説明

像振れ補正装置及び光量制御装置

【課題】像振れ補正装置の簡素化、小型化を図りつつ、装置の組み付け後において補正用のレンズの光軸を調整できるようにする。
【解決手段】開口部11を有するベース10、レンズを保持すると共に開口部の中心を通る基準光軸Lの方向においてベースに対向して配置される可動保持部材20、可動保持部材をベースに対して基準光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構30、可動保持部材を基準光軸に垂直な平面内で駆動する駆動機構40,50、可動保持部材の位置を検出する検出手段60,70を備え、支持機構30は、ベースに対して可動保持部材を少なくとも3箇所(球体31)にて支持すると共にベースに対する可動保持部材の間隔を少なくとも2箇所(調整ネジ32)において調整自在となっている。これによれば、装置の簡素化、小型化を達成しつつ、組み付け後においてレンズの光軸の向きを調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや銀塩フィルム式カメラ等のレンズ鏡筒に搭載されて手振れ等による像振れを補正する像振れ補正装置及びこの像振れ補正装置を備えた光量制御装置に関し、特に、レンズ鏡筒内においてシャッタユニットあるいはその他の機構と一緒に搭載される像振れ補正装置及び光量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の像振れ補正装置としては、ベースと、レンズを保持した可動部材と、可動部材をベースに対して移動自在に支持する支持機構として3つのボール及びコイルスプリングと、可動部材を光軸に垂直な方向に駆動する駆動手段(駆動用磁石、コイル、ヨーク)と、可動部材の位置を検出するための位置検出手段(磁石、ホール素子)を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、この装置においては、図13に示すように、ベース1と可動部材2との間に3つの転動するボール3を介在させているだけであるため、ボール3を支持するベース1上の3つの面1aが光軸Lに垂直な同一の平面上に無い場合、又は、ボール3が接触する可動部材2上の3つの面2aが光軸Lに垂直な同一の平面上に無い場合、本来位置すべき光軸Lに対してレンズの光軸が傾いてしまい、解像不良の原因となる虞がある。
また、3つのボール3を中心からお互いにできるだけ離した位置に配置し、ベース1及び可動部材2の精度を高めることで、上記の傾きを改善することはできるものの、装置の大型化を招き、近年の小型化の要求を満たすことが困難になる。
さらに、装置を組み付けた後に、上記の傾きが問題となった場合、一度組み付けた装置を分解して、ワッシャ等の調整部材を組み込む等の調整作業を行う必要があり、大変な手間を要し、生産性の低下を招くという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2007−193374号公報
【特許文献2】特許第3969927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を図り、部品の成形バラツキ、組み付けバラツキ等を許容しつつも、レンズの傾きを防止でき又は組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性の向上が図れ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる像振れ補正装置及びこの像振れ補正装置を備えた光量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の像振れ補正装置は、開口部を有するベースと、レンズを保持すると共に開口部の中心を通る基準光軸の方向においてベースに対向して配置される可動保持部材と、可動保持部材をベースに対して基準光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、可動保持部材を基準光軸に垂直な平面内で駆動する駆動機構と、可動保持部材の位置を検出する検出手段とを備えた像振れ補正装置であって、上記支持機構は、ベースに対して可動保持部材を少なくとも3箇所にて支持すると共にベースに対する可動保持部材の間隔を少なくとも2箇所において調整自在となっている、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動機構の駆動力により、可動保持部材は、ベースに対して基準光軸に垂直な平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。
