説明

光ストレス発生装置及び光ストレス発生方法

【課題】本発明は、任意の遅延ストレスを簡易に与えて分散トレランスの試験をすることが可能な光ストレス発生装置及び光ストレス発生方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明の光ストレス発生装置は、2つの光入力ポート21a,21b及び2つの光出力ポート22a,22bを有し、光入力ポート21aに変調信号光Lが入力され、光入力ポート21aに入力された変調信号光を2つに分岐して光出力ポート22a,22bから出力する光合分波部12と、光出力ポート22aからの変調信号光Lを増幅して光入力ポート21bに出力する光増幅部13と、を備え、光合分波部12は、光入力ポート21bに入力された光増幅部13からの変調信号光LAMPと光入力ポート21aに入力された変調信号光Lとを合波し、合波した光を2つに分岐して光出力ポート22a,22bから出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速光通信システムや光部品の分散トレランスを評価するための光ストレス発生装置及び光ストレス発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の大容量化に伴い、位相変調方式やコヒーレント変調方式などのデジタルコヒーレント方式を用いた光通信システムの研究が進められている。デジタルコヒーレント方式を用いた光通信システムにおいては、波長分散やPMD(Polarization−Mode Dispersion)などの分散性ストレスを加えてジッタやBER(Bit Error Rate)を測定する分散トレランスの試験が重要となる。ここで、波長分散とは、光ファイバを伝搬する光信号が波長によって異なる速度で伝搬する現象をいい、PMDとは2つの直交偏波モード成分間に伝搬時間差を生じて波形劣化を引き起こす現象をいう。
【0003】
光通信システムのトレランス試験としては、伝送信号にジッタを生じさせてアイ波形を評価するジッタトレランスや、OSNR(Optical Signal Noise Ratio)を変化させてBERを評価するOSNRトレランスや、波長分散を加えたCD(Chromatic Dispersion)トレランスや、PMDを加えたPMDトレランスの評価が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の装置は、波長分散付与部を備え、以下のように動作する。2つの光伝送装置の間に装置と評価対象である光モジュールを接続する。波長分散付与部は、2つの光伝送装置が接続されるべき伝送路が有する伝送特性と等価の伝送特性を付与する。これにより、特許文献1の装置は、評価対象である光モジュールの伝送特性の評価を可能にする。
【0005】
図7に、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)を用いた波長分散付与部の一例を示す。VIPAを用いた波長分散付与部は、コリメートレンズ42と、ラインフォーカシングレンズ43と、VIPA分光素子44と、焦点レンズ45と、自由曲面ミラー46と、を備える。光ファイバ41から出射され、コリメートレンズ42を通過した光は、VIPA分光素子44を通った後、焦点レンズ45で集光されて自由曲面ミラー46に入射し反射される。そして、自由曲面ミラー46で反射された光は、VIPA分光素子44とコリメートレンズ42を介して光ファイバ41に戻される。VIPA分光素子44は、反射率がほぼ100%の膜と平行に配置された反射率100%未満の2つの膜間での多重反射によって分光を行うものである。このVIPA分光素子44への再入射位置を自由曲面ミラー46によって制御することにより所望の波長分散を得ることができる。
【0006】
図8に、分散補償ファイバグレーティングを用いた波長分散付与部の一例を示す。分散補償ファイバグレーティングを用いた波長分散付与部は、サーキュレータ51と、分散補償ファイバグレーティング52と、を備える。光信号はサーキュレータ51を介して分散補償ファイバグレーティング52に入射され分散補償ファイバグレーティング52で反射して、再びサーキュレータ51を介して取り出される。分散補償ファイバグレーティング52は格子の周期がファイバの長手方向に変化しており、波長の違いによって分散補償ファイバグレーティング52での反射位置は異なる。そのため、波長により光路長差、すなわち群遅延時間が発生する。分散補償ファイバグレーティング52の温度変化や引張りによって、波長に対する反射位置を変化させることができるため、分散量を可変することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−86955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デジタルコヒーレントを用いた光通信システムは、波長分散や偏波モード分散等の線形歪みに対して極めて強い。このため、分散トレランスの試験をするためには、従来のOOK(On−Off−Keying)に比べて10倍以上という大きな分散値(略10000ps/nm)の分散性ストレスを与える必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1のように、波長分散付与部にVIPAを用いた方法では、発生することができる波長分散は−2000ps/nm〜+2000ps/nm程度までである。この10倍の波長分散値を発生させるためには、10倍の大きさの光学系を形成するか、或いは、VIPAから出力した光をサーキュレータで取り出して次段のVIPAに入力する、10段のタンデム接続を行って大きな分散値を発生させることが必要となる。
