説明

光コネクタ配列ケース

【課題】ケース1内に、それぞれ相手方光コネクタ23が接続される複数の待ち受け光コネクタ11を1列に配列して収納し、各待ち受け光コネクタの接続口15をケース1の端面に1列に配列した光コネクタ配列ケースにおいて、待ち受け光コネクタ11及びその接続口15が接近して配列されていても、接続口15への相手方光コネクタ23の挿抜を、既接続の相手方光コネクタや光ケーブルに悪影響を与えることなく、容易に行えるようにする。
【解決手段】 ケース1の端面に配列された接続口15の片側に、接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台25を突設する。相手方光コネクタ23を手指で摘まないで挿抜できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に、それぞれ相手方光コネクタが接続される複数の待ち受け光コネクタを、1列又は複数列に配列して収納した光コネクタ配列ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光コネクタ配列ケースの代表的な例としては光スプリッタモジュールがあげられる。光スプリッタモジュールは、図4に示すように、ケース1内に、光スプリッタ3と、光スプリッタ3の入力側光ファイバ心線5に接続された入力側光コネクタ7と、光スプリッタ3の複数の出力側光ファイバ心線9に接続された複数の出力側光コネクタ11とを収容し、ケース1の端面に、入力側光コネクタ7の接続口13と、出力側光コネクタ11の接続口15とを配列した構造となっている(例えば特許文献1、2参照)。接続口13、15はコネクタアダプタ等で構成される。なお、出力側光コネクタ11は通常、相手方光コネクタが接続されるまで待機する場合が多いので、ここでは待ち受け光コネクタという。
【0003】
光スプリッタモジュールは例えば集合住宅などに設置される。この場合は、入力側光コネクタ7に局側光ケーブル17の先端に取り付けられた光コネクタ19を常時差し込み接続しておき、待ち受け光コネクタ11には、加入者の増加等により接続が必要になった時点で加入者側光ケーブル21の先端に取り付けられた光コネクタ23が差し込み接続される。なお接続が不要になった時は、待ち受け光コネクタ11に接続されていた加入者側光コネクタ23を引き抜いて接続を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−209118号公報
【特許文献2】特開2007−121398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光コネクタ配列ケースでは、ケースの端面に複数の待ち受け光コネクタの接続口が1列又は複数列に配列されている。接続口への相手方光コネクタの挿抜は、相手方光コネクタを手指で摘んで挿抜力を加えることにより行われる。一方、光コネクタ配列ケースでは、小型化のため、待ち受け光コネクタ及びその接続口をできるだけ接近させて配列することが求められる。
【0006】
特許文献1、2のように待ち受け光コネクタ及びその接続口が1列に配列された光コネクタ配列ケースでは、接続口に相手方光コネクタを挿抜するときは、相手方光コネクタを上下から(ケースの厚さ方向から)手指で摘んで挿抜を行っている。この作業は、既に接続されている他の相手方光コネクタや光ケーブルに出来るだけ触らないように(障害を与えないように)行う必要がある。しかし接続口の数が多い光コネクタ配列ケースでは、既に接続された相手方光コネクタが混み合ってきた場合に、ケース幅方向の中央部付近にある接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに他の相手方光コネクタや光ケーブルに触らずに相手方光コネクタを摘むことが難しくなり、挿抜作業が困難になる。
【0007】
待ち受け光コネクタ及びその接続口の数が多い場合、光コネクタ配列ケースの幅方向寸法を小さくするためには、待ち受け光コネクタ及びその接続口を複数列に重ねて配列することが有効である。しかし、接続口を複数列に重ねて配列すると、接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに、相手方光コネクタを上下から手指で摘むことができなくなり、結局左右から手指で摘むことになるため、接続口の間隔を手指が入る程度に広くしなければならない。このためケースの幅方向寸法をある程度以上小さくすることが困難である。
【0008】
本発明の目的は、待ち受け光コネクタ及びその接続口が接近して配列されていても、接続口への相手方光コネクタの挿抜を、既接続の相手方光コネクタや光ケーブルに悪影響を与えることなく、容易に行うことができる光コネクタ配列ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、ケース内に、それぞれ相手方光コネクタが接続される複数の待ち受け光コネクタを1列に配列して収納し、各待ち受け光コネクタの接続口を前記ケースの端面に1列に配列した光コネクタ配列ケースにおいて、
前記ケースの端面に配列された接続口の片側に、前記接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台が突設されていることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、ケース内に、それぞれ相手方光コネクタが接続される複数の待ち受け光コネクタを複数列に配列して収納し、各待ち受け光コネクタの接続口を前記ケースの端面に複数列に配列した光コネクタ配列ケースの場合は、
