説明

傾斜型陳列棚

【課題】構成が簡単で製作および組立が容易に行なえ、低コスト化が図れ、取扱いが便利であり、しかも、容易に直立させて設置することができるようにした傾斜型陳列棚を提供する。
【解決手段】左右1対の側板5間に複数段の棚板6を設けた直立設置可能な棚本体2と、この棚本体2を後傾させた状態で後方から支持する左右1対の傾斜支持具3とを備え、各傾斜支持具3は、棚本体2の各側板5の下端位置から後方に向けて水平に配置されるベース部材14と、各ベース部材14の後端部から起立するステイ20と、ベース部材14の前面下部に設けられ、棚本体2の側板5の後部下端に係合する係合片17と、ステイ20の上端に設けられ、側板5の後壁の中間部に設けた係止孔に係合しうる係止片18とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば店舗等において、書籍等の商品を後傾状態で陳列することができるようにした傾斜型陳列棚に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、店舗等における書籍等の商品陳列棚として、商品の見易さを向上させるために陳列面を後傾させた傾斜型陳列棚がある。このような傾斜型陳列棚は、一般的に左右の側板を、前縁が後傾する側面視台形状とし、さらに棚板を後方が低くなるように傾斜させる場合が多い(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−215565号公報(図1〜図3)
【特許文献2】
特開平8−140794号公報(図1、図5、図6)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来技術においては、側板を、下部の前後長が上部の前後長より長い台形としたり、棚板を後方が低くなるように傾斜させるなど、特殊な構成としなければならず、製作および組立等の加工工数が多くコスト高となり、さらに側板により陳列棚の強度を保ち、支持する構造となるため、単体としても大きな形状となるとともに、かなり重いものになり、取扱いも面倒である等の問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、構成が簡単で、製作および組立が容易に行なえ、低コスト化が図れるとともに、取扱いが便利であり、しかも容易に直立させて設置することもできるようにした傾斜型陳列棚を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 左右1対の側板間に複数段の棚板を設けた直立設置可能な棚本体と、この棚本体を後傾させた状態で後方から支持する左右1対の傾斜支持具とを備え、前記各傾斜支持具は、前記棚本体の各側板の下端位置から後方に向けてそれぞれ水平に配置されているベース部材と、この各ベース部材の後端部から起立するステイと、前記ベース部材の前面下部に設けられ、前記棚本体の側板の後部下端に係合する係合片と、前記ステイの上端に設けられ、前記側板の後壁の中間部に設けた係止孔に係合しうる係止片とを備えるものとする。
【0007】
(2) 上記(1)項において、傾斜支持具は、ベース部材の前端とステイの上端とに連結され、かつ若干後傾する傾斜部材を備えるものとする。
【0008】
(3) 上記(2)項において、係止片と係合片とは、傾斜部材の上下の端部を折曲して形成する。
【0009】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、係止片は、ステイの上端または傾斜部材の上端から前方に向かって突出する側面視上向き鉤状をなし、この係止片を、係止孔に嵌合し、かつ側板にねじ止めされるものとする。
【0010】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、係合片は、ベース部材の前面下端から前上方に突出する突片状をなし、この係合片を、側板の下端後部に設けた開口部に嵌合して、側板の後壁の下端に係合させるものとする。
【0011】
(6) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、棚本体の前面下部に、両側板の前面とほぼ平行をなして後傾し、かつ両側板間の下部からほぼ床面までの前面を覆う化粧パネルを設ける。
【0012】
(7) 上記(6)項において、化粧パネルの両側下部に補強部材を設け、この補強部材の下面に、棚本体の後傾時に接床するようにした高さ調節用のアジャスタを設ける。
【0013】
