説明

充実性増殖培地プレートを方向付けるための方法および装置

充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための装置であって、プレートは蓋と底部とを有し、当該装置は、プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置において、間にプレートを受入れるとともに保持することが可能な対向する顎部を含む方向付け機構を含み、方向付け機構は、概念的な筒部と交わる略水平軸について少なくともプレート底部が回転して少なくともプレート底部を元々の向きから作業向きに方向付けするよう顎部支持部材が回転可能であるように顎部支持部材上に搭載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、2007年1月12日に出願されたオーストラリア仮特許出願2007900145の優先権を主張し、その内容はこの引用により本願に援用されるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、医療診断目的などの主に実験室における診断目的のための、微生物試料の充実性増殖培地への接種、および分離された細菌コロニーを生成するためのその後の接種物の画線に関わる機器に関する。具体的には本発明は、自動画線機器において、画線作業の前および後の両方にて、充実性増殖培地プレートの方向付けをするための方法および装置に関する。しかしながら、この発明はその用途にのみ限定されない。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
微生物(および特に細菌)の独立コロニーの分離は、多くの微生物実験室において重要な処置である。従来、この細菌の分離は熟練実験技師によって手作業で行なわれ、技師はまず微生物試料をペトリ皿の寒天などの充実性増殖培地(以後単に、「寒天プレート」または単に「プレート」の「培地」と称する)の表面に分配し、次に手工具を用いて試料を培地の表面全体に亘って広げる(「画線」と呼ばれる)。
【0004】
手工具は典型的に、接種物の希釈度が増大する複数の画線を培地全体に亘って作るための末端ループを含む。希釈度が増大する画線は、一般に画線の尾部に向かって多数の単細胞を提供する傾向があり、これによってインキュベーション後の分離された微生物コロニーの成長が可能となる。これらの分離されたコロニーは次にコロニー形態が分析され得、これまでに同定されていない有機体のたとえば属、種および菌株を判定するのに必要な着色および他の処置を受け得る。
【0005】
従来、このような充実性増殖培地プレートについて、通常の実験室が扱う方式(regimes)では、接種および画線(以下「処理」と呼ぶ)の前および処理の後において、プレートが逆さの向きで格納される。説明目的で言えば、充実性増殖培地プレートは、自身の蓋が下方向に向き、自身の底部(寒天を含む)が最も上で格納されるように、上下が逆に格納されることは一般的なことである。これは、蓋の内側に形成され得る凝集物が培地の表面上に落下することを防止するためになされる。落下は、プレートが逆さの向きで格納されなければ起こり、培地と(処理の後での)微生物の接種物との結合性を損なう。
【0006】
上述したタイプの接種および画線は非常に繰返しが多く、多くの病理学診断微生物学実験室において普通非常に大量に、たとえば1日に1,000から15,000プレートにも上る量で行われる。これは単調で面倒な作業であるため、誤りや不正確さが生じやすい。これは極めて明らかに、一部または完全自動化に適しているであろう作業である。
【0007】
文献にはこれらの実験室機能の最適な自動化方法についての提案が豊富に記載されているが、これらの提案の中で商用の実験室環境において実際に成功したものは殆どない。したがって、好適な実験室機器の実現の成功は今まで大抵の人々にとって困難であったと思われる。
【0008】
これらの実験室機能を自動化するための3つの最近の提案は以下の文書に見つけられ得る。「培地を画線するための方法および機器(Method and Apparatus for Streaking a C
ulture Medium)」と題された米国特許第4,981,802号(C.ワイリー等(C. Wylie et al))、「標本容器からの細菌標本を培地に自動的に接種するための方法および機器(Method and Apparatus for Automatically Inoculating Culture Media With Bacterial Specimens From Specimen Containers)」と題された米国特許第6,617,146号(F.ナッカラート等(F. Naccarato et al))、および「微生物の画線装置(Microbial Streaking Device)」と題された国際特許公報WO2005/071055(Medvet Science Pty Ltd)(本出願人にライセンスされている)。
【0009】
