説明

像振れ補正装置及び撮像ユニット

【課題】像振れ補正装置において、構造の簡素化、小型化、組付けの容易化を図る。
【解決手段】ベース100、可動保持部材110、可動保持部材をレンズの光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構150、可動保持部材がベースから光軸方向に離れるのを規制する規制機構、可動保持部材を駆動する駆動手段120,130、位置検出手段171,172、可動保持部材を休止位置に復帰させる復帰手段161,162を備え、規制機構として、ベース及び可動保持部材の一方に設けられた雄型係合部105,106、ベース及び可動保持部材の他方に設けられて平面内における可動保持部材の移動を許容するようにスナップフィットにより雄型係合部に係合する雌型係合部115,116を採用する。これによれば、構造の簡素化、小型化、組付けの容易化を達成しつつ、可動保持部材をベースから離れないように規制しつつ移動自在に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラのレンズ鏡筒やシャッタユニット等に搭載される像振れ補正装置、この像振れ補正装置を備えた撮像ユニットに関し、特に、携帯電話機等の携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットに適用される小型で薄型の像振れ補正装置及び撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の像振れ補正装置としては、中央に開口部を有する略矩形状のベースと、ベースの前面に設けられた第1案内軸と、第1案内軸に沿って往復動自在に支持された第1可動部材と、第1案内軸と90度の方向に方向付けられて第1可動部材の前面に設けられた第2案内軸と、第2案内軸に沿って往復動自在に支持されかつレンズを保持する第2可動部材と、第1可動部材及び第2可動部材を一緒に第1案内軸の方向に往復動させる第1駆動装置と、第2可動部材を第2案内軸の方向に往復動させる第2駆動装置を備え、第1駆動装置及び第2駆動装置として、コイル及び磁石を含むボイスコイルモータを採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この装置においては、第1可動部材と第2可動部材が光軸方向に配列された二段構成となっているため光軸方向において装置の大型化を招くと共に、第2駆動装置は第2可動部材だけを駆動するものの、第1駆動装置は第1可動部材だけでなく第2可動部材及び第2案内軸も一緒に駆動する必要があるため、第1可動部材だけを駆動する場合に比べてより大きな駆動力を発生しなければならず、第1駆動装置の大型化を招く。また、第1駆動装置の駆動負荷と第2駆動装置の駆動負荷が異なるため、レンズを光軸に垂直な平面内で位置決めするための駆動制御が容易ではなく、全体としても構造が複雑であり組付け作業も容易ではない。
【0003】
また、他の像振れ補正装置としては、開口部を有する略矩形状のベースと、ベースの前面四隅に植設されて光軸方向に伸長する4本の弾性支持部材(ワイヤ)と、4本の弾性支持部材の先端が連結されてレンズを保持する可動部材と、可動部材に設けられた第1磁石及び第1ヨークと、可動部材に設けられた第2磁石及び第2ヨークと、ベースとは異なる他の部材に固定されて可動部材の前方に配置され第1コイル及び第2コイルを保持する略矩形状の固定枠とを備え、第1磁石及び第1ヨーク並びに第1コイルにより第1駆動手段を構成し、第2磁石及び第2ヨーク並びに第2コイルにより第2駆動手段を構成し、第1駆動手段により可動部材を光軸に垂直な第1方向に駆動し、第2駆動手段により可動部材を光軸及び第1方向に垂直な第2方向に駆動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この装置においては、可動部材が、光軸方向に伸長する4本の弾性支持部材(ワイヤ)を用いてベースに支持され、さらに可動部材の前方において他の部材によりコイルを保持する固定枠が支持されているため、光軸方向において装置の大型化を招くと共に、4本の弾性支持部材の連結部がリンク状ではなくリジッドに連結されているため、可動部材(レンズ)が光軸に垂直な平面方向に移動させられるだけでなく光軸に対して傾斜する虞がある。
また、ベースと可動部材は連結されていても、コイルを保持する固定枠は一体的に連結されていないため、像振れ補正装置としてモジュール化することができず、取り扱いが不便であると共に、一つの部材(例えばベース)を基準として、可動部材の第1磁石及び第2磁石と固定枠の第1コイル及び第2コイルをそれぞれ位置合わせすることができず、装置の組付け作業が面倒である。さらに、第1駆動手段(の第1磁石及び第1ヨーク)と第2駆動手段(の第2磁石及び第2ヨーク)が、レンズに対して可動部材の片側にのみ配置されているため、第1駆動手段及び第2駆動手段は、レンズに対して対称的にではなく可動部材の一方側にのみ駆動力を及ぼすことになり、可動部材の傾斜すなわちレンズの傾斜を助長する傾向にあり、全体として構造が複雑であり組付け作業も容易ではない。
【0004】
また、他の像振れ補正装置としては、ベースと、レンズを保持した可動部材と、可動部材をベースに対して移動自在に支持する支持機構として3つのボールと、可動部材がベースから光軸方向に離脱する(浮き上がる)のを規制する規制手段として付勢力を及ぼすコイルスプリングと、可動部材を光軸に垂直な方向に駆動する駆動手段(駆動用磁石、コイル、ヨーク)と、可動部材の位置を検出するための位置検出手段(磁石、ホール素子)を備えたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
この装置においては、可動部材とベースの間に3つの転動するボールを介在させているため、光軸方向において装置を薄型化することはできるものの、可動部材が3つのボールに接触して常時支持されるように規制するべくコイルスプリングにより付勢力を及ぼしており、コイルスプリングの付勢力は可動部材を駆動する際に抵抗力すなわち駆動負荷として作用するため、駆動手段としては、コイルスプリングの付勢力に対抗し得るだけの駆動力を発生させる必要があり、又、組付け作業も容易ではない。
【0005】
さらに、他の像振れ補正装置としては、ベースと、レンズを保持する可動部材と、可動部材を光軸に垂直な二方向に駆動する第1駆動手段(磁石、コイル、ヨーク)及び第2駆動手段(磁石、コイル、ヨーク)と、コイルに通電しない非通電状態(休止状態)において、可動部材を中心位置に復帰させる(センタリングする)ための2つのアシストバネ等を備えたものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
この装置においては、可動部材を中心位置に復帰させる復帰手段として、アシストバネを採用しているため、アシストバネの配設スペースが必要になり、装置の大径化、大型化等を招くと共に、アシストバネを引張りつつ組み付けるため組付け作業も容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−286318号公報
【特許文献2】特開2008−64846号公報
【特許文献3】特許第3969927号公報