ここで、支持機構は、ベースに対して可動保持部材を少なくとも3箇所にて支持すると共にベースに対する可動保持部材の間隔を少なくとも2箇所において調整自在となっているため、2箇所の間隔が調整自在の場合は、組み付け後において、可動保持部材を所定の方向に(レンズの光軸がベースの開口部中心を通る基準光軸と一致する又は平行になるように)方向付けるべく調整することができる。また、3箇所の間隔が調整自在の場合は、組み付け後において、可動保持部材を所定の方向に(レンズの光軸がベースの開口部中心を通る基準光軸と一致する又は平行になるように)方向付けし、かつ、方向付けをした状態において可動保持部材とベースとの間隔を調整することができ、それ故に、基準光軸方向のレンズの位置を調整することができ、又、駆動機構がベース及び可動保持部材の一方に固定された磁石と他方に固定されたコイルを含む場合に、電磁駆動力の大きさを適宜調整することができる。
【0007】
上記構成において、支持機構は、少なくとも3つの球体と、少なくとも3つの球体のうち少なくとも2つの球体の基準光軸方向における位置を調整するべくベースに螺合された調整ネジを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、支持機構として、球体と調整ネジを採用するため、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成しつつ、調整作業の容易化を達成することができる。
【0008】
上記構成において、調整ネジと球体の間には、座面部材が配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、調整ネジの先端は座面部材を介して球体に押圧力を及ぼすため、摩擦力を低減できると共に、球体又は調整ネジの摩耗又は破損等を防止することができ、調整作業を円滑に行うことができる。
【0009】
上記構成において、支持機構は、ベースに螺合されると共に先端が可動保持部材に直接当接する少なくとも2つの調整ネジを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、1つの球体と2つの調整ネジを含む構成の場合、組み付け後において、2つの調整ネジを調整することで、可動保持部材を所定の方向に(レンズの光軸がベースの開口部中心を通る基準光軸と一致する又は平行になるように)方向付けることができ、又、3つの調整ネジを含む構成の場合は、組み付け後において、3つの調整ネジを調整することで、可動保持部材を所定の方向に(レンズの光軸がベースの開口部中心を通る基準光軸と一致する又は平行になるように)方向付けし、かつ、方向付けをした状態において基準光軸方向のレンズの位置を調整することが可能、すなわち、可動保持部材とベースとの間隔を適宜調整することができる。
【0010】
上記構成において、ベースには、可動保持部材と反対側において、開口部を開閉自在に駆動される羽根部材と、羽根部材を覆うカバー部材が配置され、カバー部材には、調整ネジを調整する工具を挿入し得る孔が設けられている、構成を採用することができる。
この構成によれば、羽根部材の開閉動作によりシャッタ機能又は絞り機能を得ることができると共に、組み付け後において、カバー部材の外側から孔に工具を挿入して、装置を分解することなく、調整ネジを調整することができる。
【0011】
また、本発明の光量制御装置は、光量を制御する光量制御羽根部材と、光量制御羽根部材を駆動する駆動機構とを備えた光量制御装置において、上記構成をなす像振れ補正装置のいずれか一つを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動機構により光量制御羽根部材(例えば、絞り開口をもつ絞り羽根、NDフィルタ羽根等)を駆動することで光量を適宜調整する絞り機能に加えて、可動保持部材に保持される補正用のレンズが適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができる。
すなわち、光量制御機能に加えて、上記の像振れ補正機能を追加した光量制御装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成をなす像振れ補正装置によれば、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成でき、部品の成形バラツキ、組み付けバラツキ等を許容しつつも、レンズの傾きを防止でき又は組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性を向上させることができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる像振れ補正装置及び光量制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図7は、本発明に係る像振れ補正装置の一実施形態を示すものであり、図1は像振れ補正装置の分解斜視図、図2は像振れ補正装置の平面図、図3は像振れ補正装置の側面図、図4及び図5は像振れ補正装置の部分断面図、図6及び図7は像振れ補正装置をカバー部材側から見た平面図である。
