説明

光ディスク

【課題】情報の改竄を防止できる光ディスクを提供する。
【解決手段】光透過性基板6上に少なくとも書き換え可能な記録層7が形成され、光透過性基板6側から記録用レーザ光を照射して記録層7に情報を記録する際、光透過性基板6と記録層7との間、又は光透過性基板6上に所定の波長のレーザ光を照射することにより着色する改竄防止層9が形成され、改竄防止層9は、着色前では、記録用レーザ光に対して80%以上の透過率を有し、着色後では、記録用レーザ光或いは再生用レーザ光に対して30%〜60%の透過率を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記録した後、データの改竄を防止することができる光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
書き換え可能な光ディスクは、追記型の光ディスクでは不可能な記録後の修正や編集ができるなどの便利な特徴を有している。この書き換え可能な光ディスクには、記録された情報を長期間安定に保存することや一旦記録された公文書、医療データが改竄されないようにすることも求められている。
こうしたことに対応した書き換え可能な光ディスクが特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、書換え可能光ディスクの書込み用トラックのうちに通常の情報記録用トラックとは別に書込み禁止を指示する情報を記録するための書込み禁止指示トラックを限定して設け、通常の情報を光ディスクに書込むこと或いは書換えることを禁止する場合には上記光ディスクの書込み禁止トラックに書込みを禁止する書込み禁止フラグを記録し、通常の情報を光ディスクに書込む場合には書込み動作に入る前に書込み禁止トラックを検索して書込み禁止フラグがあれば書込みを受付けず、なければ書込み動作を実行するようにする書込み禁止方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭62−120662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この書込み禁止方法では、書込み禁止フラグが記録されていたとしても、この情報を無効にする手段を用いて、この書込み禁止フラグを無視できるようにしてしまえば、情報が改竄されてしまうといった問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するべく、禁止フラグが無視されても書込まれた情報の改竄を防止できる光ディスクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段として、第1の発明は、光透過性基板上に少なくとも書換え可能な記録層が形成され、前記光透過性基板側から記録用レーザ光を照射して前記記録層に情報を記録する光ディスクにおいて、
前記光透過性基板と前記記録層との間、又は前記光透過性基板上に、所定の波長のレーザ光を照射することにより着色する改竄防止層が形成され、前記改竄防止層は、着色前では、前記記録用レーザ光に対して80%以上の透過率を有し、着色後では、前記記録用レーザ光或いは再生用レーザ光に対して30%〜60%の透過率を有していることを特徴とする光ディスクを提供する。
第2の発明は、前記改竄防止層の着色後の領域は、前記記録用レーザ光或いは再生用レーザ光のパワーキャリブレションを行うためのパワーキャリブレーション領域は除かれていることを特徴とする前記第1の発明に記載の光ディスクを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、光透過性基板と記録層との間、又は光透過性基板上に、所定の波長のレーザ光を照射することにより着色する改竄防止層が形成され、前記改竄防止層は、着色前では、記録用レーザ光に対して80%以上の透過率を有し、着色後では、記録用レーザ光或いは再生用レーザ光に対して30%〜60%の透過率を有しているので、記録層に到達した際の記録用レーザ光のパワーが減少するため、記録はできず、再生だけを可能とすることができ、記録後に情報の改竄を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における光ディスクの平面図である。
図2は、図1のMM断面図である。
図3は、記録用レーザ光のストラテジを示す図である。
本発明の実施の形態における光ディスク1は、図1に示すように、中心に中心孔Cを有し、この中心孔Cから外周側に向かって、リードイン領域2と、パワーキャリブレーション領域3と、データ領域4と、リードアウト領域5とが順次形成されている。
また、光ディスク1の積層方向には、図2に示すように、基板6上に書き換え可能な情報記録層7と、分離層8と、改竄防止層9と、光透過性基板10とが順次積層されている。
パワーキャリブレーション領域3は、記録用レーザ光或いは再生用レーザ光のパワーキャリブレーションを行うための領域である。