【特許文献4】特許第3869926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の薄型化及び小型化、機能上の信頼性向上等を図りつつ、部品点数が少なくて組付けを容易にかつ高精度に行うことができ、携帯電話機等のカメラユニットに搭載することができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができ、又、休止状態において補正用のレンズを所定の休止位置に自動的に復帰させる(センタリングする)ことが可能な像振れ補正装置、この像振れ補正装置を備えた撮像ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の像振れ補正装置は、開口部を有するベースと、レンズを保持する可動保持部材と、可動保持部材をレンズの光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、可動保持部材がベースから光軸方向に離れるのを規制する規制機構と、可動保持部材を平面内で駆動する駆動手段と、可動保持部材の位置を検出する位置検出手段と、休止状態において可動保持部材を所定の休止位置に復帰させる復帰手段とを備え、上記規制機構は、ベース及び可動保持部材の一方に設けられた雄型係合部と、ベース及び可動保持部材の他方に設けられて上記平面内における可動保持部材の移動を許容するようにスナップフィットにより雄型係合部に係合する雌型係合部を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、可動保持部材は、規制機構によりベースに対して光軸方向に離れる(浮き上がる)のを規制されつつ、支持機構より光軸に垂直な平面内で移動自在に支持されており、駆動手段によりベースに対して上記平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。また、復帰手段により、休止状態においては所定の休止位置に復帰させられるようになっている。
ここで、規制機構が、ベース及び可動保持部材の一方に設けられた雄型係合部と、ベース及び可動保持部材の他方に設けられて上記平面内における可動保持部材の移動を許容するようにスナップフィットにより雄型係合部に係合する雌型係合部とにより構成されている、すなわち、付勢バネ等によるのではなくスナップフィットによる係合関係により可動保持部材がベースから離れるのを規制されている。
したがって、従来のようにバネの付勢力等が駆動負荷(抵抗力)として作用しないため、部品点数を削減しつつ、構造の簡素化、組立の容易化等を達成できる。すなわち、掛止片の弾性変形(スナップフィット)を利用して可動保持部材をベースに容易に組み付けて、ベースに対して可動保持部材を上記平面内で移動自在に支持しつつベースから光軸方向に離脱するのを規制することができる。
【0009】
上記構成において、雄型係合部は、光軸に垂直な方向に突出する少なくとも3つの突起であり、雌型係合部は、突起の突出方向に弾性変形可能に形成されてスナップフィトにより突起を受け入れると共に平面内での相対的な移動を許容し得る開口を画定するフック状の少なくとも3つの掛止片であり、突起は、掛止片をスナップフィットにより係合させる際に、掛止片の弾性変形をガイドする傾斜面を有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、掛止片を弾性変形させつつその開口に突起を嵌め込むことで、可動保持部材をベースに外れないようにかつ可動保持部材がベースに対して平面内で移動可能に組み付けることができる。ここで、少なくとも3つの突起と各々の突起に対応する少なくとも3つの掛止片を含むため、構造の簡素化を図りつつ、可動保持部材がベースに対して安定して移動できるように組み付けることができる。また、掛止片をスナップフィットにより突起に係合させる際に、突起の傾斜面が掛止片を弾性変形するようにガイドするため、スナップフィットを円滑に行うことができる。
【0010】
上記構成において、支持機構は、ベース及び可動保持部材の一方に設けられた少なくとも3つの凹部と、少なくとも3つの凹部に転動自在に配置され光軸方向に突出する少なくとも3つの球体と、ベース及び可動保持部材の他方に設けられて球体に当接する少なくとも3つの当接面を含み、駆動手段は、上記平面内の第1方向に駆動する第1駆動機構と、上記平面内の第2方向に駆動する第2駆動機構を含み、第1駆動機構は、ベース及び可動保持部材の一方に固定された第1コイルと、第1コイルに対向する位置においてベース及び可動保持部材の他方に固定された第1駆動磁石を含み、第2駆動機構は、ベース及び可動保持部材の一方に固定された第2コイルと、第2コイルに対向する位置においてベース及び可動保持部材の他方に固定された第2駆動磁石を含み、復帰手段は、第1駆動磁石と対向して休止位置に復帰させる磁力を発生するべくベース及び可動保持部材の一方に固定された第1復帰磁石と、第2駆動磁石と対向して休止位置に復帰させる磁力を発生するべくベース及び可動保持部材の一方に固定された第2復帰磁石を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、可動保持部材は、凹部に配置された球体と当接面との関係により移動自在に支持された状態で、ベースに対して光軸に垂直な平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。
ここで、球体が凹部に配置され当接面が当接するように、可動保持部材がベースに対向して配置されつつ、掛止片が突起にスナップフィットにより係合されて組み付けられることで、可動保持部材をベースに対して移動自在に組み込むことができる。
また、第1駆動機構(第1駆動磁石、第1コイル)と第2駆動機構(第2駆動磁石、第2コイル)により可動保持部材を光軸に垂直な平面内で移動させることができ、又、第1復帰磁石と第1駆動磁石との磁気的吸引作用及び第2復帰磁石と第2駆動磁石との磁気的吸引作用により、可動保持部材(レンズ)は所定の休止位置(例えば、ベースの開口部の中心にレンズの光軸が一致する位置)に自動的に復帰(例えば、センタリング)させられて安定して保持される。したがって、駆動時にイニシャライズ等の駆動制御が不要であり、又、休止状態において可動保持部材のガタツキ等を防止することができる。このように、駆動手段の駆動磁石を、復帰磁石と磁気的に相互作用させる磁石として兼用するため、構造の簡素化、装置の小型化等を達成することができる。
【0011】
また、本発明の撮像ユニットは、上記構成をなす像振れ補正装置と、撮像用の複数のレンズと、撮像素子と、筐体とを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、撮像用の複数のレンズが光軸方向に配置された構成において、上記の像振れ補正装置を含むことで、可動保持部材に保持される補正用のレンズが適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができ、撮像素子により良好な撮影画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成をなす像振れ補正装置によれば、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の薄型化及び小型化、機能上の信頼性向上等を達成しつつ、部品点数が少なくて組付けを容易にかつ高精度に行うことができ、携帯電話機等のカメラユニットに搭載することができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができ、又、休止状態において補正用のレンズを所定の休止位置に自動的に復帰させる(センタリングする)ことが可能な像振れ補正装置を得ることができ、又、この像振れ補正装置を備えた撮像ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の像振れ補正装置が組み込まれたカメラユニットを搭載した携帯情報端末機を示す斜視図である。
