説明

偽造防止帳票

【課題】偽造防止機能を持たせた帳票を低コストかつ短納期で作製すること。
【解決手段】偽造防止帳票1として、基材2の帳票面2aに少なくとも2層の転写箔を積層した判別欄3を設ける。この判別欄3は、基材2の上に平坦な版面53Aを有する第1の版53で転写箔10を箔押ししてなる第1の転写箔層4と、第1の転写箔層4の上に文字又は絵柄の形状に凸設された版面54Aを有する第2の版54で転写箔10を箔押ししてなる第2の転写箔層5とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は箔押しによる偽造防止加工を施した偽造防止帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では商品券や有価証券などの帳票が数多く流通しているが、こうした帳票は金銭的価値を有することからコピー機やスキャナを用いた偽造の対象になりやすく、帳票上に何らかの偽造防止加工を施す必要がある。従来から採用されている偽造防止加工の一つとして、例えば下記の特許文献1に開示されているような箔押し加工が知られている。箔押し加工とは、版を装着した箔押し機によって熱と圧力を加えた箔を熱転写(ホットスタンプ)して帳票上に転写箔層を形成するものである。
【0003】
このような箔押し加工を利用して例えばホログラム箔を転写した帳票を作製すれば、その帳票をカラーコピー機で複写しても鏡面反射によって転写箔層の部分が黒色に複写されてしまうので、偽造された帳票であることを一目で判別できる。また、この帳票を高性能スキャナで読み取り、これをレーザープリンタで印刷して複製しようとしても、スキャナでの読み取り時に鏡面反射によって転写箔層の部分が黒色に読み取られてしまい、プリンタで正確な色を再現できないので同じく偽造防止効果が得られる。
【0004】
ところが、上記のような偽造防止の目的で、例えばユーザ名を表わすロゴマーク等を型取ったオリジナルデザインのホログラム箔を利用して帳票を作製する場合、従来はホログラムメーカーに作製を発注しなければならなかった。その場合、ホログラムのデザイン料や最小ロット材料費を合わせたホログラム箔作製費用だけで多大なコストがかかるとともに、発注してから納品までに大幅な時間を要しているのが実情であった。そこで、オリジナルデザインのホログラム箔を利用した帳票を低コストかつ短納期で作製できることが求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−199781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、箔押しによる偽造防止加工を施した帳票において、既存のオリジナルホログラム箔の問題を解決し、偽造防止機能を持たせた帳票を低コストかつ短納期で作製できる偽造防止帳票を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するため、基材の帳票面に判別欄が設けられた偽造防止帳票であって、上記判別欄は、上記基材の上に、平坦な版面を有する第1の版によって転写箔を箔押ししてなる第1の転写箔層と、上記第1の転写箔層の上に、文字又は絵柄の形状に凸設した版面を有する第2の版によって転写箔を箔押ししてなる第2の転写箔層と、から構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は上記と同様の目的を達成するため、基材の帳票面に判別欄が設けられた偽造防止帳票であって、上記判別欄は、上記基材の上に、平坦な版面を有する第1の版によって転写箔を箔押ししてなる第1の転写箔層と、上記第1の転写箔層の上に、文字又は絵柄の形状に凹設した版面を有する第2の版によって転写箔を箔押ししてなる第2の転写箔層と、から構成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、第1の転写箔層と第2の転写箔層は同じ種類の転写箔を使用したものであっても異なる種類の転写箔を使用したものであってもよい。すなわち、本発明は上記構成からなる偽造防止帳票において、上記第1の転写箔層と上記第2の転写箔層は、メタリック箔、顔料箔、染料箔、透明箔、ホログラム箔から選ばれるいずれかの組み合わせであることを特徴とする。
【0010】
