説明

健康状態測定装置

【課題】異なるタイプの便器に対応することができる健康状態測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発するガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサからの出力値よりデータを介してガス濃度を算出する第一演算部と、前記第一演算部より算出されるガス濃度より腸内状態指標を算出する第二演算部と、を備える健康状態測定装置であって、前記データは前記便器に対応するデータであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に搭載して排便時に併発するガスの測定から腸内状態を推定する健康状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排便時に併発するガス(以下排泄ガスと呼ぶ)を検出し、その検出結果に基づいて、人間の健康状態を判断する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガスセンサを用いて放屁に含まれる有臭ガスを検出し、そのガスセンサからの信号値を直接或いは匂い分析などの適当な処理を行って表示することが開示されている。また、例えば、特許文献2には、脱臭体に吸着された臭気成分を酸化させてその酸化電流から臭気成分濃度を測定する技術が開示されている。
【0003】
特許文献3は、腸内状態報知装置およびその方法に関する本出願人の発明である。この装置では、排泄ガス中の水素ガスをガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知するものである。腸内状態情報としては、腸内に存在する種々の菌の総数、ビフィズス菌の数、悪玉菌の数、腸内菌の総数のうちのビフィズス菌数の割合、又は、腸内菌の総数のうちの悪玉菌数の割合等を採用している。
【0004】
また、本出願人の発明である特許文献4では、排泄ガスの測定結果を腸内状態指標、例えば腸内細菌バランスに換算して使用者に報知する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−43182号公報。
【特許文献2】特開平8−211048号公報。
【特許文献3】特開2005−315836号公報。
【特許文献4】特開2007−89857号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、排泄ガスを測定する健康状態測定装置を便器に戴置することが、使用者に余分な手間をかけずに抵抗なく測定できるので、好ましい。特に脱臭装置付き便器に取付けて腸内状態を測定する場合、特許文献3にも記載されているように、ガスセンサを脱臭ファン用排気通路内に取り付けるのが便利である。また、脱臭ファン用排気通路内には、脱臭ファンによって一定量の風が流れているため、排泄物とともに排出されるガス成分を定量的に測定するのに好都合である。この場合、便鉢の空間部に排出された排泄ガスを脱臭ファンによって回収してガスセンサに運んで測定することになるが、排泄ガスの希釈率や回収速度が便鉢部の形状やサイズによって影響を受け、その結果、便器の形やタイプが異なると、測定結果が異なり正確に腸内状態を測定できないという問題があることが本発明者らによって明らかにされた。
【0007】
本発明は、異なるタイプの便器に対応することができる健康状態測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明による健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発するガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサからの出力値よりデータを介してガス濃度を算出する第一演算部と、前記第一演算部より算出されるガス濃度より腸内状態指標を算出する第二演算部と、を備える健康状態測定装置であって前記データは前記便器に対応するデータであることを特徴とする。
好適な一実施形態に係る本発明の健康状態測定装置は、前記データは複数種類の便器に対応するデータから選択されたひとつのデータであることを特徴とする。
好適な一実施形態に係る本発明の健康状態測定装置は、前記データは標準便器におけるデータの補正により得られるデータであることを特徴とする。