【0010】
波長分散付与部に分散補償ファイバグレーティングを用いた方法でも、発生することができる波長分散は−2000ps/nm〜+2000ps/nmである。この10倍の波長分散値を発生させるためには、分散補償ファイバグレーティングから出力した光をサーキュレータで取り出して次の分散補償ファイバグレーティングに入力することにより、10段のタンデム接続を行って大きな分散値を発生させることが必要となる。
【0011】
上記のように、特許文献1の装置は、デジタルコヒーレントを用いた光通信システムにおける分散性ストレスを与えようとすると、装置が大掛かりになってしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、任意の遅延ストレスを簡易に与えて分散トレランスの試験をすることが可能な光ストレス発生装置及び光ストレス発生方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明の光ストレス発生装置は、2つの光入力ポート及び2つの光出力ポートを有し、前記光入力ポートの一方に変調信号光が入力され、入力された前記変調信号光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する光合分波部(12)と、前記光出力ポートの一方からの前記変調信号光を増幅して前記光入力ポートの他方に出力する利得が可変の光増幅部(13)と、を備え、前記光合分波部は、前記光入力ポートの他方に入力された前記光増幅部からの変調信号光と前記光入力ポートの一方に入力された変調信号光とを合波し、合波した光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する。
【0014】
光増幅部を備えるため、変調信号光がループする回数を制御することで、変調信号光に任意の遅延ストレスを与えることができる。光出力ポートの一方、光増幅部及び入力ポートの他方を用いてループを構成しているため、変調信号光と光増幅部で増幅した変調信号光との合成と、その合成した変調信号光の増幅と、を繰り返すことができる。これにより、変調信号光にループによる遅延を付加した遅延ストレスを与えることができる。したがって、本願発明の光ストレス発生装置は、任意の遅延ストレスを簡易に与えて分散トレランスの試験をすることができる。
【0015】
本願発明の光ストレス発生装置では、前記光出力ポートの一方と前記光増幅部との間の光路に挿入され、前記光出力ポートの一方からの光を減衰させる光アッテネータ(24)をさらに備え、前記光増幅部は、利得が一定であってもよい。
本発明により、光増幅部で発生させる遅延ストレスを可変にすることができる。
【0016】
本願発明の光ストレス発生装置では、前記光出力ポートの一方と前記光増幅部との間の光路又は前記光増幅部と前記光入力ポートの他方との間の光路に挿入され、入力された光の周波数をシフトしてプラス又はマイナス回折次数の光を出力する光周波数シフタ(35)をさらに備えてもよい。
光周波数シフタを備えるため、光出力ポートの一方、光増幅部及び入力ポートの他方で構成されるループを変調信号光が周回する度に、変調信号光の周波数をシフトさせることができる。これにより、本願発明の光ストレス発生装置は、変調信号光に波長変化に応じた遅延を付加することができる。
【0017】
本願発明の光ストレス発生装置では、前記光増幅部は、半導体光増幅器であってもよい。
半導体光増幅器を用いることによりループ長を短くすることができ、細かいステップで変化する遅延ストレスを与えることができる。
【0018】
上記目的を達成するために、本願発明の光ストレス発生方法は、光合分波部の光入力ポートの一方に変調信号光を入力し、入力された前記変調信号光を2つに分岐して、前記光合分波部の光出力ポートの両方から出力する光合分波手順(S101)と、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を増幅して前記光入力ポートの他方に入力する光増幅手順(S102)と、前記光入力ポートの他方に入力された光と前記光入力ポートの一方に入力された変調信号光とを合波し、合波した光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する光出力手順(S103)と、を順に有する。
【0019】