【図2】カメラユニットの内部を示す断面図である。
【図3】カメラユニットの内部を示す断面図である。
【図4】像振れ補正装置の斜視図である。
【図5】像振れ補正装置の分解斜視図である。
【図6】像振れ補正装置の正面図である。
【図7】像振れ補正装置の背面図である。
【図8】像振れ補正装置の断面図である。
【図9】像振れ補正装置の断面図である。
【図10】像振れ補正装置の一部(ベース等)を示す正面図である。
【図11】像振れ補正装置の一部(ベース等)を示す背面図である。
【図12】像振れ補正装置の一部(可動保持部材等)を示す正面図である。
【図13】像振れ補正装置の一部(可動保持部材等)を示す背面図である。
【図14】像振れ補正装置における雄型係合部(突起)と雌型係合部(掛止片)の係合関係を示すものであり、(a)はその部分上面図、(b)はその部分断面図である。
【図15】像振れ補正装置における雄型係合部(突起)と雌型係合部(掛止片)のスナップフィットによる組付けを示す斜視図である。
【図16】像振れ補正装置における雄型係合部(突起)と雌型係合部(掛止片)のスナップフィットにより組付けを示す斜視図である。
【図17】(a),(b),(c)は、像振れ補正装置の動作を説明する平面図である。
【図18】(a),(b),(c)は、像振れ補正装置の動作を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この像振れ補正装置を組み込んだカメラユニットUは、図1に示すように、扁平で小型の携帯情報端末機PHに搭載されている。携帯情報端末機PHは、略矩形で扁平な輪郭をなす筐体PH1、筐体PH1の表面に配置された種々の情報を表示する液晶パネル等の表示部PH2及び操作ボタンPH3、表示部PH2の反対側の表面に形成された撮影窓PH4等を備えている。そして、カメラユニットUは、図1に示すように、撮影窓PH4から進入する被写体光の光軸L1に対して垂直な方向に延在するように筐体PH1の内部に収容されている。
【0015】
カメラユニットUは、図2及び図3に示すように、筐体としてのユニットケース10、プリズム20、レンズG1、レンズG2,G3,G4を保持する可動レンズ群としての像振れ補正装置M、レンズG5、フィルタ30、撮像素子としてのCCD40、可動レンズ群(像振れ補正装置M)を光軸L2方向に駆動する駆動ユニット50、角速度センサ(不図示)、制御ユニット(不図示)等を備えている。
【0016】
ユニットケース10は、図2及び図3に示すように、光軸L1方向の厚さ寸法が薄く、又、光軸L2方向の長さ寸法が短くなるように、扁平で略矩形をなす形状に形成されており、プリズム20を固定する突出部11、レンズG1を保持する保持部12、レンズG5を保持する保持部13、フィルタ30を保持する保持部14、CCD40を保持する保持部15等を備えている。
【0017】
プリズム20は、図2及び図3に示すように、ユニットケース10の突出部11に収容されて、撮影窓PH4から進入する被写体光の光軸L1を直角に屈曲させて光軸L2方向に導くようになっている。
レンズG1は、図2及び図3に示すように、光軸L1,L2方向においてプリズム20の後方に配置され、ユニットケース10の保持部12に固定されている。
レンズG5は、図2及び図3に示すように、光軸L2方向において可動レンズ群(像振れ補正装置M)の後方に配置され、ユニットケース10の保持部13に固定されている。
フィルタ30は、赤外線カットフィルタあるいはローパスフィルタ等であり、図2及び図3に示すように、光軸L2方向においてレンズG5の後方に配置され、ユニットケース10の保持部14に固定されている。
CCD40は、図2及び図3に示すように、光軸L2方向においてフィルタ30の後方に配置されて、ユニットケース10の保持部15に固定されている。
【0018】
駆動ユニット50は、図2に示すように、光軸L2方向に伸長してユニットケース10に固定されたガイドシャフト51及び回り止めシャフト52、光軸L2方向に伸長するリードスクリュー53、リードスクリュー53を回転駆動するモータ54、リードスクリュー53に螺合すると共に像振れ補正装置Mに含まれるベース100のU字状係合部103に当接するナット55、U字状係合部103をナット55に向けて常時付勢する付勢力を及ぼすコイルスプリング56等を備えている。
【0019】
角速度センサは、ユニットケース10に固定されており、カメラユニットUが受ける振動や振れを検出するようになっている。
制御ユニットは、ユニットケース10に固定されたマイクロコンピュータであり、演算処理を行うと共に種々の信号を処理して指令信号を発する制御部、駆動ユニット50のモータ54を駆動するモータ駆動回路、CCD40を駆動するCCD駆動回路、像振れ補正装置Mに含まれる第1コイル121及び第2コイル131を駆動する駆動回路、像振れ補正装置Mに含まれる可動保持部材110の位置を検出する第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172に接続される位置検出回路、角速度センサに接続される角速度検出回路等を備えている。
【0020】
像振れ補正装置Mは、図2及び図3に示すように、光軸L2方向においてレンズG1とレンズG5の間に配置され、光軸L2方向に移動自在に支持されている。
そして、像振れ補正装置Mは、図4ないし図8に示すように、ベース100、可動保持部材110、駆動手段としての(第1コイル121,第1駆動磁石122を含む)第1駆動機構120、駆動手段としての(第2コイル131,第2駆動磁石132を含む)第2駆動機構130、駆動手段に含まれるヨーク141,142、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構としての3つの球体150、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制する規制機構(ベース100に設けられた雄型係合部としての1つの幅広い突起105及び2つの幅狭い突起106、可動保持部材110に設けられた雌型係合部としての1つの幅広い掛止片115及び2つの幅狭い掛止片116)、復帰手段としての第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162、位置検出手段としての第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172、電気的な接続を行うフレキシブル配線板180等を備えている。
【0021】