【0014】
この像振れ補正装置は、図1ないし図3に示すように、円形の開口部11を有するベース10、開口部11の中心を通る基準光軸L方向においてベース10に対向して配置されると共にレンズGを保持する可動保持部材20、可動保持部材20を支持する支持機構30(3つの球体31,2つの調整ネジ32,2つの座面部材33,3つの付勢バネ34)、駆動機構としての第1駆動機構40(第1磁石41及び第1コイル42)及び第2駆動機構50(第2磁石51及び第2コイル52)、可動保持部材20の位置を検出する検出手段としての第1検出ユニット60(第1磁気センサ61及び第1保持ブラケット62)及び第2検出ユニット70(第2磁気センサ71及び第2保持ブラケット72)、開口部11を開閉する羽根部材80、羽根部材80を開閉駆動する電磁アクチュエータ90(ロータ91、枠部材92、コイル93、円筒状のヨーク94等)、羽根部材80を覆うカバー部材100等を備えている。
【0015】
ベース10は、図1ないし図5に示すように、略円板状に形成されており、中央に円形の開口部11、可動保持部材20と対向する側の主面10a上において、開口部11の周りにおいて周方向に等間隔(120度間隔)で配置された3つの凹部12,13,13、2つの凹部13の底面13aに貫通して形成された2つの雌ネジ孔14、第1コイル42及び第2コイル52を嵌合して固定する2つの固定部15、付勢バネ34の一端部を掛止する3つの掛止片16、第1保持ブラケット62及び第2保持ブラケット72をそれぞれ固定するべくネジBを捩じ込む2つのネジ穴17、枠部材92を固定するべくネジBをネジ込むネジ穴18、ロータ91の駆動ピン91cを回動自在に通す貫通孔19等を備えている。
また、ベース10は、図1及び図3に示すように、可動保持部材20が対向する主面10aと反対側の主面10b上において、羽根部材80を回動自在に支持する支軸10c、カバー部材100を固定するべくネジBをネジ込む3つのネジ穴10d等を備えている。
【0016】
凹部12は、図1ないし図3に示すように、略矩形をなすように形成され、球体31が直接接触する平面状の底面12a(図3参照)を画定している。
2つの凹部13は、図1ないし図3に示すように、略矩形をなすように形成され、球体31と接触する座面部材33を嵌め込み得る平面状の底面13aを画定している。
2つの雌ネジ孔14は、図3に示すように、主面10b側から底面13aに貫通するように形成されており、調整ネジ32を捩じ込んでその先端が凹部13内に突出して座面部材33に当接するように形成されている。
また、凹部13の深さ寸法は、凹部12の深さ寸法に座面部材33の厚さ寸法を加えた寸法よりも深い寸法に形成されている。これにより、調整ネジ32による調整代が確保されている。
固定部15は、一方向に長尺で扁平な略矩形環状に形成された第1コイル42及び第2コイル52をそれぞれ嵌合して固定することができる幅寸法及び高さ寸法をなすように、主面10aから基準光軸L方向に突出した形状に形成されている。
【0017】
可動保持部材20は、図1ないし図4に示すように、光軸L´をもつレンズGを保持すると共にベース10よりも小さい面積で基準光軸L方向においてベース10に対向するように略平板状に形成されており、レンズGを嵌合する円形の嵌合孔21、第1磁石41及び第2磁石51を嵌合する略矩形の嵌合孔22、2つの嵌合孔22の間に形成された略矩形の貫通孔23、外縁領域及び貫通孔23の内縁領域に形成されて付勢バネ34の他端部を掛止する3つの掛止片24等を備えている。
また、可動保持部材20は、図3及び図4に示すように、ベース10と対向する側の主面20a上において、嵌合孔21(レンズG)の周りにおいて周方向に等間隔(120度間隔)で配置されて球体31と当接する平面状の当接面25aを画定する3つの当接部25を備えている。
3つの当接部25は、可動保持部材20の主面20aから基準光軸L方向に同一高さにて突出し、基準光軸Lに垂直な同一平面上において、それぞれ当接面25aを画定するように形成されている。
【0018】