光合分波手順及び光増幅手順を有するため、変調信号光を遅延によって時間的に広げ、変調信号光に遅延ストレスを与えることができる。光出力ポートの一方及び入力ポートの他方を用いてループを構成しているため、光合分波部に入力された変調信号光と増幅した変調信号光との合成と、その合成した変調信号光の増幅と、を繰り返すことができる。これにより、任意の遅延ストレスを簡易に与えて分散トレランスの試験をすることができる。
【0020】
本願発明の光ストレス発生方法では、前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を増幅する光増幅部の利得を変えることにより、遅延量による前記変調信号光の時間的な広がりを任意に設定できるようにしてもよい。
【0021】
本願発明の光ストレス発生方法では、前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を減衰させ、前記変調信号光を一定の利得で増幅してもよい。
【0022】
本願発明の光ストレス発生方法では、前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を、さらに前記変調信号光の周波数をシフトしてプラス又はマイナス回折次数の光を出力してもよい。
光増幅手順において変調信号光の周波数をシフトさせるため、光出力ポートの一方及び入力ポートの他方で構成されるループを変調信号光が周回する度に、変調信号光の周波数をシフトさせることができる。これにより、本願発明の光ストレス発生方法は、変調信号光に波長変化に応じた遅延を付加することができる。
【0023】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、任意の遅延ストレスを簡易に与えて分散トレランスの試験をすることが可能な光ストレス発生装置及び光ストレス発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る光ストレス発生装置の一例を示す。
【図2】本実施形態に係る光ストレス発生方法の一例を示す。
【図3】本実施形態に係る変調信号光の一例であり、(a)は変調信号光Lを示し、(b)は1周目の変調信号光Lを示し、(c)は1周目の変調信号光LAMPを示し、(d)は2周目の変調信号光L及び変調信号光Lを示す。
【図4】実施形態2に係る光ストレス発生装置の一例を示す。
【図5】実施形態3に係る光ストレス発生装置の一例を示す。
【図6】変調信号光Lの一例であり、(a)は光周波数シフタ35がプラス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する遅延量を示し、(b)は光周波数シフタ35がプラス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する光パワーを示し、(c)は光周波数シフタ35がマイナス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する遅延量を示し、(d)は光周波数シフタ35がマイナス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する光パワーを示す。
【図7】VIPAを用いた波長分散付与部の一例を示す。
【図8】分散補償ファイバグレーティングを用いた波長分散付与部の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る光ストレス発生装置の一例を示す。本実施形態に係る光ストレス発生装置は、光入力部11と、光合分波部12と、光増幅部13と、制御部17と、光出力部18と、を備える。光入力部11に変調信号光Lが入力され、遅延ストレスを与えた変調信号光Lを光出力部18から出力する。
【0028】
光合分波部12は、2つの光入力ポート21a及び21bと、2つの光出力ポート22a及び22bと、を備える。本実施形態では、光入力ポートの一方を光入力ポート21aとし、光入力ポートの他方を光入力ポート21bとし、光出力ポートの一方を光出力ポート22aとし、光出力ポートの他方を光出力ポート22bとして説明する。
【0029】
光合分波部12は、光入力ポート21a又は光入力ポート21bに入力された光を光出力ポート22a及び22bの両方から出力する。光入力ポート21a及び光入力ポート21bの両方から光が入力されたときは、光合分波部12は、光入力ポート21a及び光入力ポート21bの両方の光を合波して、合波光を光を光出力ポート22a及び22bの両方から出力する。
【0030】
光増幅部13は、入力された光を増幅する。光増幅部13には、例えば誘導放出で光を増幅する半導体光増幅器を用いることができる。光増幅部13は、利得が可変である。この場合、制御部17は、光増幅部13の利得を可変する。例えば、制御部17は、光増幅部13の駆動電流を可変する。
【0031】
図2に、本実施形態に係る光ストレス発生方法の一例を示す。本実施形態に係る光ストレス発生方法は、光合分波手順S101と、光増幅手順S102と、光出力手順S103と、を順に有する。
