説明

光スリップリングを有する促進耐候性試験装置

【課題】センサーが試料と光源の間に置かれた場合、試料面の一部に陰影を招いてしまう。センサーが試料面の後に置かれた場合、試料によって部分的に陰影ができてしまう。
【解決手段】暴露面において試料を取り付けるための試験槽内に回転枠を有する屋内促進耐候性試験装置は、回転枠に接続された集光装置を備える。集光装置は、枠シャフトと同心である光ロータリージョイントに結合して動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね促進耐候性試験装置の改良に関するものであり、さらに詳細には、集光装置とセンサーとの間に配置された光スリップリングが装備された屋内促進耐候性試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
促進耐候性試験装置は、長期間にわたる特定の材料の挙動を予想するために試料に雨、風、日光などの悪天候条件のシミュレーションを行うために使用される。たとえば、何年も試験結果を待つことはできない新規ペイント塗料の設計者は、外観または性能が悪化することなく何年もその製品が厳しい天候条件に耐えることができるか否か知りたいと思うであろう。促進耐候性試験装置は、もっと短期間で所望の条件のシミュレーションを行うようにプログラムすることができる。屋内促進耐候性試験装置の一部のモデルは、回転枠を使用して、試料を取り付け、試料を人工環境に晒して、湿度、温度、風、大気圧、露光などの促進耐候性条件のシミュレーションを行う。このようなモデルは、米国特許第5,503,032号および米国特許第5,646,358号で説明されており、これらの特許の開示内容全体は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0003】
所望の変化する天候条件を再現するように変化させるべき環境パラメータの一つは、露光である。光は、加速された日常周期で太陽からの輻射エネルギーのシミュレーションを行うことが多い。また、光源は、試験領域における二次熱源を構成する可能性がある。強い光が略球形試験領域の中心に置かれた場合、その光から一定の距離に球体の表面によって創出された試験面上に置かれた全ての試料は、類似したレベルの光の活動に晒される。試験面に対するその活動の強度を調整し、促進耐候性条件を制御して、有意な試験結果を得るために光源の強度を綿密に監視しなければならない。
【0004】
従来技術と、米国特許第5,503,032号および第5,646,358号において開示されるような試験槽内の光源の調整および監視は、二つの思わしくない方法のいずれかで行われ、これらの特許の開示内容全体は、引用により本明細書に組み入れられる。第一の方法においては、光センサーが装備された電池式無線放射計検出器を試料のそばの回転試料枠に取り付ける。第二の方法においては、試料面からある程度離れた一定の地点にて固定軸上にフロントエンド光入力センサーを取り付ける。両構成には、最終的には試験結果内における複雑な数学的補正係数の導入または検出材料の急激な劣化となる重大な欠点がある。
【0005】
第一の従来構成においては、無線放射計検出器は、試料の試験面上に位置するが、熱、湿度、圧力、試料面の回転に付随した重力などの他の環境要因に晒される。無線放射計検出器は、固定された放射計および放射計全体に信号を中継しなければならない。耐候性装置試験槽の苛酷な環境内に置かれた脆弱な電気光学センサーは、装置の促進耐候性条件に晒される。検出器が連続的に測定することができる有効時間は、装置のデータ記憶能力および/または電池寿命によって限定される。また、検出された光は、この小さな装置の限られた処理能力を用いて検出器によって電気信号に変換されなければならず、その後、この小さな装置は、試料の回転平面から電気スリップリングを介して制御機構にデータを伝送する。
【0006】
第二の従来構成は、移動する試料面の外側で前記槽内の固定された地点にて、可能なら光導波路に取り付けられた光センサーを使用することからなる。現行の耐候性装置においては、このフロントエンド光学品は、暴露室を出るランプからの光をフォトダイオードに導く石英棒からなる。フォトダイオードは、この光を電気信号に変換し、電気信号はその後、制御装置の電子回路に送られる。異なった場所で測定が行われた結果として、この光の実測強度は、試料平面において受け取られる光と異なるものとなり、それで、この偏差を補正するために補正係数を結果に導入しなければならない。これらの補正係数は、推測に基づいて、一定の促進耐候性条件下での同じ試料反応の最終的な判断を害する誤差係数を招いてしまう。センサーも、試料と光源の間に置かれた場合、試料面の一部に陰影を招いてしまう。センサーが試料面の後に置かれた場合、試料によって部分的に陰影ができてしまう。
