健康状態測定装置および測定方法
【課題】便を採取することなく、非接触で簡単に排便時の便の腐敗成分濃度を計測することができ、これによって、人の健康状態を知ることができる健康状態測定装置およびその方法を提供する。
【解決手段】排便時に併発されるガス中の所定成分濃度をガスセンサによって測定し、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便に含まれる腐敗成分であるアンモニア、クレゾールまたはインドールの少なくともいずれか1つの濃度推定値を演算する。
【解決手段】排便時に併発されるガス中の所定成分濃度をガスセンサによって測定し、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便に含まれる腐敗成分であるアンモニア、クレゾールまたはインドールの少なくともいずれか1つの濃度推定値を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内の健康状態を判断するための有力な指標の一つである排泄物中の腐敗成分(アンモニア、クレゾールまたはインドール)濃度を、非接触で推定することのできる健康状態測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の健康状態を知るための指標の一つとして便中の腐敗成分濃度を計測することが行われている。通常は、排泄された便を採取してこれを非極性溶媒等に溶解しガスクロマトグラフィやイオンクロマトグラフィ等の機器を用いてアンモニア等の計測を行っている。
【0003】
また、非接触で排泄物中の腐敗成分濃度を測定あるいは推定する技術としては特許文献1および2が知られている。特許文献1の健康測定装置は、排泄時に発生した臭気を酸化触媒で脱臭し、そのときに要した酸化電流から臭気成分濃度を検出するものである。
【0004】
特許文献2の生体モニタ装置は、布製のT字帯にガスセンサを装着し、肛門から放出されたガスをガスセンサで検知してデータ化し、メモリに蓄えられたデータと過去のデータとを比較し、差が大きい場合など異常が認められる場合に表示装置に警告を表示するものである。
【0005】
また、特許文献3には腸内ガス成分測定方法および放屁検知方法が開示され、特許文献4には排泄物から出る排泄ガス中の水素ガスをガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知することが記載されている。
【特許文献1】特開平8−211048号公報。
【特許文献2】特開平9−43182号公報。
【特許文献3】特許3525157号公報。
【特許文献4】特開2005−315836号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排泄された便を採取し機器を用いて測定する一般的な方法にあっては、排便時のサンプリングに手間がかかってしまう。また、採取してから計測までの間、便を安定して保存しておく必要があり、そうしないと、便に含まれている腸内細菌の代謝により腐敗物濃度が排便直後の便の値からずれて正確に計測できなくなる等の不具合もある。
【0007】
排便中の腐敗成分は、臭気は強いものの濃度が低く、かつ揮発しにくい成分が多いため、排便時のガスからダイレクトに検知することは困難であった。さらに、発生したガス成分は直ぐに便鉢内に拡散されてしまうため、ますます濃度が低下して検知しにくくなる。
また、特許文献1,2に開示される方法はいずれも目的とする成分の濃度をガスセンサで直接測定する方法であり、便から放出されるこれら目的成分の濃度が微量の場合は記載されているようなガスセンサでは高精度に測定することが困難である。従って、前述したように濃度が低い腐敗成分を測定対象とする健康状態測定装置として採用が難しい。
特許文献3には腸内ガス成分測定方法および放屁検知方法は、体外に排出された腸内ガスのうち炭酸ガス、メタン、水素の有無を検知するのみで、腸内状態情報として必要な定量的な計測はしていない。
【0008】
特許文献4は本出願人による本発明と同じ腸内状態報知装置およびその方法に関する発明である。この装置では、排泄物から出る排泄ガス中の所定成分濃度をガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知するものである。腸内状態情報としては、腸内に存在する種々の菌の総数、ビフィズス菌の数、悪玉菌の数、腸内菌の総数のうちのビフィズス菌数の割合、又は、腸内菌の総数のうちの悪玉菌数の割合等を採用しており、本発明とは目的とする求める腸内状態情報の内容が異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る健康状態測定装置は、排便時に非接触でアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの少なくとも1つを成分として含む便中の腐敗成分の濃度を計測するための健康状態測定装置であって、排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定するガスセンサと、あらかじめ前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを記憶している記憶装置と、前記ガスセンサで測定された所定成分濃度を前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データに適用し、前記便に含まれる腐敗成分の濃度を演算する制御部と、を有する構成である。
【0010】
このように、便中の腐敗成分濃度と併発ガス中の所定成分の濃度との密接な関係を利用する構成とすることにより、腸内態情報の一つで高精度の測定が困難な便中の腐敗成分濃度を、高精度の測定が比較的容易な排便時の併発ガス中の所定成分の濃度の計測によって間接的に知ることが出来るため、便中の腐敗成分濃度を簡単な構成で精度良く求めることが可能となる。
【0011】
上記所定成分としては二酸化炭素であることが好ましい。また、前記所定成分濃度−腐敗成分換算データとして、二酸化炭素濃度と便中に含まれるカルボン酸濃度との換算データ、およびカルボン酸濃度と腐敗成分濃度との換算データを使用することができ、カルボン酸としては、酢酸または総カルボン酸を用いることができる。ここで総カルボン酸とは腸内菌の代謝により生成される総てのカルボン酸であり例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを示す。
【0012】
また、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データとして、二酸化炭素濃度と便中に含まれる水分量との換算データ、および水分量と腐敗成分濃度との換算データを使用することもできる。
【0013】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであっても良い。この場合は、計測値を腐敗成分濃度へ直接換算するため、換算誤差が累積せず高精度の測定が可能となる。
【0014】
所定成分が水素であり、かつ、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、水素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであっても良い。この場合は、併発ガス中の含有率の高く高精度の濃度計測が可能な水素を計測対象とし、かつ、計測値を腐敗成分濃度へ直接に換算するため、換算誤差が累積せず高精度の測定が可能となる。
【0015】
前記ガスセンサは、少なくとも本発明における所定成分の最高濃度に対応する出力を検出することが可能であればどのようなものでも良い。さらに、前記ガスセンサと連動する排便検知手段を備えていてもよい。これにより大便を検知して確実にガスセンサのデータを取り込むので誤った情報を使用者に伝えることがなくなる。
【0016】
本発明の健康状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。また、携帯型にして、どこのトイレに入っても手軽に腐敗成分濃度を測定できるようにすることも可能である。
【0017】
本発明の健康状態測定方法は、排便時に非接触で便の腐敗成分(アンモニア、クレゾール、インドール、スカトールまたはフェノールの少なくとも1つ)の濃度を計測する健康状態測定方法であって、この方法は、ガスセンサを使用して排便時に併発されるガス中の所定成分濃度を測定し、次に、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便中の腐敗成分濃度の推定値を演算する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の健康状態測定装置および健康状態測定方法によれば、排泄物に直接触れることなく簡便に便の腐敗成分濃度を測定することができる。そのため、従来困難であった毎日の生活の中での体調の定常的チェックを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては便中の腐敗成分濃度を健康状態の判断に使用する。腸内細菌により分解されたアミノ酸代謝物には発がんに関係する物質が多く認められている。トリプトファン由来のインドールは膀胱がんおよび白血病に、チロシン由来のフェノールおよびクレゾールは皮膚がんに、アンモニアは肝臓がんに関係があるといわれている。腸内の健康状態を維持するためにはなるべく腐敗成分濃度を低下させることが望ましいが、体調不良や食餌の影響により便中濃度が高くなる。したがって便に含まれる腐敗成分濃度を知ることで健康状態を管理することが可能になる。
【0020】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。図1(a)〜(c)は、検出されたガス濃度から便中の腐敗成分濃度を推定するための手順を示す一例であり、(a)は任意の測定における排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度をガスセンサで測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便所要時間を表し、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。ここでの排便時間とはガスセンサの出力が記憶された時間である。また、縦軸はガスセンサの出力電圧V(Volt)を表したものである。そして、本例で用いたガスセンサは出力電圧Vが二酸化炭素濃度(Vol%)に対応して出力されるものであるため、ガス中の二酸化炭素濃度はこの出力電圧変化に対応したものとなる。
【0021】
ここで、ガスセンサの種類によっては測定雰囲気のガス濃度や温度などの測定環境の変化の影響を受ける場合があるため、通常の測定においては、基準とする環境条件のときの出力電圧値を基準出力値(Vb値)として、この値からの変化量を測定値として採用する。本例の場合は排便開始時t1のセンサ出力電圧値Vb1を前記の基準値として採用しており、後述するように、センサ出力電圧Vの計測値群Vxのなかでの最大値をVmaxとしたとき、Vmax−Vb1をガス濃度測定におけるセンサ出力最大値Vp(以下、ピーク値と呼ぶ)とする。従って、この例では図中のピーク値Vpに相当する濃度値が二酸化炭素濃度測定での最高濃度となる。
【0022】
ここで、本発明におけるガスセンサは、少なくとも本発明における所定成分の最高濃度に対応する出力を検出することが可能であればどのようなものでも良い。
我々の実験によると、本発明の目的とする腸内状態パラメータのひとつである便の腐敗成分濃度は、排便量が多いときの便ほどより正確に腸内状態を反映した値となること、および、ガスセンサの出力のVp値は排便量が最も多い時点で出現することが確認されている。従って、このときの、言い換えればVp値を記録したときの、対応するガス濃度を採用すれば、より正確な腐敗成分濃度を推定することができることになる。