【0032】
光合分波手順S101では、光合分波部12の光入力ポート21aに変調信号光Lを入力し、入力された変調信号光Lを2つに分岐して、光合分波部12の光出力ポート22a及び22bから出力する。例えば、光合分波部12は、光入力ポート21aに入力された変調信号光Lを、変調信号光L及び変調信号光Lの2つの変調信号光に分岐する。この時点では、変調信号光L及び変調信号光Lは、遅延ストレスを与えられていない。光合分波部12は、光出力ポート22aから変調信号光Lを出力し、光出力ポート22bから変調信号光Lを出力する。変調信号光Lは、光増幅部13に入力される。変調信号光Lは、光出力部18に入力される。光出力部18は、遅延ストレスを与えられていない変調信号光Lを出力する。
【0033】
光増幅手順S102では、光増幅部13は、光合分波手順S101で光出力ポート22aから出力した変調信号光Lを増幅し、増幅した変調信号光LAMPを光入力ポート21bに出力する。このとき、光合分波手順S101で光出力ポート22aから出力した変調信号光Lも、制御部17が光増幅部13の利得を可変し、変調信号光Lを増幅してループ回数を制御することにより、変調信号光Lに任意の遅延ストレスを与えることができる。
【0034】
光出力手順S103では、光増幅手順S102で増幅した変調信号光LAMPが光入力ポート21bに入力され、光入力ポート21aに変調信号光Lが入力される。そして、光合分波部12は、変調信号光LAMPと変調信号光Lとを合波し、合波した変調信号光を2つに分岐する。そして、光合分波部12は、分岐した変調信号光を変調信号光L及び変調信号光Lとして光出力ポート22a及び22bから出力する。光出力部18は、変調信号光Lを出力する。光出力部18は、変調信号光Lを出力する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る変調信号光の一例であり、(a)は変調信号光Lを示し、(b)は1周目の変調信号光Lを示し、(c)は1周目の変調信号光LAMPを示し、(d)は2周目の変調信号光L及び変調信号光Lを示す。1周目の変調信号光L及び変調信号光Lは、変調信号光Lが2分岐された光であるため、図3(a)及び図3(b)に示すように、光強度が小さい。この時点では、まだ遅延ストレスが与えられていない。変調信号光LAMPは、1周目の変調信号光Lの光増幅部13の利得を変え遅延量による時間的な広がりを与えることで、図3(b)及び図3(c)に示すように、変調信号光Lに遅延が生じている。2周目の変調信号光L及び変調信号光Lは、変調信号光LAMPと変調信号光Lとを合波して2分岐した光であるため、図3(d)に示すように、遅延ストレスが与えられている。したがって、本実施形態に係る光ストレス発生装置は、任意の遅延量の遅延ストレスが与えられている変調信号光Lを光出力部18から出力することができる。
【0036】
ここで、図1に示す光合分波部12は、変調信号光LAMPと変調信号光Lとを合波した変調信号光を変調信号光Lとして光出力ポート22aから出力する。このように、光出力ポート22a、光増幅部13及び光入力ポート21bは、ループを構成するように接続されている。光出力ポート22aから出力された変調信号光Lが再び光増幅部13で増幅されるとき、変調信号光LAMPにはさらに遅延ストレスが与えられる。このように、変調信号光Lがループを周回する度に、変調信号光Lに与える遅延ストレスを大きくすることができる。したがって、本実施形態に係る光ストレス発生装置は、変調信号光LAMPに大きな分散値の遅延ストレスを簡易に与えて波長分散トレランスの試験を行うことができる。
【0037】
なお、光出力ポート22bと光出力部18との間の光路に、DGD(Differentiol Group Delay)を付加するDGD発生部をさらに備えてもよい。これにより、変調信号光Lに、波長分散と群遅延の両方を付加することができる。
【0038】
(実施形態2)
図4に、実施形態2に係る光ストレス発生装置の一例を示す。本実施形態に係る光ストレス発生装置は、実施形態1で説明した光増幅部13及び制御部17に代えて、光増幅部23と、光アッテネータ24と、制御部27と、を備える。以下、光増幅部23、光アッテネータ24及び制御部27について説明する。
【0039】
光増幅部23は、利得が一定である。光アッテネータ24は、光出力ポート22aと光増幅部13との間の光路に挿入され、光出力ポート22aからの変調信号光Lを減衰させる。制御部27は、光アッテネータ24の減衰量を可変する。
【0040】
本実施形態に係る光ストレス発生方法は、図2に示す光増幅手順S102において、光合分波手順S101で光出力ポート22aから出力した変調信号光Lを減衰させ、変調信号光Lを一定の利得で増幅する。例えば、光アッテネータ24は、光出力ポート22aからの変調信号光Lを減衰させる。そして、光増幅部23は、一定の利得で光アッテネータ24からの変調信号光LATTを一定の利得で増幅して変調信号光LAMPを出力する。このとき、制御部27は、変調信号光LAMPの遅延量が広がる程度に、光アッテネータ24に変調信号光Lを減衰させる。
