傘
【課題】簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能な傘を提供する。
【解決手段】傘1は、親骨4および支骨6の基端が枢着される下ロクロ5および上ロクロ7と、上端部で上ロクロ7が固定される中棒14、および上端部で下ロクロ5に連結し中棒14に対してスライド可能に外挿される円管部(可動部材)15を有した主軸部10とを備えている。このような構成の傘1では、主軸部10において上ロクロ7が固定される一方、下ロクロ5は中心軸AXに沿った移動が可能となる。そして、傘1の開閉動作では、傘1の下部に設けられた操作部に対する閉傘操作(開傘操作)に応動して、下ロクロ5から操作部に向けて伸延する円管部15を、下ロクロ5が上ロクロ7に近づく方向(離れる方向)に駆動させる。その結果、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【解決手段】傘1は、親骨4および支骨6の基端が枢着される下ロクロ5および上ロクロ7と、上端部で上ロクロ7が固定される中棒14、および上端部で下ロクロ5に連結し中棒14に対してスライド可能に外挿される円管部(可動部材)15を有した主軸部10とを備えている。このような構成の傘1では、主軸部10において上ロクロ7が固定される一方、下ロクロ5は中心軸AXに沿った移動が可能となる。そして、傘1の開閉動作では、傘1の下部に設けられた操作部に対する閉傘操作(開傘操作)に応動して、下ロクロ5から操作部に向けて伸延する円管部15を、下ロクロ5が上ロクロ7に近づく方向(離れる方向)に駆動させる。その結果、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘に関する。
【背景技術】
【0002】
雨傘や日傘などの傘においては、一方の手に荷物を持っている場合や怪我している場合などに、傘を把持する他方の手だけで開傘操作のみならず閉傘操作を行えるものがあれば便利である。
【0003】
このような傘に関しては、例えば特許文献1に開示される技術が提案されている。この技術によれば、親骨、親骨の中途部に枢結される支骨、および支骨の中途部に枢結される子骨と、それぞれに枢着される上ロクロ、中ロクロおよび下ロクロとを備え、中棒に固定された中ロクロに対して上下方向に上ロクロおよび下ロクロを分散して移動できるようになっている。このような構成により、傘の開閉動作に必要な下ロクロの移動距離(開閉ストローク)を短縮し、片手で行える範囲内で開傘操作および閉傘操作を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−30813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の技術によれば、3個のロクロを備えて上ロクロおよび下ロクロを移動可能とする構成が必要であるため、その構造が複雑となる。これでは、製造コストの上昇などを招来してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能な傘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘であって、開傘時に拡げられる主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと、前記主骨が枢着されるとともに前記主軸部において前記上ロクロより前記把持部の方向に配置される下ロクロと、前記主骨における前記中途部から先端までの区間と前記支持骨とに取付けられる傘布と、開傘状態と閉傘状態との切替えに係る閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部とを備え、前記上ロクロと前記下ロクロとは、前記主軸部において、一方が固定される固定ロクロとして、他方が前記中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、前記閉傘操作に応動して、前記可動ロクロから前記操作部に向けて伸延する可動部材を、前記可動ロクロが前記固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、前記開傘操作に応動して、前記可動部材を前記可動ロクロが前記固定ロクロから離れる方向に駆動させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る傘において、前記中心軸に沿った所定方向に前記可動部材を付勢する弾性部材をさらに備えるとともに、前記操作部は、前記開傘操作および前記閉傘操作を受け付ける第1操作部材および第2操作部材を有し、前記第1操作部材に対しての操作に応答し、前記弾性部材の付勢力によって前記可動部材が前記所定方向に駆動される一方、前記第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって前記可動部材が前記所定方向と逆方向に駆動されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る傘において、前記操作部は、前記可動部材に接続する操作部材と、所定の弾性部材を用い、前記閉傘状態から前記開傘状態に至る前記可動部材の駆動域の両端にて前記可動部材を保持するトグル機構とを有し、前記操作部材に対する前記開傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、前記操作部材に対する前記閉傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記他端から前記一端に駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から請求項3の発明によれば、主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと主骨が枢着される下ロクロとは、主軸部において一方が固定される固定ロクロとして、他方が中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、閉傘操作に応動して、可動ロクロから操作部に向けて伸延する可動部材を可動ロクロが固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、開傘操作に応動して、可動部材を可動ロクロが固定ロクロから離れる方向に駆動させる。これにより、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0011】
特に、請求項2の発明においては、第1操作部材に対しての操作に応答し、弾性部材の付勢力によって可動部材が中心軸に沿った所定方向に駆動される一方、第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって可動部材が上記の所定方向と逆方向に駆動されるため、簡便なワンタッチ操作と確実な手動操作との組合せによる適切な開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0012】
また、請求項3の発明においては、可動部材に接続する操作部材に対しての開傘操作に連動し、所定の弾性部材を用い閉傘状態から開傘状態に至る駆動域の両端にて可動部材を保持するトグル機構において可動部材が駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、操作部材に対する閉傘操作に連動し、トグル機構において可動部材が上記の他端から一端に駆動されるため、開傘操作および閉傘操作において操作負担の軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る傘1の要部構成を示す外観図である。
【図2】傘1の要部構成を示す外観図である。
【図3】傘1に係る開傘状態を説明するための図である。
【図4】傘1に係る閉傘状態を説明するための図である。
【図5】傘1の開閉操作を説明するための図である。
【図6】円管部15の構成を示す図である。
【図7】比較例としての傘9の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る傘1Aの要部構成を示す外観図である。
【図9】傘1Aの要部構成を示す外観図である。
【図10】傘1Aの開閉操作を説明するための図である。
【図11】閉傘状態においての操作レバー21を上方から見た図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る傘1Bの操作部20Bを説明するための図である。
【図13】本発明の変形例に係る操作部20Cの構成を説明するための図である。
【図14】他の変形例に係る操作部20Dの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
