説明

光ディスク装置

【課題】高コスト化を招くことなく、可撓性ディスクに傷が発生するのを抑制できる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】 光ディスク装置20は、可撓性ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、可撓性ディスク15が回転しているときの面ぶれを小さくするために、可撓性ディスク15の記録面に対向して設けられたスタビライザ55、該スタビライザ55に取り付けられ、スタビライザ55を振動させるための2つの加振器(52A、52B)、及び可撓性ディスク15の回転数が所定の回転数(例えば、4000rpm)よりも小さいとき、各加振器を稼働させるCPUなどを備えている。この場合には、スタビライザ55の効果が十分に発揮されない、可撓性ディスク15の回転開始時及び回転停止時といった過渡的状態において、可撓性ディスクとスタビライザの摺動回数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、可撓性を有するシート状の光ディスクに対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報のデジタル化に伴い、光ディスクの大容量化に対する要求が高まっている。そして、低コストで情報の高密度記録が可能な光ディスクとして、可撓性を有するシート状の光ディスクの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可撓性を有する記録ディスクをスピンドルに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板により、可撓性を有する記録ディスクのディスク面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査により記録ディスクに情報の記録および/または再生を行う記録/再生装置において、安定化板を少なくとも記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、スピンドルと安定化板間のディスク回転軸方向における相対距離を調整する位置調整手段を備えた記録/再生装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも一つの記録面を有する回転可能フレキシブルディスクと、該ディスクを回転可能に収容するためのケーシングと、フレキシブルディスクがケーシング内で回転するとき、所定の定常波パターンを誘起し、記録ヘッドがフレキシブルディスクの記録面上を移動しても、フレキシブルディスクを実質的に所定の定常波パターンに維持するように配設されているスタビライザとを含むディスクカートリッジが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、可撓性の光ディスクを回転させつつ、当該光ディスクに対物レンズを対向配置して光学的にアクセスを行う光ディスク装置であって、光ディスクが回転する際、対物レンズの近傍において光ディスクのいずれか一方の片面あるいはその両面に近接させられるスタビライザを備え、スタビライザは、光ディスクに対して凸面状で弾性変形可能な対向面をもち、この対向面によって中空部材の開口を被覆形成して構成されているとともに、中空部材の内部気圧を調整することで対向面の曲率半径が変化させられるように構成されている光ディスク装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可撓性を有する光ディスク(以下では、便宜上、「可撓性ディスク」と略述する)に対して、情報の記録あるいは再生を行う光ディスク装置では、可撓性ディスクが回転することによって生じる空気流がスタビライザと可撓性ディスクとの間に働いて可撓性ディスクの面ぶれを抑えている。
【0007】
しかしながら、可撓性ディスクの回転開始時及び回転停止時のように可撓性ディスクの回転数が低いときには、空気流が不十分なため、可撓性ディスクとスタビライザとの間に働く空気の力は小さい。
【0008】
そして、可撓性ディスクは、剛性が低いため空気による面ぶれ抑制力が働かないと通常の光ディスクに比べて10倍程度の大きな面ぶれを引き起こす。
【0009】
このため、可撓性ディスクの回転数が低いときに、可撓性ディスクとスタビライザとが摺動し、可撓性ディスクに傷がつくおそれがあった。
【0010】
特許文献1に開示されている記録/再生装置では、可撓性ディスクの回転開始時及び回転停止時に、位置調整手段によって可撓性ディスクとスタビライザとの距離(ギャップ)を規定の値よりも大きくすれば良い。しかし、この場合には、ギャップを数mm以上高精度に可変する機構が必要であり、高コスト化を招来する。また、記録/再生装置の高さが大きくなるという不都合が生じる。
【0011】
また、特許文献2に開示されているディスクカートリッジでは、可撓性ディスクの回転が安定したときにはじめて定在波の発生という安定状態が作られるので、可撓性ディスクの回転開始時及び回転停止時での可撓性ディスクとスタビライザの摺動は、回避できない。
【0012】
また、特許文献3に開示されている光ディスク装置では、可撓性ディスクとスタビライザとが衝突してもスタビライザが変形するので可撓性ディスクのダメージは小さいとしているが、可撓性ディスクとスタビライザとの間隙に入り込んだチリやごみなどによって、スタビライザが衝突したときに可撓性ディスクに傷がつくおそれがあった。
