偽造防止媒体
【課題】観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行う。
【解決手段】行列状に組み合わされて配列された配色部12a,13aからなる表示部11aと、表示部11a上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボス14aとを有し、配色部12aは、エンボス14aの麓部とエンボス14a間とに配され、配色部13aは、エンボス14aの頂点を含む領域に配されている。
【解決手段】行列状に組み合わされて配列された配色部12a,13aからなる表示部11aと、表示部11a上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボス14aとを有し、配色部12aは、エンボス14aの麓部とエンボス14a間とに配され、配色部13aは、エンボス14aの頂点を含む領域に配されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止シート等の偽造防止媒体に関し、特に、観察方向の制限を緩和するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリペイドカードや各種入場券、商品券や株券等の有価証券においては、広く流通しており比較的容易に換金可能である等の理由から、偽造犯罪が頻発している。特に、近年ではカラーコピー機等の複写機の性能向上と普及に伴い、簡単には真正品と見分けられない偽造品が比較的容易に製造可能になってきており、偽造に対する対策が求められている。また、上述したような有価証券に限らず、紙幣においても偽造に対する対策が求められている。
【0003】
このような偽造に対する対策の1つとして、潜像を用いて有価証券や紙幣の真偽判別を可能とする技術が考えられており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、観察方向によって潜像を浮かび上がらせるものである。基材を正面から見た場合は全ての印刷万線が視認可能な状態となっている。ところが、観察方向を印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向に変化させていくと、印刷万線のうちレリーフ万線が延在した部分がその延在したレリーフ万線の陰となって視認できなくなる一方、印刷万線のその他の部分は視認可能な状態のままとなる。これにより、レリーフ万線の形状に応じた潜像を浮かび上がらせることができる。
【0005】
このように断面が隆起したレリーフ万線を設けたシート基材においては、複写した場合、表面に印刷された印刷万線を含む印刷情報は複写されるものの、レリーフ万線の隆起形状までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変化させていった場合であっても、潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2000−313161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、この印刷万線とレリーフ万線とで潜像を浮かび上がらせるものにおいては、印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向から観察した場合にしか潜像が浮かび上がらず、潜像による真偽判別がしやすいとは言い難い。特に、観察方向が制限されている場合、真偽判別ができなくなる虞れがある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記第1の配色部は、前記エンボスの麓部または前記エンボス間に配され、
前記第2の配色部は、前記エンボスの頂点を含む領域に配されている。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、正面から観察した場合、表示部においては第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識される。この際、表示部には複数のエンボスが行列状に配列されているが、正面から観察した場合は、エンボスは認識されずに第1の配色部と第2の配色部とが認識されるだけである。この状態から観察方向を表示部に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、エンボスの麓部やエンボス間の領域がそのエンボスの観察方向側に隣接するエンボスによって隠れて見えなくなっていき、頂点を含む領域のみが見えるような状態となる。ここで、表示部を構成する第1の配色部は、エンボスの麓部または複数のエンボス間に配されているため、観察方向を変化させていくことによりエンボスの麓部やエンボス間の領域が見えなくなっていくと、第1の配色部が認識されにくくなくなっていく。また、表示部を構成する第2の配色部は、エンボスの頂点を含む領域に配されているため、観察方向を変化させていくことによりエンボスの麓部やエンボス間の領域が見えなくなっていっても、第2の配色部は認識されたままとなる。そのため、表示部においては、第1の配色部と第2の配色部とによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて第2の配色部の割合が大きな色彩が認識されることとなる。
【0010】
このように、正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部にて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【0011】
また、基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記複数のエンボスは、前記基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで前記第1の配色部と前記第2の配色部との面積が互いに異なるように配されている。
【0012】
上記のように構成された本発明においては、正面から観察した場合、表示部においては第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識される。この際、表示部には複数のエンボスが行列状に配列されているが、正面から観察した場合は、エンボスは認識されずに第1の配色部と第2の配色部とが認識されるだけである。この状態から観察方向を表示部に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、エンボスの頂点領域を含む観察方向のみが見えるような状態となっていく。ここで、エンボスは、基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで第1の配色部と第2の配色部との面積が互いに異なるように配されているので、観察方向における第1の配色部と第2の配色部との面積の割合に応じた色彩が認識されるようになっていく。
【0013】
このように、正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部にて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明においては、行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、第1の配色部がエンボスの麓部またはエンボス間に配され、第2の配色部がエンボスの頂点を含む領域に配された構成としたため、正面から観察した場合は第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識され、その後、観察方向を正面からどの方向に変化させた場合であっても、エンボスの麓部やエンボス間の領域がそのエンボスの観察方向側に隣接するエンボスによって隠れて見えなくなっていき、頂点を含む領域のみが見えるような状態となり、第1の配色部と第2の配色部とによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて第2の配色部の割合が大きな色彩が認識されることとなり、正面から観察した場合と観察方向を正面から変化させた場合とで表示部にて認識される色彩が変化し、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる。
【0015】
また、基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、複数のエンボスが、基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで第1の配色部と第2の配色部との面積が互いに異なるように配された構成としたものにおいては、正面から観察した場合は第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識され、その後、観察方向を正面から変化させた場合、エンボスの頂点領域を含む観察方向のみが見えるような状態となっていき、観察方向における第1の配色部と第2の配色部との面積の割合に応じた色彩が認識されることとなり、正面から観察した場合と観察方向を正面から変化させた場合とで表示部にて認識される色彩が変化し、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができるとともに、観察方向によって認識される色彩が異なり、これによっても真偽判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の偽造防止媒体の第1の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造10の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス14aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス14bの構成を示す図である。
【0018】
本形態の偽造防止シート1は図1に示すように、紙からなるシート基材2の一部の領域に偽造防止構造10が設けられて構成されている。シート基材2は、平面部3を有し、この平面部3の一部の領域に情報印刷領域4が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造10が設けられている。このように構成された偽造防止シート1は、例えば、コンサート等の入場チケットとして用いることが考えられる。その場合、コンサートの内容や会場名、座席番号等が情報印刷領域4に印刷されることになる。また、シート基材2の情報印刷領域4に情報が印刷される前に、シート基材2に対してプレ印刷として地紋を印刷したり所定の色に着色したりすることも考えられるが、その場合、偽造防止構造10による情報が見にくくならないようにする必要がある。
【0019】
シート基材2に設けられた偽造防止構造10は図1(b)に示すように、2つの表示部11a,11bが設けられるとともに、この表示部11a,11b上に複数のエンボス14a,14bがそれぞれ行列状に形成されている。表示部11aは、白色からなる第1の配色部12aと黒色からなる第2の配色部13aとが行列状に組み合わされて構成されており、また、表示部11bは、黒色からなる第1の配色部12bと白色からなる第2の配色部13bとが行列状に組み合わされて構成されている。エンボス14a,14bは、図1(c)〜(e)に示すように、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、シート基材2をエンボス版等で平面部3側から0.02〜0.1mm程度窪ませることにより側面16a,16bが形成され、平面部3との同一面が頂点となる頂部15a,15bとなっている。そして、この頂部15a,15bからシート基材2の窪み方向に向かうに従ってその断面積が徐々に広くなり、エンボス14a,14bの底部においては、直径が0.5mm以下の円形状となっている。
【0020】
エンボス14aは、2つの配色部12a,13aが組み合わされてなる表示部11a上に等間隔で行列状に形成されており、2つの配色部12a,13aのうち、白色からなる配色部12aがエンボス14aの側面16aから麓部及びエンボス14a間にかけて配され、また、黒色からなる配色部13aがエンボス14aの頂部15a及び側面16aの一部に配されている。また、エンボス14bは、2つの配色部12b,13bが組み合わされてなる表示部11b上に等間隔で行列状に形成されており、2つの配色部12b,13bのうち、黒色からなる配色部12bがエンボス14bの側面16bから麓部及びエンボス14b間にかけて配され、また、白色からなる配色部13bがエンボス14bの頂部15b及び側面16bの一部に配されている。
【0021】