<傘の要部構成>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る傘1の要部構成を示す外観図である。図1は、傘骨が展開して傘1が開いた状態(以下では「開傘状態」ともいう)を表し、図2は、傘1が閉じた状態(以下では「閉傘状態」ともいう)を表している。なお、図1以降では、方向関係を明確にするため、Y軸方向を傘1の中心軸方向としたXYZ直交座標系を必要に応じて付している。
【0015】
傘1は、棒状の形状を有した主軸部10と、主軸部10の上端部に接続する石突2と、主軸部10の下端に連結する手元3とを備えている。この手元3は、「J」字状の外形を有して手で把持される把持部として機能する。
【0016】
傘1の下部には、開傘状態と閉傘状態との切替えに関しての閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部20が設けられている。この操作部20は、押込み操作によりハジキ11を主軸部10の内部に没入させて閉傘状態から開傘状態に移行させる開傘ボタン12と、石突2の方向(+Y方向)にスライドさせることにより開傘状態を閉傘状態に移行させる閉傘ハンドル13とを備えている。
【0017】
主軸部10の上部には、開傘時に拡げられる親骨(主骨)4の基端(根元)が枢着される親骨受けとして構成された下ロクロ(下部のロクロ)5と、親骨4の中途部に配置されたダボ8に枢結して接続した支骨(支持骨)6の基端が枢着される支骨受けとして構成された上ロクロ(上部のロクロ)7とが設けられている。ここで、上ロクロ7は、主軸部10の上端部に固着される一方、主軸部10において上ロクロ7より手元3の方向(−Y方向)に配置された下ロクロ5は、閉傘ハンドル13に対する操作に連動したY軸方向へのスライドが可能となっている。すなわち、上ロクロ7と下ロクロ5とは、主軸部10において、一方が固定される固定ロクロとして機能し、他方が傘1の中心軸AX(図3、4参照)に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能する。この上ロクロ7と下ロクロ5との離間距離の変化により、傘1では開傘状態(図1)と閉傘状態(図2)との切替えが可能となる。以下では、傘1の開閉動作に関して図3〜4を用い詳しく説明する。
【0018】
図3は、傘1に係る開傘状態を説明するための図であり、図4は、傘1に係る閉傘状態を説明するための図である。
【0019】
主軸部10は、傘1の中心軸AXに沿って手元3(図1)から傘1の尖端部に設けられた石突2に向けて伸延しており、円柱状の外形を有し上端が上ロクロ7に連結する中棒14と、円管状の形状を有し中棒14に対してスライド可能に外挿された円管部15とを備えている。この円管部15については、例えば円管部15の上端部および下端部で部分的に中棒14と当接(摺動)させるようにして、スライド時の摩擦抵抗を低減し、比較的小さい駆動力でもスムーズな移動を行えるようにするのが好ましい。
【0020】
中棒14と円管部15とは、例えばアルミなどの金属で形成されている。そして、円管部15は、その上端に下ロクロ5が固着されており、閉傘ハンドル13(図1)に対しての操作に連動したY軸方向(上下方向)の移動が可能となっている。
【0021】
このように中棒14に対し円管部15を上下方向に相対移動できるため、図3の開傘状態において間隔L離れていた上ロクロ7と下ロクロ5とを、図4の閉傘状態において近接させることが可能になる。すなわち、間隔Lに相当する距離だけY軸方向に円管部15を駆動させれば、開傘状態と閉傘状態との切替えを行えることとなる。
【0022】
ここで、傘1の開閉動作に必要な円管部15のストローク(以下では「開閉ストローク」ともいう)に関しては、本実施形態のように支骨6が接続する上ロクロ7を親骨4が接続する下ロクロ5より上方に設けて閉傘操作の際に下ロクロ5を上ロクロ7に向けて相対的に移動させることにより、開閉ストロークの短縮化を可能としている。そして、開傘状態において主軸部10に対する親骨4の角度θaと支骨6の角度θbとを鋭角にし、支骨6の角度θbを親骨4の角度θaより小さくすることで、より効果的な開閉ストロークの減少を図っている。この開閉ストロークの減少効果については、後で詳述する。
【0023】
以上のような構成の傘1では、親骨7における中途部のダボ8から先端(露先)41までの区間と、支骨6(ダボ8から支骨6の基端まで)の全域とに傘布(カバー)Ea(図1の網掛け部)が取り付けられる。なお、図1では、図示の便宜上、傘1における一部の傘布を網掛け部で表している。ここで、開傘状態においてダボ8で傘布に段差が生じないように、図3に示す先細り形状Kdのようにダボ8から先端41までの間で徐々に親骨4の高さ(Y方向の幅)を減少させていくのが好ましい。
【0024】
<傘1の開閉操作>
次に、傘1における開傘状態(図1)と閉傘状態(図2)との切替え操作(開閉操作)について詳しく説明する。
【0025】
図5は、傘1の開閉操作を説明するための図である。ここで、図5(a)および図5(b)は、操作部20付近の断面図を示しており、閉傘状態と開傘状態とを表している。また、図6は、円管部15の構成を示す図で、(+X)方向から見た外観図を示している。
【0026】
手元3に固定された中棒14上をスライド可能な円管部15では、図6に示すように上端に下ロクロ5が固着され、下端部に閉傘ハンドル13が円筒部16を介して連結されている。なお、図6に示す下ロクロ5の縦溝5aおよび横溝5bは、親骨4の基端を嵌入する縦方向の溝および、親骨4の基端で回転軸を形成する線状部材(例えば針金)を設置するための横方向の溝として形成されている。
【0027】
円管部15には、中棒14に設置されたハジキ(係止爪)11を閉傘状態の時に係止して保持するためのスリット15aと、中棒14から突出する開傘ボタン12の腕部12aを挿通させるためのスリット15bがY軸方向に沿って形成されている。なお、円管状の中棒14の内部空間では、開傘ボタン12の腕部12aとハジキ11とが、図5のように連結部材11aで連結されるとともに、板ばねとして構成される例えば金属製の弾性部材11bがハジキ11に接続している。このような構成により、ハジキ11は、中棒14から突出する方向(+X方向)に付勢される一方、開傘ボタン12に対する押込み操作によりハジキ11を中棒14内に没入させることが可能となり、円管部15のスリット15aに対してハジキ11は係脱自在となる。
【0028】
また、傘1においては、段付き円柱の外形を有し、円筒部16を含む主軸部10の下部を収納する筺体(ケーシング)17と、筺体17の内部に格納される圧縮コイルばね18とを備えている。
【0029】
筺体17は、その下端が手元3の上面3uに固着される。そして、筺体17には、上部に主軸部10を挿通させるための円形孔17hと、円筒部16から筺体17の外部に伸延して上下方向(Y軸方向)への移動が可能な閉傘ハンドル13の腕部13aを挿通させるための矩形孔17gとが形成されている。この矩形孔17gに関しては、開傘状態において図6の破線で示す位置に形成されており、閉傘操作の際に(+Y)方向に移動する閉傘ハンドル13の腕部13aをガイドするようになっている。
【0030】
圧縮コイルばね18は、下端が円筒部16の上面に接続するとともに、上端が筺体17の内壁上面17uに接続している。この圧縮コイルばね18は、円筒部16を介して中心軸AXに沿った下向きの方向(−Y方向)に円管部15を付勢する弾性部材として機能する。
【0031】
以上のような構成を有する傘1の開閉操作を、以下で説明する。
【0032】
まず、閉傘状態では、図5(a)に示すようにハジキ11がスリット15aから突出して係止されており、一定の付勢力が蓄えられた圧縮状態の圧縮コイルばね18によって円筒部16が下方(−Y方向)に付勢される。
【0033】
このような閉傘状態においては、開傘ボタン12を操作することで、開傘状態に移行できる。具体的には、開傘ボタン12の押込み操作に伴ってハジキ11が中棒14内に没入し係止状態が解除されることで、蓄えられていた圧縮コイルばね18の付勢力が開放され、その付勢力によって円筒部16および円管部15が中棒14に沿って押下げられて移動する。そして、円筒部16の移動を制限するストッパとして働く手元3の上面3uに円筒部16の下端が当接することで下方への移動が完了し、図5(b)に示す開傘状態に遷移する。すなわち、開傘ボタン(第1操作部材)12に対しての開傘操作に応答(応動)して、下ロクロ(可動ロクロ)5から操作部20に向けて伸延する可動部材としての円管部15を、下ロクロ5が上ロクロ(固定ロクロ)7から離れる方向(離脱方向)の下方(−Y方向)に圧縮コイルばね18の付勢力を利用して駆動させることで、閉傘状態から開傘状態への切替えが行われる。これにより、開傘ボタン12に対する簡便なワンタッチ操作で、適切な開傘操作を行えることとなる。
【0034】
開傘状態では、圧縮コイルばね18が図5(a)に示す開傘状態より伸張した状態となっているものの、円筒部16および円管部15に対する下向きの付勢力を有している。この付勢力は、開傘状態(図1)を安定して維持するのに必要な力であり、傘布(カバー)に比較的大きな外力が作用する場合(水滴が付いて重くなった傘布が風に煽られる場合など)でも、円筒部16の下端が手元3の上面3uから離脱しない程度の力が必要である。
