説明

光ファイバに対する側面光入出射方法

【課題】利用者に対するサービスを低下させることなく、しかも最適配置機構等の大掛かりな装置を用いることなく高い結合効率を得ることを可能にする。
【解決手段】先ず被覆付き光ファイバ10の被覆材3に対し当該ファイバ10の長手方向に予め設定した長さの傷を付与し、続いて当該被覆付き光ファイバ10を被覆材3の上記傷5が付与された部位が外周部となるように湾曲させ、これにより上記被覆材3の傷5が付与された部位を開口させてファイバガラスのクラッドガラス2を露出させる。そして、この被覆付き光ファイバ10のファイバガラスが露出した部位を利用して、被覆付き光ファイバ10から漏洩光Loutを出射させ心線対照を行う工程と、被覆付き光ファイバ10に対し試験用のローカル信号光Linを入射する工程のうち少なくとも一方を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば光ファイバの心線対照を行う際に使用する、光ファイバに対する側面光入出射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経済的な光ネットワークを構築するために、1本の光線路を光スプリッタによって複数本の線路に分岐するPON(Passive Optical Network)通信方式が実用化されている。しかし、この方式を採用した光通信網では、光通信網の建設や保守を行うめに局内の試験光挿入用カプラから試験光を入力すると、光スプリッタにより全ての分岐線路に試験光が分配される。このため、ケーブル内或いは利用者宅の光ファイバを識別する心線対照や、光パルス試験を本質的に実施することができない。
【0003】
そこで、心線対照やパルス試験を実施する際に作業者は、例えば分岐線路の接続部を一時的に抜き取って、その接続部から放出される光をモニタ(測定)する方法を採用している。しかしこの方法では、利用者に提供しているサービスを一時的に停止しなければならず、サービスの低下を招くという問題を生じる。
【0004】
一方、サービス中の光ファイバを抜き取ることなく、光ファイバの側面において試験光を入射又は出射させることにより、心線対照やパルス試験を実施することが提案されている。例えば、光ファイバの一部を曲げてこの曲げ部位に光プローブを付き当てることにより、サービス中の光ファイバ中を伝搬する光信号の一部を出射させたり、また当該曲げ部位において光ファイバに試験光を入射させる記述が検討されている。この方法であれば、利用者に対するサービスを停止することなく心線対照やパルス試験を実施することが可能となる(例えば特許文献1又は非特許文献1輪参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−25210号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】納戸、田中、本田、真鍋、東「光ファイバ側方入出射法」、光ファイバ応用技術技報、vol.111, no.69, pp11-14, May, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1又は非特許文献1に記載された方法では、光ファイバ曲げ部の側面において光ファイバから漏洩する光を受光する場合に、光ファイバの被覆を通して漏洩光を受光することから光結合効率が悪い。このため、光ファイバ相互の最適配置機構を設けなければならず、その結果光信号を入出射させるための装置の大型化を招く。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、利用者に対するサービスを低下させることなく、しかも最適配置機構等の大掛かりな装置を用いることなく高い光結合効率を得ることを可能にした光ファイバに対する側面光入出射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、ファイバガラスの周面を弾力性を有する被覆材により被覆した光ファイバの側面部において側面光を入射又は出射する方法にあって、先ず前記光ファイバの被覆材に対し当該光ファイバの長手方向に線状の傷を付与し、続いてこの傷が付与された部位が外周側となるように当該光ファイバを湾曲させて、当該被覆材の傷が付与された部位を拡げてファイバガラスを露出させる。そして、このファイバガラスが露出された部位において、光送信器から出力された側面光を前記ファイバガラスに入射させる工程と、前記光ファイバを介して伝送された光信号の一部を漏洩させて当該漏洩光を光受信器で受信する工程のうちの少なくとも一方を行うようにしたものである。
【0010】