ワイリーおよびナッカラート特許には、上述の手動の画線工具と同様の再利用可能な画線工具を利用する自動式および半自動式機器が記載されている。しかしながら、ナッカラート特許は、その機器が処理に先立ってプレートを逆さの向きから方向付けすることができるということを示唆しているだけである。この点において、ナッカラート特許には、逆さにされたプレートをコンベアベルト上に配置し、コンベアベルトの近傍にあるとともにコンベアベルトと同じ面に存在する水平軸の周りを旋回するアームを用いて、当該プレートの(最も上にある)底部分を把持し、蓋から離れるようにかつベルトから離れるように底部分を持ち上げることが記載されている。この示唆は、蓋がプレート上にて既に緩くなっている必要があるように思われ、明らかに厳密ではなく、欠陥率が高い可能性がある。控え目に言っても、かなり作業が遅くなる可能性があるように思われる。
【0010】
Medvet Science社の公報には、間隔を空けられた接触面(充実性増殖培地の表面との接触のため)の列を含む画線アプリケータである新たな形態の画線工具を用いることが記載されており、接触面は共通の支持部材によって弾性的に可撓性を有して支持されている。しかしながら、当該文献も、既に逆さにされた向きからプレートを方向付けすることができる装置を記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、実験室において、充実性増殖培地プレートの接種および画線の前および後に必要とされるであろう当該プレートの方向付けをすることが可能である方法および装置の両方を提供することである。この点において、上で示したように、方法および装置についてのこの発明のさらなる目的は、上述した接種および画線環境以外の実験室環境での利用を見出すことである。実際、その最も幅広い形態では、本発明の方法および装置は、蓋がある場合またはない場合、寒天が投入される前または後のいずれか、ならびに格納の前または後のいずれかにおいて、充実性増殖培地プレートを逆さにする自動処理を単純に提供する任意の実験室における使用を見出し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要約に移る前に、上記の先行技術の説明は本発明の内容を説明するための背景として与えられたに過ぎないことを認識する必要がある。上記の説明は、言及された資料のいずれかがオーストラリアまたはその他の場所で公開されていたもしくは公知であった、または一般知識の一部であったという承認として見なされるものではない。
【0013】
また、装置とその様々な部分との空間的関係を規定するために用いられる用語のいくつかを説明しておくと役立つ。この点に関して、本明細書全体に亘る空間的な言及は概して、自動画線機器において直立の向きで最終的に接種および画線されるプレートに基づいており、プレートの培地の表面は一般に平坦で水平である(上述した理由のため、逆さの向きで事前に格納されている)。
【0014】
この環境を基礎として、装置およびそのいくつかの部分は「水平の」を言及して規定され得、「上部の」または「上向きに」および「下部の」または「下向きに」、さらに「垂
直の」というさらなる言及も可能となる。この点に関して、x、yおよびz次元、そしてx方向(または軸)、y方向(または軸)およびz方向(または軸)という従来の幾何学の空間的な言及も採用することができ、xおよびy方向は一般に水平であり、z方向は一般に垂直である。
【0015】
最後に、個別に(かつ使用環境下にない)最終的に権利主張され得る本発明のいくつかの局面は、個別に説明および理解するのが困難であり得る。したがって、以下の説明のいくつかでは、本発明およびその実施例をそのような使用環境下で(たとえば、自動画線機器に関連して、または元々の逆さにされたプレートとの使用を参照して)説明する。もちろん、本発明を規定するためのそのような説明の使用、および上述の空間的関係の使用は、意図が明確に記載されていない限り、限定事項として見なされず、もちろん使用環境のみの限定事項としても見なされない。
【0016】
発明の概要
本発明は、充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための装置を提供する。プレートは蓋と底部とを有する。当該装置は、プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置において、間にプレートを受入れるとともに保持することが可能な対向する顎部を含む方向付け機構を含み、方向付け機構は、概念的な筒部と交わる略水平軸について少なくともプレート底部が回転して少なくともプレート底部を元々の向きから作業向きに方向付けするよう顎部支持部材が回転可能であるように顎部支持部材上に搭載される。
【0017】
本発明はさらに、充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための方法を提供する。プレートは蓋と底部とを有する。当該方法は、
a)プレートを、方向付け機構の顎部支持部材上に搭載される対向する顎部の間に、その元々の向きでクランプし、これによりプレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置を形成するステップと、
b)概念的な筒部と交わる略水平軸について少なくともプレート底部を回転させて少なくともプレート底部を元々の向きから作業向きに方向付けするステップとを含む。