なお、本形態にて図示する偽造防止構造10は、説明を簡単にするために9個のエンボス14aが3×3の行列状に形成され、それを取り囲むように56個のエンボス14bが形成されているが、その数を多くすればするほど、この偽造防止構造10によって真偽判別を行うための情報を精細なものとすることができ、真偽判別を行うための情報となる文字等が複雑な形状のものであっても、その文字等を構成する複数の直線や曲線等を表現しやすくなる。
【0022】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート1の製造方法について説明する。
【0023】
まず、シート基材2の偽造防止構造10が設けられる領域に、配色部12b,13aを黒色で印刷する。この配色部12b,13aの組み合わせは、偽造防止構造10によって真偽判別を行うための情報に応じて予め設定されており、印刷データとして与えられる。また、これら配色部12b,13aの印刷は、上述したようなプレ印刷と同時に行ってもよいし、上述したプレ印刷を行った後に行ってもよい。
【0024】
次に、配色部12b,13aが印刷された領域に、シート基材2の平面部3側からエンボス版を押し付けることにより複数のエンボス14a,14bを形成する。このエンボス版によるエンボス14a,14bのそれぞれのピッチと配色部12b,13aのピッチとは同一であって、エンボス14bは配色部12b間をその中心として形成され、エンボス14aはその中心が配色部13aそれぞれの中心と重なるように形成される。
【0025】
上述したようにして偽造防止シート1が製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材2の情報印刷領域4に印刷されて使用されることになる。
【0026】
以下に、上述した偽造防止シート1の作用について説明する。
【0027】
まず、図1に示した偽造防止シート1を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0028】
図2は、図1に示した偽造防止シート1を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造10の見え方を示す。
【0029】
図1に示した偽造防止シート1を、正面、すなわち平面部3の法線方向から観察した場合、図2に示すように、偽造防止構造10においては、配色部12a,13bが白色であるのに対して配色部12b,13aが黒色であることから、表示部11aにおいては、配色部12aの白色と配色部13aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部11bにおいては、配色部12bの黒色と配色部13bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材2の表示部11a,11bにはそれぞれ、エンボス14a,14bが形成されているが、偽造防止シート1を正面から観察した場合は、このエンボス14a,14bの突出方向から観察することになるため、配色部12a,12b,13a,13bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス14a,14bが認識されにくく、表示部11aにおいては、配色部12aの白色と配色部13aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部11bにおいては、配色部12bの黒色と配色部13bの白色とによる色彩が認識される。本形態においては、表示部11aにおいては、白色からなる配色部12aの面積が黒色からなる配色部13aの面積よりも大きいために淡い灰色に見え、表示部11bにおいては、黒色からなる配色部12bの面積が白色からなる配色部13bの面積よりも大きいために濃い灰色に見える。
【0030】
次に、図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0031】
図3は、図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部11aに形成されたエンボス14aについて側面方向から見た図、(b)は表示部11bに形成されたエンボス14bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造10の見え方を示す図である。
【0032】
図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材2の平面部3に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、図3(a),(b)に示すように、複数のエンボス14a,14bの側面16a,16bから麓部及び複数のエンボス14a,14b間に渡る領域が、そのエンボス14a,14bの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15a,15bのみが見えるような状態となる。
【0033】
ここで、複数のエンボス14a,14bのうち、表示部11aに形成されたエンボス14aにおいては、図1(d)に示したように、表示部11aを構成する配色部12a,13aのうち白色からなる配色部12aがエンボス14aの側面16aから麓部及びエンボス14a間にかけて配され、また、黒色からなる配色部13aがエンボス14aの頂部15a及び側面16aの一部に配されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス14aの側面16aから麓部及び複数のエンボス14a間に渡る領域が、そのエンボス14aの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15aのみが見えるような状態となると、配色部13aによる黒色は認識されるものの、配色部12aによる白色が認識されにくくなっていく。それにより、表示部11aにおいては、図3(c)に示すように、配色部12aと配色部13aとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部13aの割合が大きな色彩となる濃い灰色が認識されることとなる。
【0034】
また、複数のエンボス14a,14bのうち、表示部11bに形成されたエンボス14bにおいては、図1(e)に示したように、表示部11bを構成する配色部12b,13bのうち黒色からなる配色部12bがエンボス14bの側面16bから麓部及びエンボス14b間にかけて配され、また、白色からなる配色部13bがエンボス14bの頂部15b及び側面16bの一部に配されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス14bの側面16bから麓部及び複数のエンボス14b間に渡る領域が、そのエンボス14bの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15bのみが見えるような状態となると、配色部13bによる白色は認識されるものの、配色部12bによる黒色が認識されにくくなっていく。それにより、表示部11bにおいては、図3(c)に示すように、配色部12bと配色部13bとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部13bの割合が大きな色彩となる淡い灰色が認識されることとなる。
【0035】
このように、偽造防止シート1を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部11a,11bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。なお、本形態においては、偽造防止シート1を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部11a,11bにおける色彩の濃淡が逆転することにより、真偽判別がさらに容易となる。また、配色部12a,13aが行列状に配されてなる表示部11aと配色部12b,13bが行列状に配されてなる表示部11bのそれぞれに複数のエンボス14a,14bが行列状に形成されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0036】
上述した偽造防止シート1は、複写した場合、シート基材2の情報印刷領域4に印刷された情報や、シート基材2に印刷により行列状に設けられた配色部12a,12b,13a,13bは複写されるものの、エンボス14a,14bまでは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、表示部11a,11bにて認識される色彩が変化せず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。また、エンボス14a,14bが、シート基材2の平面部3を窪ませることによって形成されているため、シート基材2を表裏から見た場合や、直接触れた場合において、エンボス14a,14bが認識されにくく、エンボス14a,14bが再現しにくいものとなり、偽造防止機能を向上させることができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の偽造防止媒体の第2の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造110の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス114aの平面図、(e)は(b)に示したエンボス114bの平面図、(f)は(b)に示したエンボス114aの図中C方向から見た斜視図、(g)は(b)に示したエンボス114bの図中C方向から見た斜視図である。
【0038】
本形態は図4に示すように、図1に示したものに対して、エンボス114a,114bの形成位置が図中B方向にずれている点のみが異なるものである。それにより、エンボス114aにおいては図4(d)に示すように、シート基材102の表面に平行な中心線にて分離された場合における一方の領域では、配色部113aの面積が配色部112aの面積よりも大きく、また、他方の領域では、配色部112aの面積が配色部113aの面積よりも大きいという、中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112aと配色部113aとの面積が互いに異なるようになっている。なお、図4(d)においては、図4(b)中C方向からエンボス114aを視認した場合の視認方向に直交する中心線を図示しているが、この中心線はシート基材102の表面に平行であればエンボス114aにて任意に設定でき、エンボス114aは、その任意に設定された中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112aと配色部113aとの面積が互いに異なるようになっている。また、エンボス114bにおいては図4(e)に示すように、シート基材102の表面に平行な中心線にて分離された場合における一方の領域では、配色部113bの面積が配色部112bの面積よりも大きく、また、他方の領域では、配色部112bの面積が配色部113bの面積よりも大きいという、中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112bと配色部113bとの面積が互いに異なるようになっている。なお、図4(e)においては、図4(b)中C方向からエンボス114bを視認した場合の視認方向に直交する中心線を図示しているが、この中心線はシート基材102の表面に平行であればエンボス114bにて任意に設定でき、エンボス114bは、その任意に設定された中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112bと配色部113bとの面積が互いに異なるようになっている。
【0039】
以下に、上述した偽造防止シート101の作用について説明する。
【0040】
まず、図4に示した偽造防止シート101を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0041】
図5は、図4に示した偽造防止シート101を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造110の見え方を示す。
【0042】