支持機構30は、図1ないし図4に示すように、3つの球体31、2つの球体31を受ける2つの座面部材33、2つの座面部材33に当接する2つの調整ネジ32、3つの付勢バネ34等により構成されている。
球体31は、鋼球や高硬度の樹脂製ボール等により形成されている。
調整ネジ32は、雄ネジの外径よりも小さく工具T(図4参照)を係合させるすり割り溝が形成された頭部を有するものである。
調整ネジ32は、ベース10の雌ネジ孔14に螺合されると共にその先端が底面13aから凹部13内に突出して座面部材33に当接するようになっている。そして、調整ネジ32を適宜回転させることで、座面部材33を介して球体31の基準光軸L方向における位置が調整可能となっている。
ここで、調整ネジ32は、ベース10の主面10bから突出しないように雌ネジ孔14に螺合されるため、羽根部材80を主面10bに隣接して配置することが可能になる。
座面部材33は、凹部13に嵌め込み得る矩形の輪郭をなす平板として形成されており、一方の面で球体31を受けると共に他方の面で調整ネジ32の先端を受けるようになっている。このように、調整ネジ32と球体31の間に座面部材33を配置したことにより、調整ネジ32の先端は座面部材33を介して球体31に押圧力を及ぼすため、摩擦力を低減できると共に、球体31又は調整ネジ32の摩耗又は破損等を防止することができ、調整作業を円滑に行うことができる。
付勢バネ34は、その一端がベース10の掛止片16に掛止され、その他端が可動保持部材20の掛止片24に掛止されて、3つの球体31が転動自在に密着するように、基準光軸L方向において可動保持部材20をベース10に向けて付勢するようになっている。
【0019】
すなわち、上記支持機構30によれば、ベース10に対して可動保持部材20を3箇所において(3つの球体31によって)支持すると共にベース10に対する可動保持部材20の間隔を2箇所において(2つの調整ネジ32によって)調整自在となっているため、可動保持部材20を所定の方向に(レンズGの光軸L´をベース10の開口部11中心を通る基準光軸Lと一致するように又は平行になるように)調整することができる。
【0020】
第1駆動機構40は、図1ないし図3に示すように、第1磁石41及び第1コイル42を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第1磁石41は、図1ないし図3に示すように、基準光軸Lに垂直な直線S1の方向に長尺な略矩形の輪郭をなし、長手方向に沿って二分されてN極及びS極に着磁されて、可動保持部材20の嵌合孔22に嵌合されて固定されている。
第1コイル42は、図1ないし図3に示すように、直線S1の方向に長尺で扁平な略矩形環状をなすように形成されて、ベース10の固定部15に嵌合されて固定されている。
すなわち、第1駆動機構40は、第1コイル42に対する通電をオン/オフすることにより、基準光軸Lに垂直でかつ直線S1に垂直な方向F1に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0021】
第2駆動機構50は、図1ないし図3に示すように、第2磁石51及び第2コイル52を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第2磁石51は、図1ないし図3に示すように、基準光軸Lに垂直でかつ直線S1に垂直な直線S2の方向に長尺な略矩形の輪郭をなし、長手方向に沿って二分されてN極及びS極に着磁されて、可動保持部材20の嵌合孔22に嵌合されて固定されている。
第2コイル52は、図1ないし図3に示すように、直線S2の方向に長尺で扁平な略矩形環状をなすように形成されて、ベース10の固定部15に嵌合されて固定されている。
すなわち、第2駆動機構50は、第2コイル52に対する通電をオン/オフすることにより、基準光軸Lに垂直でかつ直線S2に垂直な方向F2に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0022】
第1検出ユニット60は、図1ないし図3に示すように、第1磁気センサ61、第1磁気センサ61を保持する第1保持ブラケット62により形成されている。
第1磁気センサ61は、例えば磁束密度の変化を検出して電気信号として出力するホール素子である。
第1保持ブラケット62は、図1ないし図3に示すように、略L字型に屈曲して形成され、第1磁気センサ61を嵌合させて保持する嵌合孔62a、ベース10に締結するネジBを通す円孔62b等を備えている。
そして、第1磁気センサ61を嵌合孔62aに嵌合して固定した状態で、第1保持ブラケット62をベース10に固定することにより、第1磁気センサ61は、可動保持部材20に固定された第1磁石41と、基準光軸L方向に所定隙間をおいて対向するように配置されている。