ベース100は、図6ないし図11に示すように、光軸L2方向に略扁平で、光軸L2に直交し光軸L1に平行な直線S1の方向に幅狭で、光軸L2及び直線S1に直交する直線S2の方向に長尺な略矩形の平板状に形成されており、光軸L2を中心とする開口部100a、第1コイル121を嵌合して固定する嵌合凹部100b、第1磁気センサ171を嵌合して固定する嵌合凹部100c、第1復帰磁石161を嵌合して固定する嵌合凹部100d、第2コイル131を嵌合して固定する嵌合凹部100e、第2磁気センサ172を嵌合して固定する嵌合凹部100f、第2復帰磁石162を嵌合して固定する嵌合凹部100g、ガイドシャフト51に摺動自在に係合されてガイドされる被ガイド部101、回り止めシャフト52に摺動自在に係合されて光軸L2回りの回転が規制される被規制部102、リードスクリュー53に螺合されたナット55が当接するU字状係合部103、支持機構としての球体150を受け入れる3つの凹部104、雄型係合部(規制機構)としての1つの幅の広い突起105及び2つの幅の狭い突起106、コイルスプリング56の一端を掛止する掛止部107、ヨーク141を固定するためのネジ穴108及び2つの位置決めピン109等を備えている。
【0022】
開口部100aは、図10及び図11に示すように、直線S1と直線S2との交点において中心C1を画定すると共に直線S1の方向において平行な内壁面を画定するように直線S1方向において幅狭に形成され、又、可動保持部材110が駆動される範囲内において、可動保持部材110の保持部110aが非接触にて通過し得る内径寸法に形成されている。
嵌合凹部100b,100c,100dと嵌合凹部100e,100f,100gとは、図10及び図11に示すように、直線S1に対して線対称となるように形成されている。すなわち、第1コイル121,第1復帰磁石161,及び第1磁気センサ171と第2コイル131,第2復帰磁石162,及び第2磁気センサ172は、ベース100上において、直線S1に対して線対称に配置される。
【0023】
3つの凹部104は、球体150を光軸L2方向に部分的に突出させた状態で転動自在に受け入れるように形成されている。そして、3つの凹部104の配置構成は、図10に示すように、1つの凹部104が直線S1上でかつ開口部100aの近傍に配置され、他の2つの凹部104が直線S1に対して線対称の位置に配置されている。すなわち、3つの凹部104は、二等辺三角形の3つの頂点に位置するように配置されている。
【0024】
1つの突起105は、図10及び図11に示すように、可動保持部材110の掛止片115を係合させるように、直線S1方向の一方側の縁部領域から直線S1方向(光軸L2に垂直な方向)に突出するようにかつ直線S2方向に幅広く形成されている。そして、突起105は、光軸L2方向の前方側に傾斜面105a及び背面側に直立面105bを画定している。
傾斜面105aは、光軸L2方向の前方側から可動保持部材110の掛止片115をスナップフィットにより組み付ける際に、掛止片115の先端(傾斜面115b)を当接させつつ直線S1方向外向きに容易に弾性変形させるようにガイドするものである。
直立面105bは、掛止片115が突起105に係合させられた後、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制しつつ、掛止片115の開口115aの内縁部に接触し又は微小隙間をおいて非接触の状態で、可動保持部材110がベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で移動するのを許容するように形成されている。
2つの突起106は、図10及び図11に示すように、それぞれ、可動保持部材110の掛止片116を係合させるように、直線S1方向の他方側の縁部領域から直線S1方向(光軸L2に垂直な方向)に突出するようにかつ直線S2方向に幅狭く形成されている。そして、突起106は、光軸L2方向の前方側に傾斜面106a及び背面側に直立面106bを画定している。
傾斜面106aは、光軸L2方向の前方側から可動保持部材110の掛止片116をスナップフィットにより組み付ける際に、掛止片116の先端(傾斜面116b)を当接させつつ直線S1方向外向きに容易に弾性変形させるようにガイドするものである。
直立面106bは、掛止片116が突起106に係合させられた後、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制しつつ、掛止片116の開口116aの内縁部に接触し又は微小隙間をおいて非接触の状態で、可動保持部材110がベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で移動するのを許容するように形成されている。
【0025】
ネジ穴108は、ヨーク141をベース100に固定する際のネジBを捩じ込むものであり、位置決めピン109は、ヨーク141をベース100に固定する際に、ヨーク141の位置決めを行うものである。
【0026】
可動保持部材110は、図8、図9、図12ないし図16に示すように、光軸L2方向に一部を除いて略扁平で、直線S1の方向に幅狭でかつ直線S2の方向に長尺な略矩形の平板状に形成されており、光軸L2を中心としレンズG2,G3,G4を保持する筒状の保持部110a、保持部110aを挟んで直線S2方向の両側に延出する2つの延出部111、第1駆動磁石122及びヨーク142を嵌合して固定する嵌合孔112、第2駆動磁石132及びヨーク142を嵌合して固定する嵌合孔113、支持機構としての3つの球体150に当接する3つの当接面114、突起105に係合される雌型係合部(規制機構)としての1つの掛止片115、2つの突起106にそれぞれ係合される雌型係合部(規制機構)としての2つの掛止片116等を備えている。
【0027】
保持部110aは、その内部において、直線S1の方向において平行なカット面をもつレンズG2,G3,G4を保持するように、直線S1の方向において扁平な筒状に形成されている。
3つの当接面114は、レンズG2,G3,G4の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する状態で、図13に示すように、光軸L2方向において3つの(凹部104に配置された)球体150と対向するように配置され、可動保持部材110が光軸L2に垂直な平面(直線S1,S2を含む平面)内において二次元的に移動する範囲において、ベース100の対応する凹部104に挿入された球体150に接触した状態から逸脱しないように、所定の面積をなす平面状に形成されている。
【0028】
掛止片115は、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制する規制機構の一部をなすものであり、図12ないし図15に示すように、ベース100の突起105を係合させるように、直線S1方向の一方側の縁部領域から直線S2方向に幅広い状態で直線S1方向に弾性変形可能に片持ち梁状に光軸L2方向に突出すると共に略矩形状の開口115a及び先端の傾斜面115b(図14参照)を画定するフック状に形成されている。
開口115aは、図8及び図14に示すように、スナップフィットにより掛止片115が突起105に係合させられた後、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制しつつ、直立面105bと接触し又は微小隙間をおいて非接触の状態で、可動保持部材110がベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で移動するのを許容するように形成されている。
そして、規制片115は、図15に示すように、光軸L2方向の前方から近づけられてその先端(の傾斜面115b)が突起105の傾斜面105aに当接すると、傾斜面105aにガイドされつつ直線S1方向外向きに弾性変形して、その開口115aに突起105を受け入れるようになっている。