図4に示した偽造防止シート101を、正面、すなわち平面部103の法線方向から観察した場合、図5に示すように、偽造防止構造110においては、配色部112a,113bが白色であるのに対して配色部112b,113aが黒色であることから、表示部111aにおいては、配色部112aの白色と配色部113aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部111bにおいては、配色部112bの黒色と配色部113bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材102の表示部111a,111bにはそれぞれ、エンボス114a,114bが形成されているが、偽造防止シート101を正面から観察した場合は、このエンボス114a,114bの突出方向から観察することになるため、配色部112a,112b,113a,113bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス114a,114bが認識されにくく、表示部111aにおいては、配色部112aの白色と配色部113aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部111bにおいては、配色部112bの黒色と配色部113bの白色とによる色彩が認識される。本形態においては、表示部111aにおいては、白色からなる配色部112aの面積が黒色からなる配色部113aの面積よりも大きいために淡い灰色に見え、表示部111bにおいては、黒色からなる配色部112bの面積が白色からなる配色部113bの面積よりも大きいために濃い灰色に見える。
【0043】
次に、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0044】
図6は、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボス114aの状態を示す図、(b)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボス114bの状態を示す図、(c)は図4(b)中C方向から観察した場合の偽造防止構造110全体の見え方を示す図、(d)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボス114aの状態を示す図、(e)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボス114bの状態を示す図、(f)は図4(b)中B方向から観察した場合の偽造防止構造110全体の見え方を示す図である。なお、図6においては、本形態における作用をわかりやすくするためにエンボス114a,114b以外の領域における配色部112a,112b,113a,113bの記載を省略している。
【0045】
図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から図4(b)中C方向に変化させていくと、複数のエンボス114a,114bのそれぞれの観察方向側、すなわち図4(b)中C側の側面116a,116bと頂部115a,115bのみが見えるようになっていく。すると、図4(d)に示したように、表示部111aに形成された複数のエンボス114aにおいては、図4(b)中C方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域では、配色部113aの面積が配色部112aの面積よりも大きく、また、図4(e)に示したように、表示部111bに形成された複数のエンボス114bにおいては、図4(b)中C方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域では、配色部113bの面積が配色部112bの面積よりも大きいため、図6(a),(b)に示すように、エンボス114aとエンボス114bとでは、観察方向側の全体において配色部112a,112b,113a,113bの色によって見える色が互いに異なることになる。具体的には、エンボス114aを図4(b)中C方向から観察した場合は、黒色からなる配色部113aの面積が白色からなる配色部112aの面積よりも大きいことから濃い灰色に見え、エンボス114bを図4(b)中C方向から観察した場合は、白色からなる配色部113bの面積が黒色からなる配色部112bの面積よりも大きいことから淡い灰色に見えることになる。
【0046】
それにより、図6(c)に示すように、偽造防止構造110の全体としては、図4(b)中C方向から観察した場合、表示部111aが濃い灰色に見え、表示部111bが淡い灰色に見えるようになる。このように、偽造防止シート101を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部111a,111bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【0047】
また、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から図4(b)中B方向に変化させていくと、複数のエンボス114a,114bのそれぞれの観察方向側、すなわち図4(b)中B側の側面116a,116bと頂部115a,115bのみが見えるようになっていく。すると、図4(d)に示したように、表示部111aに形成された複数のエンボス114aにおいては、図4(b)中B方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域においては、配色部112aの面積が配色部113aの面積よりも大きく、また、図4(e)に示したように、表示部111bに形成された複数のエンボス114bにおいては、図4(b)中B方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域においては、配色部112bの面積が配色部113bの面積よりも大きいため、図6(d),(e)に示すように、エンボス114aとエンボス114bとでは、観察方向側の全体において配色部112a,112b,113a,113bの色によって見える色が互いに異なることになる。具体的には、エンボス114aを図4(b)中B方向から観察した場合は、白色からなる配色部112aの面積が黒色からなる配色部113aの面積よりも大きいことから淡い灰色に見え、エンボス114bを図4(b)中B方向から観察した場合は、黒色からなる配色部112bの面積が白色からなる配色部113bの面積よりも大きいことから濃い灰色に見えることになる。
【0048】
それにより、図6(f)に示すように、偽造防止構造110の全体としては、図4(b)中B方向から観察した場合、表示部111aが淡い灰色に見え、表示部111bが濃い灰色に見えるようになる。
【0049】
このように本形態においては、偽造防止構造110を観察する方向によって、エンボス114aについては配色部112aと配色部113aとの割合、エンボス部114bについては配色部112bと配色部113bとの割合に応じて視認される色彩が変化し、それによっても真偽判別を行うことができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の偽造防止媒体の第3の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造210の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス214aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス214bの構成を示す図である。
【0051】
本形態は図7に示すように、図1に示したものに対して、エンボス214a,214bの形成位置がずれることにより、表示部211aを構成する配色部212aがエンボス214a間のみに配されるとともに、エンボス214bが表示部211bを構成する配色部213bに重なっている点のみが異なるものである。それにより、エンボス214aにおいては図7(d)に示すように、頂部215a及び側面216aが配色部213aのみからなり、また、エンボス214bにおいては図7(e)に示すように、頂部215b及び側面216bが配色部213bのみからなっている。
【0052】
以下に、上述した偽造防止シート201の作用について説明する。
【0053】
図7に示した偽造防止シート201を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から観察した場合は、第1及び第2の実施の形態にて示したものと同様に、エンボス214a,214bが認識されにくく、表示部211aが配色部212a,213aの組み合わせによって淡い灰色に見え、また、表示部211bが配色部212b,213bの組み合わせによって濃い灰色に見える。
【0054】
次に、図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0055】
図8は、図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部211aに形成されたエンボス214aについて側面方向から見た図、(b)は表示部211bに形成されたエンボス214bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造210の見え方を示す図である。
【0056】
図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材202の平面部203に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、エンボス214a,214bにおいては、図8(a),(b)に示すように、エンボス214a,214bの側面116a,116bから麓部及び複数のエンボス214a,214b間に渡る領域が、そのエンボス214a,214bの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215a,215bのみが見えるような状態となる。
【0057】
ここで、エンボス214aが形成された表示部211aにおいては、エンボス214aの頂部215a及び側面216aが白色の配色部213aのみからなり、黒色の配色部212aはエンボス214a間のみに配されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス214aの側面216aから麓部及び複数のエンボス214a間に渡る領域が、そのエンボス214aの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215aのみが見えるような状態となると、配色部213aによる白色は認識されるものの、配色部212aによる黒色が認識されなくなっていく。これにより、表示部211aにおいては、図8(c)に示すように、配色部213aによる白色のみが認識されることとなる。
【0058】
また、エンボス214bが形成された表示部211bにおいては、エンボス214bの頂部215b及び側面216bが黒色の配色部213bのみからなり、白色の配色部212bはエンボス214b間のみに配されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス214bの側面216bから麓部及び複数のエンボス214b間に渡る領域が、そのエンボス214bの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215bのみが見えるような状態となると、配色部213bによる黒色は認識されるものの、配色部212bによる白色が認識されなくなっていく。これにより、表示部211bにおいては、図8(c)に示すように、配色部213bによる黒色のみが認識されることとなる。
【0059】
このように、本形態においても、偽造防止シート201を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部211a,211bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。また、配色部212a,213aが行列状に配されてなる表示部211aと配色部212b,213bが行列状に配されてなる表示部211bのそれぞれに複数のエンボス214a,214bが行列状に形成されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0060】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の偽造防止媒体の第4の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造310の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス314aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス314bの構成を示す図である。
【0061】