【0035】
このような開傘状態においては、閉傘ハンドル13を操作することで、閉傘状態に移行できる。具体的には、上述の圧縮コイルばね18の付勢力に抗って、この付勢力の方向と逆方向の上方(+Y方向)に例えば親指などによる閉傘ハンドル13の押上げ操作を行い、図5(a)に示す閉傘状態、つまりハジキ11がスリット15aから突出して係止される状態に遷移させる。すなわち、閉傘ハンドル(第2操作部材)13に対する閉傘操作に連動(応動)して、円管部(可動部材)15を、下ロクロ(可動ロクロ)5が上ロクロ(固定ロクロ)7に近づく方向(接近方向)の上方(+Y方向)に閉傘ハンドル13に与えられる操作力を用いて駆動させることで、開傘状態から閉傘状態への切替えが行われる。これにより、閉傘ハンドル13に対する確実な手動操作で、適切な閉傘操作を行えることとなる。
【0036】
以上のような開閉操作を行える傘1においては、2個のロクロ(下ロクロ5および上ロクロ7)を備えた簡易な構造にて片手での開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0037】
さらに、傘1では、親骨5の上方に支骨(支持骨)6が配置されるため、受骨などの支持骨が親骨より下方に配置される従来の傘に比べて、親骨5より下方のスペースを拡大できる。
【0038】
本実施形態の傘1においては、図3に示すように親骨4を下ロクロ5に枢着させ開傘状態において主軸部10に対する親骨4の角度θaと支骨6の角度θbとを鋭角にすることで円管部15の開閉ストロークの減少を図っているが、この技術思想を従来技術に係る傘の構成(親骨を上ロクロに枢着させる構成)に適用した場合の比較例について以下で考察する。
【0039】
図7は、比較例としての傘9の構成を示す図である。この図は、本実施形態の構成を示す図3に対応している。
【0040】
比較例としての傘9は、親骨91の基端が枢着される上ロクロ92が主軸部90に固着される一方、支骨93の基端が枢着される下ロクロ94が主軸部90においてスライド可能となっている。なお、開傘状態の傘9では、第1実施形態の傘1(図3)と条件を等しくさせるために、上ロクロ92と下ロクロ94との間隔をLとし、下ロクロ94および上ロクロ92から伸延する主軸部90に対しての傘骨の角度をθaおよびθbとしている。このような傘9でも、下ロクロ94を上ロクロ92に近接させるように移動させれば、閉傘動作を行える。
【0041】
ただし、この傘9の構成では、図3に示す第1実施形態の傘1と同じ間隔Lだけ上ロクロ92と下ロクロ94とを離間させただけでは、第1実施形態の親骨4の角度θaより、親骨91の角度θbが小さくなる。これは、傘9における親骨91の回転中心が上ロクロ92(主軸部10付近)であるのに対して、第1実施形態の親骨4の回転中心が主軸部10から離れたダボ8(図3)となっているためである。したがって、第1実施形態と同様の親骨4の角度θaを傘9で実現するには、間隔Lより大きな下ロクロ94の移動が要求される。このことは、開閉ストロークの増大を意味し、従来技術の延長線上にある傘9に比べて、第1実施形態の構成が優れていることとなる。また、第1実施形態の傘1では、上述のように親骨4の回転中心(ダボ8)が主軸部10から離れているため、親骨91の回転中心を上ロクロ92に持つ傘9に比べて、親骨に関しての回転モーメントが減少することとなり、親骨4の展開時などにおける下ロクロ5(円管部15)の駆動力を小さくすることが可能となる。
【0042】
以上のように第1実施形態の傘1では、円管部15の開閉ストローク、つまり閉傘ハンドル13の操作量を効果的に低減できるため、指による直接的な操作でも閉傘操作に必要な閉傘ハンドル13の駆動量(および駆動力)を確保できることとなる。
【0043】
<第2実施形態>
<傘の要部構成>
図8および図9は、本発明の第2実施形態に係る傘1Aの要部構成を示す外観図である。図8は、傘1Aの開傘状態を表し、図9は、傘1Aの閉傘状態を表している。なお、図8〜9では、第1実施形態と同様の構成を有する部位には、同じ参照符号を付している。
【0044】
第2実施形態の傘1Aは、第1実施形態の傘1と類似の構成を有し、図3〜4を用いて説明した第1実施形態と同様の動作を行って開傘状態と閉傘状態との切替えが可能であるが、第1実施形態に対して操作部の構成が異なっている。
【0045】
すなわち、傘1Aの操作部20Aは、第1実施形態の開傘ボタン12および閉傘ハンドル13の代わりに、傘1Aの開閉操作を行うための操作レバー(操作部材)21を備えている。この操作部20Aを用いた傘1Aの開閉操作を、以下で説明する。
【0046】
<傘1Aの開閉操作>
図10は、傘1Aの開閉操作を説明するための図である。ここで、図10(a)および図10(b)は、操作部20A付近の断面図を示しており、閉傘状態と開傘状態とを表している。また、図11は、図10(a)に示す閉傘状態においての操作レバー21を上方(+Y方向)から見た図である。
【0047】
筐体17Aの矩形孔17jに挿通される操作レバー21の本体部21aは、先端部に半楕円状の切欠部21eが形成されるとともに後端部の両サイドに矩形状の切欠部21f、21gが形成された板状の形状を有している。この切欠部21eによって二又に分岐した本体部21aの先端部が、円管部15からZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸15p、15qに枢結されることで、操作レバー21が円管部15に回動自在に接続されている。また、操作レバー21には、本体部21aの中間位置付近にZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸21s、21tが設けられており、本体部21aを収納する筺体17Aに形成されたX軸方向のスリット17sにスライド可能に嵌入(遊嵌)されている。
【0048】
操作レバー21では、切欠部21f、21gによって形成された本体部21aの段差部(凹部)に2個の板ばね22が当接される。板ばね22は、側面視で「コ」字状の形状を有しており、その両端22eが筺体17Aに固定されている。この板ばね22により、回転軸21s、21tがスリット17sに沿って(−X)方向に付勢されることとなる。
【0049】
以上のような構成を有する操作部20Aでは、操作レバー21の回転軸21s、21tがスリット17sの主軸部10A側(−X方向側)の端に位置する状態、つまり図10(a)および図10(b)に示す操作レバー21の2つの状態で安定するトグルスイッチのような機構が形成されることとなる。すなわち、弾性部材として働く板ばね22を用い、閉傘状態から開傘状態に至る円管部15の駆動域(駆動範囲)Dr(図10(a))の両端、つまり図10(a)に示す閉傘位置Paおよび図10(b)に示す開傘位置Pbの両位置にて、円管部(可動部材)15を静的に保持するトグル機構TGが形成される。
【0050】
したがって、図10(a)に示す閉傘状態において操作レバー21を上向き方向Haに中間地点Mdを越えるような押上げ操作(開傘操作)を行えば、図10(b) に示す開傘状態に移行することとなる。一方、図10(b)に示す開傘状態において操作レバー21を下向き方向Hbに中間地点Mdを越えるような押下げ操作(閉傘操作)を行えば、図10(a) に示す閉傘状態に移行する。
【0051】
すなわち、操作レバー21に対する開傘操作に連動し、トグル機構TGにおいて図10(a)に示す駆動域Drの両端に関する閉傘位置(一端)Paから開傘位置(他端)Pbに円管部15が駆動される一方、操作レバー21に対する閉傘操作に連動し、トグル機構TGにおいて円管部15が開傘位置(他端)Pbから閉傘位置(一端)Paに駆動される。この駆動域Drにおける円管部15の往復駆動により、開傘状態と閉傘状態との切替えが行われることとなる。
【0052】
以上のような開閉操作を行う傘1Aにおいては、第1実施形態と同様に、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0053】
また、第2実施形態の傘1Aでは、トグル機構を備えた操作部20Aを採用することにより、操作レバー21を中間地点Md程度まで上昇または下降させれば、それ以降の操作レバー21の駆動は板ばね22の付勢力によってアシストされるため、操作レバー21に対してのスムーズな操作を行える。その結果、開傘操作および閉傘操作において操作負担の軽減が図れることとなる。
【0054】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る傘1Bは、図8〜9に示す第2実施形態の傘1Aと同様の構成を有しているが、主軸部の構成が異なっている。
【0055】