【0023】
なお、二酸化炭素濃度(センサ出力)のデータは、本装置が次に使用される前に当該濃度を消去するか、あるいは、別の記憶部に移行させることにより、データの混交を防止することができる。以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0024】
図1(b)は二酸化炭素センサの出力電圧の最高値(Vp値)に対応する二酸化炭素の濃度と便中の酢酸濃度との相関を示すグラフのモデルである。後述の実施例において詳細に説明するが、実測したところ便中の酢酸濃度と併発されるガス中の二酸化炭素濃度には本図のような相関があることが判明した。二酸化炭素は小腸での消化を逃れた食物繊維などの難消化性の多糖類が大腸内の腸内細菌により代謝される際に、酢酸、酪酸、プロピオン酸などのカルボン酸が産生されると同時に産生される。このことから二酸化炭素と腸内で産生される総カルボン酸濃度との間には相関関係があることが推測される。また酢酸は腸内で生成されるカルボン酸の50〜70%の割合を占めるため酢酸濃度も二酸化炭素濃度と相関があると推測される。ここでは、ある測定で得られた二酸化炭素のVp値に対応する酢酸濃度をCacとした。なお、総カルボン酸濃度や酢酸濃度の他に、便の水分量もガス中の二酸化炭素濃度と相関があることが判明しており、この水分量をカルボン酸濃度等と同様に利用することもできる。
【0025】
図1(c)は酢酸濃度と腐敗成分濃度との相関を示すグラフのモデルである。便中の酢酸濃度と腐敗成分濃度の相関は、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示すことが判明した。すなわち、上記の酢酸濃度Cacに対応する腐敗成分濃度Cpuを得ることができる。
【0026】
腸内の腐敗濃度は食餌や体調の影響を受ける。肉類などの高脂肪高タンパク食では腐敗菌が増殖し、アンモニア、クレゾールまたはインドールのようなタンパク質の代謝物が多量に産生され腸内はアルカリ側に傾く。一方で、食物繊維などを多く含む食餌では、小腸での消化を逃れた食物繊維が大腸内の腸内細菌により代謝され、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸が産生し腸内のpHを低下させ、腐敗菌の増殖を抑制し腐敗成分の産生を抑制する。腸内のカルボン酸濃度が高いほど腐敗成分濃度が低下するという負の相関があると推測される。酢酸濃度と同様に総カルボン酸濃度あるいは水分量を使用することもできる。
【0027】
本グラフから、ガスセンサーの出力ピーク値Vpを得てそのVpに対応する二酸化炭素濃度を二酸化炭素と酢酸の関係をあらわすグラフに適用してCacを得、次いで酢酸と腐敗成分濃度Cpuの関係をあらわすグラフからCacに対応する腐敗成分濃度Cpuを得ることができることが判る。言い換えれば、併発ガス中の二酸化炭素濃度を計測することによって、対応する排便の腐敗成分濃度Cpuが測定できることが示されている。得られた腐敗成分濃度Cpuを表示して本人に示したり、さらに、記憶部に蓄積しておき、適宜呼び出して時系列の腐敗成分濃度を表示することにより毎日の健康状態を管理することができる。
【0028】
本発明の健康状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。また、携帯型にして、どこのトイレに入っても手軽に腐敗成分濃度を測定できるようにすることも可能である。
【0029】
図2は、本発明の健康状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。便器1に付設された健康状態測定装置を内蔵した衛生洗浄便座装置2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。脱臭ファン用排気通路4内に二酸化炭素センサ5と排便検知手段である臭いセンサ6が取り付けられている。また、記憶装置7および制御部8は一体化して衛生洗浄便座装置2の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果である腐敗成分データの表示部9は、衛生洗浄便座装置の操作部10に組み込まれている。
【0030】
すなわち、健康状態測定装置Mの構成は、二酸化炭素センサ5、臭いセンサ6、記憶装置7、制御部8および腐敗成分データ表示部9からなる。なお、二酸化炭素センサ5および臭いセンサ6と制御部8とのデータ交換は結線により、また制御部8と表示部9とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0031】
図3は、本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。使用者(以後、「ユーザ」と呼ぶ。)の動作を左側に、健康状態測定装置が行う処理(衛生洗浄便座装置の処理を含む)を中央に、また、排便検知手段である臭いセンサの動作を右側に、それぞれ振り分けて表示した。
【0032】
以下、本図を説明する。ユーザはトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の健康状態測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の便の腐敗成分濃度の推定値を表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0033】
ユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知される。すると健康状態測定装置の電源スイッチが入りガスセンサと臭いセンサが起動される。人体検知センサを使わない場合は、ユーザが健康状態測定装置の電源を手動で入れてもよい。
【0034】
ユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、ガスセンサと臭いセンサによる併発ガスの所定成分の濃度計測および計測結果の記憶を行うガス成分濃度計測動作が開始される。着座センサを使わずにユーザが測定開始スイッチを押してもよい。
【0035】
ここで稼動開始時の両センサの時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1、臭いセンサの信号値をVs1と呼ぶ。
【0036】
ユーザが排便を開始し終了するまで、両センサは一定時間txごとにデータVxおよびVsxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0037】
排便終了後、ユーザが衛生洗浄便座装置の洗浄ボタンを押しておしり洗浄を開始する。このとき、この洗浄ボタンの押し下げ動作と連動させて健康状態測定装置のガス成分濃度の計測動作を終了させると共に、得られた計測結果に基づいた腐敗成分濃度の推定動作に移行させる。そして、排便終了時の時間t2と各センサのそのときの検知データV2、Vs2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンの押し下げ動作と連動させずにユーザが手動でガス成分濃度の計測動作を終了させる形式としてもよい。
【0038】
さらに臭いセンサ側では、t1〜t2の範囲の最大値であるVsmaxを検索し、その値が閾値(Vc)よりも高いかどうかを比較する。もしVsmax≦Vcであった場合は排便なしと判断して臭いセンサとガスセンサの記録を消去する。Vsmax>Vcであった場合は排便ありと判断する。
【0039】
排便ありと判断された場合、制御部ではt1〜t2の範囲で二酸化炭素濃度の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。以上のことにより、尿をしたときと便をしたときとの区別が確実に出来、排便を間違いなく検出できる。また人が長く滞在すると呼気によりセンサの出力が変動することがあるが、そのような排便ではない場合との区別ができる。
【0040】
上述の図1(b)に示したような相関データに基づいてピーク値Vpに対応する酢酸濃度Cacを同定し、図1(c)の相関データに基づいて酢酸濃度Cacに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0041】
ユーザが離座すると、それを着座センサが感知し、また、退室すると人体検知センサによって退室が検知される。健康状態測定装置のスイッチは、離座または退室が検知されたときに電源offとする。
【0042】
図4(a)〜(c)は、本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)の一例を示す概要図である。(a)は洋式便器の外観図であり、健康状態測定装置11は便鉢3の外側面に取り付けられている。また、(b)は(a)のA−A矢視図であって、健康状態測定装置11は、便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して設けられたフック型の吸入ファン用通路12によって便鉢3に固定されている。健康状態測定装置11内部には、吸入ファン13、二酸化炭素センサ5、一体化させた記憶装置7および制御部8が組み込まれている。
【0043】
(c)には、便器に取り付けられた健康状態測定装置11を便座2に座ったユーザから見た状態(平面図)を示した。健康状態測定装置11の上面はコントロールパネルになっていてユーザ操作用ボタン14と腐敗成分データ表示部15が設けられている。
【0044】
図5は、本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。ユーザの動作を左側に健康状態測定装置による処理を右側に振り分けて表示した。
【0045】
まずユーザが入室しユーザ操作ボタンの中の動作開始スイッチを入れる。すると、健康状態測定装置の吸入ファンが起動し、次にガスセンサの起動および表示画面の起動が行われ、さらにガスセンサからの出力の記憶も開始される。ここで稼動開始時のガスセンサの検出時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1と呼ぶ。
【0046】
ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサは一定時間txごとにデータVxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0047】
排便終了後、ユーザはユーザ操作用ボタンのうち排便終了スイッチを入れる。この操作により、ガス成分濃度計測の終了処理と次の腐敗成分濃度算出処理が開始される。すなわち、検出時刻t2およびそれに対応するガスセンサの信号値V2が書き込まれ検出時刻t1から継続させていた時刻txごとのガスセンサの信号値Vxの記憶部への書き込みが終了する。次に、制御部では記録されたt1〜t2の範囲のガスセンサ出力信号値Vx群の中での最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0048】
上述の図1(b)に示したと同様な、二酸化炭素濃度と総カルボン酸濃度との相関データに基づいてピーク値Vpに対応する総カルボン酸濃度Ccbを同定し、図1(c)に示したと同様な総カルボン酸濃度と腐敗成分濃度との相関データに基づいて総カルボン濃度Ccbに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0049】
その後、ユーザがユーザ操作用ボタンのうち動作終了スイッチを押して健康状態測定装置の動作は終了する。これによって、ガスセンサ、表示画面および吸入ファンの動作も終了する。
【0050】