本形態は図9に示すように、図1に示したものに対して、エンボス314aが形成された表示部311aが白色からなる配色部312aのみから構成されている点のみが異なるものである。それにより、エンボス314aにおいては図9(d)に示すように、頂部315a及び側面316aが配色部312aのみからなっている。
【0062】
以下に、上述した偽造防止シート301の作用について説明する。
【0063】
まず、図9に示した偽造防止シート301を正面、すなわち、シート基材302の平面部303の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0064】
図10は、図9に示した偽造防止シート301を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造310の見え方を示す。
【0065】
図9に示した偽造防止シート301を、正面、すなわち平面部303の法線方向から観察した場合、図10に示すように、偽造防止構造310においては、配色部312a,313bが白色であるのに対して配色部312bが黒色であることから、表示部311aにおいては、配色部312aの白色のみによる色彩が認識され、また、表示部311bにおいては、配色部312bの黒色と配色部313bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材302の表示部311a,311bにはそれぞれ、エンボス314a,314bが形成されているが、偽造防止シート301を正面から観察した場合は、このエンボス314a,314bの突出方向から観察することになるため、配色部312a,312b,313bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス314a,314bが認識されにくく、表示部311aにおいては、配色部312aの白色のみによる色彩が認識され、また、表示部311bにおいては、配色部312bの黒色と配色部313bの白色とによる色彩が認識されるだけである。本形態においては、表示部311aにおいては、白色からなる配色部312aのみであるために白色に見え、表示部311bにおいては、黒色からなる配色部312bの面積が白色からなる配色部313bの面積よりも広いために濃い灰色に見える。
【0066】
次に、図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材302の平面部303の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0067】
図11は、図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部311aに形成されたエンボス314aについて側面方向から見た図、(b)は表示部311bに形成されたエンボス314bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造310の見え方を示す図である。
【0068】
図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材302の平面部303に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、図11(a),(b)に示すように、複数のエンボス314a,314bの側面316a,316bから麓部及び複数のエンボス314a,314b間に渡る領域が、そのエンボス314a,314bの観察方向側に隣接するエンボス314a,314bによって隠れて見えなくなっていき、頂部315a,315bのみが見えるような状態となる。
【0069】
ここで、複数のエンボス314a,314bのうち、表示部311aに形成されたエンボス314aにおいては、図9(d)に示したように、表示部311aを構成する白色からなる配色部312aのみからなるため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス314aの側面316aから麓部及び複数のエンボス314a間に渡る領域が、そのエンボス314aの観察方向側に隣接するエンボス314aによって隠れて見えなくなっていき、頂部315aのみが見えるような状態となっても、配色部312aによる白色のみが視認される。これにより、表示部311aにおいては、図11(c)に示すように、配色部312aによる白色が認識されることとなる。
【0070】
また、複数のエンボス314a,314bのうち、表示部311bに形成されたエンボス314bにおいては、図9(e)に示したように、表示部311bを構成する配色部312b,313bのうち黒色からなる配色部312bがエンボス314bの側面316bから麓部及びエンボス314b間にかけて配され、また、白色からなる配色部313bがエンボス314bの頂部315b及び側面316bの一部に配されているため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス314bの側面316bから麓部及び複数のエンボス314b間に渡る領域が、そのエンボス314bの観察方向側に隣接するエンボス314bによって隠れて見えなくなっていき、頂部315bのみが見えるような状態となると、配色部313bによる白色は認識されるものの、配色部312bによる黒色が認識されにくくなっていく。これにより、表示部311bにおいては、図11(c)に示すように、配色部312bと配色部313bとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部313bの割合が大きな色彩となる淡い灰色が認識されることとなる。
【0071】
このように、偽造防止シート301を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部311bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。この際、本形態においては、表示部311aにて視認される色が、偽造防止シート301を正面から観察した場合と観察方向を正面から変化した場合とで配色部312aによる白色で変化しないため、偽造防止シート301を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とによる表示部311bの色の変化を表示部311aにて認識される白色を基準として明確に認識することができる。また、配色部312aからなる表示部311aと配色部312b,313bが行列状に配されてなる表示部311bのそれぞれに複数のエンボス314a,314bが行列状に形成されているため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0072】
また、上述した4つの実施の形態においては、表示部11a,111a,211a,311aと、表示部11b,111b,211b,311bとの間にエンボスが設けられていないため、表示部11a,111a,211a,311aにて認識される色彩と、表示部11b,111b,211b,311bにて認識される色彩とを識別しやすくなる。
【0073】
なお、上述した4つの実施の形態におけるエンボス14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314bの高さや平面部3,103,203,303から窪んだ底部の寸法については、上述したものに限らず、適宜設定が可能である。
【0074】
また、エンボス14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314bにおいては、円柱形のものや頂部15a,15b,115a,115b,215a,215b,315a,315bがない円錐形のものやドーム型のものとすることも考えられる。また、断面が矩形状となるものとすることも考えられる。また、シート基材2,102,202,302の平面部3,103,203,303を窪ませることによって形成されるものに限らず、シート基材2,102,202,302の平面部3,103,203,303から平面部3,103,203,303の法線方向に突出したものであってもよい。
【0075】
また、配色部の形状については、上述した4つの実施の形態に示したような形状に限らず、ひし形等、適宜な形状のものを用いることができる。
【0076】
また、第1の配色部と第2の配色部の色は、上述したように白色と黒色に限らず、互いに異なるものであれば適宜の色を適用することができる。なお、第1の配色部と第2の配色部の色として、例えば赤色と青色等というように黒色を用いない方が、第1の配色部と第2の配色部との面積の割合による色彩の変化が認識しやすい。
【0077】
また、上述した4つの実施の形態においては、偽造防止媒体として、紙からなるシート基材2,102,202,302に偽造防止構造10,110,210,310が設けられた偽造防止シート1,101,201,301を例に挙げて説明したが、本発明はこのような偽造防止シート1,101,201,301に限らず、フィルムからなるシート基材や複数の樹脂層が積層されてなるカード基材に上述したような偽造防止構造10,110,210,310を設けたものにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の偽造防止媒体の第1の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図2】図1に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図3】図1に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【図4】本発明の偽造防止媒体の第2の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの平面図、(e)は(b)に示したエンボスの平面図、(f)は(b)に示したエンボスの図中C方向から見た斜視図、(g)は(b)に示したエンボスの図中C方向から見た斜視図である。
【図5】図4に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図6】図4に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(b)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(c)は図4(b)中C方向から観察した場合の偽造防止構造全体の見え方を示す図、(d)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(e)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(f)は図4(b)中B方向から観察した場合の偽造防止構造全体の見え方を示す図である。
【図7】本発明の偽造防止媒体の第3の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図8】図7に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【図9】本発明の偽造防止媒体の第4の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図10】図9に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図11】図9に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1,101,201,301 偽造防止シート
2,102,202,302 シート基材
3,103,203,303 平面部
4,104,204,304 情報印刷領域
10,110,210,310 偽造防止構造
11a,11b,111a,111b,211a,211b,311a,311b 表示部
12a,12b,13a,13b,112a,112b,113a,113b,212a,212b,213a,213b,312a,312b,313b 配色部
14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314b エンボス
15a,15b,115a,115b,215a,215b,315a,315b 頂部
16a,16b,116a,116b,216a,216b,316a,316b 側面
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止シート等の偽造防止媒体に関し、特に、観察方向の制限を緩和するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリペイドカードや各種入場券、商品券や株券等の有価証券においては、広く流通しており比較的容易に換金可能である等の理由から、偽造犯罪が頻発している。特に、近年ではカラーコピー機等の複写機の性能向上と普及に伴い、簡単には真正品と見分けられない偽造品が比較的容易に製造可能になってきており、偽造に対する対策が求められている。また、上述したような有価証券に限らず、紙幣においても偽造に対する対策が求められている。