【0018】
本発明の好ましい形態では、この装置は、プレートを元々の向きから作業向きに方向付けすることができるだけでなく、当該方向付けの前、間、または後において、プレートの蓋を取ることが可能である。理想的には、一つの連続的な動きにより、プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするとともに当該プレートの蓋を取る。さらに理想的には、この装置は、当該方向付けおよび蓋を取ることの両方が実質的に概念的な筒部の中で、したがって本質的に同じ垂直軸において、行われ得るように構成される。
【0019】
一形態では、装置は、保持位置にある際に、まず蓋およびプレート底部の両方を回転させて両者を元々の向きから作業向きに方向付ける。続いて、プレート底部のその後の処理のためにプレートの蓋が取られ、蓋とプレート底部とが分離され得る。しかしながら、好ましい形態では、装置は、蓋をその元々の向きに保持したままにしてプレート底部のみを回転させ、これにより本質的に一つの動きにより蓋を取ることと方向付けとを行なう。
【0020】
したがって、本発明はさらに、充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための装置を提供する。プレートは蓋と底部とを有する。当該装置は、
プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置において、間にプレートを受入れるとともに保持することが可能な対向する顎部を含む方向付け機構を含み、顎部の1つは、プレート底部把持装置を含むとともに、概念的な筒部と交わる略水平軸についてプレート底部が回転してプレート底部を元々の向きから作業向きに方向付けするように顎部支持部材上に回転可能に搭載され、他の顎部は、プレート底部の回転の間に蓋をその元々
の向きに保持する蓋把持装置を含み、当該装置はさらに、
その作業向きにあるプレート底部を方向付け機構から受入れることが可能なプレートクランピング部材を有するプレートプラットホームを含む。
【0021】
本発明の一形態では、その作業向きにあるプレート底部は好ましくは、(その元々の向きで保持されることになる)保持された蓋の下に存在し、したがって概して概念的な筒部の中にそれでもまだ存在する。この形態では、蓋を取ることも概してこの概念的な筒部の中で行なわれることになる。
【0022】
本発明はしたがって、充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするためのさらなる方法を提供する。プレートは蓋と底部とを有する。当該方法は、
a)プレートを、対向する顎部の間においてその元々の向きにクランプするステップを含み、顎部の1つは方向付け機構の顎部支持部材上に回転可能に搭載されるプレート底部把持装置を含み、これによりプレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置を形成し、他の顎部は蓋把持装置を含み、当該方法はさらに、
b)蓋をその元々の向きに保持しつつ、概念的な筒部と交わる略水平軸についてプレート底部を回転させ、プレート底部を元々の位置から作業位置まで方向付けするステップと、
c)方向付けされたプレート底部をプレートプラットホームのプレートクランピング部材と係合させ、プレート底部をクランプするステップとを含む。
【0023】
この発明とともに用いられるプレートは円形である可能性が高い。したがって、蓋と底部とがそれら自身同士の間に外周側壁を規定する。この形態では、プレートの上と下とに規定される概念的な筒部は、単にこの側壁によって形成される部分的な円形の筒部の連続したものであり、プレートの上および下に無限に続き、その部分的な円形の筒部を含む。この筒部は、上述されたように本発明を規定する目的で規定される想像上の表面であると言う点で概念的である。したがって、このプレートが、たとえば正方形状のプレートであったならば、概念的な筒部は、4つ側壁によって形成される、正方形に区分される筒部の連続したものによって規定される想像上の表面であったであろう。これもまた、プレートの上および下に無限に続き、当該正方形に区分される筒部を含む。
【0024】
プレートの保持位置は、プレート自体が略水平になるような位置である可能性が高いので、保持位置によって規定される概念的な筒部は概念上の垂直筒部となる可能性が高い。したがって、(好ましい形態では)プレート底部がまわりを回転する水平軸は、この概念上の垂直筒部と交わることになる。この点において、回転される際にプレートが移動する距離を最小限にし、かつしたがって装置の動作スピードを増加させるために、回転軸が、プレートの蓋、底部、および側壁内で規定される部分的な筒部と実際に交わり、最も好ましくは、プレートの中心または中心の非常に近く(円形のプレートの場合は半径方向中心部)と交わるよう部分的な筒部と交わることが想定される。この最も好ましい形態では、プレート底部はその自身の半径方向中心部について(または、それ自身の半径方向中心部の非常に近くについて)回転される。これは、プレート底部を元々の向きから作業向きに方向付けする最速の形態を示していると思われる。
【0025】
