説明

光ビーコンとこれによるアップリンク受信位置の特定方法

【課題】 PD分割タイプの光ビーコン4において、最終分割領域UA1におけるアップリンク受信位置の位置標定精度を向上する。
【解決手段】 本発明の光ビーコン4は、各PDに生じる受光レベルに基づいてAのうちのいずれかの代表点を、当該Aにおけるアップリンク受信位置として特定する位置特定部50と、PD1の受光レベルが、UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値と等しくなる、Aの下流端位置を予め記憶する記憶部48と、を備える。位置特定部50は、前回特定されたアップリンク受信位置がUAの境界位置からAn−1までの範囲にある場合に、A用の閾値を、前回のアップリンク情報受信時の全PDの受光レベルの合計値に前記所定係数をかけた値に更新し、今回のアップリンク受信位置がAに含まれ、今回のアップリンク情報受信時のPD1の受光レベルが更新された閾値以上である場合に、記憶された下流端位置をAの代表点とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車載機との間で光信号による双方向通信を行う、道路側に設置された光ビーコンが、車載機からのアップリンク受信位置を特定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System:(財)道路交通情報通信システムセンターの登録商標)が既に展開されている。
このうち、光ビーコンは、近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方向通信が可能となっている。具体的には、車両の保持するビーコン間の旅行時間情報等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信され、逆に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が光ビーコンから車載機に送信されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる光ビーコンを用いた路車間通信システムにより、例えば、通信領域内の特定位置(例えば車両進行方向の上流端)を車両(車載機)の位置と見立て、当該特定位置からその下流側の所定位置(例えば、信号機の手前に設けられた停止線)までの「距離情報」を第2のダウンリンク情報に含ませておき、この距離情報を受信した車載機により、当該距離情報を利用して、停止線の手前で強制停止するように車両を制動させたり、ドライバに停止や減速を促す報知を行ったりして、ドライバに対して安全運転支援を行う場合がある(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
しかし、車載機からのアップリンク情報をより確実に受信するために、実際に運用されている光ビーコンでは、通信領域(特にアップリンク領域)が規格で規定された正式な範囲よりも広くなっていることが多い。
このように通信領域が広範であると、上記「距離情報」の始点となる通信領域内の特定位置と、車両が距離情報を受信した時点における実際の位置との差が大きくなる可能性が高く、距離情報の精度が低下する。
【0005】
このため、この距離情報を利用した安全運転支援の精度も同様に低下し、例えば、安全運転支援制御によって、停止線の手前に停止させるように車両を制動したにも関わらず、停止線をオーバーして車両が停止するといった事態が起こりうる。
そこで、本出願人は、アップリンク領域を車両進行方向に分割した複数の分割領域として定義し、この車両進行方向に並ぶ複数の分割領域にそれぞれに対応してアップリンク情報を受信する複数の受光部を投受光器に設けた光ビーコンを既に提案している(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
各分割領域に対応する複数の受光部を有する光ビーコン(以下、「PD分割タイプ」(PDはPhotodiodeの略)と称することがある。)を使用すれば、アップリンク領域が車両進行方向に比較的広く設定されていても、アップリンク領域を複数の分割領域に区分することで、個々の分割領域それぞれを車両進行方向に狭く設定することができる。
このため、各分割領域それぞれに「距離情報」の始点となる特定の代表点を精度よく設定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−268925号公報
【特許文献2】特開2007−293660号公報
【特許文献3】特開2007−317166号公報
【特許文献4】特開2008−186349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記PD分割タイプの光ビーコンにおいて、例えば、1つのアップリンク光によって発生する互いに隣接する分割領域の受光部(PD)の受光レベルの比率を算出すれば、アップリンク送信位置をより詳しく特定することができる(特許文献4の段落0065〜0066参照)。
このように、PD分割タイプの光ビーコンにおいて、隣接する分割領域の受光部に生じる受光レベルの比率を利用すれば、車両進行方向の位置標定精度を分割領域の長さ未満に抑えることができる。
【0009】
しかし、車両進行方向に並ぶ複数の分割領域のうち、最も下流側の分割領域(図3のUA1:以下、「最終分割領域」ということがある。)の場合には、これより下流側に他の分割領域が存在しないので、最終分割領域の下流側端部の細分エリア(図7のA10:以下、「最終エリア」ということがある。)については、隣接する分割領域に対応する受光レベルとの比率を利用したエリアの細分化を行うことができない。
そこで、従来では、かかる最終エリアについては、最終分割領域の受光部の受光レベルがその閾値を下回る位置を最終エリアの代表点(図7のL0)として定義し、最終エリアで生じたアップリンク光の受光レベルがその閾値を下回った場合に、記憶した代表点を最終エリアのアップリンク受信位置として特定していた。
【0010】
しかしながら、このような従来の位置特定方法では、次のような問題が生じることが判明した。
すなわち、車両から送信されるアップリンク光は、車載機自体の性能やフロントガラスの汚れ具合等によって強度がまちまちであるから、最終分割領域におけるアップリンク光の検出精度を維持するためには、その最終分割領域に対応する受光部の閾値(固定値)を比較的小さめに設定する必要がある。
【0011】
ところが、車両進行方向を横軸とした受光レベルの分布は、例えば図7に示すように、裾野が広がった左右対称のほぼ山型になるので、最終分割領域に対応する受光部の閾値を小さくするほど、最終エリアの代表点が下流側に移動する。
このため、アップリンク光の検出精度を維持すべく、最終分割領域に対応する受光部のための閾値を低めに設定すると最終エリアが下流側に広くなり過ぎ、当該最終エリアについて所望の位置標定精度が得られなくなる場合があった。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み、PD分割タイプの光ビーコンにおいて、最終分割領域におけるアップリンク受信位置の位置標定精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本欄において本発明の光ビーコンの技術的特徴を述べるが、本明細書では、複数の分割領域、受光部及び細分エリアを、必要に応じてそれぞれ次のように記述する。
分割領域 :UA(ただし、iは下流側から順に1,2……m)
受光部 :PD(iは分割領域の場合と対応。)
細分エリア:A(ただし、jは上流側から順に1,2……n)
また、本明細書では、上記添え字i,jに実際の数字を入れて分割領域、受光部及び細分エリアを記述する場合には、識別しやすいように通常の全角文字を使用し、例えば「UA1」、「PD1」、「A1」のように表示する。その他の添え字付き符号(VやL等)についても同様である。
【0014】
(1) 本発明の光ビーコンは、車両進行方向に並ぶ複数のUAにそれぞれ対応する複数のPDと、車両からのアップリンク情報受信時に各PDに生じる受光レベルに基づいて、各UAを車両進行方向に細分化したAのうちのいずれかの代表点を、当該Aにおけるアップリンク受信位置として特定する位置特定部と、PD1の受光レベルが、UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値と等しくなる、Aの下流端位置を予め記憶する記憶部と、を備えている。
【0015】
その上で、本発明の光ビーコンでは、前記位置特定部が、前回特定されたアップリンク受信位置が前記境界位置からAn−1までの範囲にある場合に、A用の閾値を、前回のアップリンク情報受信時の全PDの受光レベルの合計値に前記所定係数をかけた値に更新し、今回のアップリンク受信位置がAに含まれている場合に、今回のアップリンク情報受信時のPD1の受光レベルが更新された前記閾値以上であることを条件として、記憶された前記下流端位置を当該Aの代表点として採用することを特徴とする。
【0016】
本発明の光ビーコンによれば、PD1の受光レベルが、UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値と等しくなる位置を、最終エリアであるAの下流端位置としたので、その所定係数の値に応じて、Aの下流端位置を通常よりも上流側に設定することができる。