【0041】
実施形態2に係る光ストレス発生装置は、光増幅部23、光アッテネータ24及び制御部27を備えるため、変調信号光Lに遅延を与えた変調信号光LAMPを生成することができる。光合分波部12は、変調信号光LAMPと変調信号光Lとを合波した変調信号光を変調信号光Lとして光出力ポート22bから出力する。これにより、本実施形態に係る光ストレス発生装置は、遅延ストレスが与えられている変調信号光Lを光出力部18から出力することができる。
【0042】
(実施形態3)
図5に、実施形態3に係る光ストレス発生装置の一例を示す。本実施形態に係る光ストレス発生装置は、実施形態1で説明した光ストレス発生装置に、さらに、光周波数シフタ35と、駆動信号発生部36と、を備える。また、本実施形態に係る光ストレス発生装置は、実施形態1で説明した制御部17に代えて制御部37を備える。
【0043】
光周波数シフタ35は、光出力ポート22aと光増幅部13との間の光路に挿入され、駆動信号に従って、入力された光の周波数を、周波数Δfシフトする。駆動信号発生部36は、光周波数シフタ35の駆動信号を発生する。光周波数シフタ35は、例えば音響光学素子を用いて光周波数のアップシフトまたはダウンシフトするデバイスである。
【0044】
本実施形態に係る光ストレス発生方法は、図2に示す光増幅手順S102において、光周波数シフタ35が、光合分波手順S101で光出力ポート22aから出力した変調信号光Lの周波数をシフトし、変調信号光Lを出力する。光増幅部13は、変調信号光Lを増幅し、増幅した変調信号光LAMPを光入力ポート21bに出力する。このとき、変調信号光Lの遅延量が広がる程度に、制御部37が光増幅部13の利得を可変して、変調信号光Lを増幅する。これにより、変調信号光LAMPに遅延ストレスが付与される。
【0045】
ここで、本実施形態に係る光ストレス発生装置は、光出力ポート22aと、光周波数シフタ35と、光増幅部13と、光入力ポート21bと、がループを構成している。光合分波部12と光周波数シフト35と光増幅部13とで構成されるループを通る光は、ループ通過回数(n)分の周波数シフト(n・Δf)し、またループ長に相当する遅延(n・Δτ)を受ける。
【0046】
また、音響光学素子は、音響波が光学媒質中に入射すると、屈折率をもった波が生じ、正弦波グレーティングのように回折される。光の偏向角度は、次式に示すように、音響波周波数に比例する。
【0047】
θ=λ・Δf/V
ただし、θは0次光と1次光n角度であり、λは波長(空気中)であり、Δfは周波数シフトさせる音響波周波数であり、Vは音響波速度である。音響波の方向を変えることで、プラス次数(+Δf)とマイナス次数(−Δf)を選択することができる。
【0048】
波長分散の傾きの選択は、回折次数のプラス/マイナスを選択することによって行う。波長分散量は、例えば設定したい遅延量の半値に相当するループ周回数の光パワーが3dBとなるように光増幅部13の増幅率を調整する。
【0049】
ループ長は小さいことが好ましい。PLC(Planar Lightwave Circuit)技術を用いてループ長を小さくすることができる。例えば、ループ長を5cm(光学距離)、音響波周波数を1GHzとした場合には、ループ1周回で1GHzの周波数シフトと250ps程度の遅延を与えることができる。この場合、40周回した光は、40GHz(1550nmの波長で約400ps)の音響波周波数と10000psの遅延が与えられ、波長分散25000ps/nmに相当する。音響波周波数を500MHzにすれば、2倍の波長分散50000ps/nmの設定が可能となる。
【0050】
図6は、変調信号光Lの一例であり、(a)は光周波数シフタ35がプラス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する遅延量を示し、(b)は光周波数シフタ35がプラス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する光パワーを示し、(c)は光周波数シフタ35がマイナス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する遅延量を示し、(d)は光周波数シフタ35がマイナス回折次数の変調信号光Lを出力する場合の周波数に対する光パワーを示す。変調信号光Lは、ループを周回する度に周波数が+Δfずつシフトされる。このため、変調信号光Lの周波数は、ループを周回する回数に対応した複数の周波数を含んでいる。例えば、ループを8回周回すると、変調信号光Lには8つの周波数が含まれる。
【0051】
なお、光周波数シフタ35は、光出力ポート22a、光増幅部13及び光入力ポート21bで構成されるループ内のいずれの位置に挿入されていてもよい。例えば、光増幅部13と光入力ポート21bとの間の光路に挿入されていてもよい。この構成であっても、本実施形態に係る光ストレス発生装置と同様の作用・効果を奏する。
【0052】