前記ケースの端面が階段状に複数段に形成され、階段の段差面に相当する前記ケースの複数の端面にそれぞれ前記接続口が1列ずつ配列されており、階段の踏み段面に相当する前記ケースの壁面が、その奥の端面に配列された接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台となっていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明において、接続口を配列するケースの端面が階段状に複数段に形成されている場合は、最下段の端面に配列された接続口の下側に、前記接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台が突設されていることが好ましい。
【0012】
また本発明において、接続口を配列するケースの端面が階段状に複数段に形成されている場合は、接続口が配列された1つの端面とその1段上の端面との間のコネクタスライド台の長さが、接続口に差し込み接続された相手方光コネクタの、接続口からの突出長さと実質的に同じになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに、当該相手方光コネクタをコネクタスライド台に押し付けてスライドさせることができるので、コネクタスライド台上では相手方光コネクタを手指で摘む必要がない。このため接続口が接近して配置され、既接続の相手方光コネクタが混み合っている場合でも、相手方光コネクタの挿抜作業を容易に行うことができる。また、待ち受け光コネクタ及びその接続口を接近して配列することができるので、光コネクタ配列ケースを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る光コネクタ配列ケースの一実施例を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図。
【図2】本発明に係る光コネクタ配列ケースの他の実施例を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図。
【図3】本発明に係る光コネクタ配列ケースのさらに他の実施例を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図。
【図4】光コネクタ配列ケースの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
<実施例1>図1は本発明に係る光コネクタ配列ケースの一実施例を示す。図において、1は扁平なケースで、このケース1内には、光スプリッタ3と、光スプリッタ3の入力側光ファイバ心線5に接続された入力側光コネクタ7と、光スプリッタ3の出力側光ファイバ心線9に接続された複数の待ち受け光コネクタ11とが収納されている。
【0016】
複数の待ち受け光コネクタ11はケース1内の同一平面上に1列に配列されており、各待ち受け光コネクタ11の先端に装着されたコネクタアダプタ15は、ケース1の一端面(正面)25に1列に配列され、外部に向けて開口している。また入力側光コネクタ7はケース1の片側に収納され、入力側光コネクタ7の先端に装着されたコネクタアダプタ13もケース1の同じ端面25から外部に向けて開口している。
【0017】
コネクタアダプタ13は入力側光コネクタ7の接続口を構成しており、この接続口13には幹線側光ケーブル17の先端に取り付けられた光コネクタ19が差し込み接続される。この接続は常時接続となる。またコネクタアダプタ15は待ち受け光コネクタ11の接続口を構成しており、この接続口15には支線側光ケーブル21の先端に取り付けられた相手方光コネクタ23が差し込み接続される。なお、入力側光コネクタ7、コネクタアダプタ13及び幹線側の光コネクタ19が省略され、ケース1内に光ケーブルが導入されて光スプリッタ3の入力側光ファイバ心線5に直接接続される場合もある(特許文献2参照)。
【0018】
この光コネクタ配列ケースの特徴は、ケース1の端面25の、1列に配列された接続口15の片側(正面から見て下側)に、接続口15の軸線方向に突出するコネクタスライド台27が形成されていることである。このようなコネクタスライド台27を形成しておくと、待ち受け光コネクタ11の接続口15に相手方光コネクタ23を差し込むときには、相手方光コネクタ23をコネクタスライド台27に押し付けながら矢印P方向にスライドさせることにより、差し込むことができる。また待ち受け光コネクタ11の接続口15から相手方光コネクタ23を引き抜くときには、相手方光コネクタ23をコネクタスライド台27に押し付けながら矢印Q方向にスライドさせることにより、引き抜くことができる。つまり、相手方光コネクタ23を手指で摘むことなく、相手方光コネクタ23の一面に手指で力を加えることにより相手方光コネクタ23を挿抜することが可能となる。このため、接続口15の間隔を十分狭くしても相手方光コネクタ23の挿抜が可能となり、光コネクタ配列ケースを小型化できると共に、接続口15の数が多い場合でも、ケース1の幅方向の中央部付近にある接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜するときに、既に接続されている他の相手方光コネクタや光ケーブルに殆ど触ることなく(障害を与えることなく)、当該相手方光コネクタ23を挿抜することができる。
【0019】
<実施例2>図2は本願発明に係る光コネクタ配列ケースの他の実施例を示す。図2において、図1と同一部分には同一符号を付してある。この光コネクタ配列ケースは、ケース1の、待ち受け光コネクタ11の接続口15が配列される端面が階段状に複数段に形成され、階段の段差面に相当する複数の端面25a、25bにそれぞれ前記接続口15が1列ずつ配列されている。そして階段の踏み段面に相当するケース1の壁面(上面)が、その奥の端面25bに配列された接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜するときのコネクタスライド台29となっているものである。コネクタスライド台29の長さ(端面25aから25bまでの長さ)は、接続口15に差し込み接続された相手方光コネクタ23の、接続口15からの突出長さとほぼ同じになっている。