すなわち、傘1Bの主軸部10Bは、第2実施形態のように手元3に固定された中棒14に対して円管部15がスライド自在な構成でなく、手元3に固定された円管部150に対して中棒140がスライド自在な構成となっている。このような構成でも、円管部150の上端に固着された下ロクロ5と中棒140の上端に固定された上ロクロ7との相対距離を変更できるため、図3に示す開傘状態と図4に示す閉傘状態との切替えが可能となる。
【0056】
以上のような傘1Bでは、円管部150に対して中棒140をスライドさせるための操作部の構成が必要となるが、この構成を以下で説明する。
【0057】
図12は、本発明の第3実施形態に係る傘1Bの操作部20Bを説明するための図である。この図は、第2実施形態の操作部20Aを示す図10に対応しており、第2実施形態と同様の構成を有する部位には同じ参照符号を付している。ここで、図12(a)および図12(b)は、操作部20B付近の断面図を示しており、開傘状態と閉傘状態とを表している。なお、この図12に示す開傘状態および閉傘状態では、図10に対して操作レバー21の状態が逆となる。
【0058】
操作部20Bは、トグル機構TGを備え、第2実施形態の操作部20Aと類似の構成を有しているが、二又に分岐した操作レバー21の先端部が、中棒140からZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸14q(14p)に枢結される点で第2実施形態と異なっている。そして、中棒140から突出する回転軸14q(14p)を挿通させるためのスリット15sがY軸方向に沿って円管部150に形成されている。このスリット15sのY方向の長さは、操作レバー21の操作によって回転軸14q(14p)が移動する距離、換言すれば閉止傘状態から開傘状態に至る中棒140の駆動域Dv(図12(a))に対応している。
【0059】
このような操作部20Bの構成により、図12(a)に示す開傘状態において操作レバー21の上向き方向Haへの操作(閉傘操作)を行えば、手元3に固定される円管部150に対して中棒140が押し下げられて図12(b) に示す閉傘状態に移行することとなる。一方、図12(b)に示す閉傘状態において操作レバー21の下向き方向Hbへの操作(開傘操作)を行えば、円管部150に対して中棒140が押し上げられて図12(a) に示す開傘状態に移行する。
【0060】
すなわち、操作レバー21に対しての閉傘操作に応動して、上ロクロ(可動ロクロ)7から操作部20Bに向けて伸延する中棒(可動部材)140を、上ロクロ7が下ロクロ(固定ロクロ)5に近づく方向に駆動させる一方、操作レバー21に対しての開傘操作に応動して、中棒140を上ロクロ7が下ロクロ5から離れる方向に駆動させる。これにより、図3に示す開傘状態と図4に示す閉傘状態との切替えを行えることとなる。
【0061】
以上のような開閉操作を行う傘1Bにおいては、第2実施形態(および第1実施形態)と同様に、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0062】
<変形例>
・上記の第1実施形態における操作部においては、円管部15を下方に付勢する圧縮コイルばね18を備えるのは必須でなく、圧縮コイルばね18を備えない構成でも良い。この構成について、図13を用いて以下で説明する。
【0063】
図13は、本発明の変形例に係る操作部20Cの構成を説明するための図である。この図13は、第1実施形態の操作部20を示す図5に対応している。
【0064】
変形例の操作部20Cは、円管部15の下端部に連結する開閉ハンドル25を備えている。そして、操作部20Cでは、開閉ハンドル25を挿通させるための筺体17Cの矩形孔17gにおける内側開口の近傍に三角柱状の係止部材171、172が設けられ、この係止部材171、172に係合可能な円柱状の突起251が開閉ハンドル25の腕部25aからZ軸方向に伸延している。ここで、突起251は、開閉ハンドル25の中央を貫く孔25hに嵌入される棒状部材252に連結しており、棒状部材252は、その先端部が圧縮コイルばねなどの弾性部材253に接続して
(+X)方向に付勢されている。
【0065】
このような構成の開閉ハンドル25では、その上面から突出する棒状部材252を押し込まない限り、係止部材171または係止部材172に突起251が係合することとなって図13(a)に示す閉傘状態や図13(b)に示す開傘状態を維持することが可能となる。ここで、閉傘状態から開傘状態に移行したい場合には、係止部材171と突起251との係合を解除するために棒状部材252を押込みつつ開閉ハンドル25を下方(−Y方向)に操作すれば良いこととなる。同様に、開傘状態から閉傘状態に移行したい場合には、係止部材172と突起251との係合を解除するために棒状部材252を押込みつつ開閉ハンドル25を上方(+Y方向)に操作すれば良い。
【0066】
以上のような簡易な構成を有した操作部20Cによっても、第1実施形態と同様に、開傘操作および閉傘操作を適切に行うことが可能である。
【0067】
また、上記の操作部20Cのような構成を、第3実施形態の傘1Bに適用するようにしても良い。この構成について、図14を用いて以下で説明する。
【0068】
図14は、他の変形例に係る操作部20Dの構成を説明するための図である。この図は、上述の操作部20Cを示す図13に対応している。
【0069】
第3実施形態の傘1Bは、円管部150に対して中棒140がスライドされる構成を有するため、操作部20Dでは、開閉ハンドル25の腕部25aが中棒140に取り付けられる。そして、この腕部25aを挿通させるためのスリット15tがY軸方向に沿って円管部150に形成される。
【0070】
このような簡易な構成を有した操作部20Dでも、第3実施形態と同様に、開傘操作および閉傘操作を適切に行うことが可能である。
【0071】
・上記の第1実施形態における操作部20については、圧縮コイルばね18により円筒部16を介して円管部15を下方(−Y方向)に付勢するのは必須でなく、円管部15を上方に付勢するようにしても良い。また、圧縮コイルばね18で円管部15を付勢するのは必須でなく、板ばねなどの弾性部材を用いて付勢しても良い。
【0072】
・上記の第2実施形態(および第3実施形態)における操作部20A(20B)においては、操作レバー21を主軸部10A(10B)に向けて板ばね22で付勢するのは必須でなく、操作レバー21をコイルばねなどの弾性部材で付勢するようにしても良い。
【0073】
本発明は詳細に説明されたが、以上の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B 傘、3 手元、4 親骨、5 下ロクロ、6 支骨、7 上ロクロ、10,10A〜10D 主軸部、11 ハジキ、12 開傘ボタン、13 閉傘ハンドル、14,140 中棒、15,150 円管部、15a,15b スリット、15s,15t スリット、16 円筒部、17,17A,17C 筐体、17g,17j 矩形孔、18 圧縮コイルばね、20,20A〜20D 操作部、21 操作レバー、22 板ばね、25 開閉ハンドル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘に関する。
【背景技術】
【0002】
雨傘や日傘などの傘においては、一方の手に荷物を持っている場合や怪我している場合などに、傘を把持する他方の手だけで開傘操作のみならず閉傘操作を行えるものがあれば便利である。
【0003】
このような傘に関しては、例えば特許文献1に開示される技術が提案されている。この技術によれば、親骨、親骨の中途部に枢結される支骨、および支骨の中途部に枢結される子骨と、それぞれに枢着される上ロクロ、中ロクロおよび下ロクロとを備え、中棒に固定された中ロクロに対して上下方向に上ロクロおよび下ロクロを分散して移動できるようになっている。このような構成により、傘の開閉動作に必要な下ロクロの移動距離(開閉ストローク)を短縮し、片手で行える範囲内で開傘操作および閉傘操作を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−30813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の技術によれば、3個のロクロを備えて上ロクロおよび下ロクロを移動可能とする構成が必要であるため、その構造が複雑となる。