すなわち、第1磁気センサ61は、第1駆動機構40の領域において、可動保持部材20(第1磁石41)がベース10に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出することで、可動保持部材20の位置の変化を検出するようになっている。
【0023】
第2検出ユニット70は、図1ないし図3に示すように、第2磁気センサ71、第2磁気センサ71を保持する第2保持ブラケット72により形成されている。
第2磁気センサ71は、例えば磁束密度の変化を検出して電気信号として出力するホール素子である。
第2保持ブラケット72は、図1ないし図3に示すように、略L字型に屈曲して形成され、第2磁気センサ71を嵌合させて保持する嵌合孔72a、ベース10に締結するネジBを通す円孔72b等を備えている。
そして、第2磁気センサ71を嵌合孔72aに嵌合して固定した状態で、第2保持ブラケット72をベース10に固定することにより、第2磁気センサ71は、可動保持部材20に固定された第2磁石51と、基準光軸L方向に所定隙間をおいて対向するように配置されている。
すなわち、第2磁気センサ71は、第2駆動機構50の領域において、可動保持部材20(第2磁石51)がベース10に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出することで、可動保持部材20の位置の変化を検出するようになっている。
【0024】
羽根部材80は、図1ないし図3、図5に示すように、ベース10に対して可動保持部材20と反対側の主面10bに隣接するように配置され、支軸10cが通される円孔81、駆動ピン91cが通される長孔82を備えている。
そして、羽根部材80は、円孔81に支軸10cが通され、長孔82に駆動ピン91cが通されて回動自在に支持された後、カバー部材100により覆われて、ベース10とカバー部材100により画定される羽根室W内に収容されている。
【0025】
電磁アクチュエータ90は、図1、図2、図5に示すように、所定の角度範囲を回動するロータ91、下側枠部材92a及び上側枠部材92bからなる枠部材92、枠部材92に巻回される励磁用のコイル93、枠部材92の周りに嵌合される円筒状のヨーク94等を備えている。
ロータ91は、回転軸91a、円柱状の着磁部91b、着磁部91bから径方向に突出しかつ回転軸91aの方向に伸長する駆動ピン91cを一体的に備えている。
そして、ロータ91は、回転軸91aが枠部材92により回動自在に支持され、駆動ピン91cがベース10の貫通孔19に通されて羽根部材80の長孔82に挿入されるように組み込まれている。
枠部材92は、ベース10に対してネジBを用いて固定される下側枠部材92a、ロータ91を回動自在に挟み込むように、下側枠部材92aに組み込まれる上側枠部材92bにより形成されている。
コイル93は、ロータ91が枠部材92に組み付けられた後に、図5に示すように、回転軸91aの両端を囲むように枠部材92の周りに上下方向に巻回されている。
ヨーク94は、コイル93が巻回された後に、枠部材92の外周面に嵌合されて固定されている。
【0026】
そして、電磁アクチュエータ90は、コイル93に対して一方向に通電することによりロータ91を一方向に回転させて、図6に示すように、羽根部材80が開口部11を全開する開放位置に位置付け、又、コイル93に対して他方向に通電することによりロータ91を他方向に回転させて、図7に示すように、羽根部材80が開口部11を全閉する閉鎖位置に位置付けるようになっている。尚、羽根部材80は、図6に示す開放位置及び図7に示す閉鎖位置において、それぞれベース10の主面10b上に設けられたストッパ(不図示)に当接して位置決めされるようになっている。
すなわち、電磁アクチュエータ90により、羽根部材80に開閉動作を行わせることで、シャッタ機能を得ることができるようになっている。
【0027】
カバー部材100は、図1、図3、図6、図7に示すように、ベース10と略同一の外輪郭をなす円板状に形成されており、ベース10の開口部11に対応する位置に設けられた円形の開口部101、カバー部材100をベース10に締結するためのネジBを通す円孔102、駆動ピン91cを通す貫通孔103、調整ネジ32を調整する工具Tを挿入し得る円形の2つの孔104、支軸10cを通す円孔102等を備えている。
そして、カバー部材100は、ベース10の主面10bに隣接するように羽根部材80が配置された状態で、その外側から羽根部材80を覆うようにベース10に対向して配置されネジBにより固定されている。
