25重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.250当量に相当)、およびイオン性固体D(1−secブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート:融点83℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):3.75重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液4を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、81%であった。
上記モノマー組成および用いたイオン性化合物を表1に示す。
【0078】
[実施例5]
アクリル酸ブチル(BA):96.9重量部、アクリル酸(AA):3重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):0.1重量部、および酢酸エチル:120重量部を仕込んだ以外、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液5
)を得た。該重合体溶液5における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量
(Mw)を求めたところ、120万(固形分 25重量%)であった。
【0079】
次いで、重合体溶液5:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):2.5重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.108当量に相当)、およびイオン性固体E(1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート:融点77℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):2.5重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液5を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、83%であった。
【0080】
[比較例1]
容量1リットルのフラスコにアクリル酸ブチル(BA):88重量部、アクリル酸メチル(MA):10重量部、アクリル酸(AA):0.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA):1.5重量部、および酢酸エチル:100重量部を仕込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、60℃まで加熱した。アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を添加し、続けて60℃に保持したまま8時間反応させた後、25℃まで冷却して酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液6)を得た。
該重合体溶液6における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量(Mw)を
求めたところ、150万(固形分 20重量%)であった。
【0081】
次いで、重合体溶液6:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.4重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.049当量に相当)を添加し、イオン性固体は添加せず、そのまま偏光板用粘着剤組成物溶液6として用いた。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、70%であった。
上記モノマー組成および用いたイオン性化合物を表1に示す。
【0082】
[比較例2]
表1に示すモノマー組成にしたがった以外、比較例1にしたがって(メタ)アクリル系
重合体溶液(重合体溶液7)を得た。該重合体溶液7における(メタ)アクリル系重合体
のスチレン換算平均分子量(Mw)を求めたところ、150万(固形分 20重量%)であった。
【0083】
次いで、重合体溶液7:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液)
:0.4重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.049当量に相当)、およびイオン性化合物F(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:融点−6℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):2重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液7を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、72%であった。
【0084】
[比較例3]
溶媒として、酢酸エチル:100重量部、およびメチルエチルケトン:20重量部を用い、表1に示すモノマー組成にしたがった以外、比較例1にしたがって(メタ)アクリル
系重合体溶液(重合体溶液8)を得た。該重合体溶液7における(メタ)アクリル系重合
体のスチレン換算平均分子量(Mw)を求めたところ、60万(固形分 40重量%)であった。
【0085】
次いで、重合体溶液8:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.8重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.049当量に相当)、およびイオン性化合物G(リチウムクロライド:融点606℃):0.08重量部を添加し、よく攪拌して偏光板用粘着剤組成物溶液8を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、66%であった。
【0086】
[比較例4]
表1に示すモノマー組成にしたがった以外、比較例1にしたがって(メタ)アクリル系
重合体溶液(重合体溶液9)を得た。該重合体溶液9における(メタ)アクリル系重合体
のスチレン換算平均分子量(Mw)を求めたところ、150万(固形分 20重量%)であった。
【0087】
次いで、重合体溶液9:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.4重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.038当量に相当)、およびイオン性化合物H(リチウムパークロレート:融点256℃と、ポリエチレングリコールとの混合物:混合比=リチウムパークロレート:ポリエチレングリコール=10重量%:90重量%):0.6重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液9を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、70%であった。
【0088】
[比較例5]
溶媒として、酢酸エチル:150重量部を用い、表1に示すモノマー組成にしたがった以外、比較例1にしたがって(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液10)を得た。
該重合体溶液10における(メタ)アクリル系重合体のスチレン換算平均分子量(Mw)
を求めたところ、100万(固形分 30重量%)であった。
【0089】
次いで、重合体溶液10:100重量部にイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル希釈溶液(10重量%溶液):0.3重量部(上記AAおよび2HEAが有するヒドロキシル基およびカルボキシル基1当量に対して、イソシアネート基0.023当量に相当)、およびイオン性化合物I(トリオクチルメチルアンモニウム トリフルオロメチルスルホネート:融点55℃:酢酸エチルに溶解させた10重量%溶液):6重量部を添加し、偏光板用粘着剤組成物溶液10を得た。該溶液を用いて実施例1と同様にゲル分率を測定した結果、54%であった。
【0090】
[偏光板の作製]
実施例および比較例で得られた偏光板用粘着剤組成物溶液1〜10を、各々ポリエステル製剥離フィルムに塗布した後、乾燥させ、粘着剤層を形成した。このとき、乾燥後の塗布厚は、25μmになるように調整した。
【0091】
次いで、この剥離フィルム上に塗布された粘着剤を200μmの偏光フィルム上に転写し、温度23℃、湿度65%の条件で7日間熟成させて粘着加工偏光板を得、必要に応じて上述の方法によりサンプルを作製した。
【0092】
得られた各剥離フィルム、各粘着加工偏光板および各サンプルの評価結果を表1に示す。
【0093】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有する少なくとも一部のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が、前記イソシアネート系架橋剤により架橋構造を形成することなく極性基として残存している、ゲル分率が50%以上の(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、
(B)下記式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含み、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体となってイオン性を示すイオン性固体が、
安定かつ略均一に分散されてなる優れた帯電防止性を有する偏光板用粘着剤組成物;
【化1】

(式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリール
基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示す。R2は独立して炭
素数1〜14のアルキル基を示す。)。
【請求項2】
前記(B)イオン性固体に含まれる無機アニオンが、PF6-、BF4-、Cl-、Br-、ClO4-、NO3-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-からなる群より選ばれる1種のアニオンであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマーにおけるモノマー全量100重量%中
、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを60〜99.5重量%、前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを全量0.5〜10重量%の量で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基1当量に対し、前記イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基が0.0001〜4当量となる量で、該架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(B)イオン性固体が、前記(A)(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に残存
する前記極性基を含む未反応の官能基によって、組成物中に安定かつ略均一に分散していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項6】
(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーと、イソシアネート系架橋剤とから得られ、
前記ヒドロキシル基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを前記イソシアネート系架橋剤と、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基からなる極性基を含む未反応の官能基が残存するように反応させて、該官能基を均一に分散させた(メタ)アクリル系部分架橋ポリマー中に、
(B)下記式(I)で表わされるイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとを含む、融点が30〜150℃であり、かつ25℃で固体であるとともに該融点以上の温度で液体となってイオン性を示すイオン性固体を
略均一に分散させて安定に固定させる、偏光板用粘着剤組成物の製造方法;
【化2】

(式(I)中、R1は独立して炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリール
基、または該アルキル基の末端が該アリール基で置換された基を示す。R2は独立して炭
素数1〜14のアルキル基を示す。)。

【公開番号】特開2009−251281(P2009−251281A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99236(P2008−99236)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】