また、好適な一実施形態に係る本発明の健康状態測定装置は、便器と、請求項1乃至3いずれか1項に記載の健康状態測定装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の健康状態測定装置によれば、ガスセンサの出力から排泄ガスを算出する演算部のデータが、戴置便器に対応しているので、戴置が異なっても精度良く腸内状態を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0011】
本発明による健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発するガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサからの出力値よりデータを介してガス濃度を算出する第一演算部と、前記第一演算部より算出されるガス濃度より腸内状態指標を算出する第二演算部と、を備える健康状態測定装置であって、前記データは前記便器に対応するデータであることを特徴とする。
本発明によれば、ガスセンサの出力値からガス濃度を算出する第一演算部に利用されるデータが、腸内状態装置測定装置を戴置する便器に対応するようになっており、例えば便器の形状やサイズの違いによって排泄ガスの拡散具合が異なっていても正確に排泄ガスの濃度を測定することができるので、戴置便器の影響を受けずに腸内状態を測定することができる。
本発明による健康状態測定装置の好適な一実施形態として、前記データは複数種類の便器に対応するデータから選択されたひとつのデータとした。本実施形態において、第一演算部に複数の便器に対応するデータが記憶されており、また記憶されているデータから便器対応データを選択する、例えばデータ選択部を備えている。これにより、一台の健康状態測定装置が、複数台の便器に対応するので、例えば戴置便器が変わっても第一演算部のデータを新しい便器に対応するデータに更新する手間を省くことができ、好適である。
本発明による健康状態測定装置の好適な一実施形態として、前記データは標準便器におけるデータの補正により得られるデータとした。本実施形態において、第一演算部に予め決定された標準便器に対応するデータが記憶されており、標準便器以外の便器の戴置する場合、標準便器対応データを戴置便器に応じて補正することで、データを戴置便器対応のデータとすることができるので、好適である。
また、本発明による健康状態測定装置の好適な一実施形態として、健康状態測定装置と便器を一体化させた。本実施形態において、健康状態測定装置と便器が一体化されており、製造段階で健康状態測定装置の第一演算部に利用されるデータが戴置便器に対応済みとなっているので、製造した後に第一演算部のデータを戴置便器に対応させる手間を省き、好適である。
【0012】
以下に添付図面に基づいて本発明の実施形態を具体的に説明する。まず、第一の実施例を図1から図3に基いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の健康状態測定装置を搭載した人体洗浄装置組込タイプ洋式便器の一例を示す(部分透視)外観図である。
【0014】
便器1の便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。脱臭ファン用排気通路4内には、脱臭ファン5、およびガスセンサ7が取り付けられている。
【0015】
また、第一演算部8および第二演算部9は一体化して便座2の後部内に組み込まれ、さらに、第二演算部9により算出された結果である腸内状態指標データを表示する表示部10が、人体洗浄装置の操作パネル11に組み込まれている。ガスセンサ7と第一演算部8とのデータ交換は結線により、また第二演算部9と表示部10とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0016】
図2は本発明の健康状態測定装置の第1実施例を示す概念図である。脱臭ファン用排気通路4内に、風上側から順に脱臭ファン5、脱臭カートリッジ6、ガスセンサ7が配置されている。
【0017】
第一演算部8が測定開始信号をガスセンサ7に送信しガスセンサが作動し始めると、脱臭ファンによって搬送されてきたガスのガス濃度に応じた出力信号が得られる。ガスセンサ7で得られたセンサ出力信号が第一演算部8に送られ、時系列的に記憶される。また、第一演算部8の測定終了信号によってガスセンサの作動が終了し、センサ出力の信号の記録が終了する。続いて、第一演算部8では後述の方法にしたがって記憶されたセンサの出力信号からガス濃度を求め、その結果を第二演算部9に送信し、そこで腸内状態指標を推算し、得られた腸内状態指標が表示部10で表示される。
