説明

停電用交差点明示点滅装置

【課題】停電時、自動車のドライバに対し交差点の存在を認識させ注意喚起することができる、比較的簡単な構成の停電用交差点明示点滅装置を提供する。
【解決手段】発光部本体1は、信号機10の支柱11に取り付けられたビーム12に、信号機10と同じ方向を向けて取り付けられる。発光部本体1の本体ケース2上に太陽電池3設けられ、発光部本体1の前面の発光部4には、多数のLED4aが配置される。本体ケース2内には蓄電体5が配設され、信号機10の電源の停電を検知して停電信号を出力する停電検知器8が設けられる。太陽電池3で発生した起電力を蓄電体5に充電する一方、停電検知器8から停電信号が出力されたとき、蓄電体5からの放電電流を発光部4に供給して、LED4aを点滅動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害や計画停電時などの停電時に、交差点の交通信号機が停止した際、交差点を明示する停電用交差点明示点滅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点などに設置される交通信号機(以下、信号機という)は、通常、商用電源を使用して点灯するため、災害や計画停電時などの停電時には必然的に消灯し、信号機の消えた交差点に自動車が両側から進入し、交通事故や交通渋滞を発生しやすい状態となる。
【0003】
そこで、従来、下記特許文献1において、信号機の電源に、商用電源を直流に変換する整流器、電圧レギュレータ、バッテリ等を備えた直流電源を使用し、停電時には、バッテリに蓄電した電力を使用して、信号機を点灯させる装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−220054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のこの種の信号機は、常時、商用電源の交流電力を直流電力に変換して直流電源を動作させ、バッテリに充電するとともに、信号機を直流電力で点灯動作させるものであり、バッテリなどの設備が大型化して、設置コストが増大しやすい課題があった。
【0006】
つまり、バッテリの充放電を繰り返しながら、信号機を点灯動作させるため、さらに、通常の4方向の道路が交差する交差点の場合、最小でも4箇所に設置された信号機の4個の信号灯が点灯される。また、交差点の前後に信号機が設置される場合には、8箇所に設置された信号機の8個の信号灯が点灯されため、動作電流が大きく、交流直流変換回路、直流電源に使用される充放電回路、及びバッテリなどの蓄電設備が大型化する。このため、設置コストが増大し、電気部品の寿命や耐久性の劣化が早く、保守点検のコストも増大しやすいという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、停電時、自動車のドライバに対し交差点の存在を認識させ注意喚起することができる、比較的簡単な構成の停電用交差点明示点滅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る停電用交差点明示点滅装置は、交差点に設置された信号機の近傍に設置される停電用交差点明示点滅装置であって、該信号機の支柱に取り付けられたビームに、該信号機と同じ方向を向けて取り付けられる発光部本体と、該発光部本体の本体ケース上に設けられた太陽電池と、該発光部本体の前面に設けられ多数のLEDを配置した発光部と、該本体ケース内に配設された蓄電体と、該信号機の電源の停電を検知して停電信号を出力する停電検知器と、該太陽電池で発生した起電力を該蓄電体に充電する一方、該停電検知器から停電信号が出力されたとき、該蓄電体からの放電電流を該発光部に供給して、該LEDを点滅動作させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明の停電用交差点明示点滅装置によれば、災害などによって発生する停電時、交差点の信号機が消えた場合、停電検知器が停電信号を出力し、その停電信号を入力した制御手段は、蓄電体の電力を使用して、発光部のLEDを例えば赤色光などで点滅動作させる。これにより、交差点に進入する自動車のドライバは、その赤色点滅を視認して、信号機が消えているにも拘らず、交差点の存在を容易に認識することができ、他の方向から進入する別の自動車に注意しながら、交差点を通過することとなり、停電時の交通事故の発生を防止することができる。
【0010】
ここで、上記発光部は、黒色表面を有した基板上に多数の有彩色光LEDを円形に配置して構成することが好ましい。これによれば、LEDの配置面を黒色にすることにより、昼間においても、発光部の視認性を高めることができる。