また、本発明の光ビーコンによれば、位置特定部が、A用の閾値を、前回のアップリンク情報受信時の全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値に更新するので、上記のようにAの下流端位置を通常よりも上流側に設定しても、アップリンク情報の発光強度に関係なく、その受信位置がAに含まれているか否かを判定することができる。
【0017】
このように、本発明の光ビーコンによれば、Aの下流端位置を通常よりも上流側に設定しても、アップリンク受信位置がAに含まれているか否かを判定できるので、UA1におけるアップリンク受信位置の位置標定精度を向上することができる。
【0018】
なお、本発明における「UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値」とは、UAとこれに対応するPDが3つ以上(m≧3)ある場合において、その境界位置での受光レベルがほぼゼロとなるPDが含まれる場合には、かかるPDの受光レベルを始めから除外して合計値を算出する場合も含む意味である。
すなわち、例えば、PDが4つある場合(m=4)に、互いに隣接する2つのUA1とUA2の境界位置L2において、当該2つのUA1とUA2に対応するPD1とPD2の受光レベルV1,V2しか値を示さず、その境界位置において他のPD3とPD4の受光レベルがほぼゼロとなるような場合(図8参照)には、必ずしも4つのPD1〜PD4の受光レベルV1〜V4の値を合計する必要はなく、PD1とPD2の受光レベルV1,V2の合計値で代用することにしてもよい。
【0019】
(2) 本発明の光ビーコンにおいて、UAの境界位置が複数ある場合は、前記記憶部は、複数の前記境界位置にそれぞれ対応するAの下流端位置を記憶しており、前記位置特定部は、前回のアップリンク受信位置が複数のAのうちのいずれに含まれているかに基づいて、複数の前記下流端位置のうちのいずれをAの代表点として採用するかを決定することが好ましい。
【0020】
この場合、前回のアップリンク受信位置に基づいて複数の下流端位置の中から適切なものを選択できるので、アップリンク情報の発光強度が車両ごとに変化しても、そのアップリンク情報の強度に対応した適切な精度で、Aについてのアップリンク受信位置を特定することができる。
(3) 具体的には、前記位置特定部において、前回のアップリンク受信位置の上流側のUAの境界位置における、全PDの受光レベルに前記所定係数をかけた値と等しくなるAの下流端位置を、当該Aの代表点として採用すればよい。
【0021】
(4) 本発明の光ビーコンにおいて、前記所定係数は、0.5以上であることが好ましい。その理由は、所定係数が0.5を下回ると、Aの下流端位置が通常と余り変わらなくなり、UA1での位置標定精度をさほど向上できなくなるからである。
なお、所定係数を0.5に設定すれば、Aの下流端位置を正確に実測できるので、正確な下流端位置を記憶部に記憶させることができるという利点がある。
【0022】
(5) また、本発明の光ビーコンにおいて、前記所定係数は、隣接するUAについての両PDの受光レベルの比率の最大値以下の値であることが好ましい。その理由は、所定係数が上記比率の最大値を上回ると、動的に更新する閾値の値が大きくなり過ぎ、UA1でのアップリンク受信位置の検出精度が低下するからである。
この場合、所定係数を上記比率の最大値に近い値(例えば、α=0.8)に設定すれば、Aの下流端位置の実測値としての精度は落ちるが、Aの下流端位置をより上流側に設定できるので、UA1での位置標定精度を向上することができる。
【0023】
(6) 本発明の光ビーコンは、ダウンリンク情報を送信する送信部と、アップリンク情報を受信した後に送信する前記ダウンリンク情報に、前記位置特定部が特定したアップリンク受信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含める通信制御部と、を更に備えていることが好ましい。
この場合、通信制御部が、位置特定部が特定したアップリンク受信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報をダウンリンク情報に含めるので、Aに関して正確にアップリンク受信位置を車両側に通知することができる。
【0024】
(7) 本発明のアップリンク受信位置の特定方法は、本発明の光ビーコンが行う特定方法に関するものであり、本発明の光ビーコンと同じ作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
以上の通り、本発明によれば、最終エリアの下流端位置を通常よりも上流側に設定できるので、最終分割領域におけるアップリンク受信位置の位置標定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】光ビーコンの平面図である。
【図3】光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【図4】車載機とこれを搭載した車両の概略構成図である。
【図5】光受信部とビーコン制御機の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図6】路車間通信の手順を示す概念図である。
【図7】車両進行方向を横軸とした場合の各受光部の受光レベルの分布図である。
【図8】最終エリアの下流端位置の実測方法を示すための、図7に対応する分布図である。
【図9】位置特定部によるアップリンク受信位置の特定方法を示す表である。
【図10】最終エリアについての代表点の選択処理を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの続きである。
【図12】実際に実測した受光レベルの分布図である(α=0.8の場合)。
【図13】実際に実測した受光レベルの分布図である(α=0.5の場合)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する車両C(図3参照)に搭載された車載機2とを備えている。
交通管制システム1は、管制室に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4とを有している。光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で双方向通信を行う。
【0028】
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4は、電話回線等の通信回線5を介して中央装置3と接続された通信インタフェースである通信部6と、この通信部6が接続されたビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(図例では4つ)のビーコンヘッド(投受光器)8とを備えている。
各ビーコンヘッド8は、フォトダイオード(PD)により構成される複数の受光部9と、発光ダイオード(LED)により構成される投光部10とを有し、これらは筐体の内部に収納されている(図3参照)。
【0029】
上記投光部10は、近赤外線よりなるダウンリンク光DO(ダウンリンク情報34,36を構成する光信号)を後述する通信領域Aに投光(送信)する。
また、複数の受光部9は、車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク情報35を構成する光信号)を受光するものであり、それぞれ、後述するアップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4に対応して設けられている。
【0030】
図2は、光ビーコン4の平面図である。
図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、各車線R1〜R4に対応して設けられた複数のビーコンヘッド8と、これらビーコンヘッド8を一括制御する制御部である一台の前記ビーコン制御機7とを備えている。
【0031】
上記ビーコン制御機7は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、通信部6(図1参照)による中央装置3との双方向通信と、ビーコンヘッド8による車載機2との路車間通信を行う通信制御部49としての機能を有する。
なお、このビーコン制御機7と車載コンピュータ26とによる路車間通信の内容(図6)については後述する。
【0032】
ビーコン制御機7は、所定の各機能を実行するコンピュータプログラムを自己の記憶装置48(図5参照)に格納している。このプログラムが実行する機能部分には、路車間通信に関する上記通信制御部49と、車載機2からのアップリンク光UOを受光した瞬間の車載機2の位置(以下、「アップリンク受信位置」という。)を特定するための位置特定部50とが含まれている(図1、図2及び図4参照)。
なお、上記位置特定部50が行う処理内容についても後述する。
【0033】
ビーコン制御機7は、道路脇に立設した支柱13に設置されている。各ビーコンヘッド8は、支柱13から道路R側に水平に架設した架設バー14に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
各ビーコンヘッド8の投光部10は、各車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが当該ヘッド8の上流側に設定されている。
【0034】
〔通信領域について〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