【0009】
情報の記録再生は、レンズ11を介して記録用レーザ光を光透過性基板6側から照射し、この記録再生用レーザ光をレンズ11により情報記録層7に集光させて行う。また、改竄防止層9の着色は、シリンドリカルレンズ12を介して着色用レーザ光を光透過性基板6側から照射し、この着色用レーザ光をレンズ11により改竄防止層9に集光させ、この着色用レーザ光による加熱し、光学特性を変化させて行う。
【0010】
基板6は、表面にグルーブが0.74μmのピッチを有して、同心円状又は螺旋状に形成されている。このウォブルは、アドレス情報などに用いられる。
基板6の材料としては、記録用レーザ光に対して透過率が80%以上であるポリカーボネート樹脂などが用いられる。
【0011】
情報記録層7は、基板6側から順に反射層7Aと、第1誘電体層7Bと、相変化記録層7Cと、第2誘電体層7Dとが積層された構成を有する。
情報記録層7の各層は、真空蒸着法やスパッタ法により形成される。
反射層7Aの厚さは、10nm〜200nmが好ましく、その材料としては、Ag、Ti、Au、Al系の金属が用いられる。
ここでは、反射層7Aの厚さは、80nmであり、その材料としては、Ag系合金である。
【0012】
第1、第2誘電体層7B、7Dは、5nm〜100nmが好ましく、その材料としては、Si系やAl系の酸化物や窒化物が用いられる。
ここでは、第1誘電体層7Bの厚さは、10nmであり、第2誘電体層7Dの厚さは、60nmであり、これらの誘電体層7B、7Dの材料としては、ZnS−SiO2である。
相変化記録層7Cの厚さは、5nm〜40nmが好ましく、その材料としては、Sb又はTeを代表とするカルコゲナイド系の合金が用いられる。
ここでは、相変化記録層7Cの厚さは、10nmであり、その材料としては、AgInSbTeである。
【0013】
改竄防止層9は、記録再生用レーザ光を透過させる一方、着色用レーザ光を吸収し、発熱により着色する必要があるので、改竄防止層9は、透過率が記録再生用レーザ光に対しては80%以上必要であり、反射率が着色用レーザ光に対しては少なくとも10%以上が必要であり、望ましくは20%以上が必要である。上記したことを効果的に行うために、記録再生用レーザ光の波長に対しては反射率が低く、それ以外の光に対しては発射率が高いダイクロイックミラー等の波長選択半透明膜を改竄防止層9に組み合わせることもできる。この波長選択半透明膜としては、AlOx、SiNx、SiOx、SiHx等の誘電体や金属薄膜若しくはこれらの組み合わせたものを用いることができる。
また、改竄防止層9は、着色後には、記録再生用レーザ光に対しては透過率が30%〜60%であることが望ましい。
このため、記録再生用レーザ光と着色用レーザ光とは異なった波長のレーザ光を用いることが必要となる。
【0014】
改竄防止層9の厚さは、5μmであり、その材料としては、スピロピラン系色素、アゾメチン系色素などのサーモクロミック色素、1−ヒドロキシアントランキノン系色素、熱によって顕色剤と反応して着色するロイコ系色素、トリフェニルメタン、トリフェニルメタンフタリド、フルオラン、インドリルフタリドなどの骨格を有する色素若しくは無機系のカルコゲナイド系材料を用いることができる。
ここでは、改竄防止層9の材料としては、ロイコ系色素とロイコ系色素を発色させるフェノ−ル系化合物からなる電子受容性顕色剤を用いている。この電子受容性顕色剤は、スピンコート法により形成できる。
分離層8は、透過率が記録再生用レーザ光に対して80%以上必要であり、ここでは、85%である。
【0015】
分離層8の厚さは、1μm〜100μmが好ましく、その材料としては、記録用紫外線硬化樹脂などが用いられる。
光透過性基板10は、厚さが0.58mmであり、その材料としては、記録再生用レーザ光を80%以上透過するガラス、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などが用いられる。
【0016】
パワーキャリブレーション領域3における改竄防止層9は、着色させない。
以下に、この理由について説明する。
パワーキャリブレーション領域3における改竄防止層9を着色してしまうと、この改竄防止層9で一部が吸収される。改竄防止層9が全面的に形成された光ディスク1に記録する場合には、パワーキャリブレーション領域3における改竄防止層9が着色されていると、光ディスク1を改竄しようとする記録再生装置によってパワーキャリブレーション領域3で求められたキャリブレ条件を用いて、情報記録層7の相変化記録層7Cに記録を行うことができるため、改竄防止の機能を果たさなくなってしまう。
このため、上記したように、パワーキャリブレーション領域3における改竄防止層9は、着色させないのである。
【0017】
次に、情報記録層7の相変化記録層7Cに情報を記録した後、再生が可能かどうかについて調べた。
