説明

充電式吸入器

【課題】安定した使用が可能で、しかも小型軽量化とコスト低減を図ることができる充電式吸入器を提供する。
【解決手段】吸入器本体1の超音波振動子5及び送風機7に電力を供給するための電源として充電式電池10を使用し、また、吸入器本体1を充電台14にセットすることで充電部16に接続され、この充電部16により充電式電池10を満充電まで充電し、次の使用を可能にした。また、組み込まれる充電式電池10として10C以上の電流で急速充電できるリチウムイオン二次電池が用いられることも特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源として充電式電池を用いた充電式吸入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、一般家庭等でも呼吸器系の治療機器として、超音波振動を利用して薬液の噴霧を行う吸入器が広く用いられるようになっている。
【0003】
ところで、これまで家庭用として用いられている吸入器は、電源として商用電源を使用するのが一般的であり、電源と吸入器の間は、AC電源コードにより接続されている。しかし、AC電源コードが接続されているものは、吸入器の使用時に、いちいち電源コードをコンセントに接続しなければならず、近くにコンセントがある場所でしか使用できなかった。また、AC電源コードが接続されている状態では、例えば、吸入器の使用中に体勢を変えたいような場合でも電源コードが邪魔になることがあり、治療の妨げになることがある。
【0004】
従来、吸入器とほぼ同じ原理の加湿器には、特許文献1に示すように電源として充電式電池を使用し、この充電式電池により電源供給するようにしたものが考えられている。このような充電式電池を吸入器に適用すれば、電源コードが全く必要でなくコードレスとなるので、治療の妨げを排除することができる。
【特許文献1】特開2003−97830号公報
【特許文献2】特開2005−123183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、充電式電池を電源として使用した場合、電池残量が問題となり、仮に残量が少なくなった状態で吸入器を使いつづけると、薬液の噴霧状態を安定して保持するのが難しくなり治療に支障をきたすことになる。このため、電池残量が所定値まで低下したならば直ちに充電式電池を満充電まで充電するのが望ましい。しかし、充電式電池は、一般に用いられる例えばニッケル水素蓄電池の場合で、普通充電で12時間程度、急速充電で2〜3時間の充電時間が必要である。このため、このような充電式電池を用いた吸入器は、この間、使用不能になってしまう。
【0006】
そこで、吸入器を長時間連続して使用できるようにするため、容量の大きな充電式電池を搭載することが考えられる。しかし、このような大容量の充電式電池は、それ自体大きなものであるため、このような充電式電池を吸入器内に組み込めば、大型で重量も大きなものになり、使い勝手の極めて悪いものになってしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、安定した使用が可能で、しかも小型軽量化とコスト低減を図ることができる充電式吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、薬液より霧化液を発生させて外部に噴射させる吸入器本体と、前記吸入器本体内に設けられ、該吸入器本体の動作に必要な電力を供給する電源として用いられる10C以上の電流で急速充電可能な充電式電池と、を具備したことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載において、さらに充電手段を有し、該充電手段は、前記吸入器本体に電気的に接続可能で、該接続状態で前記充電式電池を充電する充電部を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載において、前記吸入器本体は、前記充電式電池の電池残量を表示する電池残量表示手段を有することを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載において、さらに前記充電式電池の過充電、過放電及び過電流の少なくとも一つを検出し、前記充電式電池の充電又は放電を停止させる監視保護手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定した使用が可能で、しかも小型軽量化とコスト低減を図ることができる充電式吸入器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態にかかる充電式吸入器の概略構成を示している。図1において、1は吸入器本体で、この吸入器本体1内部には、水槽部2が設けられている。この水槽部2には、水が充填されている。また、水槽部2には、上方を開口した薬液槽3が配置されている。この薬液槽3には、薬液4が充填されている。この場合、薬液槽3は、その大部分を水槽部2の水の中に位置されている。