図3に示すように、光ビーコン4の通信領域Aは、車載機2の投受光器である車載ヘッド27がダウンリンク情報を受信できるダウンリンク領域(図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、光ビーコン4のビーコンヘッド8が車載ヘッド27からのアップリンク情報を受信できるアップリンク領域(図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
【0035】
図3において、ダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド8の投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲であり、アップリンク領域UAは、投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲である。
従って、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図3の右側部分)と重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致している。
【0036】
光ビーコン(光学式車両感知器)4の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規定されている。
一般道向けの光ビーコン4の場合には、アップリンク領域UAの上流端cは、路面から1mの高さ位置においてヘッド直下から約6.04mとされ、アップリンク領域UAの下流端bは、同高さ位置に置いてヘッド直下から3.4mとされている。従って、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(bc間の長さ)は約3.6mとなる。
【0037】
本実施形態のアップリンク領域UAは、当該領域UAを車両進行方向に複数(図例では4つ)に分割してなる分割領域UA1〜UA4よりなる。
ビーコンヘッド8に設けられた4つの受光部9(PD1〜PD4)は、それぞれアップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4を受光領域としている。従って、例えば、最も上流側に位置する分割領域UA4内で車載ヘッド27から送信されたアップリンク光UOは、主として分割領域UA4に対応するPD4によって受光される。
【0038】
〔車載機及び車両の構成〕
図4は、光ビーコン4と路車間通信する車載機2と、この車載機2が搭載された車両Cの概略構成図である。
図4に示すように、この車両Cは、ドライバの搭乗席(図示せず)を有する車体21と、この車体21に搭載された車載機2と、車両Cの各部を統合制御する電子制御装置(ECU)22と、車体21を駆動するエンジン23と、車体21を制動するブレーキ装置24と、車両Cの現時の速度を常時検出している速度検出器25とを備えている。
【0039】
ECU22は、ドライバのアクセル操作に基づくエンジン23の駆動制御や、ブレーキ操作に基づく制動制御等、車両Cに対する各種の制御を行う。
車載機2は、車載コンピュータ26と、このコンピュータ26のセンサ用インタフェースに接続された車載ヘッド(投受光器)27と、搭乗席のドライバに対するヒューマンインタフェースとしてのディスプレイ28及びスピーカ装置29とを備えている。
【0040】
上記車載ヘッド27は、光ビーコンの投受光器8と同様に、発光ダイオード(LED)からなる投光部とフォトダイオードからなる受光部とを備えている(図示せず)。
投光部は、近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク情報35)を送信し、受光部は、通信領域Aに発光された近赤外線よりなるダウンリンク光DO(ダウンリンク情報34,36)を受光する。
【0041】
車載コンピュータ26は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、車載ヘッド27による光ビーコン4との路車間通信の制御処理を行う。
また、車載コンピュータ26は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として、距離認識部30及び支援制御部32を備えている。なお、これらの各機能部30,32の処理内容については後述する。
【0042】
〔ビーコン制御機等の回路構成〕
図5は、光ビーコン4の光受信部とビーコン制御機7の回路構成の一例を示すブロック図である。
図5において、4つの受光部9(PD1〜PD4)は、それぞれが互いに独立して機能するフォトダイオードを近接させてビーコンヘッド8に配置され、各受光部9はそれぞれ路側の分割領域UA1〜UA4に対応している。
【0043】
4つの受光部9(PD1〜PD4)のうち、PD1は、通信領域A中の最も下流側の分割領域(最終分割領域)UA1に対応しており、PD2〜PD4は、それぞれ、下流側から2番目、3番目及び4番目の分割領域UA2〜UA4に対応している。
なお、PD1〜PD4は、独立した基板からなるフォトダイオードを複数並べて配置したものであってもよいし、単一の基板上に、互いに独立して機能する素子を複数並べて配置したものであってもよい。
【0044】
光ビーコン4の光受信部は、上記PD1〜PD4と、これらの出力電圧を増幅する複数の増幅回路42と、この増幅回路42の後段側の加算器43と、コンパレータ44及び検波回路46とを備えており、これらの回路又は素子は、各車線R1〜R4に対応する複数のビーコンヘッド8にそれぞれ搭載されている。
増幅回路42は、n型MOSFET等よりなる増幅素子や、この素子の出力電圧を更に増幅する複数のオペアンプ等を含み、PD1〜PD4の出力電圧を例えば1万〜10万倍オーダで増幅する。
【0045】
増幅回路42の出力側は単一の加算器43に接続され、この加算器43の出力側にはコンパレータ44が接続されている。
各増幅回路42からの出力電圧は、加算器43で1つのアナログ信号に重畳される。さらに、加算器43から出力される前記アナログ信号は、コンパレータ44によってデジタル信号に変換されてビーコン制御機7のプロセッサ45に送られる。プロセッサ(CPU)45は、コンパレータ44から送られるデジタル信号からアップリンク情報35に含まれるデータ信号や通信制御信号を抽出する。
【0046】
また、各増幅回路42の出力側にはそれぞれ検波回路46に接続されており、これら検波回路46の出力側はビーコン制御機7内のA/Dコンバータ47に接続されている。
各増幅回路42の出力電圧は、検波回路46で平滑化されてから後段のA/Dコンバータ47でデジタル信号に変換され、ビーコン制御機7のプロセッサ45に送られる。
【0047】
プロセッサ45は、A/Dコンバータ47のデジタル信号からPD1〜PD4それぞれの受光レベルV1〜V4を取得し、これらの受光レベルV1〜V4を所定の閾値と比較した結果と受光レベルV1〜V4間の比率とに基づいて、アップリンク光UOをアップリンク領域UA内のどの位置で受光したかを特定することができる。
従って、プロセッサ45は、記憶装置48に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、路車間通信の際の通信制御機能だけでなく、受光レベルに基づくアップリンク受信位置の特定機能の機能実現手段となる。
【0048】
記憶装置48には、上記各機能に関するコンピュータプログラムが格納されているとともに、PD1〜PD4がアップリンク光UOを受光しているか否かを判定するための閾値Th1〜Th4等を記憶している。
つまり、プロセッサ45及び記憶装置48は、PD1〜PD4の受光レベルに基づいてアップリンク受信位置を特定する前記位置特定部50(図1、図2及び図4参照)を構成している。
【0049】
なお、プロセッサ45は、アップリンク情報35に含まれるデータ信号や、特定した車載機2からのアップリンク受信位置に関する情報、通信部6を介して中央装置3から与えられる情報等に基づいて、車載機2に送信すべき情報を生成することができる。
【0050】
〔路車間通信の内容(通信制御部の処理内容)〕
図6は、通信領域Aにおいて、ビーコンヘッド8と車載ヘッド27との間で行われる双方向での路車間通信の手順を示している。以下、図6を参照しつつ、本実施形態の路車間通信の内容を説明する。
【0051】
まず、光ビーコン4のビーコン制御機7(通信制御部49)は、各車線R1〜R4に対応するビーコンヘッド8から、ダウンリンクの切り替え前の第1情報として、車線通知情報を含む第1のダウンリンク情報34を、各車線R1〜R4のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常に送信し続けている(図6のF1)。
なお、この段階では、車線通知情報には未だ車両IDは格納されていない。
【0052】
車載機2を搭載した車両Cが実際のダウンリンク領域DAに進入すると、車載機2の車載ヘッド27が車線通知情報(車両ID無し)を含む第1のダウンリンク情報34を受信する。
この際、車載機2の車載コンピュータ26は、当該車両Cが実際の通信領域A内に存在していることを認識する。その後、車載コンピュータ26は、アップリンク情報35の送信を開始し(図6のF2)、このアップリンク情報35をビーコンヘッド8に対して所定の送信周期(アップリンク送信周期)で送信する(図6のF3)。
【0053】