まずは、光透過性基板10側から波長650nmの記録用レーザ光を情報記録層7の相変化記録層7Cに照射して、予めパワーキャリブレーション領域3で求められた図3に示す記録用レーザ光のピークパワーを7mW、イレースパワーを3mW、ボトムパワーを0.2mWとするストラテジにより、情報を記録した。
【0018】
このときの情報記録層7の反射層7Aでの反射率は、28%であった。
ここで用いた信号は、8/16変調信号である。
この状態で、光透過性基板10側から0.8mWで波長650nmの再生用レーザ光を情報記録層7の相変化記録層7Cに照射して、ジッタを調べたところ7.5%であった。更に、相変化記録層7Cに1000回以上の書き換えを行っても、再生する際のジッタは7.5%であった。
【0019】
次に、光透過性基板10側から波長405nmの着色用レーザ光をパワーキャリブレーション領域3以外の改竄防止層9に照射して、着色した。
具体的には、この着色は、着色用レーザ光をシリンドリカルレンズ12に入射させることによって半径方向に100μm、円周方向に1μmのスポット形状にして改竄防止層9に照射した状態で、光ディスク1を10m/sのCLVで回転させて行う。
上記と同様にして、記録再生用レーザ光を相変化記録層7Cに照射したときの情報記録層7の反射層7Aでの反射率は、10%であった。
記録再生用レーザ光を相変化記録層7Cに照射してジッタを調べたところ、8%であり、改竄防止層7に着色する前と同様であり、良好な再生が可能であることがわかった。
【0020】
次に、予めリードイン領域2における相変化記録層7Cに記録されている記録防止フラグを無視して、相変化記録層7Cに記録を行い、再生した際のジッタを調べたところ、11%であった。このとき、相変化記録層7Cへの書き換えは行われなかった。
この場合は、上記したものと比較するとジッタは、悪かったが、エラー訂正を行うことによって再生可能となった。
【0021】
本発明の実施の形態によれば、着色前では、記録用レーザ光に対しては80%以上の透過率を有し、着色後では、記録再生用レーザ光に対して30%〜60%の透過率を有する改竄防止層7を備えているので、相変化記録層7Cに到達する記録用レーザ光のパワーが減少するため、記録はできず、再生だけを可能とすることができ、記録後に情報の改竄を防止できる。
【0022】
次に、本発明の実施の形態の変形例について図4を用いて説明する。
図4は、本発明の変形例における光ディスクの断面図である。
本発明の変形例の光ディスク13は、図4に示すように、図1の光ディスク1の改竄防止層9が基板6上に形成されたものであり、それ以外は同様である。
光ディスク13の記録再生用レーザ光及び着色用レーザ光の照射は、基板6側から行う。
【0023】
本発明の変形例の光ディスク13によっても、実施の形態と同様な評価を行ったところ同様な効果が得られた。
なお、光ディスク13は、改竄防止層9が表面に露出しているため研磨や清掃する市販のディスクリペアキット等で容易に剥離されてしまうことがあるので、これを防止するために改竄防止層9表面にハードコートを施すと良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態における光ディスクの平面図である。
【図2】図1のMM断面図である。
【図3】記録用レーザ光のストラテジを示す図である。
【図4】本発明の変形例における光ディスクの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1、13…光ディスク、2…リードイン領域、3…パワーキャリブレーション領域、4…データ領域、5…リードアウト領域、6…基板、7…情報記録層、7A…反射層、7B、7D…第1誘電体層、7C…相変化記録層、8…分離層、9…改竄防止層、10…光透過性基板、11…レンズ、12…シリンドリカルレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基板上に少なくとも書換え可能な記録層が形成され、前記光透過性基板側から記録用レーザ光を照射して前記記録層に情報を記録する光ディスクにおいて、
前記光透過性基板と前記記録層との間、又は前記光透過性基板上に、所定の波長のレーザ光を照射することにより着色する改竄防止層が形成され、前記改竄防止層は、着色前では、前記記録用レーザ光に対して80%以上の透過率を有し、着色後では、前記記録用レーザ光或いは再生用レーザ光に対して30%〜60%の透過率を有していることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
前記改竄防止層の着色後の領域は、前記記録用レーザ光或いは再生用レーザ光のパワーキャリブレションを行うためのパワーキャリブレーション領域は除かれていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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