【0003】
このような偽造に対する対策の1つとして、潜像を用いて有価証券や紙幣の真偽判別を可能とする技術が考えられており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、観察方向によって潜像を浮かび上がらせるものである。基材を正面から見た場合は全ての印刷万線が視認可能な状態となっている。ところが、観察方向を印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向に変化させていくと、印刷万線のうちレリーフ万線が延在した部分がその延在したレリーフ万線の陰となって視認できなくなる一方、印刷万線のその他の部分は視認可能な状態のままとなる。これにより、レリーフ万線の形状に応じた潜像を浮かび上がらせることができる。
【0005】
このように断面が隆起したレリーフ万線を設けたシート基材においては、複写した場合、表面に印刷された印刷万線を含む印刷情報は複写されるものの、レリーフ万線の隆起形状までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変化させていった場合であっても、潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2000−313161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、この印刷万線とレリーフ万線とで潜像を浮かび上がらせるものにおいては、印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向から観察した場合にしか潜像が浮かび上がらず、潜像による真偽判別がしやすいとは言い難い。特に、観察方向が制限されている場合、真偽判別ができなくなる虞れがある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記第1の配色部は、前記エンボスの麓部または前記エンボス間に配され、
前記第2の配色部は、前記エンボスの頂点を含む領域に配されている。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、正面から観察した場合、表示部においては第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識される。この際、表示部には複数のエンボスが行列状に配列されているが、正面から観察した場合は、エンボスは認識されずに第1の配色部と第2の配色部とが認識されるだけである。この状態から観察方向を表示部に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、エンボスの麓部やエンボス間の領域がそのエンボスの観察方向側に隣接するエンボスによって隠れて見えなくなっていき、頂点を含む領域のみが見えるような状態となる。ここで、表示部を構成する第1の配色部は、エンボスの麓部または複数のエンボス間に配されているため、観察方向を変化させていくことによりエンボスの麓部やエンボス間の領域が見えなくなっていくと、第1の配色部が認識されにくくなくなっていく。また、表示部を構成する第2の配色部は、エンボスの頂点を含む領域に配されているため、観察方向を変化させていくことによりエンボスの麓部やエンボス間の領域が見えなくなっていっても、第2の配色部は認識されたままとなる。そのため、表示部においては、第1の配色部と第2の配色部とによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて第2の配色部の割合が大きな色彩が認識されることとなる。
【0010】
このように、正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部にて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【0011】
また、基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記複数のエンボスは、前記基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで前記第1の配色部と前記第2の配色部との面積が互いに異なるように配されている。
【0012】
上記のように構成された本発明においては、正面から観察した場合、表示部においては第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識される。この際、表示部には複数のエンボスが行列状に配列されているが、正面から観察した場合は、エンボスは認識されずに第1の配色部と第2の配色部とが認識されるだけである。この状態から観察方向を表示部に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、エンボスの頂点領域を含む観察方向のみが見えるような状態となっていく。ここで、エンボスは、基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで第1の配色部と第2の配色部との面積が互いに異なるように配されているので、観察方向における第1の配色部と第2の配色部との面積の割合に応じた色彩が認識されるようになっていく。
【0013】
このように、正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部にて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明においては、行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、第1の配色部がエンボスの麓部またはエンボス間に配され、第2の配色部がエンボスの頂点を含む領域に配された構成としたため、正面から観察した場合は第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識され、その後、観察方向を正面からどの方向に変化させた場合であっても、エンボスの麓部やエンボス間の領域がそのエンボスの観察方向側に隣接するエンボスによって隠れて見えなくなっていき、頂点を含む領域のみが見えるような状態となり、第1の配色部と第2の配色部とによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて第2の配色部の割合が大きな色彩が認識されることとなり、正面から観察した場合と観察方向を正面から変化させた場合とで表示部にて認識される色彩が変化し、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる。
【0015】
また、基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、複数のエンボスが、基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで第1の配色部と第2の配色部との面積が互いに異なるように配された構成としたものにおいては、正面から観察した場合は第1の配色部と第2の配色部とによる色彩が認識され、その後、観察方向を正面から変化させた場合、エンボスの頂点領域を含む観察方向のみが見えるような状態となっていき、観察方向における第1の配色部と第2の配色部との面積の割合に応じた色彩が認識されることとなり、正面から観察した場合と観察方向を正面から変化させた場合とで表示部にて認識される色彩が変化し、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができるとともに、観察方向によって認識される色彩が異なり、これによっても真偽判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の偽造防止媒体の第1の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造10の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス14aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス14bの構成を示す図である。
【0018】
本形態の偽造防止シート1は図1に示すように、紙からなるシート基材2の一部の領域に偽造防止構造10が設けられて構成されている。シート基材2は、平面部3を有し、この平面部3の一部の領域に情報印刷領域4が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造10が設けられている。このように構成された偽造防止シート1は、例えば、コンサート等の入場チケットとして用いることが考えられる。その場合、コンサートの内容や会場名、座席番号等が情報印刷領域4に印刷されることになる。また、シート基材2の情報印刷領域4に情報が印刷される前に、シート基材2に対してプレ印刷として地紋を印刷したり所定の色に着色したりすることも考えられるが、その場合、偽造防止構造10による情報が見にくくならないようにする必要がある。
【0019】
シート基材2に設けられた偽造防止構造10は図1(b)に示すように、2つの表示部11a,11bが設けられるとともに、この表示部11a,11b上に複数のエンボス14a,14bがそれぞれ行列状に形成されている。表示部11aは、白色からなる第1の配色部12aと黒色からなる第2の配色部13aとが行列状に組み合わされて構成されており、また、表示部11bは、黒色からなる第1の配色部12bと白色からなる第2の配色部13bとが行列状に組み合わされて構成されている。エンボス14a,14bは、図1(c)〜(e)に示すように、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、シート基材2をエンボス版等で平面部3側から0.02〜0.1mm程度窪ませることにより側面16a,16bが形成され、平面部3との同一面が頂点となる頂部15a,15bとなっている。そして、この頂部15a,15bからシート基材2の窪み方向に向かうに従ってその断面積が徐々に広くなり、エンボス14a,14bの底部においては、直径が0.5mm以下の円形状となっている。
【0020】
エンボス14aは、2つの配色部12a,13aが組み合わされてなる表示部11a上に等間隔で行列状に形成されており、2つの配色部12a,13aのうち、白色からなる配色部12aがエンボス14aの側面16aから麓部及びエンボス14a間にかけて配され、また、黒色からなる配色部13aがエンボス14aの頂部15a及び側面16aの一部に配されている。また、エンボス14bは、2つの配色部12b,13bが組み合わされてなる表示部11b上に等間隔で行列状に形成されており、2つの配色部12b,13bのうち、黒色からなる配色部12bがエンボス14bの側面16bから麓部及びエンボス14b間にかけて配され、また、白色からなる配色部13bがエンボス14bの頂部15b及び側面16bの一部に配されている。
【0021】
なお、本形態にて図示する偽造防止構造10は、説明を簡単にするために9個のエンボス14aが3×3の行列状に形成され、それを取り囲むように56個のエンボス14bが形成されているが、その数を多くすればするほど、この偽造防止構造10によって真偽判別を行うための情報を精細なものとすることができ、真偽判別を行うための情報となる文字等が複雑な形状のものであっても、その文字等を構成する複数の直線や曲線等を表現しやすくなる。
【0022】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート1の製造方法について説明する。
【0023】
まず、シート基材2の偽造防止構造10が設けられる領域に、配色部12b,13aを黒色で印刷する。この配色部12b,13aの組み合わせは、偽造防止構造10によって真偽判別を行うための情報に応じて予め設定されており、印刷データとして与えられる。また、これら配色部12b,13aの印刷は、上述したようなプレ印刷と同時に行ってもよいし、上述したプレ印刷を行った後に行ってもよい。
【0024】
次に、配色部12b,13aが印刷された領域に、シート基材2の平面部3側からエンボス版を押し付けることにより複数のエンボス14a,14bを形成する。このエンボス版によるエンボス14a,14bのそれぞれのピッチと配色部12b,13aのピッチとは同一であって、エンボス14bは配色部12b間をその中心として形成され、エンボス14aはその中心が配色部13aそれぞれの中心と重なるように形成される。