利用時には、プレートは大抵、上述した逆さの向きで方向付け機構に与えられる。これは、本発明の装置の目的についてのプレートの元々の向きがこの逆さの向き、すなわちその蓋が最も下にあるとともにその底部が最も上にあり、プレートが略水平方向に位置するということを意味する。この形態では、対向する顎部は上顎部と下顎部とになり、上顎部は好ましいプレート底部把持装置を含み、下顎部は好ましい蓋把持装置を含み、概念的な筒部は概念的な垂直筒部である。
【0026】
この好ましい形態では、方向付け機構の顎部支持部材は、概念的な筒部と交わる略水平軸についてプレート底部が回転してプレート底部をその元々の向きからその作業向き(好ましくは、180度の回転、したがって元々の向きから180度隔たった向き)に方向付けするように回転可能であるだけでなく、この顎部支持部材はさらに、プレート底部が理想的には回転の開始時に蓋から離れるよう若干上昇され、これにより、底部を蓋から解放し、次いで保持された蓋の下へとプレート底部が回転して移動することが同じ連続する動きでなされるように略垂直方向に移動可能である。一旦方向付けされるかまたは(より好ましくは)方向付けの間、プレート底部は、下方向に動かされてプレートクランピング部材と係合するように、上からプレートプラットホーム上へと(理想的には上述したように未だ概念上の垂直筒部の中で)下げられる。
【0027】
この点において、本発明の最も好ましい形態は、蓋を取ること、方向付け、およびプレート底部をプラットホームへと下げることが一つの連続する動きで行なわれることを可能にすることであると想定される。
【0028】
蓋が取られるとともに方向付けされたプレート底部は次いでプレートプラットホームにクランプされ、当該プレートプラットホームは、次いで、好ましくは蓋をその元々の向きで保持している他の顎部から独立して、概念上の垂直筒部から離れて何らかの他の位置(たとえばプレート作業位置)へと水平方向に移動可能である。該他の位置では、プレートにおける培地への接近が容易になされ得る。
【0029】
上から明白であるように、本発明の装置は自動画線機器、理想的には、オーストラリア仮特許出願2007900146の優先権を主張し、かつその全内容は引用により本願に援用されている「プレートの培地を接種および画線するための方法および機器(Method and Apparatus for Inoculating and Streaking a Medium in a Plate)」と題された2008年1月11日に出願された本出願人の国際特許出願に全体的に説明されている種類のものと共に用いるのに好適である。この目的のため、一形態では、当該画線機器は一般に、
(a)未処理プレートを逆さの向きに保管可能なプレート供給部と、
(b)プレート供給部から逆さ(これがプレートの元々の向き)の未処理プレートを取得し、未処理プレートの底部が最も下であるとともにその蓋を外す(これがその作業向き)ように未処理プレートを方向付けし、かつ接種および画線ステーション内のプレート作業位置に当該方向付けされたプレート底部を移すことが可能なプレート移動送り機構と、
(c)位置決めされたプレートの培地の表面に接種物を分配可能な接種装置と、
(d)画線アプリケータ供給部から画線アプリケータを取得し、次に、位置決めされたプレートを回転させて画線する前に、画線アプリケータを、その間隔を空けられた接触面の列が位置決めされたプレートの培地の表面と接触するように動かすことが可能な画線装置と、
(e)処理済プレートを逆さの向きに保管可能なプレート保管部と、
(f)処理済プレートをプレート作業位置から取戻し、処理済プレートに蓋を再び取り付けるとともにその逆さの向き(その元々の向き)に再び方向付けし、処理済プレートをプレート保管部に移すことが可能なプレート移動保管機構とを含む。
【0030】
したがって、一形態では(これがその唯一の形態ではないが)、本発明の装置は、プレートの蓋を取ることおよび方向付け、ならびにこのような自動画線機器におけるプレート作業位置へのその後の配置において、プレート移動送り機構およびプレート移動保管機構のいずれかまたは両方の部分として用いられることに好適であることが意図される。
【0031】
ここで、本発明の方向付け機構の好ましい形態のさらなる説明に移ると、方向付け機構においてプレートを受入れる対向する顎部は好ましくは、プレートの外周側壁に対向する
プレートの頂部および底部の壁、すなわち上述した蓋および底部、と接触するように構成される。
【0032】
好ましい形態では、顎部の1つまたは両方は、プレートを顎部同士の間にクランプするべく一緒にされ得るように伸縮可能であり、当該顎部の一方または両方は真空作動把持装置を含むことになる。
【0033】
上述したように、プレートを受入れる顎部は、プレート底部を作業向きにするよう水平軸について180度だけ方向付けされ得るように、当該軸についてxまたはy方向の一方に少なくともプレート底部を回転させるために搭載される。上述した好ましい場合では、この作業向きは、プレートの通常の直立した(蓋が上向き)向きとなるであろう。
【0034】