車載コンピュータ26は、車両Cの特定の車両IDを上記アップリンク情報35に格納して当該アップリンク情報35を送信し、ビーコン間の旅行時間情報を有している場合には、この情報もアップリンク情報35に含ませる。
また、車載コンピュータ26は、光ビーコン4のビーコン制御機7がダウンリンクの切り替えを行ったことを認識するまで、当該アップリンク情報35を送信し続ける。
【0054】
一方、光ビーコン4のビーコンヘッド8がアップリンク情報35受信すると(図6のF4)、ビーコン制御機7(通信制御部49)は、ダウンリンクの切り替えを行い、第2情報として、車両ID情報を有する車線通知情報を含む第2のダウンリンク情報36の送信を開始し(図6のF5)、この第2のダウンリンク情報36の送信を所定時間内において可能な限り繰り返す(図6のF6)。
【0055】
上記車線通知情報には、車線R1〜R4(図2)ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与することができる。
このため、異なる車線R1〜R4を走行する各車両Cの車載コンピュータ26は、その格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを判断することにより、自車両がどの車線R1〜R4を走行しているかを認識できる。
【0056】
第2のダウンリンク情報36には、車両IDを含む車線通知情報の他に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報、及び、ドライバに対する安全運転支援のための支援情報等が含まれている。
この支援情報には、光ビーコン4より下流側の信号機の灯色が変わるタイミング情報である信号情報の他、位置特定部50が特定したアップリンク光UOの受信位置に基づく、アップリンク領域UAからその下流側の所定位置(例えば、図7に示す停止線40)までの距離に関する「距離情報」が含まれている。
【0057】
図6に示すように、第2のダウンリンク情報36は、単一又は複数の最小フレーム37で構成されている。前記「近赤外線式インタフェース規格」によれば、この最小フレーム37のデータ量は合計128バイトと規定され、ヘッダ部38に5バイト、実データ部39に123バイトが割り当てられている。
前記規格によれば、第2のダウンリンク情報36は、1〜80個の最小フレーム37で構成することができ、送信可能時間は250msに設定されている。また、このダウンリンク情報36は送信すべき情報量に対応した任意数の最小フレーム37で構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。
【0058】
最小フレーム37の送信周期は約1msである。従って、例えば、3つの最小フレーム37で一つのダウンリンク情報36を構成する場合には、ダウンリンク情報36の送信周期は約3msになるので、当該ダウンリンク情報36は所定の送信可能時間(250ms)の間に約80回繰り返して送信されることになる。
車載機2の車載コンピュータ26は、第2のダウンリンク情報36を受信した時点(図6のF7)で光ビーコン4でのダウンリンクの切り替えを認識し、この時点でアップリンク情報35の送信を停止する。
【0059】
〔安全運転支援の内容〕
上記距離情報を含む第2のダウンリンク情報36を車載ヘッド27が受信すると、車載コンピュータ26の距離認識部30(図4参照)は、そのダウンリンク情報36のフレームに含まれている距離情報(図7のL−LEN(k))を、自車から停止線40までの距離として認識する。なお、図7に示すように、「L」は基準位置Prから停止線40までの距離であり、「LEN(k)」は基準位置Prから各代表点L0〜L9までの補正距離である。
【0060】
車載コンピュータ26の支援制御部32は、距離認識部30が認識した距離情報を利用してドライバに対する安全運転支援を行う。
例えば、支援制御部32は、光ビーコン4から通知された停止線40までの距離と、現時点の車両Cの走行速度とから、その停止線40の手前で停止するための減速度(負の加速度)を算出し、その減速度をECU22に通知する。
ECU22は、当該減速度となるようにブレーキ装置24を作動させ、これにより、車両Cを停止線40の手前で自動停止させることができる。
【0061】
また、支援制御部32の安全運転支援としては、ディスプレイ28やスピーカ装置29を用いたドライバに対する注意喚起であってもよい。
例えば、支援制御部32により、停止線40までの距離(L−LEN(k))をディスプレイ28に表示させてもよい。また、現時の車両Cの走行速度が速すぎる場合には、支援制御部32により、停車や減速を促す注意喚起をディスプレイ28に表示させたり、その注意喚起をスピーカ装置29から音声出力させたりしてもよい。
【0062】
また、支援制御部32は、第2のダウンリンク情報36に含まれる信号情報を用いて安全運転支援を行うこともできる。
ここで、信号情報とは、交通信号機が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報(表示予定情報)等を含む。例えば、「現在灯色が青信号で継続予定時間が5秒であり、次の灯色が黄信号で継続予定時間が8秒であり、その次の灯色が右折青矢印灯で継続予定時間10秒である」といった情報である。
【0063】
この信号情報を受信した車載コンピュータ27の支援制御部32は、停止線40までの距離と車両Cの走行速度等から、停止線40に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。
そして、例えば、現在の信号灯色は青信号であるが、停止線40に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線40の手前で停止することができるように、車両Cを制動するための制御を行う。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、車両Cの速度を維持するための制御を行うことができる。
【0064】
車両Cを制動したり速度を維持したりするため、支援制御部32は、車両のブレーキ装置24(図4)やアクセルに対して直接的に制御を行ってもよい。
また、支援制御部32では単に制動や速度維持に関する情報を生成し、その情報をECU22に通知することによってECU22でブレーキ装置24やアクセルを制御するものであってもよい。すなわち、支援制御部32は、間接的な制御を行うものであってもよい。また、支援制御部32は、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0065】
支援制御部32は、車両Cの搭乗者に対して、信号灯色の推定の結果を音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をスピーカ装置29からドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置等のディスプレイ28に文字や図柄で表示したりすることができる。
安全運転の支援については、不適切なタイミングや内容でドライバに情報を通知することのないようなヒューマンインタフェースとするため、例えば低速走行時には音声や画像表示による報知を行わないようにすることができる。
【0066】
なお、信号情報は、現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
また、信号情報は、光ビーコンから取得するものであってもよいし、光ビーコン以外のインフラ装置等から取得するものであってもよい。
【0067】
後者の場合、例えば、信号機の信号制御機が無線通信機を備えている場合には、当該無線通信機から取得してもよいし、前記信号情報を取得した先行車両から車々間通信によって取得してもよい。信号情報を受信する信号情報受信部は、車載ヘッド27を用いてもよいし、車載機2に備えた別の受信器であってもよい。
【0068】
〔細分エリアとその代表点〕
図7は、車両進行方向を横軸とした場合の各受光部9(PD1〜PD4)の受光レベルV1〜V4の分布図である。
まず、図7における各記号の意味を説明すると、次の通りである。
V1:PD1の受光レベル(検波されたPD電圧:mV)
V2:PD2の受光レベル(検波されたPD電圧:mV)
V3:PD3の受光レベル(検波されたPD電圧:mV)
V4:PD4の受光レベル(検波されたPD電圧:mV)
【0069】
Th1:PD1用の閾値(mV)
Th2:PD2用の閾値(mV)
Th3:PD3用の閾値(mV)
Th4:PD4用の閾値(mV)
なお、本実施形態では、Th1=Vdf=100mV、Th2=100mV、Th3=85mV、Th4=70mVに設定されている。もっとも、閾値の固定値はこれらの値に限定されるものではない。
【0070】
Pr:道路R上の基準位置(ヘッド直下位置Hから上流側に5m)
P0:ビーコン下流側の所定位置(停止線40の位置)
L :PrからP0までの道程距離
:各UA(i=1〜4)を細分した細分エリア(j=1,2……10)
:各Aに定義した代表点(k=0,2……9)
【0071】
ここで、図7に示すように、ビーコンヘッド8に実装されたPD1〜PD4の受光レベルV1〜V4(PD電圧:mV)は、車両進行方向を横軸とすると、裾野が広がった左右対称のほぼ山型の分布になり、隣接するPD同士では、最大幅の約半分の範囲で互いに重複するようになる。
また、ビーコンヘッド8が傾いていない場合(すなわち、水平に設置されている場合)には、ビーコンヘッド8から遠いほどアップリンク光UOの強度が低下するので、下流側ほどPD電圧が高く、V1〜V4の順でPD電圧の振幅が次第に小さくなる。