2つの掛止片116は、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制する規制機構の一部をなすものであり、図12ないし図14、図16に示すように、それぞれベース100の突起106を係合させるように、直線S1方向の他方側の縁部領域から直線S2方向に幅狭い状態で直線S1方向に弾性変形可能に片持ち梁状に光軸L2方向に突出すると共に略矩形状の開口116a及び先端の傾斜面116b(図14参照)を画定するフック状に形成されている。
開口116aは、図8及び図14に示すように、スナップフィットにより掛止片116が突起106に係合させられた後、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制しつつ、直立面106bと接触し又は微小隙間をおいて非接触の状態で、可動保持部材110がベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で移動するのを許容するように形成されている。
そして、規制片116は、図14及び図16に示すように、光軸L2方向の前方から近づけられてその先端(の傾斜面116b)が突起106の傾斜面106aに当接すると、傾斜面106aにガイドされつつ直線S1方向外向きに弾性変形して、その開口116aに突起106を受け入れるようになっている。
【0029】
ここで、突起105と規制片115の関係及び突起106と規制片116の関係は、図14(a),(b)に示すように、球体150を挟んでベース100に可動保持部材110が組み付けられた状態で、像振れ補正を行う際の移動範囲をカバーするように、直線S1方向において相対的な移動を許容する隙間Vg及び直線S2方向において相対的な移動を許容する隙間Hgを生じるように形成されるのが好ましい。
また、直立面105b,106bと開口115a,116aの内縁部とは接触するように形成されてもよいが、ベース100に設けられた第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162と可動保持部材110に設けられた第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132が相互に磁気的吸引力を生じて、可動保持部材110がベース100から容易に離れないように保持されるため、光軸L2に垂直な平面内で可動保持部材110が円滑に移動し得るように、直立面105b,106bと開口115a,116aの内縁部との間に微小隙間Gを設けるのが好ましい。
【0030】
上記のように、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制する規制機構は、雄型係合部としてのベース100に設けられた3つの突起105,106と、スナップフィットにより雄型係合部に係合する雌型係合部としての可動保持部材110に設けられた3つの掛止片115,116により構成されている。
すなわち、この規制機構によれば、付勢バネ等によるのではなく、掛止片115,116の弾性変形(スナップフィットによる係合関係)を利用して可動保持部材110をベース100に容易に組み付けて、ベース100に対して可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持しつつベース100から光軸L2方向に離脱するのを規制する。したがって、従来のようにバネの付勢力等が駆動負荷(抵抗力)として作用しないため、部品点数を削減しつつ、構造の簡素化、組立の容易化等を達成できる。
【0031】
第1駆動機構120は、図5、図6、図9、図10、図13に示すように、第1コイル121、第1駆動磁石122を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第1コイル121は、図10に示すように、光軸L2方向から視て、直線S3の方向に長軸及び直線S4´の方向に短軸をもつ略楕円環状をなすように形成されて、ベース100の嵌合凹部100bに嵌合されて固定されている。
そして、第1コイル121は、その長軸が直線S2に対して45度の傾斜角度をなす(その長軸が直線S3と平行になる)ように配置されている。
第1駆動磁石122は、図9、図13に示すように、直線S3を通る面を境にN極とS極とに着磁された矩形形状に形成されて、可動保持部材110の嵌合孔112に嵌合されて固定されている。
そして、第1駆動機構120は、第1コイル121に対する通電をオン/オフすることにより、光軸L2に垂直な第1方向すなわち直線S4´の方向に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0032】
第2駆動機構130は、図5、図6、図9、図10、図13に示すように、第2コイル131、第2駆動磁石132を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第2コイル131は、図10に示すように、光軸L2方向から視て、直線S4の方向に長軸及び直線S3´の方向に短軸をもつ略楕円環状をなすように形成されて、ベース100の嵌合凹部100eに嵌合されて固定されている。
そして、第2コイル131は、その長軸が直線S2に対して45度の傾斜角度をなす(その長軸が直線S4と平行になる)ように配置されている。
第2駆動磁石132は、図9、図13に示すように、直線S4を通る面を境にN極とS極とに着磁された矩形形状に形成されて、可動保持部材110の嵌合孔113に嵌合されて固定されている。
そして、第2駆動機構130は、第2コイル131に対する通電をオン/オフすることにより、光軸L2に垂直な第2方向すなわち直線S3´の方向に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0033】
上記第1駆動機構120と第2駆動機構130とは、図6及び図7に示すように、可動保持部材110に保持されたレンズG2,G3,G4の光軸L2と直交する直線S1に対して線対称に配置されているため、各々が受ける駆動負荷は同一であり、レンズG2,G3,G4を挟んで両側に駆動力を及ぼすため、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内において安定して円滑に駆動することができる。
また、第1コイル121及び第2コイル131は、各々の長軸が直線S2に対して所定の傾斜角度(略45度)をなすように配置されているため、可動保持部材110を直線S2の方向に長尺な形状とした場合に、第1コイル121及び第2コイル131を傾斜させることで、直線S1の方向において可動保持部材110の寸法を小さくすることができ、光軸L2に垂直な方向(直線S1の方向)における装置の小型化及び薄型化等を達成できる。
【0034】
ヨーク141は、磁力線を通す磁路として機能するものであり、図5に示すように、略矩形の板状に形成されると共に、開口部100aと略同一形状をなす開口部141a、屈曲部141b、ネジ孔141c、2つの位置決め孔141d等を備えるように形成されている。また、ヨーク141は、図4、図5、図9に示すように、フレキシブル配線板180を挟み込んで屈曲させて固定するべく、フレキシブル配線板180の背面に隣接して配置され、ネジBを用いてベース100に着脱自在に固定されるようになっている。
ヨーク142は、図4、図5、図9、図12に示すように、略矩形の板状に形成されて、接着剤等を用いて、可動保持部材110の嵌合孔112,113に嵌合され固着されている。