したがって、光ファイバを湾曲させたときに被覆材に予め付与した傷が開いてファイバガラスが露出し、このファイバガラスの露出部位において側面光の入射又は漏洩光の出射を行うことが可能となる。このため、光ファイバ側面と側面光送受信装置との間の光結合効率を高めることができ、これにより大掛かりな最適配置機構を使用することなく、光ファイバ側面を利用した漏洩光の出射又はローカル信号光の入射を行うことが可能となる。
【0011】
上記目的を達成するためにこの発明の第2の観点は、ファイバガラスの周面を弾力性を有する被覆材により被覆した光ファイバの側面部において側面光を入射又は出射する方法にあって、先ず前記光ファイバの前記ローカル信号光を入射又は出射させようとする部位を湾曲させ、続いてこの光ファイバを湾曲させた状態で、被覆材の湾曲部位の外周部に当該光ファイバの長手方向に直線状の傷を付与して当該被覆材を切開し、ファイバガラスを露出させる。そして、このファイバガラスが露出された部位において、光送信器から出力されたローカル信号光を前記ファイバガラスに入射させる工程と、前記光ファイバを介して伝送された光信号の一部を漏洩させて当該漏洩光を光受信器で受信する工程のうちの少なくとも一方を行うようにしたものである。
【0012】
したがって、光ファイバを湾曲させた状態で被覆材の外周部に傷を付与することで、被覆材が開口してファイバガラスが露出し、このファイバガラスの露出部位においてローカル信号光の入射又は漏洩光の出射を行うことが可能となる。したがって、この方法においても光ファイバ側面とローカル信号光送受信装置との間の光結合効率を高めることができ、これにより大掛かりな最適配置機構を使用することなく、光ファイバ側面を利用したローカル信号光の入射又は漏洩光の出射を行うことが可能となる。
【0013】
また、この発明の第1及び第2の観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、前記光入出射工程の終了後に、前記光ファイバの湾曲された部位を湾曲前の状態に戻し、前記被覆材が持つ弾力性により当該被覆材の傷を閉じて前記ファイバガラスを再度被覆させるようにしたものである。
このようにすると、側面光の入出射工程の終了後に、光ファイバを湾曲させる前の状態に戻すだけで、被覆材が持つ弾力性により被覆材の傷が閉じ、結果的にファイバガラスは再び被覆される。したがって、入出射工程の終了後に光ファイバを新たな被覆材で被覆し直す等の作業が不要となる。
【0014】
第2の態様は、被覆材に傷を付与する際に、光ファイバの被覆材に対しその厚さより浅い傷を付与するようにしたものである。具体的には、被覆材が硬度の異なる複数の被覆層を有している場合に、硬度が最も低い最下層を除く層を貫通しかつ最下層に対しその厚さより浅い傷を付与する。
このようにすると、被覆材に傷を付与する際にファイバガラスには傷が付かないようにすることができ、これにより光ファイバの信頼性を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
すなわちこの発明によれば、利用者に対するサービスを低下させることなく、しかも最適配置機構等の大掛かりな装置を用いることなく高い結合効率を得ることを可能にした光ファイバに対する側面光入出射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る光ファイバ側面光入出射方法を実施する被覆付き光ファイバの構造を示すもので、(a)はその横断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図。
【図2】図1に示した光ファイバの被覆に傷を加える工程を説明するためのもので、(a)はその横断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図。
【図3】図1に示した光ファイバの被覆部の具体的な構造を示す横断面図。
【図4】図1に示した光ファイバの、被覆加傷工程後でかつ曲げ工程前の状態を示すもので、(a)はその横断面図、(b)は縦断面図。
【図5】図1に示した光ファイバの曲げ工程後の状態を示すもので、(a)はその横断面図、(b)は縦断面図。
【図6】図5に示した状態で行われる漏洩光の出射工程を説明するための図。
【図7】図5に示した状態で行われるローカル信号光の入射工程を説明するための図。
【図8】この発明の第2の実施形態に係る光ファイバ側面光入出射方法において、曲げ工程後に被覆加傷工程を実施する場合を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
(構成)
この発明の第1の実施形態に係る光ファイバ側面光入出射方法を実施する被覆付き光ファイバの構造を示すもので、(a)はその横断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0018】