以下ガス濃度を演算する第一演算部8について詳細に説明する。第一演算部8は、ガスセンサの動作を制御するガスセンサ制御部、ガスセンサの出力信号を記憶する第一記憶部、ガスセンサの出力信号を処理し、ガス濃度に対応するガスセンサの出力値を算出するガスセンサ出力信号処理部、ガスセンサ出力値より便器に対応するデータを介してガス濃度を算出するガス濃度演算部、便器に対応するデータを記憶する第二記憶部、および第二記憶部に記憶されている便器対応データより構成されている。以下便器に対応するデータを便器対応データと略す。
ガスセンサ出力信号処理部は、第一記憶部に記憶されている測定開始から測定終了までのセンサ出力信号から、最大値となる信号および最小となる信号を取り出し、両者の差をガスセンサの出力値として算出する。続いて、ガス濃度演算部は第二記憶部に記憶されているガスセンサの出力値からガス濃度へ演算するデータを介して、ガスセンサ出力値からガス濃度を算出する。第二記憶部に記憶されているデータは戴置便器に対応しているので、便器によらず正確に排泄ガスの濃度を算出することができる。
本実施例では、健康状態測定装置第一演算部の第二記憶部に記憶される便器対応データはガスセンサ出力値とガス濃度との対応表からなっている。この対応表が健康状態測定装置を戴置する便器に対応するよう予め決定されている。
ここではその決定方法について説明する。まずこの対応表が便器に対応する必要性について述べる。使用者が便器に座って便鉢と臀部との間に形成された空間(便鉢空間)に排出された排泄ガスが、便鉢空間に入っている空気に希釈された状態で脱臭ファン用排気通路4の吸引口から脱臭ファン用排気通路4を通ってガスセンサ7に搬送されて測定される。本発明者らは便鉢空間における排泄ガスの希釈具合は便鉢の形状、サイズ(深さ、横の広がりなど)などによって影響を受けることを発見し、ガスセンサの出力から排泄ガスの濃度(厳密には単位時間あたりの排泄量だが、本発明では便宜上濃度とする)を演算するには、便鉢空間における排泄ガスの希釈具合、すなわち健康状態測定装置を戴置する便器の仕様の影響を考慮する必要があることがわかった。
本実施例では、便器の仕様の影響を考慮する手法として演算部の利用するデータを便器対応データとした。すなわち、健康状態測定装置の第一演算部の利用するデータを戴置予定の便器に対応するよう予め決定し、演算部に記憶させておくことにしている。以下本実施例における第一演算部の便器対応データを決定する手法について説明する。
図3に便器対応データを決定する試験装置を示す概念図である。健康状態測定装置が戴置予定の便器に組み込んである。対象ガス(本実施例では二酸化炭素ガス)が入っているガス容器20と、対象ガスを希釈するための窒素ガスが入っているガス容器21に接続している2つのガス配管が途中からジョイントで合流し配管24と繋がる。配管24の出口が便鉢部空間の、人間が排泄する時の想定肛門位置に近い位置に来るように固定されている。また、排泄時の条件に近づけるために、便鉢空間の上方開口部が前と後が部分的に開放されるように蓋25でカバーされている。ガス配管24の先端が蓋25に備えている孔から便鉢部空間部へ導入されている。ガスの濃度および投入量を調整するために、合流前の配管にマスフロー22と23が接続されている。
実施する手順として、まず健康状態測定装置を起動し測定できる状態にしてから、マスフロー22と23で一定濃度に調整された二酸化炭素ガスを一定量(本実施例では300mL)を一定時間(本実施例では2秒間)かけて便鉢空間に導入する(こうして導入されるガスをモデルガスという)。得られたセンサ出力信号を健康状態測定装置から取り出す。モデルガスの濃度を変えることで、センサ出力とガス濃度との相関データを取得する。次に、センサ出力とガス濃度との相関データから両者間の相関関係を求め、それに基いてガスセンサの出力からガス濃度算出する対応表を決定する。こうして決定された対応表を健康状態測定装置の第一演算部が利用するデータとして第一演算部に書き込み、記憶させる。
得られた第一演算部のガス濃度演算データが戴置予定便器のサイズや便鉢部の形状などの影響をすべて含むことから、戴置便器対応のデータとなっている。
なお、本実施例では実験によって便器対応データを取得しているが、便器情報をパラメーター化し、数学的なシミュレーション手法によってその影響を評価することで、便器対応データを取得する方法も考えられる。
【0018】
次に、本発明の健康状態測定装置の第2実施例について説明する。本実施例の装置構成は図2に示す第1実施例と同様であるが、第一演算部8第二記憶部に記憶されている便器対応データの構成が異なる。すなわち、本実施例の便器対応データは、標準便器対応データと戴置便器に対応する補正係数(以下戴置便器対応補正係数と略す)からなる。標準便器対応データは前記実施例1と同様なので、ここで戴置便器対応補正係数について説明する。