【0072】
そこで、本実施形態では、受光レベルV1〜V4の上記分布特性を利用して、UAの境界位置と、各境界位置間の距離を所定の細分数Nで細分した細分エリアAを新たに定義し、各PDの受光レベルV1〜V4によって特定可能な位置標定の分解能を増大させている。
すなわち、各分割領域の「境界位置」をV=Vi+1となる位置(図7のL2,L5,L8)とし、この境界位置間の距離を更に分割した細分エリアAを定義している。
【0073】
具体的には、分割領域が隣接関係にあるPD,PDi+1の受光レベルV,Vi+1が一定の比率m1/m2又はその逆数m2/m1となる中間位置を定義し、これらの中間位置を境界として各分割領域を細分している。
例えば、図7の例では、上記の比率m1/m2が例えば9/1になっており、V4/V3=9となる中間位置がL9となっている。最も上流側の分割領域であるUA4は、この中間位置L9を境界として、A1とA2の2つのエリアに細分されている。
【0074】
また、V4/V3=1/9となる中間位置がL7であり、V3/V2=9となる中間位置がL6となっている。上流側から2番目の分割領域であるUA3は、これら2つの中間位置L7,L6を境界として、A3〜A5までの3つのエリアに細分されている。
同様に、V3/V2=1/9となる中間位置がL4であり、V2/V1=9となる中間位置がL3となっている。上流側から3番目の分割領域であるUA2は、これら2つの中間位置L4,L3を境界として、A6〜A8までの3つのエリアに細分されている。
【0075】
更に、V2/V1=1/9となる中間位置がL1となっている。最も下流側の分割領域であるUA1は、この中間位置L1を境界として、A9とA10の2つのエリアに細分されている。
このように、隣接する分割領域に対応する受光レベルV,Vi+1の比率を利用すれば、分割領域の長さ未満の細分エリアAを各分割領域内に定義することができ、分割領域を更に細かい長さのエリアに細分することができる。
【0076】
また、本実施形態では、各A(j=1,2……10)の下流端位置を当該エリアの代表点と定義している。すなわち、図7の例で説明すると、A1の代表点はL9、A2の代表点はL8、A3の代表点はL7、…(中略)…A10の代表点はL0である。
本実施形態のビーコン制御機7は、上記各代表点L0〜L9の位置(具体的には、基準位置Prから各代表点L0〜L9までの補正距離LEN(k):k=0,1……9)を予め記憶装置48に記憶している。
【0077】
なお、ビーコン制御機7の記憶装置48に、補正距離LEN(k)を記憶させるデータ入力作業は、例えば次のようにして行われる。
1) 受光レベルV1〜V4をモニタリングしなら、一定レベルのアップリンク光UOを発光する模擬車載機2を搭載した台車を、基準位置Prよりも上流側の地点からビーコン直下点Hに向かってゆっくり走行させる。
2) V4がTh4を超えた状態で、V3/V4=1/9となる位置L9を探索し、この位置L9からPrまでの補正距離LEN(9)を記憶装置48に入力する。
【0078】
3) V4がTh4を超えた状態で、V3/V4=1となる位置L8を探索し、この位置L8からPrまでの補正距離LEN(8)を記憶装置48に入力する。
4) V3がTh3を超えた状態で、V3/V4=9となる位置L7を探索し、この位置L7からPrまでの補正距離LEN(7)を記憶装置48に入力する。
以下同様に、隣接するPD間の受光レベルの比率に基づいて残りの位置L6〜L9を探索し、これら位置L6〜L9からPrまでの補正距離LEN(k)(k=6,5……9)を、それぞれ記憶装置48に入力する。
5) V1は最下流側に位置するUA1に対応するPD1の受光レベルであり、受光レベルの比率を利用した位置L0の特定ができないので、V1がTh1(=Vdf)と同値になる位置L0を探索し、この位置L0からPrまでの補正距離LEN(0)を記憶装置48に入力する。
【0079】
〔距離の補正処理と車両への通知〕
ビーコン制御機7の位置特定部50は、後述する代表点Lの選択処理(図9)によって補正距離LEN(k)が判明すると、道程距離Lからその補正距離LEN(k)を減算した実距離(=L−LEN(k))を演算し、この実距離をビーコン制御機7に通知する。
ビーコン制御機7は、通知された実距離(=L−LEN(k))を、距離情報として第2のダウンリンク情報36の送信フレームに格納し、この送信フレームをビーコンヘッド8から繰り返し送出する。
【0080】
例えば、図7に示すように、実際のアップリンク光UOがA4で送信されたとすると、位置特定部50は、道程距離Lから補正距離LEN(6)を減算した(L−LEN(6))の値を出力し、通信制御部49はその値を第2のダウンリンク情報36に格納する。
なお、この場合、A4の代表点L6と実際のアップリンク受信位置との間には、最大でA4のエリア長さに相当する誤差βが含まれる。
【0081】
しかし、本実施形態では、UA3を3等分することによってA4のエリア長さを約30cm程度まで短縮しているので、誤差βの大きさ自体に特に問題はないし、A4の代表点として当該A4の下流端位置L6を採用しているので、車両C側には、必ず真の距離よりもやや短めの、安全側に若干シフトした距離情報が通知される。
このため、上記の実距離に基づいて車載機2が安全運転支援を行っても、車両Cが停止線40をオーバーランする等の支障が発生することはない。
【0082】
また、本実施形態において、ビーコン4側では距離の補正演算を行わず、道程距離Lと補正距離LEN(k)の双方をダウンリンク情報36に格納し、実距離を演算する補正処理を車両C側で行わせることにしてもよい。
或いは、車両Cが道程距離Lを予め記憶している場合には、補正距離LEN(k)だけをダウンリンク情報36に格納し、実距離を演算する補正処理を車両C側で行わせることにしてもよい。
【0083】
〔最終エリアに生じる問題点〕
ところで、図7に示すように、複数の分割領域のうち、最も下流側のUA1(最終分割領域)の場合には、これより下流側に他の分割領域が存在しないので、UA1の下流側端部を構成するA10については、隣接する分割領域に対応する受光レベルとの比率を利用したエリアの細分化を行うことができない。
【0084】
その一方で、車両Cから送信されるアップリンク光UOは、車載機2自体の性能やフロントガラスの汚れ具合等によって強度がまちまちであるから、UA1におけるアップリンク光UOの検出精度を維持するためには、そのUA1に対応するPD1の閾値Th1を比較的小さめに設定しておく必要がある。
ところが、車両進行方向を横軸とした受光レベルの分布は、図7に示すように、裾野が広がった左右対称のほぼ山型になることから、UA1に対応するPD1の閾値Th1(=Vdf)を小さくするほど、A10の代表点L0が下流側に移動する。
【0085】
従って、アップリンク光UOの検出精度を維持すべく、UA1用の閾値を低めに設定すると、A10が下流側に広くなり過ぎ、当該A10において所望の位置標定精度が得られなくなることがある。
そこで、本実施形態では、Th1の通常の固定値Vdfよりも高い閾値Vb,Vc,Vdに対応するA10の下流端位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」(図8参照)を実測して記憶装置48に記憶させておき、この位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」のうちのどれをA10の代表点とするかを、前回受光分のアップリンク光UOを用いて動的に判定することにより、アップリンク光UOの検出精度の維持と、最終エリア(A10)の短縮化による位置標定精度の向上を両立させることとした。
【0086】
〔最終エリアの下流端位置の実測方法〕
図8は、最終エリア(A10)の下流端位置の実測方法を示すための、図7に対応する分布図である。以下、この図8を参照しつつ、その実測方法と、実測された下流端位置の選択条件について説明する。
前記した通り、PD1〜PD4の受光レベルV1〜V4は、隣接するPD同士において最大幅の約半分の範囲で互いに重複し、V1〜V4の順でPD電圧の振幅が次第に小さくなる。
【0087】
そこで、全PDの受光レベルの合計値Vsum(=V1+V2+V3+V4)に着目し、このVsumに所定係数α(本実施形態では、α=0.9)をかけた特性曲線CLを描くと、図8に示すように、その特性曲線CLは、ほぼA2からA9に至るまで下流側ほど高くなるように単調増加する曲線になる。
また、各PDの受光レベルV1〜V4の分布は、アップリンク光UOの強度が変化すると、縦軸方向の振幅が伸縮するだけで横軸方向の位相は殆ど変化しないので、特性曲線CLと各分布との車両進行方向の相対位置はアップリンク光UOの強度に関係なく殆ど変化しない。
【0088】
そこで、A10以外のエリアA1〜A9の下流端位置(代表点)L1〜L9を現地で実測する際に、Vsum×αの値を同時にモニタリングしておき、分割領域の境界位置L2,L5,L8におけるVsum×αの値Vb,Vc,Vdが最終分割領域の受光レベルV1と交差する下流側の位置L0’’’,L0’,L0’’を実測する。
そして、これらの位置L0’’’,L0’,L0’’ (具体的には基準位置Prからの距離値)を、A10の代表点となり得る下流端位置の候補として、それぞれ記憶装置48に予め記憶させておく。
【0089】
なお、分割領域の境界位置L2,L5,L8では、隣接するPDの受光レベルが同じ値になるので、Vsum×αの電圧値Vb,Vc,Vdを別の表現で定義すると、次の通りである。