(8) 上記(6)または(7)項において、棚本体は、各側板の下端に前後1対の高さ調整用のアジャスタを有し、後傾時に、床面から離れた前部のアジャスタが、化粧パネルの両側部に設けた補強部材上に載置されるようにする。
【0014】
(9) 上記(1)〜(8)項のいずれかにおいて、ベース部材の後部下面に、高さ調整用のアジャスタを設ける。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態の分解斜視図であり、図2〜図5は、その組立状態を詳細に示す説明図である。
【0016】
これらの図に示す実施形態の傾斜型陳列棚(1)は鋼板製であり、大別して3種の部品、即ち独立して床上に直立設置することができる棚本体(2)と、この棚本体(2)を後傾させた状態で、後方から支持する左右1対の傾斜支持具(3)(3)と、棚本体(2)の前面下部を被覆する1枚の化粧パネル(4)とを備えている。
【0017】
棚本体(2)は、左右1対の縦長の長方形状の側板(5)間に上下複数段の棚板(6)を設け、背面側にバックパネル(7)を設けたものよりなっている。側板(5)は、鋼板を薄い中空箱状に組立て、左右方向に一定の幅を有するものとされ、この側板(5)の下端には、前後1対の高さ調整用のアジャスタ(8)(9)が取付けられている。
【0018】
棚本体(2)の各側板(5)の後部の下端には、開口部(10)が形成され、また各側板(5)の後壁(5a)の高さ方向中間位置より少し低い位置には、四角形の係止孔(11)が穿設されている。さらに、各側板(5)の後壁(5a)には、ねじ(13)挿入用の取付け孔(12)が、係止孔(11)の上方に接近させて設けられている。
【0019】
傾斜支持具(3)は、側面視ほぼ三角形状の枠体として構成されている。即ち、この傾斜支持具(3)は、基部として、棚本体(2)の側板(5)の下端から後方を向く水平の四角筒状の高強度のベース部材(14)を有している。このベース部材(14)の後端部下面には、高さ調整用のアジャスタ(15)が取付けられている。
【0020】
ベース部材(14)の前端には、所定の後傾角度、例えば83°をなして後傾するように起立する傾斜部材(16)の下端部が、溶接により固着されている。この傾斜部材(16)は細長板状のものであり、その下端には、前上方に突出する突片状をなす係合片(17)が一体に設けられている。この係合片(17)は、傾斜部材(16)の下端を例えば前方に向ってほぼ45°の角度で立ち上がるように折曲したものである。この受止片(17)は、棚本体(2)の側板(5)の後部下端の開口部(10)に挿入され、後壁(5a)の下端に係合している。
【0021】
傾斜部材(16)の上端には、前方に向かって突出する側面視上向き鉤状の係止片(18)が一体に設けられている。この係止片(18)は、傾斜部材(16)の上端を、例えば前方に90°折曲した第1折曲部(18a)と、この第1折曲部(18a)から上方にさらに90°折曲されて小幅な舌片状に構成された第2折曲部(18b)とからなり、第2折曲部(18b)には、ねじ孔(19)が形成されている。この係止片(18)は、棚本体(2)の側板(5)の背面に形成された四角形の係止孔(11)に挿入され、ねじ(13)により、後壁(5a)の前面に固着される。
【0022】
ベース部材(14)の後端には、所定の前傾角度、例えば83.6°をもって前傾するように起立するステイ(20)の下端部が、溶接により固着されている。このステイ(20)は、ベース(14)と同様に、四角筒状のもので、その上端は、傾斜部材(16)の上端部近傍の背面側に溶接により固着されている。すなわち、後傾した傾斜部材(16)と前傾したステイ(20)との頂部が、互いに溶接により固着されて、傾斜支持具(3)が側面視ほぼ三角形状に形成されている。
【0023】
化粧パネル(4)は、両側板(5)の前面とほぼ平行をなし、かつ傾斜支持具(3)の傾斜部材(16)とほぼ同角度をもって後傾し、両側部が棚本体(2)の各側板(5)に固着された薄板状のパネル本体部材(21)と、このパネル本体部材(21)の両側下部に設けられ、各側板(5)の下端前部を下方から支持する厚板状の補強部材(22)とを有している。
【0024】
パネル本体部材(21)は、棚本体(2)の各側板(5)への取付用として、左右両側端に縦長の取付片(23)(23)が互いに対向して折曲形成され、この取付片(23)には、ねじ止め用の取付孔(24)(24)が穿設されている。パネル本体部材(21)の両側下端部には、各側板(5)の下端より下方の空間を隠すための耳片(25)が、左右方向に突出して形成されている。
【0025】