さらに、上記構成からなる偽造防止帳票において、上記判別欄は、さらに上記第2の転写箔層の上に、上記第2の版とは異なる形状の版面を有する第3の版で転写箔を箔押しした第3の転写箔層が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の転写箔層の上に第2の転写箔層を部分的に重ねて箔押し加工することによって判別欄を構成するようにしたので、偽造防止効果のあるオリジナルデザインの転写箔を利用して偽造防止帳票を低コストかつ短納期で作製することができるという効果がある。また、判別欄のデザインを変更する場合には転写箔の種類や箔押し機に装着する版を取り替えるだけでよいので、様々なバリエーションにも柔軟に対応できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の偽造防止帳票の構成を示す平面図、図2は同帳票の断面図、図3は同帳票の製造工程を示す説明図、図4は転写箔の具体例を示す断面図、図5は判別欄の構成を示す拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の偽造防止帳票1は、基材2の帳票面2aに箔押し加工による判別欄3が設けられている。基材2は箔押し加工が可能な素材であれば何でもよく、例えば紙、合成紙、合成樹脂などの任意の素材を用いることができる。また、これらの素材に箔押し加工を施した後に所望の帳票形状に切断してもよく、所望の帳票形状に切断した後に箔押し加工を施してもよい。
【0015】
図2に示すように、判別欄3は2層に積層された転写箔からなり、基材2の上に設けられた第1の転写箔層4と、第1の転写箔層4の上に設けられた第2の転写箔層5とを有している。第1の転写箔層4と第2の転写箔層5は、例えば図3に示すような熱転写を利用した箔押し加工によって形成される。
【0016】
まず、図3(ア)に示すように基材2の上にシート状の転写箔10を重ねて置き、箔押し機50を用いて熱転写による箔押し加工を施す。箔押し機50の底面には凹凸のない平坦な形状(ここでは図1に示す方形状)の版面53Aを有する第1の版53が装着されており、この第1の版53をヒーター52で加熱しながらプレス51によって上から押圧する。これにより転写箔10は第1の版53によって箔押しされ、その結果、図3(イ)に示すように基材2の表面に版面53Aのパターン形状(方形状)に型抜きされた第1の転写箔層4が形成される。
【0017】
次に、図3(ウ)に示すように第1の転写箔層4の上にシート状の転写箔10を重ねて置き、箔押し機50を用いて熱転写による箔押し加工を施す。ここで、箔押し機50の底面には文字又は絵柄の形状(ここでは図1に示すロゴマークの形状)に凸設された版面54Aを有する第2の版54が装着されており、この第2の版54をヒーター52で加熱しながらプレス51によって上から押圧する。これにより転写箔10は第2の版54によって箔押しされ、その結果、図3(エ)に示すように第1の転写箔層4の表面に版面54Aのパターン形状(ロゴマーク)に型抜きされた第2の転写箔層5が形成される。
【0018】
すなわち、判別欄3は第1の転写箔層4の上にロゴマークの形状からなる第2の転写箔層5が浮き上がって見えるようになる。なお、第2の転写箔層5はロゴマーク以外にも特定の文字や絵柄にしてもよい。
【0019】
ここで、第1の転写箔層4と第2の転写箔層5を構成する転写箔10は、図4に示すものの中からいずれかを選択して使用する。
【0020】
図4(ア)に示す転写箔はメタリック箔である。このメタリック箔10aはポリエチレンテレフタレート等のベースフィルム11に離型層12、着色層13、蒸着層14、接着層15を順に積層した構造を有している。蒸着層14はメタリック感を表現するもので、アルミニウム等を真空蒸着によって薄膜状に形成してなる。着色層13は転写箔10の色を決定するもので、例えば金色にする場合には黄色の顔料や染料でコーティングすることによりシルバーメタリック色の蒸着層14が黄色の着色層13と重なり合って金色に見えるようになる。つまり着色層13の色を適宜選択することで金、銀、赤、緑、青、白など様々な色の金属光沢を有する箔になる。離型層12はワックス系樹脂等、箔押し時の熱で活性化する極めて薄い層であり、箔押し時に着色層13、蒸着層14、接着層15からなる積層体をベースフィルム11から離れやすくするために設けられている。
【0021】
図4(イ)に示す転写箔は顔料箔である。この顔料箔10bはメタリック箔10aと違って蒸着層14がなく、ベースフィルム11に離型層12、着色層13、接着層15を順に積層した構造を有している。染料箔も顔料箔10bと同様の構成であり、着色層13のコーティングを顔料に替えて染料にしたものである。
【0022】