これでは、製造コストの上昇などを招来してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能な傘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘であって、開傘時に拡げられる主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと、前記主骨が枢着されるとともに前記主軸部において前記上ロクロより前記把持部の方向に配置される下ロクロと、前記主骨における前記中途部から先端までの区間と前記支持骨とに取付けられる傘布と、開傘状態と閉傘状態との切替えに係る閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部とを備え、前記上ロクロと前記下ロクロとは、前記主軸部において、一方が固定される固定ロクロとして、他方が前記中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、前記閉傘操作に応動して、前記可動ロクロから前記操作部に向けて伸延する可動部材を、前記可動ロクロが前記固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、前記開傘操作に応動して、前記可動部材を前記可動ロクロが前記固定ロクロから離れる方向に駆動させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る傘において、前記中心軸に沿った所定方向に前記可動部材を付勢する弾性部材をさらに備えるとともに、前記操作部は、前記開傘操作および前記閉傘操作を受け付ける第1操作部材および第2操作部材を有し、前記第1操作部材に対しての操作に応答し、前記弾性部材の付勢力によって前記可動部材が前記所定方向に駆動される一方、前記第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって前記可動部材が前記所定方向と逆方向に駆動されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る傘において、前記操作部は、前記可動部材に接続する操作部材と、所定の弾性部材を用い、前記閉傘状態から前記開傘状態に至る前記可動部材の駆動域の両端にて前記可動部材を保持するトグル機構とを有し、前記操作部材に対する前記開傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、前記操作部材に対する前記閉傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記他端から前記一端に駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から請求項3の発明によれば、主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと主骨が枢着される下ロクロとは、主軸部において一方が固定される固定ロクロとして、他方が中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、閉傘操作に応動して、可動ロクロから操作部に向けて伸延する可動部材を可動ロクロが固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、開傘操作に応動して、可動部材を可動ロクロが固定ロクロから離れる方向に駆動させる。これにより、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0011】
特に、請求項2の発明においては、第1操作部材に対しての操作に応答し、弾性部材の付勢力によって可動部材が中心軸に沿った所定方向に駆動される一方、第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって可動部材が上記の所定方向と逆方向に駆動されるため、簡便なワンタッチ操作と確実な手動操作との組合せによる適切な開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0012】
また、請求項3の発明においては、可動部材に接続する操作部材に対しての開傘操作に連動し、所定の弾性部材を用い閉傘状態から開傘状態に至る駆動域の両端にて可動部材を保持するトグル機構において可動部材が駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、操作部材に対する閉傘操作に連動し、トグル機構において可動部材が上記の他端から一端に駆動されるため、開傘操作および閉傘操作において操作負担の軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る傘1の要部構成を示す外観図である。
【図2】傘1の要部構成を示す外観図である。
【図3】傘1に係る開傘状態を説明するための図である。
【図4】傘1に係る閉傘状態を説明するための図である。
【図5】傘1の開閉操作を説明するための図である。
【図6】円管部15の構成を示す図である。
【図7】比較例としての傘9の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る傘1Aの要部構成を示す外観図である。
【図9】傘1Aの要部構成を示す外観図である。
【図10】傘1Aの開閉操作を説明するための図である。
【図11】閉傘状態においての操作レバー21を上方から見た図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る傘1Bの操作部20Bを説明するための図である。
【図13】本発明の変形例に係る操作部20Cの構成を説明するための図である。
【図14】他の変形例に係る操作部20Dの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
<傘の要部構成>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る傘1の要部構成を示す外観図である。図1は、傘骨が展開して傘1が開いた状態(以下では「開傘状態」ともいう)を表し、図2は、傘1が閉じた状態(以下では「閉傘状態」ともいう)を表している。なお、図1以降では、方向関係を明確にするため、Y軸方向を傘1の中心軸方向としたXYZ直交座標系を必要に応じて付している。
【0015】
傘1は、棒状の形状を有した主軸部10と、主軸部10の上端部に接続する石突2と、主軸部10の下端に連結する手元3とを備えている。この手元3は、「J」字状の外形を有して手で把持される把持部として機能する。
【0016】
傘1の下部には、開傘状態と閉傘状態との切替えに関しての閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部20が設けられている。この操作部20は、押込み操作によりハジキ11を主軸部10の内部に没入させて閉傘状態から開傘状態に移行させる開傘ボタン12と、石突2の方向(+Y方向)にスライドさせることにより開傘状態を閉傘状態に移行させる閉傘ハンドル13とを備えている。
【0017】
主軸部10の上部には、開傘時に拡げられる親骨(主骨)4の基端(根元)が枢着される親骨受けとして構成された下ロクロ(下部のロクロ)5と、親骨4の中途部に配置されたダボ8に枢結して接続した支骨(支持骨)6の基端が枢着される支骨受けとして構成された上ロクロ(上部のロクロ)7とが設けられている。ここで、上ロクロ7は、主軸部10の上端部に固着される一方、主軸部10において上ロクロ7より手元3の方向(−Y方向)に配置された下ロクロ5は、閉傘ハンドル13に対する操作に連動したY軸方向へのスライドが可能となっている。すなわち、上ロクロ7と下ロクロ5とは、主軸部10において、一方が固定される固定ロクロとして機能し、他方が傘1の中心軸AX(図3、4参照)に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能する。この上ロクロ7と下ロクロ5との離間距離の変化により、傘1では開傘状態(図1)と閉傘状態(図2)との切替えが可能となる。以下では、傘1の開閉動作に関して図3〜4を用い詳しく説明する。
【0018】
図3は、傘1に係る開傘状態を説明するための図であり、図4は、傘1に係る閉傘状態を説明するための図である。
【0019】
主軸部10は、傘1の中心軸AXに沿って手元3(図1)から傘1の尖端部に設けられた石突2に向けて伸延しており、円柱状の外形を有し上端が上ロクロ7に連結する中棒14と、円管状の形状を有し中棒14に対してスライド可能に外挿された円管部15とを備えている。この円管部15については、例えば円管部15の上端部および下端部で部分的に中棒14と当接(摺動)させるようにして、スライド時の摩擦抵抗を低減し、比較的小さい駆動力でもスムーズな移動を行えるようにするのが好ましい。
【0020】
中棒14と円管部15とは、例えばアルミなどの金属で形成されている。そして、円管部15は、その上端に下ロクロ5が固着されており、閉傘ハンドル13(図1)に対しての操作に連動したY軸方向(上下方向)の移動が可能となっている。
【0021】
このように中棒14に対し円管部15を上下方向に相対移動できるため、図3の開傘状態において間隔L離れていた上ロクロ7と下ロクロ5とを、図4の閉傘状態において近接させることが可能になる。すなわち、間隔Lに相当する距離だけY軸方向に円管部15を駆動させれば、開傘状態と閉傘状態との切替えを行えることとなる。
【0022】