【0011】
また、上記停電検知器には、ホール素子を用いたホール電流センサを使用し、信号機の電源ラインの近傍に取り付けることが好ましい。これによれば、非接触で商用電源の停電を安定して検知することができ、既存の信号機周辺に設置する場合、非常に簡単に本停電用交差点明示点滅装置を設置することができる。
【0012】
また、上記蓄電体には、電気二重層の正極とリチウムイオンを添加した炭素系材料の負極とを有するリチウムイオンキャパシタを使用することが好ましい。
【0013】
蓄電体にリチウムイオンキャパシタを使用した場合、蓄電体の高出力、高エネルギー密度、優れた自己放電特性、高い耐久性と信頼性を実現することができる。また、夏季などの気温上昇時、優れた高温特性と熱暴走を発生させにくい安全性を発揮することができ、安定した蓄電・放電動作を行うことができるので、突然の停電時でも、常に、長時間にわたり発光部を点滅させて交差点を明示することができる。
【0014】
また、交差点の方向に優先方向と非優先方向がある場合、優先方向に向けて設置される発光部本体の発光部には第1色光を発光する第1LEDを設け、非優先方向に向けて設置される発光部本体の発光部には第2色光を発光する第2LEDを設け、第2色光の点滅または第1色光の点滅をさせることが好ましい。これによれば、信号機が消えた場合でも、安全に効率良く自動車を走行させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の停電用交差点明示点滅装置によれば、比較的簡単な構成の器具を信号機の支柱のビームに取り付けるのみで、停電時、自動車のドライバに対し交差点の存在を容易に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す停電用交差点明示点滅装置の斜視図である。
【図2】同装置の正面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置の右側面図である。
【図5】図2のV-V拡大断面図である。
【図6】同装置の分解断面図である。
【図7】信号機の支柱のビームに取り付けられた停電用交差点明示点滅装置の正面図である。
【図8】停電用交差点明示点滅装置の電気回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は停電用交差点明示点滅装置の斜視図を示し、図5はその拡大断面図を示し、図6はその分解断面図を示している。この停電用交差点明示点滅装置は、交差点に設置された信号機10の近傍に設置され、停電時に点滅動作するものであり、前面に発光部4を備えた発光部本体1を有している。発光部4は、信号機10の信号灯と略同じ径を有した円形に形成され、違和感のない形状となっている。
【0018】
発光部本体1は、密閉可能で前後幅が比較的薄い箱型の本体ケース2を備えている。本体ケース2は、図5のように、その前面に、上記のような円形の発光部4が設けられて、その下部は半円形に形成され、本体ケース2の上部は、庇部22として幅広に且つ平坦に形成されており、発光部本体1は、デリネータ(視線誘導標)と類似した形状となっている。本体ケース2の上部の庇部22上には、太陽電池(太陽電池パネル)3が取り付けられている。
【0019】
庇部22上に設置可能な太陽電池3としては、約300mm×125mmの大きさのものを設置することができ、この程度の大きさの太陽電池では、6.0V,700mA、4.2Wの最大出力を発生することが可能であり、後述の如く、40個のLEDを約24時間点滅動作可能な電力を、蓄電体5に充電することができる。
【0020】
本体ケース2の前面は、図6のように、円形に開口して形成され、その円形開口部に透明合成樹脂製の透明板20が開口部を覆って取り付けられ、透明板20の表面には、非反射シート20aが接着される。さらに、透明板20の内側に、円形の発光部4が取り付けられる。発光部4は、円形の基板(回路基板)21に多数の赤色または黄色のLED4aを取り付け、その背面に、図8に示す点灯回路7、充放電コントローラ6等を実装して構成される。基板21の前面は黒色が付され、昼間にLED4aが点灯した際、LED4aの赤色光または黄色光を自動車のドライバが容易に視認できるようになっている。円形の発光部4には、例えば、定格電流約15mAのLED4aが例えば40個、適度な間隔をおいて配置される。
【0021】