【0007】
温度など、他の試験槽パラメータは、回転枠から電気スリップリングを介して、固定された測定室に中継される。電気スリップリングは、回転体から固定体に電気信号を転送することができる、玉軸受、回転子、固定子が装備された装置である。電気スリップリングにおいては、信号は、導電ブラシを介して回転導体から固定導体に渡される。電気スリップリングは電気信号を中継するだけであることから、光センサーからの光信号は、まず、電子監視制御装置に中継される情報用に電気信号に変換されなければならない。
【0008】
促進耐候性試験装置の分野においては、強制的な短期繰り返し条件を実際の長期的耐候性条件と相関づけるために、複雑な数学的外挿公式が既に必要とされている。光監視装置のフロントエンド光学品を試料近傍以外の任意の場所に置くという欠点のために、促進耐候性試験装置に補正係数を追加する必要性が生じる。また、補正係数の適用も、阻止される。
【0009】
したがって、高感度の電気光学構成部材を促進耐候性環境外に維持しながら回転試料面での放射照度測定を助長する耐候性システム構成の必要性が、当技術分野に存在する。
【発明の開示】
【0010】
本開示内容では、暴露面内に試料を取り付けるために使用される回転枠を試験槽内に有する屋内促進耐候性試験装置について説明する。枠には、光ロータリージョイントに機能上接続された光導波路によって固定集光装置と動作上結合する集光装置が試料平面上で装備される。一実施形態においては、光スリップリングが光ロータリージョイントとして使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で開示する諸原理を進展させて理解するために、図面に示される好適な実施形態について述べると共に、その説明のため具体的な言葉を使用する。しかしながら、了解事項として、それによる範囲の限定を意図してはいない。図示する装置における類似の改変および更なる変更や、類似の更なる応用は、本開示が関係する技術分野の当業者が通常思い付くのと同様に、予想されるとして、ここで図示して開示される諸原理である。
【0012】
図1は、本開示内容の一つの態様として、回転枠1を備える屋内促進耐候性試験装置を示している。前記回転枠1は、試料3を暴露面4に取付可能に、試験槽2内に配置され、光源5まわりに回転される。回転枠1はシャフト6を備え、このシャフト6は、回転枠1を試験槽2内に支持し、かつ、回転軸まわりの回転枠1の回転を容易にする。屋内促進耐候性試験装置は、さらに、暴露面4において回転枠1に接続される集光装置7と、前記シャフトと同心に配置される光ロータリージョイント8と、集光装置7と光ロータリージョイント8とに結合して動作する光導波路9とを備える。
【0013】
一実施形態において、回転枠1は、本装置の試験槽2の上壁を貫通する上部支持部材すなわちシャフト6によって支持される。図1は好適な実施形態を示しており、光ロータリージョイント8は、駆動モーターとシャフト6との間で、シャフト6に沿って軸方向に配置されている。選択される光ロータリージョイント8のタイプや形状寸法、シャフト6の長さ、モーターのタイプに基づいて、これら三つの要素は、軸方向に配置されるか、垂直軸以外の方向に配置される可能性があることは、当業者によって理解される。他の好適な実施形態において、光ロータリージョイント8は、シャフト6の役目をするのに十分な長さと機械的強度とを有する。回転枠1を駆動するモーターは、歯車などを使用して、シャフト6および光ロータリージョイント8の軸配置からずらすこともできる。
【0014】
図1に示され、上部垂直シャフト6と光ロータリージョイント8とによって保持される回転枠1は、試験槽2の底壁32より上方に一定の距離を隔てて、試験槽2の上壁を介して整列されるが、本開示内容では、任意の適切な促進耐候性試験状況の再現に必要で、かつ、任意の他に可能な回転支持によって支持される、任意の他の面に沿う試験槽2内の回転枠1の回転も意図していることは、当業者によって理解される。図1において、回転枠1は、上部から支持されて示されるが、回転枠1は、試験槽2の限られた空間内で、底部または任意の可能な非垂直配置で、部分的に支持されてもよい。
【0015】
試料3は、図1から図3では矩形板として示されるが、試料3は、回転枠1に取り付けることができる限り、任意のタイプや形状寸法にしてもよいことは、当業者によって理解される。非平坦試料3の場合、非平面の試料3の使用によって作り出される試料面が、光源5を軸として展開する暴露面4をさらに作り出すことは、当業者によって理解される。
【0016】