ここでは、カバー部材100に、調整ネジ32を調整するための工具Tを挿入し得る孔104を設けたことにより、装置の組み付け後において、カバー部材100の外側から孔104に工具Tを挿入して、装置を分解することなく、調整ネジ32を調整することができるようになっている。
【0028】
次に、上記構成をなす装置において、組み付けが終了した後に調整作業を行う場合について説明する。
先ず、可動保持部材20(レンズG)の平面度すなわちレンズGの光軸L´をベース10の開口部11中心を通る基準光軸Lに平行に又は一致させるには、傾き又は軸ずれを検出し得る所定の測定器を確認しながら、カバー部材100の外側から工具Tを近づけて、孔104から挿入して各々の調整ネジ32を適宜回転させ、基準光軸L方向における球体31の位置を調整し、可動保持部材20(レンズG)の傾きが完全に解消されるべく調整する。
このように、ベース10に対して可動保持部材20を少なくとも3箇所にて支持した状態で、ベース10に対する可動保持部材20の間隔を少なくとも2箇所において調整するという簡単な調整作業により、組み付け後においても、可動保持部材20を所定の方向に(レンズGの光軸L´をベース10の開口部11中心を通る基準光軸Lと平行に又は一致させることができ、解像度の高い像振れ補正装置を得ることができる。
【0029】
次に、上記像振れ補正装置の補正動作について簡単に説明すると、先ず、図2に示すように、ベース10の開口部11の中心を通る基準光軸Lと可動保持部材20のレンズGの光軸L´とが一致している状態から、一例として可動保持部材20(レンズG)を左斜め下方にシフトさせる場合は、第1駆動機構40に第1方向(方向F1)の左向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構50に第2方向(方向F2)の下向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材20は、図2において、左斜め下方に移動させられる。
また、図2に示す状態から、一例として可動保持部材20(レンズG)を右斜め上方にシフトさせる場合は、第1駆動機構40に第1方向(方向F1)の右向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構50に第2方向(方向F2)の上向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材20は、図2において、右斜め上方に移動させられる。
上記構成をなす像振れ補正装置によれば、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成しつつ、ベース10及び可動保持部材20の成形バラツキ、組み付けバラツキ等を許容しつつも、レンズGの傾きを防止でき又は組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0030】
図8ないし図11は、本発明に係る像振れ補正装置の他の実施形態を示すものであり、前述の実施形態に対して支持機構30の一部を変更したものであり、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、この実施形態においては、ベース10´には、図8及び図9に示すように、3つの凹部13、3つの雌ネジ孔14が設けられ、カバー部材100´には、図10及び図11に示すように、工具Tを挿入し得る3つの孔104が設けられている。
そして、支持機構30´としては、図8及び図9に示すように、3つの球体31、3つの調整ネジ32、3つの座面部材33、3つの付勢バネ34が採用されている。
【0031】
この装置において、組み付けが終了した後に調整作業を行う場合について説明すると、先ず、可動保持部材20(レンズG)の平面度すなわちレンズGの光軸L´をベース10´の開口部11中心を通る基準光軸Lに平行に又は一致させるには、傾き又は軸ずれを検出し得る所定の測定器を確認しながら、カバー部材100´の外側から工具Tを近づけて、孔104から挿入して3つの調整ネジ32を適宜回転させ、基準光軸L方向における3つの球体31の位置を調整し、可動保持部材20(レンズG)の傾きが完全に解消されるべく調整する。
また、レンズGの光軸L´を方向付けしつつ、可動保持部材20とベース10´との間隔を調整して、レンズGの基準光軸L方向の位置を調整することもできる。また、ベース10´に固定された第1コイル42及び第2コイル52と可動保持部材20に固定された第1磁石41及び第2磁石51との離隔距離を調整する。これにより、第1駆動機構40及び第2駆動機構50が及ぼす電磁駆動力の大きさを適宜調整することができる。
【0032】