一方、基板21の背面には、蓄電体5として、ここではリチウムイオンキャパシタが取り付けられている。なお、蓄電体5には、リチウムイオンキャパシタに代えて、電気二重層コンデンサ、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池等を使用することもできる。
【0022】
蓄電体5にリチウムイオンキャパシタを使用した場合、リチウムイオンキャパシタは、電気二重層の正極とリチウムイオンを添加した炭素系材料の負極とを有するキャパシタであり、他のキャパシタや蓄電池に比べ遥かに高い高出力と高エネルギー密度の蓄電を実現することができる。また、リチウムイオンキャパシタは、夏季などの気温上昇時、優れた高温特性を有し、優れた自己放電特性を有しており、安定した蓄電・放電動作をさせることができ、さらに、リチウムイオンキャパシタは、高い作動電圧範囲、高い耐久性と信頼性、優れた自己放電特性、及び優れた安全性を有し、ケース等の小型化が可能である。
【0023】
具体的には、リチウムイオンキャパシタの蓄電体5は薄いシート状に形成されるため、発光部本体1の本体ケース2内における基板21背面の狭いスペースに、簡便に収納することができる。蓄電体5で使用されるリチウムイオンキャパシタとしては、例えば電圧3.8V、容量1100Fのキャパシタを使用することができ、このキャパシタに定格電圧の電力を蓄電した場合、上記発光部4のLED4a(定格15mA、40個のLED)を、50m秒の点灯時間で、毎分60回の点滅を、約24時間動作させることができる。したがって、停電後、太陽電池3による充電が無い状態で、最大24時間は発光部4を点滅動作させることができるようになっている。
【0024】
また、基板21の背面には、上記制御手段として充放電コントローラ6が実装されている。充放電コントローラ6は、図8のように、太陽電池3で発生した起電力を蓄電体5に充電する一方、信号機10の商用電源が停電したとき、それを検知して停電検知器8から出力される停電信号を入力し、その停電信号を入力すると、蓄電体5からの放電電流を発光部4のLED4aに供給して、LED4aを点滅動作させるように構成される。
【0025】
充放電コントローラ6は、例えばシングルチップCPUから構成され、予め記憶された制御プログラムデータに基づき、停電検知器8から出力される停電信号を入力し、その停電信号を入力したとき、蓄電体5からの放電電流を、点灯回路7を通して発光部4のLED4aに供給し、LED4aを所定の周期で点滅動作させる。また、昼間に太陽電池3が所定電圧以上の起電力を発生している場合、その電力を蓄電体5に送り定電圧充電を行なうようになっている。
【0026】
図8に示す停電検知器8は、信号機10に供給される商用電源の電流の遮断つまり停電を検知する小型の電流センサから構成され、信号機10のビーム12或いは支柱11に配線される信号機の電源ラインの近傍に非接触で取り付けられる。停電検知器8には、例えば、ホール素子を用いたホール電流センサが使用される。ホール電流センサの停電検知器8は、小型の電流センサであるため、電源ラインの近傍に簡単に取り付けられ、信号機の電源ラインに流れる電流によって発生する磁界を検出し、その磁界の非検出信号を停電信号として出力する。また、小型のホール電流センサの停電検知器8は、非接触で商用電源の停電を安定して検知することができ、既存の信号機に設置する場合、信号機を改造することなく、非常に簡単に設置することができる。
【0027】
上記構成の停電用交差点明示点滅装置は、図7に示すように、信号機10の支柱11のビーム12に、信号機10の信号灯の方向と同じ方向を向けて、取り付けられ設置される。
【0028】
発光部本体1の取り付けは、本体ケース2の裏板23(図6)の背面に設けた平リブ24とUバンドを用いて、ビーム12の一部に非常に簡単に行なうことができ、特に、発光部本体1の本体ケース2内に電源となる蓄電体5が配設され、太陽電池3も本体ケース2の上部に取り付けられているので、発光部本体1をビーム12に取り付けると共に、停電検知器8を信号機の電源ライン近傍の適当な箇所に取り付けるのみで、非常に簡便に設置することができる。また、既存の信号機は、その殆どがビーム12の端部に取り付けられているので、そのビーム12を利用して、発光部本体1を取り付ければ、信号機の信号灯と同じ水平位置で、信号灯に隣接して取り付けることができる。
【0029】
なお、交差点の方向に優先方向と非優先方向がある場合、優先方向に向けて設置される発光部本体1の発光部4には、第1色光として例えば黄色光を発光する黄色のLED4aを設け、非優先方向に向けて設置される発光部本体1の発光部4には、第2色光として例えば赤色光を発光する赤色のLED4aが設けられる。これにより、停電時、優先方向に向いた補助信号機の発光部4は黄色点滅を行い、非優先方向を向いた発光部4は赤色点滅を行なうこととなる。
