説明

光パルス増幅器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光パルス増幅器に係り、特に、チャープ格子を用いた光パルス増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】エルビウム添加光繊維増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier)は、入力信号のパワーが増加しても、その出力信号のパワーが更に増加しない飽和エネルギーが概略で1μJである。このエネルギーから増幅された超短パルスの最大パワーは、例えば1ピコ秒パルスに対して、1μWのように非常に高く、光繊維コア内ではその強度が非常に大きくなることにより非線形効果が発生し、パルスは歪曲される。また、誘導放出利得が減少して増幅がなされないスペクトルホールバーニング効果が発生する。
【0003】これを解決するために、従来はバルク回折格子ストレッチャを使用して、超短パルスをストレッチさせて、増幅器内で低い最大値パワーを有するようにした。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、バルク回折格子ストレッチャの使用時の問題点は、回折格子整列が偏光に敏感であるということである。また、回折損失が大きくて出力ビームのプロファイルを歪曲させるという問題点がある。
【0005】本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、チャプ格子と結合器を利用して、パワーを大きくして歪曲を小さくする光パルス増幅器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の第1の本発明による光パルス増幅器は、第1、第2、第3及び第4ポートを具備し、第1ポートに入射される複数個の波長よりなる光パルスを第2及び第3ポートに各々出力し、当該第2及び第3ポートから再入射される光パルスを第4ポートに出力する第1光結合器と、前記第1光結合器の第2ポートに連結されて、入射される光パルスを各波長に対してブラッグ条件を満足する位置で反射させる第1格子と、前記第1光結合器の第3ポートに連結され、前記第1格子と同一の光特性を有し、入射される光パルスを各波長に応答してブラッグ条件を満足する位置で反射させる第2格子と、前記第1光結合器の第4ポートに連結され、前記第1及び第2格子により反射されて第1光結合器の第4ポートから入力される光パルスを増幅する光増幅部と、第1、第2、第3及び第4ポートを具備し、前記光増幅部に第1ポートが連結されて前記光増幅部から増幅されて入射される光パルスを50:50の割合で分離し所定の位相ほどシフトさせて、前記第1及び第2格子に連結された第2及び第3ポートに出力し、前記第1及び第2格子により反射されて再入射される光パルスを50:50の割合で分離し、所定の位相ほどシフトさせて第4ポートに出力する第2光結合器とを備えることを要旨とする。従って、チャプ格子と結合器を利用して、パワーを大きくして歪曲を小さくできる。
【0007】前記第1光結合器及び第2光結合器は3dB結合器、入射される光パルスを二つに分離分割して出力する偏光ビームスプリッタ、又は、光繊維偏光スプリッタであることが望ましい。また、前記第1及び第2格子は格子周期が位置により異なるチャープ格子であることが望ましい。
【0008】前記光増幅部は、ポンプ光を生成するポンプ光源と、前記ポンプ光源の出力ポンプ光と前記第1光結合器から入射される光パルスを多重化する波長分割多重化結合器と、前記波長分割多重化結合器により多重化された光パルスを増幅するエルビウムドーピング光繊維とを具備することが望ましい。また、前記ポンプ光源はレーザーダイオードであり、前記光増幅部は、前記波長分割多重化結合器の前方に位置して前記エルビウムドーピング光繊維から生成された自然放出が、前記光増幅部が連結された第1光結合器の第4ポートから反射されて再入射されることを防止する第1光アイソレータと、前記エルビウムドーピング光繊維の後方に位置して当該エルビウムドーピング光繊維から生成された自然放出が、前記光増幅部が連結された第2光結合器の第1ポートから反射されて再入射されることを防止する第2光アイソレータとをさらに具備することが望ましい
【0009】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態をより詳細に説明する。図1は本発明による光パルス増幅器の構成を示した構成図である。図1R>1による光パルス増幅器は4つのポートを具備する第1光結合器100と、第1及び第2チャプ格子110、115と、4つのポートを具備する第2光結合器120と、光増幅部130とを備えている。
【0010】前記第1光結合器100は第1、第2、第3及び第4ポート102、104、106108を具備し、入射される光パルスを50:50の割合で分割して出力し、一回の結合が起きる時ごとに光パルスの位相をπ/2ほど変化させる。
【0011】前記第1及び第2チャプ格子110、115は同一の光特性を有し、当該第1及び第2チャプ格子110、115の各々の一端が第1光結合器100の第2ポート104及び第3ポート106に連結されている。一方、後に詳述する第1及び第2チャプ格子110、115の各々の他端が第2光結合器120に連結されて、入射光を各波長に応答して各々の他の位置で反射させる。