この像振れ補正装置によれば、前述同様に、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成でき、ベース10´及び可動保持部材20の成形バラツキ、組み付けバラツキ等を許容しつつも、レンズGの傾きを防止でき又は組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0033】
図12は、本発明に係る像振れ補正装置における支持機構のさらに他の実施形態を示すものである。
すなわち、支持機構として、前述の2つの球体31,2つの調整ネジ32,及び2つの座面部材33に替えて、2つの調整ネジ32´を採用し、又は、前述の3つの球体31,3つの調整ネジ32,及び3つの座面部材33に替えて、3つの調整ネジ32´を採用するものである。
調整ネジ32´は、ベース10,10´の雌ネジ孔14に螺合されると共に、その先端が可動保持部材20の当接部25(当接面25a)に直接当接するものである。
【0034】
これによれば、1つの球体31と2つの調整ネジ32´を含む構成の場合、組み付け後において、2つの調整ネジ32´を調整することで、可動保持部材20を所定の方向に(レンズGの光軸L´がベース10の開口部11中心を通る基準光軸Lと一致する又は平行になるように)方向付けることができる。
また、球体31を廃止して3つの調整ネジ32´を含む構成の場合は、組み付け後において、3つの調整ネジ32´を調整することで、可動保持部材20を所定の方向に(レンズGの光軸L´がベース10´の開口部11中心を通る基準光軸Lと一致する又は平行になるように)方向付けし、かつ、方向付けをした状態において可動保持部材20とベース10´との間隔を調整することができ、これによって、レンズGの基準光軸L方向の位置や第1駆動機構40及び第2駆動機構50が及ぼす電磁駆動力の大きさを適宜調整することができる。
この装置によれば、部品点数がさらに削減されて、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成でき、前述同様に、組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0035】
上記実施形態においては、支持機構30´として、3個所にて支持する3つの球体31、及び2つの調整ネジ32を含む構成、又は、3箇所にて支持する3つの球体31及び3つの調整ネジ32、さらには、3箇所にて支持する1つの球体31及び2つの調整ネジ32´又は3つの調整ネジ32´を示したが、これに限定されるものではなく、4箇所、又は5箇所において支持すると共に、4箇所又は5箇所において可動保持部材20とベース10´の間隔を調整する構成を採用してもよい。
【0036】
上記実施形態においては、像振れ補正装置について示したが、光量を制御する光量制御羽根部材と、光量制御羽根部材を駆動する駆動機構とを備えた光量制御装置において、上記構成をなす像振れ補正装置含む構成を採用してもよい。
これによれば、駆動機構により光量制御羽根部材(例えば、絞り開口をもつ絞り羽根、NDフィルタ羽根等)を駆動して光量を適宜調整する絞り機能に加えて、可動保持部材20に保持される補正用のレンズGが適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができる。すなわち、光量制御機能に加えて、上記の像振れ補正機能を追加した光量制御装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上述べたように、本発明の像振れ補正装置は、構造の簡素化、装置の小型化及び薄型化等を達成でき、部品の成形バラツキ、組み付けバラツキ等を許容しつつも、レンズの傾きを防止でき又は組み付け後の調整作業を容易に行うことができ、生産性を向上させることができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができるため、デジタルカメラ、銀塩フィルム式カメラ等に適用することができるのは勿論のこと、その他の携帯型の光学機器等においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の像振れ補正装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す像振れ補正装置の平面図である。
【図3】図1に示す像振れ補正装置の側面図である。
【図4】図1に示す像振れ補正装置の部分断面図である。
【図5】図1に示す像振れ補正装置の部分断面図である。
【図6】図1に示す像振れ補正装置をカバー部材側から見た平面図である。
【図7】図1に示す像振れ補正装置をカバー部材側から見た平面図である。