図6は、本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)の一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は透視外観図である。(a)に示すように携帯タイプの健康状態測定装置の本体16と検知部17とに分かれていて、本体16の表面には腐敗成分データ表示部9と動作開始スイッチ18および計測開始スイッチ19が配置されている。なお、(b)に示すように健康状態測定装置は携帯および使用に便利なように薄型に設計している。
【0051】
健康状態測定装置の構造は、(c)に示すように検知部17の先端部には吸気口17a、本体16内部には吸入ファン13、二酸化炭素センサ5、一体化させた記憶装置7および制御部8、位置検知手段21、さらには電池20が組み込まれている。
【0052】
図7は、本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。ユーザの動作が左側に、健康状態測定装置による処理が右側に振り分けて表示してある。
【0053】
まずユーザが入室し、健康状態測定装置の動作スイッチを入れる。すると、本タイプの健康状態測定装置は携帯可能に電池を電源としているため、まず電源がonされて吸入ファンが起動し、次にガスセンサの起動および表示画面の起動も行われる。さらに位置検知手段を構成し、人体と吸気口17aとの距離を検知する超音波センサが起動される。この位置検知手段は、ユーザが吸気口17aの位置を適宜変化させて超音波センサが予め設定されたガス成分濃度の計測での最適位置を検知したとき、ユーザにその旨が報知される機能を備えたものである。次に、最適位置検知の報知によりユーザが排便を開始すると共に、ガスセンサ出力の記憶が開始される。ここで記憶開始時のガスセンサの検出時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1と呼ぶ。
【0054】
ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサは一定時間tx(例えば1秒)ごとにデータVxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0055】
排便終了後、ユーザは排便終了スイッチを入れる。この操作により、ガスセンサと吸入ファンは停止され、このときの検出時刻t2およびそれに対応するガスセンサの信号値V2が書き込まれ記憶部への書き込みが行なわれて、一連のガス成分濃度計測の処理が終了する。次に、制御部では計測結果に基づく腐敗成分濃度推定処理が開始され、まず、記憶された計測結果でのt1〜t2の範囲におけるガスセンサ出力の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0056】
二酸化炭素濃度と便の水分量との相関データに基づいてピーク値Vpに対応する水分量Brを同定し、水分量と腐敗成分濃度との相関データに基づいて水分量Brに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0057】
その後、ユーザが再び動作スイッチを押して健康状態測定装置の動作は終了すると共に電源がoffとなる。表示画面の終了については、上記動作スイッチを押したときに一緒に消去しても良いし、別途、表示画面終了ボタンを設けておいても良い。
(実施例)
以下、併発されたガス中の所定成分濃度と腐敗成分濃度との相関を調べた実施例を示す。
実施例1(衛生洗浄便座装置への組込タイプ)
本実施例は、図2に示した衛生洗浄便座装置への組込タイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図3に示した手順に沿って操作を行った。
【0058】
図8(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分濃度であるアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便の酢酸濃度を推定し、さらに酢酸濃度からアンモニア濃度を推定した。
【0059】
(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度(容量%で表示)と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関があることが判った。ここで、二酸化炭素濃度は二酸化炭素を計測するガスセンサの出力電圧のピーク値Vpから求められたものである。また、(c)は便中の酢酸濃度と便中のアンモニア濃度(μg/g)との相関を示すデータである。このデータから見て、多少のばらつきはあるものの酢酸濃度とアンモニア濃度には相関があることが分る。
実施例2(衛生洗浄便座装置型洋式便器への組込タイプ)
測定対象をアンモニアからクレゾールに変更した以外は実施例1と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図9(a)は、本実施例で採用した、二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の酢酸濃度とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの酢酸濃度とクレゾール濃度には相関があることが分る。
実施例3(洋式便器後付けタイプ)
本実施例は、図4に示した洋式便器後付けタイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図5に示した手順に沿って操作を行った。図10(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素からアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便中の総カルボン酸濃度(図中ではT−VFAと表示)を推定し、さらに総カルボン酸濃度からアンモニア濃度を推定した。総カルボン酸には酢酸が最も多く含まれるが、その他プロピオン酸、酪酸が含まれている。
【0060】
図10(b)は排便時に併発されたガス中の二酸化炭素濃度(電圧による。容量%で表示)のピーク値Vpと、そのときに採取した便中の総カルボン酸濃度との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの相関が認められた。また、(c)は便中の総カルボン酸濃度と便中のアンモニア濃度との相関を示すデータである。このデータから見て、総カルボン酸濃度とアンモニア濃度には、ほぼ良好な相関があることが分る。
実施例4(洋式便器後付けタイプ)
測定対象をアンモニアからクレゾールに変更した以外は実施例3と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図11(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の総カルボン酸濃度とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの総カルボン酸濃度とクレゾール濃度には相関があることが分る。
実施例5(携帯タイプ)
本実施例は、図6に示した携帯タイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図7に示した手順に沿って操作を行った。図12(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素からインドール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便の水分量を推定し、さらに水分量からインドール濃度を推定した。
【0061】
図12(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度(電圧による。容量%で表示)のピーク値Vpと、そのときに採取した便の水分量との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの相関が認められた。また、図12c)は便の水分量と便中のインドール濃度との相関を示すデータである。このデータから見て、水分量とインドール濃度には、ほぼ良好な相関があることが認められた。
実施例6(携帯タイプ)
測定対象をインドールからアンモニアに変更した以外は実施例5と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図13(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の水分量とアンモニア濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの水分量とアンモニア濃度には相関があることが分る。
実施例7(携帯タイプ)
測定対象をインドールからクレゾールに変更した以外は実施例5と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図14(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の水分量とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの水分量とクレゾール濃度には相関があることが分る。
【0062】
併発ガス中の所定成分として二酸化炭素を選定し、二酸化炭素濃度から直接、便中の腐敗成分濃度としてクレゾール濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図15に示したように、二酸化炭素濃度とクレゾール濃度との相関は認められ、併発ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれているクレゾール濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例8
併発ガス中の二酸化炭素濃度から直接便中に存在する腐敗成分のクレゾール濃度を推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から総カルボン酸を経由して腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力(二酸化炭素濃度)からクレゾール濃度を推定するデータ処理手順が異なる。すなわち、前記述べた手順と同様に、まず二酸化炭素ガスセンサ出力から二酸化炭素ガス濃度(ピーク値Vp)を求める。次に予め記憶部に記憶されている二酸化炭素ガス濃度(ピーク値Vp)と便中クレゾール濃度との換算データ(図15の相関図に基く)を用いて、ピーク値Vpから便中クレゾール濃度を推定する。推定した便中クレゾール濃度を記憶部に書き込み、さらに推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0063】
併発ガス中の所定成分として、二酸化炭素の代わりに水素を選定して、水素濃度(Vp値)から直接、便中の腐敗成分濃度としてインドール濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図16に示したように、水素濃度とインドール濃度との相関は認められ、併発ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれているインドール濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例9