暴露面4において回転枠1に接続された集光装置7は、余弦タイプの受容体13と散光器14とで構成された入射光学系から構成することができる。余弦タイプの受容体13は、余弦法則に基づいて散光器の読み取りを補正するように設計され、一般に白色の成形プラスチック製で、特別設計タイプの散光受容体に関連することが、当業者によって理解される。余弦法則とは、表面の放射照度と入射角との関係を指す。光強度は、反射角の余弦に比例して減少する。というのは、有効表面積は前記角度が増すにつれて減るからである。反射される入射角が異なり得る回転枠1に試料3が位置する場合に、試料3上で受光された光の強度を自動的に補正することが、余弦タイプの受容体13および散光器14によりなされる。好適な実施形態として特定タイプの入射光学系7を開示するが、タイプや技術が類似した任意の他の検出器を使用することができることは、当業者によって理解される。
【0017】
図2および図3に示す好適な実施形態において、集光装置7は、試料3の代わりに、回転枠1上に設置される。図2は、集光装置7が枠1の下半分に設置される実施形態を示し、図3は、集光装置7が枠1の上半分に設置される実施形態を示す。了解事項として、二ヵ所のみを示すが、集光装置7は、回転枠1上の中央位置を含め、暴露面4に沿って任意の場所に設置することができる。
【0018】
光導波路9は、集光装置7を光ロータリージョイント8に結合して動作するように示される。図4は、感光素子19を備えるセンサー10に光ロータリージョイント8を接続するために、第二の光導波路が使用される状況を図示している。第一の好適な実施形態においては、光導波路9は、光ファイバーケーブルである。光は、ある場所から次の場所へ移動する際、光子によって構成される。光ファイバーケーブルは、内部全反射のプロセスによって軸線に沿って光を伝達する円筒形の誘電体導波路に沿って光子が連続的に反射する透明管である。回転枠1上の集光装置7などの第一の場所にて光ファイバーケーブルに入る光は、光導波路9を介して光ロータリージョイント8に移送される。第二の好適な実施形態においては、光パイプは、光子を集光装置7から光ロータリージョイント8へ移動させるために使用される。光パイプは、一般的に、反射性および透過性が高い材料で作られた微細構造のプリズム被膜を巻上げて作られる、と知られている。この微細構造の第一ボリュームを通過後、光子は、一連のプリズム間の表面で反射する。光ファイバーケーブルや光パイプに加えて、他の適切な光伝達手段によって光を伝送してもよいことは、当業者によって理解される。
【0019】
好適な一実施形態において、光ロータリージョイントは、光ファイバーロータリージョイント(FORJ)である。回転枠1から非回転電子監視制御装置23にデータを伝送するための電気スリップリングの使用は従来技術に開示されるが、促進耐候性試験装置の分野において、回転枠1から光を伝送するための光スリップリングの使用は、新たなものである。FORJは、回転構造体から固定構造体への、電力、電気信号、光信号の伝送を可能にする装置である。FORJの光伝送能力は、米国特許第4,492,427号において完全に説明されている。他の全ての電力および制御信号は、FORJ内にも備えられる標準的な銅製スリップリングを通過し、回転枠1から固定装置への他の情報および計測の伝送を可能にする。
【0020】
光ロータリージョイント8の一つの可能な構成が図1から図3に示されているが、ここでは、このジョイントは、光導波路9を介して、集光装置7からロータリージョイント8に、およびロータリージョイント8からセンサー10に、単一の光信号のみを伝送することが示されており、また、単一のデータ信号22のみが、集光装置7をロータリージョイント8に、およびロータリージョイント8をセンサー10に、電子監視制御装置23への第二のデータ信号21を介して接続するとされているが、形状寸法、技術的要件、光信号およびデータ信号の数に基づいた複数の可能な構成を図ってもよいことは、当業者によって理解される。
【0021】
図4は、本発明による光検出システムの模式図である。センサー10は、試験槽2の外に配置され、かつ、光源5の出力が調整されるように、光ロータリージョイント8に結合して動作する(21)。好適な実施形態におけるセンサー10には、制御装置17と、マイクロプロセッサ18と、感光素子19とが備えられる。好適な実施形態においては、感光素子は、分光放射計である。分光放射計は、分光光度計の系統に属する特定のタイプの感光素子であり、動作して光の可視領域におけるスペクトル分布を測定するように設計されていることは、光計測の当業者によって理解される。あるタイプの感光素子19を好適な実施形態として開示するが、了解事項として、任意の帯域幅および可視領域外の任意のスペクトル分布を対象とした任意のタイプの感光素子を使用することができる。例えば、試料3を赤外線条件について試験しなければならない場合、赤外線光源5が使用され、この波長に反応することができる感光素子19がセンサー10内で使用される。