このように、駆動手段の一部に含まれるヨーク141,142を設けることにより、第1駆動機構120及び第2駆動機構130により生じる磁力線が外部に漏れ出るのを抑制することができ、磁気効率を高めることができる。
【0035】
第1復帰磁石161は、図7、図9、図11に示すように、光軸L2方向から視て略長方形に形成され、直線S3を通る面を境にS極とN極とに着磁されると共に、直線S3の方向において第1磁気センサ171を挟むように、ベース100の2つの嵌合凹部100dに嵌合されて固定されている。
すなわち、2つの第1復帰磁石161は、第1コイル121の長軸と略平行になるように、直線S2に対して45度の傾斜角度をなし、直線S3上に配列されている。
そして、第1復帰磁石161は、第1駆動磁石122と対向して磁路を形成して磁気的作用を及ぼし、第1コイル121に非通電の休止状態で、可動保持部材110を所定の休止位置(ここでは、レンズG2,G3,G4の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1に一致する位置)に復帰させると共に安定した保持力を発生するようになっている。
【0036】
第2復帰磁石162は、図7、図9、図11に示すように、光軸L2方向から視て略長方形に形成され、直線S4を通る面を境にS極とN極とに着磁されると共に、直線S4の方向において第2磁気センサ172を挟むように、ベース100の2つの嵌合凹部100gに嵌合されて固定されている。
すなわち、2つの第2復帰磁石162は、第2コイル131の長軸と略平行になるように、直線S2に対して45度の傾斜角度をなし、直線S4上に配列されている。
そして、第2復帰磁石162は、第2駆動磁石132と対向して磁路を形成して磁気的作用を及ぼし、第2コイル131に非通電の休止状態で、可動保持部材110を所定の休止位置(ここでは、レンズG2,G3,G4の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1に一致する位置)に復帰させると共に安定した保持力を発生するようになっている。
【0037】
このように、休止状態においては、復帰手段の第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162と駆動手段の第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132との間の磁気的吸引作用により、可動保持部材110(レンズG2,G3,G4)は、所定の休止位置(ベース100の開口部100aの中心C1にレンズG2,G3,G4の光軸L2が一致する位置)に自動的に復帰(センタリング)させられて安定して保持される。したがって、駆動時にイニシャライズ等の駆動制御が不要であり、又、休止状態において可動保持部材110のガタツキ等を防止することができる。また、駆動手段の第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132を、復帰手段の第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162と相互作用させるために兼用するため、構造の簡素化、装置の小型化等を達成することができる。
また、2つの第1復帰磁石161の配列方向と第1コイル121の長軸とが略平行になるように配置され、かつ、2つの第2復帰磁石162の配列方向と第2コイル131の長軸とが略平行になるように配置されているため、駆動時(第1コイル121及び第2コイル131への通電時)において、復帰磁石161,162の磁力と駆動磁石122,132の磁力の相互作用により可動保持部材110が光軸L2回りに回転するのを抑制する力が働き、又、復帰磁石161,162がそれぞれ着磁境界線の方向に配列されているため可動保持部材110の回転を抑制する大きなモーメントが得られ、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で素早く移動させて所望の位置に高精度に位置決めすることができる。
【0038】
第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172は、例えば磁束密度の変化を検出して電気信号として出力するホール素子等であり、図7、図9、図11に示すように、ベース100の嵌合凹部100c,100fにそれぞれ嵌合されて固定されている。ここで、可動保持部材110の移動範囲において、第1磁気センサ171は第1駆動磁石122と対向する位置に配置され、又、第2磁気センサ172は第2駆動磁石132と対向する位置に配置されている。
そして、第1磁気センサ171は、可動保持部材110に固定された第1駆動磁石122との間で磁気回路を形成し、可動保持部材110がベース100に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出し、又、第2磁気センサ172は、可動保持部材110に固定された第2駆動磁石132との間で磁気回路を形成し、可動保持部材110がベース100に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出することで、可動保持部材110の位置を検出するようになっている。
【0039】
このように、第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172は、ベース100に固定されているため、可動保持部材110に設ける場合に比べて配線が容易であり、移動に伴う断線等も防止することができ、又、第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132を位置検出のために兼用しているため、専用の磁石を設ける場合に比べて、構造を簡素化、部品点数の削減、装置の小型化等を達成することができる。
【0040】
フレキシブル配線板180は、図5に示すように、第1駆動機構120の第1コイル121に接続される接続部181、第2駆動機構130の第2コイル131に接続される接続部182、第1磁気センサ171に接続される接続部183、第2磁気センサ172に接続される接続部184を含むように形成されている。
そして、フレキシブル配線板180は、図9に示すように、ベース100の背面に接するように配置されて、第1コイル121の引出し線が接続部181に接続され、第2コイル131の引出し線が接続部182に接続され、第1磁気センサ171の端子が接続部183に接続され、第2磁気センサ172の端子が接続部184に接続されて、ヨーク141により、接続部181,182の領域が屈曲させられつつ挟み込まれて固定されるようになっている。
このように、フレキシブル配線板180は、光軸L2に垂直な平面方向に移動しないベース100に対して、可動保持部材110が対向する側と反対側に隣接して配置され固定されているため、光軸L2に垂直な平面方向に移動させる必要がなく、可動保持部材110が移動する平面方向にフレキシブル配線板180を撓ませて配置する必要がない。
したがって、光軸L2に垂直な平面方向におけるフレキシブル配線板180の配置スペースを狭くでき、それ故に、装置を小型化でき、耐久性を向上させることができる。
【0041】