併発ガス中の水素濃度から直接に便中のインドール濃度を推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から水分を経由してインドール濃度を推定する場合と同様であり、ガスセンサが水素センサであること、および水素ガスセンサの出力(水素ガス濃度)から便中インドール濃度を推定するデータ処理手順で異なる。すなわち、ガスセンサとしてとして二酸化炭素ガスセンサの代わりに水素センサを使用する。また中インドール濃度を推定する手順としては、まず、前記二酸化炭素の場合と同様に、水素ガスセンサ出力から水素ガス濃度(濃度に対応するガスセンサの出力のピーク値Vpで代用)を求める。次に予め記憶部に記憶されている水素ガス濃度(ガスセンサの出力のピーク値Vp)と便中インドール濃度との換算データ(図16の相関図に基く)を用いて、ピーク値Vpから便中インドール濃度を推定する。推定したインドール濃度を記憶部に書き込み、さらに推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0064】
排便中に含まれる腐敗成分は多種類の成分が考えられるが中でも、インドール、スカトール、クレゾール、フェノールの4成分が腸内有害細菌によって生産される代表的な成分である。また、これらの成分が揮発性が低いこと、発ガン性など腸内で蓄積されると生体に対して有害であることなどが共通点として挙げげられる。したがって、個々の成分濃度よりも、その合計濃度を前記した腸内状態指標として求めることはユーザーである被験者にとって、より判り易く便利な場合があるので好ましい。従って、これらの4成分濃度を単純合計したものを総腐敗成分濃度と呼び、以下で併発ガスの成分測定によるその推定方法について説明する。
【0065】
併発ガス中の所定成分として二酸化炭素を選定し、二酸化炭素濃度(Vp値)から直接、便中の総腐敗成分濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図17に示したように、二酸化炭素濃度と総腐敗成分濃度との相関は認められ、併発ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれている総腐敗成分濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例10
併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中に存在する前記した総腐敗成分濃度を直接に推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から各腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力Vp(二酸化炭素濃度)から総腐敗成分濃度を推定するデータ処理手順のみ異なるため、ここではデータ処理手順について説明する。
二酸化炭素ガスセンサの出力ピーク値Vより二酸化炭素濃度値を求め、予め求められている二酸化炭素濃度と総腐敗成分濃度との換算データ(図17の相関図に基く)を用いてそのときの総腐敗成分濃度を求める。
【0066】
併発ガス中の所定成分として水素を選定し、水素濃度(Vp値)から直接、便中の総腐敗成分濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図18に示したように、水素濃度と総腐敗成分濃度との相関は認められ、併発ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれている総腐敗成分濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例11
併発ガス中の水素濃度から便中に存在する前記した総腐敗成分濃度を直接に推定する場合、装置構成および装置動作は前記した水素濃度から各腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力Vp(水素濃度)から総腐敗成分濃度を推定するデータ処理手順のみ異なるため、ここではデータ処理手順について説明する。
【0067】
水素ガスセンサの出力ピーク値Vより水素濃度値を求め、予め求められている水素濃度と総腐敗成分濃度との換算データ(図18の相関図に基く)を用いてそのときの総腐敗成分濃度を求める。
【0068】
以上の各実施例によれば、併発されたガス中の所定成分濃度から、便中の腐敗成分であるアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの濃度を推定することが十分可能であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)〜(c)は本発明に係る検出されたガス濃度から便中の腐敗成分濃度を推定するための手順を示す図
【図2】本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)の一例を示す(部分透視)外観図
【図3】本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図4】本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)の一例を示す概要図
【図5】本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図6】本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)の一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は透視外観図
【図7】本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図8】実施例1で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図9】実施例2で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図10】実施例3で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図11】実施例4で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図12】実施例5で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるインドール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図13】実施例6で採用した併発ガス中の二酸化炭素から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図14】実施例7で採用した併発ガス中の二酸化炭素から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図15】実施例8で採用した、併発ガス中の二酸化炭素濃度から直接に便中のクレゾール濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図16】実施例9で採用した、併発ガス中の水素濃度からインドール濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図17】実施例10で採用した、併発ガス中の二酸化炭素濃度から総腐敗成分濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図18】実施例11で採用した、併発ガス中の水素濃度から総腐敗成分濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【符号の説明】
【0070】
1…便器、2…衛生洗浄便座装置、3…便鉢、4…脱臭ファン用排気通路、5…二酸化炭素センサ、6…臭いセンサ、7…記憶装置、8…制御部、9…pHデータ表示部、10…衛生洗浄便座装置操作部、11…健康状態測定装置(洋式便器後付タイプ)、12…吸入ファン用通路、13…吸入ファン、14…ユーザ操作用ボタン、16…健康状態測定装置(携帯タイプ)の本体、17…検知部、18…動作スイッチ、19…排便終了スイッチ、20…電池、21…位置検知手段、M…健康状態測定装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内の健康状態を判断するための有力な指標の一つである排泄物中の腐敗成分(アンモニア、クレゾールまたはインドール)濃度を、非接触で推定することのできる健康状態測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の健康状態を知るための指標の一つとして便中の腐敗成分濃度を計測することが行われている。通常は、排泄された便を採取してこれを非極性溶媒等に溶解しガスクロマトグラフィやイオンクロマトグラフィ等の機器を用いてアンモニア等の計測を行っている。
【0003】
また、非接触で排泄物中の腐敗成分濃度を測定あるいは推定する技術としては特許文献1および2が知られている。特許文献1の健康測定装置は、排泄時に発生した臭気を酸化触媒で脱臭し、そのときに要した酸化電流から臭気成分濃度を検出するものである。
【0004】
特許文献2の生体モニタ装置は、布製のT字帯にガスセンサを装着し、肛門から放出されたガスをガスセンサで検知してデータ化し、メモリに蓄えられたデータと過去のデータとを比較し、差が大きい場合など異常が認められる場合に表示装置に警告を表示するものである。
【0005】
また、特許文献3には腸内ガス成分測定方法および放屁検知方法が開示され、特許文献4には排泄物から出る排泄ガス中の水素ガスをガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知することが記載されている。
【特許文献1】特開平8−211048号公報。
【特許文献2】特開平9−43182号公報。
【特許文献3】特許3525157号公報。
【特許文献4】特開2005−315836号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排泄された便を採取し機器を用いて測定する一般的な方法にあっては、排便時のサンプリングに手間がかかってしまう。また、採取してから計測までの間、便を安定して保存しておく必要があり、そうしないと、便に含まれている腸内細菌の代謝により腐敗物濃度が排便直後の便の値からずれて正確に計測できなくなる等の不具合もある。
【0007】
排便中の腐敗成分は、臭気は強いものの濃度が低く、かつ揮発しにくい成分が多いため、排便時のガスからダイレクトに検知することは困難であった。さらに、発生したガス成分は直ぐに便鉢内に拡散されてしまうため、ますます濃度が低下して検知しにくくなる。
また、特許文献1,2に開示される方法はいずれも目的とする成分の濃度をガスセンサで直接測定する方法であり、便から放出されるこれら目的成分の濃度が微量の場合は記載されているようなガスセンサでは高精度に測定することが困難である。従って、前述したように濃度が低い腐敗成分を測定対象とする健康状態測定装置として採用が難しい。
特許文献3には腸内ガス成分測定方法および放屁検知方法は、体外に排出された腸内ガスのうち炭酸ガス、メタン、水素の有無を検知するのみで、腸内状態情報として必要な定量的な計測はしていない。
【0008】