パネル本体部材(21)の下端縁には、後方に向けて折曲された水平片(26a)と、この水平片(26a)の後端から立ち上がる垂直片(26b)と、さらに垂直片(26b)の上端から後方に下向傾斜する傾斜片(26c)とからなる下板(26)が連設されている。傾斜片(26c)は、棚本体(2)の側板(5)の底面に接して、位置決め用として機能するようになっている。
【0026】
補強部材(22)は、パネル本体部材(21)の両側の取付片(23)の対向面側に沿う縦板片(22a)と、この縦板片(22a)から側面視コ字形に折曲された折曲部(22b)とを有し、この折曲部(22b)の下部先端は外側方に向って突出し、この折曲部(22b)の上に、棚本体(2)の前側のアジャスタ(8)が載置されるようになっている。
【0027】
補強部材(22)の縦板片(22a)は、溶接によって両側の取付片(23)に固着されている。補強部材(22)のコ字形の折曲部(22b)には、高さ調整用のアジャスタ(29)が取付けられ、このアジャスタ(29)は上述した水平片(26a)を貫通して下方に突出している。
【0028】
このように構成された本実施形態の傾斜型陳列棚(1)を床上に直立設置するには、棚本体(2)のみを使用する。この場合、前後のアジャスタ(8)(9)をそれぞれ調整し、設置時のがたつきをなくすようにする。
【0029】
棚本体(2)を床上にて後傾状態として使用する場合には、棚本体(2)の下端前部が少し持ち上がるようにして、例えば83°後傾させる。この後傾状態においては、後方のアジャスタ(9)のみが床面に接し、前方のアジャスタ(8)は床面から離れて宙に浮いた状態となる。
【0030】
この場合、図2〜図4に示すように、棚本体(2)の背面側においては、予め、側板(5)の下端後部の開口部(10)に、傾斜支持具(3)における係合片(17)を挿入して、後壁(5a)の下端に係合片(17)を係合させるとともに、棚本体(2)の側板(5)の背面に形成された四角形の係止孔(11)に、係止片(18)を挿入して、これをねじ(13)により後壁(5a)の前面に締結し、アジャスタ(15)により、ベース部材(14)の後端部の床面から高さ調整を行なっておく。
【0031】
棚本体(2)の前面側には、化粧パネル(4)を取付ける。すなわち、化粧パネル(4)のパネル本体部分(21)によって、棚本体(2)の下部前面を覆い、左右の取付片(23)を棚本体(2)の側板(5)の対向面に、ねじ(28)により締結固定する。傾斜片(26c)は、棚本体(2)の底面に接して位置決めする。この状態においては、左右方向に突出する耳片(25)により、棚本体(2)の側板(5)の下端の空間が前方から隠蔽される。
【0032】
補強部材(22)のコ字形の折曲部(22b)の下部先端には、棚本体(2)の前方のアジャスタ(8)を載置する。そして、化粧パネル(4)のアジャスタ(29)により、床上への設置高さ調整を行なう。
【0033】
本実施形態によれば、側板(5)が上下に亘って一定の前後方向の幅を有する棚本体(2)に、簡易な構成の傾斜支持具(3)および化粧パネル(4)を取付けた後、簡単に後傾状態に設置することができる。したがって、棚本体(2)として特殊な形状にする必要はなく、構成が簡単で、製作および組立を容易に行なえ、これに伴い低コスト化が図れる。
【0034】
傾斜支持具(3)および化粧パネル(4)を小型軽量とすることができ、それらの部品の運搬や取扱いが便利である。
【0035】
直立設置にも容易に転用可能であり、用途に応じた使い分けができるため、利便性を増すことができる。
【0036】
なお、係合片(17)をベース部材(14)の前端に、また係止片(18)をステイ(20)の上端にそれぞれ一体的に形成して、傾斜部材(16)を省略して実施することもできる。この場合、ベース部材(14)の前端とステイ(20)の上端とを連結する傾斜部材(16)の機能は、側板(5)の後壁(5a)によって果たされる。
【0037】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、構成が簡単で製作および組立を容易に行なえ、低コスト化が図れるとともに、各部品の小型軽量化が図れるので、それらの運搬や取扱いが便利であり、しかも直立設置にも容易に転用可能な傾斜型陳列棚を提供することができる。
【0038】
請求項2記載の発明によれば、傾斜部材により、ベース部材の前端とステイの上端とが連結され、傾斜支持具が完全な側面視三角形の構造を呈し、棚本体の後方への後傾を強力に阻止することができる。
【0039】
請求項3記載の発明によれば、係止片と係合片とを、傾斜部材の上下の端部を折曲するだけで簡単に形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0040】