図4(ウ)に示す転写箔はホログラム箔である。このホログラム箔10cはメタリック箔10aと違って着色層13がなく、ベースフィルム11に離型層12、蒸着層14、ホログラムエンボス層16、接着層15を順に積層した構造を有している。ホログラムエンボス層16は例えばポリエステルフィルム等の透明な樹脂フィルムにエンボス加工を施して干渉縞を形成したものであり、干渉縞に入射した光が乱反射することにより、蒸着層14のメタリック色が見る角度によって変化して見えるようになっている。
【0023】
図4(エ)に示す転写箔は透明箔である。この透明箔10dはメタリック箔10aと違って着色層13と蒸着層14がなく、ベースフィルム11に離型層12、クリアコート層17、接着層15を順に積層した構造を有している。クリアコート層17はアクリル系等の透明インキをコーティングしてなるものである。
【0024】
図5に示すように、判別欄3の構成として、基材2の上に例えばメタリック箔10aを箔押し機50で熱転写するとメタリック箔10aは接着層15によって接着し、離型層12を介してベースフィルム11を剥がすと着色層13と蒸着層14が基材2の上に転写される。これにより基材2の上にメタリック箔10aを方形状に型抜きした第1の転写箔層4が設けられる。また、第1の転写箔層4の上に例えばホログラム箔10cを箔押し機50で熱転写するとホログラム箔10cは接着層15によって接着し、離型層12を介してベースフィルムを剥がすと蒸着層14とホログラムエンボス層16が第1の転写箔層4の上に転写される。これによりメタリック箔10aからなる第1の転写箔層4の上にホログラム箔10cをロゴマークの形状に型抜きした第2の転写箔層5が設けられる。
【0025】
このように本実施形態の偽造防止帳票1によれば、メタリック箔からなる第1の転写箔層4の上にホログラム箔からなる第2の転写箔層5が部分的に重なり合って判別欄3を構成している。したがって、この帳票をカラーコピー機で複写した場合、第1の転写箔層4の部分は着色層13と蒸着層14が重なり合った金属光沢によって黒色に近い色に複写される一方、第2の転写箔層5の部分についてはホログラムエンボス層16に入射した光が乱反射して蒸着層14のメタリック色が部分的に黒色に複写されてしまう。また、この帳票を高性能スキャナで読み取ってレーザープリンタで印刷した場合にも、スキャナでの読み取り時に第1の転写箔層4と第2の転写箔層5からなる判別欄3が上記の通り部分的に黒色に読み取られてしまい、忠実な色を再現することができない。よって、判別欄3を見れば偽造された帳票であることを一目で判別でき、カラーコピー機やスキャナによる偽造を効果的に防止することができる。
【0026】
また、この偽造防止帳票1にあっては、汎用的な転写箔の上に汎用的な転写箔を部分的に重ねて箔押しすることで、第1の転写箔層4と第2の転写箔層5からなるオリジナルデザインの判別欄3を帳票面2aの所望の位置に形成することができる。しかも、判別欄3のデザインを変更したいときには、図4に示すような転写箔10の種類や箔押し機50に装着する版を取り替えるだけでよいので、様々なバリエーションに対応する場合であっても低コストかつ短納期で対応することができる。
【0027】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態の偽造防止帳票の構成を示す平面図、図7は同帳票の断面図、図8は同帳票の製造工程を示す説明図である。
【0028】
図6及び図7に示すように、本実施形態の偽造防止帳票1は2層に積層した転写箔で判別欄3を構成した点については第1実施形態と同様であるが、第2の転写箔層5の形成方法が異なっている。
【0029】
まず、図8(ア)に示すように基材2の上に転写箔10を重ねて置き、箔押し機50を用いて熱転写による箔押し加工を施す。この加工については第1実施形態のときと同じである。これにより転写箔10は第1の版53によって箔押しされ、その結果、図8(イ)に示すように基材2の表面に版面53Aのパターン形状(方形状)に型抜きされた第1の転写箔層4が形成される。
【0030】
次に、図8(ウ)に示すように第1の転写箔層4の上に転写箔10を重ねて置き、箔押し機50を用いて熱転写による箔押し加工を施す。ここで、箔押し機50の底面にはロゴマークの形状に凹設された版面54Bを有する第2の版54が装着されており、この第2の版54を加熱しながら押圧することによって、図8(エ)に示すように第1の転写箔層4の表面に版面54Bのパターン形状に型抜きされた第2の転写箔層5が形成される。
【0031】
すなわち、判別欄3は第2の転写箔層5の下からロゴマークの形状からなる第1の転写箔層4が覗いて見えるようになる。
【0032】