ここで、傘1の開閉動作に必要な円管部15のストローク(以下では「開閉ストローク」ともいう)に関しては、本実施形態のように支骨6が接続する上ロクロ7を親骨4が接続する下ロクロ5より上方に設けて閉傘操作の際に下ロクロ5を上ロクロ7に向けて相対的に移動させることにより、開閉ストロークの短縮化を可能としている。そして、開傘状態において主軸部10に対する親骨4の角度θaと支骨6の角度θbとを鋭角にし、支骨6の角度θbを親骨4の角度θaより小さくすることで、より効果的な開閉ストロークの減少を図っている。この開閉ストロークの減少効果については、後で詳述する。
【0023】
以上のような構成の傘1では、親骨7における中途部のダボ8から先端(露先)41までの区間と、支骨6(ダボ8から支骨6の基端まで)の全域とに傘布(カバー)Ea(図1の網掛け部)が取り付けられる。なお、図1では、図示の便宜上、傘1における一部の傘布を網掛け部で表している。ここで、開傘状態においてダボ8で傘布に段差が生じないように、図3に示す先細り形状Kdのようにダボ8から先端41までの間で徐々に親骨4の高さ(Y方向の幅)を減少させていくのが好ましい。
【0024】
<傘1の開閉操作>
次に、傘1における開傘状態(図1)と閉傘状態(図2)との切替え操作(開閉操作)について詳しく説明する。
【0025】
図5は、傘1の開閉操作を説明するための図である。ここで、図5(a)および図5(b)は、操作部20付近の断面図を示しており、閉傘状態と開傘状態とを表している。また、図6は、円管部15の構成を示す図で、(+X)方向から見た外観図を示している。
【0026】
手元3に固定された中棒14上をスライド可能な円管部15では、図6に示すように上端に下ロクロ5が固着され、下端部に閉傘ハンドル13が円筒部16を介して連結されている。なお、図6に示す下ロクロ5の縦溝5aおよび横溝5bは、親骨4の基端を嵌入する縦方向の溝および、親骨4の基端で回転軸を形成する線状部材(例えば針金)を設置するための横方向の溝として形成されている。
【0027】
円管部15には、中棒14に設置されたハジキ(係止爪)11を閉傘状態の時に係止して保持するためのスリット15aと、中棒14から突出する開傘ボタン12の腕部12aを挿通させるためのスリット15bがY軸方向に沿って形成されている。なお、円管状の中棒14の内部空間では、開傘ボタン12の腕部12aとハジキ11とが、図5のように連結部材11aで連結されるとともに、板ばねとして構成される例えば金属製の弾性部材11bがハジキ11に接続している。このような構成により、ハジキ11は、中棒14から突出する方向(+X方向)に付勢される一方、開傘ボタン12に対する押込み操作によりハジキ11を中棒14内に没入させることが可能となり、円管部15のスリット15aに対してハジキ11は係脱自在となる。
【0028】
また、傘1においては、段付き円柱の外形を有し、円筒部16を含む主軸部10の下部を収納する筺体(ケーシング)17と、筺体17の内部に格納される圧縮コイルばね18とを備えている。
【0029】
筺体17は、その下端が手元3の上面3uに固着される。そして、筺体17には、上部に主軸部10を挿通させるための円形孔17hと、円筒部16から筺体17の外部に伸延して上下方向(Y軸方向)への移動が可能な閉傘ハンドル13の腕部13aを挿通させるための矩形孔17gとが形成されている。この矩形孔17gに関しては、開傘状態において図6の破線で示す位置に形成されており、閉傘操作の際に(+Y)方向に移動する閉傘ハンドル13の腕部13aをガイドするようになっている。
【0030】
圧縮コイルばね18は、下端が円筒部16の上面に接続するとともに、上端が筺体17の内壁上面17uに接続している。この圧縮コイルばね18は、円筒部16を介して中心軸AXに沿った下向きの方向(−Y方向)に円管部15を付勢する弾性部材として機能する。
【0031】
以上のような構成を有する傘1の開閉操作を、以下で説明する。
【0032】
まず、閉傘状態では、図5(a)に示すようにハジキ11がスリット15aから突出して係止されており、一定の付勢力が蓄えられた圧縮状態の圧縮コイルばね18によって円筒部16が下方(−Y方向)に付勢される。
【0033】
このような閉傘状態においては、開傘ボタン12を操作することで、開傘状態に移行できる。具体的には、開傘ボタン12の押込み操作に伴ってハジキ11が中棒14内に没入し係止状態が解除されることで、蓄えられていた圧縮コイルばね18の付勢力が開放され、その付勢力によって円筒部16および円管部15が中棒14に沿って押下げられて移動する。そして、円筒部16の移動を制限するストッパとして働く手元3の上面3uに円筒部16の下端が当接することで下方への移動が完了し、図5(b)に示す開傘状態に遷移する。すなわち、開傘ボタン(第1操作部材)12に対しての開傘操作に応答(応動)して、下ロクロ(可動ロクロ)5から操作部20に向けて伸延する可動部材としての円管部15を、下ロクロ5が上ロクロ(固定ロクロ)7から離れる方向(離脱方向)の下方(−Y方向)に圧縮コイルばね18の付勢力を利用して駆動させることで、閉傘状態から開傘状態への切替えが行われる。これにより、開傘ボタン12に対する簡便なワンタッチ操作で、適切な開傘操作を行えることとなる。
【0034】
開傘状態では、圧縮コイルばね18が図5(a)に示す開傘状態より伸張した状態となっているものの、円筒部16および円管部15に対する下向きの付勢力を有している。この付勢力は、開傘状態(図1)を安定して維持するのに必要な力であり、傘布(カバー)に比較的大きな外力が作用する場合(水滴が付いて重くなった傘布が風に煽られる場合など)でも、円筒部16の下端が手元3の上面3uから離脱しない程度の力が必要である。
【0035】
このような開傘状態においては、閉傘ハンドル13を操作することで、閉傘状態に移行できる。具体的には、上述の圧縮コイルばね18の付勢力に抗って、この付勢力の方向と逆方向の上方(+Y方向)に例えば親指などによる閉傘ハンドル13の押上げ操作を行い、図5(a)に示す閉傘状態、つまりハジキ11がスリット15aから突出して係止される状態に遷移させる。すなわち、閉傘ハンドル(第2操作部材)13に対する閉傘操作に連動(応動)して、円管部(可動部材)15を、下ロクロ(可動ロクロ)5が上ロクロ(固定ロクロ)7に近づく方向(接近方向)の上方(+Y方向)に閉傘ハンドル13に与えられる操作力を用いて駆動させることで、開傘状態から閉傘状態への切替えが行われる。これにより、閉傘ハンドル13に対する確実な手動操作で、適切な閉傘操作を行えることとなる。
【0036】
以上のような開閉操作を行える傘1においては、2個のロクロ(下ロクロ5および上ロクロ7)を備えた簡易な構造にて片手での開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0037】
さらに、傘1では、親骨5の上方に支骨(支持骨)6が配置されるため、受骨などの支持骨が親骨より下方に配置される従来の傘に比べて、親骨5より下方のスペースを拡大できる。
【0038】
本実施形態の傘1においては、図3に示すように親骨4を下ロクロ5に枢着させ開傘状態において主軸部10に対する親骨4の角度θaと支骨6の角度θbとを鋭角にすることで円管部15の開閉ストロークの減少を図っているが、この技術思想を従来技術に係る傘の構成(親骨を上ロクロに枢着させる構成)に適用した場合の比較例について以下で考察する。
【0039】
図7は、比較例としての傘9の構成を示す図である。この図は、本実施形態の構成を示す図3に対応している。
【0040】
比較例としての傘9は、親骨91の基端が枢着される上ロクロ92が主軸部90に固着される一方、支骨93の基端が枢着される下ロクロ94が主軸部90においてスライド可能となっている。なお、開傘状態の傘9では、第1実施形態の傘1(図3)と条件を等しくさせるために、上ロクロ92と下ロクロ94との間隔をLとし、下ロクロ94および上ロクロ92から伸延する主軸部90に対しての傘骨の角度をθaおよびθbとしている。このような傘9でも、下ロクロ94を上ロクロ92に近接させるように移動させれば、閉傘動作を行える。
【0041】
ただし、この傘9の構成では、図3に示す第1実施形態の傘1と同じ間隔Lだけ上ロクロ92と下ロクロ94とを離間させただけでは、第1実施形態の親骨4の角度θaより、親骨91の角度θbが小さくなる。これは、傘9における親骨91の回転中心が上ロクロ92(主軸部10付近)であるのに対して、第1実施形態の親骨4の回転中心が主軸部10から離れたダボ8(図3)となっているためである。したがって、第1実施形態と同様の親骨4の角度θaを傘9で実現するには、間隔Lより大きな下ロクロ94の移動が要求される。このことは、開閉ストロークの増大を意味し、従来技術の延長線上にある傘9に比べて、第1実施形態の構成が優れていることとなる。また、第1実施形態の傘1では、上述のように親骨4の回転中心(ダボ8)が主軸部10から離れているため、親骨91の回転中心を上ロクロ92に持つ傘9に比べて、親骨に関しての回転モーメントが減少することとなり、親骨4の展開時などにおける下ロクロ5(円管部15)の駆動力を小さくすることが可能となる。
【0042】