【0013】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その目的は、高コスト化を招くことなく、可撓性ディスクに傷が発生するのを抑制できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、可撓性を有するシート状の光ディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、前記光ディスクを回転させる回転駆動装置と;前記光ディスクが回転しているときの面ぶれを小さくするために、前記光ディスクに対向して設けられた安定化部材と;前記光ディスクと前記安定化部材との間隙を変動させる加振器と;を備える光ディスク装置である。
【0015】
これによれば、高コスト化を招くことなく、可撓性ディスクに傷が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示す図(その1)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示す図(その2)である。
【図3】光ディスク装置が上位装置から記録要求あるいは再生要求を受けたときのCPUの動作を説明するための図である。
【図4】試験用のサイクルを説明するための図である。
【図5】試験用の光ディスク装置を説明するための図である。
【図6】試験結果を説明するための図である。
【図7】光ディスク装置の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1及び図2には、一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0018】
この光ディスク装置20は、可撓性ディスクに対応し、スタビライザ55、2つの加振器(52A、52B)、可撓性ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23をスレッジ方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、エンコーダ25、駆動制御回路26、振動制御回路51、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図2における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0019】
光ピックアップ装置23は、可撓性ディスク15の記録層にレーザ光を集光するとともに、可撓性ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、半導体レーザ、カップリングレンズ、対物レンズ、受光器、及び対物レンズを駆動するための駆動系(フォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ)などを備えている。ここでは、一例として、光ピックアップ装置23は、ブルーレイディスクの規格に準拠している。
【0020】
再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいて、サーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)、アドレス情報、同期情報及びRF信号などを取得する。ここでは、一例として、再生信号処理回路28は、ブルーレイディスクの規格に準拠している。
【0021】
ここで得られたサーボ信号は駆動制御回路26に出力され、アドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25や駆動制御回路26などに出力される。
【0022】
さらに、再生信号処理回路28は、RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとしてバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、再生データに含まれるアドレス情報はCPU40に出力される。
【0023】
駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号に基づいて、トラッキング方向に関する対物レンズの位置ずれを補正するためのトラッキングアクチュエータの駆動信号を生成する。
【0024】
また、駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズのフォーカスずれを補正するためのフォーカシングアクチュエータの駆動信号を生成する。ここで生成された各アクチュエータの駆動信号は光ピックアップ装置23に出力される。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0025】
さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0026】
バッファRAM34には、可撓性ディスク15に記録するデータ(記録用データ)、及び可撓性ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、バッファマネージャ37によって管理されている。
【0027】
エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されている記録用データをバッファマネージャ37を介して取り出し、データの変調及びエラー訂正コードの付加などを行ない、可撓性ディスク15への書き込み信号を生成する。ここで生成された書き込み信号はレーザ制御回路24に出力される。
【0028】
レーザ制御回路24は、半導体レーザの発光パワーを制御する。例えば記録の際には、前記書き込み信号、記録条件、及び半導体レーザの発光特性などに基づいて、半導体レーザの駆動信号がレーザ制御回路24にて生成される。