被覆付き光ファイバ10は、コアガラス1の外周面にクラッドガラス2を配置したファイバガラスを備え、このファイバガラスの外周面を被覆材3により被覆した構造となっている。被覆材3は、弾力性を有する樹脂等の有機材料からなる。具体的には、図3に示すように内層側から外層側に順にプライマリコート31、セカンダリコート32及びカラーコート33と呼ばれる3つの層を重ねた構造となっている。これらの層31,32,33の材質としては、カラーコート33、セカンダリコート32、プライマリコート31の順に硬度が低くなるような材質が用いられる。
【0019】
(方法)
このような被覆付き光ファイバ10に対し側面光の入出射を行う方法を以下に説明する。
(1)加傷工程
先ず、被覆付き光ファイバ10の、側面光の入出射を行おうとする部位において、図2に示すように刃4を用いて被覆材3に対し当該光ファイバ10の長手方向(光伝搬方向)に予め設定した長さの傷を付与する。この傷の付与は、例えば被覆材3の厚さよりも刃4の突出量が小さくなるように調整されたカッターを使用することに行われる。具体的には、被覆材3を構成するカラーコート33、セカンダリコート32及びプライマリコート31のうち、最外層のカラーコート33及び中間層のセカンダリコート32をそれぞれ貫通し、かつ最下層のプライマリコート31に対しその厚さより浅い傷を付与する。図4(a),(b)は、上記傷5が付与された後の被覆付き光ファイバ10の状態を示す図である。
【0020】
(2)曲げ工程
次に、被覆付き光ファイバ10を、上記被覆材3に傷5が付与された部位が外周部となるように湾曲させる。この湾曲作業は、例えば被覆付き光ファイバ10の傷5が付与されていない側を治具に押し当て、この状態で光ファイバ10を曲げることにより行われる。このように被覆付き光ファイバ10を曲げると、被覆材3の上記傷5が与えられた部位が裂けて開き、これによりファイバガラスのクラッドガラス2が露出する。図5(a),(b)は、この曲げ工程後の被覆付き光ファイバ10の状態を示すものである。
【0021】
(3)漏洩光の出射工程
次に、光ファイバの心線対照を行う場合には、上記のように被覆付き光ファイバ10のファイバガラスが露出した部位を利用して、被覆付き光ファイバ10を伝送する光信号の一部を取り出す処理が以下のように行われる。
すなわち、被覆付き光ファイバ10を上記したように湾曲させると、図6に示すように光ファイバ10のファイバガラス内を伝搬中の信号光Pの一部が、上記湾曲部位においてファイバガラスの露出部位から漏洩する。そこで、被覆付き光ファイバ10の上記ファイバガラスの露出部位に対向するように受光装置6を配置する。このとき、上記ファイバガラスの露出部位に対する受光装置7の配置位置は、当該受光装置7の光軸がファイバガラスからの漏洩光Lout の出射角度範囲に含まれるように設定する。
【0022】
受光装置6は受光素子アレイを備え、上記ファイバガラスの露出部位から出射された漏洩光Lout を受光し、この受信した漏洩光を電気信号に変換して図示しない検査装置に送る。検査装置は、例えば上記漏洩光Lout を変換した電気信号から心線対照を行うためのIDを抽出し、この抽出されたIDを予め用意されている心線対照テーブルと照合してその照合結果を表示する。これにより保守作業員は、上記被覆付き光ファイバ10の心線対照を行うことができる。
【0023】
(4)ローカル信号光の入射工程
一方、光パルス試験を行う場合には、上記被覆付き光ファイバ10のファイバガラスが露出した部位を利用して、被覆付き光ファイバ10に対し試験用のローカル信号光を入射する処理が以下のように行われる。
すなわち、例えば図7に示すように、被覆付き光ファイバ10の上記ファイバガラスの露出部位に対向して試験光入射用光ファイバ7を配置する。このとき、上記ファイバガラスの露出部位に対する試験光入射用光ファイバ7の配置位置は、当該試験光入射用光ファイバ7の光軸がファイバガラスにおけるローカル信号光Linの入射可能範囲に含まれるように設定する。なお、このファイバガラスの露出部位に対する試験光入射用光ファイバ7の角度の設定方法については、特開2009−25210号公報に詳しく記載されている。
【0024】
試験光入射用光ファイバ7は図示しない光送信装置に接続されており、この光送信装置から発生されたローカル信号光Linは、試験光入射用光ファイバ7により導かれて上記ファイバガラスの露出部位に対し上記設定された角度で照射される。この結果、上記ローカル信号光Linは上記露出部位から当該ファイバガラス内に入射され、試験光入射用光ファイバ7により伝送されて、例えば局舎内に設けられた試験装置(図示せず)において受信される。試験装置では、上記受信されたローカル信号光Linのパルス波形等を測定してその結果を表示する。かくして、被覆付き光ファイバ10によるパルス試験が行われる。