この作業(直立)向きにプレート底部を保持して、方向付け機構は、上述したプラットホームの上に位置するように移動可能であるか、または方向付け動作の一部として理想的には滑らかに連続する動きですでにプラットホームの上に位置することになる。したがって、プレート底部は、方向付けと同じ動きにてプラットホーム上に下げられ得、これにより理想的にはプラットホーム上で中央に配置されるとともにそれによってクランプされる。一形態では、プレート底部を保持する顎部は、プレートの底部の直径以下の距離だけ離れた細長い先枝部の対から形成されることになる。そのため、先枝部は、プレートがクランプされる際にクランプされないようにプラットホームのプレートクランピング部材内に緩く受入れられ得る。上述したように、顎部をプラットホームから離れるよう収縮させることにより、クランプされたプレート底部を保持するプラットホームが(必要ならば)離れるようにプレート作業位置へと移動することを可能にする態様で、プレート底部はプラットホーム上にて中央に配置され得るとともにクランプされ得る。
【0035】
理解されるであろうように、次いで、反転動作により、プラットホームが、クランプされたプレート底部(処理の後かつ蓋がない状態)とともに、プレート作業位置から保持される蓋(未だその元々の位置にある)の下の位置に動かされる。次いで、プレート底部は蓋の上に戻るまで回転され、蓋をプレート底部と再び結合させる。そのため、プレートはその元々の向きに戻る。
【0036】
本発明に関わる一般概念を簡単に説明したので、本発明に係る好ましい実施例を次に説明する。しかし、以下の説明は上記説明の一般性を制限するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の好ましい実施例に従った装置の、上からの斜視図である。
【図2】プレートがその元々の向きに未だある状態で保持位置に存在することを示す図1の装置の、上からの斜視図である。
【図3】プレート底部がその元々の向きからその作業向きに方向付けされることを示す図1の装置の、上からの斜視図である。
【図4】蓋が取られ、その作業向きにおいてプラットホームにクランプされた、方向付けされたプレート底部を示す図1の装置の、上からの斜視図である。
【図5】自動画線機器におけるプレート作業位置での方向付けおよび蓋が取られたプレート底部を示す図1の装置の、上からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
好ましい実施例の説明
(図2に示される)元々の向きにある保持位置から(図3および図4に示される)作業向きに充実性増殖培地プレート12を方向付けするための装置10が図示される。図1は
、装置内に(図2から図5に示される)プレート12が配置される前の休止状態の装置を示す。その一方、図5は、自動画線機器(図示せず)のセンサBの近傍のプレート作業位置Aへのその後の転送のためにプレート12を方向付けするとともにその蓋を取るよう用いられている当該装置を示す。
【0039】
図2および図3に示されるように、プレート12は蓋12aおよび底部12bを有し、この実施例では、単一の外周側壁12cを有する円形のプレートである。さらに、この形態では、プレート12は、殆どの実験室において一般的である逆さの向き、すなわち図2に示されるように底部12bが最も上にありかつ蓋12aが最も下にある状態で、装置に与えられる。装置10は、該して参照番号14で示される方向付け機構を含む。当該方向付け機構は、自身の間にプレート12を受入れかつ保持することができる対向する顎部(使用前および休止状態の際の図1におけるような下顎部16aおよび上顎部16b)を含む。
【0040】
この点において、図1に示されるように、これらの顎部の一方(この場合、下顎部16a)は伸縮可能な真空作動蓋把持装置36であり、他方(上顎部16b)は、プレート12の底部12bの直径以下の距離分だけ離れている伸縮可能な細長い先枝部38の対である。上顎部16bはさらに、それぞれの先枝部38上に配される真空作動吸引キャップ39a,39bの形態にある真空作動プレート底部把持装置を含む。したがって、(図2においてその元々の向きにある)プレート12が顎部(16a,16b)の間に位置決めされると、蓋把持装置36および/またはプレート底部把持装置が自身の間にプレート12を把持および保持するようプレート12に向かって動かされることが可能になるように、上顎部16bと下顎部16aとの間で相対運動がなされる。
【0041】
プレート12は、最初に顎部(16a,16b)の間に配置されると、ここで「保持位置」と規定される位置において、それらの間に保持される。図2から分かり得るように、当該保持位置はプレート12の上および下に概念上の筒部Xを規定する。この概念上の筒部Xは、プレート12の側壁12cによって形成される部分的な円形の筒部の連続したものであり、プレート12の上および下に無限に続く。概念上の筒部Xはしたがって、側壁12cによって形成されるこの部分的な円形の筒部を含む。
【0042】
この筒部は図2において破線で描かれるが、上述したように、概念上の筒部は、本発明を規定する目的で上述したような想像上の表面であるという点で概念的である。
【0043】
方向付け機構14は、対向する顎部(16a,16b)の少なくとも1つが搭載される顎部支持部材20を含む。この実施例では、上顎部16bは、自身が伸縮可能であるように、かつ概念上の筒部Xと交わる略水平軸Yの周りを少なくともプレート底部12bが回転して元々の向きから作業向きに少なくともプレート底部12bを方向付けするよう顎部支持部材20が回転可能であるように、支持部材20と一体である。