【0015】
水槽部2の底面には、超音波振動子5が配置されている。超音波振動子5は、超音波振動を発生するもので、超音波エネルギーを水槽部2の水を介して薬液槽3に伝え、薬液4を柱状に立ち上げて霧化液6を発生させる。
【0016】
一方、吸入器本体1内部には、霧化液6が発生する空間近くに送風機7が配置されている。この送風機7は、モータ71とファン72を有し、モータ71の回転によりファン72に風を発生させ、この風を霧化液6が発生する空間に送り込んで霧化液6を吸入筒8より外部に噴射させる。
【0017】
吸入器本体1の側面には、電池室9が設けられている。この電池室9には、充電式電池10が収納されている。電池室9には、蓋部(不図示)が設けられ、この蓋部を開閉することで、充電式電池10の電池室9からの出し入れを可能にしている。充電式電池10の詳細は後述する。
【0018】
吸入器本体1の上面には、スイッチ11が配置されている。このスイッチ11は、例えば複数段にスライド操作可能にしたスライドスイッチが用いられ、最初のスライド操作で充電式電池10の電力を供給する電源スイッチを構成するとともに、これ以降のスライド操作により、吸入筒8からの霧化液6の噴射量を段階的に切替えられるようになっている。スイッチ11の詳細は後述する。勿論、スイッチ11は、電源スイッチと霧化液6の噴射量切替えスイッチを別々に設けるようにしても良い。
【0019】
吸入器本体1の上面には、スイッチ11の近くに電池残量表示部12が配置されている。電池残量表示部12は、充電式電池10の放電状態を表示するもので、充電式電池10の充電残量が所定値以下で発光体を点滅し、充電中は点灯しつづけ、充電完了で消灯する。ここでの発光体としては、例えばLEDが用いられる。この場合、例えば、充電残量が所定値以上のときは青色のLED、電池残量が所定値より低下すると赤色のLEDをそれぞれ点灯するようにしても良い。
【0020】
吸入器本体1の底面には、充電用電極13a、13bが設けられている(図1(b)参照)。これら充電用電極13a、13bは、充電式電池10の正負電極に電気的に接続され、後述する充電部16により充電式電池10の充電を可能にする。この場合、充電用電極13a、13bは、吸入器本体1底面に形成された凹部1a、1bの底面に配置されている。また、充電用電極13aと13bは、異なる長さ寸法に形成されている。
【0021】
このように構成された吸入器本体1には、図2に示すような充電手段としての充電台14が用意されている。この充電台14には、充電部16が内蔵されている。この充電台14は、側面から見てL字状をしたもので、直立した壁部141に吸入器本体1の後面を当接させた状態で、水平の載置部142上に吸入器本体1を載置可能にしている。この場合、載置部142上への吸入器本体1の載置をスムーズにするため不図示のガイドなどを設けるようにしても良い。
【0022】
載置部142上には、上述の充電用電極13a、13bに対応して長さ寸法の異なる充電用電極15a、15bが配置されている。この場合、載置部142には、吸入器本体1底面の凹部1a、1bに嵌合可能な凸部142a、141bが形成され、これら凸部141a、141b先端に充電用電極15a、15bが各別に設けられている。そして、吸入器本体1を載置部142に載せて吸入器本体1側の凹部1a、1bに凸部142a、141bを嵌合させた状態で、吸入器本体1側の充電用電極13a、13bが充電用電極15a、15bを介して充電部16に電気的に接続され、充電式電池10の充電を可能にしている。
【0023】
充電部16には、電源コード17が接続され、この電源コード17を介して供給されるAC電源より充電に必要な直流電力を発生する。なお、18は充電器監視灯で、充電部16の故障時に、例えば発光体を点滅する。ここでの発光体も、例えばLEDが用いられる。
【0024】
図3は、このように構成された吸入器の回路構成を示している。なお、図3は、上述した図1、図2と同一部分には同符号を付している。
【0025】