【0025】
上述したようにして偽造防止シート1が製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材2の情報印刷領域4に印刷されて使用されることになる。
【0026】
以下に、上述した偽造防止シート1の作用について説明する。
【0027】
まず、図1に示した偽造防止シート1を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0028】
図2は、図1に示した偽造防止シート1を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造10の見え方を示す。
【0029】
図1に示した偽造防止シート1を、正面、すなわち平面部3の法線方向から観察した場合、図2に示すように、偽造防止構造10においては、配色部12a,13bが白色であるのに対して配色部12b,13aが黒色であることから、表示部11aにおいては、配色部12aの白色と配色部13aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部11bにおいては、配色部12bの黒色と配色部13bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材2の表示部11a,11bにはそれぞれ、エンボス14a,14bが形成されているが、偽造防止シート1を正面から観察した場合は、このエンボス14a,14bの突出方向から観察することになるため、配色部12a,12b,13a,13bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス14a,14bが認識されにくく、表示部11aにおいては、配色部12aの白色と配色部13aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部11bにおいては、配色部12bの黒色と配色部13bの白色とによる色彩が認識される。本形態においては、表示部11aにおいては、白色からなる配色部12aの面積が黒色からなる配色部13aの面積よりも大きいために淡い灰色に見え、表示部11bにおいては、黒色からなる配色部12bの面積が白色からなる配色部13bの面積よりも大きいために濃い灰色に見える。
【0030】
次に、図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0031】
図3は、図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部11aに形成されたエンボス14aについて側面方向から見た図、(b)は表示部11bに形成されたエンボス14bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造10の見え方を示す図である。
【0032】
図1に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材2の平面部3に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、図3(a),(b)に示すように、複数のエンボス14a,14bの側面16a,16bから麓部及び複数のエンボス14a,14b間に渡る領域が、そのエンボス14a,14bの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15a,15bのみが見えるような状態となる。
【0033】
ここで、複数のエンボス14a,14bのうち、表示部11aに形成されたエンボス14aにおいては、図1(d)に示したように、表示部11aを構成する配色部12a,13aのうち白色からなる配色部12aがエンボス14aの側面16aから麓部及びエンボス14a間にかけて配され、また、黒色からなる配色部13aがエンボス14aの頂部15a及び側面16aの一部に配されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス14aの側面16aから麓部及び複数のエンボス14a間に渡る領域が、そのエンボス14aの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15aのみが見えるような状態となると、配色部13aによる黒色は認識されるものの、配色部12aによる白色が認識されにくくなっていく。それにより、表示部11aにおいては、図3(c)に示すように、配色部12aと配色部13aとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部13aの割合が大きな色彩となる濃い灰色が認識されることとなる。
【0034】
また、複数のエンボス14a,14bのうち、表示部11bに形成されたエンボス14bにおいては、図1(e)に示したように、表示部11bを構成する配色部12b,13bのうち黒色からなる配色部12bがエンボス14bの側面16bから麓部及びエンボス14b間にかけて配され、また、白色からなる配色部13bがエンボス14bの頂部15b及び側面16bの一部に配されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス14bの側面16bから麓部及び複数のエンボス14b間に渡る領域が、そのエンボス14bの観察方向側に隣接するエンボス14a,14bによって隠れて見えなくなっていき、頂部15bのみが見えるような状態となると、配色部13bによる白色は認識されるものの、配色部12bによる黒色が認識されにくくなっていく。それにより、表示部11bにおいては、図3(c)に示すように、配色部12bと配色部13bとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部13bの割合が大きな色彩となる淡い灰色が認識されることとなる。
【0035】
このように、偽造防止シート1を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部11a,11bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。なお、本形態においては、偽造防止シート1を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部11a,11bにおける色彩の濃淡が逆転することにより、真偽判別がさらに容易となる。また、配色部12a,13aが行列状に配されてなる表示部11aと配色部12b,13bが行列状に配されてなる表示部11bのそれぞれに複数のエンボス14a,14bが行列状に形成されているため、偽造防止シート1に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0036】
上述した偽造防止シート1は、複写した場合、シート基材2の情報印刷領域4に印刷された情報や、シート基材2に印刷により行列状に設けられた配色部12a,12b,13a,13bは複写されるものの、エンボス14a,14bまでは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、表示部11a,11bにて認識される色彩が変化せず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。また、エンボス14a,14bが、シート基材2の平面部3を窪ませることによって形成されているため、シート基材2を表裏から見た場合や、直接触れた場合において、エンボス14a,14bが認識されにくく、エンボス14a,14bが再現しにくいものとなり、偽造防止機能を向上させることができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の偽造防止媒体の第2の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造110の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス114aの平面図、(e)は(b)に示したエンボス114bの平面図、(f)は(b)に示したエンボス114aの図中C方向から見た斜視図、(g)は(b)に示したエンボス114bの図中C方向から見た斜視図である。
【0038】
本形態は図4に示すように、図1に示したものに対して、エンボス114a,114bの形成位置が図中B方向にずれている点のみが異なるものである。それにより、エンボス114aにおいては図4(d)に示すように、シート基材102の表面に平行な中心線にて分離された場合における一方の領域では、配色部113aの面積が配色部112aの面積よりも大きく、また、他方の領域では、配色部112aの面積が配色部113aの面積よりも大きいという、中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112aと配色部113aとの面積が互いに異なるようになっている。なお、図4(d)においては、図4(b)中C方向からエンボス114aを視認した場合の視認方向に直交する中心線を図示しているが、この中心線はシート基材102の表面に平行であればエンボス114aにて任意に設定でき、エンボス114aは、その任意に設定された中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112aと配色部113aとの面積が互いに異なるようになっている。また、エンボス114bにおいては図4(e)に示すように、シート基材102の表面に平行な中心線にて分離された場合における一方の領域では、配色部113bの面積が配色部112bの面積よりも大きく、また、他方の領域では、配色部112bの面積が配色部113bの面積よりも大きいという、中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112bと配色部113bとの面積が互いに異なるようになっている。なお、図4(e)においては、図4(b)中C方向からエンボス114bを視認した場合の視認方向に直交する中心線を図示しているが、この中心線はシート基材102の表面に平行であればエンボス114bにて任意に設定でき、エンボス114bは、その任意に設定された中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで配色部112bと配色部113bとの面積が互いに異なるようになっている。
【0039】
以下に、上述した偽造防止シート101の作用について説明する。
【0040】
まず、図4に示した偽造防止シート101を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0041】
図5は、図4に示した偽造防止シート101を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造110の見え方を示す。
【0042】
図4に示した偽造防止シート101を、正面、すなわち平面部103の法線方向から観察した場合、図5に示すように、偽造防止構造110においては、配色部112a,113bが白色であるのに対して配色部112b,113aが黒色であることから、表示部111aにおいては、配色部112aの白色と配色部113aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部111bにおいては、配色部112bの黒色と配色部113bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材102の表示部111a,111bにはそれぞれ、エンボス114a,114bが形成されているが、偽造防止シート101を正面から観察した場合は、このエンボス114a,114bの突出方向から観察することになるため、配色部112a,112b,113a,113bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス114a,114bが認識されにくく、表示部111aにおいては、配色部112aの白色と配色部113aの黒色とによる色彩が認識され、また、表示部111bにおいては、配色部112bの黒色と配色部113bの白色とによる色彩が認識される。本形態においては、表示部111aにおいては、白色からなる配色部112aの面積が黒色からなる配色部113aの面積よりも大きいために淡い灰色に見え、表示部111bにおいては、黒色からなる配色部112bの面積が白色からなる配色部113bの面積よりも大きいために濃い灰色に見える。
【0043】
次に、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0044】