【0044】
図4および図5において、顎部支持部材20は、必要とされる運動の範囲を顎部支持部材20に与えるよう垂直方向に回転および移動の両方が可能である移動可能な搭載部50に搭載されているのが分かり得る。一形態では、顎部支持部材20自身はさらに、移動可能な搭載部50から独立して垂直方向に移動し、これにより、必要とされるならば、恐らく中央の溝52および移動可能な旋回部をその中で用いてさらなる移動の範囲を与えるよう構成されてもよい。実際、このような構成はさらに、線yに対して横の水平方向における運動の範囲を顎部支持部材20に与え、これにより、プレート底部12bが蓋12aから離れるよう回転する際に蓋12aから離れるのに必要とされる運動を補助する。
【0045】
図4および図5はさらに、上顎部16bから独立した下顎部16aの搭載を示す。この
搭載は、元々の向きから作業向きへのプレート底部12bの方向付けの間、下顎部16b(したがってプレート底部12b)が元々の向きから持ち上げられるとともにその下へと回転される際に、下顎部16aがその元々の向きに保持され得るようになされる。
【0046】
回転のための時間を最小限にするとともにこの再方向付け作業を行なうのに装置内で必要とされるスペースを最小限にするよう、水平軸Yをプレート12の半径方向の中心に可能な限り近くなるように位置決めすることが好ましい(厳密に言えば、顎部(16a,16b)の間において、プレート12の半径方向の中心が水平軸Yの近くになるような位置にプレート12が保持されることを確実にするように位置決めするのが好ましい)。
【0047】
しかしながら、本実施例では、プレート12の半径方向の中心から水平軸Yを離し、実際にはプレート12の蓋12aの下(保持位置において)におけるある距離に水平軸を位置決めすることが有利であるとわかった。これは、この実施例において、その元々の向きに蓋12aを保持することが好ましいことと、したがってプレート底部12bを上方向に若干上昇させて蓋12aから離し、動かされない蓋12aについてプレート12bを回転させる必要があることとによる。これには、プレート底部12bを、蓋12aの下で概念上の筒部X内に戻る前に、概念上の筒部Xから外に移動させる必要がある。
【0048】
上述したように、上記の目的は、プレート底部12bがこの態様で回転するのに装置の中において十分なスペースを提供しつつ、方向付けが行なわれている際に、プレート底部12bの移動の距離を短くし、それでも理想的には概して概念上の筒部X内でプレートプラットホーム30へと下方向に進めることを確実にするということである。図示された相対的な間隔は、上述した相反するタイミング要件について最適であると見出されたものである。
【0049】
さらに上述したように、方向付け機構14の顎部支持部材20は、概念的な筒部Xと交わる略水平軸Yについてプレート底部12bが回転してプレート底部12bをその元々の向きからその作業向き(好ましくは、180度の回転、したがって元々の向きから180度隔たった向き)に方向付けするように回転可能である。しかしながら、顎部支持部材20はさらに、プレート底部12bが、方向付けの間または方向付けの後、(それでもまだ、概念的な筒部X内で)滑らかに連続する動きで上からプレートプラットホーム30上へと下げられ得るように略垂直方向(図1における矢印Zの方向)に移動可能である。そのため、プレート底部12bは下方向に動かされてプレートクランピング部材32と係合し、先枝部38は、プレート12がクランプされる際にクランプされないように、プラットホーム30における協調的な形状を有するチャネル40内に緩く受入れられる(たとえば、図4に示す位置)。
【0050】
この実施例では、プレートクランピング部材32は、カム装置(図示せず)によって動作される3つの移動可能な突起の形態にある。これらの突起は、好ましくは、プラットホーム30上でプレートの位置を中央に配置するためのプレート中央配置手段としても機能する。これは、プレート底部12bとのその後の動作について有用であり得る。
【0051】
次いで、動作時において、プレート底部12bが一旦プラットホーム30にクランプされるとともにプラットホーム30において中央に配置されると、このクランプされたプレート底部12bは次いで水平方向(図5における矢印Z2の方向)に先枝部38から離れるように、方向付け機構14とは独立して、概念上の筒部Xから離れるとともにプレート作業位置Aに入るように移動され得る。プレート作業位置Aでは、プレート底部12bにおける培地への接近が容易になされ得る。
【0052】
理解されるであろうように、次いで、反転動作により、プラットホーム30は、(プレ
ート作業位置Aでの処理の後かつ蓋がない状態の)クランプされたプレート底部12bとともに、プレート作業位置Aから概念的な筒部Xの中の位置に戻る。筒部Xでは、先枝部38は再びプラットホーム30のチャネル40の中に、プラットホーム30のプレートクランピング部材32によって緩く受入れられる(かつ、プレート底部12bの下に配される)。次いで、顎部支持部材20によって、プレート底部12bをプラットホーム30から離れるように若干上昇させ、次いでプレート底部12bを回転させて蓋12aに関連するその元々の向きに戻すことにより、蓋12aはプレート底部12bに再び加えられ得る。