吸入器本体1内部には、前記充電式電池10が設けられている。この充電式電池10には、急速充電が可能なリチウムイオン二次電池が用いられる。リチウムイオン二次電池は、アルミニウムラミネートフィルム、またはアルミニウム・鉄などの金属缶からなる外装部材による容器と、この容器内に収容された非水電解質と、前記容器内に収納されアルミニウム箔よりなる正極集電体にリチウムコバルト酸化物を正極作用物質として含む正極層が担持された正極と、前記容器内に収納されアルミニウム箔よりなる負極集電体に平均粒子径が1μm以下の粒度分布を有するチタン酸リチウムを負極活物質粒子として含む負極層が担持された負極とを備えた構造を有している。
【0026】
ここで、リチウムイオン二次電池についてさらに詳細に説明する。かかる、リチウムイオン二次電池は、リチウムチタン酸化物を活物質として含む負極を備えている。活物質であるリチウムチタン酸化物は、特許文献2に開示される通り、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、リチウムイオンの挿入・離脱が1.4Vから1.7V/Li付近で行われる。このため、この二次電池は大電流での急速充電を行っても、従来の負極活物質に炭素材料を用いた場合と比べてリチウムの析出が起こらずに安全性を確保できる。また、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮が生じるのを抑制することができるため、20C電流の急速充電を繰り返し行った際にも負極活物質の構造破壊を抑えることができる。その結果、充放電を繰り返し行った場合においても長い寿命を維持できる。電池の電位としては2.4V程度であることから、従来のニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池の2本直列分に相当するため、使用本数で50%の減量化が達成できる。
【0027】
具体的には、以下のような方法で組み立てたリチウムイオン二次電池は20Cで3分間充電することにより約80%電池容量まで充電することが可能な急速充電二次電池であることが確認されている。ここで、『C』は充放電率を表す単位であり、完全放電から完全充電(または完全充電から完全放電)までを定電流充電した場合に計算上1時間で行えるレートを1Cとして表現する。1/10時間の場合、10Cと表現する。したがって、例えば20C充電とは、1C充電の20倍の電流が必要になる。
【0028】
<負極の作製>
活物質として、平均粒子径5μmでLi吸蔵電位が1.55V(vs.Li/Li+)のチタン酸リチウム(Li4Ti512)粉末と、導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。
【0029】
なお、活物質の粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社 型番SALD−300)を用いた。まず、ビーカー等に試料約0.1gを入れた後、界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入した。2秒間隔で、64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析し、累積度数分布が50%の粒径(D50)を平均粒子径とした。
【0030】
次いで、厚さ10μmのアルミニウム箔(純度99.99%)を負極集電体に前記スラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより電極密度2.4g/cm3の負極を作製した。
【0031】
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電材として黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で87:8:5となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極密度3.5g/cm3の正極を作製した。
【0032】
<二次電池の組み立て>
容器(外装部材)の形成材料として、厚さが0.1mmのアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。このアルミニウム含有ラミネートフィルムのアルミニウム層は、膜厚約0.03mmであった。アルミニウム層を補強する樹脂には、ポリプロピレンを使用した。このラミネートフィルムを熱融着で貼り合わせることにより、容器(外装部材)を得、さらに金属アルミニウムの容器に収めた。
【0033】
次いで、前記正極に正極端子を電気的に接続すると共に、前記負極に負極端子を電気的に接続した。厚さ12μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを正極に密着させて被覆した。セパレータで被覆された正極に負極を対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回して電極群を作製した。この電極群をプレスして扁平状に成形した。容器(外装部材)に扁平状に成形した電極群を挿入した。