【0029】
インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0030】
フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、記録パワーや記録ストラテジ情報を含む記録条件、及び半導体レーザの発光特性などが格納されている。
【0031】
CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0032】
スタビライザ55は、可撓性ディスク15が回転しているときに、空気力学的な力を作用させ、可撓性ディスク15の面振れを抑制する。
【0033】
なお、不図示のターンテーブルに可撓性ディスク15がセットされたとき、可撓性ディスク15とスタビライザ55との間隙(ギャップ)は、0.1mmとなるようにあらかじめ調整されている。
【0034】
各加振器は、シャーシとスタビライザ55との間に配置され、スタビライザ55を振動させる。ここでは、各加振器は、1kOeの磁界で寸法が約1000ppm変化する特性をもつ長さ10mmの棒状の超磁歪素子、及び該超磁歪素子の周りに配置されたコイルを有している。そこで、超磁歪素子に1kOeの磁界が生じるようにコイルに電流を流すと、超磁歪素子は全長が10μm変化する。そして、超磁歪素子に交流磁界を与えれば、超磁歪素子を振動させることができる。
【0035】
振動制御回路51は、CPU40の指示に基づいて、各加振器を駆動するための駆動信号を生成する。ここで生成された駆動信号は、加振器52A及び加振器52Bに出力される。
【0036】
次に、上位装置90から、可撓性ディスク15に対する記録あるいは再生の要求があったときの、光ディスク装置20における処理について図3を用いて簡単に説明する。図3のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0037】
上位装置90から記録要求コマンド又は再生要求コマンド(以下、便宜上、「要求コマンド」と総称する)を受信すると、図3のフローチャートに対応するプログラムの開始アドレスがCPU40のプログラムカウンタにセットされ、処理がスタートする。
【0038】
最初のステップS401では、振動制御回路51を介して加振器52A及び加振器52Bを駆動する。ここでは、振動数300Hz、振幅2μmで、スタビライザ55を振動させる。これによって、可撓性ディスク15とスタビライザ55との間隙(ギャップ)に陽圧が発生する。この場合、可撓性ディスクは柔らかいので、クランプされている最内周部分のギャップは0.1mmであるが、外周に行くに従って可撓性ディスク15とスタビライザ55との距離が大きくなる。
【0039】
次のステップS403は、駆動制御回路26を介してスピンドルモータ22の回転を開始する。このとき、上位装置90から要求コマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。
【0040】
スピンドルモータ22の回転数が徐々に高くなる。
【0041】
次のステップS405では、指定アドレスに対応する目標位置近傍に光スポットが形成されるように、駆動制御回路26に指示する。これにより、シーク動作が行なわれる。なお、シーク動作が不要であれば、ここでの処理はスキップされる。
【0042】
次のステップS407では、スピンドルモータ22の回転数が4000rpm以上であるか否かを判断する。スピンドルモータ22の回転数が4000rpm未満であれば、ここでの判断は否定され、待機する。すなわち、スタビライザ55は、加振された状態のままである。
【0043】
一方、スピンドルモータ22の回転数が4000rpm以上であれば、ここでの判断は肯定され、ステップS409に移行する。
【0044】
このステップS409では、振動制御回路51を介して加振器52A及び加振器52Bを停止する。スタビライザ55への加振を停止する理由は、加振による300Hzの振動が可撓性ディスク15の振動として残留し、上記フォーカス制御に悪影響を与えるからである。
【0045】
次のステップS411では、スピンドルモータ22の回転数が15000rpm以上であるか否かを判断する。スピンドルモータ22の回転数が15000rpm未満であれば、ここでの判断は否定され、待機する。一方、スピンドルモータ22の回転数が15000rpm以上であれば、ここでの判断は肯定され、ステップS413に移行する。
【0046】
このステップS413では、要求コマンドに応じて記録又は再生を許可する。
【0047】
次のステップS415では、記録又は再生が完了したか否かを判断する。完了していなければ、ここでの判断は否定され、所定時間経過後に再度判断する。完了していれば、ここでの判断は肯定され、ステップS417に移行する。
【0048】
このステップS417は、駆動制御回路26を介してスピンドルモータ22の回転を減速する。
【0049】
次のステップS419では、スピンドルモータ22の回転数が4000rpm以下であるか否かを判断する。スピンドルモータ22の回転数が4000rpmを超えていれば、ここでの判断は否定され、待機する。一方、スピンドルモータ22の回転数が4000rpm以下であれば、ここでの判断は肯定され、ステップS421に移行する。
【0050】
このステップS421では、振動制御回路51を介して加振器52A及び加振器52Bを駆動する。
【0051】
次のステップS423では、スピンドルモータ22の回転が停止しているか否かを判断する。スピンドルモータ22の回転が停止していなければ、ここでの判断は否定され、待機する。一方、スピンドルモータ22の回転が停止していれば、ここでの判断は肯定され、ステップS425に移行する。