図6は、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボス114aの状態を示す図、(b)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボス114bの状態を示す図、(c)は図4(b)中C方向から観察した場合の偽造防止構造110全体の見え方を示す図、(d)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボス114aの状態を示す図、(e)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボス114bの状態を示す図、(f)は図4(b)中B方向から観察した場合の偽造防止構造110全体の見え方を示す図である。なお、図6においては、本形態における作用をわかりやすくするためにエンボス114a,114b以外の領域における配色部112a,112b,113a,113bの記載を省略している。
【0045】
図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から図4(b)中C方向に変化させていくと、複数のエンボス114a,114bのそれぞれの観察方向側、すなわち図4(b)中C側の側面116a,116bと頂部115a,115bのみが見えるようになっていく。すると、図4(d)に示したように、表示部111aに形成された複数のエンボス114aにおいては、図4(b)中C方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域では、配色部113aの面積が配色部112aの面積よりも大きく、また、図4(e)に示したように、表示部111bに形成された複数のエンボス114bにおいては、図4(b)中C方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域では、配色部113bの面積が配色部112bの面積よりも大きいため、図6(a),(b)に示すように、エンボス114aとエンボス114bとでは、観察方向側の全体において配色部112a,112b,113a,113bの色によって見える色が互いに異なることになる。具体的には、エンボス114aを図4(b)中C方向から観察した場合は、黒色からなる配色部113aの面積が白色からなる配色部112aの面積よりも大きいことから濃い灰色に見え、エンボス114bを図4(b)中C方向から観察した場合は、白色からなる配色部113bの面積が黒色からなる配色部112bの面積よりも大きいことから淡い灰色に見えることになる。
【0046】
それにより、図6(c)に示すように、偽造防止構造110の全体としては、図4(b)中C方向から観察した場合、表示部111aが濃い灰色に見え、表示部111bが淡い灰色に見えるようになる。このように、偽造防止シート101を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部111a,111bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。
【0047】
また、図4に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から図4(b)中B方向に変化させていくと、複数のエンボス114a,114bのそれぞれの観察方向側、すなわち図4(b)中B側の側面116a,116bと頂部115a,115bのみが見えるようになっていく。すると、図4(d)に示したように、表示部111aに形成された複数のエンボス114aにおいては、図4(b)中B方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域においては、配色部112aの面積が配色部113aの面積よりも大きく、また、図4(e)に示したように、表示部111bに形成された複数のエンボス114bにおいては、図4(b)中B方向から観察した場合の観察方向に直交する中心線にて分離された場合に観察方向側となる領域においては、配色部112bの面積が配色部113bの面積よりも大きいため、図6(d),(e)に示すように、エンボス114aとエンボス114bとでは、観察方向側の全体において配色部112a,112b,113a,113bの色によって見える色が互いに異なることになる。具体的には、エンボス114aを図4(b)中B方向から観察した場合は、白色からなる配色部112aの面積が黒色からなる配色部113aの面積よりも大きいことから淡い灰色に見え、エンボス114bを図4(b)中B方向から観察した場合は、黒色からなる配色部112bの面積が白色からなる配色部113bの面積よりも大きいことから濃い灰色に見えることになる。
【0048】
それにより、図6(f)に示すように、偽造防止構造110の全体としては、図4(b)中B方向から観察した場合、表示部111aが淡い灰色に見え、表示部111bが濃い灰色に見えるようになる。
【0049】
このように本形態においては、偽造防止構造110を観察する方向によって、エンボス114aについては配色部112aと配色部113aとの割合、エンボス部114bについては配色部112bと配色部113bとの割合に応じて視認される色彩が変化し、それによっても真偽判別を行うことができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の偽造防止媒体の第3の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造210の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス214aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス214bの構成を示す図である。
【0051】
本形態は図7に示すように、図1に示したものに対して、エンボス214a,214bの形成位置がずれることにより、表示部211aを構成する配色部212aがエンボス214a間のみに配されるとともに、エンボス214bが表示部211bを構成する配色部213bに重なっている点のみが異なるものである。それにより、エンボス214aにおいては図7(d)に示すように、頂部215a及び側面216aが配色部213aのみからなり、また、エンボス214bにおいては図7(e)に示すように、頂部215b及び側面216bが配色部213bのみからなっている。
【0052】
以下に、上述した偽造防止シート201の作用について説明する。
【0053】
図7に示した偽造防止シート201を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から観察した場合は、第1及び第2の実施の形態にて示したものと同様に、エンボス214a,214bが認識されにくく、表示部211aが配色部212a,213aの組み合わせによって淡い灰色に見え、また、表示部211bが配色部212b,213bの組み合わせによって濃い灰色に見える。
【0054】
次に、図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0055】
図8は、図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部211aに形成されたエンボス214aについて側面方向から見た図、(b)は表示部211bに形成されたエンボス214bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造210の見え方を示す図である。
【0056】
図7に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材202の平面部203に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、エンボス214a,214bにおいては、図8(a),(b)に示すように、エンボス214a,214bの側面116a,116bから麓部及び複数のエンボス214a,214b間に渡る領域が、そのエンボス214a,214bの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215a,215bのみが見えるような状態となる。
【0057】
ここで、エンボス214aが形成された表示部211aにおいては、エンボス214aの頂部215a及び側面216aが白色の配色部213aのみからなり、黒色の配色部212aはエンボス214a間のみに配されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス214aの側面216aから麓部及び複数のエンボス214a間に渡る領域が、そのエンボス214aの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215aのみが見えるような状態となると、配色部213aによる白色は認識されるものの、配色部212aによる黒色が認識されなくなっていく。これにより、表示部211aにおいては、図8(c)に示すように、配色部213aによる白色のみが認識されることとなる。
【0058】
また、エンボス214bが形成された表示部211bにおいては、エンボス214bの頂部215b及び側面216bが黒色の配色部213bのみからなり、白色の配色部212bはエンボス214b間のみに配されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス214bの側面216bから麓部及び複数のエンボス214b間に渡る領域が、そのエンボス214bの観察方向側に隣接するエンボス214a,214bによって隠れて見えなくなっていき、頂部215bのみが見えるような状態となると、配色部213bによる黒色は認識されるものの、配色部212bによる白色が認識されなくなっていく。これにより、表示部211bにおいては、図8(c)に示すように、配色部213bによる黒色のみが認識されることとなる。
【0059】
このように、本形態においても、偽造防止シート201を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部211a,211bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。また、配色部212a,213aが行列状に配されてなる表示部211aと配色部212b,213bが行列状に配されてなる表示部211bのそれぞれに複数のエンボス214a,214bが行列状に形成されているため、偽造防止シート201に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0060】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の偽造防止媒体の第4の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造310の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボス314aの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボス314bの構成を示す図である。
【0061】
本形態は図9に示すように、図1に示したものに対して、エンボス314aが形成された表示部311aが白色からなる配色部312aのみから構成されている点のみが異なるものである。それにより、エンボス314aにおいては図9(d)に示すように、頂部315a及び側面316aが配色部312aのみからなっている。
【0062】
以下に、上述した偽造防止シート301の作用について説明する。
【0063】
まず、図9に示した偽造防止シート301を正面、すなわち、シート基材302の平面部303の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【0064】
図10は、図9に示した偽造防止シート301を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造310の見え方を示す。
【0065】
図9に示した偽造防止シート301を、正面、すなわち平面部303の法線方向から観察した場合、図10に示すように、偽造防止構造310においては、配色部312a,313bが白色であるのに対して配色部312bが黒色であることから、表示部311aにおいては、配色部312aの白色のみによる色彩が認識され、また、表示部311bにおいては、配色部312bの黒色と配色部313bの白色とによる色彩が認識される。この際、シート基材302の表示部311a,311bにはそれぞれ、エンボス314a,314bが形成されているが、偽造防止シート301を正面から観察した場合は、このエンボス314a,314bの突出方向から観察することになるため、配色部312a,312b,313bは観察方向から遮るものが存在せず、また、エンボス314a,314bが認識されにくく、表示部311aにおいては、配色部312aの白色のみによる色彩が認識され、また、表示部311bにおいては、配色部312bの黒色と配色部313bの白色とによる色彩が認識されるだけである。本形態においては、表示部311aにおいては、白色からなる配色部312aのみであるために白色に見え、表示部311bにおいては、黒色からなる配色部312bの面積が白色からなる配色部313bの面積よりも広いために濃い灰色に見える。