請求項4記載の発明によれば、係止片を係止孔に差込み、かつそれをねじ止めするだけで、ステイを側板に簡単かつ強固に連結することができ、容易に組立てを行なうことができる。
【0041】
請求項5記載の発明によれば、係合片を簡単に形成することができるとともに、この係合片を単に棚本体の側板の下端の開口部に挿入するだけで、容易に組立てることができる。
【0042】
請求項6記載の発明によれば、棚本体を後傾させたときにできる棚本体の前面の下方の空間を、化粧パネルにより隠蔽することができ、体裁がよい。
【0043】
請求項7記載の発明によれば、化粧パネルの設置状態を、傾斜支持具の設置状態を、アジャスタにより容易に安定させることができる。
【0044】
請求項8記載の発明によれば、後傾させた棚本体の前側のアジャスタを、化粧パネルの補強部材に載置して容易に傾斜状態を保持することができる。
【0045】
請求項9記載の発明によれば、傾斜支持具の設置状態を、アジャスタにより容易に安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】同じく、一部を切欠いた側面図である。
【図3】同じく、一部を切欠いた背面図である。
【図4】同じく、図3のIV−IV線に沿う拡大縦断側断面図である。
【図5】同じく、右下部の部分拡大正面図である。
【符号の説明】
(1)傾斜型陳列棚
(2)棚本体
(3)傾斜支持具
(4)化粧パネル
(5)側板
(5a)後壁
(6)棚板
(7)バックパネル
(8)(9)アジャスタ
(10)開口部
(11)係止孔
(12)取付け孔
(13)ねじ
(14)ベース部材
(15)アジャスタ
(16)傾斜部材
(17)係合片
(18)係止片
(18a)第1折曲部
(18b)第2折曲部
(19)ねじ孔
(20)ステイ
(21)パネル本体部材
(22)補強部材
(22a)縦板片
(22b)折曲部
(23)取付片
(24)取付孔
(25)耳片
(26)下板
(26a)水平片
(26b)垂直片
(26c)傾斜片
(28)ねじ
(29)アジャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対の側板間に複数段の棚板を設けた直立設置可能な棚本体と、この棚本体を後傾させた状態で後方から支持する左右1対の傾斜支持具とを備え、
前記各傾斜支持具は、前記棚本体の各側板の下端位置から後方に向けてそれぞれ水平に配置されているベース部材と、この各ベース部材の後端部から起立するステイと、前記ベース部材の前面下部に設けられ、前記棚本体の側板の後部下端に係合する係合片と、前記ステイの上端に設けられ、前記側板の後壁の中間部に設けた係止孔に係合しうる係止片とを備えていることを特徴とする傾斜型陳列棚。
【請求項2】
傾斜支持具は、ベース部材の前端とステイの上端とに連結され、かつ若干後傾する傾斜部材を備えている請求項1記載の傾斜型陳列棚。
【請求項3】
係止片と係合片とは、傾斜部材の上下の端部を折曲して形成されている請求項2記載の傾斜型陳列棚。
【請求項4】
係止片は、ステイの上端または傾斜部材の上端から前方に向かって突出する側面視上向き鉤状をなし、この係止片を、係止孔に嵌合し、かつ側板にねじ止めした請求項1〜3のいずれかに記載の傾斜型陳列棚。
【請求項5】
係合片は、ベース部材の前面下端から前上方に突出する突片状をなし、この係合片を、側板の下端後部に設けた開口部に嵌合して、側板の後壁の下端に係合させた請求項1〜4のいずれかに記載の傾斜型陳列棚。
【請求項6】
棚本体の前面下部に、両側板の前面とほぼ平行をなして後傾し、かつ両側板間の下部からほぼ床面までの前面を覆う化粧パネルを設けた請求項1〜5のいずれかに記載の傾斜型陳列棚。
【請求項7】
化粧パネルの両側下部に補強部材を設け、この補強部材の下面に、棚本体の後傾時に接床するようにした高さ調節用のアジャスタを設けた請求項6記載の傾斜型陳列棚。
【請求項8】
棚本体は、各側板の下端に前後1対の高さ調整用のアジャスタを有し、後傾時に、床面から離れた前部のアジャスタが、化粧パネルの両側部に設けた補強部材上に載置されるようにした請求項6または7記載の傾斜型陳列棚。
【請求項9】
ベース部材の後部下面に、高さ調整用のアジャスタを設けた請求項1〜8のいずれかに記載の傾斜型陳列棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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