【0019】
図11は本実施例における健康状態測定装置のガスセンサの出力とガス濃度との関係を概念的に説明する図である。なお、ガスセンサの出力はガス濃度と直線的な関係になるように加工されている。標準便器に戴置された場合、傾きがαSとなる相関曲線を示す。一方、便器Aに戴置された場合、傾きがαAとなる相関曲線を示す。便器Aに戴置された場合の補正係数は両者の比率(αS/αA)である。
本実施例における便器対応データの取得に関しては以下のような方法があげられる。まず、ある便器を標準便器として選定し、選定された便器に本発明の健康状態測定装置を戴置し、前記実施例1の説明で述べた方法に準じて標準便器対応演算データを取得し、第一演算部に記憶しておく。次に、対象となる便器へ本発明の健康状態測定装置を戴置し、同様にモデルガスを測定する。得られたモデルガスに対応する出力(図11のVMA)と標準便器における同濃度のモデルガスに対応する出力と(図11のVMS)を比較して戴置予定の便器に対応する補正係数(=VMS / VMA=αS/αA)を算出する。得られた補正係数は上記標準便器対応データと一緒に第一演算部の第二記憶部に記憶しておく。
【0020】
算出された補正係数は実施例1と同様に、便器に設置する前に第一演算部に予め記憶しておくこともできるが、本実施例では、健康状態測定装置に補正係数入力部を設けることで、設置現場で戴置便器に対応する補正係数を入力することができるようになっている。補正係数入力によって第一演算部を決定する動作フローを図4に例示する。すなわち、電源投入後の初期動作として補正係数入力部から戴置便器対応の補正係数を入力し、第一演算部の便器対応データを決定する。
なお、設置現場でモデルガスを測定し補正係数を決定することもできる。特に事前に想定されていない便器に本発明の健康状態測定装置を搭載する場合において便利である。
【0021】
本実施例の第一演算部8におけるガスセンサ出力からガス濃度への演算は、まず、ガスセンサ出力信号処理部では実施例1と同様な方法で、ガスセンサ出力値を算出する。続いて、ガス濃度演算部では第二記憶部に記憶されている戴置便器対応補正係数を介して算出されたガスセンサ出力値を補正し、ガスセンサ出力の補正値(ガスセンサ出力の補正値=ガスセンサ出力値×補正係数)を求める。次にガスセンサ出力の補正値から標準便器対応データを介して、ガス濃度を算出する。
本実施例では、補正係数は戴置便器に対応しているので、便器によらず正確に排泄ガスの濃度を算出することができる。また、補正係数は一つのモデルガスの測定から求めることができるので、効率よく便器対応データを取得することができ、好適である。
続いて、本発明の健康状態測定装置の第3実施例について説明する。本実施例の装置構成は図2に示す第1実施例と同様であるが、第一演算部8が複数種類の便器に対応するデータおよび選択部を備える点で異なる。
図5は本実施例の第一演算部の構成を示す概念図である。第一演算部8には便器A、便器B...便器Xと、複数の便器対応データが記憶されており、それぞれが選択部12と繋がっている。本実施例の健康状態測定装置には便器情報入力部を備えており、また、選択部12が便器情報受信部を備えている。選択部12は便器情報入力部によって入力された便器情報に基いて記憶された複数の便器対応データから所定の便器に対応するデータを選択して第一演算部8の濃度演算用データである便器対応データを決定する。
図6は本実施例における第一演算部のデータ決定を行う初期動作を例示したフロー図である。健康状態測定装置を便器に戴置して電源投入後、パネル操作によって便器情報入力部から便器情報を入力する。入力された便器情報が第一演算部の選択部に送信され、選択部で入力された情報の便器に対応するデータを選択し、第一演算部の便器対応データを決定し、初期動作が終了する。
なお、本実施例では便器情報が操作によって入力されるが、健康状態測定装置に便器を自動的に認識する自動認識機能を設けて、便器に設置すると、便器認識から便器対応データの選択までの一連の動作を自動的に実施するようにすることもできる。
また、実施例1から実施例3対応する共通の実施形態として、腸内状態装置を製造段階から便器に戴置するようにする便器一体型健康状態測定装置にする例が考えられる。この場合、健康状態測定装置の第一演算部のガス濃度演算に利用するデータが最初から戴置便器に対応するように設計されているので、第一演算部を決定するための初期動作を省くことができ、さらに流通段階における健康状態測定装置と便器対応の手間が軽減されるので便利である。