次に、ベース100、可動保持部材110等の組付けについて、図15及び図16を参照しつつ説明すると、先ず球体150が凹部104に挿入された後、当接面114を球体150に当接させるようにして、光軸L2方向の前方から可動保持部材110をベース100に近付け、すなわち、光軸L2方向の前方から掛止片115,116を突起105,106に近付ける。
すると、掛止片115,116の先端(の傾斜面115b、116b)が突起105,106の傾斜面105a,106aに当接してそれぞれガイドされ、直線S1方向外向きに弾性変形して、突起105が掛止片115の開口115a内に入り込み、突起106が掛止片116の開口116a内に入り込む。
これにより、可動保持部材110は、ベース100に対向して配置され、ベース100から光軸L2方向に離れることなく、光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持された状態となる。
尚、この状態で、ベース100に固定された第1復帰磁石161と可動保持部材110に固定された第1駆動磁石122が磁気的に吸引し、又、ベース100に固定された第2復帰磁石162と可動保持部材110に固定された第2駆動磁石132が磁気的に吸引するため、可動保持部材110は、磁気的吸引力によっても、ベース100から離れないように規制されている。
【0042】
このように、規制機構として、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在にベース100に係合させるべく、突起105,106(雄型係合部)及びスナップフィットにより突起105,106に係合させられる掛止片115,116(雌型係合部)を採用したことにより、部品点数の削減、構造の簡素化、組立の容易化等を達成でき、又、従来のようにバネの付勢力等が駆動負荷(抵抗力)として作用しないため可動保持部材110を高精度にかつ円滑に駆動することができると共に、可動保持部材110をベース100に対して移動自在に支持しつつベース100から光軸L2方向に離脱するのを確実に防止でき、機能上の信頼性を向上させることができる。
【0043】
次に、上記像振れ補正装置Mの補正動作について、図17及び図18を参照しつつ簡単に説明する。
先ず、第1コイル121及び第2コイル131に通電しない休止状態において、可動保持部材110は、図17(a)に示すように、復帰手段(第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162)の復帰作用により、そのレンズG2,G3,G4の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する休止位置に復帰(センタリング)されて保持されている。
そして、図17(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG2,G3,G4)を上方にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図17(b)に示すように、直線S1の方向の上向きに移動させられる。
また、図17(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG2,G3,G4)を下方にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図17(c)に示すように、直線S1の方向の下向きに移動させられる。
【0044】
続いて、図18(a)に示すように、可動保持部材110が、復帰手段(第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162)の復帰作用により、そのレンズG2,G3,G4の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する休止位置に復帰した休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG2,G3,G4)を左側にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図18(b)に示すように、直線S2の方向の左向きに移動させられる。
また、図18(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG2,G3,G4)を右側にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図18(c)に示すように、直線S2の方向の右向きに移動させられる。
【0045】
このように、可動保持部材110は、支持機構(3つの球体150)及び規制機構(雄型係合部としての3つの突起105,106及び雌型係合部としての3つの掛止片115,116)により移動自在に支持された状態で、第1コイル121及び第2コイル131への通電により第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132と協働して生じる電磁駆動力により、ベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。
ここで、第1コイル121の長軸と2つの第1復帰磁石161の配列方向とが同一方向に伸長するように配列され、又、第2コイル131の長軸と2つの第2復帰磁石162の配列方向とが同一方向に伸長するように配列されているため、駆動時(コイル121,131への通電時)において、可動保持部材110が光軸L2回りに回転する挙動を抑制することができ、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で素早く移動させて所望の位置に高精度に位置決めすることができる。
【0046】
上記実施形態においては、規制機構として、ベース100に設けられた雄型係合部としての3つの突起105,106及び可動保持部材110に設けられた雌型係合部としての3つの掛止片115,116を示したが、これに限定されるものではなく、逆に、ベースに雌型係合部としての3つの掛止片を設けかつ可動保持部材に雄型係合部としての3つの突起を設けてもよい。
上記実施形態においては、雄型係合部として3つの突起105,106と雌型係合部としての3つの掛止片115,116を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、直線S2方向の長さを適宜変更し又は全て同一長さとした4つ以上の突起と4つ以上の掛止片を採用してもよく、又、雄型係合部(突起)及び雌型係合部(掛止片)をそれぞれベース及び可動保持部材の長手方向(直線S2方向)の両側に設けてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、第1コイル121及び第2コイル131として略楕円環状のものを示したが、これに限定されるものではなく、直線部を含む長軸及び短軸からなる略矩形環状のコイルとしてもよい。
上記実施形態においては、位置検出手段として、ホール素子からなる第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172を示したが、これに限定されるものではなく、その他の磁気センサを採用してもよい。
上記実施形態においては、ベース100にコイル121,131が固定され、可動保持部材110に駆動磁石122,132が固定された構成において、本発明の規制機構を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、逆に、ベースに駆動磁石が固定され、可動保持部材にコイル及び復帰磁石が固定された構成において、本発明の規制機構を採用してもよい。