【0030】
通常時、停電用交差点明示点滅装置の充放電コントローラ6は、太陽電池3が有効電圧の起電力を発生している昼間において、その電力を蓄電体5に供給して、定電圧充電を行い、これにより、蓄電体5は、通常時、定格電圧の電力を蓄電した状態となる。
【0031】
一方、災害や計画停電により停電となると、信号機10の電源ラインの通電が停止する。このとき、停電検知器8から停電信号が充放電コントローラ6に送られ、充放電コントローラ6は、この停電信号を入力すると、蓄電体5から放電される電力を点灯回路7に供給し、点灯回路7を動作させて、発光部4のLED4aは赤色または黄色の点滅動作を行なう。発光部4の点滅動作は、例えば50m秒の点灯時間で、毎分60回の点滅動作を継続して行うこととなる。そして、信号機への電力供給が再開された場合、停電感知器8と充放電コントローラ6の動作により、発光部4の点滅動作が停止する。
【0032】
このように、停電用交差点明示点滅装置の発光部4は、停電時に信号機が消えた場合、赤色または黄色の点滅動作を行なうため、交差点に進入する自動車のドライバは、その赤色点滅を視認して、信号機10が消えているにも拘らず、交差点の存在を容易に認識することができ、他の方向から進入する別の自動車に注意しながら、交差点を通過することとなり、停電時の交通事故の発生を防止することができる。
【0033】
また、停電用交差点明示点滅装置は、発光部4の電源として、蓄電体5と昼間には蓄電体5に充電する太陽電池3を備え、発光部4のLED4aは、蓄電体5に蓄電された電力により約24時間連続して点滅動作させることが可能であり、停電が何日間も続いた場合でも、太陽電池3による蓄電体5の充電のみで、発光部4を継続して点滅動作させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 発光部本体
2 本体ケース
3 太陽電池
4 発光部
4a LED
5 蓄電体
6 充放電コントローラ
7 点灯回路
8 停電検知器
10 信号機
11 支柱
12 ビーム
20 透明板
21 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置された信号機の近傍に設置される停電用交差点明示点滅装置であって、
該信号機の支柱に取り付けられたビームに、該信号機と同じ方向を向けて取り付けられる発光部本体と、
該発光部本体の本体ケース上に設けられた太陽電池と、
該発光部本体の前面に設けられ多数のLEDを配置した発光部と、
該本体ケース内に配設された蓄電体と、
該信号機の電源の停電を検知して停電信号を出力する停電検知器と、
該太陽電池で発生した起電力を該蓄電体に充電する一方、該停電検知器から停電信号が出力されたとき、該蓄電体からの放電電流を該発光部に供給して、該LEDを点滅動作させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする停電用交差点明示点滅装置。
【請求項2】
前記発光部は、黒色表面を有した基板上に、多数の有彩色光LEDを円形に配置して構成されたことを特徴とする請求項1記載の停電用交差点明示点滅装置。
【請求項3】
前記停電検知器には、ホール素子を用いたホール電流センサが使用され、前記信号機の電源ラインの近傍に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の停電用交差点明示点滅装置。
【請求項4】
前記蓄電体として、電気二重層の正極とリチウムイオンを添加した炭素系材料の負極とを有するリチウムイオンキャパシタが使用されることを特徴とする請求項1記載の停電用交差点明示点滅装置。
【請求項5】
前記交差点の方向に優先方向と非優先方向がある場合、優先方向に向けて設置される前記発光部本体の発光部には第1色光を発光する第1LEDを設け、非優先方向に向けて設置される該発光部本体の発光部には第2色光を発光する第2LEDを設け、停電時、該第2LEDは第2色光で点滅させ、該第1LEDは第2色光で点滅させることを特徴とする請求項1記載の停電用交差点明示点滅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41507(P2013−41507A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179127(P2011−179127)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】