【0053】
結論として、ここで記載された構成に対する変更例および修正例が存在し得、それらは本発明の範囲内であるということが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための装置であって、前記プレートは蓋と底部とを有し、前記装置は、
プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置において、間にプレートを受入れるとともに保持することが可能な対向する顎部を含む方向付け機構を含み、前記顎部の1つは、プレート底部把持装置を含むとともに、前記概念的な筒部と交わる略水平軸についてプレート底部が回転して前記プレート底部を前記元々の向きから前記作業向きに方向付けするように顎部支持部材上に回転可能に搭載され、他の顎部が、前記プレート底部の回転の間に前記蓋をその元々の向きに保持する蓋把持装置を含み、前記装置はさらに、
その作業向きにある前記プレート底部を前記方向付け機構から受入れることが可能なプレートクランピング部材を有するプレートプラットホームを含む、装置。
【請求項2】
前記プレートの前記元々の向きは、その蓋が最も下にあるとともにその底部が最も上にあるという逆さの向きである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記対向する顎部は、上顎部および下顎部を含み(使用前および休止時)、前記下顎部は前記蓋把持装置を含み、前記上顎部は前記プレート底部把持装置を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記下顎部および前記上顎部のいずれかまたは両方は伸縮可能な顎部である、請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記顎部支持部材は、方向付けの間、前記プレート底部が回転の開始の際に前記蓋から若干離れるよう引上げられて前記プレート底部を前記蓋から解放することが可能なように略垂直方向に移動可能であり、これにより、前記元々の向きから前記作業向きへの前記プレート底部の移動を、概して前記概念的な筒部の中での滑らかに連続した動きにする、請求項1−4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記作業向きへの回転の間またはその後のいずれかにおいて、前記プレート底部は、前記プレートプラットホーム上に下げられて前記プレートクランピング部材と係合されることが可能であり、前記底部が一旦前記プラットホームにクランプされると、前記プレート底部を把持する前記顎部は、クランプされた底部プレートから離れるように伸縮され得る、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記プレートプラットホームは、蓋が一旦外されると、前記プレート底部が別の位置に移動可能なように前記方向付け機構から独立して略水平方向に移動することが可能である、請求項1−6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記対向する顎部は、プレートの外周側壁と対向するプレートの頂部および底部の壁と接触するように構成される、請求項1−7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記蓋把持装置および前記プレート底部把持装置は真空で作動される、請求項1−8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記プレート底部把持装置を有する前記顎部は、プレートの直径以下の距離だけ離れた細長い先枝部の対を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記先枝部は、前記プレートがクランプされる際にクランプされないように、前記プレートクランピング部材の中に緩く受入れられることが可能である、請求項10に記載の装
置。
【請求項12】
前記プレートの前記蓋、前記底部、および側壁の中で規定される部分的な概念的な筒部と回転軸が交わる、請求項1−11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記回転軸は、円形のプレートの半径方向中心部と交わるように部分的な概念的な筒部と交わる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ここで添付の図面に関連して実質的に記載される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための装置であって、前記プレートは蓋と底部とを有し、前記装置は、プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置において、間にプレートを受入れるとともに保持することが可能な対向する顎部を含む方向付け機構を含み、前記方向付け機構は、前記概念的な筒部と交わる略水平軸について少なくとも前記プレート底部が回転して少なくとも前記プレート底部を前記元々の向きから前記作業向きに方向付けするよう顎部支持部材が回転可能であるように前記顎部支持部材上に搭載される、装置。