以上実施例の図面に基いて、第一演算部のガス濃度演算用データである戴置便器対応データ、および便器戴置後の初期動作を中心に、本発明の健康状態測定装置を説明した。
続いて、本発明の健康状態測定装置の、ガスセンサ出力からガス濃度、さらにガス濃度から腸内状態指標を推定する方法について説明する。本実施例ではガスとして二酸化炭素、腸内指標の例として便pHを用いた。まず、第一演算部によってガスセンサの出力からガス濃度を演算する手順について説明する。
図7は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度をガスセンサ7で測定した時の出力例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便所要時間を表し、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。最高出力は排便量が最も多いタイミングに対応するため、このときの出力値(最大ピーク値Vp)を利用すれば、より正確なpH値を推定することができる。
上記Vp値をガスセンサ7の出力として、第一演算部では便器対応データを利用して、最大ピーク値Vpに対応する二酸化炭素ガス濃度Cpを算出する。
次に、算出された二酸化炭素ガス濃度Cpから腸内状態指標の便pHを算出する手順を説明する。
【0022】
図8は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(容量%で表示)の最大値と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を示す実測データである。このように二酸化炭素ガス濃度と酢酸濃度との間に相関性があることの理由が明確ではないが、便のpH値は含まれるカルボン酸の濃度によって左右され、このカルボン酸の一定割合が体内で水と二酸化炭素に分解されているためと推測される。
【0023】
したがって、カルボン酸のうちの大部分を占める酢酸の濃度も上記二酸化炭素ガス濃度と相関があることになる。また、図9は便中の酢酸濃度と便中のpH値との相関を示す実測データであり、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示している。
第一演算部で二酸化炭素ガスセンサの出力からガス濃度への演算が終わると、得られた二酸化炭素ガス濃度値が第二演算部に送信される。第二演算部9では、図8に示す相関データに基く二酸化炭素ガス濃度と酢酸濃度との対応表、および図9に示す相関データに基く酢酸濃度と便pHとの対応表が記憶されており、記憶された対応表にしたがって二酸化炭素ガス濃度から酢酸濃度、さらに酢酸濃度から便pHを推定する。
最後に、本発明の健康状態測定装置を使用した腸内状態測定方法の手順を例示して説明する。
図10は、本発明の健康状態測定装置洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。使用者(以後、「ユーザ」と呼ぶ。)の動作を左側に、便座装置が行う処理(健康状態測定装置の処理を含む)を右側に別けて表示した。
【0024】
本図の流れの通り、ユーザはトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の健康状態測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の腸内のpH推定値を表示部10に表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0025】
まずユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知され、第一演算部部8のガスセンサ制御部によって二酸化炭素ガスセンサ7が起動される。人体検知センサを使わない場合には、ユーザが健康状態測定装置の電源を手動で入れてもよい。
【0026】
ユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、第一演算部8のガスセンサ制御部によって脱臭ファン5および二酸化炭素ガスセンサ7が作動を開始する。ここで稼動開始時のセンサの時刻をt1とし、その時刻に対応する二酸化炭素ガスセンサ7の出力信号値をV1と呼ぶ。なお、ガスセンサの始動は着座センサを使わずにユーザがセンサの始動スイッチを押してもよい。
【0027】
ユーザが排便を開始し終了するまで、二酸化炭素ガスセンサ7は一定時間tx、たとえば1秒おきにデータVxを検出し、それらを第一演算部8の第一記憶部に書き込む。
【0028】