【0052】
このステップS425では、振動制御回路51を介して加振器52A及び加振器52Bを停止する。そして、処理を終了する。
【0053】
次に、スタビライザ55への加振の効果を知るための実験を行った。
【0054】
ここでは、スピンドルモータ22の回転に関して、図4に示されるように、(1)回転数0で2秒間保持、(2)0.5秒で4000rpmに達するように回転を加速、(3)4000rpmで2秒間保持、(4)0.5秒で15000rpmに達するように回転を加速、(5)15000rpmで10秒間保持、(6)0.5秒で4000rpmになるように回転を減速、(7)4000rpmで2秒間保持、(8)0.5秒で停止するように回転を減速、(9)停止、という18秒からなる回転スケジュールを1サイクルとした。
【0055】
また、実験に使用した可撓性ディスクは、外径120mm、内径15mm、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムの片側全面に、スパッタリングで厚さ100nmのアルミニウム膜を成膜したものである。そして、アルミニウム成膜面をスタビライザ側とした。この場合は、摺動するとアルミニウム成膜面に傷がつくので目視ですぐにわかる。
【0056】
本実施形態の光ディスク装置20を用いて、1000サイクルの繰り返し動作を連続で行ったところ、アルミニウム成膜面には、目視で認められる傷の発生はなかった。
【0057】
一方、比較例として、スタビライザを加振せずに、上記1000サイクルの繰り返し動作を連続で行ったところ、アルミニウム成膜面に摺動傷が目視で認められた。特に、中心からの距離が59mmより外側は、透明な状態であり、アルミニウム膜が削り取られてなくなっていた。これは、摺動による塵埃の発生をきたし、可撓性ディスクにおける光入射面の汚染、光ピックアップ装置における対物レンズ表面の汚染を引き起こし、光ディスク装置の長期の安定した動作を阻害する。
【0058】
次に、摺動の様子を詳細に知るために、図5に示される実験系を組んで摺動回数を計測した。
【0059】
ここで計測に用いられる可撓性ディスクは、そのスタビライザ側の全面に、導電性のアルミニウム膜が成膜されており、導電性を有している。また、スピンドルヘッドのターンテーブル、クランパーも金属で製作されており、スピンドル軸と可撓性ディスクの表面とが導通するようにしている。そこで、可撓性ディスクとスタビライザとの間に電位を与えておくと、摺動時に導通があるので、抵抗の両端に電圧のパルスが発生する。ここでは、この電圧パルスを計測するようにした。
【0060】
そして、スタビライザへの加振振幅を変えながら、上記1サイクル当たりの電圧パルス数をカウントした。その計測結果が図6に示されている。なお、加振振幅は、加振器に供給する電流の大きさを調整することによって変えることができる。
【0061】
これによれば、加振の効果は、加振振幅が0.5μmから得られている。また、本実施形態における加振振幅2μmでは、摺動の頻度は、加振なしのときの1/3弱となっている。
【0062】
このように、スタビライザを加振することによって、完全に0となるわけではないが、摺動の発生頻度は大幅に減少した。
【0063】
ところで、上記電圧パルスを計測する実験では、摺動の回数を数えているのみであって、摺動の強さは表せていない。本実施形態では、可撓性ディスク表面の摺動傷はみられなかったが、これは摺動が全く起こらなかったわけではなく、摺動回数の減少及び摺動の強さの低下によるものであると考えられる。
【0064】
続いて、上記アルミニウムが成膜された摺動試験用の可撓性ディスクと同じ直径、同じ厚さのフイルムに、紫外線硬化樹脂にてブルーレイディスクと同様な案内溝を形成し、酸化ビスマス系の追記型記録材料をスパッタリングし、表面に紫外線硬化樹脂を5μm塗布して保護膜とした可撓性ディスクを作成した。この可撓性ディスクは、光学的、信号フォーマット的にはブルーレイディスクと互換性を有している。
【0065】
この可撓性ディスクを本実施形態の光ディスク装置20にセットし、ブルーレイディスクと全く同じフォーマットで映像信号を記録した。そして、上記1000サイクルの繰り返し動作を連続で行った。それから、この可撓性ディスクに記録されている映像信号を再生し、そのときのシンボルエラーレート(SER)を求めた。その結果、得られたSERは2×10−4未満であり、記録直後のSERとほぼ同じであった。なお、SERは、2×10−4未満ならば実用上差し支えない。
【0066】
なお、スタビライザを振動させずに、上記1000サイクルの繰り返し動作を行った後に、SERを求めたところ、外周近傍でSERが2×10−4を越えた部分があった。
【0067】
以上のように、スタビライザを振動させることによって、回転開始及び停止といった過渡状態において、可撓性ディスクとスタビライザの摺動を減らし、これによる読み取りエラーを抑制することができる効果があった。
【0068】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光ディスク装置20では、スピンドルモータ22によって、本発明の回転駆動装置が構成され、スタビライザ55によって、本発明の安定化部材が構成されている。
【0069】
また、CPU40によって、本発明の制御装置が構成されている。
【0070】