【0066】
次に、図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材302の平面部303の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
【0067】
図11は、図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部311aに形成されたエンボス314aについて側面方向から見た図、(b)は表示部311bに形成されたエンボス314bについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造310の見え方を示す図である。
【0068】
図9に示した偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材302の平面部303に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、図11(a),(b)に示すように、複数のエンボス314a,314bの側面316a,316bから麓部及び複数のエンボス314a,314b間に渡る領域が、そのエンボス314a,314bの観察方向側に隣接するエンボス314a,314bによって隠れて見えなくなっていき、頂部315a,315bのみが見えるような状態となる。
【0069】
ここで、複数のエンボス314a,314bのうち、表示部311aに形成されたエンボス314aにおいては、図9(d)に示したように、表示部311aを構成する白色からなる配色部312aのみからなるため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス314aの側面316aから麓部及び複数のエンボス314a間に渡る領域が、そのエンボス314aの観察方向側に隣接するエンボス314aによって隠れて見えなくなっていき、頂部315aのみが見えるような状態となっても、配色部312aによる白色のみが視認される。これにより、表示部311aにおいては、図11(c)に示すように、配色部312aによる白色が認識されることとなる。
【0070】
また、複数のエンボス314a,314bのうち、表示部311bに形成されたエンボス314bにおいては、図9(e)に示したように、表示部311bを構成する配色部312b,313bのうち黒色からなる配色部312bがエンボス314bの側面316bから麓部及びエンボス314b間にかけて配され、また、白色からなる配色部313bがエンボス314bの頂部315b及び側面316bの一部に配されているため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面から変化させていき、エンボス314bの側面316bから麓部及び複数のエンボス314b間に渡る領域が、そのエンボス314bの観察方向側に隣接するエンボス314bによって隠れて見えなくなっていき、頂部315bのみが見えるような状態となると、配色部313bによる白色は認識されるものの、配色部312bによる黒色が認識されにくくなっていく。これにより、表示部311bにおいては、図11(c)に示すように、配色部312bと配色部313bとによる色彩であって、正面から観察した場合と比べて配色部313bの割合が大きな色彩となる淡い灰色が認識されることとなる。
【0071】
このように、偽造防止シート301を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とで表示部311bにて認識される色彩が変化することで真偽判別が可能となる。この際、本形態においては、表示部311aにて視認される色が、偽造防止シート301を正面から観察した場合と観察方向を正面から変化した場合とで配色部312aによる白色で変化しないため、偽造防止シート301を正面から観察した場合と、観察方向を正面から変化した場合とによる表示部311bの色の変化を表示部311aにて認識される白色を基準として明確に認識することができる。また、配色部312aからなる表示部311aと配色部312b,313bが行列状に配されてなる表示部311bのそれぞれに複数のエンボス314a,314bが行列状に形成されているため、偽造防止シート301に対する観察方向を正面からどの方向に変化させていった場合であっても上述したような作用が生じ、観察方向に制限されることなく真偽判別を行うことができるようになる。
【0072】
また、上述した4つの実施の形態においては、表示部11a,111a,211a,311aと、表示部11b,111b,211b,311bとの間にエンボスが設けられていないため、表示部11a,111a,211a,311aにて認識される色彩と、表示部11b,111b,211b,311bにて認識される色彩とを識別しやすくなる。
【0073】
なお、上述した4つの実施の形態におけるエンボス14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314bの高さや平面部3,103,203,303から窪んだ底部の寸法については、上述したものに限らず、適宜設定が可能である。
【0074】
また、エンボス14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314bにおいては、円柱形のものや頂部15a,15b,115a,115b,215a,215b,315a,315bがない円錐形のものやドーム型のものとすることも考えられる。また、断面が矩形状となるものとすることも考えられる。また、シート基材2,102,202,302の平面部3,103,203,303を窪ませることによって形成されるものに限らず、シート基材2,102,202,302の平面部3,103,203,303から平面部3,103,203,303の法線方向に突出したものであってもよい。
【0075】
また、配色部の形状については、上述した4つの実施の形態に示したような形状に限らず、ひし形等、適宜な形状のものを用いることができる。
【0076】
また、第1の配色部と第2の配色部の色は、上述したように白色と黒色に限らず、互いに異なるものであれば適宜の色を適用することができる。なお、第1の配色部と第2の配色部の色として、例えば赤色と青色等というように黒色を用いない方が、第1の配色部と第2の配色部との面積の割合による色彩の変化が認識しやすい。
【0077】
また、上述した4つの実施の形態においては、偽造防止媒体として、紙からなるシート基材2,102,202,302に偽造防止構造10,110,210,310が設けられた偽造防止シート1,101,201,301を例に挙げて説明したが、本発明はこのような偽造防止シート1,101,201,301に限らず、フィルムからなるシート基材や複数の樹脂層が積層されてなるカード基材に上述したような偽造防止構造10,110,210,310を設けたものにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の偽造防止媒体の第1の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図2】図1に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図3】図1に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【図4】本発明の偽造防止媒体の第2の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの平面図、(e)は(b)に示したエンボスの平面図、(f)は(b)に示したエンボスの図中C方向から見た斜視図、(g)は(b)に示したエンボスの図中C方向から見た斜視図である。
【図5】図4に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図6】図4に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(b)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(c)は図4(b)中C方向から観察した場合の偽造防止構造全体の見え方を示す図、(d)は図4(b)中C方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(e)は図4(b)中B方向から観察した場合のエンボスの状態を示す図、(f)は図4(b)中B方向から観察した場合の偽造防止構造全体の見え方を示す図である。
【図7】本発明の偽造防止媒体の第3の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図8】図7に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【図9】本発明の偽造防止媒体の第4の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したエンボスの構成を示す図、(e)は(b)に示したエンボスの構成を示す図である。
【図10】図9に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図である。
【図11】図9に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(b)は表示部に形成されたエンボスについて側面方向から見た図、(c)は偽造防止構造の見え方を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1,101,201,301 偽造防止シート
2,102,202,302 シート基材
3,103,203,303 平面部
4,104,204,304 情報印刷領域
10,110,210,310 偽造防止構造
11a,11b,111a,111b,211a,211b,311a,311b 表示部
12a,12b,13a,13b,112a,112b,113a,113b,212a,212b,213a,213b,312a,312b,313b 配色部
14a,14b,114a,114b,214a,214b,314a,314b エンボス
15a,15b,115a,115b,215a,215b,315a,315b 頂部
16a,16b,116a,116b,216a,216b,316a,316b 側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記第1の配色部は、前記エンボスの麓部または前記エンボス間に配され、
前記第2の配色部は、前記エンボスの頂点を含む領域に配されている偽造防止シート。
【請求項2】
基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記複数のエンボスは、前記基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで前記第1の配色部と前記第2の配色部との面積が互いに異なるように配されている偽造防止シート。
【請求項1】
行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記第1の配色部は、前記エンボスの麓部または前記エンボス間に配され、
前記第2の配色部は、前記エンボスの頂点を含む領域に配されている偽造防止シート。
【請求項2】
基材表面に行列状に組み合わされて配列された第1及び第2の配色部からなる表示部と、
前記表示部上に等間隔で行列状に配列された複数のエンボスとを有し、
前記複数のエンボスは、前記基材表面に平行な任意の中心線にて分離される2つの領域のそれぞれで前記第1の配色部と前記第2の配色部との面積が互いに異なるように配されている偽造防止シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−154453(P2009−154453A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336666(P2007−336666)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
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