Vb:V1=V2のときの、Vsum×αの値
Vc:V2=V3のときの、Vsum×αの値
Vd:V3=V4のときの、Vsum×αの値
【0090】
図8に示すように、上記の下流端位置L0’’’,L0’,L0’’は、いずれも、Th1のデフォルト値Vdf(=100mV)に対応する下流端位置L0よりも上流側に現れる。
このため、A10の代表点として、これらの下流端位置L0’’’,L0’,L0’’のうちのいずれを用いても、A10の代表点をL0だけで運用する従来の場合に比べて、A10のエリア長さを短縮でき、A10についての位置標定精度を高めることができる。
【0091】
なお、図8に例示する受光レベルの分布の場合、V1=V2の境界位置L2では、PD3とPD4の受光レベルV3,V4がほぼゼロとなるので、この境界位置L2のVsumを求める場合には、受光レベルV3,V4を除外して、Vsum=V1+V2としてVbを求めることにしてもよい。
また、V2=V3の境界位置L5では、PD1とPD4の受光レベルV1,V4がほぼゼロとなるので、この境界位置L5のVsumを求める場合には、受光レベルV1,V4を除外して、Vsum=V2+V3としてVcを求めることにしてもよい。
【0092】
同様に、V3=V4の境界位置L8では、PD1とPD2の受光レベルV1,V2がほぼゼロとなるので、この境界位置L8のVsumを求める場合には、受光レベルV1,V2を除外して、Vsum=V3+V4としてVdを求めることにしてもよい。
このように、ある境界位置L2,L5,L8での受光レベルがほぼゼロとなるPDが含まれる場合には、かかるPDの受光レベルを始めから除外してVsumを求めることにしてもよい。
【0093】
〔最終エリアについての代表点の選択基準〕
そこで、光ビーコン4の運用時において、如何なる条件の場合に、L0以外のどの下流端位置L0’’’,L0’,L0’’を選択すべきかが問題となる。
この点、A3〜A9の範囲では、特性曲線CLが下流側ほど高レベルになる特性を有するから、仮に、車両Cから送信された前回のアップリンク光UOがA3〜A5の範囲内であり、同じ車両Cから送信された今回のアップリンク光UOがA10の範囲であった場合には、今回のアップリンク光UOによって生じるPD1の受光レベルV1は、前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値より高いと考えられる。
【0094】
従って、通信領域Aを走行中の車両Cによる前回のアップリンク送信位置がA3〜A5であった場合に、その前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値をA10用の閾値として一時的に記憶しておけば、同じ車両Cからの今回のアップリンク光UOによってPD1に生じた受光レベルV1が当該閾値を超えた場合に、その今回のアップリンク受信位置は、予め実測しておいたVdに対応する「L0’’」よりも必ず上流側であったとみなすことができる。
【0095】
また、上記と同様に、車両Cから送信された前回のアップリンク光UOがA6〜A8の範囲内であり、同じ車両Cから送信された今回のアップリンク光UOがA10の範囲であった場合においても、今回のアップリンク光UOによって生じるPD1の受光レベルV1は、前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値よりも高いと考えられる。
【0096】
従って、通信領域Aを走行中の車両Cによる前回のアップリンク送信位置がA6〜A8であった場合に、その前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値をA10用の閾値として一時的に記憶しておけば、同じ車両Cからの今回のアップリンク光UOによってPD1に生じた受光レベルV1が当該閾値を超えた場合に、その今回のアップリンク受信位置は、予め実測しておいたVcに対応する「L0’」よりも上流側であったとみなすことができる。
【0097】
更に、上記と同様に、車両Cから送信された前回のアップリンク光UOがA9の範囲内であり、同じ車両Cから送信された今回のアップリンク光UOがA10の範囲であった場合においても、今回のアップリンク光UOによって生じるPD1の受光レベルV1は、前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値よりも高いと考えられる。
【0098】
従って、通信領域Aを走行中の車両Cによる前回のアップリンク送信位置がA9であった場合に、その前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値をA10用の閾値として一時的に記憶しておけば、同じ車両Cからの今回のアップリンク光UOによってPD1に生じた受光レベルV1が当該閾値を超えた場合に、その今回のアップリンク受信位置は、予め実測しておいたVcに対応する「L0’’’」よりも上流側であったとみなすことができる。
【0099】
〔アップリンク受信位置の特定方法〕
図9は、位置特定部50によるアップリンク受信位置の特定方法を示す表である。ビーコン制御機7の位置特定部50は、この表に示す判定基準に基づいていずれか1つのAの代表点Lを選択し、選択した代表点Lを、車両Cから通信領域Aでアップリンク光UOを受信した位置(アップリンク受信位置)として特定する。
【0100】
具体的には、V4≧Th4でかつm1/m2≦V4/V3の場合には、アップリンク受信位置がA1の範囲にあると見なせるので、位置特定部50は、A1の代表点L9をアップリンク受信位置として特定する。
また、V4≧Th4でかつ1≦V4/V3<m1/m2である場合には、アップリンク受信位置がA2の範囲にあると見なせるので、位置特定部50は、A2の代表点L8をアップリンク受信位置として特定する。
【0101】
更に、V3≧Th3でかつm2/m1≦V4/V3<1である場合には、アップリンク受信位置がA3の範囲にあると見なせるので、位置特定部50は、A3の代表点L7をアップリンク受信位置として特定する。
位置特定部50は、以下同様にして、A10を除くA9までの細分エリアについては、V1〜V4が図9に記載の各判定基準を満たす場合に、そのAに対応する1つの代表点Lをアップリンク受信位置として特定する。
【0102】
一方、最終の細分エリアA10についてのアップリンク受信位置を特定する場合には、位置特定部50は、「前回エリア」が何処であったかに基づいて、複数の代表点L0,L0’’,L0’,L0’’’のうちのいずれかを選択し、その選択した代表点をアップリンク位置として特定する。
なお、この「前回エリア」とは、前回のアップリンク光UOについて特定されたアップリンク受信位置を含む細分エリアのことをいう。
【0103】
具体的には、位置特定部50は、前回エリアがない(最初の特定エリアがA10)、または前回エリアがA1〜A2の場合には、閾値Th1としてそのデフォルト値Vdfを採用し、今回のアップリンク光UOの受光レベルV1がその閾値Th1以上である場合に、A10の代表点としてL0を選択する。
また、位置特定部50は、前回エリアがA3〜A5の場合には、前回のアップリンク光UOについて求めたVsum×αを閾値Th1として採用し、今回のアップリンク光UOの受光レベルV1がその閾値Th1以上である場合に、A10の代表点としてL0’’を選択する。
【0104】
同様に、位置特定部50は、前回エリアがA6〜A8の場合も、前回のアップリンク光UOについて求めたVsum×αを閾値Th1として採用し、今回のアップリンク光UOの受光レベルV1がその閾値Th1以上である場合に、A10の代表点としてL0’を選択する。
更に、位置特定部50は、前回エリアがA9の場合も、前回のアップリンク光UOについて求めたVsum×αを閾値Th1として採用し、今回のアップリンク光UOの受光レベルV1がその閾値Th1以上である場合に、A10の代表点としてL0’を選択する。
【0105】
このように、位置特定部50は、前回エリアがA3〜A9の場合には、前回のアップリンク光UOのVsum×αを閾値Th1とし、前回エリアがA3〜A5、A6〜A8又はA9のうちのどの範囲であったかにより、L0’’,L0’,L0’’’のうちのいずれかを選択する。
【0106】
〔最終エリアの代表点の選択処理〕
図10は、位置特定部50が行う、最終エリアについての代表点の選択処理を示すフローチャートである。以下、この図10を参照しつつ、最終エリアの代表点の選択方法をより詳細に説明する。
なお、図10のフローチャートにおいて、「RN」は、今回のアップリンク受信位置の特定結果を表す変数であり、「RA」は、前回のアップリンク受信位置の特定結果を表す変数である(ステップST1)。
【0107】
まず、位置特定部50は、RNがA1〜A2である場合(ステップST2でYes)には、Th1をデフォルト値Vdfに初期化した上で(ステップST3)、RNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
なお、図10では省略しているが、位置特定部50は、前回の判定がなく、今回いきなりA10で受光した場合に備えて、前回の判定から今回の判定までに所定時間(例えば1秒:車両Cがアップリンク領域を通過するのに要する時間は比較的低速の場合でも1秒より大幅に短いので、1秒以上空きがあれば別車両と判断できる。)以上の空きがある場合にも、Th1をデフォルト値Vdfに初期化する。