本実施形態の偽造防止帳票1によれば、第1実施形態のものと同様に、偽造防止効果のある帳票を低コストかつ短納期で作製できる上に、第2の転写箔層5を箔押しする際の版を変えるだけで同じデザインであっても異なる印象を与える判別欄3を形成できる。
【0033】
[第3実施形態]
図9は第3実施形態の偽造防止帳票の構成を示す断面図である。
【0034】
図9に示すように、本実施形態の偽造防止帳票1は、3層に積層した転写箔で判別欄3を構成したことが特徴である。すなわち、この偽造防止帳票1は、上述した実施形態の加工方法により第1の転写箔層4と第2の転写箔層5を重ねて箔押しした後、第2の転写箔層5の上にさらに第2の版54とは異なる形状の版面を有する第3の版(図示略)で転写箔を箔押しすることにより、第3の転写箔層6を設けたものである。この場合、第3の転写箔層6を構成する転写箔は、その下層にある第1の転写箔層4や第2の転写箔層5と同じものであっても異なるものであってもよい。その際、転写箔は図4に示したメタリック箔、顔料箔、染料箔、ホログラム箔、透明箔の中からいずれかを選択して使用することができる。
【0035】
本実施形態の偽造防止帳票1によれば、上述した実施形態のものと同様に、偽造防止効果のある帳票を低コストかつ短納期で作製できる上に、判別欄3が3層に積層された転写箔層からなるので複製がよりいっそう困難になり、偽造防止機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による第1実施形態の偽造防止帳票の構成を示す平面図。
【図2】図1に示すA−A線断面図。
【図3】図1に示す偽造防止帳票の製造工程を示す説明図。
【図4】転写箔の具体例を示す断面図。
【図5】判別欄の構成として第1の転写箔層にメタリック箔、第2の転写箔層にホログラム箔を使用した例を示す拡大断面図。
【図6】本発明による第2実施形態の偽造防止帳票の構成を示す平面図。
【図7】図6に示すB−B線断面図。
【図8】図6に示す偽造防止帳票の製造工程を示す説明図。
【図9】本発明による第3実施形態の偽造防止帳票の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…偽造防止帳票
2…基材
2a…帳票面
3…判別欄
4…第1の転写箔層
5…第2の転写箔層
6…第3の転写箔層
10…転写箔
10a…メタリック箔
10b…顔料箔(染料箔)
10c…ホログラム箔
10d…透明箔
11…ベースフィルム
12…離型層
13…着色層
14…蒸着層
15…接着層
16…ホログラムエンボス層
17…クリアコート層
50…箔押し機
51…プレス
52…ヒーター
53,54…版
53A,54A,54B…版面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の帳票面に判別欄が設けられた偽造防止帳票であって、
上記判別欄は、
上記基材の上に、平坦な版面を有する第1の版によって転写箔を箔押ししてなる第1の転写箔層と、
上記第1の転写箔層の上に、文字又は絵柄の形状に凸設した版面を有する第2の版によって転写箔を箔押ししてなる第2の転写箔層と、
から構成されていることを特徴とする偽造防止帳票。
【請求項2】
基材の帳票面に判別欄が設けられた偽造防止帳票であって、
上記判別欄は、
上記基材の上に、平坦な版面を有する第1の版によって転写箔を箔押ししてなる第1の転写箔層と、
上記第1の転写箔層の上に、文字又は絵柄の形状に凹設した版面を有する第2の版によって転写箔を箔押ししてなる第2の転写箔層と、
から構成されていることを特徴とする偽造防止帳票。
【請求項3】
上記第1の転写箔層と上記第2の転写箔層は、メタリック箔、顔料箔、染料箔、透明箔、ホログラム箔から選ばれるいずれかの組み合わせであることを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造防止帳票。
【請求項4】
上記判別欄は、上記第2の転写箔層の上に、さらに上記第2の版とは異なる形状の版面を有する第3の版によって転写箔を箔押ししてなる第3の転写箔層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偽造防止帳票。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−185796(P2007−185796A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3874(P2006−3874)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)
【Fターム(参考)】