【0020】
この光コネクタ配列ケースの場合、コネクタスライド台29上で2段目の端面25bに配列されている接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜する作業は実施例1と同様に行える。また、コネクタスライド台29の下の1段目の端面25aに配列されている接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜する作業は、コネクタスライド台29の上に相手方光コネクタがない場合は従来と同様に行える。また、コネクタスライド台29の上で相手方光コネクタ23が接続口15に差し込み接続されている状態で、その真下の接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜するときは、上側の光コネクタ23の後端付近の光ケーブル21(又はゴムブーツ)の両側から(要するに光コネクタ23よりも細い部分の両側から)、その下の相手方光コネクタ23を手指で摘んで挿抜を行うことができる。この場合、下側の相手方光コネクタ23を指で摘んで挿抜することになるが、上側の(コネクタスライド台29上の)相手方光コネクタ23の間に手指を差し込む必要はないので、従来の複数列配列よりも接続口15の間隔を狭くすることができ、光コネクタ配列ケースを小型化できる。
【0021】
図2の実施例は、ケース1の、待ち受け光コネクタ11の接続口15が配列される端面が2段の場合であるが、3段以上の場合も同様である。
【0022】
<実施例3>図3は本発明に係る光コネクタ配列ケースのさらに他の実施例を示す。図2において、図1と同一部分には同一符号を付してある。この実施例が前記実施例2と異なる点は、ケース1の1段目の端面25aの、1列に配列された接続口15の下側に、実施例1と同様にコネクタスライド台27が突設されていることである。それ以外の構成は、実施例2と同じである。このようにすると、1段目の端面25aに配列された接続口15に相手方光コネクタ23を挿抜する作業を実施例1と同様に行うことができる。
【0023】
図3の実施例は、ケース1の、待ち受け光コネクタ11の接続口15が配列される端面が2段の場合であるが、3段以上の場合は最下段の端面に上記のようなコネクタスライド台27が形成される。
【符号の説明】
【0024】
1:ケース
3:光スプリッタ
5:入力側光ファイバ心線
7:入力側光コネクタ
9:出力側光ファイバ心線
11:待ち受け光コネクタ
13:入力側光コネクタの接続口(コネクタアダプタ)
15:待ち受け光コネクタの接続口(コネクタアダプタ)
17:幹線側(局側)光ケーブル
19:幹線側光コネクタ
21:支線側(加入者側)光ケーブル
23:支線側光コネクタ
25:端面
25a:1段目の端面
25b:2段目の端面
27:コネクタスライド台
29:コネクタスライド台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、それぞれ相手方光コネクタが接続される複数の待ち受け光コネクタを1列に配列して収納し、各待ち受け光コネクタの接続口を前記ケースの端面に1列に配列した光コネクタ配列ケースにおいて、
前記ケースの端面に配列された接続口の片側に、前記接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台が突設されていることを特徴とする光コネクタ配列ケース。
【請求項2】
ケース内に、それぞれ相手方光コネクタが接続される複数の待ち受け光コネクタを複数列に配列して収納し、各待ち受け光コネクタの接続口を前記ケースの端面に複数列に配列した光コネクタ配列ケースにおいて、
前記ケースの端面が階段状に複数段に形成され、階段の段差面に相当する前記ケースの複数の端面にそれぞれ前記接続口が1列ずつ配列されており、階段の踏み段面に相当する前記ケースの壁面が、その奥の端面に配列された接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台となっていることを特徴とする光コネクタ配列ケース。
【請求項3】
請求項2記載の光コネクタ配列ケースであって、最下段の端面に配列された接続口の下側に、前記接続口に相手方光コネクタを挿抜するときに当該相手方光コネクタを押し付けてスライドさせるコネクタスライド台が突設されていることを特徴とする光コネクタ配列ケース。
【請求項4】
請求項2記載の光コネクタ配列ケースであって、接続口が配列された1つの端面とその1段上の端面との間のコネクタスライド台の長さが、接続口に差し込み接続された相手方光コネクタの、接続口からの突出長さと実質的に同じになっていることを特徴とする光コネクタ配列ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−256542(P2010−256542A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105206(P2009−105206)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(591199590)株式会社正電社 (34)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(595083051)株式会社ジャパンリーコム (40)
【Fターム(参考)】