また、位置特定部50は、RNがA1〜A2でない場合(ステップST2でNo)であり、かつ、RNがA3〜A9である場合(ステップST4でYes)には、Vsum×αの値にTh1を更新した上で(ステップST5)、RNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0108】
なお、ステップST5における「Vsum×αの値にTh1を更新」とは、前回のアップリンク光UOによって生じるVsum×αの値を、A10用の閾値Th1として一時的に記憶しておくことを意味する。
一方、ステップST4の判定結果がNoの場合には、RNがA1〜A9の範囲にないので、RNがA10の範囲内にある可能性がある。そこで、位置特定部50は、ステップST4がNoの場合以降の処理として、前回のアップリンク受信位置(=RA)に基づくA10の下流端位置「L0’’」,「L0’」,「L0’’’」の選択処理を行う。
【0109】
すなわち、位置特定部50は、ステップST4の判定結果がNoであり、かつ、RAがA1〜A2である場合(ステップST6でYes)には、RNを「特定不可」にした上で(ステップST7)、RNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0110】
また、位置特定部50は、RAがA1〜A2でない場合(ステップST6でNo)において、RAがA3〜A5である場合(ステップST8でYes)には、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST9)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’’」に置き換え(ステップST10)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST11)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0111】
なお、この場合の「ULエリアオーバー」とは、車載機2が最終エリアA10よりも下流側でアップリンクを送信したため、光ビーコン4がアップリンクを受信できなかったことを意味する。
【0112】
更に、位置特定部50は、RAがA3〜A5でない場合(ステップST8でNo)において、RAがA6〜A8である場合(ステップST12でYes)にも、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST13)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’」に置き換え(ステップST14)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST15)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0113】
同様に、位置特定部50は、RAがA6〜A8でない場合(ステップST12でNo)において、RAがA9である場合(ステップST16でYes)にも、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST17)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’’’」に置き換え(ステップST18)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST19)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0114】
また、位置特定部50は、RAがA9でない場合(ステップST16でNo)において、RAが「L0’’’」である場合(ステップST20でYes)にも、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST21)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’’’」に置き換え(ステップST22)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST23)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0115】
位置特定部50は、RAが「L0’’’」でない場合(ステップST20でNo)において、RAが「L0’」である場合(ステップST24でYes)にも、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST25)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’」に置き換え(ステップST26)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST27)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0116】
同様に、位置特定部50は、RAが「L0’」でない場合(ステップST24でNo)において、RAが「L0’’」である場合(ステップST28でYes)にも、PD1の受光レベルV1が閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップST29)。
位置特定部50は、V1≧Th1である場合には、RNを「L0’’」に置き換え(ステップST30)、V1≧Th1でない場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換えて(ステップST31)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0117】
そして、位置特定部50は、RAが「L0’’」でない場合(ステップST28でNo)は、前回の特定結果であるRAが「ULエリアオーバー」であるか否かを判定する(ステップST32)。
位置特定部50は、RAが「ULエリアオーバー」である場合には、RNを「ULエリアオーバー」に置き換え(ステップST33)、RAが「ULエリアオーバー」でない場合には、RNを「特定不可」に置き換えて(ステップST34)、そのRNをRAとして保存し(ステップSR1)、RNを出力する(ステップSR2)。
【0118】
〔光ビーコンの効果〕
以上の通り、本実施形態の光ビーコン4によれば、PD1の受光レベルV1が、UAの境界位置L2,L5,L8における全PDの受光レベルの合計値Vsumに所定係数α(本実施形態では、α=0.9)をかけた値と等しくなる位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」を、最終エリアであるA10の下流端位置としたので、そのA10の下流端位置を通常よりも上流側に設定することができる。
【0119】
また、本実施形態の光ビーコン4によれば、位置特定部50が、A10用の閾値Th1を、前回のアップリンク光UOについての全PDの受光レベルの合計値Vsumに所定係数αをかけた値に更新するので、上記のようにAの下流端位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」を通常よりも上流側に設定しても、アップリンク光UOの強度に関係なく、アップリンク受信位置がA10に含まれているか否かを特定することができる。
【0120】
このように、本実施形態の光ビーコン4によれば、A10の下流端位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」を通常よりも上流側に設定しても、アップリンク受信位置がA10に含まれているか否かを正確に特定できるので、最終分割領域であるUA1におけるアップリンク受信位置の位置標定精度を向上することができる。
【0121】
また、本実施形態の光ビーコン4によれば、ビーコン制御機7の記憶装置48に、複数の境界位置L2,L5,L8にそれぞれ対応するA10の下流端位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」が記憶され、位置特定部50が、前回のアップリンク受信位置が複数のAのうちのいずれに含まれているかに基づいて、その複数の下流端位置「L0’’’」,「L0’」,「L0’’」うちのいずれをA10の代表点として採用するかを決定する。 このため、前回のアップリンク受信位置に基づいて適切なA10の代表点を選択することができるので、アップリンク光UOの強度が車両Cごとに変化しても、そのアップリンク光UOの強度に対応した適切な精度で、A10についてのアップリンク受信位置を特定することができる。
【実施例】
【0122】
図12及び図13は、ビーコンヘッド8が道路Rの所定位置に取り付けられたPD分割タイプの光ビーコン4に対して、PD1〜PD4の受光レベルを実際に実測した場合の分布図である。
なお、この分布図は、車線中央、かつ光ビーコン4真下から下流に4.5mの位置での受信強度が1.0μW/cmになるように発光強度を調整した車載機2を路面から1.0m高さとなるように台車に載せ、この台車を道路Rに沿って下流側にゆっくり走行させた場合の測定結果である。
【0123】
ここで、図12及び図13における横軸の値は、ヘッド直下点H(図7参照)を原点としてそこから上流側の距離の値である。また、図12では、α=0.8の特性曲線CLが描かれており、図13では、α=0.5の特性曲線CLが描かれている。