特許文献4は本出願人による本発明と同じ腸内状態報知装置およびその方法に関する発明である。この装置では、排泄物から出る排泄ガス中の所定成分濃度をガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知するものである。腸内状態情報としては、腸内に存在する種々の菌の総数、ビフィズス菌の数、悪玉菌の数、腸内菌の総数のうちのビフィズス菌数の割合、又は、腸内菌の総数のうちの悪玉菌数の割合等を採用しており、本発明とは目的とする求める腸内状態情報の内容が異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る健康状態測定装置は、排便時に非接触でアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの少なくとも1つを成分として含む便中の腐敗成分の濃度を計測するための健康状態測定装置であって、排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定するガスセンサと、あらかじめ前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを記憶している記憶装置と、前記ガスセンサで測定された所定成分濃度を前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データに適用し、前記便に含まれる腐敗成分の濃度を演算する制御部と、を有する構成である。
【0010】
このように、便中の腐敗成分濃度と併発ガス中の所定成分の濃度との密接な関係を利用する構成とすることにより、腸内態情報の一つで高精度の測定が困難な便中の腐敗成分濃度を、高精度の測定が比較的容易な排便時の併発ガス中の所定成分の濃度の計測によって間接的に知ることが出来るため、便中の腐敗成分濃度を簡単な構成で精度良く求めることが可能となる。
【0011】
上記所定成分としては二酸化炭素であることが好ましい。また、前記所定成分濃度−腐敗成分換算データとして、二酸化炭素濃度と便中に含まれるカルボン酸濃度との換算データ、およびカルボン酸濃度と腐敗成分濃度との換算データを使用することができ、カルボン酸としては、酢酸または総カルボン酸を用いることができる。ここで総カルボン酸とは腸内菌の代謝により生成される総てのカルボン酸であり例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを示す。
【0012】
また、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データとして、二酸化炭素濃度と便中に含まれる水分量との換算データ、および水分量と腐敗成分濃度との換算データを使用することもできる。
【0013】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであっても良い。この場合は、計測値を腐敗成分濃度へ直接換算するため、換算誤差が累積せず高精度の測定が可能となる。
【0014】
所定成分が水素であり、かつ、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、水素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであっても良い。この場合は、併発ガス中の含有率の高く高精度の濃度計測が可能な水素を計測対象とし、かつ、計測値を腐敗成分濃度へ直接に換算するため、換算誤差が累積せず高精度の測定が可能となる。
【0015】
前記ガスセンサは、少なくとも本発明における所定成分の最高濃度に対応する出力を検出することが可能であればどのようなものでも良い。さらに、前記ガスセンサと連動する排便検知手段を備えていてもよい。これにより大便を検知して確実にガスセンサのデータを取り込むので誤った情報を使用者に伝えることがなくなる。
【0016】
本発明の健康状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。また、携帯型にして、どこのトイレに入っても手軽に腐敗成分濃度を測定できるようにすることも可能である。
【0017】
本発明の健康状態測定方法は、排便時に非接触で便の腐敗成分(アンモニア、クレゾール、インドール、スカトールまたはフェノールの少なくとも1つ)の濃度を計測する健康状態測定方法であって、この方法は、ガスセンサを使用して排便時に併発されるガス中の所定成分濃度を測定し、次に、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便中の腐敗成分濃度の推定値を演算する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の健康状態測定装置および健康状態測定方法によれば、排泄物に直接触れることなく簡便に便の腐敗成分濃度を測定することができる。そのため、従来困難であった毎日の生活の中での体調の定常的チェックを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては便中の腐敗成分濃度を健康状態の判断に使用する。腸内細菌により分解されたアミノ酸代謝物には発がんに関係する物質が多く認められている。トリプトファン由来のインドールは膀胱がんおよび白血病に、チロシン由来のフェノールおよびクレゾールは皮膚がんに、アンモニアは肝臓がんに関係があるといわれている。腸内の健康状態を維持するためにはなるべく腐敗成分濃度を低下させることが望ましいが、体調不良や食餌の影響により便中濃度が高くなる。したがって便に含まれる腐敗成分濃度を知ることで健康状態を管理することが可能になる。
【0020】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。図1(a)〜(c)は、検出されたガス濃度から便中の腐敗成分濃度を推定するための手順を示す一例であり、(a)は任意の測定における排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度をガスセンサで測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便所要時間を表し、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。ここでの排便時間とはガスセンサの出力が記憶された時間である。また、縦軸はガスセンサの出力電圧V(Volt)を表したものである。そして、本例で用いたガスセンサは出力電圧Vが二酸化炭素濃度(Vol%)に対応して出力されるものであるため、ガス中の二酸化炭素濃度はこの出力電圧変化に対応したものとなる。
【0021】
ここで、ガスセンサの種類によっては測定雰囲気のガス濃度や温度などの測定環境の変化の影響を受ける場合があるため、通常の測定においては、基準とする環境条件のときの出力電圧値を基準出力値(Vb値)として、この値からの変化量を測定値として採用する。本例の場合は排便開始時t1のセンサ出力電圧値Vb1を前記の基準値として採用しており、後述するように、センサ出力電圧Vの計測値群Vxのなかでの最大値をVmaxとしたとき、Vmax−Vb1をガス濃度測定におけるセンサ出力最大値Vp(以下、ピーク値と呼ぶ)とする。従って、この例では図中のピーク値Vpに相当する濃度値が二酸化炭素濃度測定での最高濃度となる。
【0022】
ここで、本発明におけるガスセンサは、少なくとも本発明における所定成分の最高濃度に対応する出力を検出することが可能であればどのようなものでも良い。
我々の実験によると、本発明の目的とする腸内状態パラメータのひとつである便の腐敗成分濃度は、排便量が多いときの便ほどより正確に腸内状態を反映した値となること、および、ガスセンサの出力のVp値は排便量が最も多い時点で出現することが確認されている。従って、このときの、言い換えればVp値を記録したときの、対応するガス濃度を採用すれば、より正確な腐敗成分濃度を推定することができることになる。
【0023】
なお、二酸化炭素濃度(センサ出力)のデータは、本装置が次に使用される前に当該濃度を消去するか、あるいは、別の記憶部に移行させることにより、データの混交を防止することができる。以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0024】
図1(b)は二酸化炭素センサの出力電圧の最高値(Vp値)に対応する二酸化炭素の濃度と便中の酢酸濃度との相関を示すグラフのモデルである。後述の実施例において詳細に説明するが、実測したところ便中の酢酸濃度と併発されるガス中の二酸化炭素濃度には本図のような相関があることが判明した。二酸化炭素は小腸での消化を逃れた食物繊維などの難消化性の多糖類が大腸内の腸内細菌により代謝される際に、酢酸、酪酸、プロピオン酸などのカルボン酸が産生されると同時に産生される。このことから二酸化炭素と腸内で産生される総カルボン酸濃度との間には相関関係があることが推測される。また酢酸は腸内で生成されるカルボン酸の50〜70%の割合を占めるため酢酸濃度も二酸化炭素濃度と相関があると推測される。ここでは、ある測定で得られた二酸化炭素のVp値に対応する酢酸濃度をCacとした。なお、総カルボン酸濃度や酢酸濃度の他に、便の水分量もガス中の二酸化炭素濃度と相関があることが判明しており、この水分量をカルボン酸濃度等と同様に利用することもできる。
【0025】
図1(c)は酢酸濃度と腐敗成分濃度との相関を示すグラフのモデルである。便中の酢酸濃度と腐敗成分濃度の相関は、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示すことが判明した。すなわち、上記の酢酸濃度Cacに対応する腐敗成分濃度Cpuを得ることができる。
【0026】
腸内の腐敗濃度は食餌や体調の影響を受ける。肉類などの高脂肪高タンパク食では腐敗菌が増殖し、アンモニア、クレゾールまたはインドールのようなタンパク質の代謝物が多量に産生され腸内はアルカリ側に傾く。一方で、食物繊維などを多く含む食餌では、小腸での消化を逃れた食物繊維が大腸内の腸内細菌により代謝され、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸が産生し腸内のpHを低下させ、腐敗菌の増殖を抑制し腐敗成分の産生を抑制する。腸内のカルボン酸濃度が高いほど腐敗成分濃度が低下するという負の相関があると推測される。酢酸濃度と同様に総カルボン酸濃度あるいは水分量を使用することもできる。
【0027】
本グラフから、ガスセンサーの出力ピーク値Vpを得てそのVpに対応する二酸化炭素濃度を二酸化炭素と酢酸の関係をあらわすグラフに適用してCacを得、次いで酢酸と腐敗成分濃度Cpuの関係をあらわすグラフからCacに対応する腐敗成分濃度Cpuを得ることができることが判る。言い換えれば、併発ガス中の二酸化炭素濃度を計測することによって、対応する排便の腐敗成分濃度Cpuが測定できることが示されている。得られた腐敗成分濃度Cpuを表示して本人に示したり、さらに、記憶部に蓄積しておき、適宜呼び出して時系列の腐敗成分濃度を表示することにより毎日の健康状態を管理することができる。
【0028】
本発明の健康状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。また、携帯型にして、どこのトイレに入っても手軽に腐敗成分濃度を測定できるようにすることも可能である。
【0029】
図2は、本発明の健康状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。便器1に付設された健康状態測定装置を内蔵した衛生洗浄便座装置2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。脱臭ファン用排気通路4内に二酸化炭素センサ5と排便検知手段である臭いセンサ6が取り付けられている。また、記憶装置7および制御部8は一体化して衛生洗浄便座装置2の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果である腐敗成分データの表示部9は、衛生洗浄便座装置の操作部10に組み込まれている。
【0030】
すなわち、健康状態測定装置Mの構成は、二酸化炭素センサ5、臭いセンサ6、記憶装置7、制御部8および腐敗成分データ表示部9からなる。なお、二酸化炭素センサ5および臭いセンサ6と制御部8とのデータ交換は結線により、また制御部8と表示部9とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0031】