【0012】前記光増幅部130は第1光結合器100の第4ポート108に連結され、当該第4ポート108から入射される光パルスを増幅する。また、光増幅部130は、後述する波長分割多重化結合器の前方に位置する第1光アイソレータ131と、ポンプ光源132と、前記第1光アイソレータ131から入射される相異なる波長の光パルスと前記ポンプ光源132から生成されるポンプ光を多重化する波長分割多重化結合器(Wavelength Division Multiplexing Coupler、以下WDMカプラという。)133と、入射される光パルスを増幅する光繊維(Erbium Doped Fiber、以下EDFという。)134と、前記EDF134の後方に位置する第2光アイソレータ135とを具備する。
【0013】前記第2光結合器120は第1、第2、第3及び第4ポート122、124、126128を具備し、当該第2及び第3ポート124、126が前記2つのチャプ格子110、115にそれぞれ連結されている。前記第1ポート122は光増幅部130に連結され、第4ポート128は出力ポートである。前記第2光結合器120は、光増幅部130から増幅されて入射される光パルスを50:50の割合で分離して出力する。この場合、光パルスの出力時の一回の結合が起きる時ごとに光パルスの位相がπ/2ほど変わる。
【0014】前述した構成による光パルス増幅器130の動作を説明する。まず、第1光結合器100の第1ポート102を介して光パルスが入射されると、第2ポート104では位相シフトがなくパワーは1/2の光パルスで出力され、第3ポート106では一回の結合が起きてπ/2ほど位相シフトされてパワーは1/2の光パルスとして出力される。前記第2及び第3ポート104、106には各々同一の光特性を有する第1及び第2チャプ格子110、115が連結されて、入射された光パルスは各波長に応答して後述する第1及び第2チャプ格子110、115の各々の他の位置で反射される。前記第1及び第2チャプ格子110、115での反射は次のようになされる。前記チャプ格子110、115は図2に示したように格子周期が均一でなく、入射される光パルスの波長に応答して反射する格子が異なる。すなわち入射される光パルスの相異なる波長λ1、λ2…、λnがλ12>…>λnの時、各波長に対して、所謂、ブラッグ条件を満足する位置で光パルスを反射させる格子である。光繊維格子のコア内で反射が起きるブラッグ条件は、λiが入射光の波長であり、neffが有効屈折率であり、diが格子周期の時に次の式により決定される。
【0015】
【数1】λi=2effi即ち、格子間隔が広ければ前述した数1を満足する波長が大きくなるので、長波長の光パルスは格子周期が長い側から反射され、短波長の光パルスは長波長より格子周期がさらに短い側から反射される。従って、光パルスは、チャプ格子110、115を通じて経時的に分散する程度が大きくなりパルス幅が広まる。
【0016】前記第1及び第2チャプ格子110、115により反射されて第1光結合器110の第2及び第3ポート104、106に再入射される光パルスは、各々第1及び第4ポート102、108に50:50の割合で出力される。一方、第1ポート102では第2ポート104から再入射されて位相シフトされない光パルスと第3ポート106から再入射されてπほどの位相シフトされる光パルスが出力されて、お互いに相殺されることにより光パルスが出力されない。反面、第4ポート108では第2ポート104から再入射されて、結合が起きてπ/2ほど位相シフトされる光パルスと第3ポート106から再入射されて、結合が起こらずにπ/2ほど位相シフトが維持された光パルスが出力されて、お互いに補強された光パルスが出力される。
【0017】図3は、入力パルスが第1及び第2チャプ格子110、115を介して広がり第4ポート108に出力されたパルスを示す。同図において、Aは入力パルスであり、Bは出力パルスである。
【0018】前記第4ポート108に出力された光パルスは、光増幅部130において次のように増幅される。まず、レーザーダイオードのようなポンプ光源132から生成されたポンプ光は、第4ポート108を介して入射された光パルスと共に、WDMカプラ133で多重化される。多重化されたポンプ光は増幅媒質のEDF134内の基底状態にあるエルビウムイオン(Er3+)を励起させて密度反転を起こす。前記EDF134は密度反転されたエルビウムの誘導放出により光パルスを増幅する。
【0019】前記第1光アイソレータ131は、EDF134から発生した自然放出が第1光結合器100の第4ポート108から反射されて再入射されることを防止する。第2光アイソレータ135は、EDF134から発生した自然放出が光増幅部130と連結された第2光結合器120の第1ポート122から反射されて再入射されることを防止する。
【0020】このように増幅された光パルスは第2光結合器120の第1ポート122に入力され、第1光結合器100と同様に50:50の割合で各々第2及び第3ポート124、126に出力される。出力された各光パルスは、また第1及び第2チャプ格子110、115に入射されるが、今度は第1光結合器100から入射される場合と反対方向に入射されるので、短波長を有する光パルスが先に反射され、長波長を有する光パルスが後に反射されてパルス圧縮が起こる。圧縮された光パルスは、第1光結合器100と同じ動作により第2光結合器120の第4ポート128に出力される。
【0021】図4は第2光結合器120の入出力波形を示す図であって、Aは増幅されて入射されたパルスで、Bは第4ポート124に出力されたパルスである。