排便終了後、ユーザが人体洗浄を開始する。このとき、洗浄ボタンと連動させて二酸化炭素ガスセンサ7の記録を終了させる。排便終了時の時間t2と二酸化炭素ガスセンサ7のそのときの検知データV2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンと連動させずにユーザが手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0029】
次に、第一演算部8ではt1〜t2の範囲で二酸化炭素ガス出力信号値の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxから二酸化炭素ガス出力信号値の最小値を引いた値を排泄ガス対応の二酸化炭素ガスセンサの出力値(最大値Vp)として記録する。そしてVp値から二酸化炭素ガス最大濃度Cpを算出する。
【0030】
続いて第二演算部9では酢酸濃度を推定し、さらに酢酸濃度からpH値を推定する。算出したpH値は第二演算部9に書き込み、同時に結果をユーザに表示部10等により報知する。
【0031】
ユーザが離座すると、それを着座センサが感知し脱臭ファン5が停止する。そしてユーザが退室すると人体検知センサによって退室が検知されその信号が第一演算部8のガスセンサ制御部に送られ二酸化炭素ガスセンサ7の電源が切られる。
【0032】
尚、本実施例では二酸化炭素ガスセンサを使用したが、水素ガスセンサや硫化水素センサなどを使用しても、それに対応した換算方法を使用することで、同じように腸内状態指標を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の健康状態測定装置を搭載した衛生洗浄便座装置を付設した洋式便器の一例を示す(部分透視)外観図
【図2】本発明の健康状態測定装置の第1実施例を示す概念図
【図3】第1実施例における便器対応データを決定する装置を示す概念図
【図4】第2実施例における第一演算部の初期動作を示す概念図
【図5】第3実施例における第一演算部の構成を示す概念図
【図6】第3実施例における第一演算部の初期動作を示す概念図
【図7】排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度を測定した出力例を示すグラフ
【図8】排便ガスの二酸化炭素ガス濃度をと便中酢酸濃度との相関関係を示すグラフ
【図9】便中酢酸濃度と便pH値との相関関係を示すグラフ
【図10】本発明の健康状態測定装置(人体洗浄装置組込タイプ洋式便器に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順の一例を示す図
【図11】本実施例における健康状態測定装置のガスセンサの出力とガス濃度との関係を概念的に説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
1…便器、2…便座、3…便鉢、4…脱臭ファン用排気通路、5…脱臭ファン、7…ガスセンサ、8…第一演算部、9…第二演算部、10…表示部、11…操作パネル、12…選択部、20…ガス容器、21…ガス容器、22…マスフロー、23…マスフロー、24…ガス配管、25…蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に載置され、排便時に併発するガス濃度を測定するガスセンサと、
前記ガスセンサからの出力値よりデータを介してガス濃度を算出する第一演算部と、前記第一演算部より算出されるガス濃度より腸内状態指標を算出する第二演算部と、を備える健康状態測定装置であって
前記データは前記便器に対応するデータであることを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
前記データは標準便器におけるデータの補正により得られるデータであることを
特徴とする請求項1記載の健康状態測定装置。
【請求項3】
前記データは複数種類の便器に対応するデータから選択されたひとつのデータであることを特徴とする請求項1記載の健康状態測定装置。
【請求項4】
便器と、
請求項1乃至3いずれか1項に記載の健康状態測定装置と、を備えることを特徴とする便器一体型健康状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−271038(P2009−271038A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124461(P2008−124461)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】