図3は、本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。使用者(以後、「ユーザ」と呼ぶ。)の動作を左側に、健康状態測定装置が行う処理(衛生洗浄便座装置の処理を含む)を中央に、また、排便検知手段である臭いセンサの動作を右側に、それぞれ振り分けて表示した。
【0032】
以下、本図を説明する。ユーザはトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の健康状態測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の便の腐敗成分濃度の推定値を表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0033】
ユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知される。すると健康状態測定装置の電源スイッチが入りガスセンサと臭いセンサが起動される。人体検知センサを使わない場合は、ユーザが健康状態測定装置の電源を手動で入れてもよい。
【0034】
ユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、ガスセンサと臭いセンサによる併発ガスの所定成分の濃度計測および計測結果の記憶を行うガス成分濃度計測動作が開始される。着座センサを使わずにユーザが測定開始スイッチを押してもよい。
【0035】
ここで稼動開始時の両センサの時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1、臭いセンサの信号値をVs1と呼ぶ。
【0036】
ユーザが排便を開始し終了するまで、両センサは一定時間txごとにデータVxおよびVsxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0037】
排便終了後、ユーザが衛生洗浄便座装置の洗浄ボタンを押しておしり洗浄を開始する。このとき、この洗浄ボタンの押し下げ動作と連動させて健康状態測定装置のガス成分濃度の計測動作を終了させると共に、得られた計測結果に基づいた腐敗成分濃度の推定動作に移行させる。そして、排便終了時の時間t2と各センサのそのときの検知データV2、Vs2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンの押し下げ動作と連動させずにユーザが手動でガス成分濃度の計測動作を終了させる形式としてもよい。
【0038】
さらに臭いセンサ側では、t1〜t2の範囲の最大値であるVsmaxを検索し、その値が閾値(Vc)よりも高いかどうかを比較する。もしVsmax≦Vcであった場合は排便なしと判断して臭いセンサとガスセンサの記録を消去する。Vsmax>Vcであった場合は排便ありと判断する。
【0039】
排便ありと判断された場合、制御部ではt1〜t2の範囲で二酸化炭素濃度の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。以上のことにより、尿をしたときと便をしたときとの区別が確実に出来、排便を間違いなく検出できる。また人が長く滞在すると呼気によりセンサの出力が変動することがあるが、そのような排便ではない場合との区別ができる。
【0040】
上述の図1(b)に示したような相関データに基づいてピーク値Vpに対応する酢酸濃度Cacを同定し、図1(c)の相関データに基づいて酢酸濃度Cacに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0041】
ユーザが離座すると、それを着座センサが感知し、また、退室すると人体検知センサによって退室が検知される。健康状態測定装置のスイッチは、離座または退室が検知されたときに電源offとする。
【0042】
図4(a)〜(c)は、本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)の一例を示す概要図である。(a)は洋式便器の外観図であり、健康状態測定装置11は便鉢3の外側面に取り付けられている。また、(b)は(a)のA−A矢視図であって、健康状態測定装置11は、便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して設けられたフック型の吸入ファン用通路12によって便鉢3に固定されている。健康状態測定装置11内部には、吸入ファン13、二酸化炭素センサ5、一体化させた記憶装置7および制御部8が組み込まれている。
【0043】
(c)には、便器に取り付けられた健康状態測定装置11を便座2に座ったユーザから見た状態(平面図)を示した。健康状態測定装置11の上面はコントロールパネルになっていてユーザ操作用ボタン14と腐敗成分データ表示部15が設けられている。
【0044】
図5は、本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。ユーザの動作を左側に健康状態測定装置による処理を右側に振り分けて表示した。
【0045】
まずユーザが入室しユーザ操作ボタンの中の動作開始スイッチを入れる。すると、健康状態測定装置の吸入ファンが起動し、次にガスセンサの起動および表示画面の起動が行われ、さらにガスセンサからの出力の記憶も開始される。ここで稼動開始時のガスセンサの検出時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1と呼ぶ。
【0046】
ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサは一定時間txごとにデータVxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0047】
排便終了後、ユーザはユーザ操作用ボタンのうち排便終了スイッチを入れる。この操作により、ガス成分濃度計測の終了処理と次の腐敗成分濃度算出処理が開始される。すなわち、検出時刻t2およびそれに対応するガスセンサの信号値V2が書き込まれ検出時刻t1から継続させていた時刻txごとのガスセンサの信号値Vxの記憶部への書き込みが終了する。次に、制御部では記録されたt1〜t2の範囲のガスセンサ出力信号値Vx群の中での最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0048】
上述の図1(b)に示したと同様な、二酸化炭素濃度と総カルボン酸濃度との相関データに基づいてピーク値Vpに対応する総カルボン酸濃度Ccbを同定し、図1(c)に示したと同様な総カルボン酸濃度と腐敗成分濃度との相関データに基づいて総カルボン濃度Ccbに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0049】
その後、ユーザがユーザ操作用ボタンのうち動作終了スイッチを押して健康状態測定装置の動作は終了する。これによって、ガスセンサ、表示画面および吸入ファンの動作も終了する。
【0050】
図6は、本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)の一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は透視外観図である。(a)に示すように携帯タイプの健康状態測定装置の本体16と検知部17とに分かれていて、本体16の表面には腐敗成分データ表示部9と動作開始スイッチ18および計測開始スイッチ19が配置されている。なお、(b)に示すように健康状態測定装置は携帯および使用に便利なように薄型に設計している。
【0051】
健康状態測定装置の構造は、(c)に示すように検知部17の先端部には吸気口17a、本体16内部には吸入ファン13、二酸化炭素センサ5、一体化させた記憶装置7および制御部8、位置検知手段21、さらには電池20が組み込まれている。
【0052】
図7は、本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。ユーザの動作が左側に、健康状態測定装置による処理が右側に振り分けて表示してある。
【0053】
まずユーザが入室し、健康状態測定装置の動作スイッチを入れる。すると、本タイプの健康状態測定装置は携帯可能に電池を電源としているため、まず電源がonされて吸入ファンが起動し、次にガスセンサの起動および表示画面の起動も行われる。さらに位置検知手段を構成し、人体と吸気口17aとの距離を検知する超音波センサが起動される。この位置検知手段は、ユーザが吸気口17aの位置を適宜変化させて超音波センサが予め設定されたガス成分濃度の計測での最適位置を検知したとき、ユーザにその旨が報知される機能を備えたものである。次に、最適位置検知の報知によりユーザが排便を開始すると共に、ガスセンサ出力の記憶が開始される。ここで記憶開始時のガスセンサの検出時刻をt1とし、その時刻に対応するガスセンサの出力電圧値をV1と呼ぶ。
【0054】
ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサは一定時間tx(例えば1秒)ごとにデータVxを検出し、それらを記憶部に書き込む。
【0055】
排便終了後、ユーザは排便終了スイッチを入れる。この操作により、ガスセンサと吸入ファンは停止され、このときの検出時刻t2およびそれに対応するガスセンサの信号値V2が書き込まれ記憶部への書き込みが行なわれて、一連のガス成分濃度計測の処理が終了する。次に、制御部では計測結果に基づく腐敗成分濃度推定処理が開始され、まず、記憶された計測結果でのt1〜t2の範囲におけるガスセンサ出力の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素濃度の最小値Vblを引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0056】
二酸化炭素濃度と便の水分量との相関データに基づいてピーク値Vpに対応する水分量Brを同定し、水分量と腐敗成分濃度との相関データに基づいて水分量Brに対応する腐敗成分濃度Cpuを同定する。同定した腐敗成分濃度Cpuを記憶部に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示等により報知する。
【0057】
その後、ユーザが再び動作スイッチを押して健康状態測定装置の動作は終了すると共に電源がoffとなる。表示画面の終了については、上記動作スイッチを押したときに一緒に消去しても良いし、別途、表示画面終了ボタンを設けておいても良い。
(実施例)
以下、併発されたガス中の所定成分濃度と腐敗成分濃度との相関を調べた実施例を示す。
実施例1(衛生洗浄便座装置への組込タイプ)
本実施例は、図2に示した衛生洗浄便座装置への組込タイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図3に示した手順に沿って操作を行った。
【0058】
図8(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分濃度であるアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便の酢酸濃度を推定し、さらに酢酸濃度からアンモニア濃度を推定した。
【0059】
(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度(容量%で表示)と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関があることが判った。ここで、二酸化炭素濃度は二酸化炭素を計測するガスセンサの出力電圧のピーク値Vpから求められたものである。また、(c)は便中の酢酸濃度と便中のアンモニア濃度(μg/g)との相関を示すデータである。このデータから見て、多少のばらつきはあるものの酢酸濃度とアンモニア濃度には相関があることが分る。