【0022】
好適な一実施形態においては、センサーには、少なくとも、試験槽2内で光源5の強度を調整かつ制御するために使用される制御装置17が備えられる。マイクロプロセッサ18は、感光素子19からのデータを処理および分析するために使用される。センサーからの情報は、試験結果内での更なる参照に備えて記録されるように、電子監視制御装置23に送ることができる。
【0023】
別の可能な実施形態においては、光ロータリージョイント8は、電子監視制御装置23によって直接処理されるように、光導波路9からの可視光を電子データに転送するセンサーも備えることができる。
【0024】
更に、特定の種々の好適な実施形態を示しながら説明してきたが、本開示内容の主旨および教示内容から逸脱することなく、種々の変更および改変を行うことができることが当業者には明らかである。先の説明および添付図面に定める事柄は、例示としてのみ提示されており、制限するものとしてではない。本開示内容の実際の範囲は、関連技術に基づいて適切な観点で見られるとき、特許請求の範囲で定義されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
特定の種々の実施形態を図面中に示す。しかしながら、了解事項として、本開示内容は、添付図面に示す配置および手段に限定されない。
【図1】本開示内容による屋内促進耐候性試験装置の三次元斜視図である。
【図2】本開示内容による屋内促進耐候性試験装置における上部区画室の内側の拡大三次元斜視図である。
【図3】本開示内容による屋内促進耐候性試験装置における上部区画室の内側の三次元正面図である。
【図4】本発明による光検出システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源まわりに回転すると暴露面を規定するように、試料を取付可能に、試験槽内に枠を備え、
前記枠は、前記試験槽内に前記枠を支持すると共に前記枠の回転を容易にするシャフトを備え、
前記暴露面において前記枠に接続された集光装置と、
前記シャフトと同心に配置された光ロータリージョイントと、
前記集光装置と前記光ロータリージョイントとに結合して動作する光導波路と
をさらに備える屋内促進耐候性試験装置。
【請求項2】
前記試験槽の外部に配置されると共に、前記光源の出力を調整可能に、前記光ロータリージョイントに結合して動作するセンサーをさらに備える
請求項1に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項3】
前記集光装置は、余弦タイプの光受容体と、散光器とを備える公知の入射光学系である
請求項1に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項4】
前記光導波路は、光ファイバーケーブル、光パイプ、または他の光伝達手段である
請求項1に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項5】
前記センサーは、制御装置と、マイクロプロセッサと、感光素子とを備える
請求項2に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項6】
前記感光素子は、分光放射計である
請求項5に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項7】
第二の光導波路が、前記センサーと前記光ロータリージョイントとを結合して動作する
請求項1に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項8】
導体が、前記光ロータリージョイントを介して、前記感光素子と前記入射光学系とを結合して動作する
請求項5に記載の屋内促進耐候性試験装置。
【請求項9】
前記集光装置は、前記試料に隣接すると共に、前記試料と同じ幾何学的平面内で前記暴露面にて受光する
請求項1に記載の屋内促進耐候性試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−3088(P2008−3088A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−162212(P2007−162212)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(502117583)アトラス・マテリアル・テスティング・テクノロジー・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】