【0034】
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチルラクトン(GBL)が体積比(EC:GBL)で1:2の割合で混合された有機溶媒にリチウム塩であるLiBF4を1.5mol/L溶解させ、液状の非水電解質を調製した。得られた非水電解質を前記容器内に注液し、リチウム二次電池を組み立てた。このようなリチウム二次電池は、満充電時電圧2.8V、放電終止電圧1.5Vで使用することができる。
【0035】
この実施の形態では、充電式電池10として、10C以上の電流で急速充電可能なリチウムイオン二次電池で、2〜3分で電池容量の80%充電でき、30Cで2分放電可能であり、さらに45℃の環境下での加速試験において1500サイクルの充放電での容量劣化が10%以下であるものが使用される。さらに、具体的には、この実施の形態の吸入器には、一回の充電で10分程度使用できるものが用いられる。
【0036】
図3に戻って、充電式電池10には、前記充電用電極13a、13bが接続され、また、スイッチ11を介して制御部20が接続されている。スイッチ11は、上述したようにスライドスイッチからなるもので、最初のスライド操作によりオン動作されるスイッチ部1101と、これ以降のスライド操作によりオン動作される複数のスイッチ部1102、1103を有している。そして、スイッチ部1101のオン動作により制御部20への電力供給を開始し、スイッチ部1102、1103のオン動作により、超音波振動子5の超音波エネルギー及び送風機7の送風パワーの段階的な可変を制御部20に指示する。
【0037】
制御部20には、超音波振動子5及び送風機7が接続されている。超音波振動子5は、上述したようなもので、超音波振動を発生し、このときの超音波エネルギーにより薬液4より霧化液6を発生させる。送風機7も、上述したようなもので、モータ71の回転によりファン72に風を発生させ、この風により霧化液6を外部に噴射させる。
【0038】
制御部20は、振動子制御手段201、送風機制御手段202及び電池残量監視手段203を有している。振動子制御手段201は、スイッチ部1101のオン動作により充電式電池10の電力を超音波振動子5へ供給し、超音波振動を発生させる。また、スイッチ部1102、1103のオン動作により、超音波振動子5の超音波エネルギーの段階的な可変を制御する。送風機制御手段202は、スイッチ部1101のオン動作により充電式電池10の電力を送風機7へ供給し、モータ71を回転させる。また、スイッチ部1102、1103のオン動作により、送風機7の送風パワーの段階的な可変を制御する。
【0039】
ここでは、スイッチ部1101〜1103により超音波振動子5の超音波エネルギー及び送風機7の送風パワーの段階的な可変を可能にしているが、超音波振動子5又は送風機7のいずれか一方のみの可変を行うようにしても良い。また、スイッチ部の数を変更すれば、2段階以外の切替えも可能である。
【0040】
電池残量監視手段203は、充電式電池10の放電状態を監視し、充電残量が所定値以下になると電池残量表示部12の発光体を点滅し、充電中は点灯しつづけ、充電完了で消灯する。
【0041】
充電式電池10には、監視保護手段として監視保護回路21が設けられている。この監視保護回路21は、充電式電池10の状態を監視するもので、かかる監視結果に応じて不図示のスイッチを駆動して充電式電池10の充放電を停止させる。この場合、監視保護回路21は、充電式電池10の過充電、過放電及び過電流を監視する。そして、充電式電池10の充電電圧が所定値の範囲では、充電式電池10の充放電を許容し、充電式電池10の充電電圧が所定値以上になると過充電と判断し前記スイッチ(不図示)を開放して充電式電池10の充電を停止させ、また、充電式電池10の充電電圧が所定値以下になると過放電と判断し前記スイッチ(不図示)を開放して充電式電池10の放電を停止させる。さらに充電式電池10の放電電流が所定値以上になると、過電流と判断し前記スイッチ(不図示)を開放して充電式電池10の放電を停止させる。これにより、充電式電池10が過充電状態になって電解液の分解によりガスが発生し、電池内部の圧力が上昇して漏液するのを防止し、また、充電式電池10が過放電状態になって負極の集電体の銅が電解液で溶解し電池性能を劣化させるのを防止する。このような監視保護回路21は、モジュール化され、前記充電式電池10内部に一体に組み込まれるものが用いられる。
なお、監視保護回路21は、充電式電池10の過充電、過放電及び過電流の少なくとも一つを監視するものであっても良い。