なお、上記CPU40によるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る光ディスク装置20によると、可撓性を有するシート状の光ディスク(可撓性ディスク)に対応し、可撓性ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、該スピンドルモータ22により駆動される可撓性ディスク15の回転軸方向の振れを安定させるために、可撓性ディスク15の記録面とは反対側に設置されたスタビライザ55、該スタビライザ55に取り付けられ、スタビライザ55を振動させるための2つの加振器(52A、52B)、及び可撓性ディスク15の回転数が4000rpmよりも小さいとき、各加振器を稼働させるCPU40などを備えている。この場合には、回転開始及び停止といった過渡状態において、可撓性ディスクとスタビライザの摺動を減らすことができる。
【0072】
そこで、高コスト化を招くことなく、可撓性ディスクに傷がつくのを抑制することができる。
【0073】
また、可撓性ディスクとスタビライザの摺動回数が減少するため、摺動に起因する塵埃の発生を抑制することができる。その結果、可撓性ディスクにおける光入射面の汚染、光ピックアップ装置における対物レンズ表面の汚染が抑制され、光ディスク装置の長期の安定した動作を確保することが可能となる。そこで、光ディスク装置の寿命が長くなり、ゴミの発生を減らすことができる。その結果として資源採掘量及びプラスチックゴミ排出量に関して環境負荷の増大を抑制することが可能となる。
【0074】
なお、上記実施形態では、加振器がシャーシとスタビライザ55との間に配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、スピンドルモータ22を加振器52を介して筐体に取り付けても良い。この場合は、加振器52によってスピンドルモータ22が上下に振動する。なお、スタビライザ55は固定脚で筐体に固定されている。従って、可撓性ディスク15とスタビライザ55との間の間隙(ギャップ)の変動は、スピンドルモータ22の上下振動で行われる。
【0075】
また、上記実施形態では、加振器が超磁歪素子、及び該超磁歪素子の周りに配置されたコイルを有し、必要な振動周波数及び振動振幅に応じた電流値及び周波数の交流をコイルに供給する場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、必要な周波数及び振幅の振動が、スタビライザ55あるいはスピンドルモータ22に伝播されれば良い。
【0076】
また、上記実施形態では、振動数300Hz、振幅2μmで、スタビライザ55を振動させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、可撓性ディスク15の大きさ、材質、スタビライザ55の形状、スピンドルモータ22の回転数、静止時のギャップの大きさなどに応じて、適切な振動数及び振幅を設定することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、CPU40が、可撓性ディスク15の回転数が4000rpmよりも小さいときに、各加振器を稼働させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、可撓性ディスク15の回転数が15000rpm近傍に達してからフォーカス制御を行う場合には、4000rpmを超える回転数であっても、各加振器を稼働させていても良い。但し、この場合は、アクセスに要する時間が若干長くなる。そこで、摺動回数を考慮して各加振器を稼働させる際の可撓性ディスク15の回転数を決定しても良い。そして、この決定された回転数を上位装置90からCPU40に通知できるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明の光ディスク装置20によれば、高コスト化を招くことなく、可撓性ディスクに傷がつくのを抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0079】
15…可撓性ディスク、20…光ディスク装置、22…スピンドルモータ(回転駆動装置)、40…CPU(制御装置)、52A,52B…加振器、55…スタビライザ(安定化部材)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2006−107699号公報
【特許文献2】特表2001−520788号公報
【特許文献3】特許第4205680号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状の光ディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させる回転駆動装置と;
前記光ディスクが回転しているときの面ぶれを小さくするために、前記光ディスクに対向して設けられた安定化部材と;
前記光ディスクと前記安定化部材との間隙を変動させる加振器と;を備える光ディスク装置。
【請求項2】
前記加振器は、前記回転駆動装置あるいは前記安定化部材を振動させることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記光ディスクの回転数が、所定の回転数よりも小さいときに、前記加振器を稼働させる制御装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記光ディスクが回転を開始する際に、または前記光ディスクの回転を停止させる際に、前記加振器を稼働させることを特徴とする請求項3に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−60351(P2011−60351A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206897(P2009−206897)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)