【0025】
(5)被覆付き光ファイバ10の復元
上記(3)又は(4)による漏洩光の出射又はローカル信号光の入射工程が終了すると、被覆付き光ファイバ10の湾曲部位を反対方向に曲げて湾曲前の状態、つまり直線の状態に戻す。そうすると、被覆材3の開口部位が当該被覆材3の弾力性により閉塞し、この結果ファイバガラスの露出部位が被覆材3により再び被覆される。
【0026】
(第1の実施形態による効果)
以上詳述したように第1の実施形態では、先ず被覆付き光ファイバ10の被覆材3に対し当該ファイバ10の長手方向に予め設定した長さの傷を付与し、続いて当該被覆付き光ファイバ10を被覆材3の上記傷5が付与された部位が外周部となるように湾曲させ、これにより上記被覆材3の傷5が付与された部位を開口させてファイバガラスのクラッドガラス2を露出させる。そして、この被覆付き光ファイバ10のファイバガラスが露出した部位を利用して、被覆付き光ファイバ10から漏洩光Lout を出射させ心線対照を行う工程と、被覆付き光ファイバ10に対し試験用のローカル信号光Linを入射する工程のうち少なくとも一方を実施するようにしている。
【0027】
したがって、被覆付き光ファイバ10を湾曲させたときに被覆材3に予め付与した傷5が開いてファイバガラスが露出し、このファイバガラスの露出部位においてローカル信号光Linの入射又は漏洩光Lout の出射を行うことが可能となる。このため、被覆付き光ファイバ10の側面と光受信装置6又は試験光入射用光ファイバ7との間の光結合効率を高めることができ、これにより大掛かりな最適配置機構を使用することなく、光ファイバ側面を利用した漏洩光Lout の出射又はローカル信号光Linの入射を行うことが可能となる。
【0028】
また、漏洩光の出射又はローカル信号光の入射工程が終了した後、被覆付き光ファイバ10の湾曲部位を反対方向に曲げて湾曲前の状態に戻すだけで、被覆材3の開口部位が当該被覆材3の弾力性により閉塞し、これによりファイバガラスの露出部位が被覆材3により再び被覆される。このため、入出射工程の終了後に被覆付き光ファイバ10を別途の被覆材で被覆し直す等の作業が不要となる。
さらに、加傷工程において、刃4の突出量は被覆材3の厚さより短く設定してあるので、被覆材3に傷を付与する際にファイバガラスに傷を付けてしまう心配がなく、これにより光ファイバの維持することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図8は、この発明の第2の実施形態に係る光ファイバ側面光入出射方法を説明するための図である。
第2の実施形態に係る光ファイバ側面光入出射方法は、先ず被覆付き光ファイバ10の一部を、曲面を有する治具11を用いて湾曲させる。続いて、この湾曲させた状態で被覆付き光ファイバ10の被覆材に対し刃4により傷を付与する。この傷の付与は、第1の実施形態と同様に、例えば被覆材3の厚さよりも刃4の突出量が小さくなるように調整されたカッターを使用することに行われる。具体的には、被覆材3を構成するカラーコート33、セカンダリコート32及びプライマリコート31のうち、最外層のカラーコート33及び中間層のセカンダリコート32をそれぞれ貫通し、かつ最下層のプライマリコート31に対しその厚さより浅い傷を付与する。このように被覆付き光ファイバ10を湾曲させた状態で被覆材3に傷を付けることで、被覆材3が切開されてファイバガラスのクラッドガラス2が露出する。
【0030】
そして、このファイバガラスの露出部位を利用することで、先に述べた第1の実施形態と同様に、被覆付き光ファイバ10により伝搬中の光の漏洩光Lout を直接出射させて光受信装置6に受信させる工程、或いは光送信装置から発生されたローカル信号光Linを上記被覆付き光ファイバ10に直接入射する工程を実施する。そして、これらの工程の終了後に、被覆付き光ファイバ10の上記曲げ部位を元の状態に戻す。
【0031】
したがって、この第2の実施形態においても、漏洩光Lout の出射工程又はローカル信号光Linの入射工程を実施する際に、ファイバガラスの露出部位を利用することで、被覆付き光ファイバ10の側面と光受信装置6又は試験光入射用光ファイバ7との間の光結合効率を高めることができ、これにより大掛かりな最適配置機構を使用することなく、光ファイバ側面を利用した漏洩光Loutの出射又はローカル信号光Linの入射を行うことが可能となる。
【0032】