【0048】
上記実施形態においては、携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットU(撮像ユニット)に適用される像振れ補正装置について示したが、撮像用の複数のレンズ、撮像素子、及び筐体を含むその他の撮像ユニットにおいて、上記構成をなす像振れ補正装置を含む構成を採用してもよい。
これによれば、撮像用の複数のレンズが光軸方向に配置された構成において、上記の像振れ補正装置を含むことで、可動保持部材110に保持される補正用のレンズG2,G3,G4が適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができる。すなわち、撮像用の複数のレンズに加えて、上記の像振れ補正機能を追加した撮像ユニットを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上述べたように、本発明の像振れ補正装置は、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の薄型化及び小型化、機能上の信頼性向上等を達成しつつ、部品点数が少なくて組付けを容易にかつ高精度に行うことができ、手振れ等により像振れを高精度に補正することができ又休止状態で自動的に復帰動作を行わせることができるため、小型化及び薄型化が要求される携帯電話機、携帯型音楽プレーヤ等の携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットに適用することができるのは勿論のこと、通常のデジタルカメラ、あるいはその他の携帯型の光学機器等においても有用である。
【符号の説明】
【0050】
L1,L2 光軸
PH 携帯情報端末機
PH1 筐体
PH2 表示部
PH3 操作ボタン
PH4 撮影窓
U カメラユニット
10 ユニットケース(筐体)
11 突出部
12,13,14,15 保持部
20 プリズム
G1,G2,G3,G4,G5 レンズ
30 フィルタ
40 CCD
50 駆動ユニット
51 ガイドシャフト
52 回り止めシャフト
53 リードスクリュー
54 モータ
55 ナット
56 コイルスプリング
M 像振れ補正装置
B ネジ
S1,S2,S3,S4 直線
S3´ 直線(第2方向)
S4´ 直線(第1方向)
100 ベース
100a 開口部
C1 開口部の中心
100b,100c,100d,100e,100f,100g 嵌合凹部
101 被ガイド部
102 被規制部
103 U字状係合部
104 凹部(支持機構)
105 突起(雄型係合部、規制機構)
105a 傾斜面
105b 直立面
106 突起(雄型係合部、規制機構)
106a 傾斜面
106b 直立面
107 掛止部
108 ネジ穴
109 位置決めピン
110 可動保持部材
110a 保持部
111 延出部
112,113 嵌合孔
114 当接面(支持機構)
115 掛止片(雌型係合部、規制機構)
115a 開口
115b 傾斜面
116 掛止片(雌型係合部、規制機構)
116a 開口
116b 傾斜面
120 第1駆動機構(駆動手段)
121 第1コイル
122 第1駆動磁石
130 第2駆動機構(駆動手段)
131 第2コイル
132 第2駆動磁石
141 ヨーク
141a 開口部
141b 屈曲部
141c ネジ孔
141d 位置決め孔
142 ヨーク
150 球体(支持機構)
161 第1復帰磁石(復帰手段)
162 第2復帰磁石(復帰手段)
171 第1磁気センサ(位置検出手段)
172 第2磁気センサ(位置検出手段)
180 フレキシブル配線板
181,182,183,184 接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するベースと、レンズを保持する可動保持部材と、前記可動保持部材をレンズの光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、前記可動保持部材が前記ベースから光軸方向に離れるのを規制する規制機構と、前記可動保持部材を前記平面内で駆動する駆動手段と、前記可動保持部材の位置を検出する位置検出手段と、休止状態において前記可動保持部材を所定の休止位置に復帰させる復帰手段と、を備え、
前記規制機構は、前記ベース及び可動保持部材の一方に設けられた雄型係合部と、前記ベース及び可動保持部材の他方に設けられて前記平面内における前記可動保持部材の移動を許容するようにスナップフィットにより前記雄型係合部に係合する雌型係合部を含む、
ことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
前記雄型係合部は、前記光軸に垂直な方向に突出する少なくとも3つの突起であり、
前記雌型係合部は、前記突起の突出方向に弾性変形可能に形成されてスナップフィトにより前記突起を受け入れると共に前記平面内での相対的な移動を許容し得る開口を画定するフック状の少なくとも3つの掛止片であり、
前記突起は、前記掛止片をスナップフィットにより係合させる際に、前記掛止片の弾性変形をガイドする傾斜面を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項3】
前記支持機構は、前記ベース及び可動保持部材の一方に設けられた少なくとも3つの凹部と、前記少なくとも3つの凹部に転動自在に配置され前記光軸方向に突出する少なくとも3つの球体と、前記ベース及び可動保持部材の他方に設けられて前記球体に当接する少なくとも3つの当接面を含み、
前記駆動手段は、前記平面内の第1方向に駆動する第1駆動機構と、前記平面内の第2方向に駆動する第2駆動機構を含み、
前記第1駆動機構は、前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第1コイルと、前記第1コイルに対向する位置において前記ベース及び可動保持部材の他方に固定された第1駆動磁石を含み、
前記第2駆動機構は、前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第2コイルと、前記第2コイルに対向する位置において前記ベース及び可動保持部材の他方に固定された第2駆動磁石を含み、
前記復帰手段は、前記第1駆動磁石と対向して休止位置に復帰させる磁力を発生するべく前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第1復帰磁石と、前記第2駆動磁石と対向して休止位置に復帰させる磁力を発生するべく前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第2復帰磁石を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一つに記載の像振れ補正装置と、撮像用の複数のレンズと、撮像素子と、筐体と、を含む、
ことを特徴とする撮像ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−133698(P2011−133698A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293689(P2009−293689)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)