【0042】
吸入器本体1の充電用電極13a、13bは、吸入器本体1を充電台14にセットした状態で充電用電極15a、15bと接続可能になっている。充電台14は、充電部16として、充電部本体16aとAC/DCコンバータ16bを有している。AC/DCコンバータ16bは、電源コード17を介して供給されるAC電源の交流電力を直流電力に変換する。充電部本体16aは、AC/DCコンバータ16bより出力される直流電力により充電式電池10を満充電まで充電する。なお、充電部本体16aは、充電動作の故障時に図2示す充電器監視灯18を点滅させる機能を有している。
【0043】
次に、このように構成した実施の形態の作用を説明する。
【0044】
ユーザは、電池残量表示部12の発光体が点滅していたら、充電式電池10の充電残量が所定値以下になっていると判断し、吸入器本体1を充電台14にセットする。この場合、吸入器本体1を載置部142に載せて吸入器本体1側の凹部1a、1bに凸部142a、141bを嵌合させた状態で、吸入器本体1側の充電用電極13a、13bが充電用電極15a、15bを介して充電部16に電気的に接続され、充電式電池10の充電が可能になる。これにより、充電部16により充電式電池10が満充電まで充電される。その後、電池残量表示部12の発光体が消灯したことで充電式電池10が満充電になったことを確認する。充電式電池10の満充電を確認したら、吸入器本体1を充電台14から取り外す。
【0045】
この状態から、スイッチ11をスライド操作してスイッチ部1101をオンにすると、振動子制御手段201は、充電式電池10の電力を超音波振動子5へ供給し、超音波振動を発生させる。これにより、図1に示すように超音波振動子5の超音波振動により発生する超音波エネルギーが水槽部2の水を介して薬液槽3に伝えられ、薬液4を柱状に立ち上げて霧化液6を発生させる。また、スイッチ11のスイッチ部1101のオンにより送風機制御手段202は、充電式電池10の電力を送風機7へ供給する。これにより、図1に示すモータ71が回転し、このモータ71の回転によりファン72が回転して風を発生し、この風が霧化液6を発生する空間に送り込まれることにより吸入筒8より外部に霧化液6が噴射される。
【0046】
この状態で、ユーザが吸入器本体1の吸入筒8に顔を近づけ、呼吸することで鼻や口から霧化液6を吸い込むことにより呼吸器系の治療が行われる。
【0047】
また、スイッチ11をスライド操作してスイッチ部1102、1103をオンさせると、これらスイッチ部1102、1103のオン動作に応じて超音波振動子5の超音波エネルギー及び送風機7の送風パワーが切替えられ、吸入筒8から噴射される霧化液6の量を段階的に切替えられる。
【0048】
電池残量監視手段203は、充電式電池10の電池残量を監視する。そして、電池残量が所定値より低下すると、電池残量表示部12の発光体を点滅させる。ユーザは、電池残量表示部12の点滅表示を確認すると、吸入器本体1を充電台14にセットする。これにより、充電用電極13a、13bが再び充電部16の充電用電極15a、15bに接続され、充電部16により充電式電池10が満充電まで充電され、次の使用に備える。
【0049】
なお、上述では、充電式電池10が満充電になったら、吸入器本体1を充電台14から取り外して使用するようにしたが、吸入器本体1を充電台14に載置し、充電式電池10を充電部16に接続した状態のままでも使用することができる。
【0050】
従って、このようにすれば、吸入器本体1の超音波振動子5及び送風機7に電力を供給するための電源として充電式電池10を使用し、また、吸入器本体1を充電台14にセットすることで充電部16に接続され、この充電部16により充電式電池10を満充電まで充電し、次の使用を可能にした。また、組み込まれる充電式電池10として10C以上の電流で急速充電できるリチウムイオン二次電池が用いられことも特徴としている。これにより、充電式電池10は短時間の急速充電が可能で、しかも吸入器本体1を充電台14にセットするだけで充電部16により充電式電池10を繰り返し充電ができるので、長時間中断することなく、吸入器を安定して使いつづけることもできる。
【0051】
また、電源コードを必要としないコードレスで、持ち運びが簡単で、いつどこでも使用することもできるので、例えば、医療現場などで、点滴をしながら吸入を行うような場合にも電源コードを気にすることなく、吸入器を使用することができ、ユーザにとっての使い勝手を飛躍的に向上させることができる。
【0052】