【図8】本発明の像振れ補正装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図9】図8に示す像振れ補正装置の側面図である。
【図10】図8に示す像振れ補正装置をカバー部材側から見た平面図である。
【図11】図8に示す像振れ補正装置をカバー部材側から見た平面図である。
【図12】本発明の像振れ補正装置のさらに他の実施形態を示す部分断面図である。
【図13】従来の像振れ補正装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
L 基準光軸
L´ レンズの光軸
1,10,10´ ベース
10a,10b 主面
10c 支軸
10d ネジ穴
11 開口部
12,13 凹部
1a,12a,13a 底面
14 雌ネジ孔
15 固定部
16 掛止片
17,18 ネジ穴
B ネジ
19 貫通孔
2,20 可動保持部材
G レンズ
2a,20a 主面
21 嵌合孔
22 嵌合孔
23 貫通孔
24 掛止片
25 当接部
25a 当接面
30,30´ 支持機構
3,31 球体
32,32´ 調整ネジ
33 座面部材
34 付勢バネ
40 第1駆動機構
41 第1磁石
S1 直線
F1 方向
42 第1コイル
50 第2駆動機構
51 第2磁石
52 第2コイル
S2 直線
F2 方向
60 第1検出ユニット(検出手段)
61 第1磁気センサ
62 第1保持ブラケット
62a 嵌合孔
62b 円孔
70 第2検出ユニット(検出手段)
71 第2磁気センサ
72 第2保持ブラケット
72a 嵌合孔
72b 円孔
80 羽根部材
81 円孔
82 長孔
90 電磁アクチュエータ
91 ロータ
91a 回転軸
91b 着磁部
91c 駆動ピン
92 枠部材
92a 下側枠部材
92b 上側枠部材
93 コイル
94 ヨーク
100,100´ カバー部材
W 羽根室
101 開口部
102 円孔
103 貫通孔
104 孔
T 工具



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するベースと、レンズを保持すると共に前記開口部の中心を通る基準光軸の方向において前記ベースに対向して配置される可動保持部材と、前記可動保持部材を前記ベースに対して基準光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、前記可動保持部材を基準光軸に垂直な平面内で駆動する駆動機構と、前記可動保持部材の位置を検出する検出手段とを備えた像振れ補正装置であって、
前記支持機構は、前記ベースに対して前記可動保持部材を少なくとも3箇所にて支持すると共に、前記ベースに対する前記可動保持部材の間隔を少なくとも2箇所において調整自在となっている、
ことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
前記支持機構は、少なくとも3つの球体と、前記少なくとも3つの球体のうち少なくとも2つの球体の基準光軸方向における位置を調整するべく前記ベースに螺合された調整ネジを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項3】
前記調整ネジと前記球体の間には、座面部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記支持機構は、前記ベースに螺合されると共に先端が前記可動保持部材に直接当接する少なくとも2つの調整ネジを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
前記ベースには、前記可動保持部材と反対側において、前記開口部を開閉自在に駆動される羽根部材と、前記羽根部材を覆うカバー部材が配置され、
前記カバー部材には、前記調整ネジを調整する工具を挿入し得る孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の像振れ補正装置。
【請求項6】
光量を制御する光量制御羽根部材と、前記光量制御羽根部材を駆動する駆動機構と、を備えた光量制御装置において、
請求項1ないし5いずれか一つに記載の像振れ補正装置を含む、
ことを特徴とする光量制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−85771(P2010−85771A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255589(P2008−255589)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)