【0022】ここで、第1及び第2光結合器100、120は、入射された光パルスを50:50の割合で分離する3dB結合器の他に、入射された光パルスの分離に対する偏光状態により出力ポートを決定でき、偏光調整器を使用してチャープ格子から反射された光パルスを所望のポートに出力できる偏光ビームスプリッタあるいは光繊維偏光スプリッタが使われうる。図5(A)は前記偏光ビームスプリッタの構造図であり、図5(B)は前記光繊維偏光スプリッタの構造図である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、光パルスの増幅と広がりにより非線形効果またはスペクトルホールバーニング効果を避けて、回折損失を少なくして製造を簡便にする。ひいては広がりと圧縮により入力パルスと同一でその強度が増幅された出力パルスを得りうる。また、光結合器を使用することはサーキュレータのような高価な素子を使用することより経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光パルス増幅器の構成を示す構成図である。
【図2】図1のチャープ格子を示す詳細図である。
【図3】図1の第1光結合器の入出力波形を示す図である。
【図4】図1の第2光結合器の入出力波形を示す図である。
【図5】(A)は偏光ビームスプリッタの構造図であり、(B)は光繊維偏光スプリッタの構造図である。
【符号の説明】
100 第1光結合器
102、104、106108 第1第2第3第4ポート
110115 第1及び第2チャープ格子
120 第2光結合器
122、124、126128 第1、第2、第3及び第4ポート
130 光増幅部
131 第1光アイソレータ
132 ポンプ光源
133 波長分割多重化結合器
134 光繊維
135 第2光アイソレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1、第2、第3及び第4ポートを具備し、当該第1ポートに入射される複数個の波長よりなる光パルスを当該第2及び第3ポートに各々出力し、当該第2及び第3ポートから再入射される光パルスを第4ポートに出力する第1光結合器と、前記第1光結合器の第2ポートに連結され、入射される光パルスを各波長に応答してブラッグ条件を満足する位置で反射させる第1格子と、前記第1光結合器の第3ポートに連結され、前記第1格子と同一の光特性を有し、入射される光パルスを各波長に応答してブラッグ条件を満足する位置で反射させる第2格子と、前記第1光結合器の第4ポートに連結され、前記第1及び第2格子により反射されて第1光結合器の第4ポートから入力される光パルスを増幅する光増幅部と、第1、第2、第3及び第4ポートを具備し、前記光増幅部に当該第1ポートが連結され、当該光増幅部から増幅されて入射される光パルスを前記第1及び第2格子に連結された当該第2及び第3ポートに出力し、当該第1及び第2格子により反射されて再入射される光パルスを当該第4ポートに出力する第2光結合器と、を備えることを特徴とする光パルス増幅器。
【請求項2】 前記第1光結合器及び第2光結合器は3dB結合器であることを特徴とする請求項1に記載の光パルス増幅器。
【請求項3】 前記第1光結合器及び第2光結合器は入射される光パルスを二つに分離分割して出力する偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1に記載の光パルス増幅器。
【請求項4】 前記第1光結合器及び第2光結合器は入射される光パルスを二つに分離分割して出力する光繊維偏光スプリッタであることを特徴とする請求項1に記載の光パルス増幅器。
【請求項5】 前記第1及び第2格子は格子周期が位置により異なるチャープ格子であることを特徴とする請求項1に記載の光パルス増幅器。
【請求項6】 前記光増幅部は、ポンプ光を生成するポンプ光源と、前記ポンプ光源の出力ポンプ光と前記第1光結合器から入射される光パルスを多重化する波長分割多重化結合器と、前記波長分割多重化結合器により多重化された光パルスを増幅するエルビウムドーピング光繊維と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の光パルス増幅器。
【請求項7】 前記ポンプ光源はレーザーダイオードであることを特徴とする請求項6に記載の光パルス増幅器。
【請求項8】 前記光増幅部は、前記波長分割多重化結合器の前方に位置して前記エルビウムドーピング光繊維から生成された自然放出が、前記光増幅部が連結された第1光結合器の第4ポートから反射されて再入射されることを防止する第1光アイソレータと、前記エルビウムドーピング光繊維の後方に位置して当該エルビウムドーピング光繊維から生成された自然放出が、前記光増幅部が連結された第2光結合器の第1ポートから反射されて再入射されることを防止する第2光アイソレータと、をさらに具備することを特徴とする請求項6に記載の光パルス増幅器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【特許番号】第2988915号
【登録日】平成11年(1999)10月8日
【発行日】平成11年(1999)12月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−233816
【出願日】平成10年(1998)8月20日
【公開番号】特開平11−150317
【公開日】平成11年(1999)6月2日
【審査請求日】平成10年(1998)8月20日
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【参考文献】
【文献】特開 平8−171104(JP,A)
【文献】特開 平10−333194(JP,A)
【文献】特開 平10−333197(JP,A)
【文献】米国特許5847863(US,A)