実施例2(衛生洗浄便座装置型洋式便器への組込タイプ)
測定対象をアンモニアからクレゾールに変更した以外は実施例1と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図9(a)は、本実施例で採用した、二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の酢酸濃度とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの酢酸濃度とクレゾール濃度には相関があることが分る。
実施例3(洋式便器後付けタイプ)
本実施例は、図4に示した洋式便器後付けタイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図5に示した手順に沿って操作を行った。図10(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素からアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便中の総カルボン酸濃度(図中ではT−VFAと表示)を推定し、さらに総カルボン酸濃度からアンモニア濃度を推定した。総カルボン酸には酢酸が最も多く含まれるが、その他プロピオン酸、酪酸が含まれている。
【0060】
図10(b)は排便時に併発されたガス中の二酸化炭素濃度(電圧による。容量%で表示)のピーク値Vpと、そのときに採取した便中の総カルボン酸濃度との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの相関が認められた。また、(c)は便中の総カルボン酸濃度と便中のアンモニア濃度との相関を示すデータである。このデータから見て、総カルボン酸濃度とアンモニア濃度には、ほぼ良好な相関があることが分る。
実施例4(洋式便器後付けタイプ)
測定対象をアンモニアからクレゾールに変更した以外は実施例3と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図11(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の総カルボン酸濃度とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの総カルボン酸濃度とクレゾール濃度には相関があることが分る。
実施例5(携帯タイプ)
本実施例は、図6に示した携帯タイプの健康状態測定装置を使用し、ほぼ図7に示した手順に沿って操作を行った。図12(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素からインドール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(a)に示したように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素を利用して便の水分量を推定し、さらに水分量からインドール濃度を推定した。
【0061】
図12(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素濃度(電圧による。容量%で表示)のピーク値Vpと、そのときに採取した便の水分量との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの相関が認められた。また、図12c)は便の水分量と便中のインドール濃度との相関を示すデータである。このデータから見て、水分量とインドール濃度には、ほぼ良好な相関があることが認められた。
実施例6(携帯タイプ)
測定対象をインドールからアンモニアに変更した以外は実施例5と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図13(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の水分量とアンモニア濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの水分量とアンモニア濃度には相関があることが分る。
実施例7(携帯タイプ)
測定対象をインドールからクレゾールに変更した以外は実施例5と同様にして腐敗成分濃度測定の可能性を調べた。図14(a)は、本実施例で採用した二酸化炭素から腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示す概念図、(b)、(c)は換算データである。(c)の水分量とクレゾール濃度(μg/g)との相関を示すデータから見て、多少のばらつきはあるものの水分量とクレゾール濃度には相関があることが分る。
【0062】
併発ガス中の所定成分として二酸化炭素を選定し、二酸化炭素濃度から直接、便中の腐敗成分濃度としてクレゾール濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図15に示したように、二酸化炭素濃度とクレゾール濃度との相関は認められ、併発ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれているクレゾール濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例8
併発ガス中の二酸化炭素濃度から直接便中に存在する腐敗成分のクレゾール濃度を推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から総カルボン酸を経由して腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力(二酸化炭素濃度)からクレゾール濃度を推定するデータ処理手順が異なる。すなわち、前記述べた手順と同様に、まず二酸化炭素ガスセンサ出力から二酸化炭素ガス濃度(ピーク値Vp)を求める。次に予め記憶部に記憶されている二酸化炭素ガス濃度(ピーク値Vp)と便中クレゾール濃度との換算データ(図15の相関図に基く)を用いて、ピーク値Vpから便中クレゾール濃度を推定する。推定した便中クレゾール濃度を記憶部に書き込み、さらに推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0063】
併発ガス中の所定成分として、二酸化炭素の代わりに水素を選定して、水素濃度(Vp値)から直接、便中の腐敗成分濃度としてインドール濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図16に示したように、水素濃度とインドール濃度との相関は認められ、併発ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれているインドール濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例9
併発ガス中の水素濃度から直接に便中のインドール濃度を推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から水分を経由してインドール濃度を推定する場合と同様であり、ガスセンサが水素センサであること、および水素ガスセンサの出力(水素ガス濃度)から便中インドール濃度を推定するデータ処理手順で異なる。すなわち、ガスセンサとしてとして二酸化炭素ガスセンサの代わりに水素センサを使用する。また中インドール濃度を推定する手順としては、まず、前記二酸化炭素の場合と同様に、水素ガスセンサ出力から水素ガス濃度(濃度に対応するガスセンサの出力のピーク値Vpで代用)を求める。次に予め記憶部に記憶されている水素ガス濃度(ガスセンサの出力のピーク値Vp)と便中インドール濃度との換算データ(図16の相関図に基く)を用いて、ピーク値Vpから便中インドール濃度を推定する。推定したインドール濃度を記憶部に書き込み、さらに推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0064】
排便中に含まれる腐敗成分は多種類の成分が考えられるが中でも、インドール、スカトール、クレゾール、フェノールの4成分が腸内有害細菌によって生産される代表的な成分である。また、これらの成分が揮発性が低いこと、発ガン性など腸内で蓄積されると生体に対して有害であることなどが共通点として挙げげられる。したがって、個々の成分濃度よりも、その合計濃度を前記した腸内状態指標として求めることはユーザーである被験者にとって、より判り易く便利な場合があるので好ましい。従って、これらの4成分濃度を単純合計したものを総腐敗成分濃度と呼び、以下で併発ガスの成分測定によるその推定方法について説明する。
【0065】
併発ガス中の所定成分として二酸化炭素を選定し、二酸化炭素濃度(Vp値)から直接、便中の総腐敗成分濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図17に示したように、二酸化炭素濃度と総腐敗成分濃度との相関は認められ、併発ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれている総腐敗成分濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例10
併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中に存在する前記した総腐敗成分濃度を直接に推定する場合、装置構成および装置動作は前記した二酸化炭素濃度から各腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力Vp(二酸化炭素濃度)から総腐敗成分濃度を推定するデータ処理手順のみ異なるため、ここではデータ処理手順について説明する。
二酸化炭素ガスセンサの出力ピーク値Vより二酸化炭素濃度値を求め、予め求められている二酸化炭素濃度と総腐敗成分濃度との換算データ(図17の相関図に基く)を用いてそのときの総腐敗成分濃度を求める。
【0066】
併発ガス中の所定成分として水素を選定し、水素濃度(Vp値)から直接、便中の総腐敗成分濃度を推定することが可能かどうかを調べた。その結果、図18に示したように、水素濃度と総腐敗成分濃度との相関は認められ、併発ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によってそのときの排便に含まれている総腐敗成分濃度の推定が可能であることが判った。以下に、本発明を適用した健康状態測定装置の一例について説明する。
実施例11
併発ガス中の水素濃度から便中に存在する前記した総腐敗成分濃度を直接に推定する場合、装置構成および装置動作は前記した水素濃度から各腐敗成分を推定する場合と同様であり、ガスセンサの出力Vp(水素濃度)から総腐敗成分濃度を推定するデータ処理手順のみ異なるため、ここではデータ処理手順について説明する。
【0067】
水素ガスセンサの出力ピーク値Vより水素濃度値を求め、予め求められている水素濃度と総腐敗成分濃度との換算データ(図18の相関図に基く)を用いてそのときの総腐敗成分濃度を求める。
【0068】
以上の各実施例によれば、併発されたガス中の所定成分濃度から、便中の腐敗成分であるアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの濃度を推定することが十分可能であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)〜(c)は本発明に係る検出されたガス濃度から便中の腐敗成分濃度を推定するための手順を示す図
【図2】本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)の一例を示す(部分透視)外観図