以上のように第1実施形態の傘1では、円管部15の開閉ストローク、つまり閉傘ハンドル13の操作量を効果的に低減できるため、指による直接的な操作でも閉傘操作に必要な閉傘ハンドル13の駆動量(および駆動力)を確保できることとなる。
【0043】
<第2実施形態>
<傘の要部構成>
図8および図9は、本発明の第2実施形態に係る傘1Aの要部構成を示す外観図である。図8は、傘1Aの開傘状態を表し、図9は、傘1Aの閉傘状態を表している。なお、図8〜9では、第1実施形態と同様の構成を有する部位には、同じ参照符号を付している。
【0044】
第2実施形態の傘1Aは、第1実施形態の傘1と類似の構成を有し、図3〜4を用いて説明した第1実施形態と同様の動作を行って開傘状態と閉傘状態との切替えが可能であるが、第1実施形態に対して操作部の構成が異なっている。
【0045】
すなわち、傘1Aの操作部20Aは、第1実施形態の開傘ボタン12および閉傘ハンドル13の代わりに、傘1Aの開閉操作を行うための操作レバー(操作部材)21を備えている。この操作部20Aを用いた傘1Aの開閉操作を、以下で説明する。
【0046】
<傘1Aの開閉操作>
図10は、傘1Aの開閉操作を説明するための図である。ここで、図10(a)および図10(b)は、操作部20A付近の断面図を示しており、閉傘状態と開傘状態とを表している。また、図11は、図10(a)に示す閉傘状態においての操作レバー21を上方(+Y方向)から見た図である。
【0047】
筐体17Aの矩形孔17jに挿通される操作レバー21の本体部21aは、先端部に半楕円状の切欠部21eが形成されるとともに後端部の両サイドに矩形状の切欠部21f、21gが形成された板状の形状を有している。この切欠部21eによって二又に分岐した本体部21aの先端部が、円管部15からZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸15p、15qに枢結されることで、操作レバー21が円管部15に回動自在に接続されている。また、操作レバー21には、本体部21aの中間位置付近にZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸21s、21tが設けられており、本体部21aを収納する筺体17Aに形成されたX軸方向のスリット17sにスライド可能に嵌入(遊嵌)されている。
【0048】
操作レバー21では、切欠部21f、21gによって形成された本体部21aの段差部(凹部)に2個の板ばね22が当接される。板ばね22は、側面視で「コ」字状の形状を有しており、その両端22eが筺体17Aに固定されている。この板ばね22により、回転軸21s、21tがスリット17sに沿って(−X)方向に付勢されることとなる。
【0049】
以上のような構成を有する操作部20Aでは、操作レバー21の回転軸21s、21tがスリット17sの主軸部10A側(−X方向側)の端に位置する状態、つまり図10(a)および図10(b)に示す操作レバー21の2つの状態で安定するトグルスイッチのような機構が形成されることとなる。すなわち、弾性部材として働く板ばね22を用い、閉傘状態から開傘状態に至る円管部15の駆動域(駆動範囲)Dr(図10(a))の両端、つまり図10(a)に示す閉傘位置Paおよび図10(b)に示す開傘位置Pbの両位置にて、円管部(可動部材)15を静的に保持するトグル機構TGが形成される。
【0050】
したがって、図10(a)に示す閉傘状態において操作レバー21を上向き方向Haに中間地点Mdを越えるような押上げ操作(開傘操作)を行えば、図10(b) に示す開傘状態に移行することとなる。一方、図10(b)に示す開傘状態において操作レバー21を下向き方向Hbに中間地点Mdを越えるような押下げ操作(閉傘操作)を行えば、図10(a) に示す閉傘状態に移行する。
【0051】
すなわち、操作レバー21に対する開傘操作に連動し、トグル機構TGにおいて図10(a)に示す駆動域Drの両端に関する閉傘位置(一端)Paから開傘位置(他端)Pbに円管部15が駆動される一方、操作レバー21に対する閉傘操作に連動し、トグル機構TGにおいて円管部15が開傘位置(他端)Pbから閉傘位置(一端)Paに駆動される。この駆動域Drにおける円管部15の往復駆動により、開傘状態と閉傘状態との切替えが行われることとなる。
【0052】
以上のような開閉操作を行う傘1Aにおいては、第1実施形態と同様に、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0053】
また、第2実施形態の傘1Aでは、トグル機構を備えた操作部20Aを採用することにより、操作レバー21を中間地点Md程度まで上昇または下降させれば、それ以降の操作レバー21の駆動は板ばね22の付勢力によってアシストされるため、操作レバー21に対してのスムーズな操作を行える。その結果、開傘操作および閉傘操作において操作負担の軽減が図れることとなる。
【0054】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る傘1Bは、図8〜9に示す第2実施形態の傘1Aと同様の構成を有しているが、主軸部の構成が異なっている。
【0055】
すなわち、傘1Bの主軸部10Bは、第2実施形態のように手元3に固定された中棒14に対して円管部15がスライド自在な構成でなく、手元3に固定された円管部150に対して中棒140がスライド自在な構成となっている。このような構成でも、円管部150の上端に固着された下ロクロ5と中棒140の上端に固定された上ロクロ7との相対距離を変更できるため、図3に示す開傘状態と図4に示す閉傘状態との切替えが可能となる。
【0056】
以上のような傘1Bでは、円管部150に対して中棒140をスライドさせるための操作部の構成が必要となるが、この構成を以下で説明する。
【0057】
図12は、本発明の第3実施形態に係る傘1Bの操作部20Bを説明するための図である。この図は、第2実施形態の操作部20Aを示す図10に対応しており、第2実施形態と同様の構成を有する部位には同じ参照符号を付している。ここで、図12(a)および図12(b)は、操作部20B付近の断面図を示しており、開傘状態と閉傘状態とを表している。なお、この図12に示す開傘状態および閉傘状態では、図10に対して操作レバー21の状態が逆となる。
【0058】
操作部20Bは、トグル機構TGを備え、第2実施形態の操作部20Aと類似の構成を有しているが、二又に分岐した操作レバー21の先端部が、中棒140からZ軸方向に伸びる円柱状の回転軸14q(14p)に枢結される点で第2実施形態と異なっている。そして、中棒140から突出する回転軸14q(14p)を挿通させるためのスリット15sがY軸方向に沿って円管部150に形成されている。このスリット15sのY方向の長さは、操作レバー21の操作によって回転軸14q(14p)が移動する距離、換言すれば閉止傘状態から開傘状態に至る中棒140の駆動域Dv(図12(a))に対応している。
【0059】
このような操作部20Bの構成により、図12(a)に示す開傘状態において操作レバー21の上向き方向Haへの操作(閉傘操作)を行えば、手元3に固定される円管部150に対して中棒140が押し下げられて図12(b) に示す閉傘状態に移行することとなる。一方、図12(b)に示す閉傘状態において操作レバー21の下向き方向Hbへの操作(開傘操作)を行えば、円管部150に対して中棒140が押し上げられて図12(a) に示す開傘状態に移行する。
【0060】
すなわち、操作レバー21に対しての閉傘操作に応動して、上ロクロ(可動ロクロ)7から操作部20Bに向けて伸延する中棒(可動部材)140を、上ロクロ7が下ロクロ(固定ロクロ)5に近づく方向に駆動させる一方、操作レバー21に対しての開傘操作に応動して、中棒140を上ロクロ7が下ロクロ5から離れる方向に駆動させる。これにより、図3に示す開傘状態と図4に示す閉傘状態との切替えを行えることとなる。
【0061】
以上のような開閉操作を行う傘1Bにおいては、第2実施形態(および第1実施形態)と同様に、簡易な構造で片手による開傘操作および閉傘操作が可能となる。
【0062】
<変形例>
・上記の第1実施形態における操作部においては、円管部15を下方に付勢する圧縮コイルばね18を備えるのは必須でなく、圧縮コイルばね18を備えない構成でも良い。この構成について、図13を用いて以下で説明する。
【0063】
図13は、本発明の変形例に係る操作部20Cの構成を説明するための図である。この図13は、第1実施形態の操作部20を示す図5に対応している。
【0064】
変形例の操作部20Cは、円管部15の下端部に連結する開閉ハンドル25を備えている。そして、操作部20Cでは、開閉ハンドル25を挿通させるための筺体17Cの矩形孔17gにおける内側開口の近傍に三角柱状の係止部材171、172が設けられ、この係止部材171、172に係合可能な円柱状の突起251が開閉ハンドル25の腕部25aからZ軸方向に伸延している。ここで、突起251は、開閉ハンドル25の中央を貫く孔25hに嵌入される棒状部材252に連結しており、棒状部材252は、その先端部が圧縮コイルばねなどの弾性部材253に接続して