また、本実施形態の光ストレス発生装置は、実施形態1の光ストレス発生装置に代えて、実施形態2の光ストレス発生装置を用いてもよい。この場合、光周波数シフタ35は、光出力ポート22a、光アッテネータ24、光増幅部23及び光入力ポート21bで構成されるループ内のいずれの位置に挿入されていてもよい。例えば、光出力ポート22aと光アッテネータ24との間の光路に挿入されていてもよいし、光増幅部13と光入力ポート21bとの間の光路に挿入されていてもよい。この構成であっても、本実施形態に係る光ストレス発生装置と同様の作用・効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
11:光入力部
12:光合分波部
13、23:光増幅部
17、27、37:制御部
18:光出力部
21a、21b:光入力ポート
22a、22b:光出力ポート
24:光アッテネータ
35:光周波数シフタ
36:駆動信号発生部
41:光ファイバ
42:コリメートレンズ
43:ラインフォーカシングレンズ
44:VIPA分光素子
45:焦点レンズ
46:自由曲面ミラー
51:サーキュレータ
52:分散補償ファイバグレーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの光入力ポート及び2つの光出力ポートを有し、前記光入力ポートの一方に変調信号光が入力され、入力された前記変調信号光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する光合分波部(12)と、
前記光出力ポートの一方からの前記変調信号光を増幅して前記光入力ポートの他方に出力する利得が可変の光増幅部(13)と、
を備え、
前記光合分波部は、前記光入力ポートの他方に入力された前記光増幅部からの変調信号光と前記光入力ポートの一方に入力された変調信号光とを合波し、合波した光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する光ストレス発生装置。
【請求項2】
前記光出力ポートの一方と前記光増幅部との間の光路に挿入され、前記光出力ポートの一方からの光を減衰させる光アッテネータ(24)をさらに備え、
前記光増幅部は、利得が一定である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ストレス発生装置。
【請求項3】
前記光出力ポートの一方と前記光増幅部との間の光路又は前記光増幅部と前記光入力ポートの他方との間の光路に挿入され、入力された光の周波数をシフトしてプラス又はマイナス回折次数の光を出力する光周波数シフタ(35)をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ストレス発生装置。
【請求項4】
前記光増幅部は、半導体光増幅器である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ストレス発生装置。
【請求項5】
光合分波部の光入力ポートの一方に変調信号光を入力し、入力された前記変調信号光を2つに分岐して、前記光合分波部の光出力ポートの両方から出力する光合分波手順(S101)と、
前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を増幅して前記光入力ポートの他方に入力する光増幅手順(S102)と、
前記光入力ポートの他方に入力された光と前記光入力ポートの一方に入力された変調信号光とを合波し、合波した光を2つに分岐して前記光出力ポートの両方から出力する光出力手順(S103)と、
を順に有する光ストレス発生方法。
【請求項6】
前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を増幅する光増幅部の利得を変えることにより、遅延量による前記変調信号光の時間的な広がりを任意に設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の光ストレス発生方法。
【請求項7】
前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を減衰させ、前記変調信号光を一定の利得で増幅する
ことを特徴とする請求項5に記載の光ストレス発生方法。
【請求項8】
前記光増幅手順において、前記光合分波手順で前記光出力ポートの一方から出力した前記変調信号光を、さらに前記変調信号光の周波数をシフトしてプラス又はマイナス回折次数の光を出力する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の光ストレス発生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−8103(P2012−8103A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146723(P2010−146723)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】