【図3】本発明の健康状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図4】本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)の一例を示す概要図
【図5】本発明の健康状態測定装置(洋式便器後付けタイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図6】本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)の一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は透視外観図
【図7】本発明の健康状態測定装置(携帯タイプ)を使用した健康状態測定方法の手順を示す図
【図8】実施例1で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図9】実施例2で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図10】実施例3で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図11】実施例4で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図12】実施例5で採用した併発ガス中の二酸化炭素濃度から便中の腐敗成分であるインドール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図13】実施例6で採用した併発ガス中の二酸化炭素から便中の腐敗成分であるアンモニア濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図14】実施例7で採用した併発ガス中の二酸化炭素から便中の腐敗成分であるクレゾール濃度を推定する手順を示し、(a)は概念図、(b)、(c)は換算データを示す図
【図15】実施例8で採用した、併発ガス中の二酸化炭素濃度から直接に便中のクレゾール濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図16】実施例9で採用した、併発ガス中の水素濃度からインドール濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図17】実施例10で採用した、併発ガス中の二酸化炭素濃度から総腐敗成分濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【図18】実施例11で採用した、併発ガス中の水素濃度から総腐敗成分濃度を推定する場合に使用される換算データを示す図
【符号の説明】
【0070】
1…便器、2…衛生洗浄便座装置、3…便鉢、4…脱臭ファン用排気通路、5…二酸化炭素センサ、6…臭いセンサ、7…記憶装置、8…制御部、9…pHデータ表示部、10…衛生洗浄便座装置操作部、11…健康状態測定装置(洋式便器後付タイプ)、12…吸入ファン用通路、13…吸入ファン、14…ユーザ操作用ボタン、16…健康状態測定装置(携帯タイプ)の本体、17…検知部、18…動作スイッチ、19…排便終了スイッチ、20…電池、21…位置検知手段、M…健康状態測定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排便時に非接触でアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの少なくとも1つを成分として含む便中の腐敗成分の濃度を計測するための健康状態測定装置であって、
排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定するガスセンサと、
あらかじめ前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを記憶している記憶装置と、
前記ガスセンサで測定された所定成分濃度を前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データに適用し、前記便に含まれる腐敗成分の濃度を演算する制御部と、
を有することを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
前記所定成分が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の健康状態測定装置。
【請求項3】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度と便中に含まれるカルボン酸濃度との換算データ、およびカルボン酸濃度と腐敗成分濃度との換算データからなることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項4】
前記カルボン酸が酢酸または総カルボン酸であることを特徴とする請求項3に記載の健康状態測定装置。
【請求項5】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度と便中に含まれる水分量との換算データ、および水分量と腐敗成分濃度との換算データからなることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項6】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項7】
前記所定成分が水素であり、かつ、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、水素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであることを特徴とする請求項1に記載の健康状態測定装置。
【請求項8】
前記ガスセンサは、測定された所定成分の濃度のうち最高濃度を前記所定成分濃度として検出可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項9】
前記ガスセンサと連動する排便検知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項10】
洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵されるか、洋式便器の便座に内蔵されるか、或いは既設の洋式便器に後付けされることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項11】
携帯型であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項12】
排便時に非接触で便中のアンモニア、クレゾール、インドール、スカトールまたはフェノールの少なくとも1つを腐敗成分の濃度として計測する健康状態測定方法であって、この方法は、ガスセンサを使用して排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定し、次に、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便中の腐敗成分濃度の推定値を演算することを特徴とする健康状態測定方法。
【請求項1】
排便時に非接触でアンモニア、クレゾール、インドール、スカトール又はフェノールの少なくとも1つを成分として含む便中の腐敗成分の濃度を計測するための健康状態測定装置であって、
排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定するガスセンサと、
あらかじめ前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを記憶している記憶装置と、
前記ガスセンサで測定された所定成分濃度を前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データに適用し、前記便に含まれる腐敗成分の濃度を演算する制御部と、
を有することを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
前記所定成分が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の健康状態測定装置。
【請求項3】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度と便中に含まれるカルボン酸濃度との換算データ、およびカルボン酸濃度と腐敗成分濃度との換算データからなることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項4】
前記カルボン酸が酢酸または総カルボン酸であることを特徴とする請求項3に記載の健康状態測定装置。
【請求項5】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度と便中に含まれる水分量との換算データ、および水分量と腐敗成分濃度との換算データからなることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項6】
前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、二酸化炭素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであることを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項7】
前記所定成分が水素であり、かつ、前記所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データは、水素濃度を腐敗成分濃度へ直接換算するものであることを特徴とする請求項1に記載の健康状態測定装置。
【請求項8】
前記ガスセンサは、測定された所定成分の濃度のうち最高濃度を前記所定成分濃度として検出可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項9】
前記ガスセンサと連動する排便検知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項10】
洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵されるか、洋式便器の便座に内蔵されるか、或いは既設の洋式便器に後付けされることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項11】
携帯型であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項12】
排便時に非接触で便中のアンモニア、クレゾール、インドール、スカトールまたはフェノールの少なくとも1つを腐敗成分の濃度として計測する健康状態測定方法であって、この方法は、ガスセンサを使用して排便時に併発されるガス中の所定成分の濃度を測定し、次に、あらかじめ記憶装置に記憶しておいた所定成分濃度−腐敗成分濃度換算データを呼び出し、制御部において、上記所定成分濃度と換算データから便中の腐敗成分濃度の推定値を演算することを特徴とする健康状態測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−75091(P2009−75091A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212544(P2008−212544)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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