(+X)方向に付勢されている。
【0065】
このような構成の開閉ハンドル25では、その上面から突出する棒状部材252を押し込まない限り、係止部材171または係止部材172に突起251が係合することとなって図13(a)に示す閉傘状態や図13(b)に示す開傘状態を維持することが可能となる。ここで、閉傘状態から開傘状態に移行したい場合には、係止部材171と突起251との係合を解除するために棒状部材252を押込みつつ開閉ハンドル25を下方(−Y方向)に操作すれば良いこととなる。同様に、開傘状態から閉傘状態に移行したい場合には、係止部材172と突起251との係合を解除するために棒状部材252を押込みつつ開閉ハンドル25を上方(+Y方向)に操作すれば良い。
【0066】
以上のような簡易な構成を有した操作部20Cによっても、第1実施形態と同様に、開傘操作および閉傘操作を適切に行うことが可能である。
【0067】
また、上記の操作部20Cのような構成を、第3実施形態の傘1Bに適用するようにしても良い。この構成について、図14を用いて以下で説明する。
【0068】
図14は、他の変形例に係る操作部20Dの構成を説明するための図である。この図は、上述の操作部20Cを示す図13に対応している。
【0069】
第3実施形態の傘1Bは、円管部150に対して中棒140がスライドされる構成を有するため、操作部20Dでは、開閉ハンドル25の腕部25aが中棒140に取り付けられる。そして、この腕部25aを挿通させるためのスリット15tがY軸方向に沿って円管部150に形成される。
【0070】
このような簡易な構成を有した操作部20Dでも、第3実施形態と同様に、開傘操作および閉傘操作を適切に行うことが可能である。
【0071】
・上記の第1実施形態における操作部20については、圧縮コイルばね18により円筒部16を介して円管部15を下方(−Y方向)に付勢するのは必須でなく、円管部15を上方に付勢するようにしても良い。また、圧縮コイルばね18で円管部15を付勢するのは必須でなく、板ばねなどの弾性部材を用いて付勢しても良い。
【0072】
・上記の第2実施形態(および第3実施形態)における操作部20A(20B)においては、操作レバー21を主軸部10A(10B)に向けて板ばね22で付勢するのは必須でなく、操作レバー21をコイルばねなどの弾性部材で付勢するようにしても良い。
【0073】
本発明は詳細に説明されたが、以上の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B 傘、3 手元、4 親骨、5 下ロクロ、6 支骨、7 上ロクロ、10,10A〜10D 主軸部、11 ハジキ、12 開傘ボタン、13 閉傘ハンドル、14,140 中棒、15,150 円管部、15a,15b スリット、15s,15t スリット、16 円筒部、17,17A,17C 筐体、17g,17j 矩形孔、18 圧縮コイルばね、20,20A〜20D 操作部、21 操作レバー、22 板ばね、25 開閉ハンドル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘であって、
開傘時に拡げられる主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと、
前記主骨が枢着されるとともに、前記主軸部において前記上ロクロより前記把持部の方向に配置される下ロクロと、
前記主骨における前記中途部から先端までの区間と前記支持骨とに取付けられる傘布と、
開傘状態と閉傘状態との切替えに係る閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部と、
を備え、
前記上ロクロと前記下ロクロとは、前記主軸部において、一方が固定される固定ロクロとして、他方が前記中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、
前記閉傘操作に応動して、前記可動ロクロから前記操作部に向けて伸延する可動部材を、前記可動ロクロが前記固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、
前記開傘操作に応動して、前記可動部材を前記可動ロクロが前記固定ロクロから離れる方向に駆動させることを特徴とする傘。
【請求項2】
請求項1に記載の傘において、
前記中心軸に沿った所定方向に前記可動部材を付勢する弾性部材、
をさらに備えるとともに、
前記操作部は、
前記開傘操作および前記閉傘操作を受け付ける第1操作部材および第2操作部材、
を有し、
前記第1操作部材に対しての操作に応答し、前記弾性部材の付勢力によって前記可動部材が前記所定方向に駆動される一方、
前記第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって前記可動部材が前記所定方向と逆方向に駆動されることを特徴とする傘。
【請求項3】
請求項1に記載の傘において、
前記操作部は、
前記可動部材に接続する操作部材と、
所定の弾性部材を用い、前記閉傘状態から前記開傘状態に至る前記可動部材の駆動域の両端にて前記可動部材を保持するトグル機構と、
を有し、
前記操作部材に対する前記開傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、
前記操作部材に対する前記閉傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記他端から前記一端に駆動されることを特徴とする傘。
【請求項1】
中心軸に沿って把持部から伸延される主軸部を有した傘であって、
開傘時に拡げられる主骨の中途部に接続した支持骨が枢着される上ロクロと、
前記主骨が枢着されるとともに、前記主軸部において前記上ロクロより前記把持部の方向に配置される下ロクロと、
前記主骨における前記中途部から先端までの区間と前記支持骨とに取付けられる傘布と、
開傘状態と閉傘状態との切替えに係る閉傘操作および開傘操作を受け付ける操作部と、
を備え、
前記上ロクロと前記下ロクロとは、前記主軸部において、一方が固定される固定ロクロとして、他方が前記中心軸に沿った移動が可能な可動ロクロとして機能するとともに、
前記閉傘操作に応動して、前記可動ロクロから前記操作部に向けて伸延する可動部材を、前記可動ロクロが前記固定ロクロに近づく方向に駆動させる一方、
前記開傘操作に応動して、前記可動部材を前記可動ロクロが前記固定ロクロから離れる方向に駆動させることを特徴とする傘。
【請求項2】
請求項1に記載の傘において、
前記中心軸に沿った所定方向に前記可動部材を付勢する弾性部材、
をさらに備えるとともに、
前記操作部は、
前記開傘操作および前記閉傘操作を受け付ける第1操作部材および第2操作部材、
を有し、
前記第1操作部材に対しての操作に応答し、前記弾性部材の付勢力によって前記可動部材が前記所定方向に駆動される一方、
前記第2操作部材に対しての操作に連動し、当該第2操作部材に与えられる操作力によって前記可動部材が前記所定方向と逆方向に駆動されることを特徴とする傘。
【請求項3】
請求項1に記載の傘において、
前記操作部は、
前記可動部材に接続する操作部材と、
所定の弾性部材を用い、前記閉傘状態から前記開傘状態に至る前記可動部材の駆動域の両端にて前記可動部材を保持するトグル機構と、
を有し、
前記操作部材に対する前記開傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記駆動域の両端に係る一端から他端に駆動される一方、
前記操作部材に対する前記閉傘操作に連動し、前記トグル機構において前記可動部材が前記他端から前記一端に駆動されることを特徴とする傘。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−115423(P2012−115423A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−267081(P2010−267081)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【特許番号】特許第4866480号(P4866480)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(501029629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267081(P2010−267081)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【特許番号】特許第4866480号(P4866480)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(501029629)
【Fターム(参考)】
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