さらに、充電式電池10の充電を頻繁に行うことができるので、電池容量の小さな充電式電池10を使用することが可能で、吸入器全体の小型軽量化とともにコスト低減につなげることができる。このことは、急速充電が可能な充電式電池10を使用することによって実現できることである。
【0053】
さらに、吸入器本体1を載置部142に載置する場合、吸入器本体1側の凹部1a、1bに凸部142a、141bを嵌合させるようになるので、載置部142上での吸入器本体1の位置決めを正確にできるとともに、吸入器本体1側の充電用電極13a、13bと充電用電極15a、15bとの間の電気的接続も確実にできる。また、充電用電極13a(15a)と充電用電極13b(15b)は、異なる長さ寸法に形成されているので、充電用電極間での誤接続を確実に防止できる。
【0054】
さらに、吸入器本体1には、充電式電池10の放電状態を表示する電池残量表示部12が設けられ、吸入器を使用しながら充電式電池10の放電状態を一目で確認することができるので、充電式電池10の電池残量がゼロになって使用不能になるようなことを未然に回避できる。また、例え充電式電池10の電池残量が少なくなっても、充電台14にセットするだけで、片付けなど他の作業を行う程度の僅かな時間で充電式電池10を満充電まで復活できるので、連続して効率良く治療を進めることができる。
【0055】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、電池残量表示部12において、充電式電池10の充電残量が所定値以下で発光体を点滅し、充電中は点灯しつづけ、充電完了で消灯するようにしたが、例えば、充電残量が所定値以下になったことや、充電回路などの故障などを音声により知らせるようにしても良い。また、上述した実施の形態では、充電部16は、別体として設けた例を述べたが、吸入器本体1内に一体に組み込んだものでもよい。さらに充電部16は、電源コードを介して自動車のシガレットプラグに接続可能にしたものでもよい。このようにすれば、自動車から簡単に充電式電池10を満充電まで充電することができるので、野外でも簡単に使用することができる。また、吸入器とほぼ同じ原理の加湿器にも本発明を適用することができる。
【0056】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる充電式吸入器の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施の形態に用いられる充電台の概略構成を示す図。
【図3】第1の実施の形態にかかる充電式吸入器の回路構成を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1…吸入器本体、1a.1b…凹部
2…水槽部、3…薬液槽
4…薬液、5…超音波振動子
6…霧化液、7…送風機
71…モータ、72…ファン
8…吸入筒、9…電池室
10…充電式電池、11…スイッチ
1101〜1103…スイッチ部、12…電池残量表示部
13a.13b…充電用電極、14…充電台
141…壁部、142…載置部
142a.141b…凸部、15a.15b…充電用電極
16…充電部、16a…充電部本体
16b…AC/DCコンバータ、17…電源コード
18…充電器監視灯、20…制御部
201…振動子制御手段、202…送風機制御手段
203…電池残量監視手段、21…監視保護回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液より霧化液を発生させて外部に噴射させる吸入器本体と、
前記吸入器本体内に設けられ、該吸入器本体の動作に必要な電力を供給する電源として用いられる10C以上の電流で急速充電可能な充電式電池と、
を具備したことを特徴とする充電式吸入器。
【請求項2】
さらに充電手段を有し、該充電手段は、前記吸入器本体に電気的に接続可能で、該接続状態で前記充電式電池を充電する充電部を有することを特徴とする請求項1記載の充電式吸入器。
【請求項3】
前記吸入器本体は、前記充電式電池の電池残量を表示する電池残量表示手段を有することを特徴とする請求項1記載の充電式吸入器。
【請求項4】
さらに前記充電式電池の過充電、過放電及び過電流の少なくとも一つを検出し、前記充電式電池の充電又は放電を停止させる監視保護手段を有することを特徴とする請求項1記載の充電式吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−22509(P2009−22509A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188458(P2007−188458)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)