図12に示すように、Vsumに乗算する所定係数αを0.8とした場合には、A9の下流端位置からL0’’までの距離が0.66mとなり、L0’までの距離が0.55mとなった。これに対して、図13に示すように、Vsumに乗算する所定係数αを0.5とした場合には、A9の下流端位置からL0’’までの距離が0.73mとなり、L0’までの距離が0.64mとなった。
【0124】
上記の実測結果から判るように、最終エリアであるA10のエリア長さを短縮するためには、Vsumに乗算する所定係数αをできるだけ大きい値に設定することが好ましい。
もっとも、所定係数αを、隣接するUAについての両PDの受光レベルの比率の最大値m1/m2(本実施形態では0.9)を超える値に設定しても、前回のアップリンク光UOの受信レベルで更新する閾値(=Vsum×α)の値が大きくなり過ぎて、UA1でのアップリンク光UOの検出ができなくなる恐れがある。このため、m1/m2を所定係数αの上限値とするのが好ましい。
【0125】
また、所定係数αは、0.5以上であることが好ましい。その理由は、所定係数αが0.5を下回ると、特性曲線CLが図13の場合よりも更に低くなるので、Vc,Vdに対応するA10の下流端位置L0’,L0’’が通常位置L0と余り変わらなくなり、UA1での位置標定精度をさほど向上できなくなるからである。
なお、所定係数αを0.5に設定すれば、所定係数αをそれより大き目に設定する場合(例えば、α=0.8や0.9の場合)に比べて、A10の下流端位置L0’,L0’’,L0’’’をより正確に実測できるので、正確な下流端位置を記憶装置48に記憶させることができるという利点がある。
【0126】
もっとも、α=0.5に設定すると、Vsum×αの曲線が隣接するPDの受光レベルが交わる点に一致するので、A10の下流端位置L0’、L0’’、L0’’’が車載機2により殆ど変化することがない一方で、L9〜L0’、L0’’、L0’’’の距離、すなわち、アップリンク受信位置の誤差が大きくなる。
これに対して、α=0.9(或いは0.8)に設定すると、Vsum×αの曲線が隣接するPDの受光レベルが9/1(或いは8/2)の比率になる点に一致するので、A10の下流端位置L0’、L0’’、L0’’’が車載機2によって多少変動する(α=0.5の場合に比べて変動する)一方で、L9〜L0’、L0’’、L0’’’の距離、すなわち、アップリンク受信位置の誤差は小さくなる。
【0127】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上記実施形態ではなく、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、アップリンク領域UAを4つの分割領域UA1〜UA4で構成したが、アップリンク領域UAを構成する分割領域UA1〜UA4の数(フォトダイオードPD1〜PD4の数)は、2つ、3つ或いは5つ以上としてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、上流側と下流側の双方で他の分割領域に隣接する分割領域(分割領域の総数が4の場合は、UA2とUA3)を細分する場合の細分数Nを「3」に設定しているが、N=2であってもよいし、N≧4であってもよい。
更に、道程距離Lの終端となる下流端については、停止線40のほか、信号機の設置位置や車両感知器の位置としてもよい。
【0129】
また、本実施形態における距離情報は、所定位置P0までの距離の値を直接格納する形式に限られず、所定位置P0までの距離を一意に決定しうる情報であれば、どのような形式であってもよい。
例えば、基準位置Prからその下流側の所定位置P0までの間に1又は複数のノードを設定し、これらのノードに応じた複数の距離値群によって距離情報を構成することもできる。すなわち、基準位置Prからその直近のノードまでの距離、各ノード間の距離、及び、所定位置P0直近のノードから所定位置P0までの距離によって距離情報を構成することができる。
【0130】
この場合、上記距離情報を受信した車両Cの車載コンピュータ26は、各距離の合計値を求めることで、所定位置P0までの距離を認識することができる。
また、光ビーコン4が送信する情報は、距離そのものの値ではなく、当該距離の始点と終点との絶対位置(緯度・経度や宇宙空間上の任意の点を原点とする3次元空間の座標値等)を示す情報とすることができる。
【0131】
例えば、距離情報を、所定位置P0の座標と、位置特定部50が特定したアップリンク受信位置L0〜L9の座標とで構成し、これらの座標(絶対位置でも相対位置でもよい。)に基づいて車載機2の距離認識部30が自身で距離を算出してもよい。
この場合、車載機2側で所定位置P0の座標を記憶している場合には、光ビーコン4側からは、アップリンク受信位置L0〜L9のみを送信すれば足りる。
【符号の説明】
【0132】
1 交通管制システム(路車間通信システム)
2 車載機
4 光ビーコン
7 ビーコン制御機
8 ビーコンヘッド
9 フォトダイオード(受光部)
10 発光ダイオード(投光部:送信部)
45 プロセッサ
48 記憶装置(記憶部)
49 通信制御部
50 位置特定部
A 通信領域
C 車両
R 道路
UA アップリンク領域
DA ダウンリンク領域
UA アップリンク領域の分割領域
PD 分割領域に対応する受光部(フォトダイオード)
細分エリア
UO アップリンク光
DO ダウンリンク光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両進行方向に並ぶ複数の分割領域(以下、「UA」という。iは下流側から順に1,2……m)にそれぞれ対応する複数の受光部(以下、「PD」という。)と、
車両からのアップリンク情報受信時に各PDに生じる受光レベルに基づいて、各UAを車両進行方向に細分化した複数の細分エリア(以下、「A」という。jは上流側から順に1,2……n)のうちのいずれかの代表点を、当該Aにおけるアップリンク受信位置として特定する位置特定部と、
PD1の受光レベルが、UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値と等しくなる、Aの下流端位置を予め記憶する記憶部と、を備えており、
前記位置特定部は、前回特定されたアップリンク受信位置が前記境界位置からAn−1までの範囲にある場合に、A用の閾値を、前回のアップリンク情報受信時の全PDの受光レベルの合計値に前記所定係数をかけた値に更新し、
今回のアップリンク受信位置がAに含まれている場合に、今回のアップリンク情報受信時のPD1の受光レベルが更新された前記閾値以上であることを条件として、記憶された前記下流端位置を当該Aの代表点として採用することを特徴とする光ビーコン。
【請求項2】
UAの境界位置が複数ある場合において、
前記記憶部は、複数の前記境界位置にそれぞれ対応するAの下流端位置を記憶しており、
前記位置特定部は、前回のアップリンク受信位置が複数のAのうちのいずれに含まれているかに基づいて、複数の前記下流端位置のうちのいずれをAの代表点として採用するかを決定する請求項1に記載の光ビーコン。
【請求項3】
前記位置特定部は、前回のアップリンク受信位置の上流側のUAの境界位置における、全PDの受光レベルに前記所定係数をかけた値と等しくなるAの下流端位置を、当該Aの代表点として採用する請求項2に記載の光ビーコン。
【請求項4】
前記所定係数は、0.5以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ビーコン。
【請求項5】
前記所定係数は、Aの境界を定義するために設定された、隣接するUAについての両PDの受光レベルの比率の最大値以下の値である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ビーコン。
【請求項6】
ダウンリンク情報を送信する送信部と、
アップリンク情報を受信した後に送信する前記ダウンリンク情報に、前記位置特定部が特定したアップリンク受信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含める通信制御部と、を更に備えている請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ビーコン。
【請求項7】
車両からのアップリンク情報受信時に各PDに生じる受光レベルに基づいて、各UAを車両進行方向に細分化した複数のAのうちのいずれかの代表点をアップリンク受信位置として特定する方法であって、
PD1の受光レベルが、UAの境界位置における全PDの受光レベルの合計値に所定係数をかけた値と等しくなる、Aの下流端位置を予め記憶装置に記憶させるステップと、
前回特定されたアップリンク受信位置が前記境界位置からAn−1までの範囲にある場合に、A用の閾値を、前回のアップリンク情報受信時の全PDの受光レベルの合計値に前記所定係数をかけた値に更新するステップと、
今回のアップリンク受信位置がAに含まれている場合に、今回のアップリンク情報受信時のPD1の受光レベルが更新された前記閾値以上であることを条件として、記憶された前記下流端位置を当該Aの代表点として採用するステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク受信位置の特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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