【請求項16】
充実性増殖培地プレートを元々の位置から作業位置に方向付けするための方法であって、前記プレートは蓋と底部とを有し、前記方法は、
a)プレートを、対向する顎部の間においてその元々の位置にクランプするステップを含み、前記顎部の1つは方向付け機構の顎部支持部材上に回転可能に搭載されるプレート底部把持装置を含み、これにより前記プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置を形成し、他の顎部は蓋把持装置を含み、前記方法はさらに、
b)前記蓋をその元々の向きに保持しつつ、前記概念的な筒部と交わる略水平軸について前記プレート底部を回転させ、前記プレート底部を前記元々の位置から前記作業位置まで方向付けするステップと、
c)方向付けされたプレート底部をプレートプラットホームのプレートクランピング部材と係合させ、前記プレート底部をクランプするステップとを含む、方法。
【請求項17】
前記元々の向きは、その蓋が最も下にあるとともにその底部が最も上にあるという逆さの向きである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記顎部支持部材を概して前記概念的な筒部の中で下げることにより、前記クランプされたプレートを前記プラットホーム上へと下方向に滑らかに連続した動きで下げて前記プラットホーム上で中央に配置されるとともにそれによってクランプされることをステップ(b)が含むように、前記顎部支持部材は略垂直方向に移動可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記蓋把持装置および前記プレート底部把持装置はともに真空で作動される装置である、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(c)の間、先枝部は、前記プレートがクランプされる際にクランプされないように前記プラットホームの前記プレートクランピング部材の中に緩く受入れられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(e)クランプされるとともに蓋が取られたプレートの底部が前記先枝部から離れ、かつプレート作業位置へと移動するように前記プラットホームを移動させるステップを含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、クランプされたプレート底部とともに、前記プレート作業位置から、前記先枝部が前記プラットホームの前記プレートクランピング部材によって緩く受入れられる蓋取付位置に前記プラットホームを移動させ、前記プラットホームの前記プレート底部を上昇させ、かつ前記プレート底部をその元々の向きへと回転させて前記プレートに蓋を再び取付ける反転動作を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プレートの前記蓋、前記底部、および側壁の中で規定される部分的な概念的な筒部と回転軸が交わる、請求項16−22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記回転軸は、円形のプレートの半径方向中心部と交わるよう前記部分的な概念的な筒部と交わる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ここで添付の図面に関連して実質的に記載される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
充実性増殖培地プレートを元々の向きから作業向きに方向付けするための方法であって、前記プレートは蓋と底部とを有し、前記方法は、
a)プレートを、方向付け機構の顎部支持部材上に搭載される対向する顎部の間に、その元々の向きでクランプし、これにより前記プレートの上および下に概念的な筒部を規定する保持位置を形成するステップと、
b)前記概念的な筒部と交わる略水平軸について少なくとも前記プレート底部を回転させて少なくとも前記プレート底部を前記元々の向きから前記作業向きに方向付けするステップとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−515440(P2010−515440A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545040(P2009−545040)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000017
【国際公開番号】WO2008/083440
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509192824)ラブテック・システムズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】LABTECH SYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】