また、漏洩光Loutの出射又はローカル信号光りLinの入射工程が終了した後、被覆付き光ファイバ10の湾曲部位を反対方向に曲げて湾曲前の状態に戻すだけで、被覆材3の開口部位が当該被覆材3の弾力性により閉塞し、これによりファイバガラスの露出部位が被覆材3により再び被覆される。このため、入出射工程の終了後に被覆付き光ファイバ10を別途の被覆材で被覆し直す等の作業が不要となる。
さらに、この実施形態においても、加傷工程において刃4の突出量は被覆材3の厚さより短く設定されているので、被覆材3に傷を付与する際にファイバガラスに傷を付けてしまう心配がなく、これにより光ファイバの維持することができる。
【0033】
[その他の実施形態]
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、加傷工程において被覆材3を構成するカラーコート33、セカンダリコート32及びプライマリコート31のうち、最外層のカラーコート33及び中間層のセカンダリコート32をそれぞれ貫通し、かつ最下層のプライマリコート31に対しその厚さより浅い傷を付与するようにしたが、最下層のプライマリコート31が透明材料からなる場合には、この最下層のプライマリコート31には傷を付与しなくてもよい。
【0034】
その他、光ファイバの構造、被覆材の構造とその材質、側面光の入出射の目的や、加傷工程に使用する工具、曲げ工程に使用する工具等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0035】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…コアガラス、2…クラッドガラス、3…被覆、4…刃、5…傷、6…受光装置、7…試験光入射用光ファイバ、10…被覆付き光ファイバ、31…プライマリコート、32…セカンダリコート、33…カラーコート、Lin…ローカル信号光、Lout …漏洩光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバガラスの周面を弾力性を有する被覆材により被覆した光ファイバの側面部において側面光を入射又は出射する方法であって、
前記光ファイバの被覆材に対し、当該光ファイバの長手方向に線状の傷を付与する加傷工程と、
前記被覆材の傷が付与された部位が外周側となるように当該光ファイバを湾曲させ、これにより当該被覆材の傷が付与された部位を拡げてファイバガラスを露出させる曲げ工程と、
前記ファイバガラスが露出された部位において、光送信器から出力されたローカル信号光を前記ファイバガラスに入射させる工程と、前記光ファイバを介して伝送された光信号の一部を漏洩させて当該漏洩光を光受信器で受信する工程のうちの少なくとも一方を行う側面光入出射工程と
を具備することを特徴とする光ファイバに対する側面光入出射方法。
【請求項2】
ファイバガラスの周面を弾力性を有する被覆材により被覆した光ファイバの側面部において側面光を入射又は出射する方法であって、
前記光ファイバの前記側面光を入射又は出射させようとする部位を湾曲させる曲げ工程と、
前記光ファイバを湾曲させた状態で、被覆材の湾曲部位の外周部に当該光ファイバの長手方向に直線状の傷を付与して当該被覆材を切開し、ファイバガラスを露出させる加傷工程と、
前記ファイバガラスが露出された部位において、光送信器から出力されたローカル信号光を前記ファイバガラスに入射させる工程と、前記光ファイバを介して伝送された光信号の一部を漏洩させて当該漏洩光を光受信器で受信する工程のうちの少なくとも一方を行う側面光入出射工程と
を具備することを特徴とする光ファイバに対する側面光入出射方法。
【請求項3】
前記側面光入出射工程の終了後に、前記光ファイバの湾曲された部位を湾曲前の状態に戻し、前記被覆材が持つ弾力性により当該被覆材の傷を閉じて前記ファイバガラスを再度被覆させる工程を、さらに具備することを特徴する請求項1又は2記載の光ファイバに対する側面光入出射方法。
【請求項4】
前記加傷工程は、前記光ファイバの被覆材に対しその厚さより浅い傷を付与することを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバに対する側面光入出射方法。
【請求項5】
前記加傷工程は、前記被覆材が硬度の異なる複数の被覆層を有している場合に、硬度が最も低い最下層を除く層を貫通しかつ最下層に対しその厚さより浅い傷を付与することを特徴とする請求項4記載の光ファイバに対する側面光入出射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108768(P2013−108768A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251876(P2011−251876)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】